説明

シートのろう付け補助材

本発明は、金属板のろう付け補助材であって、重量%で、Znを15〜40%、Mnを5〜30%、Niを0.01〜10%、通常の不純物を1%以下含有し、残部がCuからなる補助材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのろう付け補助材に関するものであって、請求項1の特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べたタイプの補助材は、自動車産業において特に使用されており、薄壁の車体におけるパーツを接合するために使用される。通常、亜鉛で覆われている薄壁の自動車ボディーシートを接合するときに、接合するのに必要となる入熱をできるだけ小さくすることはとりわけ重要であり、その結果、接合させるシートをできるだけ歪まないように接合することができる一方で、他方では、接合作業時にこれらのシートに被覆されている亜鉛へのダメージをできるだけ小さくし、腐食感受性をできるだけ小さくした継ぎ目とすることを可能にする。
【0003】
銅を含有する既知の補助材の融点は通常1000℃よりも高いという事実に基づくと、接合作業を行うためにはそれに応ずる高い温度が求められる。第一に、このような高い温度によって、接合部分において自動車ボディーシートに被覆している亜鉛が蒸発する。第二に、高い温度のせいで、適切なサイズに切られ、一体に接合されるシートにおいて熱応力が生じる。そして、熱応力が生じるのは、裁断され打ち抜かれたシートの変形を防ぐために熱応力に応じた拘束力がある場合であり、その拘束力がなければ、裁断されたシートが歪み、及び/又は、金属板ブランクの縁を接合することによってできたギャップがいびつになってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最新技術において上記の欠点が知られているので、新たな銅含有補助材が求められていることは明らかである。この新たな銅含有補助材によって、比較的低い温度であっても金属薄板上での接合作業を行うことを可能とし、既知の欠点を回避する。そうして、被覆している亜鉛が蒸発することを防ぐことができ、または、少なくとも亜鉛が蒸発するのを抑えることができる一方で、他方では、接合作業により生ずる歪み力(distortion force)を小さくすることができ、かなり小さな力であっても金属板ブランク同士を問題なく接合することができる。
【0005】
本発明の目的は、比較的融点が低い銅含有補助材を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、請求項1の特徴を有する補助材によって達成される。
【0007】
本発明によると、補助材は、重量%で、Znを15〜40%、Mnを5〜30%、Niを0.01〜10%、通常の不純物を1%以下有しており、残部がCuである。
【0008】
他の合金の成分と一体となって比較的高い割合で亜鉛が含有されることによって、本発明における補助材は、特に耐蝕性を有しており、ガス金属アーク(GMA)溶接やレーザろう付けや特にステンレス鋼製金属板の金属不活性ガス(MIG)ろう付けに用いられることができるだけではなく、合金の組成が特定の範囲内である限り、比較的低い融点となり、融点は900℃を大幅に下回ることも可能なため、1.5mm未満の厚さである金属薄板を接合するのに最も適している。
【0009】
融点が低いため、ろう付けに必要となるエネルギーがとりわけ少なくてすむので、ろう付けによって金属薄板を接合するのに適している。従って、接合に必要となるエネルギーを少なくすることができるので、結果的に、金属板の変形も少なくなる。
【0010】
変形する可能性が低いので、本発明における補助材は、例えば、車体と車両のシャーシとの間の境目のような異なった厚さの金属板を接合する場合にもとりわけ適している。
【0011】
本発明における補助材は融点が低いので、亜鉛メッキされた金属板を接合するのに特に適している。なぜなら、亜鉛の蒸発温度は911℃であるため、被覆している亜鉛が蒸発する割合が、既知の補助材を用いた場合と比べてかなり低くなるからである。
【0012】
加えて、本発明における合金には亜鉛、マンガン、ニッケルが含まれているため、たいていの補助材は、ギャップをうまく塞げるのみならず流動性及び濡れ性能が良好であり、結果として緊密で安定した継ぎ目となる。溶融した補助材の表面張力が高いので、ギャップをうまく埋めることができ、合金にマンガンが含有されていることと融点が低くなることとが相まってギャップをうまく埋めることができる。
【0013】
さらに、比較的高い割合で亜鉛が含有されていることによって、本発明における補助材の冷間加工性がとても優れている。したがって、本発明における補助材から作られる溶接ワイヤやろう付け用ワイヤでは、直径が0.8mm以下のものでさえ安価に製造することができる。
【0014】
補助材の濡れ性能と灰色がかった色とは合金組成に起因したものであり、これらの特性上、その外観は、金属板の表面に似ており、そのため、補助材は自動車ボディの外表面で使用するのに特に適している。従って、異なる金属板ブランクから構成された外表面は、ろう付けの継ぎ目があるにもかかわらず一体であるように見える。
【0015】
さらに、流動性及び濡れ性能が良好であるため、比較的早く接合することによって、相対的に低エネルギーで接合することができる。
【0016】
好適な実施形態では、補助材は、Znを20〜25%、Mnを8〜13%、Niを0.2〜1.2%含有する。特にマンガンを比較的多く含有しているので、本実施形態は高合金のステンレス金属板を接合するのに適している。
【0017】
実際に接合される高強度シートの組成にかかわらず、所定の合金成分としてZnを22%、Mnを10%、Niを0.5%含有する補助材の合金をとりわけ普遍的に使用することができ、とりわけ各成分を±10%の許容差の範囲内にとどめる限り使用することができることが見出された。
【0018】
他の好適な実施形態では、Znを27〜33%、Mnを15〜25%、Niを2〜6%含有する補助材の場合に、この補助材は、高強度の薄板を接合するのに特に適している。なぜなら、Niの含有量を増加することによって強度が上がるためである。Mnの含有量の増加により、補助材の硬度が増加するので、勾配のある継ぎ目(falling seams)を製造するのが特に容易となる。
【0019】
実際に接合される高強度シートの組成にかかわらず、Znを30%、Mnを20%、Niを4%含有する補助材を普遍的に使用することができ、とりわけ、許容差の範囲は±10%であることが見出された。
【0020】
通常の不純物の影響によってこの補助材の有利な特性がほとんど打ち消されてしまう可能性があるため、通常の不純物として、0.2%以上のAl、0.2%以上のSn、0.1%以上のMg、0.1%以上のCr、又は0.1%以上のCoが含まれないようにすべきである。
【0021】
補助材に成分の0.01〜4重量%にあたるFeを添加することによって、とりわけ、鋼材の濡れを良くするのみならず、強度を強くすることがわかっている。Siを0.01〜0.05重量%添加することによっても、強度を高める効果がある。
【0022】
接合するのに補助材を使う場合、上記のような有利な効果を、補助材を使って、入熱装置としてビーム源や線源を用いてろう付けや溶接を行うことによってさらに増加させることができる。これらの効果は、特に補助材の融点が低いことによるものである。ビーム源を用いることによって、注意深く入熱することができるので、接合温度となるのを局所的で狭い範囲に制限することができ、また、その接合温度は相対的に低温であり、さらに、接合時に金属板ブランクが変形するリスク、及び/又は金属板ブランクに塗布され被覆している亜鉛が高い割合で蒸発してしまうリスクが軽減する。本発明における補助材は、特に電気アーク法、連続溶接、及びパルス溶接に用いるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板のろう付け補助材であって、
上記補助材は、重量%で、
Znを15〜40%、
Mnを5〜30%、
Niを0.01〜10%、
通常の不純物を1%以下含有し、
残部がCuからなる
ことを特徴とする補助材。
【請求項2】
請求項1に記載の補助材において、
Znを20〜25%、
Mnを8〜13%、
Niを0.2〜1.2%含有することを特徴とする補助材。
【請求項3】
請求項2に記載の補助材において、
Znを22%、
Mnを10%、
Niを0.5%含有することを特徴とする補助材。
【請求項4】
請求項1に記載の補助材において、
Znを27〜33%、
Mnを15〜25%、
Niを2〜6%含有することを特徴とする補助材。
【請求項5】
請求項4に記載の補助材において、
Znを30%、
Mnを20%、
Niを4%含有することを特徴とする補助材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の補助材において、
上記不純物を重量%で、
Alを0.2%未満、
Snを0.2%未満、
Mgを0.1%未満、
Crを0.1%未満、
Coを0.1%未満含有することを特徴とする補助材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の補助材において、
Feを0.01〜4重量%含有することを特徴とする補助材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の補助材において、
Siを0.01〜0.05重量%含有することを特徴とする補助材。
【請求項9】
入熱装置としてビーム源を用いてろう付け及び/又は溶接を行うための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の補助材の使用。

【公表番号】特表2012−532759(P2012−532759A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518943(P2012−518943)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059552
【国際公開番号】WO2011/003857
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(391008700)ベルケンホフ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Berkenhoff GmbH