説明

シートの転写装置

【課題】シート片の他の保持部材への転写を確実に行うことができるシートの転写装置を提供すること。
【解決手段】保持ヘッド41の保持表面41aに伸長状態で保持された、弾性を備えたシート片21を、該伸長状態を維持したままで他の部材52等に転写するシートの転写装置1である。シート片21の伸長方向に沿う前後端部を係止する一対の係止部41bを、保持ヘッド41の保持表面41aに設け、かつ保持表面41aにシート片21を吸引保持するための吸引孔41c,41dを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を備えたシート片を、伸長状態を維持したままで、他の部材に転写するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、通気性シートの保持装置を提案した(特許文献1参照)。この保持装置は、弾性を備えた通気性シートを伸長状態で保持するセグメントを有している。この装置においては、連続して供給される該通気性シートを、伸長した状態で該セグメントに係止するとともに、その伸長状態を保持したまま該通気性シートを所定長さに切断する。切断後の通気性シートは引き続き該セグメントに保持され、その後に該通気性シートが他の部材に受け渡される。このセグメントには、通気性シートと面接触して該通気性シートを伸長状態に保持する一対の係止片が設けられている。係止片としては例えば、溶射部材が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−294769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の保持装置によれば、弾性を備えた通気性シートの伸長状態を、簡単な構造で維持することができるという利点がある。この保持装置では、通気性シートとセグメントとの係止力を、該セグメントに設けられた溶射部材によって発現させている。溶射部材による係合面積を広くすれば係止力は高まるが、溶射部材は高価な材料なので、該溶射部材を広面積で用いることは経済的でない。また、品種替え等の理由によって通気性シートの伸縮力が変更された場合には、新たな通気性シートに適合した係止力が生ずるように溶射部材を交換する必要があり、係止力の変更の自由度が低い。更に、この保持装置は、保持力が一定の係止力のみで伸長状態を維持しているので、該セグメントに保持された通気性シートを他のセグメントに転写するときに、転写がスムーズに行えないことがある。
【0005】
本発明の課題は、前述した従来技術の保持装置の改良にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持ヘッドの保持表面に伸長状態で保持された、弾性を備えたシート片を、該伸長状態を維持したままで他の部材又は装置に転写するシートの転写装置において、
前記シート片の伸長方向に沿う前端域及び後端域を係止する一対の係止部を、前記保持ヘッドの保持表面に設け、かつ該保持表面に該シート片を吸引保持するための吸引孔を設けたシートの転写装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、係止力と吸引力との併用によって弾性を有するシート片を保持できるので、シート片の材料の選択の自由度が高くなる。また、保持力を変更するときの自由度も高くなる。更に、一般的に高価な材料である係止部材の使用量を減らすことができるので、経済的である。そのうえ、シート片の他の保持部材への転写を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のシートの転写装置の一実施形態を示す模式図である。
【図2】図2(a)は、シート片を示す一部破断斜視図であり、図2(b)は、毎葉のシート片に裁断される前の状態の連続シートの一部を示す一部破断斜視図である。
【図3】図3(a)は、保持ヘッドを示す斜視図であり、図3(b)は、図3(b)に示す保持ヘッドをその保持表面側から見た平面図であり、弾性部材との位置関係を示すものである。
【図4】図4(a)は、別の実施形態の保持ヘッドを示す平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す保持ヘッドを、長手方向の端面から見た図であり、図4(c)は、シート片が保持された状態における図4(b)におけるc−c線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のシートの転写装置の一実施形態が示されている。同図に示す装置1は、連続搬送される帯状の連続シート2を間欠的に切断する切断手段3と、複数の保持ヘッド41を有し、切断により生じたシート片21を、該保持ヘッド41に保持して搬送しつつ、各シート片21の平面に垂直な軸線Pの周りに90度回転させる反転装置4と、90度回転させたシート片21を反転装置4の保持ヘッド41から受け取りつつ、他の部材である帯状の資材シート52に接合する転写手段5とを備えている。
【0010】
装置1においては、反転装置4よりも上流側に、帯状の連続シート2の製造装置(図示せず)が備えられている。この製造装置から搬送されてきた連続シート2が、案内ロール(図示せず)等によって案内されて、反転装置4に連続的に供給されるようになされている。
【0011】
反転装置4は、図1に示すように、図1中矢印R1方向に回転する略筒状の回転ドラム42を備え、該回転ドラム42は、その周面部に複数の保持ヘッド41を備えている。保持ヘッド41は、回転ドラム42の回転方向R1に沿って一方向に移動するようになっている。保持ヘッド41は保持表面41aを有し、該保持表面41a上に、帯状の連続シート2が切断されて生じた毎葉のシート片21を保持し、その状態で、矢印R1方向に搬送可能になされている。
【0012】
装置1においては、図1に示すように、回転ドラム42の周面部上に帯状の連続シート2が供給されるようになされており、該連続シート2が、回転ドラム42の周面上を、保持ヘッド一つ分程度移動した辺りに、切断手段としてのカッターが配置されている。カッター3は、回転ドラム42の回転方向に沿って前後隣り合う保持ヘッド41間に差し込まれて、連続シート2をその幅方向にわたって裁断するように構成されている。移動する保持ヘッド41との干渉が起こらないようにするために、カッター3は、回転ドラム42の回転面内において楕円軌道を描くように往復運動する。この楕円軌道においては、回転ドラム42の半径方向が楕円の長軸となる。
【0013】
反転装置4における吸着ヘッド41は、それぞれ、保持表面41aに略垂直な軸線の周りに90度回転し、それにより、保持ヘッド41の保持表面41aに保持されたシート片21が、該シート片21の平面、すなわち保持表面41aに垂直な軸線Pの回りに90度回転するようになされている。
【0014】
また、各保持ヘッド41は、図1中矢印R1方向に回転しながら、隣り合う保持ヘッド間の距離(保持ヘッド41が回転ドラム42の回転方向である一方向に移動する軌跡に沿って測定した距離)が短縮又は伸長するようになされている。即ち、各保持ヘッド41が、連続シート2の導入部Aからカッター3による切断部Bをやや越えるまでの範囲を移動する間においては、各保持ヘッド41は、その保持表面41aに垂直な方向から見たときの該保持ヘッドの長手方向を回転ドラム42の周方向に向けて、相互間の間隔がほぼなくなる程度に近接しているが、前記のカッティングロール3による切断部Bをやや越えた辺りから、保持ヘッド間の距離が僅かに広がり、その状態で、上述したヘッドの90度の回転が始まり、90度の回転途中から保持ヘッド間の距離が更に増加する。そして、保持ヘッド間の距離が当初よりも増加した状態でシート片21の転写が行われる。
【0015】
転写後のシート片21は加工物の構成部材の一つとして機能する。本製造方法においては、サイズや機能等が相違する複数種類の加工物を加工できることが好ましい。この場合、回転方向R1に沿って隣り合うシート片21の距離は、加工物の種類に応じて様々なので、隣り合う保持ヘッド間の距離は、連続シート2の導入部Aにおける距離に比べて減少又は増加のどちらにも変化が可能であり、所望の間隔にリピッチできることが好ましい。ここで、隣り合う保持ヘッド間の距離とは、回転方向R1に沿って隣り合う保持ヘッドにおいて向かい合う端部間の距離のことである。
【0016】
シート片21の転写の完了後、保持ヘッド41は、連続シート2の導入部Aに戻るまでの間に、保持ヘッド間の距離が減少する。また、その間に、各保持ヘッド41が、それぞれ保持表面41aに略垂直な軸線の周りに90度回転する。このときの回転方向は、シート片21を受け渡す前の保持ヘッド41の回転方向と逆方向であり、この回転によって保持ヘッド41は元の位置に戻る。
【0017】
反転装置4における保持ヘッド41間の距離の変更及び保持ヘッド41の90度の回転は、それぞれ公知の方法及び装置を用いて実施することができる。例えば、保持ヘッド41間の距離の変更及び保持ヘッド41の回転方法(及び装置)としては、特開昭63−317576号公報、特開2003−135517号公報、特開平3−226411号公報等に記載の方法や装置を用いることができる。また、反転装置4に設ける保持ヘッド41の移動を、同軸の回転軸を有し、該回転軸とは反対側の端部又はその近傍が各保持ヘッドに連結された複数のアーム(図示せず)を回転させることによって行ってもよい。この場合、それぞれのアームの回転速度を、各アームの回転軸に連結したサーボモータ等により個別に制御してもよい。保持ヘッド41を保持表面41aに略垂直な軸線の回りに90度回転させる手段としては、保持ヘッド41の軌道の近傍にカム溝を設け、そのカム溝に、各保持ヘッドに連結した従動節の突起を挿入し、該保持ヘッド41が移動するに伴って生じる従動節の往復運動を、公知の手法によってヘッドの回転運動に変換する方法が挙げられる。カムには、円筒カム、板カム、正面カム等を用いることができる。また、カム溝を設ける代わりに凸条部を設け、これに従動節を摺接させることもできる。
【0018】
本実施形態の装置1において、シート片21の転写は、資材シート52の表面の所定位置に予め塗布された接着剤(図示せず)によって行われる。あるいは、接着剤に代えて、又は接着剤とともに、転写手段5に備えられたロール51として吸引ロールを用いることによっても転写を行うことができる。更に、その他の公知の転写手段を特に制限なく用いることもできる。
【0019】
ロール51として吸引ロールを用いる場合には、該吸引ロール51は、図1中R2方向に所定速度で回転している。吸引ロール51は、ロール内部の空気を吸引して負圧状態に保持することにより、その周面上に、資材シート52を介してシート片21を受け取る。吸引ロール51にはその周面に多数の孔が形成されている。この孔は吸引手段(図示せず)に接続されている。吸引手段を作動させることで、吸引ロール51は、その周面から内部に向けて空気を吸引できるようになっている。
【0020】
図2(a)には、本装置1によって転写の対象となるシート片21の斜視図が示されている。シート片21は、長手方向とそれに直交する幅方向を有する矩形状のものである。シート片21は、矩形の基材シート21aを二つ折りして2枚重ねとし、2枚のシート間に糸ゴム等からなる複数本の弾性部材21bを伸長状態で接合固定したものである。弾性部材21bは、基材シート21aの長手方向全域にわたって配設された第1の弾性部材211bと、基材シート21aの長手方向の前部域及び後部域にのみ配設された第2の弾性部材212bとの2種類を含んでいる。第2の弾性部材212bは、基材シート21aの長手方向の中央域には配されていない。
【0021】
二つ折りされた基材シート21aは、該基材シート21aどうしの対向面が、弾性部材21bに塗布された接着剤によって接合されている。つまり、シート片21においては、二つ折りされた基材シート21aと弾性部材21bとの三者が、該弾性部材21bの存在する部位において接合されている。弾性部材21bが存在しない部位においては、二つ折りされた基材シート21aは非接合状態になっている。このような接合状態になっていることで、シート片21は、柔らかく通気性の良好な伸縮シートとなる。
【0022】
基材シート21aは、不織布や紙等の繊維シートや成形フィルムから構成されている。基材シート21aが繊維シートから構成されている場合には、シート片21は一般に通気性を有している。基材シート21aが成形フィルムから構成されている場合には、一般に通気性は有さないが、該フィルムに巨視的な開孔を施すことや、フィルムの構成原料及び製造方法によって微視的な細孔を形成し、難透液性ではあるが透気性を付与するようにして通気性を付与してもよい。またシート片21は、伸長状態で配設された弾性部材21bの作用によって、該弾性部材21bの延びる方向に沿って伸縮可能になっている。その結果、シート片21は、弾性を備え、かつ通気性を有するか、又は有しないものとなっている。このようなシート片21は、例えばこれを使い捨ておむつのウエスト部に配設することで、該おむつのフィット性の向上に寄与するものとなる。特にシート片21が通気性を有する場合には、おむつのフィット性が向上するだけでなく、蒸れ防止効果も向上する。
【0023】
シート片21は、その長手方向である、弾性部材21bの延びる方向に沿って伸縮可能になっているが、該方向と直交する幅方向には伸縮性を有していない。しかし、シート片21が弾性部材21bの延びる方向と直交する方向に伸縮性を有していることは何ら妨げられない。その場合には、弾性部材21bの延びる方向の伸縮力の方が、該方向と直交する幅方向における伸縮力よりも高い方が、本発明の効果が一層際立つ。
【0024】
図2(b)は、シート片21を毎葉に裁断する前の状態の連続シート2の一部を示す斜視図である。連続シート2は、第2の弾性部材212bを、その長さ方向にほぼ二分する位置Cにおいて、連続シート2の延びる方向と直交する方向にわたって裁断される。
【0025】
図3(a)には、本装置1に備えられている保持ヘッド41の斜視図が示されている。保持ヘッド41は、その上面に保持表面41aを備えている。保持表面41aは長手方向Xとそれに直交する幅方向Yを有している。保持表面41aは、その幅方向Yに沿って緩やかな凸状に湾曲している。長手方向Xに関しては、保持表面41aは、緩やかな凸状に湾曲していてもよい。
【0026】
保持表面41aの長手方向Xに沿う前端域及び後端域の位置には、係止部41bが設けられている。係止部41bは、保持表面41aの一部をなしている。係止部41bは、シート片21を構成する部材である基材シート21aと係合するように構成されている。例えば基材シート21aが繊維シートから構成されている場合には、係止部41bには、該繊維シートと係合可能なように粗面化されている。シート片21はその長手方向を、保持表面41aの長手方向Xと一致させた状態で、かつ伸長された状態で、その伸長方向に沿う前端域及び後端域が、各係止部41bに係止される。係止とは、シート片21が、粗面化されて多数の凸部を有する係止部41bに引っ掛かって又は突き刺さって固定されている状態を言う。シート片21が係止された状態においては、該シート片21の収縮力に起因する大きな抵抗力が係止部41bに発生するので、外力が加わらない限り、係止部41bからのシート片21の位置ずれや脱落は起こりにくい。この抵抗力は、シート片21が繊維シートからなる場合に特に大きくなる。また、シート片21は係止部41bに引っ掛かっているだけなので、該シート片21を資材シート52へ転写するときのように、シート片21の面方向と直交する方向へ剥がすときの抵抗力は小さいものである。
【0027】
係止部41bを粗面化するためには、例えば係止部41bに、面ファスナのフック部材を取り付ければよい。また、係止部41bを、母材の表面に、金属材料又は非金属材料を溶射して該表面に形成された粗化被膜を有する溶射部材から構成することもできる。この溶射部材は、保持ヘッド41の一部として、該保持ヘッドと一体に形成されていてもよく、あるいは着脱可能な別部材として保持ヘッド41に取り付けられてもよい。
【0028】
保持表面41aのうち、係止部41bが設けられている前端域及び後端域と、両領域間に位置する中央域とは、滑らかに連なっており、これらの領域間に段差は存在していない。
【0029】
保持表面41aにおいては、該表面41aの一部である係止部41bが形成されている部位に、第1の吸引孔41cが複数個設けられている。また保持表面41aのうち、一対の係止部41b間の領域に、第2の吸引孔41dが複数個設けられている。各吸引孔41c,41dは、保持表面41aにおいて開孔しており、かつ保持ヘッドの高さ方向に延びている。各吸引孔41c,41dは、吸引ポンプ等の吸引手段(図示せず)に接続されている。吸引手段を作動させることで、各吸引孔41c,41dに吸引力が発生し、シート片21は保持表面41aに吸引保持される。吸引手段による吸引の程度を調整することで、吸引孔41c,41dによる吸引力を可変とすることができる。また、第1の吸引孔41cが接続されている吸引系統と、第2の吸引孔41dが接続されている吸引系統とを別系統にすることで、保持表面41aにおける長手方向中央域と、前端域及び後端域とで吸引力を異ならせることもでき、更には吸引系統の調整により前端域と後端域とで吸引力を異ならせることもできる。
【0030】
吸引孔41c,41dの大きさ、個数及び配置位置は、保持の対象であるシート片21の通気性や伸縮力を考慮して適切に設定される。特に、配置位置に関しては、例えば図3(b)に示すように、シート片21における弾性部材21bが配されている部位に対応した位置に、吸引孔41c,41dを設けることが、シート片21の一層確実な保持の観点から好ましい。同様の目的で、係止部41bにおいて、及び/又は、係止部41b間の部位において、シート片21における弾性部材21bが配されている部位に対応した位置に、それ以外の位置よりも相対的に数多くの吸引孔を設けてもよい。あるいは、係止部41bにおいて、及び/又は、係止部41b間の部位において、弾性部材21bの延びる方向に沿って吸引孔を配置してもよい。
【0031】
以上の構成を有する装置1を用いたシート片21の転写方法について説明する。図2(b)に示す連続シート2を、上述した方向変換ロール91等によって案内して、矢印R1方向に規則的に回転する回転ドラム42に供給する。この時点において、連続シート2には張力が加えられており、該連続シート2は伸長状態になっている。連続シート2は、その伸長状態が維持されたままで保持ヘッド41に保持される。連続シート2の保持は、係止部41bと連続シート2との係合及び吸引孔41c,41dによる吸引によって達成される。連続シート2の保持は、該連続シート2が通気性であってもあるいは非通気性であっても、吸引だけである程度達成できる。しかし、吸引に加えて係合を採用することで、幅広い種類のシート片21を確実に保持することができるという利点がある。特に、本実施形態のようにシート片21が伸縮性を有する場合に、吸引と係合との組み合わせを用いることで、幅広い種類のシート片21を一層確実に保持することができるという利点がある。
【0032】
連続シート2は、保持ヘッド41よって保持された状態でカッター3の位置まで搬送され、該カッターによって、長手方向において間欠的に、かつそれぞれの切断箇所において幅方向の全域にわたって切断される。連続シート2の切断によって生じたシート21の長さは、保持ヘッド41の保持表面41aの長手方向の長さと略一致しているか、又はそれよりも若干大きくなっている。
【0033】
切断によって生じたシート片21は、その長手方向(すなわち弾性部材21bの延びる方向)を、保持ヘッド41における保持表面41aの長手方向Xに一致させて、該保持表面41aに保持される。具体的には、シート片21の長手方向の前端域及び後端域と各係止部41bとが係合して保持されるとともに、吸引孔41cによる吸引力で該シート片21の中央域が保持される。この状態においても、シート片21の伸長状態は維持されている。
【0034】
シート片21は、保持ヘッド41に保持されたまま搬送され、搬送途中において、保持ヘッド41の回転により、シート片21の平面に垂直な軸線Pの周りに90度回転する。この場合、シート片21は、吸引力と係合力との組み合わせによって保持ヘッド41の保持表面41aに確実に保持されているので、保持ヘッド41が90度回転する間に、風圧に起因してシート片21の隅部等がめくれあがるという不都合が効果的に防止される。90度回転したシート片21は、保持ヘッド41間のピッチが、保持表面41aに垂直な方向から見たときの該ヘッドの長手方向を回転ドラム42の周方向に向けている状態に比べて、保持ヘッド41が90度回転して、保持表面41aに垂直な方向から見たときの該ヘッドの幅方向が回転ドラム42の周方向に向いている状態の方が増加される。そして、保持ヘッド41間の距離が増加された状態において、保持ヘッド41に搬送されたシート片21,21・・は、転写手段5に備えられた吸引ロール51の位置において、別途供給された資材シート52の表面に受け渡される。これによってシート片21は、その90度回転前の幅方向(短手方向)を、資材シート52の長手方向に一致させて、該資材シート52の長手方向に所定間隔をおいて規則的に配置される。この場合、シート片21及び/又は資材シート52の表面に接着剤を予め塗布しておき、両者を接着固定する。
【0035】
シート片21の資材シート52への転写に際しては、保持ヘッド41の第1の吸引孔41c及び/又は第2の吸引孔41dによる吸引を停止する。この操作によって、吸引によるシート片21の保持ヘッド41への保持が解除されるか、又は保持力が低下し、保持ヘッド41によるシート片21の保持力が低下する。ロール51として吸引ロールを用いる場合には、第1の吸引孔41c及び/又は第2の吸引孔41dによる吸引の停止と同期させて、該ロール51を、その周面から内部に向けて吸引する操作を行ってもよい。これらの操作によって、保持ヘッド41から吸引ロール52に向けたシート片21の転写が確実に行われる。なお、場合によっては、第1の吸引孔41c及び/又は第2の吸引孔41dによる吸引を停止することに代えて、これらの吸引孔41c,41dの吸引力を低下させる操作を行ってもよい。
【0036】
資材シート52としては、例えば不織布等の繊維シートや成形フィルム等を用いることができる。資材シート52の幅は、特に制限はないが、一般にシート片21の長手方向の長さと一致しているか、それよりも大きくなっている。
【0037】
以上のとおり、本実施形態の装置1を用いれば、係止部41bを利用した係止力と、吸引孔41c,41dを利用した吸引力とによって、シート片21を保持ヘッド41に保持させることができる。したがって、係止部のみを有する特許文献1に記載の技術に比べ、係止部41bの形成領域を減らしても、同文献に記載の技術と同じレベルの保持力を発現させることができる。係止部41bは、高価な材料である溶射部材で構成することが好ましいことから、該係止部41bの面積を減らせることは、保持ヘッド41を製造するうえで経済的に有利になる。
【0038】
また、吸引孔41c,41dによる吸引力を可変にすることで、シート片21を保持ヘッド41に保持させるための全体の保持力をコントロールすることができる。したがって、シート片21を資材シート52に転写するときに、吸引による保持力を低下させて、転写を確実に行うことができる。
【0039】
以上の説明は、本実施形態の装置1を、帯状の連続体からなる連続シート2から毎葉のシート片21を製造し、該シート片を資材シート52上に配置する工程に適用したものであるところ、本装置1は、特に使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造に好適に用いられる。具体的には、使い捨ておむつのウエストまわりに配置される弾性シートとして、上述のシート片21を用いるとともに、使い捨ておむつの外面を構成する外装シート又はおむつの内面を構成する表面シートとして、上述の資材シート52を用い、本実施形態の装置1によって、資材シート52上にシート片21を配置し、その後に、吸収体及び表面シート又は外装シートを順次配置することで、使い捨ておむつを製造することができる。
【0040】
図4(a)及び(b)には、保持ヘッド41の別の実施形態が示されている。同図に示す保持ヘッド41においては、保持表面41aのうち、係止部41bの表面に、該保持表面41aに沿う溝部41eが形成されている。溝部41eは、保持表面の長手方向Xと同方向に直線状に延びている。溝部41eの一端は、係止部41bに設けられた第1の吸引孔41cの開口端に接続している。一方、溝部41eの他端は、図4(b)に示すように、保持ヘッド41の長手方向の端面41fにおいて開口している。溝部41eは、係止部41bに設けられた第1の吸引孔41cのうち、保持ヘッド41の長手方向の端面寄りに位置するものと接続している。
【0041】
このような構造の保持ヘッド41を用いて、その保持表面41aにシート片21を保持させると、図4(c)に示すように、溝部41eに沿った空気の吸引流Sが形成され、シート片21の長手方向の端部域21’が、保持ヘッド41の長手方向の端面41fに吸着される。その結果、シート片21を資材シート52に転写するまでの間に、該シート片21が保持ヘッド21によって保持された状態で搬送されているときに、該シート片21の端部がめくれあがることが一層効果的に防止される。
【0042】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態においては、保持表面41aにおける係止部41bに第1の吸引孔41cを設け、かつ一対の係止部41b間に第2の吸引孔41dを設けたが、これに代えて、第1の吸引孔41c又は第2の吸引孔41dのみを設けてもよい。シート片21の確実な保持の観点からは、吸引それ自体の保持効果とともにシート片21を係止部41bに一層確実に係止させることができるので、保持表面41aにおける少なくとも係止部41bに吸引孔を設けることが有効である。
【0043】
また、前記実施形態においては、保持ヘッド41に保持されたシート片21が資材シート52に転写されるまでの間に、該保持ヘッド41が、保持表面41aに垂直な軸線Pの回りに回転するようになされており、かつ隣り合う保持ヘッド41の距離が短縮又は伸長するようになされていたが、これに代えて、これらの動作のうちの一方のみが行われてもよい。
【0044】
また、前記実施形態においては、保持ヘッド41に保持されたシート片21を、他の部材である資材シート52に転写したが、これに代えて、該シート片21を、転写装置1とは別途に設けられた他の装置に転写してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 転写装置
2 連続シート
21 シート片
21’ シート片21の長手方向の端部域
3 切断手段
4 反転装置4
41 保持ヘッド
41a 保持表面
41b 係止部
41c 第1の吸引孔
41d 第2の吸引孔
41e 溝部
41f 端面
42 回転ドラム
5 転写部
51 吸引ロール
52 資材シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持ヘッドの保持表面に伸長状態で保持された、弾性を備えたシート片を、該伸長状態を維持したままで他の部材又は装置に転写するシートの転写装置において、
前記シート片の伸長方向に沿う前端域及び後端域を係止する一対の係止部を、前記保持ヘッドの保持表面に設け、かつ該保持表面に該シート片を吸引保持するための吸引孔を設けたシートの転写装置。
【請求項2】
前記係止部は、母材の表面に、金属材料又は非金属材料を溶射して該表面に形成された粗化被膜を有する溶射部材を備える請求項1記載のシートの転写装置。
【請求項3】
前記吸引孔による吸引力が可変になっている請求項1又は2記載のシートの転写装置。
【請求項4】
前記吸引孔を前記係止部に設けた請求項1ないし3のいずれかに記載のシートの転写装置。
【請求項5】
前記吸引孔を前記係止部間に設けた請求項1ないし4のいずれかに記載のシーの転写装置。
【請求項6】
前記保持ヘッドに保持された前記シート片が他の部材又は装置に転写されるまでの間に、該保持ヘッドが、前記保持表面に垂直な軸線の回りに回転するようになされている請求項1ないし5のいずれかに記載のシートの転写装置。
【請求項7】
前記保持ヘッドを複数個備え、各保持ヘッドが一方向に移動するようになされており、
各保持ヘッドに保持された前記シート片が他の部材又は装置に転写されるまでの間に、隣り合う該保持ヘッドの距離が短縮又は伸長するようになされている請求項1ないし5のいずれかに記載のシートの転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126660(P2011−126660A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286860(P2009−286860)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】