説明

シートフレーム構造の製造方法

【課題】 寸法の異なるシートフレーム構造であっても同じ部材から形成することができ、寸法に合わせて準備する部材の種類を低減し、手間、製造コストの低減を図る。
【解決手段】本発明では、長尺部材1000に予めリクライナ170等の所定の部品を取り付けておき、その後に,曲げ加工を行って、一対のサイドフレーム110,120と上部フレーム130を一体に形成する。従って、リクライナ170の取付作業は、曲げ加工を行う前の長尺部材1000が略平坦になった状態で実施できると共に、一対のサイドフレーム110,120と上部フレーム130を一体に形成できるため、手間がかからず製造コストの低減に寄与する。しかも、曲げ加工を行う位置を調整することで、曲げ加工を行う前の長尺部材の長さが同じであっても、寸法の異なるシートフレーム構造を製造することができ、その点でも手間、製造コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座席構造のシートバック部又はシートクッション部の骨格であるシートフレーム構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、シートバック部のフレーム構造に関するものであって、パイプではなく板状部材を閉断面化して強度を高めたものを用い、その幅方向が車両の前後に向くように配置したフレーム構造を開示している。この場合、フレーム構造として、左右一対のサイドフレーム、上部フレーム及び下部フレームの4つに分割にした板状部材からなるフレームを予め準備し、各フレームの端部同士を突き合わせて溶接し、一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−46162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、左右一対のサイドフレーム、上部フレーム及び下部フレームに4分割した板状部材を用いているため、寸法の異なるシートフレーム構造を複数種類製造する場合には、分割状態における各板状部材として、所定寸法のものを複数種類準備しなければならず手間、コストがかかると共に、重量も嵩む。また、強度、剛性上の問題は、溶接部で生じる。特に、CO溶接では赤熱/青熱脆化の問題がある。また、スポット溶接では、接点のみの強度に依存することになるため、フレームの剛性を上げる必要がある。板厚をできるだけ薄くするために、特許文献1では閉断面化する手法をとっているが、いずれにしても、強度、剛性上の観点から、溶接箇所は少ないことが望ましい。
一方、特許文献1では、リクライナは図示されているものの、それをサイドフレームに取り付ける工程については詳細には触れられていない。しかし、一対のサイドフレーム、上部フレーム、下部フレームの各フレームの溶接前にリクライナを取り付けたのでは、スパッタがリクライナに付着しやすい等の理由から、このようなフレーム構造の場合、各フレーム同士の溶接作業を行って三次元の骨格とした後にリクライナを取り付けるのが一般的である。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、寸法の異なるシートフレーム構造であっても同じ部材から形成することができ、寸法に合わせて準備する部材の種類を低減し、部材の共通化を図り、部材準備や保管の手間を減らし、もって製造コストの低減を図ることができるシートフレーム構造の製造方法を提供することを課題とする。また、長尺部材へのリクライナ等の所定の部品を取り付ける位置、並びに、その後の溶接等を行う位置を工夫し、リクライナ等の所定の部品へのスパッタの付着等を低減し、かつ、所定の部品の取り付け作業を曲げ加工する前の略平坦な二次元の状態の長尺部材に対して実施できるようにすることで作業の容易化を図ることができるシートフレーム構造の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のシートフレーム構造の製造方法は、座席構造のシートバック部又はシートクッション部の骨格であるシートフレーム構造の製造方法であって、所定長さの長尺部材の所定の位置に、該長尺部材を略平坦状態としたまま所定の部品を取り付ける第1工程と、前記長尺部材を前記所定の部品を取り付けた状態で所定の位置で曲げ加工して、前記シートフレーム構造を構成する一対のサイドフレーム及び該一対のサイドフレームの一端間に位置する一方の端部フレームを形成する第2工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
1本の前記長尺部材を用い、前記第1工程における所定の部品を取り付ける工程を実施した後、前記第2工程における曲げ加工により、前記一対のサイドフレーム及び該一対のサイドフレームの一端間に位置する一方の端部フレームを一体に形成することが好ましい。また、2本の前記長尺部材を用い、それぞれについて前記第1工程における所定の部品を取り付ける工程を実施し、次に、2本の長尺部材の端部同士を突き合わせて接合し、しかる後、前記第2工程において、接合した前記長尺部材を曲げ加工して、前記一対のサイドフレーム及び該一対のサイドフレームの一端間に位置する一方の端部フレームを一体に形成することもできる。さらに、2本の前記長尺部材を用い、それぞれについて前記第1工程における所定の部品を取り付ける工程を実施し、次に、前記第2工程における曲げ加工をそれぞれの長尺部材について実施して、一方の端部フレームの略半分の部位と、それに隣接するサイドフレームの部位とを有する略L字状に形成し、一方の端部フレームの略半分の部位同士を突き合わせて接合することもできる。
【0008】
前記第1工程では、平板部材を所定の断面形状に加工して前記長尺部材とする工程を含むことが好ましい。前記第1工程では、前記略平坦状態の長尺部材に前記所定の部品を、溶接締結、かしめ締結、ボルト締結を含むいずれかの締結手段により取り付けることができる。前記第1工程では、前記長尺部材の少なくとも一部を熱処理する工程を含む構成とすることができる。前記一対のサイドフレームと前記一方の端部フレームとを形成した後、他方の端部フレームを前記一対のサイドフレームの他端間に接合して剛構造とする第3工程をさらに有することが好ましい。前記第1工程においては、前記一対のサイドフレームにおける前記他方の端部フレームに接合される側の面と反対側の面に、前記所定の部品を取り付けることが好ましい。前記第1工程において、曲げ加工後に前記一対のサイドフレームのそれぞれの後縁部に相当する部位が、前記他方の端部フレームの接合代となるように、当該部位を曲げ加工後の向きで内方に突出する断面形状となるように加工することが好ましい。前記第2工程において、前記長尺部材を曲げ加工する際の曲げ位置、曲げ位置数、曲げ半径、曲げ角度、曲げ部の形状のいずれか少なくとも一つの調整により、前記長尺部材として共通の寸法、形状のものを用いながら、異なる寸法、形状のものを製造するようにすることが好ましい。前記第2工程後、前記第3工程の実施により剛構造とする前に、前記長尺部材に取り付けられた所定の部品の位置合わせを行う工程を有することが好ましい。前記一対のサイドフレーム及び前記一方の端部フレームが、前記シートバック部を構成する一対のサイドフレーム及び上部フレームに相当する構成とすることが好ましい。前記所定の部品が、リクライナ関連部品、ランバーサポート関連部品、ヘッドレスト関連部品、調節機構関連部品の少なくとも一つを含むものとすることができる。前記所定の部品がリクライナ関連部品であり、前記第2工程後、前記第3工程の実施により剛構造とする前に実施する位置合わせ工程において、前記一対のサイドフレームに取り付けられた左右のリクライナ間に連結ロッドを連結し、連結ロッドの軸心に左右のリクライナの中心を一致させる位置合わせを行う構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、長尺部材に予めリクライナ等の所定の部品を取り付けておき、その後、曲げ加工を行って、一対のサイドフレームと一方の端部フレームとを形成する。すなわち、リクライナ等の部品の取付作業を、曲げ加工を行う前の長尺部材が略平坦になった二次元の状態で実施するものであり、従来の三次元の骨格に加工した後に部品の取り付けを行う場合と比較して、取り付け作業の容易化を図ることができる。また、略平坦状態の二次元の長尺部材に取り付けるということは、該長尺部材の上面方向又は下面方向から作業を行えばよいため、ロボット等を用いた自動化に大きく貢献でき、結果的に製造コストの低減につながる。また、長尺部材に対し、このような略平坦な状態で熱処理を施すようにすれば、熱処理装置の配置も長尺部材を挟んだ上下に配置すればよく、強度アップのための熱処理作業の容易化、低コスト化を図ることができると共に、自動化も行い易い。
【0010】
本発明は、長尺部材を略平坦な状態としたまま上記各作用を行った後に、曲げ加工をして三次元のシートフレーム構造としている。従って、一対のサイドフレームと一方の端部フレームとを一体に形成できるため、手間がかからず製造コストの低減に寄与する。しかも、曲げ加工を行う位置を調整することで、曲げ加工を行う前の長尺部材が共通の寸法であっても、寸法及び形状の異なるシートフレーム構造を製造することができ、従来の技術と比較して、予め準備する部材の種類の低減を図ることができ、加工対象となる部材の準備や保管の手間を減らし、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、他方の端部フレームのサイドフレームへの溶接を行う場合、サイドフレームに取り付けられたリクライナ等の所定の部品と反対側の面で実施できるようにすることにより、リクライナ等の所定の部品へのスパッタの付着を抑制することができる。また、リクライナのように、円滑な動作のために左右の動きの同期をとる必要があるものはその取り付け位置に高い精度が要求される。従来のように、サイドフレーム、上部フレーム及び下部フレームの各つなぎ部の溶接を行って固めた後すなわち剛構造とした後にリクライナ等を取り付けた場合、所定の精度を出すため、溶接時に寸法調整が必要となり、溶接作業が困難である。これに対し、本発明によれば、長尺部材の状態、すなわち柔構造の状態でリクライナ等を取り付けておくが、その後曲げ加工を行って略コ字状の状態でも、依然として柔構造である。従って、柔構造の状態で左右のリクライナを結ぶ連結ロッドを組み合わせて両者の位置合わせを正確に行い、位置合わせを行った後に他方の端部フレームを溶接して骨格形状を固定した剛構造にすることができるため、リクライナ等の取り付け位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態を適用して製造した座席構造のシートフレーム構造を示した斜視図である。
【図2】図2は、図1の正面図である。
【図3】図3は、図1の背面図である。
【図4】図4は、図1の側面図である。
【図5】図5は、本発明の一の実施形態に係る製造方法を説明するための図である。
【図6】図6(a)は曲げ加工後のバックフレームの構成を示した斜視図であり、図6(b)は(a)の分解斜視図である。
【図7】図7(a)は曲げ加工後にスポット溶接する部位を示した正面図であり、図7(b)は側面図であり、図7(c)は(a)のA−A線断面図であり、図7(d)は(a)のB−B線断面図であり、図7(e)は(a)のC−C線断面図であり、図7(f)は(a)のD−D線断面図である。
【図8】図8(a),(b)は長尺部材の曲げ位置を異ならせて曲げた場合のバックフレームを示した正面図である。
【図9】図9は、長尺部材にリクライナ及びブラケットを取り付けて曲げ加工を行う方法を示した図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態に係る製造方法を説明するための図である。
【図11】図11(a),(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1〜図4は、本発明のシートフレーム構造の製造方法により製造された車両用のシートフレーム構造を示した図であり、まず、この三次元の組立状態のシートフレーム構造の概要を説明する。なお、このシートフレーム構造のうち、シートバック部の骨格となるシートフレーム構造をバックフレーム100及びシートクッション部の骨格となるシートフレーム構造をクッションフレーム300とする。
【0014】
バックフレーム100は、所定間隔をおいて配置される一対のサイドフレーム110,120と、該サイドフレーム110,120の上部間に配置される上部フレーム130と、該サイドフレーム110,120の下部間に配置される下部フレーム150とを備えてなる。そして、シートクッション部30のクッションフレーム300のサイドフレーム310,320の後部に、バックフレーム100のサイドフレーム110,120の下部がリクライナ170を介して連結され、バックフレーム100はクッションフレーム300に対して前後に傾動可能に設けられる。
【0015】
バックフレーム100の各サイドフレーム110,120は、所定の幅を備えた板状部材から形成され、その幅方向がほぼ前後方向に沿う向きで配置される。具体的には、図4に示したように、その幅は、上側から下側に向かうに従って若干幅が広くなる形状を備えており、クッションフレーム300に対するバックフレーム100の傾きを略90度とした状態で側面から見た際に、前縁部110a,120aは、上側から下側に向かうに従って若干前方に膨出する方向に傾斜するラインに沿った形状となっている。
【0016】
上部フレーム130は、上記一対のサイドフレーム110,120の一端間に位置する一方の端部フレームであり、本実施形態では、この一対のサイドフレーム110,120及び上部フレーム130が正面から見て略コ字状となるように一体に成形されている。上部フレーム130は、このように、サイドフレーム110,120と一体に成形されており、サイドフレーム110,120と同様に板状部材から形成され、その幅方向がほぼ前後方向に沿う向きで配置される。
【0017】
下部フレーム150は、上記一対のサイドフレーム110,120の他端間に位置する他方の端部フレームであり、本実施形態では、一対のサイドフレーム110,120の他端間に溶接により接合されている。
【0018】
次に、上記したバックフレーム100の製造方法について図5〜図7に基づいて説明する。まず、第1工程では、図5に示したように、所定長さの長尺部材1000を1本準備する。この長尺部材1000は、平板状の鋼板をプレス加工等により所定の断面形状に加工したものを用いる。好ましくは、サイドフレーム110,120を相当する部位において、2枚の薄板鋼板1101と1102及び1201と1202を重ね合わせ、図6(d)〜(f)に示したような断面形状に加工する。このとき、図6(e)に示したように、2枚の薄板鋼板1101と1102及び1201と1202をヘミング加工により閉断面構造を作り、強度を上げる。なお、2枚の薄板鋼板は、図6(b),(c)に示したように、例えばスポット溶接により固着される。このスポット溶接は、図5に示した長尺部材1000が略平坦な二次元の長尺状態のときに行うため、作業が容易である。
【0019】
また、図5及び図6に示したように、サイドフレーム110,120に相当する部位は、前縁部110a,120a、側面部110b,120b及び後縁部110c,120cとを合わせて横断面形状で略コ字状になるように形成されるが、図6(a)及び図7のように正面から見た際に、前縁部110a,100bよりも後縁部110c,120cの幅が広く、内方に突出するように形成される。これにより、この後縁部110c,120cが下部フレーム150等をスポット溶接等により接合する際の接合代となる。
【0020】
図5に示したように、長尺部材1000の状態において、上記のようにプレス加工し、さらに、サイドフレーム110,120に相当する部位を上記のように2枚の薄板鋼板1101と1102及び1201と1202とでヘミング加工したならば、サイドフレーム110,120の下端に相当する部位、すなわち、長尺部材1000の上端で両端部付近にリクライナ170を任意の締結手段により取り付ける。リクライナ170は、図7(b)及び図8(b)に示したように、取付リング171と、この取付リング171内に嵌合支持される内歯ギア、ガイドブラケット等含んでなる本体部172とを有している。そして、サイドフレーム110,120の端部付近に貫通された取付孔110d,120dの内面側に固定される内側ブラケット180に対して、サイドフレーム110,120の反対面側からリクライナ170がボルトを用いて取り付けられている。本実施形態では、このリクライナ170の取り付け工程を図5に示した長尺部材1000が長尺状態のときに行う。すなわち、長尺部材1000が長さ方向の全長に亘ってほぼ平坦な二次元の状態でリクライナ170の取り付けを行えばよいため、容易に作業を行うことができる。
【0021】
なお、第1工程における部品を取り付けるための締結手段は、上記したボルトを用いた締結手段に限らず、ピアスナットを用いたボルト締結、溶接締結、かしめ締結(トックスカシメ、ヘミング加工等を含む)、その他の締結手段を取り付け部品に合わせて選択することができる。いずれの場合も、加工対象の長尺部材1000が二次元の状態であるため容易にこれらの作業を行うことができる。また、長尺部材1000が二次元状態であるため、かしめ機のローラ等の締結ジグを、該長尺部材1000の上下いずれかの方向から操作すればよく、自動装置で処理するのに適し、作業の容易化、低コスト化を図ることができる。さらに、第1工程では、長尺部材1000の少なくとも一部に熱処理を施し、当該部位の強化を図ることもできる。この場合も、略平坦な二次元の状態で熱処理作業を行うことができるため、熱処理装置の熱処理部を、長尺部材1000の上下面のいずれか少なくとも一方に配置すればよく、熱処理作業の自動化を容易に図ることができるという利点がある。
【0022】
本実施形態では、長尺部材1000に対して上記のプレス加工、ヘミング加工、リクライナ170の取り付け作業等を行ったならば、第2工程として、図6に示したように、長尺部材1000の所定の曲げ位置1001,1002から矢印方向に略コ字状に折り曲げる曲げ加工を行う。これにより、曲げ位置1001,1002に挟まれた部位が上部フレーム130となり、曲げ位置1001,1002のそれぞれの外側の部位がサイドフレーム110,120となり、これらが一体に三次元形状に形成される。これにより、バックフレーム100の3箇所のフレーム、すなわち一対のサイドフレーム110,120及び上部フレーム130を一度に形成することができ、しかも上記第1工程によりこの段階で既に必要な部品が取り付けられた状態になっており、この点でも、加工の容易化、製造コストの低減につながる。
【0023】
曲げ加工を行った後、左右のリクライナ170の位置合わせを行う。長尺部材1000を曲げ加工した段階では、一対のサイドフレーム110,120及び上部フレーム130の略コ字状になっているだけであるため、これは多少の変形を許容する柔構造のままである。従って、この状態で、図6(a),(b)に示したように、左右のリクライナ170間を連結ロッド200で連結する。そして、左右のリクライナ170の中心が連結ロッド200の軸心上に位置するように、柔構造のままである一対のサイドフレーム110,120の左右の同期を調整して左右の部品を物合わせをする。その位置合わせないしは物合わせした状態を保持用のジグを用いて保持し、最後に、下部フレーム150を溶接して接合し、剛構造とする。この結果、左右のリクライナ170の中心を連結ロッド200の軸心に容易に一致させることができる。なお、図6(b)に示した作動レバー用のコイルスプリング201やリクライナ170の復帰動作用の渦巻きバネ202は、連結ロッド200をリクライナ170に連結する前に該連結ロッド200に挿通しておく。
【0024】
曲げ加工を行ってリクライナ170の位置合わせを行ったならば、第3工程として、図7(a)に示したように下部フレーム150の各端部をサイドフレーム110,120の内方に突出している接合代である後縁部110c,120cに接合する。また、上部フレーム130に下方から嵌合される補強フレーム140の両側部も後縁部110c,120c及び上部フレーム130に接合する。この下部フレーム150及び補強フレーム140の接合作業は限定されるものではないが、本実施形態ではスポット溶接により行う。本実施形態によれば、従来のサイドフレーム110,120、上部フレーム130を分割して形成していた場合と比較して溶接箇所が少なくなり、この溶接箇所が少なくなったこと自体で他の部品へスパッタの飛び散る可能性が少なくなる。その上、リクライナ170は、上記したように、サイドフレーム110,120の外面側に配置されるのに対し、スポット溶接される部位は、サイドフレーム110,120の内面側に位置する後縁部110c,120cであり、リクライナ170へのスパッタの付着をさらに低減できる。
【0025】
本実施形態は、上記したように、略平坦な二次元状態の長尺部材1000にリクライナ170等を取り付けた後、所定の位置で曲げ加工を行って三次元形状としているが、この曲げ位置1001,1002の設定は任意である。従って、図8(a),(b)に示したように、例えば、a1<a2、b1>b2といった寸法となるように曲げ位置1001,1002を調整すれば、正面から見て、図8(a)を相対的に細長のバックフレーム100とし、図8(b)を相対的に幅広のバックフレーム100とするといった寸法調整を容易に行うことができる。つまり、長尺部材1000としては、同じ寸法、形状であるにも拘わらず、異なる寸法、形状のバックフレーム100を形成することができ、製造コストの低減に大きく貢献できる。また、バックフレーム100の寸法、形状を異ならせる手段としては、長尺部材1000の曲げ位置数、曲げ半径、曲げ角度、曲げ位置付近(曲げ部)の形状のいずれか少なくとも一つを調整することにより達成することができる。このように長尺部材1000の共用化により製造コストを低減できるが、通常、サイドフレーム110,120間に掛け渡す骨盤支持部材を構成するSバネを下部フレーム150に取り付けるようにする。そして、このSバネとして、フィッシュマウス付きのものを用いるkとで、サイドフレーム110,120間の間隔が異なるものであっても、一つのサイズのSバネで共用化できる。
【0026】
図9は、サイドフレーム110,120の外面側に、渦巻きバネ202、並びに、クッションフレーム300のサイドフレーム310,320を連結するためのブラケット190を予め取り付けた長尺部材1000を曲げ加工した例である。このように、曲げ加工する前の長尺部材1000にはリクライナ170だけではなく、渦巻きバネなどの種々のリクライナ関連部品を曲げ加工する前に予め取り付けることができる。さらに、ランバーサポート関連部品、ヘッドレスト関連部品、調節機構関連部品等を二次元状態の長尺部材1000に予め取り付けることも可能である。
【0027】
なお、上記実施形態に係るシートフレーム構造を構成するバックフレーム100及びクッションフレーム300には、上記の製造方法により所定の形状に加工したならば、さらに、三次元立体編物、二次元の布帛、ウレタン材などの種々のクッション材を配置して座席構造として提供される。
【0028】
また、上記実施形態では、バックフレーム100の加工について説明しているが、クッションフレーム300についても同様の加工が可能である。例えば、一対のサイドフレームとその前部間を接続する前縁フレームとを長尺部材1000の所定位置で折り曲げることにより、上記と同様に製造できる。
【0029】
上記実施形態では、長尺部材1000を1本用いただけであるが、設備の関係等により、一対のサイドフレーム110,120及び上部フレーム130の3つのフレーム部分を合わせた長さの長尺部材1000を成型することが困難な場合もある。このような場合、上部フレーム130の略中央に相当する位置で分断した長さを有する2本の長尺部材1100,1200を準備して上記と同様の工程でシートフレーム構造を製造することも可能である。
【0030】
例えば、図10に示したように、2本の長尺部材1100,1200に、それらを平坦な状態のままとして、例えば、上記と同様にリクライナ170をそれぞれに取り付ける。その後、2本の長尺部材1100,1200の端部1101,1201同士を突き合わせてスポット溶接等により接合する。これにより、上記した長尺部材1000と略同じ長さとなる。その後は、上記実施形態と同様に曲げ加工、リクライナ170の位置合わせ、下部フレーム150の溶接等を行って、シートフレーム構造を製造する。
【0031】
あるいは、図11に示したように、2本の長尺部材1100,1200に上記と同様にそれらを平坦な状態のままとして、例えば、リクライナ170をそれぞれに取り付けた後、図11(a)に示したように、2本の長尺部材1100,1200をそれぞれ曲げ加工する。これにより、一方の端部フレーム(上部フレーム130)の略半分の部位1301,1302と、それに隣接する各サイドフレーム110,120の部位とを有する略L字状の部材が形成される。この略L字状の部材が形成されたならば、図11(b)に示したように、上部フレーム130の略半分の部位1301,1302同士を突き合わせて接合する。これにより、上記した1本の長尺部材1000を曲げ加工した状態と同じになり、その後は、リクライナ170の位置合わせ、下部フレーム150の溶接等を上記実施形態と同様に行う。
【0032】
このような2本の長尺部材1100,1200を用いる場合でも、二次元の平坦な状態でリクライナ170等の所定の部品を取り付け、その後、曲げ加工した状態では、やはり柔構造のままであるため、上記実施形態と同様に、製造コストの低減、リクライナ等の取り付け精度の向上等の作用、効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のシートフレーム構造の製造方法は、自動車、列車、航空機等の乗物用の座席構造のバックフレームやクッションフレームの製造に適用できるほか、事務用椅子や家具用のソファなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
100 バックフレーム
110,120 サイドフレーム
110c,120c 後縁部
130 上部フレーム
150 下部フレーム
170 リクライナ
200 連結ロッド
300 クッションフレーム
1000 長尺部材
1001,1002 曲げ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席構造のシートバック部又はシートクッション部の骨格であるシートフレーム構造の製造方法であって、
所定長さの長尺部材の所定の位置に、該長尺部材を略平坦状態としたまま所定の部品を取り付ける第1工程と、
前記長尺部材を前記所定の部品を取り付けた状態で所定の位置で曲げ加工して、前記シートフレーム構造を構成する一対のサイドフレーム及び該一対のサイドフレームの一端間に位置する一方の端部フレームを形成する第2工程と
を含むことを特徴とするシートフレーム構造の製造方法。
【請求項2】
1本の前記長尺部材を用い、前記第1工程における所定の部品を取り付ける工程を実施した後、前記第2工程における曲げ加工により、前記一対のサイドフレーム及び該一対のサイドフレームの一端間に位置する一方の端部フレームを一体に形成する請求項1記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項3】
2本の前記長尺部材を用い、それぞれについて前記第1工程における所定の部品を取り付ける工程を実施し、次に、2本の長尺部材の端部同士を突き合わせて接合し、しかる後、前記第2工程において、接合した前記長尺部材を曲げ加工して、前記一対のサイドフレーム及び該一対のサイドフレームの一端間に位置する一方の端部フレームを一体に形成する請求項1記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項4】
2本の前記長尺部材を用い、それぞれについて前記第1工程における所定の部品を取り付ける工程を実施し、次に、前記第2工程における曲げ加工をそれぞれの長尺部材について実施して、一方の端部フレームの略半分の部位と、それに隣接するサイドフレームの部位とを有する略L字状に形成し、一方の端部フレームの略半分の部位同士を突き合わせて接合する請求項1記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項5】
前記第1工程では、平板部材を所定の断面形状に加工して前記長尺部材とする工程を含む請求項1〜4のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程では、前記略平坦状態の長尺部材に前記所定の部品を、溶接締結、かしめ締結、ボルト締結を含むいずれかの締結手段により取り付ける請求項1〜5のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程では、前記長尺部材の少なくとも一部を熱処理する工程を含む請求項1〜6のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項8】
前記一対のサイドフレームと前記一方の端部フレームとを形成した後、他方の端部フレームを前記一対のサイドフレームの他端間に接合して剛構造とする第3工程をさらに有する請求項1〜7のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程においては、前記一対のサイドフレームにおける前記他方の端部フレームに接合される側の面と反対側の面に、前記所定の部品を取り付ける請求項8記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項10】
前記第1工程において、曲げ加工後に前記一対のサイドフレームのそれぞれの後縁部に相当する部位が、前記他方の端部フレームの接合代となるように、当該部位を曲げ加工後の向きで内方に突出する断面形状となるように加工する請求項8又は9記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項11】
前記第2工程において、前記長尺部材を曲げ加工する際の曲げ位置、曲げ位置数、曲げ半径、曲げ角度、曲げ部の形状のいずれか少なくとも一つの調整により、前記長尺部材として共通の寸法、形状のものを用いながら、異なる寸法、形状のものを製造する請求項1〜10のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項12】
前記第2工程後、前記第3工程の実施により剛構造とする前に、前記長尺部材に取り付けられた所定の部品の位置合わせを行う工程を有する請求項8〜11のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項13】
前記一対のサイドフレーム及び前記一方の端部フレームが、前記シートバック部を構成する一対のサイドフレーム及び上部フレームに相当する請求項1〜12のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項14】
前記所定の部品が、リクライナ関連部品、ランバーサポート関連部品、ヘッドレスト関連部品、調節機構関連部品の少なくとも一つを含む請求項13記載のシートフレーム構造の製造方法。
【請求項15】
前記所定の部品がリクライナ関連部品であり、前記第2工程後、前記第3工程の実施により剛構造とする前に実施する位置合わせ工程において、前記一対のサイドフレームに取り付けられた左右のリクライナ間に連結ロッドを連結し、連結ロッドの軸心に左右のリクライナの中心を一致させる位置合わせを行う請求項12〜14のいずれか1に記載のシートフレーム構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−112229(P2013−112229A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261056(P2011−261056)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】