説明

シンク取付構造

【課題】フランジ部の外側端からシンクの裏面を伝ってくる水分を途中で遮断できるようにしたシンク取付構造を提供する。
【解決手段】フランジ部12を含むシンク10の上端周縁部11cには、止水用のシール部50が固着、形成されており、接合部40は、隙間3aを含み、カウンター20の開口部23を取り囲むように開口部23近傍のカウンター裏面25に固着された桟材30と、シンク10の側壁上端部11aとの間に形成された空間3に接着剤を充填させて形成され、接合部40には、フランジ部12の折り返し片12bとシール部50とが埋没された構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン等において、カウンターにシンクを組み込んで固定するためのシンク取付構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシンク取付構造においては、シンクをカウンターの下方に取り付けた構造のものが知られている。たとえば、特許文献1に示されたものは、シンクのフランジ部が、カウンターの開口部近傍の裏面で、接着剤によって固着されている。
【0003】
このような構造では、フランジ部や接着剤による接合部はカウンターによって隠され、目地は表面に露出されないため、すっきりとして美観にすぐれた仕上がりとなるが、カウンターと、シンクのフランジ部との接合部には汚れがたまりやすく、さらにその汚れを取り除きにくいという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、上記の問題点を解決するために、カウンターとシンクのフランジ部との接合部を表面に露出させるものを種々試行してきた。これらのものは、カウンターとシンクとの間に、裏面側より接着剤を充填してそれらを接合させ、その接合部の一部が目地を形成して、その目地を表面側のカウンターとシンクとの間に露出させている。このような構成によれば、その目地をはさんでカウンターとシンクとを面一に形成できるので、その目地とともに、表面に露出された部分の清掃はきわめてしやすい。
【0005】
そして、カウンターとシンクとをより強固に接合するために、またフランジ部の強度向上、形状安定のために、フランジ部の外周端に、フランジ部を折り返して垂下させた折り返し片を形成させた態様のものも、本出願人によって試行されてきた。
【0006】
図7は、この種のシンク付きカウンターの接合部の概略縦断面図であり、(a)は接着剤の硬化直後の状態、(b)は所定時間経過後の状態を示す図である。
【0007】
この図に示すように、カウンター120とシンク110とを接合するための接着剤が硬化したときには、シンク110のフランジ部111の折り返し片111bと接着剤による目地101とは隙間なく密着しているが、硬化による収縮や、経時変化などによって、表面側には微細な隙間200ができることがある。特にシンク110をステンレスなどの金属で構成すれば、接着剤(樹脂)との異種材料間での接合となるため、熱膨張係数の差や接着剤樹脂の硬化収縮等により、それら接合界面に微細な隙間を生じることもある。なお、図中の130は、接着剤による接合部140を形成するために、堰としてカウンター120の裏面に設けた桟材である。
【0008】
このような微細な隙間200は、隙間幅が0.05mm以下程度のものであって、しかもフランジ部111の全周のうちわずかに形成される程度であれば、折り返し片111aの全体が接合部140の中に埋没されているため、接合強度が落ちるようなおそれはほとんどない。
【特許文献1】特開2007−222344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような微細な隙間200ができれば、シンク110から水分が浸入してくるおそれは十分にある。特に、接合部140の内部のシンク110との界面には微細な隙間ができやすく、そのような隙間が連成するなどして水分の浸入通路が形成されれば、図中の矢印Rの流れのように、その水分は折り返し片111b、その裏面、フランジ部111の水平部111aの裏面、シンク側壁112の裏面を順次伝って、接合部140の外側へと排出されて、水漏れするおそれもある。
【0010】
また、このように接着剤の裏側からの充填によってカウンターとシンクとを接合するものでは、硬化後に、上記のような微細な隙間ができているかどうかを確認できないし、予測することもできない。よって、かりに接合部の内部に微細な水分の通路ができていても、それを遮断できるような止水構造を有したものが求められていた。
【0011】
なお、上記文献のものでは、ブチルゴムのパッキンをシンクのフランジ部の表面に設けているが、このものはシンクのフランジ部とカウンターの裏面との間に介装させたもので、水漏れを防止するためには当然に必要なものであり、接合部の内部にできるおそれのある微細な隙間を想定したものではない。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、フランジ部の外側端からシンクの裏面を伝ってくるおそれのある水分を途中で遮断できるような構造を有したシンク取付構造を提供することにある。また、本発明の目的には、水分の浸入を防止することも含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のシンク取付構造は、カウンターに形成された開口部の内周面と、シンクの上端部に周設されたフランジ部の折り返し片との間の隙間に目地を形成させるようにして、カウンターとシンクとを接合させた接合部を備えたシンク取付構造であって、フランジ部を含むシンクの上端周縁部には、止水用のシール部が固着、形成されており、接合部は、隙間を含み、カウンターの開口部を取り囲むように開口部近傍のカウンター裏面に固着された桟材と、シンクの側壁上端部との間に形成された空間に接着剤を充填させて形成され、接合部には、折り返し片とシール部とが埋没された構造にしていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載のシンク取付構造は、シンクの上端周縁部の裏面で前記シール部を固着する箇所は下地処理されている。
【0015】
請求項3に記載のシンク取付構造は、折り返し片のカウンター開口部の内周面に対向する面には凹凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のシンク取付構造によれば、フランジ部を含むシンクの上端周縁部に止水用のシール部が、接合部に埋没されるように固着、形成されているため、フランジ部の裏面を伝ってくる水分を効果的に遮断させて、水漏れを防止できる。
【0017】
また、接合部の接着層の内部は、接着剤が硬化した後は、その内部に水分の通路ができているかどうかを確認することができないが、接着剤を充填する前にあらかじめシンクの全周にシール部を形成させているため、シール部を形成する際に、シール部のシンクに対する密着性を確実にしておけば、水分の通路をほぼ確実に遮断できる。
【0018】
請求項2に記載のシンク取付構造によれば、シンクの上端周縁部の裏面で前記シール部を固着する箇所は下地処理されているため、シール部が剥がれることを防止でき、シンクとシール部との間に隙間が形成されることはほとんどなく、水分の進行を確実に食い止めることができる。
【0019】
請求項3に記載のシンク取付構造によれば、折り返し片のカウンター開口部の内周面に対向する面に凹凸部が形成されているため、折り返し片との接着面積が増大し接着力が高まるため、水分が接合部内に浸入してくることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図2は、本発明に係るシンク取付構造の一実施形態を示した外観斜視図であり、図3は、同シンク取付構造を有したシンク付きカウンターの概略平面図である。
【0022】
このシンク付きカウンター1は、人造大理石製のカウンター20(天板)と、カウンター20に形成された開口部23に接合させた金属製のシンク10とより形成されている。
【0023】
カウンター20は、樹脂などの非金属あるいは金属によって製されたいずれのものでもよいが、美観を出すために人造あるいは天然大理石製とすることが望ましい。また、カウンター20の前端には前垂れ部21が形成されている。
【0024】
一方、シンク10は、絞り加工により形成され、略矩形の底部13と、その底部13の四辺より立ち上がり上端に傾斜部11bを有した側壁11と、その側壁11の上端より外側に開口の全周にわたって形成されたフランジ部12とを備えている。また、シンク10の底部13には排水口13aが形成されている。
【0025】
カウンター20の表面24では、開口部23に取り付けられたシンク10と、開口部23との間に、開口の全周にわたって目地2が露出されている。この目地2は、カウンター20とシンク10とを接合するために、これらの裏面側より充填させた硬質の接着剤が硬化して形成された接合部40の一部をなすものである。
【0026】
図1(a)は、図3におけるX−X線矢視拡大部分破断縦断面図である。なおこの図1(a)では、シンクの上端部分を部分的に示している。図1(b)は、図1(a)の一部のさらなる拡大縦断面図である。また図4(a),図5は、同シンク付きカウンター1の概略底面図で、それぞれ接着剤の充填前、後を示している。図4(b)には、シンク10とカウンター20との接合部分の部分拡大底面図を示している。
【0027】
カウンター20の裏面25には、開口部23を取り囲むように開口部23近傍に桟材30が固着されている。この桟材30は、後述するように接着剤を裏面側より注入する際に堰となるもので、角材や合板、パーティクルボードなどの木質材、合成樹脂あるいはアルミニウムなどの金属で、断面視矩形に形成されている。なお、開口部のコーナーに配設した三角形状の桟材31は、接着剤の充填量を軽減するためなどに使用される。
【0028】
シンク10は、その側壁11が上端部で傾斜しており、その側壁上端から外方にフランジ部12が形成されている。このフランジ部12は、シンク付きカウンター1の表面に露出される水平部12aと、その水平部12aの外周端より下方に垂直に延びた折り返し片12bとよりなる。この折り返し片12bには、全周にわたる適所に、接着強度を増すための貫通孔12baが形成されている。
【0029】
また、折り返し片12bの外側の面12bbには、図1(b)の部分拡大図に示すように、凹凸部12cが形成されている。この凹凸部12cはサンディングなどで形成され、接着剤の接着性をよくしている。シンク10は、この折り返し片12bの外側の面12bbが、カウンター20の開口部23の内周面23aに目地2をなす隙間3aを介して対向するように開口部23内に配置されている。
【0030】
一方、シンク10の側壁上端の傾斜部11bの裏面には、シール部50がシンク10を取り囲むように周設されている。このシール部50は、変性シリコーンをシンク外面に塗布し、硬化させることで形成されており、その変性シリコーンの塗布面は、プライマー(図示省略)の塗布により下地処理が施されている。
【0031】
そして、目地2をなす隙間3aを含み、シンク10の側壁11の上端部11aと、カウンター20の裏面25に固着された桟材30,31との間には、接着剤を硬化してなる接合部40が形成されている。この接合部40の中には、折り返し片12bの全体と、シンク10の全周に固着させたシール部50とが埋没されている。
【0032】
本例では、接着剤は、硬質ウレタンなどの樹脂剤よりなる2種の接着剤が使用される。接着層41のうち表面側接着層41aを形成するための第1の接着剤は、表面の目地を形成するものであるため、カウンター色に合わせた色のものが好ましく、変色せず、接着力が高く、かつ目地の隙間に注入できる程度の低粘度のものが望ましい。また、裏面側接着層41bを形成するための第2の接着剤は接着力が高いものが望まれるが、コストを考慮すれば、第1の接着剤よりも低価格のものが望ましい。
【0033】
こうして接合部40は、カウンター裏面25に固着された桟材30と、シンク10の側壁上端部11aとの間に形成された空間に接着剤を充填させて形成され、さらにその接着層41の一部が目地2となって表面に露出されている。また図例のものは、目地2をはさんでカウンター20とシンク10とが段差なく略面一に形成されている。
【0034】
以上のように、接合部40の接着層41の中に、変性シリコーンなどによるシール部50が埋没されているので、経時変化によって万一、フランジ部12の折り返し片12bと目地2との間に微細な隙間ができ、そこから水分が浸入し、図中に示した矢印Rの流れのように、折り返し片12bの表面12bb、その裏面、水平部12aの裏面、シンク10の側壁11の裏面を順次伝ってきたとしても、水分をシール部50によって食い止めることができ、接合部40の下方への水漏れを防止できる。なお本実施形態では、シール部50は、裏面側接着層41aの中に埋没されているが、いずれの中に埋没させてもよい。また、接着層は2層でなくてもよい。
【0035】
後述するように、シール部50は、接着剤を充填する前に事前にシンク10に形成させておけばよく、そのため、シール部50のシンク10への密着性を確実にしておけば、その後の接着剤の充填、硬化によってできるおそれのある水分の通路をほぼ確実に遮断することができる。
【0036】
また、接合部40の接着層41の内部は、接着剤が硬化した後は、その内部に水分の通路ができているかどうかを確認することができないが、このシンク取付構造では、接着剤を充填する前にあらかじめシンク10の全周にシール部50を形成させているため、シール部50を形成する際に、シール部50のシンク10に対する密着性を確実にしておけば、水分の通路をほぼ確実に遮断できる。
【0037】
また、このシンク付きカウンター1は、折り返し片12bの表面12bbを凹凸形状としているため、接着剤の接着面積は大きくなり強い接着力を有している。そのため、接着剤が硬化した後でも微細な隙間はできにくく、水分が浸入しにくい構造となっている。この凹凸部12cによる水分浸入防止と、シール部50の止水効果とがあいまって、水漏れのほとんど発生し得ないシンク付きカウンターを提供することができる。
【0038】
なお、シール部50は被塗布面への密着性が高いことが望まれるが、上記の変性シリコーンに代えて、密着性が高く、接着力の強い粘着面を設けたテープ状のブチルゴムを貼着させてシール部50を形成してもよい。このような軟質のテープ状のものを用いれば、シンク10への周着は容易に行え、簡便にシール部を形成することができる。
【0039】
このような接合部40を有したシンク付きカウンター1は、好ましくは次の手順で製造される。
【0040】
すなわち、まずシンク10の折り返し片12bの外側面12bbをサンディングにより凹凸部12cを形成し、さらに傾斜部11bにプライマーを塗布し、そこに変性シリコーンの塗布によりシール部50を周設させておく。その後、平坦な作業台(不図示)の上にカウンター20とシンク10とを裏返して、シンク10をカウンター20の開口部23内に配置されるよう載置し、目地2となる隙間3aが均一幅となるよう両者の位置を微調整した後、桟材30とシンク10の側壁上端部11aとの間にできる空間3に第1、第2の接着剤を順次、充填してゆき、それらを硬化させて製造される(図4,5参照)。なお、図5は第2の接着剤を注入した後を示すもので、裏面側には第2の裏面側接着層41b(図中、斑点模様で示した部分)が露出されている。
【0041】
以上の実施形態では、シール部50がシンク10の側壁上端部11aに形成されたものを示したが、接合部40の中に埋没され、シンク10の外面を伝ってくる水分を接合部40の接着層41内で食い止めることのできる箇所であれば、図6のように、他の位置にシール部50を形成してもよい。
【0042】
図6(a)、(b)は、他の実施形態を示した部分縦断面図であり、(a)はシール部をフランジ部12の水平部12aの裏面に形成したものを示し、(b)はシール部を折り返し片の裏面に形成したものを示している。これらの実施形態には、底面図を図示していないが、図4と同様、シール部は周設されていることはいうまでもない。なお、図6(a)、(b)に示した他の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0043】
このように、シール部50は、シンク10の上端周縁部11cで、接着剤の充填により埋没される箇所であってかつ浸水経路を遮断できるよう設けてあれば、上述の位置に限定されるものではない。さらに、止水を確実にするために、シール部50を複数段状に周設させてもよい。また、シール部50は接合部に完全に埋没されなくてもよく、水分の流れの上流側の一部が埋没されるような位置に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)は本発明に係るシンク取付構造の一実施形態を模式的に示した、図3におけるX−X線矢視部分破断拡大縦断面図であり、(b)は(a)の一部のさらなる拡大縦断面図である。
【図2】同取付構造を有したシンク付きカウンターの概略斜視図である
【図3】同シンク付きカウンターの概略平面図である。
【図4】(a)は同シンク付きカウンターの概略底面図(接着剤充填前)、(b)は(a)の一部の拡大底面図である。
【図5】同シンク付きカウンターの概略底面図(接着剤充填後)である。
【図6】(a)、(b)は本発明に係るシンク取付構造の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】従来のシンク付きカウンターのカウンターとシンクとの接合部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 シンク付きカウンター
2 目地
3 接着剤の充填空間
3a 隙間
10 シンク
11 側壁
11a 側壁上端部
11b 傾斜部
11c 上端周縁部
12 フランジ部
12a 水平部
12b 折り返し片
12bb 外側の面(カウンター開口部の内周面に対向する面)
12c 凹凸部
13 底部
20 カウンター
23 開口部
23a 内周面
24 表面
25 裏面
30 桟材
40 接合部
41 接着層
50 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターに形成された開口部の内周面と、シンクの上端部に周設されたフランジ部の折り返し片との間の隙間に目地を形成させるようにして、前記カウンターと前記シンクとを接合させた接合部を備えたシンク取付構造であって、
前記フランジ部を含むシンクの上端周縁部の裏面には、止水用のシール部が固着、形成されており、
前記接合部は、前記隙間を含み、前記カウンターの開口部を取り囲むように該開口部近傍のカウンター裏面に固着された桟材と、シンクの側壁上端部との間に形成された空間に接着剤を充填させて形成され、該接合部には、前記折り返し片と前記シール部とが埋没された構造にしていることを特徴とするシンク取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記シンクの上端周縁部の裏面で前記シール部を固着する箇所は下地処理されているシンク取付構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記折り返し片の前記カウンター開口部の内周面に対向する面には、凹凸部が形成されているシンク取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate