説明

シロキサン除去装置

【課題】シロキサンを効率よく分解、除去させることで吸着剤の寿命を延ばし、シロキサンを安価かつ安定して除去することを課題とする。
【解決手段】シロキサンを吸着する吸着剤2を備えたシロキサン処理部本体1と、このシロキサン処理部本体1にオゾンを導入するオゾン導入部3とを具備し、吸着剤2に吸着したシロキサンをオゾンによって分解、除去することを特徴とするシロキサン除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシロキサン除去装置に関し、特に半導体工場、下水処理場で発生するシロキサンの除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止策の一つとしてCOの排出量の削減が推進されており、半導体工場や下水処理場においても、発電設備を設置して電力を自給自足、さらには売電することによってエネルギーを利用し、同時にCOの排出量の削減を図るケースが増加しつつある。
【0003】
即ち、下水処理場では、集積した下水を濃縮処理して得た汚泥を微生物の作用によって嫌気性消化し、この過程で得られたメタンを主とする可燃性の消化ガスを、ガスエンジンやガスタービン等の発電設備に供給して電力を得る方式を採るのが一般的となりつつある。
【0004】
しかしながら、近年、シャンプーやリンス等の頭髪仕上げ剤、カーワックス等の撥水剤などの消費量が増加し、これらに含まれるシロキサン化合物が下水処理場に流入する下水中に多量に流下するようになってきた。
【0005】
これらのシロキサン化合物の多くは、水に不溶であるため、汚泥に吸着した形で下水中に存在するが、消化過程では消化ガス側に揮散する。したがって、消化ガス中に含まれるシロキサン化合物の除去処理を行わないと、シロキサン化合物が消化ガスのメタンとともに発電用の燃料ガスとしてエンジンに流入し、エンジン内の燃焼室でシリカ(SiO)となってエンジン内のシリンダーヘッドやその他の構成部品に付着・析出し、磨耗を生じてエンジンが劣化してしまうという不具合が生じることとなる。
【0006】
一方、半導体工場ではフッ素系化合物の使用することによってシロキサンが発生し、そのシロキサンが空調から拡散されて露光装置などのレンズ上などに堆積することで性能劣化を引き起こすことが知られている。
例えば、特許文献1に記載の燃料電池発電システムでは、メタン発酵工程で生成した消化ガスを改質して含水素ガスを製造するガス処理工程において、消化ガス中の酸化ガスを吸着及び/又は吸収除去する前処理を行うことによってシロキサン化合物を除去している。また、特許文献2に記載の消化ガス発電設備では、下水汚泥消化ガスをガスエンジンに燃料として供給し、発電するものにおいて、消化ガスを予め精製装置に送り、吸着剤に接触させる等の処置を行ってシロキサン化合物を除去している。
【0007】
なお、シロキサン化合物とは、シロキサン結合(Si−O−Si)を基本骨格とした鎖状または環状構造の化合物をさす。鎖状化合物としては、例えばメトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、およびドデカメチルペンタシロキサンが挙げられる。環状化合物としては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3体)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4体)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5体)、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6体)が挙げられる。ここに列挙した化合物は、化合物中の官能基がメチル基で構成されているが、メチル基に類する炭化水素基で置換された化合物、または水素の代わりにフッ素、塩素等で置換された化合物も含まれ、さらには分子量の大きい多重合化合物も存在する。
【特許文献1】特開2001−23677号公報
【特許文献2】特開2002−138851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、従来、空気中のシロキサンを吸着させるだけで頻繁に吸着剤を交換しなければいけなかったのに対し、シロキサンを効率よく分解、除去させることで吸着剤の寿命を延ばし、シロキサンを安価かつ安定して除去し得るシロキサン除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、オゾンによってシロキサンが容易に効率よく分解できることを見出し、またオゾンによって吸着剤に吸着したシロキサンを分解、除去することで吸着剤が再生処理され、吸着剤の寿命を延ばすことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のシロキサン除去装置は、シロキサンを吸着する吸着剤を具えたシロキサン処理部本体と、このシロキサン処理部本体にオゾンを導入するオゾン導入部とを具備し、吸着剤に吸着したシロキサンをオゾンによって分解、除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体工場や下水処理場などで発生したシロキサンを、効率よく分解、除去させることで吸着剤の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のシロキサン除去装置について更に詳しく説明する。
本発明において、吸着剤としては、オゾンを分解できるオゾン分解触媒を含むことが好ましい。吸着剤としては、例えば活性炭、二酸化マンガン,ゼオライト,モレキュラーシーブ,酸化チタン,活性アルミナのいずれか単体、あるいはそれらの組合せが挙げられる。上述したように、オゾン分解触媒を含んだ吸着を用いることにより、触媒上でオゾンが酸素原子と酸素分子に分解されるので、活性能力が高くなり、シロキサンを効率よく分解することができる。
【0013】
本発明において、シロキサン処理部本体に設けられた空気循環用のファンを更に具備し、シロキサンを含むガスをファンにより吸着剤に集めることが好ましい。これにより、空調のない部屋や空間においてもシロキサンを含む被処理ガスを処理することが可能となる。なお、ファンの取り付け位置は、吸着剤の裏側、表側のいずれでもよい。また、ファンの形状は、シロッコファン、プロペラファン、ルーツブロアーファン等、いずれでもよい。
【0014】
また、シロキサンを含むガスに対し、オゾンを連続的にシロキサン処理部本体に供給する場合(前者)、あるいはオゾンを間歇的にシロキサン処理部本体に供給する場合(後者)が考えられる。後者の場合、シロキサンが吸着剤に充分に吸着した後にオゾンを供給することで、オゾン又はオゾンが分解して生成した酸素原子とシロキサンの反応する確率が高くなる。
【0015】
本発明において、吸着剤の上流側に設けられたフィルターを更に具備し、無機物や油からフィルターを保護することが好ましい。フィルターとしては、例えばヘパフィルター、ウルパヘルパーが微粒子まで除去できるので望ましい。フィルターの素材としては、オゾンが存在することからステンレスメッシュを使用することが防錆の効果上好ましい。なお、ヘパフィルター、ウルパフィルターは、オゾンによって徐々に素材が劣化していくので、ある程度の期間で交換することが好ましい。上述したように、フィルターを用いることにより、砂やほこり等の無機物、あるいは油煙等の油等から吸着剤を保護することができる。
【0016】
本発明において、シロキサン処理部本体に設けられた吸着剤交換部を更に具備し、吸着剤を自動又は手動により交換することが好ましい。これにより、特に高所や危険箇所に吸着剤交換部を設置することにより、吸着剤の交換作業が容易且つ安全にできる。
【0017】
本発明において、シロキサン処理部本体に設けられたオゾン濃度測定部を更に具備し、一定のオゾン濃度になるようにオゾン濃度を調節することが好ましい。ここで、オゾン濃度測定部は、オゾン濃度を計測するオゾン濃度計と、計測したオゾン濃度によりオゾン濃度を制御するオゾン濃度制御部と、オゾンを一定量シロキサン処理部本体に供給する電磁弁とから構成されている。これにより、一定のオゾン濃度になるようにオゾン濃度を調節できるので、一定量のオゾンをシロキサン処理部本体に供給することができる。
【0018】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
(第1の実施形態)
図1を参照する。図中の符番1は、シロキサン処理部本体を示す。このシロキサン処理部本体1には、シロキサンを吸着する吸着剤2が配置されている。ここで、吸着剤としては例えば活性炭が使用され、オゾンを分解できるオゾン分解触媒が含まれている。シロキサン処理部本体1のガス流れの上流側には、処理部本体1内にオゾンAを連続的に導入するオゾン導入部3が配置されている。なお、オゾンは例えば放電式のオゾン発生装置(図示せず)によって発生させ、オゾン導入部3に接続する。シロキサンを含む被処理ガスBはこのシロキサン処理部本体1に導入された後、シロキサンが吸着剤2上に吸着されてオゾンによって分解処理される。
【0019】
第1の実施形態によれば、シロキサン処理部本体1にオゾン分解触媒を含む吸着剤2及びオゾン導入部3を設けているので、シロキサンを含む被処理ガスBとともに、オゾン導入部3からオゾンAが同時に導入され、吸着剤2上でシロキサンが吸着され、シロキサンがオゾンによって分解処理される。即ち、吸着剤2にオゾン分解触媒を含ませることで、触媒上でオゾンが酸素原子と酸素分子に分解され、シロキサンが効率よく分解される。
【0020】
なお、第1の実施形態では、シロキサンを含むガスとオゾンが連続的にシロキサン処理部本体1に導入される場合について述べたが、これに限らず、シロキサンを含むガスに対してオゾンを間歇的に導入してもよい。この場合、シロキサンを吸着剤に充分に吸着した後にオゾンを供給することで、オゾン又はオゾンが分解して生成した酸素原子とシロキサンの反応する確率が高くなる。また、第1の実施形態では、シロキサン処理部本体をそのままの状態で使用する場合について述べたが、これに限らず、オゾンを流すラインをシロキサン処理部本体から外してシロキサン処理を行ってもよい。
【0021】
(第2の実施形態)
図2を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番4は、シロキサン処理部本体1に設けられた空気循環用のプロペラファンを示す。ファン4の取り付け位置は、図2に示すように吸着剤2の表側でもよいし、裏側でもよい。
第2の実施形態によれば、シロキサン処理部本体に空気循環用のプロペラファン4を設けることにより、空調のない部屋や空間においてもシロキサンを含む被処理ガスを処理することが可能となる。
【0022】
(第3の実施形態)
図3を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番5は、シロキサン処理部本体1の内側で吸着剤2の上流側に配置されたフィルターを示す。ここで、フィルター5としてはヘパフィルターが使用されている。
第3の実施形態によれば、シロキサン処理部本体1の内側で吸着剤2の上流側にフィルター5を設けることにより、砂やほこり等の無機物、あるいは油煙等の油等から吸着剤2を保護することができる。
【0023】
(第4の実施形態)
図4を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番6は、シロキサン処理部本体1の内側に配置された吸着剤交換部示す。ここで、吸着剤交換部6には、前記吸着剤2と同種の吸着剤の予備を少なくとも1セット備え、自動又は手動で交換することができるようにしている。
第4の実施形態によれば、高所や危険箇所において吸着剤交換部6を設置することにより、吸着剤の交換作業が容易且つ安全にできる。
【0024】
(第5の実施形態)
図5を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番7は、シロキサン処理部本体1に接続されたオゾン濃度測定部を示す。このオゾン濃度測定部7は、図示しないが、オゾン濃度計とオゾン濃度制御部と電磁弁とから構成されている。このオゾン濃度測定部では、オゾン濃度計によりオゾン濃度を測定し、取得したデータをオゾン濃度制御部に送ることで、一定のオゾンが供給できるように電磁弁を使って制御する。
【0025】
第5の実施形態によれば、オゾン濃度測定部7をシロキサン処理部本体1に接続することにより、一定のオゾンをオゾン処理部本体1に供給することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。具体的には、上記実施形態では、ファンやフィルターや吸着剤交換部、或いはオゾン濃度測定部を単独で使用する場合について述べたが、これらのうち任意のものと適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシロキサン除去装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るシロキサン除去装置の一例を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るシロキサン除去装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係るシロキサン除去装置の一例を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係るシロキサン除去装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…シロキサン処理部本体、2…吸着剤、3…オゾン導入部、4…プロペラファン、5…フィルター、6…吸着剤交換部、7…オゾン濃度測定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサンを吸着する吸着剤を備えたシロキサン処理部本体と、このシロキサン処理部本体にオゾンを導入するオゾン導入部とを具備し、吸着剤に吸着したシロキサンをオゾンによって分解、除去することを特徴とするシロキサン除去装置。
【請求項2】
前記吸着剤は、オゾンを分解できるオゾン分解触媒を含むことを特徴とする請求項1記載のシロキサン除去装置。
【請求項3】
シロキサン処理部本体に設けられた空気循環用のファンを更に具備し、シロキサンを含むガスをファンにより吸着剤に集めることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載のシロキサン除去装置。
【請求項4】
吸着剤の上流側に設けられたフィルターを更に具備し、無機物や油からフィルターを保護することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のシロキサン除去装置。
【請求項5】
シロキサン処理部本体に設けられた吸着剤交換部を更に具備し、吸着剤を自動又は手動により交換することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のシロキサン除去装置。
【請求項6】
シロキサン処理部本体に設けられたオゾン濃度測定部を更に具備し、一定のオゾン濃度になるようにオゾン濃度を調節することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のシロキサン除去装置。
【請求項7】
シロキサンを含むガスに対し、オゾンを連続的若しくは間歇的にシロキサン処理部本体に供給することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載のシロキサン除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161786(P2008−161786A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352772(P2006−352772)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】