説明

シリンジ

【課題】本発明は、粘度の高い液体を高い圧力にて注入するときにも、破損しにくいシリンジ、シリンダホルダ、およびそれらを用いた薬液注入システムを提供することを目的とする。
【解決手段】シリンダホルダ溝によりシリンジのフランジを保持してシリンジを固定するためのシリンダホルダに装着されて、注入装置用として用いることができるシリンジであって、前記シリンダホルダは、凹部と嵌合しうる位置決め機構が設けられ、前記シリンジは、この位置決め機構と嵌合する凹部を有することを特徴とするシリンジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動注入装置等の駆動機構を用いて高い注入圧力で注入を行うのに適したシリンジおよびシリンダホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用を初めとする多様な分野において、液体の注入にシリンジが用いられている。X線CT撮影の造影剤、MRI(磁気共鳴画像診断装置)用の造影剤のような粘度の高い薬液の注入には、高い圧力を要し、人手で操作するのが困難であったり、非常に手間が掛かったりする。そこで自動注入装置等の機械的なシリンジ駆動機構を用いて注入することが一般的である。図11は、そのような自動注入装置10にシリンジ20を装着する様子を示したものである。自動注入装置10は、シリンダホルダ11、ピストンホルダ12、内部にモーター(図示していない)を備え、シリンダホルダ11はフランジ22を保持することよってシリンジ外筒21を固定し、ピストンホルダ12はピストンフランジ24を保持する。モーターによってピストンホルダを前進または後退させることにより、ピストン23をシリンジ外筒に対して相対移動させて、液体の注入(液体のシリンジからの排出)または吸引を行うことができる。図12は、自動注入装置にシリンジを装着した様子を示す図である。
【0003】
また、図13に示すように、この自動注入装置に、サイズの小さいシリンジを装着するときは、取り外し可能なアダプタ13(シリンジに対してはシリンダホルダとして機能する)に、シリンジ外筒を装着し、さらに自動注入装置10に装着する。図14に、シリンジが自動注入装置に装着された様子を示す。
【0004】
図15は、図11で示した自動注入装置のシリンダホルダによるシリンジの保持、位置決めを説明する図であり、シリンジ外筒を後ろ側から見た図である。即ち、図11および図15(a)に示すようにフランジカット部25を垂直にしてフランジをシリンダホルダ11の溝にはめ込む。次に、90°回転させることでフランジが抜けないように固定される。図15(b)は回転途中を示す図であり、図15(c)は使用位置である。
【0005】
フランジのカット部は、このように位置決めに用いられる他、卓上などの平らな面に放置した場合に、転がりによるシリンジ破損防止のためにも必要である。
【0006】
また、ここで示したシリンジは、シリンジ外筒とピストンを有する一般に普及している形状のシリンジを大型(100mL、200mL)にしたものである。一般の50〜60mLのシリンジが3kg/cm程度の耐圧であるの対して、造影剤注入用として20kg/cm程度まで耐圧が高められている。
【0007】
ところで、造影剤用のシリンジとしては、ピストンがない型も存在する。この型では、パッキンを固定している部材に設けられているメスネジと、注入装置側の軸の先端のオスネジとを接続し、軸を前後に駆動することにより造影剤の吸引・注入を行う。しかし、このようなピストンがない型のシリンジは、注入器専用であるために、薬液を吸引するときにも必ず自動注入装置を用いなければならない。従って、診断中には、自動注入装置が占有されてしまい、薬液の吸引ができない。
【0008】
これに対して、図11等で示したような一般普及型のシリンジは、手動でも薬液の吸引が可能であるので、吸引時に自動注入装置を占有せずに済むため、診断中でも、シリンジに薬液を充填して次回の検査用の薬液を予め準備しておくことができる利点がある。また、図11と図13に示したように、大きさの異なるシリンジであってもアダプタを用いることにより同じ注入装置を使用できるなどのメリット、装置への装着が容易である等のメリットもある。
【0009】
以上のように、造影剤などの薬液注入用のシリンジはこれまで種々の改良がなされているが、それでも造影剤のような粘度の高い薬液を注入する際に、フランジに大きな力が加わるため、圧力を受けるフランジ面が少ないとシリンジが破損する場合がある。仮にフランジが所定位置まで回転されずに、例えば図15(b)のような中途半端な状態で注入が行われると、受圧面積が小さいために破損の危険性が大きくなる。
【0010】
また、最近200mL程度の比較的大きなシリンジを用いた注入用の装置には、シリンダホルダ部を可動にして、フランジの装着がより簡単により確実にできるクランプする機構が考案されている。図16は、そのような自動注入装置10のシリンダホルダ部分の拡大図である。このシリンダホルダは2つのクランプ16を有し、シリンジが装着する前は、図16のように2つのクランプの上部が開いた状態にある。そして、図17(a)(図17の上段左側図)で、フランジカット面を垂直にしてシリンジを開いた状態の2つのクランプ16にはめ込む。はめ込んで行くに従い、2つのクランプ16はフランジに押されて支点17を中心に回転し、閉じた状態になる。そして90°だけシリンジを回転することで、図17(b)(図17の上段右側図)に示すように、フランジカット面25を上下にして固定される。図17(c)は、固定された状態を上から見た平面図(クランプ部分は断面図)である。
【0011】
しかし、このようなクランプ機構を用いても、図17(a)から図17(b)に至る途中の中途半端な位置で固定されると、注入の際にフランジの受圧面積小さくなり、前述と同様にシリンジ破損の危険性が大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明は、粘度の高い液体を高い圧力にて注入するときにも、破損しにくいシリンジおよびこのシリンジと共に用いられるシリンダホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下の事項に関する。
【0014】
1. シリンダホルダ溝によりシリンジのフランジを保持してシリンジを固定するためのシリンダホルダに装着されて、注入装置用として用いることができるシリンジであって、
前記シリンダホルダは、凹部と嵌合しうる位置決め機構が設けられ、
前記シリンジは、この位置決め機構と嵌合する凹部を有することを特徴とするシリンジ。
【0015】
2. 前記凹部は、前記シリンジのフランジに設けられていることを特徴とする上記1記載のシリンジ。
【0016】
3. 前記凹部は、前記シリンジのフランジの後端面を部分的に厚くした強化リブに設けられていることを特徴とする上記1記載のシリンジ。
【0017】
4. 前記位置決め機構は、コイルバネで押されるラッチであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のシリンジ。
【0018】
5. 前記位置決め機構は、爪を有する板バネであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のシリンジ。
【0019】
6. 上記1〜3のいずれかに記載のシリンジのフランジを、シリンダホルダ溝により保持して、前記シリンジを注入装置に固定するためのシリンダホルダであって、
前記シリンジに設けられた凹部と嵌合する位置決め機構を有することを特徴とするシリンダホルダ。
【0020】
7. 前記位置決め機構は、コイルバネで押されるラッチであることを特徴とする上記6記載のシリンダホルダ。
【0021】
8. 前記位置決め機構は、爪を有する板バネであることを特徴とする上記6記載のシリンダホルダ。
【0022】
9. 前記シリンダホルダは、前記注入装置と一体となっていることを特徴とする上記6〜8のいずれかに記載のシリンダホルダ。
【0023】
10. 前記シリンダホルダは、前記注入装置に取り外し可能に装着されるアダプタであることを特徴とする上記6〜8のいずれかに記載のシリンダホルダ。
【0024】
11. 前記シリンダホルダは、前記シリンジを前記シリンダホルダに装着した後、90°回転したときに、前記位置決め機構と前記凹部との嵌合が生じることを特徴とする上記6〜10のいずれかに記載のシリンダホルダ。
【0025】
12. 上記6〜11のいずれかに記載のシリンダホルダ、シリンジのピストンを保持し前記シリンダホルダに対して相対的に移動できるピストンホルダ、およびこのピストンホルダを移動させる駆動機構を有する注入装置。
【0026】
13. 上記1〜3のいずれかに記載のシリンジと、上記12の注入装置とを備える薬液注入システム。
【0027】
本出願は、次の事項も開示している。即ち、本出願の開示事項の1つは、シリンダホルダ溝によりシリンジのフランジを保持してシリンジを固定するためのシリンダホルダに装着されて、注入装置用として用いることができるシリンジであって、前記シリンダホルダと係合して、装着されるシリンジの装着方向を規定するガイドを有することを特徴とするシリンジに関する。
【0028】
本出願の開示事項の一態様において、前記ガイドは、前記シリンダホルダの溝にはまらないだけの厚さを有する突起であって、フランジが溝にはまり、一方ガイドがシリンダホルダ溝にはまらないことによって、前記シリンダホルダとの係合が生じ、それによりシリンダの回転を禁止し、所定の向きでシリンジを保持・固定する。
【0029】
その際、前記シリンダホルダとして、シリンジ側の内側壁面に垂直部を有しているものを用いて、一方前記ガイドにこの垂直部と係合する直線部を形成するようにすると、シリンダの回転を禁止し、所定の向きでシリンジを保持・固定することができる。
【0030】
また、前記シリンダホルダとして、2つのクランプを備え、シリンジを装着前は2つのクランプが開いた状態にあり、シリンジの装着とともにクランプ上部が内側に閉じるように作動してフランジを固定するものを用いることも可能であり、その場合前記ガイドは、シリンジの回転が禁止されるように、クランプの形状に合わせることができる。
【0031】
さらに、本発明は、シリンダホルダ溝によりシリンジのフランジを保持してシリンジを固定するためのシリンダホルダに装着されて、注入装置用として用いることができるシリンジであって、前記シリンダホルダは、凹部と嵌合しうる位置決め機構が設けられ、前記シリンジは、この位置決め機構と嵌合する凹部を有することを特徴とするシリンジに関する。
【0032】
この位置決め機構は、コイルバネで押されるラッチ、または爪を有する板バネであることが好ましい。
【0033】
さらに本発明は、これら凹部が設けられたシリンジの凹部に嵌合しうる位置決め機構を有することを特徴とするシリンダホルダに関する。
【0034】
さらに本発明は、以上のシリンジと、シリンダホルダ溝によりこのシリンジのフランジを保持してシリンジを固定するためのシリンダホルダ、このシリンジのピストンを保持し前記シリンダホルダに対して相対的に移動しうるピストンホルダ、およびこのピストンホルダを移動させる駆動機構とを有する注入装置とを備えた薬液注入システムに関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、シリンジの向きが所定の方向、即ち好ましくはフランジカット部がシリンダホルダへの装着方向に対して上下に向く方向に定まり、固定位置が確認できるので、最適な位置にてフランジが固定される。その結果、シリンダホルダの溝壁面との接触面積が増大し、注入の際に十分な受圧面積が確保できる。そのため、耐圧に関して安定した注入を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本出願の開示する他の発明のシリンジの1形態、およびシリンダホルダで保持・固定された状態を示す図である。(a−1)シリンジ装着前の様子を、シリンジの後面から見た図(a−2)シリンジおよびシリンジホルダの上面図(b−1)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図(b−2)シリンジ装着後の上面図
【図2】本発明のシリンジおよびシリンダホルダの1形態を示す図である。(a)シリンジ装着前の様子を、シリンジの後面から見た図(b)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図
【図3】本発明のシリンジおよびシリンダホルダの1形態を示す図である。(a)シリンジ装着前の様子を、シリンジの後面から見た図(b)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図
【図4】本発明のシリンジおよびシリンダホルダの1形態を示す図である。(a)シリンジ装着前の様子を、シリンジの後面から見た図(b)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図(c)シリンジの上面図
【図5】本発明のシリンジおよびシリンダホルダの1形態を示す図である。(a)シリンジ装着前の様子を、シリンジの後面から見た図(b)シリンジ装着途中の様子を、シリンジの後面から見た図(c)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図
【図6】本出願の開示する他の発明のシリンジの1形態、およびシリンダホルダで保持・固定された状態を示す図である。(a)シリンジ装着の様子を、シリンジの前面から見た図(b)シリンジ装着後の様子を、シリンジの前面から見た図(c)シリンジ装着後の様子の上面図
【図7】本出願の開示する他の発明のシリンジの1形態、およびシリンダホルダで保持・固定された状態を示す図である。(a)シリンジ装着の様子を、シリンジの後面から見た図(b)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図(c)シリンジ装着後の様子の上面図
【図8】本出願の開示する他の発明のシリンジの1形態を示す図である。
【図9】本出願の開示する他の発明のシリンジの1形態を示す図である。
【図10】本出願の開示する他の発明のシリンジの1形態を示す図である。
【図11】自動注入装置にシリンジを装着する様子を示す図である。
【図12】自動注入装置にシリンジを装着した様子を示す図である。
【図13】自動注入装置に、アダプタを用いてシリンジを装着する様子を示す図である。
【図14】自動注入装置にシリンジを装着した様子を示す図である。
【図15】図11で示した自動注入装置のシリンダホルダによるシリンジの保持、位置決めを説明する図である。
【図16】2つの可動クランプを備えたシリンダホルダを示す図である。
【図17】2つの可動クランプを備えたシリンダホルダによるシリンジの保持・位置決めを説明する図である。(a)シリンジ装着の様子を、シリンジの後面から見た図(b)シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図(c)シリンジ装着後の様子の上面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、図面を参照して本発明を説明する。尚、本発明の具体例は、図2、図3、図4および図5に示されるものであり、図1、図6、図7、図8、図9、図10に示されるものは、本出願が開示しているその他の発明に関する具体例である。
【0038】
図1は、シリンジのフランジ部にガイドを設けた形態のシリンジ30を示す図であり、(a−1)は、シリンジ装着前の様子を、シリンジの後面から見た図、(a−2)は、シリンジおよびシリンジホルダの上面図、(b−1)は、シリンジ装着後の様子を、シリンジの後面から見た図、(b−2)は、シリンジ装着後の上面図である。
【0039】
この形態では、フランジ22の後面にガイド31が設けられている。一方、シリンダホルダ11の溝14は、フランジ22をはめ込むだけの厚さで形成されているが、ガイド31を含めた厚さよりも狭い溝幅で形成されている。従って、図1(a)に示すように、ガイド31が垂直に向くようにしてフランジをシリンダホルダ11にはめ込む。図1(b)は、フランジ22をシリンダホルダ11にはめ込はめ込んだ様子を示す図である。この例では、シリンダホルダ11のシリンジ側の内側壁面15が直線部分を有しており、一方、ガイド31も直線部分を有しているために、フランジカット部25が上下に来る位置でのみシリンジが固定され、回転が禁止される。従って、フランジが保持される面積が大きく、注入時の受圧面積を大きくとることができる。
【0040】
また、ガイドをフランジ前面側に設けることもできる。図8は、ガイドをフランジ前面側に設けたシリンジを先端側から見た図である。この図に示すようにガイド33をフランジの前面側(シリンジ先端側)に、少なくともガイド33がシリンダホルダ溝にはまらないだけの厚さで設けることにより、図1の例と同じように、フランジカット面25が上下に向いた方向でのみシリンジが装着・固定される。
【0041】
ガイドとしては、直線状部分が有する方が、装着もスムーズに行えるが、図9に示すような複数のドットからなるガイド35でも、位置規定は可能である。また、図10の例のガイド37のように、2つのガイドの間隔を装着側で短くすると装着が容易になる。
【0042】
図2は、フランジ22のフランジカット部25に、位置決め機構と嵌合する凹部として、位置決めカット41を設けたシリンジの例を示す図である。一方、シリンダホルダ側には、位置決めカット41と嵌合する位置決め機構としてのラッチ42を設け、ラッチがコイルバネ43で常に中心方向に押されるようにしておく。図2(a)のような方向で、シリンダホルダに装着した後、手動にて90°回転させると、位置決めカット41とラッチ42がかみ合う位置(図2(b))で、フランジが固定される。このときクリック感があるので、セッティング位置を感触にても確かめることができるので確実性が向上する。尚、本発明においてシリンダホルダとは、溝を有し、その溝によりシリンジのフランジを保持してシリンジを固定する構造をいうものであり、シリンダホルダが注入装置に一体化となっていても、あるいは図13で示したようなアダプタ等のように取り外し可能になっていても、どちらでもよい。
【0043】
図3に、位置決めカット51をフランジ22のフランジカット部25ではなく、円弧部26に設けた例を示す。このような場合は、図3(b)に示すように、ラッチ52をシリンダホルダの横側に設け、ラッチ52がコイルバネ53で中心方向に押されるようにしておくことが好ましい。図3(a)のような方向で、シリンダホルダに装着した後、手動にて90°回転させると、位置決めカット51とラッチ52がかみ合って(図3(b))、フランジが固定される。この図で示すように、ラッチ52を両側に設けると、特に固定位置が安定するので好ましい。
【0044】
図2の例では位置決めカットをフランジカット部に設け、図3の例ではフランジの円弧部分に設けたが、通常のフランジ部とは別に、別途位置決めのための凹部を設けることもできる。図4に、その1例を示す。この例ではフランジの後端面にフランジ補強リブ61を設け、その一部をラッチ63と嵌合するような位置決め部62となるように形成しても良い。ここで、フランジ補強リブ61は、図4(c)に示すように、フランジの後端面を部分的に厚くしたものであり、これによりフランジを強化して破損を防止する。この例でも、図2で示した例と同じように、図4(a)の方向で、シリンダホルダに装着した後、手動にて90°回転させると、クリック感と共に位置決め部62とラッチ63がかみ合って(図4(b))、フランジが固定される。
【0045】
図5は、シリンジとしては図3で示した例と同様に、位置決めカット51をフランジ22の円弧部26に設けたシリンジを用い、一方、シリンダホルダ側に、爪72を備えた爪付き板バネ71を設けた例を示す図である。図5(a)のようにフランジカット部を垂直にしてシリンダホルダに装着した後、図5(b)のようにシリンジを回転させ、さらに図5(c)のように90°回転した位置で、爪72が位置決めカット51とクリック感と共に嵌合して固定される。
【0046】
図6は、図16、図17で示したようなクランプを用いたときの改良された固定方法の例を示す図である。この例のシリンジは、図6(c)に示すようにシリンジ外筒80のフランジ前面に、ガイド81が設けられた構造である。図6(c)のA方向から(先端方向から)見た時のシリンジ装着の様子を図6(a)、(b)に示す。図6(a)に示すように、フランジカット面25を上下に向けて、シリンジを開いた状態のクランプ82に押し込むと、クランプ82が支点83の周りに回転して図6(b)のようにクランプ上部が閉じてシリンジが装着・固定される。ガイド81が設けられていることによりガイド部分はクランプの溝にはまらないので、フランジカット面25の位置が上下に来る以外の位置ではシリンジが装着できない。従って、注入時の受圧面積を大きくとることができる。
【0047】
図7も、図16、図17で示したようなクランプを用いたときの改良された固定方法の例を示す図である。図6で示したシリンジの例では、ガイドをフランジの前面方向に設けたが、図7の例では、図7(c)に示すようにシリンジ外筒90のフランジ後面にリブを設けてガイド91としている。図7(c)のA方向から(後側から)見た時のシリンジ装着の様子を図7(a)、(b)に示す。この場合も同じように、図7(a)に示すようにフランジカット面25を上下に向けてシリンジをクランプ92に押し込むと、クランプ92が支点93の周りに回転して図7(b)のように装着・固定されるが、ガイド91の働きにより、フランジカット面の位置がずれていると装着できない。
【0048】
以上、代表的な例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。また、以上の例では、フランジカット面が上下の位置になったときに受圧面積が最大になったが、シリンダホルダの形態によっては、必ずしもフランジカット面が上下の位置に来なければならないものではなく、適宜変更することができる。
【0049】
また、本発明のシリンジは、注入装置、特に自動注入装置と共に用いることが好ましい。
【0050】
シリンジが、シリンダホルダと係合して、装着されるシリンジの装着方向を規定するガイドを有する場合には、シリンダホルダとして、シリンジと係合してシリンジの装着方向を規定できるものを使用する。そして、図11、図13を用いて説明したような、ピストンホルダおよびピストンホルダの駆動機構を有する自動注入装置と共に使用することにより、粘度の高い薬液であっても容易に注入することができる。特に、薬液として各種造影剤の注入に好適に用いられる。
【0051】
尚、自動注入装置のピストンホルダの構造、駆動機構等は公知のものを使用することができる。
【0052】
さらに、本発明のシリンジは、シリンジ外筒とピストンを組み合わせて用いる一般普及型のシリンジが好ましいが、フランジ面の位置決め固定が必要なシリンジであれば、その他の型であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、粘度の高い液体を高い圧力にて注入するときにも、破損しにくいシリンジ、シリンダホルダ、およびそれらを用いた薬液注入システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 自動注入装置
11 シリンダホルダ
12 ピストンホルダ
13 アダプタ
14 シリンダホルダ溝
15 シリンダホルダ内側壁面
16 クランプ
17 支点
21 シリンジ外筒
22 フランジ
23 ピストン
24 ピストンフランジ
25 フランジカット部
26 円弧部
30 シリンジ
31 ガイド
33 ガイド
35 ガイド
37 ガイド
41 位置決めカット
42 ラッチ
43 コイルバネ
51 位置決めカット
52 ラッチ
53 コイルバネ
61 フランジ補強リブ
62 位置決め部
63 ラッチ
71 爪付き板バネ
72 爪
80 シリンジ外筒
81 ガイド
82 クランプ
83 支点
90 シリンジ外筒
91 ガイド
92 クランプ
93 支点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダホルダ溝によりシリンジのフランジを保持してシリンジを固定するためのシリンダホルダに装着されて、注入装置用として用いることができるシリンジであって、
前記シリンダホルダは、凹部と嵌合しうる位置決め機構が設けられ、
前記シリンジは、この位置決め機構と嵌合する凹部を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
前記凹部は、前記シリンジのフランジに設けられていることを特徴とする請求項1記載のシリンジ。
【請求項3】
前記凹部は、前記シリンジのフランジの後端面を部分的に厚くした強化リブに設けられていることを特徴とする請求項1記載のシリンジ。
【請求項4】
前記位置決め機構は、コイルバネで押されるラッチであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項5】
前記位置決め機構は、爪を有する板バネであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリンジ。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のシリンジのフランジを、シリンダホルダ溝により保持して、前記シリンジを注入装置に固定するためのシリンダホルダであって、
前記シリンジに設けられた凹部と嵌合する位置決め機構を有することを特徴とするシリンダホルダ。
【請求項7】
前記位置決め機構は、コイルバネで押されるラッチであることを特徴とする請求項6記載のシリンダホルダ。
【請求項8】
前記位置決め機構は、爪を有する板バネであることを特徴とする請求項6記載のシリンダホルダ。
【請求項9】
前記シリンダホルダは、前記注入装置と一体となっていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のシリンダホルダ。
【請求項10】
前記シリンダホルダは、前記注入装置に取り外し可能に装着されるアダプタであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のシリンダホルダ。
【請求項11】
前記シリンダホルダは、前記シリンジを前記シリンダホルダに装着した後、90°回転したときに、前記位置決め機構と前記凹部との嵌合が生じることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のシリンダホルダ。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれかに記載のシリンダホルダ、シリンジのピストンを保持し前記シリンダホルダに対して相対的に移動できるピストンホルダ、およびこのピストンホルダを移動させる駆動機構を有する注入装置。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれかに記載のシリンジと、請求項12の注入装置とを備える薬液注入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−99658(P2013−99658A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−42085(P2013−42085)
【出願日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【分割の表示】特願2012−34386(P2012−34386)の分割
【原出願日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【出願人】(391039313)株式会社根本杏林堂 (80)
【Fターム(参考)】