説明

シリンダ内のピストン位置を測定する装置

【課題】シリンダ内のピストンの位置を測定する装置を提供する。
【解決手段】本発明は、軸に沿って延びるシリンダ1内のピストン2の位置を測定する装置に関し、装置は、少なくとも2つの位置センサ3、4を備え、2つの各位置センサは、ピストン2に連結される支持パレット31と一体の第1のセンサ部材20、40と、シリンダ1と一体の第2のセンサ部材10、30とを備え、各位置センサの第1および第2のセンサ部材は、シリンダ1の軸に平行な軸に沿って相互に並進移動するように構成される。第1のセンサ部材20、40が、ボールジョイントリンク50によってピストン2に連結されている同一の支持パレット31と一体化される。本発明の装置を使用することにより、ピストンに伝達される横断方向ひずみをピストンに有することなく、位置センサをシリンダ内に配置できると同時に、ピストンは、円筒バレルの軸の周りの自由な回転を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機エンジンに使用する位置センサを含む、シリンダ内のピストンの位置を測定するための位置センサの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
「線形可変差動変圧器」を意味する英語の頭字語LVDTで当業者には知られている、能動(誘導)線形シフトセンサなどの位置センサは、シリンダ内のピストンの長手方向位置を決定できる。
【0003】
図1を参照すると、LVDT型センサ100は、軸100Aに沿ってステム121に固定された移動強磁性コア120と、固定された変圧器110とを備え、この変圧器は、ステム121の軸100Aと同軸の3つの円筒形コイルから構成され、一次巻線111および二次巻線112、113を画定している。作動中、ステム121は、軸100Aを並進で移動される。コア120は、巻線111、112、113に、磁気誘導によって、巻線の間に、変圧器110内の強磁性コア120の位置に比例する電圧を発生する。この結果、センサ内のステム121の位置が推定される。
【0004】
図2を参照すると、ジャック200内にLVDT型センサを使用していることが見られる。このようなジャック200は、軸200Aに沿って延びるシリンダ201を備え、軸200Aを並進で移動するピストン202が延びている。ピストン202は、下流側端にピストンヘッド202Aを備え、ピストンが通常に案内される場合、このピストンヘッドの外径は、シリンダ201の内径に一致する。
【0005】
記載の残り部分では、ピストン202に関して上流側および下流側の概念が規定される。ピストンは、その上流側端に駆動力を受け、ピストンの下流側部分がシリンダ201内で移動する。言い換えると、上流側が、そこを通過してピストン202が出て行くシリンダ201の側に位置する。
【0006】
LVDT型センサの変圧器210は、シリンダ201の下流側端に固定されており、変圧器210の軸は、シリンダ201の軸200Aに一致する。センサの強磁性コア220は、ステム221に取り付けられ、ステム221は、ピストン202と一体であり、かつ軸200Aに沿って延びる。
【0007】
コア220が、ピストン202と一体であり、変圧器210が、シリンダ201と一体であるため、シリンダ201内のピストン202の位置は、変圧器210内のコア220の位置を測定して推定される。
【0008】
航空学分野では、安全規格は、測定および監視機器に関して高レベルの信頼性を要求する。したがって、ジャックシリンダ内のピストン位置を測定するには、ジャック内に2つのLVDT型センサを設けることにより、センサの一方に不具合が生じても、他方のセンサが測定を実行することが必要である。
【0009】
仏国特許出願公開第2594515号明細書から、ジャックシリンダ内のピストン位置を測定する装置は、2つのLVDT型位置センサを備えることが知られている。
【0010】
図3は、このような装置の概略機能断面図を示し、装置は、ピストン302を備えるジャック300に配置され、ピストン302は、軸300Aに沿ってシリンダ301内を移動する。支持パレット303は、中空ピストン302内で横断方向を固定される。センサコア320、340は、2つのステム321、341に取り付けられ、2つのステム321、341は、パレット303の下流側でその上流側端に固定される。ステム321、341は、軸300Aに平行に延び、コア320、340は、それぞれ同心状に変圧器310、330まで延びる。変圧器310、330は、シリンダ301の下流側端に固定される。
【0011】
ピストン302は、軸300Aを並進で移動するように駆動される。さらに、ピストンは、このような軸300Aの周りに自由に回転しなければならない。この目的を達成するために、仏国特許出願公開第2594515号明細書による装置において、パレット303とピストン302との間に周辺ベアリング350が配置され、これにより、ピストン302が、パレット303およびコア320、340に対して回転運動を伝達することなく、軸300Aの周りに回転駆動されることができる。コア320、340は、ピストン302の並進との一体化、およびそれぞれの変圧器との整列状態を維持する。このようにして、センサは、シリンダ301内のピストン302の位置を測定できる。
【0012】
動作中、ピストン302は、一般に横断方向の力を受ける。この横断方向の力は、ピストンを湾曲させ、ステム321、341を湾曲させることがあり、これらステムの中心をシリンダ301の軸300Aに対して偏らせる。したがって、コア320、340は、もはやそれぞれの変圧器310、330に対して中心が偏り、損傷を受けて、結果的にセンサの寿命を短くし、測定精度を低下させる。
【特許文献1】仏国特許出願公開第2594515号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、シリンダ内のピストンの位置を測定する装置を提供することを目的とし、装置は、装置の信頼性を提供するために2つのLVDT型センサを備えることが可能であり、ピストンをその軸の周りに自由に回転可能にし、ピストンの任意の湾曲によって損傷を受けない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、軸に沿って延びるシリンダ内のピストンの位置を測定する装置に関し、この装置は、少なくとも2つの位置センサを備え、各位置センサが、
ピストンに連結された支持パレットと一体の第1のセンサ部材と、
シリンダと一体の第2のセンサ部材とを備え、
各位置センサの第1のセンサ部材および第2のセンサ部材が、シリンダの軸に平行な軸に沿って相互に並進で移動するように構成され、第1のセンサ部材が、ボールジョイントリンクによってピストンに接続される同一の支持パレットと一体化されることを特徴とする。
【0015】
「ボールジョイントリンク」によって、2つのセンサ部材間の連結は、3つのレベルの回転自由度を含み、並進しないことが理解される。
【0016】
本発明の装置を使用すれば、シリンダに伝達されるピストンの横断方向ひずみを有することなく、位置センサをシリンダ内に配置可能であり、一方で、ピストンは、シリンダの軸の周りの自由な回転を維持する。したがって、シリンダ内のピストン位置の測定は、センサに損傷を与える危険なく正確になされる。
【0017】
本発明は、2つの位置センサ装置に生じる特定の問題を克服するが、3つ以上のセンサを有する装置にも同様に適用できる。
【0018】
さらに、仏国特許出願公開第2594515号明細書の装置に関連するベアリングの抑制により、装置のメンテナンスを容易にすることができ、ボールジョイントが詰まる傾向は少ない。
【0019】
さらに詳細には、本発明は、ジャックに適用されるが、より一般には、並進移動するピストンが延びるシリンダを備える任意の装置に適用される。したがって、本発明は、例えば、流体の流量を調節するために、シリンダ内で駆動される2つのヘッドを有するピストンを備える計量装置に適用される。このような計量装置は、以下でさらに詳細に説明される。
【0020】
好ましくは、位置センサは、LVDT型センサである。このような場合に有利には、第1のセンサ部材は、強磁性コアを支持するステムを備え、第2のセンサ部材は、変圧器を備える。
【0021】
好ましくは、ボールジョイントリンクは、球形フランジ内に支持される球体を備える。球体は、ピストンと一体であるか、または第1のセンサ部材と一体であるかのいずれでもよい。
【0022】
別の実施形態によれば、球形フランジは、第1のセンサ部材と一体の部分に圧着される。
【0023】
本発明はまた、シリンダ、ピストン、および上記に示したような測定装置を備えるアセンブリと、このようなアセンブリを備える航空機エンジンとに関する。
【0024】
本発明はさらに、ジャックまたは計量装置に関する。
【0025】
本発明は、添付図面を参照する、本発明の装置の好ましい実施形態の以下の記載から詳細に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図4を参照すると、ジャックは、軸Xに沿って延びるシリンダ1を備え、シリンダ1には、ピストン2が挿入される。ピストン2は、その外径がシリンダ1の内径に一致するピストンヘッド2Aを備える。ジャックは、シリンダ1に対するピストン2の位置を測定する装置を備え、この装置は、LVDT型位置センサ3、4を備える。
【0027】
各センサ3、4は、上述のとおり、変圧器10、30と協働する強磁性コア20、40を備える。変圧器10、30は、シリンダ1内に軸Xに沿って長手方向に配置され、シリンダの下流側端に固定される。変圧器10、30は、シリンダ1内を長手方向に延びる保護ジャケット60で囲まれ、ジャケット60の下流側端は、シリンダ1の下流側端と一体に固定される。ジャケット60は、ピストン2内部を同心状に延び、ピストン2は、下流側端に、ジャケット60の通過開口6を備える。
【0028】
センサ3、4の各コア20、40は、軸Xと平行で、対応する変圧器10、30に整列しているステム21、41によって支持され、変圧器内に、同心状に延びるように配置される。ステム21、41の上流側端は、ピストン2内に横断方向に配置された支持パレット31の下流側端と一体で固定される。パレット31は、全体としてデスク形状を有する。
【0029】
図5を参照すると、ピストン2は中空であり、すなわち、シリンダ1内を長手方向に延びるシース形状を有する。コア20、40を支持するパレット31は、リンク手段、ここでは、ボールジョイントリンクによって、ピストン2に連結されており、連結は、ピストン2により形成されるシースの内部でなされる。ボールジョイントリンク50のために、パレット31は、ピストン2に対して3つのレベルの自由度に従って自由に回転するが、軸Xの並進ではピストン2との一体化を維持する。
【0030】
ここでは、ボールジョイントリンク50は、球形シェルの形状を有する球形フランジ52内に取り付けられた球体51を備える。このような球形フランジ52はまた、当業者には知られており、用語「ケージ」により参照される。球形フランジの機能は、フランジと一体に並進するが、自由に回転する球体51を支持することである。球体51は、ピストン2と一体とされ、フランジ52は、パレット31と一体とされる。
【0031】
ここで、球体51は、フィンガ511を支持し、このフィンガ511は、上流側に延び、ピストン2と一体に固定される。有利には、球形フランジ52は、パレット31の上流側から下流側に長手方向に延びる円筒部分37に圧着され、円筒部分37の自由端は、球形フランジ52上に折り曲げられ、球形フランジを支持して固定している。
【0032】
本発明の手段の構造を記載したが、次に、本発明の動作および実施が記載される。
【0033】
ジャックの動作では、ピストン2の上流側端は、シリンダ1に対して軸Xを並進で駆動される。ピストン2と一体の球体51は、並進で移動する。球体51は、球体と一体の球形フランジ52、したがって球体が支持しているパレット31およびコア20、40を駆動する。これにより、コア20、40は、それぞれの変圧器10、30内で軸Xを並進で駆動される。変圧器10、30は、シリンダ1と一体である。したがって、シリンダ1内のピストン2の位置は、センサ3、4によって実行される、それらの変圧器10、30内のコア30、40の位置の測定から推定される。
【0034】
さらに、ピストン2は、軸Xの周りを自由に回転する。回転するとき、ピストン2は、球体51を駆動し、球体は、球形フランジ52内で自由に回転する。移動は、コア20、40に伝達されないため、コアは、それぞれの変圧器10、30との整列状態を維持する。このように、ボールジョイントリンク50は、ピストン2がその軸Xの周りを回転するとき、センサ3、4の整列不良を回避することを可能にする。
【0035】
動作中、横断方向の力が、ピストン2の上流側部にさらに加えられることがあり、この結果、ピストン2を湾曲させる。湾曲は、球体51が回転して球形フランジ52に入ることによって補償される。移動は、コア20、40に伝達されないため、コアは、それぞれの変圧器10、30との整列状態を維持する。これにより、横断方向の力が、ピストン2の上流側端に加わるときに、ボールジョイントリンク50は、センサ3、4を保護することを可能にする。
【0036】
ジャックが動作中は、ピストン2は、並進移動およびピストン軸の周りの回転移動を発生する力、またはピストン2を湾曲させる力を受けることがある。ボールジョイントリンク50によって、シリンダ1の軸Xの並進移動だけが、コア20、40に伝達される。
【0037】
ボールジョイントリンク50は、球形フランジ52内部にほこりが入る可能性が少ないため、詰まることが少ない。
【0038】
別の実施形態では、図6を参照すると、球体51’は、パレット31と一体となっており、球形フランジ52’は、ピストン2と一体である。球体51’は、ねじ531が交差する軸穴Xを備え、このねじ531は、センサ3、4のコア20、40を支持するパレット31にねじ込まれる下流側端を有する。ねじ531の上流側端は、ナット532で締め付けられており、これにより、球体51’をパレット31に固定することを可能にする。
【0039】
球形フランジ52’は、ピストン2と一体のナット53とウェッジ54との間で締め付けられたピストン2に固定され、ウェッジ54は、球形フランジ52’の下流側部分に挿入される。
【0040】
本発明をジャックに関して示したが、本発明は、シリンダ内を並進移動するピストンを備えた別のタイプの装置に適用され、別のタイプの装置は、シリンダ、ピストン、および本発明による測定装置を含む、アセンブリを備えた計量装置または航空機エンジンなどである。
【0041】
計量装置では、ピストンは、計量装置のシリンダ内に並進で移動する。2つの径方向穴が、シリンダに設けられ、穴は、それぞれ流体入口と流体出口を画定する。
【0042】
ピストンは、2つのプラグヘッドを備え、プラグヘッドの外径は、シリンダの内径に一致し、シリンダは、シリンダの軸に沿って並進で駆動されるシャフトと同軸でありシャフトに接続される。計量装置の閉じた位置では、ヘッドは完全に穴を塞ぎ、流体連通を防止する。開いた位置では、ピストンは、計量装置のシリンダ内を並進で移動し、これにより、穴の部分的または完全な開放を防ぎ、入口から出口への流体連通を防止する。したがって、ピストンの並進により、流体の流量を「調節する」または「与える」ことができる。
【0043】
ピストンに位置を決定するために、上述の実施形態と同様に、支持パレットが、ピストン内に横断方向に配置され、パレットは、LVDT型位置センサのコアがそれぞれ取り付けられる2つのステムを支持する。コアは、それぞれ、計量装置のシリンダの下流側端に固定された、それぞれの変圧器に整列される。ピストンの下流側端には開口が設けられ、この開口を変圧器が通過することを可能にする。支持パレットは、ボールジョイントリンクによってピストンに連結されており、ボール球体は、例えば、ピストン、および支持パレットに固定された球形フランジに固定される。
【0044】
本発明は、例えば、ピエゾ型容量近接センサ、誘導型近接センサ、ホール効果センサ、あるいは存在または赤外線近接センサなどの近接センサにも同様に適用されることは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】LVDT型位置センサの部分的に分解された概略斜視図を示す。
【図2】従来技術による測定装置のブロック図を示す。
【図3】従来技術による別の測定装置のブロック図を示す。
【図4】本発明による、図5の実施形態の測定装置のブロック図を示す。
【図5】本発明による測定装置のジャックの断面図を示す。
【図6】本発明の別の実施形態による測定装置のジャックの断面図を示す。
【符号の説明】
【0046】
1、201、301 シリンダ
2、202、302 ピストン
2A、202A ピストンヘッド
3、4 位置センサ
6 開口
10、30、110、210、310、330 変圧器
20、40、220、320、340 コア
21、41、121、221、321、341 ステム
31、303 支持パレット
37 円筒部分
50 ボールジョイントリンク
51、51’ 球体
52、52’ 球形フランジ
53、532 ナット
54 ウェッジ
60 ジャケット
100 LVDT型センサ
100A、200A、300A 軸
111 一次巻線
112、113 二次巻線
120 強磁性コア
200、300 ジャック
350 ベアリング
511 フィンガ
531 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に沿って延びるシリンダ(1)内のピストン(2)の位置を測定する装置であって、該装置が、少なくとも2つの位置センサ(3、4)を備え、各位置センサが、
ピストン(2)に連結された支持パレット(31)と一体の第1のセンサ部材(20、40)と、
シリンダ(1)と一体の第2のセンサ部材(10、30)とを備え、
各位置センサの第1のセンサ部材および第2のセンサ部材が、シリンダの軸に平行な軸に沿って相互に並進で移動するように構成されており、
第1のセンサ部材(20、40)が、ボールジョイントリンク(50)によってピストン(2)に接続される同一の支持パレット(31)と一体化されることを特徴とする、装置。
【請求項2】
少なくとも1つの位置センサ(3、4)が、LVDT型センサである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記位置センサの第1のセンサ部材が、強磁性コア(20、40)を支持するステム(21)を備え、第2のセンサ部材が、変圧器(10、30)を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
ボールジョイントリンク(50)が、球形フランジ(52)内に支持された球体(51)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
球形フランジ(52)が、第1のセンサ部材(20、40)と一体である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
球形フランジ(52)が、第1のセンサ部材(20、40)と一体の部分(37)に圧着されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
シリンダ(1)、ピストン(2)、および請求項1から6のいずれか一項に記載の測定装置を備える、アセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載のアセンブリを備える、航空機エンジン。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の測定装置を備える、ジャック。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の測定装置を備える、計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−185587(P2008−185587A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−16074(P2008−16074)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(502150878)イスパノ・シユイザ (44)
【Fターム(参考)】