説明

シースルーパッケージ用包装用紙

【課題】 ある程度の透明度があり、フィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有するシースルーパッケージ用包装用紙を提供する。
【解決手段】 米坪6〜14g/m2の紙において、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜500である合成繊維を45〜100重量%配合し、不透明度を20%以下に調整して、ある程度の透明度があり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内容物が透視できるシースルーパッケージ用包装用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状の包装材料は、フィルム製品(例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン等の合成高分子から作成されたシートおよびフィルム)が主流となっているが、特に食品包装では、包装の内容物が見え且つ原紙を通してフィルムに印刷したバーコード等が読み取れ易く、しかも和紙調の風合いを有している包装材料が求められている。
【0003】
また、紙・和紙の包装紙や紙・和紙に合成樹脂製フィルムをラミネートした包装材料も使用されているが、このような包装材料の場合、包装紙内の内容物(食品等)が見えないため、内容物(食品等)に不具合があっても外から確認することが難しいという問題があり、また、原紙を通してフィルムに印刷したバーコード等が読取りにくいという問題もあった。また、和紙調の風合いを有しながら、かつ透明度を高めるには、繊維長が長く、繊維径の太い繊維を使用し、かつ低い米坪で湿式抄紙する必要があるが、このような構成にした場合、湿紙強度が低くなり、抄紙性が悪くなるという問題が生ずる。
【0004】
ところで、合成高分子物質を使用せず、叩解電力を抑制し、優れた透明度を有する再生高透明度紙を得るために、セルロース分解酵素を、パルプの叩解工程で対パルプ0.01〜0.2重量%添加処理し、透明度が85.7以上、密度が1.350以上となるようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−180397号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている技術で得られた高透明度紙は、透明度は高いが、シースルーパッケージ用包装紙としての要求(例えば、ある程度の透明度があり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有する)を満足することができない。
【0007】
本発明者らは、上記した事情に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、紙の米坪を所定範囲に調整するとともに、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜500である合成繊維を所定量配合することにより、ある程度の透明度があり、フィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有するシースルーパッケージ用包装用紙を湿式抄紙により得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本願発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ある程度の透明度があり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有するシースルーパッケージ用包装用紙を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明のシースルーパッケージ用包装用紙は、米坪6〜14g/m2の紙であって、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜500である合成繊維を45〜100重量%配合し、不透明度を20%以下に調整したことを特徴としている。
【0010】
上記のように構成したことにより、ある程度の透明度があり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有するシースルーパッケージ用包装用紙が得られる。なお、米坪が6g/m2未満になると、抄紙操業性が悪くなり、14g/m2を超えると、透明性が出ないため問題となる。また、合成繊維の配合率が45重量%未満となると、透明性が出ないため問題となり、100重量%を超えると、透明性が出過ぎる。また、不透明度が20%を超えると、包装された内容物の視認が難しくなり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコードの読取りが難しくなる。また、合成繊維のアスペクト比は150〜500とするのが好ましい。なお、アスペクト比が150未満であると、湿紙強度が弱く、抄紙性が悪くなり、500を超えると、繊維の分散性が悪く、紙の見映えの点で問題となり、また、和紙調の風合いを得られなくなる。
【0011】
本願発明のシースルーパッケージ用包装用紙において、前記合成繊維の繊維の直径が10〜40μm、繊維長が3〜10mmであるようにすることもできる。そのようにした場合、包装された内容物を視認できるとともに、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等の読取りも容易となる。なお、繊維の直径が10μm未満になると、紙が密になって、透明性不良となり、40μmを超えると、紙の抄紙性悪化及び強度不良となるほか、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコードの読み取りが難しくなる。また、繊維長が3mm未満となると、透明性が得られない点で問題となり、10mmを超えると、化繊分散不良が発生し易く、紙の見映えの点で問題となる。
【発明の効果】
【0012】
本願発明のシースルーパッケージ用包装用紙によれば、米坪6〜14g/m2の紙において、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜500である合成繊維を45〜100重量%配合し、不透明度を20%以下に調整しているので、ある程度の透明度があり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有する最適なシースルーパッケージ用包装用紙となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本願発明を好適な実施の形態について説明する。
【0014】
本願発明のシースルーパッケージ用包装用紙は、公知の抄紙機を用いて製造することができる。本実施の形態における説明では、円網ヤンキー抄紙機を用いたが、これに限定されるものではなく、同一の紙質を得るようにすれば、短網ヤンキー抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機や長網多筒抄紙機等でも良い。
【0015】
このシースルーパッケージ用包装用紙は、米坪6〜14g/m2の紙であって、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜500である合成繊維を45〜100重量%配合し、不透明度を20%以下に調整したことを特徴としている。
【0016】
上記のように構成したことにより、ある程度の透明度があり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等が読み取れ、和紙調の風合いを有するシースルーパッケージ用包装用紙が得られる。なお、米坪が6g/m2未満になると、抄紙操業性が悪くなり、14g/m2を超えると、透明性が出ないため問題となる。また、合成繊維のアスペクト比は150〜500とするのが好ましい。なお、合成繊維のアスペクト比が150未満であると、湿紙強度が弱く、抄紙性が悪くなり、500を超えると、繊維の分散性が悪く、紙の見映えの点で問題となり、また、和紙調の風合いを得られなくなる。また、合成繊維の配合率が45重量%未満となると、透明性が出ないため問題となり、100重量%を超えると、透明性が出過ぎる。また、不透明度が20%を超えると、包装された内容物の視認が難しくなり、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコードの読取りが難しくなる。
【0017】
合成繊維としては、特に制限はないが、既知の合成繊維、例えば、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル等の繊維を使用することができる。
【0018】
また、パルプとしては、特に制限はないが、例えば、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等を単独あるいは混合で使用することができる。しかし、食品用途時においては、強度が高い点と異物が少ない点で化学パルプが好ましい。また、ケナフ、バガス、麻等の非木材パルプやマーセル化パルプを使用することもできる。
【0019】
本願発明のシースルーパッケージ用包装用紙において、前記合成繊維の繊維の直径が10〜40μm、繊維長が3〜10mmであるようにすることもでき、そのようにした場合、包装された内容物を視認できるとともに、原紙を通してフィルムに印刷されたバーコード等の読取りも容易となる。なお、繊維の直径が10μm未満になると、紙が密になって、透明性不良となり、40μmを超えると、紙の抄紙性悪化及び強度不良となり、バーコード読み取りが難しくなる。また、繊維長が3mm未満となると、透明性が得られない点で問題となり、10mmを超えると、抄紙時に化繊分散不良が発生し易く、紙の見映えの点で問題となる。
【0020】
次に、本願発明を、下記に示す実施例1〜6および比較例1〜8に基づいて詳述する。なお、本願発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0021】
実施例1
レーヨン繊維(繊維径12μm、繊維長5mm)の配合率90重量%、PVA繊維(繊維径10μm、繊維長3mm)の配合率10重量%の原料を用い、ヤンキードライヤー剥離剤〔商品名:メイカテックスPEC−10;明星化学(株)製〕を内添し、円網ヤンキー抄紙機で坪量9g/m2のシースルーパッケージ用包装用紙を抄造した。
【0022】
実施例2〜6および比較例1〜8
製造条件を下記表1の通りとし、実施例1と同様にして抄造した。原料は、以下に記載したものを使用した。
【0023】
NBKP:針葉樹晒クラフトパルプ(カナダ標準濾水度600mlCSF)
PETB:ポリエステル芯鞘繊維(鞘部:融点110℃、芯部:融点260℃)
PVA:ポリビニールアルコール繊維(融点80℃、繊度1.1デシテックス、繊維長3mm)
レーヨン繊維:コロナSB(商品名)ダイワボウレーヨン株式会社製
上記実施例1〜6および比較例1〜8について、下記の項目を測定して評価した。結果は表1に示した。
<評価方法>
米坪:JIS P 8124により測定した。
【0024】
不透明度:JIS P 8138により測定した。
【0025】
抄紙性
○:強度・欠陥等問題なく抄紙できる。
【0026】
×:強度不良により抄紙できない。または、欠陥等で見映えの点で問題がある。
【0027】
バーコード読取り評価
グラビア印刷でバーコード印刷を行ったポリプロピレンフィルムをラミネートし、バーコード読取り機で読取り評価を以下の基準で行った(N数:100)。
【0028】
○:バーコードの読取りが全て可能であった。
【0029】
△:バーコードの読取りが不可能なものがあった。
【0030】
×:全ての検体でバーコードの読取りが不可能であった。
【0031】
風合い評価
○:和紙調の風合いが得られた。
【0032】
×:和紙調の風合いが得られなかった。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示す結果によれば、実施例1〜6では、抄紙性、不透明度、バーコード読取り評価、風合い評価で、全て良好な結果が得られたのに対し、比較例1〜8では、抄紙性、不透明度、バーコード読取り評価、風合い評価のうち少なくとも一つの評価が悪くなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米坪6〜14g/m2の紙であって、アスペクト比(繊維長/繊維径)が150〜500である合成繊維を45〜100重量%配合し、不透明度を20%以下に調整したことを特徴とするシースルーパッケージ用包装用紙。
【請求項2】
前記合成繊維の繊維の直径が10〜40μm、繊維長が3〜10mmであることを特徴とする請求項1記載のシースルーパッケージ用包装用紙。

【公開番号】特開2006−77333(P2006−77333A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259806(P2004−259806)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】