説明

シリンジ

【課題】信頼性および安全性を確保しつつ、薬液の残存を抑制することのできるシリンジを提供すること。
【解決手段】シリンジ1は、胴部21と、胴部21と連通し、先端側に薬液100が出入り可能な口部22とを有する外筒2と、外筒内2で摺動し得るガスケット3と、ガスケット3に連結され、ガスケット3を外筒2の長手方向に移動操作する押し子4と、口部22の内側に設けられ、外筒2の内外を連通する薬剤100の流路が形成された先端部材5とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジは、一般に、外筒と、この外筒内で摺動し得るガスケットと、このガスケットを移動操作するプランジャとで構成されている。また、外筒は、胴部と、胴部の先端側に設けられ、胴部に対して縮径した縮径部(口部)とを有している。このようなシリンジは、押し子を外筒内に押し込むことによりガスケットを先端側へ移動させ、それにより、外筒に収納された薬液を口部の開口から外筒外へ導くように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のシリンジでは、押し子を押し込み、ガスケットを実質的に移動できない位置まで押しきっても、ガスケットは、外筒の縮径部の内部には侵入できない。そのため、縮径部の内部に比較的多くの薬液が残存する。このような薬液の残存によって、薬液を効率的に使用することができず、コスト高を招いてしまうという問題が生じる。このような問題は、薬液が高価な場合などに特に顕著となる。
【0004】
なお、縮径部の内径を小さくすることで内部空間を小さくすれば、上述のような問題を解消することができるかもしれないが、このような方法では次のような問題が生じる。すなわち、縮径部の外径は、針管のハブ、コネクタ類等を嵌合するためにサイズが決まっているため、縮径部の内部空間を小さくするには、縮径部の肉厚を厚くする必要がある。しかしながら、射出成型により縮径部の肉厚を厚くすると、肉厚部に成形時にヒケが発生し、針ハブやコネクタ類との嵌合が確実にできないという問題が生じる。
【0005】
また、ガスケットを縮径部の内部空間に侵入可能な形状とすることによっても、上述のような問題を解消することができるかもしれないが、このような方法では次のような問題が生じる。すなわち、ガスケットの形状を縮径部の内部空間に対応した形状とする必要があり、ガスケットの製造コストが増加する。また、確実に、ガスケットを縮径部の内部空間に侵入させるために厳密な位置合わせが必要であり、これにより、シリンジの製造コストが増加する。さらには、仮に、ガスケットが何らかの影響(例えば、経年変形や外筒の内壁との接触)で変形し、縮径部の内部空間に侵入できなかった場合には、ガスケットが所定位置よりも基端側で止まってしまい、シリンジ内の薬液を使い切るどころか、より多くの薬液が残存してしまう。すなわち、シリンジの信頼性、安全性が低下するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−162761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、信頼性および安全性を確保しつつ、薬液の残存を抑制することのできるシリンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 胴部と、該胴部と連通し、先端側に液体が出入り可能な口部とを有し、全体の肉厚がほぼ均一に形成されている外筒と、
前記外筒内で摺動し得るガスケットと、
前記ガスケットに連結され、前記ガスケットを前記外筒の長手方向に移動操作する押し子とを備えるシリンジであって、
前記口部の内側に設けられ、前記外筒の内外を連通する前記液体の流路が形成された先端部材を有することを特徴とするシリンジ。
【0009】
(2) 前記流路の体積は、1μL〜30μLである上記(1)に記載のシリンジ。
(3) 前記先端部材は、該先端部材の基端面と先端面とを貫通する貫通孔を有しており、前記貫通孔の内側が前記流路を構成している上記(1)または(2)に記載のシリンジ。
【0010】
(4) 前記先端部材は、前記外筒の基端側の開口から前記外筒内に圧入されており、前記外筒に対する先端側への変位が規制されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシリンジ。
【0011】
(5) 前記先端部材は、前記外筒の先端側の開口から前記外筒内に圧入されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のシリンジ。
【0012】
(6) 前記先端部材の基端部には、略円錐形の凹形状をなす凹部が形成され、
前記貫通孔は、前記凹部の底部に開放している上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のシリンジ。
【0013】
(7)前記先端部材は、射出成型によって形成され、
前記射出成型によって前記先端部材に発生し得るヒケは、前記液体と接液しない箇所に位置する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のシリンジ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、信頼性および安全性を確保しつつ、薬液の残存を抑制することのできるシリンジを提供することができる。具体的には、先端部材を口部の内側に設けることにより、ガスケットが侵入できない口部の内部空間を減少させているため、押し子を押しきった状態でのシリンジ内の薬液の残存量をより少なくすることができる。特に、このような構成によれば、口部の肉厚を薄くすることができるため、ヒケ等が発生することを効果的に防止でき、シリンジの安全性を確保することもできる。
【0015】
また、本発明によれば、ガスケットを口部内に侵入させなくてもよいため、ガスケットの形状や位置合わせに必要以上の厳密性がいらず、シリンジの製造が容易となる。さらには、ガスケットが口部に侵入せずに薬液の残存量がより多くなってしまうという問題が発生し得ない。すなわち、信頼性および安全性の高いシリンジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシリンジの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明のシリンジの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図3】図1に示すシリンジが有する先端部材の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図4】本発明のシリンジの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図5】本発明のシリンジの第3実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のシリンジを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のシリンジの第1実施形態について説明する。
【0018】
図1および図2は、それぞれ、本発明のシリンジの第1実施形態を示す縦断面図、図3は、図1に示すシリンジが有する先端部材の製造方法の一例を説明するための断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図2中の上側を「基端」、下側を「先端」という。
【0019】
図1に示すシリンジ1は、シリンジ内部に予め薬液100が収納されたプレフィルドシリンジである。このようなシリンジ1は、外筒2と、外筒2内に設けられた先端部材5と、外筒2内で摺動し得るガスケット3と、ガスケット3を移動操作する押し子(プランジャロッド)4とを備えている。
【0020】
このシリンジ1では、外筒2とガスケット3とで囲まれる空間であって、ガスケット3の先端側に位置する空間11内には、予め薬液100が収納されている。
【0021】
薬液100の具体例としては、例えば、抗体等の蛋白質性医薬品、低分子蛋白質、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、血液製剤、各種感染症を予防するワクチン、抗がん剤、麻酔薬、抗生物質、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、ヘパリン、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、脂肪乳剤、造影剤等が挙げられる。
【0022】
以下、シリンジ1の各部位について順次詳細に説明する。
−外筒−
外筒2は、有底筒状の部材で構成されている。このような外筒2は、底部211を有する胴部21と、底部211の中央部に設けられ、胴部21に対し縮径した縮径部22とを有しており、これらが一体的に形成されている。そして、縮径部22により、液体が出入り可能な口部が構成される。
【0023】
また、縮径部22には、例えば、針管のハブ、コネクタ類等が嵌合、装着されて使用される。縮径部22の内腔23の横断面形状は、円形であり、その横断面積は、先端側に向けて漸減している。すなわち、本実施形態の内腔23は、円錐台形状をなしている。
【0024】
なお、底部211から縮径部22の先端部までの肉厚は、ほぼ均一であることが好ましい。その厚さは、縮径部22がルアーテーパーの場合、0.5〜1.5mmであるのが好ましく、それ以外の場合、0.5〜3mmであるのが好ましい。これにより、外筒2を射出成型する際に、底部211から縮径部22にヒケが発生しない。
【0025】
縮径部22の先端には、封止部材として、例えば、図示しないフィルムが貼着されたり、図示しないキャップが装着されたりしており、縮径部22の内腔23を気密的に封止している。
【0026】
外筒2の基端外周には、板状のフランジ27が形成されている。押し子4を外筒2に対し相対的に移動操作する際などには、このフランジ27に指を掛けて操作を行うことができる。
【0027】
外筒2の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィンの単独重合体(COP)や環状オレフィンの共重合体(COC)などの環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。
【0028】
なお、外筒2の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【0029】
−ガスケット−
外筒2内には、弾性材料で構成されたガスケット3が収納されている。ガスケット3の外周部には、複数のリング状の突部31、32が全周にわたって形成されている。この突部31、32が外筒2の内周面20に対し密着しつつ摺動することにより、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。また、ガスケット3の先端部は、略円錐形の凸形状をなす凸部33で構成されている。
【0030】
ガスケット3の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【0031】
このようなガスケット3には、ガスケット3を外筒2内で長手方向に移動操作する押し子4が連結されている。
【0032】
−押し子−
押し子4は、本体部40を有しており、該本体部40の基端には、フランジ状の指当て部45が形成されている。この指当て部45の先端面あるいは基端面に指を当てて、押し子4を基端方向へ引いたり先端方向へ押したりする。
【0033】
本体部40の先端側には、ガスケット3の中空部内に挿入され、ガスケット3と連結されるヘッド部43が形成されている。例えば、ヘッド部43の外周には、ガスケット3の中空部の内面に形成された雌ネジと螺合し得る雄ネジが形成されており、両者が螺合することにより、ガスケット3と押し子4とが連結されている。
【0034】
押し子4の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアセタール、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)のような樹脂が好ましい。
【0035】
−先端部材−
外筒2内には、先端部材5が設けられている。先端部材5は、後述するように、押し子4を外筒2に対して押しきった状態(それ以上の先端側への移動が実質的にできない状態)で、シリンジ1内に残存する薬液100の量をなるべく少なくするために設けられた部材である。
【0036】
具体的に説明すれば、シリンジ1から先端部材5を省略した場合、押し子4を押しきっても、ガスケット3が外筒2の内腔23内に侵入できないため、内腔23内に薬液100が残存する(なお、以下では、説明の便宜上、押し子4を押しきった状態でシリンジ1に残存する薬液100の量を、単に「残存量」とも言う)。
【0037】
残存量は、シリンジ1の大きさ等によっても異なるが、通常、30μL〜50μL程度である。そのため、従来では、残存量を考慮して薬液100を予め多くシリンジ1内に収納しなければならなかった。また、シリンジ1内に残存した薬液100は、使用されることなく廃棄される。そのため、薬液100の効率的な利用ができず、コスト高を招くという問題が生じる。この問題は、薬液100が高価な場合や、シリンジ1に収納される薬液100の量が少ない場合に特に顕著となる。
【0038】
先端部材5は、シリンジ1内の薬液100の残存量を少なくするための部材であり、これにより、薬液100の効率的な利用が可能となる。シリンジ1の大きさ等によっても異なるが、先端部材5を用いることにより、薬液100の残存量を1〜30μL程度とすることが好ましく、1〜15μLとすることがより好ましく、1〜10μLとするのがさらに好ましい。これにより、薬液100の効率的な利用が可能となる。
【0039】
図1に示すように、先端部材5は、内腔23内に位置する先端部51と、胴部21内に位置する基端部52と、貫通孔53とを有している。このような先端部材5は、外筒2に対して液密的に固定されている。具体的には、先端部材5は、その外周面(側面)5aと外筒2の内周面20との間に薬液100が侵入しないように外筒2に対して固定されている。これにより、外筒2の射出成型によるヒケの発生を抑えつつも、残存量を減らすことができる。
【0040】
先端部51は、内腔23の形状と対応する略円錐台形状をなしている。また、先端部51と基端部52との境界部には段差54が形成されており、この段差54が外筒2の底部211と縮径部22との境界部に形成された段差と係合している。このように、先端部材5が円錐台形状をなし、段差54を外筒2の段差に係合させることにより、先端部材5のシリンジ1に対する先端側への移動が規制され、例えば、押し子4を先端側へ移動させることにより発生する圧力による先端部材5の外筒2からの離脱を効果的に防止することができる。
【0041】
なお、本実施形態の先端部材5は、外筒2の基端側開口から圧入することにより、外筒2に対して固定することができる。
【0042】
貫通孔53は、先端部材5の軸線に沿って直線的に形成されている。すなわち、貫通孔53は、凹部521の底部(中央部)と、先端部51の先端面の中央部とを貫通するように形成されている。このような貫通孔53により、外筒2の内外が連通し、貫通孔53を介して薬液100をシリンジ1外へ導くことができる。すなわち、貫通孔53は、薬液100の流路を構成している。
【0043】
なお、外筒2に対して押し子4を押しきった状態では、貫通孔53内に薬液100が残存することとなる。そのため、貫通孔53の体積をより小さくすることにより、薬液100の残存量をより少なくする(前述したように、1μL〜30μL程度とする)ことができる。
【0044】
先端部材5の構成材料としては、特に限定されないが、外筒2の構成材料として挙げた材料を用いることができる。特に、先端部材5を、外筒2の構成材料と同じ材料で構成するのが好ましい。これにより、シリンジ1の製造の容易化を図ることができる。
【0045】
また、先端部材5の剛性を外筒2の剛性よりも低くするのも好ましい。これにより、先端部材5の圧入によって外筒2が過度に変形したり、破損したりするのを効果的に防止することができ、シリンジ1の安全性が向上する。
【0046】
なお、この場合には、先端部材5の縁部の剛性が外筒2の剛性よりも低ければ、その効果を発揮できるため、先端部材5の中央部の剛性は、例えば、外筒2の剛性よりも高くてもよい。具体的には、例えば、先端部材5を、内部が貫通孔53を構成する筒状の第1部材と、当該第1部材の周囲に設けられた第2部材とで構成し、第1部材の剛性を第2部材の剛性よりも高くしてもよい。このような構成によれば、外筒2への圧入によって第2部材が変形したとしても、第1部材までは変形しないため、貫通孔53の変形を効果的に抑制することができるため、シリンジ1の信頼性を維持することができる。
【0047】
また、先端部材5は、射出成型によって製造することができる。先端部材5を射出成型によって製造する際には、仮にヒケが発生したとしても、そのヒケが薬液100と接触しない位置に発生するように製造する。具体的には、例えば、図3(a)に示すように、第1金型300と第2金型400とを用意し、第2金型400に形成されたゲート410から樹脂材料を供給する方法が挙げられる。
【0048】
このような方法によれば、図3(b)に示すように、製造された先端部材5にヒケが発生したとしても、そのヒケは、第1金型300と第2金型400との境界部や、ゲートとの境界部に発生する。これら部位は、いずれも先端部材5の側面であって、図1から明らかなように、シリンジ1内の薬液100と接触しない部位である。そのため、先端部材5にヒケが発生したとしても、先端部材5を外筒2に組み込んだ状態では、そのヒケが薬液100に接液することがない。これにより、ヒケが先端部材5から離脱し薬液100へ浮遊することを防止でき、薬液100の安全性を確保することができる。
【0049】
以上のようなシリンジ1によれば、信頼性および安全性を確保しつつ、薬液の残存を抑制することができる。具体的には、先端部材5を縮径部22の内側に設けることによりガスケット3が侵入できない内腔23の体積を減少させているため、押し子4を押しきった状態でのシリンジ1内の薬液100の残存量をより少なくすることができる。特に、このような構成によれば、縮径部22の肉厚を薄くすることができるため、縮径部22にヒケ等が発生することを効果的に防止でき、シリンジ1の安全性を確保することができる。
【0050】
また、シリンジ1によれば、ガスケット3を縮径部22内に侵入させなくてもよいため、ガスケット3の形状や位置合わせに必要以上の厳密性がいらず、シリンジ1の製造が容易となる。さらには、従来のように、ガスケット3が縮径部22の内腔23に侵入せずに薬液100の残存量がより多くなってしまうという問題が発生し得ない。すなわち、シリンジ1は、信頼性および安全性の優れたものとなる。
【0051】
<第2実施形態>
次いで、本発明のシリンジの第2実施形態について説明する。
【0052】
図4は、本発明のシリンジの第2実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図4中の上側を「基端」、下側を「先端」という。
【0053】
以下、本実施形態のシリンジについて説明するが、前記第1実施形態のシリンジとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0054】
本実施形態のシリンジでは、外筒2の形状および先端部材の構成が異なる以外は、前記第1実施形態のシリンジと同様である。
【0055】
図4に示すように、シリンジ1Aでは、外筒2Aが有する縮径部22Aの内腔23Aは、略円柱状をなしている。すなわち、内腔23Aは、円形の横断面形状をなし、その横断面積が外筒2の軸方向に沿ってほぼ一定となっている。また、縮径部22Aの内面には、凹部221Aが形成されている。この凹部221Aは、先端部材5Aが有する後述する凸部55Aが係合する部位である。
【0056】
図4に示すように、先端部材5Aは、全体的に円柱状をなしている。このような先端部材5Aは、その軸線に沿って形成された貫通孔53Aと、先端部に設けられ、基端側に対して拡径した拡径部(位置決め部)54Aと、外筒2Aに形成された凹部221Aと係合する凸部(係合部)55Aとを有している。
【0057】
このような先端部材5Aは、外筒2Aの先端側開口(縮径部22Aの開口)から圧入することにより、外筒2Aに固定される。このように、先端部材5Aを外筒2Aの先端側開口から圧入することにより、外筒2Aの胴部21の内周面20の損傷を防止することができる。先端部材5Aを外筒2に圧入する際、拡径部54Aが縮径部22Aの先端面に当接することにより、外筒2に対する先端部材5Aの位置決めが行われる。また、拡径部54Aが縮径部22Aの先端面に当接した状態で、凸部55Aが凹部221Aに係合することにより、先端部材5Aが外筒2Aに対して、より強固に固定される。
【0058】
先端部材5Aをこのような構成とすることにより、先端部材5Aを外筒2Aに対して正確に位置合わせすることができるとともに、外筒2Aに対してより強固に固定することができる。これにより、シリンジ1の信頼性が向上する。
【0059】
また、先端部材5Aの基端部には、凹形状が略円錐形の凹部56Aが形成されている。この凹部56Aの側面561Aは、外筒2Aの底部211の内面211aと連続した面で構成されている。これにより、押し子4を押しきった状態で、ガスケット3の凸部33と底部211および凹部56Aとを密着させることができ、薬液100の残存量をより少なくすることができる。
【0060】
<第3実施形態>
次いで、本発明のシリンジの第3実施形態について説明する。
【0061】
図5は、本発明のシリンジの第3実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図5中の上側を「基端」、下側を「先端」という。
【0062】
以下、本実施形態のシリンジについて説明するが、前記第1実施形態のシリンジとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0063】
本実施形態のシリンジでは、外筒の形状が異なる以外は、前記第1実施形態のシリンジと同様である。
【0064】
図5に示すように、シリンジ1Bでは、外筒2Bは、筒状の胴部21Bと、胴部21Bの先端側に設けられ、内径および外径が先端側に向けて漸減した縮径部22Bとを有している。すなわち、外筒2Bは、前述した第1実施形態の外筒2から底部211を省略したような構成をなしているとも言える。
【0065】
外筒2をこのような構成とすることにより、外筒2の形状がより単純なものとなるため、外筒2の小型化を図ることができる。そのため、本実施形態のシリンジ1Bは、外筒2に収納する薬液100の量が少ない場合(例えば、50〜500μL程度)に、特に有効となる。
このような外筒2内には、先端部材5Bが設けられている。
【0066】
先端部材5Bは、縮径部22B内に位置する先端部51Bと、胴部21B内に位置する基端部52Bと、貫通孔53Bとを有している。このような先端部材5Bは、外筒2Bに対して液密的に固定され、その外周面5aと外筒2の内周面20との間への薬液100の侵入が防止されている。
【0067】
ここで、先端部材5Bが基端部52Bを有しているため、シリンジ1Bでは、先端部材5Bによって、胴部21Bと縮径部22Bとの境界に形成された段差が覆われている。このような段差は、液体が侵入するきっかけになり易い部分である。そのため、先端部材5Bによって前記段差を覆うことにより、外周面5aと内周面20との間への薬液100の侵入がより効果的に防止されている。
【0068】
また、先端部材5Bが基端部52Bを有しているため、押し子4を先端側へ移動させた際に、先端部材5とガスケット3とをより確実に接触させることができる。そのため、シリンジ1内の薬液100の残存量をより減らすことができる。
【0069】
以上、本発明のシリンジを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、シリンジを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0070】
また、本発明のシリンジは、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0071】
また、前述した実施形態では、先端部材に貫通孔が形成され、この貫通孔が薬液の流路を構成していたが、薬液の流路は、貫通孔に限定されない。例えば、先端部材が、側面に形成され、先端部材の基端面および先端面に開放する溝を有しており、この溝と縮径部の内壁とで形成された流路を薬液の流路としてもよい。
【0072】
また、前述した実施形態では、シリンジ内に予め薬液(液体)が収納されている構成であったが、例えば、シリンジ内に粉末製剤などの固形製剤としての薬剤が収納されていてもよい。この場合には、使用時にシリンジ内に溶解液等の液体を注入し、前記液体に薬剤を溶解してなるものを「薬液」として用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 シリンジ
1A シリンジ
1B シリンジ
11 空間
2 外筒
2A 外筒
2B 外筒
20 内周面
21 胴部
21B 胴部
211 底部
211a 内面
22 縮径部
22A 縮径部
22B 縮径部
221A 凹部
23 内腔
23A 内腔
27 フランジ
3 ガスケット
31 突部
32 突部
33 凸部
33a 側面
4 押し子
40 本体部
43 ヘッド部
45 指当て部
5 先端部材
5A 先端部材
5B 先端部材
5a 外周面(側面)
51 先端部
51B 先端部
52 基端部
52B 基端部
521 凹部
521a 側面
53 貫通孔
53A 貫通孔
53B 貫通孔
54 段差
54A 拡径部
55A 凸部
56A 凹部
561A 側面
100 薬液
300 第1金型
400 第2金型
410 ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と、該胴部と連通し、先端側に液体が出入り可能な口部とを有し、全体の肉厚がほぼ均一に形成されている外筒と、
前記外筒内で摺動し得るガスケットと、
前記ガスケットに連結され、前記ガスケットを前記外筒の長手方向に移動操作する押し子とを備えるシリンジであって、
前記口部の内側に設けられ、前記外筒の内外を連通する前記液体の流路が形成された先端部材を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記流路の体積は、1μL〜30μLである請求項1に記載のシリンジ。
【請求項3】
前記先端部材は、該先端部材の基端面と先端面とを貫通する貫通孔を有しており、前記貫通孔の内側が前記流路を構成している請求項1または2に記載のシリンジ。
【請求項4】
前記先端部材は、前記外筒の基端側の開口から前記外筒内に圧入されており、前記外筒に対する先端側への変位が規制されている請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項5】
前記先端部材は、前記外筒の先端側の開口から前記外筒内に圧入されている請求項1ないし3のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項6】
前記先端部材の基端部には、略円錐形の凹形状をなす凹部が形成され、
前記貫通孔は、前記凹部の底部に開放している請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項7】
前記先端部材は、射出成型によって形成され、
前記射出成型によって前記先端部材に発生し得るヒケは、前記液体と接液しない箇所に位置する請求項1ないし6のいずれかに記載のシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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