説明

シルカゲル及び回転式除湿ロータ

【課題】耐水熱性に優れるシリカゲルを提供すること。
【解決手段】遷移金属又は卑金属を含有し、ナトリウム含有量がNaOとして、0〜0.2質量%であるシリカゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐水熱性に優れ、除湿剤として好適なシルカゲル及び回転式除湿ロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリカゲルやゼオライト等の吸湿剤を担持させたハニカム構造体が、除湿素子として広く使用されている。シリカゲルとゼオライトとを比較すると、一般的には相対湿度が低い場合にはゼオライトの方が吸湿量は多く、相対湿度が高い場合にはシリカゲルの方が吸湿量は多くなる。また、シリカゲルの中でも、A形シリカゲルは相対湿度が低い場合の吸湿量は比較的多いものの、相対湿度が高くなるに従って吸湿量は頭打ちとなり、B形シリカゲルは概ね相対湿度90%以下では、吸湿量が非常に低く、相対湿度90%を越えるような高相対湿度の場合に非常に高い吸湿量を示す。
【0003】
一方、特開2001−9231号公報には、シリカゲルとしての酸化ケイ素90.0〜99.9質量部に対し、酸化鉄もしくは酸化鉄と他の金属酸化物との混合物0.1〜10.0質量部が配合された除湿剤が開示されている。この除湿剤は湿度環境にかかわらず、高い吸湿性能を有する。
【0004】
近年、被処理空気から露点−20℃程度の乾燥空気を製造する回転式除湿ロータが知られている。回転式除湿ロータは、一般に除湿剤としてシリカゲルが担持されたハニカム状のロータ素子と、ロータ素子の端面を処理ゾーン、再生ゾーンに区画する固定プレートとからなるもので、ロータ素子は例えば1時間当たり数回〜50回前後で回転し、処理ゾーンで素子の除湿剤(シリカゲル)が空気中の水分を吸着、再生ゾーンで70℃以上の熱風で吸着した水分を脱着再生し、これを繰り返すことで空気中の水分を除湿する。このため、回転式除湿ロータで使用される除湿剤(シリカゲル)には、再生ゾーンでシリカゲル表面に水が吸着(存在)した状態で70℃以上の熱に晒されることになり、長期間運転すると水と熱の影響でシリカゲルの性能が低下するという問題があった。このことから除湿剤の耐水熱性が要求される。
【特許文献1】特開2001−9231号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、耐水熱性に優れるシリカゲル及び回転式除湿ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、遷移金属又は卑金属を含有し、ナトリウム含有量がNaOとして、0〜0.2質量%であるシリカゲル(除湿剤)が、耐水熱性に優れること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、遷移金属又は卑金属を含有し、ナトリウム含有量がNaOとして、0〜0.2質量%であることを特徴とするシリカゲルを提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記シリカゲルを担持したシリカゲル素子を備えることを特徴とする回転式除湿ロータを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリカゲルは、耐水熱性が顕著に優れ、その結果乾湿繰り返し耐久性も向上する。このため、1時間当たり数回〜数十回前後で回転し、除湿、再生及び冷却が繰り返される回転式除湿ロータの除湿剤としての使用に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のシリカゲルは、遷移金属又は卑金属を含有し、ナトリウム含有量がNaOとして、0〜0.2質量%である。遷移金属又は卑金属を含有し、ナトリウム含有量が0.2質量%を越えるものは、耐水熱性が低下し、結果として乾湿繰り返し耐久性も低下する。ナトリウム含有量0は測定限界値を言う。
【0011】
本発明のシリカゲルは、遷移金属又は卑金属がドープされたものである。遷移金属又は卑金属を導入することでシリカゲル中のナトリウム量が多くても耐水熱性が優れたものを得ることができる。また、遷移金属又は卑金属を導入することでシリカゲルの吸脱着特性が向上する。吸脱着特性とは吸着量が多く、脱着し易い特性を言う。なお、遷移金属又は卑金属を含まないシリカゲルは、ナトリウム含有量が測定限界以下でも耐水熱性が低下する。具体的には、本発明のシリカゲルは、シリカゲルとしての酸化珪素に対して、遷移金属又は卑金属の酸化物が配合されている。遷移金属又は卑金属の酸化物の配合量としては、概ね酸化珪素100質量部中、0.1〜10.0質量部である。
【0012】
遷移金属としては、鉄、チタン、ジルコニアが挙げられる。卑金属としてはアルミニウムが挙げられる。本発明のシリカゲルは、遷移金属がドープされたものが好ましく、特に鉄がドープされたものが吸脱着特性が高い点で好ましい。
【0013】
本発明のシリカゲルは、比表面積が550〜1000m/gが好ましく、特に650〜900m/gが好ましい。本発明のシリカゲルは、105℃×100%、0.12MPa、48時間での耐水熱性試験における比表面積の低下率(劣化率)は25%以下、特に22%以下である。市販のシリカゲルの水蒸気劣化量は概ね30〜70%であり、本発明のシリカゲルの耐水熱性が高いことが判る。
【0014】
次に、本発明のシリカゲルの製造方法(第1の製造方法)を説明する。上記シリカゲルを製造するには、シリカゲルを洗浄して、シリカゲル中のナトリウム分を低減する工程と、原料のシリカゲルに遷移金属又は卑金属を導入する工程とを行えばよい。
【0015】
原料のシリカゲルとしては、A型シリカゲル、B型シリカゲルあるいはそれ以外の公知のシリカゲルが挙げられる。これらのシリカゲルは市販のものが使用できる。
【0016】
シリカゲルを洗浄して、シリカゲル中のナトリウム分を低減する工程は、シリカゲル中に残存するナトリウムを、シリカゲル中、例えば0.2%質量以下となるまで洗浄除去する工程である。洗浄は酸洗浄および水洗浄を行なうことが、酸洗浄でシリカゲル中に残存するナトリウム分を、水洗浄でゲル内の硫酸ナトリウム及び過剰な酸を確実に除去できる点で好ましい。酸洗浄は、例えば被洗浄物のシリカゲルをpH0.2の硫酸水溶液中に室温で、10分程度浸漬し、これを数回行えばよい。
【0017】
第1の製造方法において、原料のシリカゲル中に0.2質量%を越える量のナトリウムが含有されている場合には、酸による洗浄を行い、ナトリウムを低減させる。この時、ナトリウム含有量は0.2質量%以下にすることが望ましいが、ナトリウム含有量が0.2質量%を越える量であっても、その後の遷移金属又は卑金属を導入する工程で残存ナトリウム分を除去して、ナトリウム含有量を0.2質量%以下としてもよい。
【0018】
シリカゲルに遷移金属又は卑金属を導入する工程は、ナトリウム量が低減されたシリカゲルを、遷移金属塩又は卑金属塩を含む溶液に浸漬する工程である。遷移金属又は卑金属をシリカゲルに導入することで、残存ナトリウム分を除去すると共に、吸脱着特性を高めることができる。また、残存ナトリウム分が少なくなるため、耐水熱性が向上する。
【0019】
遷移金属としては、前記シリカゲルの遷移金属と同様のものが挙げられる。また、遷移金属塩は、硫酸の遷移金属塩が好ましく、特に硫酸鉄が好ましい。卑金属としては、前記シリカゲルの卑金属と同様のものが挙げられる。また、卑金属塩は、硫酸の卑金属塩が好ましく、特に硫酸アルミニウムが好ましい。また、遷移金属塩又は卑金属塩はそれぞれ1種又は2種の組み合わせであってもよい。また、遷移金属塩と卑金属塩を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
遷移金属塩として硫酸鉄を使用した場合の浸漬条件としては、硫酸鉄5〜20%溶液、浸漬温度30〜60℃、浸漬時間5〜60分、pHは成り行きである。卑金属塩として硫酸アルミニウムを使用した場合の浸漬条件としては、硫酸アルミニウム5〜20%溶液、浸漬温度30〜60℃、浸漬時間5〜60分、pHは成り行きである。上記の浸漬条件であれば、シリカゲルとしての酸化珪素100質量部中、遷移金属又は卑金属の酸化物0.1〜10質量部を導入することができる。
【0021】
本発明のシリカゲルは、上記第1の製造方法以外の方法(第2の製造方法)で製造することができる。すなわち、第2の製造方法は、珪酸ナトリウム水溶液からなる液滴を乾燥して半固形状の液滴乾燥物を得るI工程、I工程で得られた液滴乾燥物をゲル化するII工程、II工程で得られたシリカヒドロゲル中に残存するナトリウムを洗浄除去するIII工程、洗浄されたシリカヒドロゲルを遷移金属塩又は卑金属塩を含む溶液に浸漬するIV工程、IV工程で得られた遷移金属又は卑金属ドープシリカヒドロゲルを水洗するV工程を有する。
【0022】
I工程は、珪酸ナトリウム水溶液からなる液滴を、好ましくは保水率50〜150%、特に好ましくは70〜120%となるように乾燥して半固形状の液滴乾燥物を得る工程である。なお、保水率100%は珪酸ナトリウムの質量と水の質量が同じであることを意味する。珪酸ナトリウム水溶液は従来のシリカゲルの合成において使用されるものが、同様に使用できる。
【0023】
液滴乾燥物は、フッソ樹脂シートなどの撥水性シート上に珪酸ナトリウム水溶液を滴下することで得られる。乾燥条件は、液滴の保水率が上記の範囲となるような条件であり、具体的には、70〜110℃の乾燥機中、1〜5分である。液滴乾燥物の保水率が上記範囲であれば、相対的に表層部の保水率が低く、内部の保水率が高い半固体又は固体に近いものとすることができ、これをゲル化させることで、相対的に表層部の細孔径が小さく、中心部の細孔径が大きいシリカゲルが得られ、これにより相対湿度が高い場合と低い場合の双方の場合の吸湿量が共に優れたものとなる。
【0024】
半固形状の液滴乾燥物中の水分量は、乾燥前後の重量測定結果から求めることができる。半固形状の液滴乾燥物は、最大長さが0.5〜10mm程度であり、最大長さが小さ過ぎると、求める細孔分布が得られない点で好ましくなく、直径が大き過ぎると、内部までゲル化させることができない点で好ましくない。半固形状の液滴乾燥物の最大長さは、液滴乾燥物を上から見た場合の(平面視)最大長さを言う。
【0025】
半固形状とは流動性がない状態を言い、撥水性シートを傾斜させても流れ出すことがない。また、液滴乾燥物は撥水性シートに付着しているため、ゲル化液中へ撥水性シートごと浸漬すればよく、浸漬方法も容易である。このように、ゲル化させる前の珪酸ナトリウム原料を溶液として使用しない点で従来の合成法とは大きく相違する。
【0026】
II工程はI工程で得られた液滴乾燥物をゲル化する工程である。すなわち、II工程は、液滴乾燥物を酸水溶液に浸漬することで珪酸ナトリウムから脱ナトリウムし、シリカヒドロゲルとする工程である。酸水溶液としては、硫酸水溶液又は塩酸水溶液が挙げられ、pHは0.5〜1.8、好適には0.8〜1.3である。酸水溶液には硫酸アンモニウム等のpH調整剤が含まれていてもよい。
【0027】
酸水溶液として硫酸−アンモニア溶液を使用した場合の好適な浸漬条件は、pH0.5〜1.8において浸漬温度が20〜45℃、15分以上、特にpH0.7〜1.5において浸漬温度が25〜43℃、15〜50分、更にpH0.8〜1.3において浸漬温度が30〜42℃、15〜50分である。上記範囲内であれば、最終的に得られるシリカゲルの比表面積が550m/g以上のものとなる点で好ましい。
【0028】
II工程は、上記のゲル化処理により、10nm以上の大きな細孔が多く存在するシリカヒドロゲルを得ることができる。このような大きな細孔を含むシリカヒドロゲルが形成される理由は、pH値が高い珪酸ナトリウムの液滴乾燥物の表面からpH0.5〜1.8の酸水溶液が内部に浸透し、表面から脱ナトリウムしてゲル化が進行するという特有のゲル化作用によるものと思われる。II工程で得られるシリカヒドロゲルの細孔分布は、細孔径が2〜50nm、平均細孔直径7〜9nm、比表面積が100〜150m/gのブロードな細孔分布を有する。
【0029】
III工程は、II工程で得られたシリカヒドロゲル中に残存するナトリウムを洗浄除去する工程である。洗浄は酸洗浄および水洗浄の2工程を行なうことが、前工程でシリカヒドロゲル中に残存するナトリウム分を、後工程でゲル内の硫酸ナトリウム及び過剰な酸を確実に除去できる点で好ましい。酸洗浄は、pH0.7〜0.8の硫酸水溶液を、15〜25℃の温度下、10分程度行うことが好適である。III工程で得られるシリカヒドロゲルの細孔分布は、細孔径が2〜50nm、平均細孔直径3.5〜7nm、比表面積が200〜450m/gのブロードな細孔分布を有する。III工程で得られるシリカヒドロゲルの平均細孔直径は、II工程で得られるシリカヒドロゲルよりも小さく、比表面積は大きくなる。
【0030】
IV工程は、III工程で得られた洗浄シリカヒドロゲルを、遷移金属塩又は卑金属塩を含む溶液に浸漬する工程である。遷移金属又は卑金属をシリカゲルヒドロゲルに導入することで、残存ナトリウム分を除去すると共に、吸脱着性能を高めることができる。また、シリカゲル中のナトリウム量が多くても耐水熱性が高いものを得ることができる。
【0031】
遷移金属及び卑金属としては、前記シリカゲルの遷移金属及び卑金属と同様のものが挙げられる。また、遷移金属塩及び卑金属塩は、硫酸の遷移金属塩又は卑金属塩が好ましく、特に硫酸鉄や硫酸アルミニウムが好ましい。また、これらの金属塩は1種又は2種の組み合わせであってもよい。これらの金属塩として硫酸鉄、硫酸アルミニウムを使用した場合の浸漬条件は、前記第1の製造方法における金属塩として硫酸鉄、硫酸アルミニウムを使用した場合の浸漬条件と同様である。
【0032】
V工程は、IV工程で得られた遷移金属又は卑金属ドープシリカヒドロゲルを水洗し、余剰の遷移金属等を除去する工程である。この工程により、遷移金属又は卑金属ドープシリカヒドロゲル内に残存する余分な塩が除去される。水洗工程後のシリカヒドロゲルは、公知の乾燥条件により乾燥され、本発明のシリカゲルとなる。
【0033】
第2の製造方法のIII工程において、ナトリウム含有量は0.2質量%以下にすることが望ましいが、ナトリウム含有量が0.2質量%を越える量であっても、その後のIV工程の遷移金属又は卑金属を導入する工程で残存ナトリウム分を除去して、ナトリウム含有量を0.2質量%以下としてもよい。
【0034】
シリカゲルの第2の製造方法によれば、シリカゲル中の残存ナトリウム分が特定値以下となるため耐水熱性が向上し、その結果乾湿繰り返し耐久性が向上する。また、pHの高い珪酸ナトリウムの液滴乾燥物をpHの低い酸溶液に浸漬してシリカヒドロゲルを得るため、シリカヒドロゲル内部に大きな細孔を形成できる。そして、内部に大きな細孔を有するシリカヒドロゲルに遷移金属又は卑金属をドープするため、大きな細孔を内部に有したまま、表面部に小さな細孔を形成できる。このため、当該方法で得られたシリカゲル又はその粉砕物は、従来にないユニークな細孔構造を有するため、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高いものとなる。
【0035】
本発明の回転式除湿ロータは、本発明のシリカゲルを担持したシリカゲル素子を備えるものである。回転式除湿ロータは、本発明のシリカゲルが除湿剤として繊維質担体に担持されたハニカム状のロータ素子と、ロータ素子の端面を少なくとも除湿ゾーンと再生ゾーン、好適には、除湿ゾーン、再生ゾーン及び冷却ゾーンに区画する固定プレートとからなる。本発明の回転式除湿ロータは、シリカゲル以外は公知の構造のものが適用でき、ロータ素子を回転駆動する駆動手段と、被処理空気を除湿ゾーンに通過させて乾燥空気を供給する供給経路と、再生空気を冷却ゾーンに通過させた後、加熱して該再生ゾーンに通過させる排気経路などを備えたものである。
【0036】
本発明の回転式除湿ロータにおいて、除湿剤として使用するシリカゲル粉末の平均粒径は1.0〜10μm、好ましくは2〜8μmである。該シリカゲル粉末の平均粒径が、小さ過ぎると、繊維質担体である繊維間空隙に対する該シリカゲル粉末の大きさが、小さくなり過ぎるため、該シリカゲル粉末が、該繊維間空隙から抜け易くなり、繊維質担体から脱落し易くなり、また、該シリカゲル粉末の平均粒径が大き過ぎると、該シリカゲル粉末が大き過ぎるので、シリカゲル内部への水分の拡散速度が低くなるため、又は繊維質担体との接着面積が多くなり過ぎるため、吸湿性能が低くなり易い。
【0037】
本発明の回転式除湿ロータにおいて、ロータ素子は例えば1時間当たり数回〜50回前後で回転し、処理ゾーンで素子のシリカゲルが空気中の水分を吸着、再生ゾーンで70℃以上の熱風で吸着した水分を脱着再生し、これを繰り返すことで空気中の水分を除湿する。このため、再生ゾーンでシリカゲル表面に水が吸着(存在)した状態で70℃以上の熱に晒され、且つ長期間運転しても、除湿剤の性能が低下することがなく、除湿剤の交換頻度が低減でき好都合である。また、第2の製造方法で製造されたシリカゲルは、低湿度及び高湿度での吸湿量が共に顕著に高いため、回転式除湿ロータに好適である。
【0038】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0039】
(シリカゲルの合成)
SiO/NaO(モル比)=3の珪酸ナトリウム(JIS 3号)水溶液を、フッ素樹脂のシート上に、ノズルから30μLづつ滴下して、多数の液滴を形成した。液滴は適宜の間隔で形成した。次いで、110℃の乾燥機中、2分間保持して保水率100%の半固形状の液滴乾燥物を得た(I工程)。
【0040】
I工程で得られたフッ素樹脂シート上の液滴乾燥物を、フッ素樹脂シートから分離し、pH1の10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間浸漬した(II工程)。II工程により、液滴乾燥物の珪酸ソーダは脱ナトリウムされ、シリカヒドロゲルとなった。
【0041】
次いで、II工程で得られたシリカヒドロゲルを、2%硫酸溶液中に20℃、10分浸漬し酸洗浄した。次いで、酸洗浄済みのシリカヒドロゲルをさらに水洗した(III工程)。水洗条件は、シリカヒドロゲルを水に20℃、10分浸漬した。
【0042】
次いで、III工程で得られた洗浄シリカヒドロゲルをpH1.2の10%硫酸鉄溶液に35℃、30分浸漬した(IV工程)。また、得られた硫酸鉄処理シリカヒドロゲルは、更に水洗した(V工程)。その後、110℃、3時間乾燥処理を行い鉄を含有したシリカゲルAを得た。
【0043】
実施例1においては、酸浸漬と水洗を数回繰り返すことにより、シリカゲル中のNaO含有量を0.16質量%とした。鉄を含有したシリカゲルAについて、下記の耐水熱性評価試験を行った。その結果、耐水熱性評価試験前後のシリカゲル比表面積の低下率は23%であった(表1参照)。
【0044】
(耐水熱性評価試験)
シリカゲルを105℃×100%、0.12MPaの水蒸気雰囲気下に48時間晒し、水蒸気処理前後の比表面積を測定し、水蒸気処理後の比表面積の低下率を測定することで評価した。すなわち、比表面積の低下率(%)=((水蒸気処理前の比表面積m/g)−(水蒸気処理後の比表面積m/g))×100/(水蒸気処理前の比表面積m/g)で求めた。
【実施例2】
【0045】
実施例1のII工程における10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間の浸漬条件に代えて、10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、90分間の浸漬条件とした以外は、実施例1と同様の方法で鉄を含有したシリカゲルBを合成した。
【0046】
得られたシリカゲルBのNaO含有量は0質量%(未検出)であった。同様に耐水熱性評価試験を行った結果、その耐水熱性評価試験前後のシリカゲル比表面積の低下率は26%であった(表1参照)。
【実施例3】
【0047】
IV工程における10%硫酸鉄溶液に代えて、10%硫酸アルミニウム溶液とした以外は、実施例1と同様の方法でアルミニウムを含有したシリカゲルCを合成した。
【0048】
得られたシリカゲルCのNaO含有量は0.06質量%であった。同様に耐水熱性評価試験を行った結果、その耐水熱性評価試験前後のシリカゲル比表面積の低下率は25%であった(表1参照)。
比較例1
【0049】
実施例1のII工程における10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間の浸漬条件に代えて、10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、30分間の浸漬条件としたこと、実施例1のIII工程における酸洗浄と水洗浄に代えて、水洗浄のみとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で鉄を含有したシリカゲルDを合成した。
【0050】
得られたシリカゲルDのNaO含有量は1.6質量%であった。同様に耐水熱性評価試験を行った結果、その耐水熱性評価試験前後のシリカゲル比表面積の低下率は44%であった(表1参照)。
比較例2
【0051】
実施例1のII工程における10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間の浸漬条件に代えて、10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、50分間の浸漬条件としたこと、実施例1のIII工程における酸洗浄と水洗浄に代えて、水洗浄のみとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で鉄を含有したシリカゲルEを合成した。
【0052】
得られたシリカゲルEのナトリウム含有量は0.6質量%であった。同様に耐水熱性評価試験を行った結果、その耐水熱性評価試験前後のシリカゲル比表面積の低下率は30%であった(表1参照)。
比較例3
【0053】
実施例1のII工程における10%硫酸−アンモニア溶液中に35℃、60分間の浸漬まで実施した後、実施例1のIII及びIV工を実施せず、水洗を行い、鉄を含有しにないシリカゲルFを合成した。
【0054】
得られたシリカゲルFのNaO含有量は0.9質量%であった。同様に耐水熱性評価試験を行った結果、その耐水熱性評価試験前後のシリカゲル比表面積の低下率は33%であった(表1参照)。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の結果から、実施例であるシリカゲルA〜Cは、耐水熱性評価試験に優れる。一方、比較例であるシリカゲルD〜Fは、耐水熱性評価試験に劣る。このため、シリカゲルA〜Cを除湿剤とした担持したロータ素子を備える回転式除湿ロータの場合、長期間運転しても、除湿剤の性能が低下することがなく、除湿剤の交換頻度が低減できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属又は卑金属を含有し、ナトリウム含有量がNaOとして、0〜0.2質量%であることを特徴とするシリカゲル。
【請求項2】
該遷移金属が、鉄であることを特徴とする請求項1記載のシリカゲル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシリカゲルを担持したシリカゲル素子を備えることを特徴とする回転式除湿ロータ。

【公開番号】特開2009−242155(P2009−242155A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89606(P2008−89606)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】