説明

シートを張装するためのスプリング嵌入器具

【課題】ハウスの表面にビニールフィルムなどのシートを張装する時にハウスに設けたレールにシートを固定する器具を提供するものである。
【解決手段】ハウスの表面に縦横に設けたレールの溝にシートと共に折れ曲がったスプリングを嵌め込んでレールにシートを固定するためのスプリング嵌入器具であって、レールの巾に応じてスプリング嵌入器具のスプリング嵌入部材の間隔を変化させることによって、急激なレールの変化にも対応してスプリングをレール溝内にシートと共に嵌め込むようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農業用、園芸用などの温室を形成するためのハウス等の表面にビニールフィルム,ポリエチレンフィルムなどのシートを張装するためのスプリング嵌入器具に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来、園芸用等のビニールハウスの表面にビニールフィルムなどのシートを張装するに当たり、帯板の両縁を内側に折り曲げて形成される溝の内部巾が帯板の両縁端間の口巾より大きくした断面略C字形状のレールをハウスの骨組みとしてまたは骨組みと共に取付けてハウス表面全体に縦横に取り付け、該レールの溝に線材をジグザグに折り曲げた折り曲げ巾がレール内部の巾に略等しくレール口巾より広いスプリングをシートと共に手作業またはスプリング嵌入器によって嵌入して、シートがハウスの骨組みから外れたり、ずれたりしないよう固定して、ハウス全体をシートで覆うように張装していた。
【0003】上記の従来の手作業によってレールの溝にスプリングを嵌入するにあたっては、折れ曲がったスプリングの折れ曲がり(スプリングの角部または山部)を直す方向に力を加えて、一時的にスプリングを伸ばし、折り曲げ巾をレール巾より狭くして、ビニールフィルム,ポリエチレンフィルムなどのシートと共にスプリングをレールの溝に手の局部に力を掛けて押し込むことから、能率が悪いために長時間の作業となり、次第に手の局部が痛くなるし、また、同じ姿勢を長時間続けなければならないことから足腰が痛むといった問題点があった。
【0004】また、従来のスプリング嵌入器においては、レールの溝巾が一定でないとスプリング嵌入器が移動する時、円滑に移動しない。レールとレールの接続部では接続の為にレール巾が狭まることや、レールをビニールハウスの本体に取り付けて固定する為の支持金具によってレール巾が狭くなる所がある。このレール巾が狭まった所でスプリング嵌入器具のシート保護部材が変化に追随出来ず、スプリング嵌入器具が円滑に移動しないといった問題点があった。
【0005】本発明は、上記の問題点を解消するためハウスの骨組みに組み込まれたレールの溝にスプリングとシートを嵌め込みハウスを覆うようにシートを張装するに当り、レールの溝巾に自在に対応してスプリングをレールに嵌入するためのスプリング嵌入器具を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためのスプリング嵌入器具は金属、合成樹脂などによって成形した把手の前方下部に先端が反り、レールの角部を覆うように不等辺山形となった鏝状の左右のシート保護部材を設け、左右のシート保護部材の夫々の上方で上下方向を軸として回転しスプリングをレールに嵌入する為にレールに導くスプリングガイドローラーを設け、スプリングガイドローラーの後方で左右のシート保護部材の間にスプリングをレール溝内に押し込むためにレールに嵌って回転する前車輪を設け、左右のシート保護部材は平行に移動して左右のシート保護部材間の間隔をレール溝巾に合わせて自在に変える(開閉する)ようにした。そして、把手の後方下部にレール溝内を回転移動する後車輪を設ける。
【0007】また、スプリング嵌入器の前方にスプリングの振れを制止してスプリングをスプリングガイドローラーに導くためのスプリング振止めとスプリングおよびシートに潤滑剤を塗布するための塗布部材を設けた構成からなるスプリング嵌入器具である。
【0008】上記のような構成によるスプリング嵌入器具において、ビニールハウスの骨組みに取付けられたレールにスプリング嵌入器具を用いて、シートと共にスプリングを嵌め込むのに、スプリング嵌入器具の把手を持ってスプリング嵌入器具の前方からスプリングをスプリング振止めを通し、続いてスプリングガイドローラーから前車輪の下方を通して、スプリングの先端部分を手作業でレール溝内に入れた後、前後車輪をレールの溝内に入れてスプリング嵌入器具を前方に押すと、左右のシート保護部材の先端によって予めシートをレール溝内に押込み、かつ、シートはシート保護部材の山形部分で覆われることによって、レール角部でのスプリングとの擦れ合いによる破損から保護されながらレール溝内に入る。
【0009】同時に、スプリングはスプリングガイドローラーによって一時的に折れ曲がりが直されて、スプリングの角部がレール溝の内側に寄せられる。次いで、前車輪によって下方(レールの溝の底)に押し込められて、シートと共にレールの溝内に嵌め込まれるものである。この時、シートおよびスプリングをレール内に嵌入する機能を持つシート保護部材はレール巾に合わせて左右の間隔を自在に変えるので、スプリング嵌入器はレール巾が急激に狭くなった所でも円滑にスプリングをレールに嵌入しながら通過する。
【0010】なお、スプリングの角を押寄せるスプリングガイドローラーおよびスプリングをレール溝に押し込む前車輪は共にスプリングがローラーの回転によりローラー表面に乗って移動するのでスプリングとスプリングガイドローラーおよび前車輪との間の摩擦が少ない為に、軽い力でスプリングをレールに嵌入することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、本発明の前後、左右、上下の方向は図に示す方向とする。
【0012】図1(a)および(b)に示すように、長方形の鋼板を逆U字状に折り曲げて形成した把手6の前部下方に左右のシート保護部材7を設ける。シート保護部材7は先端が反り返り、不等辺山形をした鏝状となっていて、先端でシート5をレール3溝内に押し込めるようにし、且つ、レール角部4を覆うように水平面と垂直面からなる不等辺山形部分で、スプリング嵌入時にスプリング2とシート5がレール角部4で擦れ合って破損することから保護するようにしたものである。
【0013】左右のシート保護部材7の上面(山形の水平面)にスプリング2をレール3溝内に導く為のスプリングガイドローラー8を夫々設け、左右のシート保護部材7の内側面(山形の垂直面)にスプリング2をレール3溝内に押し込む為およびスプリング嵌入器具1がレール3に沿って走行する為の前車輪9を設ける。
【0014】把手6の両側を橋渡して、軸に左右のシート保護部材7が左右に移動する為のスライド軸10を設ける。また、スライド軸10にコイルバネ11を設けて左右のシート保護部材7を夫々把手6の両側に常に寄せて開いた状態とする。把手6の後部にレール3溝に嵌まってレール3溝内を回転移動する後車輪12を設ける。
【0015】さらに、把手6から前方に伸びるアーム13に取付けられたスプリング2の捩れを制止してスプリング2をスプリングガイドローラー8に導く為のスプリング振止め14設ける。スプリング振止め14の前方でアーム13の先端にスプリング2とシート5に潤滑剤を塗布する為の塗布部材15を設けた構成からなるスプリング嵌入器具1である。
【0016】上記構成からなるスプリング嵌入器具1を用いてレール3溝内にシート5と共にスプリング2を嵌め込み、シート5をレ−ル3に固定するには、まず、スプリング振止め14にスプリング2を通して、続いてスプリング2を左右のスプリングガイドローラー8間を通して前車輪9の下方に取出し、スプリング2の先端をシート5と共に手作業によってレール3溝内に嵌め込む。
【0017】次いで、スプリング嵌入器具1の前後の車輪9,12をレール3溝内に嵌め込み、把手6を持って前方に押すと、シート5はシート保護部材7の先端部でレール3溝内に押込まれ、同時に、スプリング2は塗布部材15によって潤滑剤を塗布されて、スプリング振止め14を通り、スプリングガイドローラー8によってスプリング2の角がレール3溝内側に押寄せられ、次いで、前車輪9によってレール3溝内に押込められ、レール3溝内に在るシート5と共にレール3溝内に広がってシート5をレール3溝に密着させて固定する。
【0018】図2に示すように、ビニールハウスに縦横に張り巡らせたレール3にはレール3とレール3の接続部やレール3を支持する金具の取り付け部においてレール3の溝巾が狭くなっている。従来のスプリング嵌入器具1は一端を支点とした板バネによってシート保護部材7を左右方向に移動させていたので、レール3の狭い部分を通過する時、シート保護部材7の後部できつくなりスプリング嵌入器具1を強く押さなければ通過しなかった。
【0019】図3に示すように、前後のスライド軸10によって支持されている左右のシート保護部材7はスライド軸10上を移動して左右のシート保護部材7の間隔を調整することができる。左右のシート保護部材7はスライド軸10に取り付いたコイルバネ11によって常に間隔が開いて把手6の両側に寄せられた状態となっているが、レール溝巾が狭いレール3や、レール接続部およびレール支持部などのレール溝巾が狭くなった部分では左右のシート保護部材7はスライド軸10上を平行に移動してコイルバネ11を押して縮め、左右のシート保護部材7の間隔が閉じた状態としてレール3溝巾の狭くなった部分を円滑に通過する。
【0020】図4に示すように、左右のシート保護部材7の先端がレール3の溝巾の狭くなった部分に差し掛かると、先端にかかる力によってシート保護部材7が移動して、コイルバネ11を押して縮ませ、左右のシート保護部材7の先端を閉じ、次いで狭まった部分が通過するに従って後端が閉じて、レール3の狭くなった部分を円滑に擦り抜けるようになっている。
【0021】図5に示すように、レール角部4を覆うようにして水平上面と垂直側面からなる山形に形成した左右のシート保護部材7の夫々の上面に上下方向を軸として回転するスプリングガイドローラー8を取り付ける。スプリングガイドローラー8はスプリング2をレール3溝の内側に寄せる為のものである。これは折れ曲げられたスプリング2の角をスプリングガイドローラー8で押さえて、一時的に折れ曲がりを直し、レール3の溝内に寄せるものである。左右のスプリングガイドローラー8は夫々左右のシート保護部材7に一体となって取り付いているので、夫々のシート保護部材7と共に左右に移動する。
【0022】図6に示すように、スプリングガイドローラー8の後方にあって、左右のシート保護部材7の内側面に左右方向を軸とした前車輪9を設ける。前車輪9はスプリングガイドローラー8によってレール3の溝の内側に寄せらたスプリング2をシート5と共にレール3溝の内部に押し込むためのものであと同時に、レール3溝に嵌り込んでスプリング嵌入器具1がレール軌道を移動するための車輪でもある。前車輪9によってスプリング2をレール3内に押し込む時、シート保護部材7が無いとレール角部4でスプリング2とシート5が擦れ合ってシート5が破損する。この破損を防ぐ為にシート保護部材7がレール角部4で折れ曲って山形となっている。左右の前車輪9は夫々左右のシート保護部材7に一体となって取り付いているので、夫々のシート保護部材7と共に左右に移動する。
【0023】なお、スプリングガイドローラー8および前車輪9はシート保護部材7と一体となって移動しなくても良く、左右のスプリングガイドローラー8は所定の間隔で把手6に固定されたものでもよい。又、前車輪9も把手6に固定されたものでも良い。
【0024】
【発明の効果】本発明は、上記説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。スプリングの嵌入時にレールの巾の変化に自在に対応できるので、スプリング嵌入器具を移動させてスプリングをレールに嵌入することが円滑になった。従来のスプリング嵌入器具より部品数が少なくコンパクトとなったので製作も容易でコストも安くなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】スプリング嵌入器具の(a)上面および(b)側面を示す概略図である。
【図2】レール溝の巾の狭まる部分を示すレールの概略説明図である。
【図3】シート保護部材が閉じた状態を示す概略図である。
【図4】シート保護部材の先端が閉じた状態を示す概略図である。
【図5】スプリング嵌入器具のスプリングガイドローラー部分の構成を示す概略断面図である。
【図6】スプリング嵌入器具の前車輪部分の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 スプリング嵌入器具
2 スプリング
3 レール
4 レール角部
5 シート
6 把手
7 シート保護部材
8 スプリングガイドローラー
9 前車輪
10 スライド軸
11 コイルバネ
12 後車輪
13 アーム
14 スプリング振止め
15 塗布部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 把手(6)の前部に先端が反り、レール角部(4)を覆うように不等辺山形をした左右のシート保護部材(7)を設け、左右のシート保護部材(7)の夫々の上方で上下方向を軸として回転するスプリングガイドローラー(8)を、スプリングガイドローラー(8)の後方で左右のシート保護部材(7)の間にレール(3)の溝に嵌って回転する前車輪(9)を設け、把手(6)の後部にレール(3)の溝に嵌まって回転する後車輪(12)を設けた。そして、左右のシート保護部材(7)は左右に移動して、左右のシート保護部材(7)間の間隔を自在に変えられるようにしたことを特徴とするシートを張装するためのスプリング嵌入器具。
【請求項2】 左右のシート保護部材(7)を移動させて左右のシート保護部材間(7)の間隔を自在に変える手段が、把手(6)の両側を橋渡して固定したスライド軸(10)をシート保護部材(7)が移動できるように、且つ、左右のシート保護部材(7)はスライド軸(10)に取り付いたコイルバネ(11)によって両側に押寄せられて開いた状態で取り付いていることを特徴とする請求項1記載のシートを張装するためのスプリング嵌入器具。。
【請求項3】 スプリング嵌入器具(1)の前方にスプリング(2)の振れを制止してスプリング(2)をスプリングガイドローラー(8)に導くためのスプリング振止め(14)とスプリング(2)およびシート(5)に潤滑剤を塗布するための塗布部材(15)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシートを張装するためのスプリング嵌入器具。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−779(P2000−779A)
【公開日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−183353
【出願日】平成10年6月15日(1998.6.15)
【出願人】(393015449)協伸株式会社 (2)
【Fターム(参考)】