説明

シートベルトの制御装置

【課題】シートベルトの装着時におけるウェビングの弛み取り動作、およびシートベルトの装着の解除時におけるウェビングの収納動作を、快適性を維持しながら、短時間で終了させることができるシートベルトの制御装置を提供する。
【解決手段】シートベルト3は、電流の供給により作動するモータ9を有し、モータ9の作動によって、ウェビング5がリール8に巻き取られる。制御装置1によれば、シートベルト3が装着されたとき、および装着が解除されたときに、目標速度WSCMDを設定するとともに、ウェビング5の巻取速度WSが目標速度WSCMDになるように、モータ9への供給電流ECMを制御する。また、ウェビング5の変位がなくなったと判定されたときに、供給電流ECMを増加させ、その値が目標値ECMH1,ECMH2に達したときに、モータ9を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを用いてウェビングを巻き取るシートベルトの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のシートベルトの制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。シートベルトは、ウェビングを巻き取るリールと、リールを回転駆動するモータを有している。この制御装置では、シートベルトの装着が解除されたときに、モータに電流を供給することによってモータを作動させ、ウェビングを巻き取る巻取制御を開始する。この巻取制御では、モータの作動の開始後、モータの電流が増加したときに、ウェビングの弛みがなくなったとして、モータを作動/停止させる作動/停止期間を設定する。その後は、この設定に基づき、モータの作動および停止を繰り返す。そして、各作動期間中にモータの電流がしきい値を超えたか否かを判定し、しきい値を超えた回数が所定回数に達したときに、ウェビングが所望のテンション状態に達したとして、モータを停止させ、巻取制御を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−191820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1の制御装置では、シートベルトの装着が解除された後に、モータを作動させるとともに、モータの電流が増加した後に、モータの作動および停止と作動期間中における判定を繰り返しながら、ウェビングのテンションを増加させる。このため、この巻取制御を、シートベルトの装着時におけるウェビングの弛み取りに適用した場合には、モータの作動および停止と判定が繰り返される巻取制御の期間が長くなり、弛み取り動作が終了するまでに時間がかかるとともに、その間、モータの作動および停止の繰り返しにより、ウェビングのテンションが変動することによって、乗員に不快感を与えるおそれがある。
【0005】
これに対し、巻取制御の期間を短くするために、例えば、モータの電流が増加するまでに、モータにより多くの電流を供給し、リールをより高速で回転させることによって、ウェビングの弛みがなくなるまでの期間を短くすることも考えられる。しかし、その場合には、ウェビングの弛みがなくなった直後に大きなテンションが乗員に急激に作用するので、唐突感が大きく、やはり不快感を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、シートベルトの装着時におけるウェビングの弛み取り動作、およびシートベルトの装着の解除時におけるウェビングの収納動作を、快適性を維持しながら、短時間で終了させることができるシートベルトの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、電流が供給されることによって作動し、リール8を回転させることによってリール8にウェビング5を巻き取るためのモータ9を有するシートベルトの制御装置1であって、シートベルト3が装着状態にあるか否かを検出する装着状態検出手段(実施形態における(以下、本項において同じ)バックルスイッチ22)と、シートベルト3が装着状態および非装着状態の一方から他方に切り換わったときに、リール8によるウェビング5の巻取速度WSが所定の目標速度WSCMDになるように、モータ9に供給される供給電流ECMを制御する巻取速度制御手段(ECU2、図4のステップ22〜30、図5のステップ42〜50)と、ウェビング5の変位がなくなったか否かを判定する変位判定手段(ECU2、図4のステップ25、図5のステップ45)と、ウェビング5の変位がなくなったと判定されたときに、供給電流ECMを増加させる電流増加手段(ECU2、図4のステップ31、図5のステップ51)と、供給電流ECMが所定の目標値(第1目標値ECMH1、第2目標値ECMH2)に達したときに、モータ9を停止させるモータ停止手段(ECU2、図4のステップ33、図5のステップ53)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このシートベルトでは、電流の供給により作動するモータによって、リールを回転させ、ウェビングがリールに巻き取られる。本発明のシートベルトの制御装置によれば、シートベルトが装着状態および非装着状態の一方から他方に切り換わったときに、すなわち、シートベルトが装着されたとき、またはシートベルトの装着が解除されたときに、モータに供給される供給電流を制御することによって、ウェビングの巻取速度が所定の目標速度になるように制御される。それにより、ウェビングの弛み取り動作および収納動作の際に、ウェビングが一定の適度な速度で巻き取られることによって、ウェビングの巻き取りを滑らかに行えるとともに、巻き取りの際の騒音を抑制でき、快適性を維持することができる。
【0009】
また、ウェビングの変位がなくなったと判定されたときに、ウェビングの弛みがなくなったとして、モータへの供給電流を増加させるとともに、供給電流が所定の目標値に達したときに、ウェビングが所定のテンション状態になったとして、モータを停止させる。このように、ウェビングの弛みがなくなった後に供給電流を増加させるので、ウェビングが所定のテンション状態になるまでの時間を短縮でき、ウェビングの弛み取り動作および収納動作を短時間で終了させることができる。
【0010】
さらに、モータへの供給電流の増加を、ウェビングの変位がなくなったと判定されたときに行うので、ウェビングの弛みが実際になくなった適切なタイミングでモータへの供給電流を増加でき、乗員が予期しないタイミングでウェビングのテンションが増加することを回避できる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシートベルトの制御装置1において、電流増加手段は、シートベルト3が非装着状態から装着状態に切り換わったときには、装着状態から非装着状態に切り換わったときよりも、供給電流ECMを増加させる度合を小さくする(図4のステップ31、図5のステップ51)ことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、シートベルトの装着時には、シートベルトの装着の解除時よりも、ウェビングの弛みがなくなった後におけるモータへの供給電流の増加度合を小さくする。これにより、乗員がウェビングを着用した状態で行われる弛み取り動作においては、ウェビングの弛みがなくなった後にテンションが緩やかに増加することによって、乗員に作用するウェビングの締付力をより緩やかに増加させることができ、快適性を維持することができる。一方、乗員がウェビングを着用していない状態で行われる収納動作においては、モータへの供給電流の増加度合を大きくすることによって、ウェビングの収納動作をより短時間で終了させることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のシートベルトの制御装置1において、シートベルト3が非装着状態から装着状態に切り換わったときに、装着状態から非装着状態に切り換わったときよりも、目標速度WSCMDを小さな値に設定する目標速度設定手段(ECU2、図4のステップ22、図5のステップ42)をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、シートベルトの装着時には、シートベルトの装着の解除時よりも、巻取速度の目標速度を小さな値に設定する。これにより、弛み取り動作においては、ウェビングの弛みがなくなる前の巻取速度を低くすることによって、ウェビングの弛みがなくなった直後に大きなテンションが乗員に急激に作用することを回避でき、快適性を維持することができる。一方、収納動作においては、ウェビングの弛みがなくなる前の巻取速度を高くすることによって、ウェビングの収納動作をより短時間で終了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態によるシートベルトの制御装置を、車両の運転席などとともに概略的に示す正面図である。
【図2】シートベルトやECUを概略的に示す図である。
【図3】ECUによって実行される、モータの制御処理を示すフローチャートである。
【図4】ウェビングの弛み取り制御処理を示すフローチャートである。
【図5】ウェビングの収納制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示すシートベルト3は、いわゆる3点式のものであり、運転者(図示せず)を運転席SEに拘束するためのウェビング5と、ウェビング5を巻き取るためのリトラクタ6を有している。リトラクタ6は、車両Vの右側のセンタピラーCPの下部に取り付けられている。ウェビング5は、リトラクタ6から上方に延びるとともに、センタピラーCPの上部に取り付けられたスルーアンカTAに通されており、ウェビング5の先端部は、センタピラーCPの下部に、アウタアンカOAを介して固定されている。ウェビング5は、運転者に掛かっていない非装着状態では、センタピラーCPに沿って、上下方向に延びている。
【0017】
また、ウェビング5には、スルーアンカTAとアウタアンカOAの間に、タングプレートTPが設けられている。このタングプレートTPは、ウェビング5の長さ方向に移動自在であるとともに、バックルBUに着脱可能になっている。バックルBUは、車両VのフロントフロアFFに固定されており、運転席SE付近の助手席寄りに配置されている。以上の構成のシートベルト3では、運転席SEに着座した運転者が、ウェビング5をリトラクタ6から引き出し、タングプレートTPをバックルBUに係合させることによって、ウェビング5が運転者に掛けられる。この装着状態では、運転者は、ウェビング5によって運転席SEに拘束される。
【0018】
図2に示すように、リトラクタ6は、センタピラーCPに固定されたフレーム7と、ウェビング5が巻回されたリール8と、リール8を回転駆動するためのモータ9などで構成されている。リール8は、フレーム7に回転自在に支持されており、復帰ばね(図示せず)によって、ウェビング5を巻き取る方向(以下「巻取方向」という)に付勢されている。この復帰ばねによる付勢によって、ウェビング5は、非装着状態では、リール8に巻き取られ、リトラクタ6に部分的に収容される。
【0019】
また、リール8の軸部8aは、動力伝達機構10を介してモータ9の出力軸9aに連結されている。モータ9は、例えばDCモータで構成されており、供給された電流を動力に変換して出力軸9aから出力するものであり、動力伝達機構10とともに、車両Vの衝突時にウェビング5を巻き取るための電動式プリテンショナを構成している。
【0020】
さらに、動力伝達機構10は、機械式のクラッチや遊星歯車装置(いずれも図示せず)などで構成されている。モータ9が正転したときには、このクラッチによって、モータ9の出力軸9aがリール8の軸部8aに接続されるとともに、遊星歯車装置によって、モータ9の動力が減速した状態でリール8に伝達される。これにより、リール8は、ウェビング5を巻き取る方向(以下「巻取方向」という)に回転駆動される。一方、モータ9が逆転したときには、クラッチによって、出力軸9aと軸部8aの間が遮断される。
【0021】
以上の構成のシートベルト3では、シートベルト3の装着時、シートベルト3の装着の解除時および車両Vの衝突時以外の通常時には、モータ9とリール8の間が、クラッチによって遮断されている。また、車両Vの衝突時には、ECU2による制御によって、モータ9が正転することにより、モータ9とリール8の間がクラッチで接続されるとともに、リール8が巻取方向に回転駆動される。これにより、車両Vの衝突時、運転者に前方への慣性力が作用し、それによりウェビング5が引き出されるのに対して、モータ9の動力がウェビング5に負荷(制動力)として作用し、その結果、運転者の慣性力がウェビング5によって吸収される。また、後述するように、モータ9は、シートベルト3の装着時および装着の解除時に、ウェビング5の弛みを取るための巻き取りに用いられる。
【0022】
また、リトラクタ6には、回転角センサ21が設けられている。回転角センサ21は、ホール素子などで構成されており、リール8の回転角度位置を検出し、その検出信号をECU2に出力する。
【0023】
また、車両Vには、バックルスイッチ(以下「BU・SW」という)22が設けられている。BU・SW22は、前述したウェビング5のタングプレートTPがバックルBUに係合しているとき、すなわちウェビング5が装着状態のときに、ON信号をECU2に出力する一方、タングプレートTPがバックルBUに係合していないとき、すなわちウェビング5が非装着状態のときに、OFF信号をECU2に出力する。
【0024】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した回転角センサ21からの検出信号およびBU・SW22からの出力信号などに応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに基づいて、各種の演算処理を実行する。
【0025】
なお、本実施形態では、ECU2は、巻取速度制御手段、変位判定手段、電流増加手段、モータ停止手段、および目標速度設定手段に相当する。
【0026】
次に、図3〜図5を参照しながら、本発明の実施形態によるモータ9の制御処理について説明する。この制御処理は、シートベルト3の装着時または装着の解除時に、モータ9に供給する供給電流ECMを制御することによって、ウェビング5の巻き取りを制御するものである。本処理は、所定時間ごとに実行される。
【0027】
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、前回から今回までの間にBU・SW22の出力信号がOFFからONに切り換わったか否かを判別する。この答がYESで、シートベルト3が装着された直後のときには、ウェビング5を巻き取り、その弛みを除去するための弛み取り制御を実行するものとし、ステップ2において、弛み取り制御フラグF_BUONを「1」にセットし、ステップ3において、ウェビング5の弛み取り制御を開始し、本処理を終了する。
【0028】
一方、上記ステップ1の答がNOで、シートベルト3が装着された直後でないときには、ステップ4において、弛み取り制御フラグF_BUONが「1」であるか否かを判別する。この答がYESで、弛み取り制御の実行中のときには、上記ステップ3に進み、弛み取り制御を継続する。
【0029】
一方、上記ステップ4の答がNOのときには、ステップ5において、前回から今回までの間にBU・SW22の出力信号がONからOFFに切り換わったか否かを判別する。この答がYESで、シートベルト3の装着が解除された直後のときには、ウェビング5を巻き取り、センタピラーCP内に収納するための収納制御を実行するものとし、ステップ6において、収納制御フラグF_BUOFFを「1」にセットし、ステップ7において、ウェビング5の収納制御を開始し、本処理を終了する。
【0030】
一方、上記ステップ5の答がNOのときには、ステップ8において、収納制御フラグF_BUOFFが「1」であるか否かを判別する。この答がYESで、収納制御の実行中のときには、上記ステップ7に進み、収納制御を継続する。
【0031】
一方、上記ステップ8の答がNOで、弛み取り制御および収納制御がいずれも実行されていないときには、ステップ9において、供給電流ECMを0に設定し、モータ9を停止状態に維持する。
【0032】
次に、ウェビング5の弛み取り制御について説明する。図4はそのサブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ21において、弛み取り制御フラグの前回値F_BUONZが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、弛み取り制御を開始した直後のときには、ステップ22において、ウェビング5の巻取速度の目標値である目標速度WSCMDを所定の第1速度SP1(例えば50mm/s)に設定する。
【0033】
次に、ステップ23において、目標速度WSCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、モータ9への供給電流の基本値ECMbaseを算出し、ステップ24に進む。このマップでは、基本値ECMbaseは、目標速度WSCMDが大きいほど、より大きな値に設定されている。一方、前記ステップ21の答がYESで、弛み取り制御の開始直後でないときには、上述したステップ22および23をスキップし、ステップ24に進む。
【0034】
このステップ24では、回転角センサ21によって検出されたリール8の回転角度位置の前回値と今回値との差に基づいて、ウェビング5の巻取速度WSを算出する。次に、ステップ25において、算出した巻取速度WSが値0に近い所定速度WSL(例えば10mm/s)以下であるか否かを判別する。この答がNOで、WS>WSLのときには、ウェビング5の弛みがまだ残っていると判定し、以下のステップ26〜30を実行する。
【0035】
まず、ステップ26において、目標速度WSCMDと巻取速度WSとの差(=WSCMD−WS)を、偏差DWSとして算出する。次に、ステップ27において、算出した偏差DWSに基づき、所定のフィードバック制御によって、フィードバック補正項EFBを算出する。
【0036】
次に、ステップ28〜29において、フィードバック補正項EFBのリミット処理を実行する。このリミット処理ではまず、ステップ28において、フィードバック補正項EFBが所定の第1リミット値ELMT1(例えば3.5mA)よりも大きいか否かを判別する。この答がYESのときには、ステップ29において、フィードバック補正項EFBを第1リミット値ELMT1に設定し、ステップ30に進む。一方、上記ステップ28の答がNOで、EFB≦ELMT1のときには、そのままステップ30に進む。
【0037】
このステップ30では、前記ステップ23で算出した供給電流の基本値ECMbaseにフィードバック補正項EFBを加算することによって、モータ9への供給電流ECMを算出し、ステップ32に進む。以上のように供給電流ECMが算出されることにより、ウェビング5の巻取速度WSが目標速度WSCMDになるように制御される。
【0038】
一方、前記ステップ25の答がYESで、ウェビング5の巻取速度WSが所定速度WSL以下になったときには、ウェビング5の変位がなくなり、弛みがなくなったと判定し、ステップ31において、前回の供給電流ECMに所定の第1加算項EADD1を加算することによって、今回の供給電流ECMを算出し、ステップ32に進む。この第1加算項EADD1は、上述した第1リミット値ELMT1よりも大きな値(例えば6mA)に設定されている。このように供給電流ECMを算出することにより、ウェビング5の変位がなくなったと判定された後に、供給電流ECMが第1加算項EADD1ずつ段階的に増加する。
【0039】
ステップ30または31に続くステップ32では、供給電流ECMが所定の第1目標値ECMH1(例えば3.5A)以上であるか否かを判別する。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する。
【0040】
一方、上記ステップ32の答がYESで、供給電流ECMが第1目標値ECMH1に達したときには、ウェビング5が装着時用の所定のテンション状態に達したとして、ステップ33において、供給電流ECMを0に設定し、モータ9を停止させる。次に、ステップ34において、弛み取り制御フラグF_BUONを「0」にリセットし、本処理を終了する。
【0041】
次に、前記ステップ7で実行されるウェビング5の収納制御について説明する。図5はそのサブルーチンを示す。本処理ではまず、ステップ41において、収納制御フラグの前回値F_BUOFFZが「1」であるか否かを判別する。この答がNOで、収納制御を開始した直後のときには、ステップ42において、ウェビング5の目標速度WSCMDを、前述した弛み取り制御用の第1速度SP1よりも大きな所定の第2速度SP2(例えば100mm/s)に設定する。
【0042】
次に、ステップ43において、弛み取り制御の前記ステップ23と同様、目標速度WSCMDに応じ、同じマップを検索することによって、モータ9への供給電流の基本値ECMbaseを算出し、ステップ44に進む。一方、前記ステップ41の答がYESで、収納制御の開始直後でないときには、上記ステップ42および43をスキップし、ステップ44に進む。
【0043】
このステップ44では、前記ステップ24と同様にして、巻取速度WSを算出し、ステップ45において、算出した巻取速度WSが前記所定速度WSL以下であるか否かを判別する。この答がNOで、WS>WSLのときには、ウェビング5の収納が完了しておらず、その弛みがまだ残っていると判定し、以下のステップ46〜50を実行する。
【0044】
まず、ステップ46において、目標速度WSCMDと巻取速度WSとの差を偏差DWSとして算出する。次に、ステップ47において、前記ステップ27と同様にして、フィードバック補正項EFBを算出する。
【0045】
次に、ステップ48〜49において、フィードバック補正項EFBのリミット処理を実行する。具体的には、フィードバック補正項EFBが、弛み取り制御用の第1リミット値ELMT1よりも大きな所定の第2リミット値ELMT2(例えば6mA)よりも大きいか否かを判別し(ステップ48)、その答がYESのときには、フィードバック補正項EFBを第2リミット値ELMT2に設定し(ステップ49)、ステップ50に進む。一方、上記ステップ48の答がNOで、EFB≦ELMT2のときには、そのままステップ50に進む。
【0046】
このステップ50では、前記ステップ43で算出した供給電流の基本値ECMbaseにフィードバック補正項EFBを加算することによって、モータ9への供給電流ECMを算出し、ステップ52に進む。
【0047】
一方、前記ステップ45の答がYESで、ウェビング5の巻取速度WSが所定速度WSL以下になったときには、ウェビング5の変位がなくなり、弛みがなくなったと判定し、ステップ51において、前回の供給電流ECMに所定の第2加算項EADD2を加算することによって、今回の供給電流ECMを算出し、ステップ52に進む。この第2加算項EADD2は、前記第2リミット値ELMT2よりも大きく、かつ、弛み取り制御用の第1加算項EADD1よりも大きな値(例えば8mA)に設定されている。このように供給電流ECMを算出することにより、ウェビング5の変位がなくなったと判定された後に、供給電流ECMが第2加算項EADD2ずつ段階的に増加し、その増加度合は、弛み取り制御の場合よりも大きい。
【0048】
ステップ50または51に続くステップ52では、供給電流ECMが、弛み取り制御用の第1目標値ECMH1よりも大きな所定の第2目標値ECMH2(例えば5A)以上であるか否かを判別する。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する。
【0049】
一方、上記ステップ52の答がYESで、供給電流ECMが第2目標値ECMH2に達したときには、ウェビング5が収納時用の所定のテンション状態に達したとして、ステップ53において、供給電流ECMを0に設定し、モータ9を停止させる。次に、ステップ54において、収納制御フラグF_BUOFFを「0」にリセットし、本処理を終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、シートベルト3が装着されたとき、および装着が解除されたときに、目標速度WSCMDを設定する(図4のステップ22、図5のステップ42)とともに、ウェビング5の巻取速度WSが所定速度WSL以下になるまでは、巻取速度WSが目標速度WSCMDになるように、モータ9への供給電流ECMをフィードバック制御する(図4のステップ22〜30、図5のステップ42〜50)。これにより、ウェビング5の弛みがなくなるまでは、ウェビング5の巻き取りを一定の適度な速度で滑らかに行えるとともに、巻き取りの際の騒音を抑制でき、快適性を維持することができる。
【0051】
また、供給電流ECMのフィードバック補正項EFBを第1および第2リミット値ELMT1,ELMT2で制限する(図4のステップ28〜29、図5のステップ48〜49)。これにより、例えば、ウェビング5がフィードバック制御中に引っ掛かることで、巻取速度WSが大きく低下した場合でも、その回復のために供給電流ECMおよび巻取速度WSが急激に増大することがなく、快適性を維持することができる。
【0052】
また、巻取速度WSが所定速度WSL以下になったときに、ウェビング5の変位がなくなったとして、供給電流ECMの増加を開始する(図4のステップ25、図5のステップ45)ので、ウェビング5の弛みが実際になくなった適切なタイミングで供給電流ECMを増加でき、運転者が予期しないタイミングでウェビング5のテンションが増加することを回避できる。
【0053】
また、その際に、第1加算項EADD1および第2加算項EADD2を繰り返し加算することによって、供給電流ECMを漸増させる(図4のステップ31、図5のステップ51)ので、ウェビング5が所定のテンション状態になるまでの時間を短縮でき、ウェビング5の弛み取り動作および収納動作をいずれも短時間で終了させることができる。
【0054】
また、弛み取り制御用の第1加算項EADD1は、収納制御用の第2加算項EADD2よりも小さいので、運転者がウェビング5を着用した状態で行われる弛み取り制御においては、運転者に作用するウェビング5の締付力を徐々に増加させることができ、快適性を維持することができる。一方、運転者がウェビング5を着用していない状態で行われる収納制御では、より大きな第2加算項EADD2を用いることによって、収納動作を短時間で終了させることができる。
【0055】
さらに、弛み取り制御では、ウェビング5の巻取速度WSの目標速度WSCMDを、収納制御用の第2速度SP2よりも小さな第1速度SP1に設定する(図4のステップ22、図5のステップ42)。これにより、弛み取り動作中、ウェビング5の弛みがなくなった直後に大きなテンションが運転者に急激に作用することを回避でき、快適性を維持することができる。一方、収納制御では、目標速度WSCMDをより大きな第2速度SP2に設定するので、収納動作を短時間で終了させることができる。
【0056】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、ウェビング5の変位がなくなったか否かの判定を、巻取速度WSが所定速度WSL以下になったか否かに基づいて行っているが、これに限らず、例えば、ウェビング5の張力やモータ9の負荷を検出し、それらの検出値が所定のしきい値を超えたか否かに基づいて行ってもよい。
【0057】
また、実施形態では、ウェビング5の弛みがなくなった後、供給電流ECMを、一定の第1加算項EADD1および第2加算項EADD2を繰り返し加算することによって、線形的に増加させているが、非線形的に増加させてもよく、例えば、第1加算項EADD1および第2加算項EADD2を、時間が経過するにつれて段階的に増加させてもよい。それにより、弛み取り動作および収納動作をさらに短時間で終了させることができる。
【0058】
また、実施形態は、本発明を運転席用のシートベルトに適用した例であるが、本発明を、助手席や後部座席に設けられたシートベルトに適用してもよい。また、シートベルトは、実施形態では3点式であるが、2点式や4点式のものでもよい。
【0059】
また、実施形態は、本発明を車両のシートベルトに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、船舶や航空機などのシートベルトに適用してもよく、遊園地の遊戯設備のシートベルトに適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 制御装置
2 ECU(巻取速度制御手段、変位判定手段、電流増加手段、モータ停止手段、
目標速度設定手段)
3 シートベルト
5 ウェビング
8 リール
9 モータ
22 バックルスイッチ(装着状態検出手段)
WS 巻取速度
WSCMD 目標速度
ECM 供給電流
ECMH1 第1目標値(目標値)
ECMH2 第2目標値(目標値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が供給されることにより作動し、リールを回転させることによって当該リールにウェビングを巻き取るためのモータを有するシートベルトの制御装置であって、
前記シートベルトが装着状態にあるか否かを検出する装着状態検出手段と、
前記シートベルトが装着状態および非装着状態の一方から他方に切り換わったときに、前記リールによる前記ウェビングの巻取速度が所定の目標速度になるように、前記モータに供給される供給電流を制御する巻取速度制御手段と、
前記ウェビングの変位がなくなったか否かを判定する変位判定手段と、
当該ウェビングの変位がなくなったと判定されたときに、前記供給電流を増加させる電流増加手段と、
前記供給電流が所定の目標値に達したときに、前記モータを停止させるモータ停止手段と、
を備えることを特徴とするシートベルトの制御装置。
【請求項2】
前記電流増加手段は、前記シートベルトが非装着状態から装着状態に切り換わったときには、装着状態から非装着状態に切り換わったときよりも、前記供給電流を増加させる度合を小さくすることを特徴とする、請求項1に記載のシートベルトの制御装置。
【請求項3】
前記シートベルトが非装着状態から装着状態に切り換わったときに、装着状態から非装着状態に切り換わったときよりも、前記目標速度を小さな値に設定する目標速度設定手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のシートベルトの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−82325(P2013−82325A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223614(P2011−223614)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】