説明

シートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構

【課題】車室内におけるプリテンショナー機構の取付位置の自由度を増加させることができ、しかも、組付工数の削減及び組付性の向上を図る。
【解決手段】シートベルト装置10を構成するプリテンショナー機構44は、シートベルト36の端部に対してアンカープレート42を介して接続されるワイヤケーブル48と、該ワイヤケーブル48の端部が接続されるシリンダ46との備え、前記シリンダ46が、車両用シート12のメンバーフレーム28近傍に配置される。そして、シリンダ46内に充填された火薬が爆発することにより、ワイヤケーブル48を介してアンカープレート42が引張され、シートベルト36によって乗員が拘束される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートにおいて乗員を保護するシートベルト装置に関し、一層詳細には、車両衝突時において前記乗員の拘束を高めるシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に適用されるシートベルト装置には、車両衝突時にシートベルトの弛みを巻き取り、該乗員を拘束して保護するためのプリテンショナー機構が設けられている。このようなプリテンショナー機構は、例えば、シートベルトの一端部が、プリテンショナー機構を介して車体側に設けられると共に、前記シートベルトの他端部が、車両におけるセンターピラーの内部に導かれ、別のプリテンショナー機構に接続されている。
【0003】
そして、車両衝突時には、シートベルトの一端部及び他端部に対して2つのプリテンショナー機構から互いに離間する方向に張力が付与され、引張されたシートベルトによって乗員が拘束される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−359028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなプリテンショナー機構を、車両用シートの側方となる車体側に設ける場合、例えば、車体側に設けられた位置決め孔に合わせるように組付作業を行う必要があり、その作業が煩雑であり組付工数が増加してしまうと共に、組付性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、上述したような課題を鑑みて、例えば、プリテンショナー機構を、車体側に設ける代わりに車両用シートの側部に設けることが想定される。しかしながら、車両用シートの側部には、例えば、乗員の背面を支持するシートバックの角度を調整するための角度調整レバーや、座面の高さ調整を行うための座面調整レバー等が設けられているため、前記プリテンショナー機構の設置スペースが限られてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、車室内における取付位置の自由度を増加させることができ、しかも、組付工数の削減及び組付性の向上を図ることが可能なシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両用シートに乗車した乗員をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置において、車両衝突時において前記シートベルトを引張して前記乗員に対する拘束力を高めるプリテンショナー機構であって、
前記プリテンショナー機構は、前記シートベルトに対して一端部が連結されるケーブルと、
前記ケーブルの他端部に接続され、前記車両衝突時において変位体に推力を付与して変位させ、前記ケーブルを引張する引張力発生手段と、
を備え、
前記引張力発生手段が、前記車両用シートの下部に設けられ、車両の幅方向に沿って延在するメンバーフレームに沿わせて配置されることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
また、引張力発生手段は、内部に変位体が変位自在に設けられた筒状のシリンダからなり、前記シリンダを、車両用シートの下部に設けられ車両の幅方向に沿って延在するメンバーフレームと平行に設けることが好ましい(請求項2)。
【0010】
さらにまた、シリンダを、メンバーフレームの内部に収容することが好ましい(請求項3)。
【0011】
またさらに、引張力発生手段を、メンバーフレームの後部又は下部に設け、ケーブルを案内するガイド機構を、車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームの外周面に沿って設けることが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、車室内において車両用シートの下部において、該車両用シートを構成するメンバーフレームに沿わせて車両衝突時にケーブルを引張する引張力発生手段を設置することにより、前記メンバーフレーム近傍には前記引張力発生手段を設置できる十分なスペースがあるため、前記引張力発生手段を前記車両用シートの側方や車両側に設ける場合と比較し、十分なスペースを有するメンバーフレームに沿わせて設置することで前記引張力発生手段をコンパクトに配置することができ、しかも、設置スペースを確保しながら組付性を向上させることができる。また、引張力発生手段を車両側に設置する場合と比較し、車両用シートのメンバーフレームに沿うように予め配置して組み付けておくことも可能となるため、その組付作業を簡素化でき、それに伴って、組付性の向上及び組付工数の削減を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、引張力発生手段を、その内部に変位体が変位自在に設けられたシリンダとし、前記シリンダを車両用シートの下部に設けられたメンバーフレームと平行に設けているため、前記車両用シートの下部スペースを有効に活用することができる。
【0014】
また、メンバーフレームは、高い剛性を備えているため、該メンバーフレームに平行に引張力発生手段を設置することによって該引張力発生手段で発生する引張力を効果的に作動させることが可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、シリンダを、メンバーフレームの内部に収容することにより、該シリンダが外部に露呈することが回避されるため、車両用シートの後方スペースを有効に活用することができ、例えば、後席に乗車する乗員の足元近傍に十分なスペースを確保することが可能となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、車両用シートにおいてメンバーフレームの後部又は下部に引張力発生手段が設けられ、該引張力発生手段に接続されたケーブルを、ガイド機構によって好適に車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに沿わせて前記車両用シートの側方まで案内することができるため、前記ケーブルに付与された引張力が、シートベルトの他端部へと確実に伝達され、該シートベルトを引張することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナー機構を含むシートベルト装置が付設される車両用シートを示す正面図である。
【図2】図1に示す車両用シートの斜め後方から見た一部省略斜視図である。
【図3】図2に示すプリテンショナー機構を構成するシリンダの分解斜視図である。
【図4】プリテンショナー機構を、メンバーフレームの上方に配置した場合を示す一部省略斜視図である。
【図5】プリテンショナー機構を、メンバーフレームの前方に配置した場合を示す一部省略斜視図である。
【図6】プリテンショナー機構を、メンバーフレームの下方に配置した場合を示す一部省略斜視図である。
【図7】第2の実施の形態に係るシートベルト装置の適用された車両用シートを斜め後方から見た一部省略斜視図である。
【図8】図7に示すシートベルト装置を構成するプリテンショナー機構を、メンバーフレームから離脱させた状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリテンショナー機構を備えたシートベルト装置の付設される車両用シートを示す正面図である。なお、以下の説明において、車両用シートに関し、「左右方向」、「左右」又は「シート幅方向」とは、図1に示す矢印A1、A2方向を示すと共に、車両における前席の運転席側の車両用シートに付設されるシートベルト装置10について説明する。
【0020】
先ず、シートベルト装置10の付設される車両用シート12について図1及び図2を参照しながら簡単に説明する。この車両用シート12は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション14と、該シートクッション14の後端部に傾動自在に支持され前記乗員の背面を支持するシートバック16とを含み、前記シートクッション14の下部には、車両の床面18に一組のシートレール20を介して固定されるシートフレーム22が設けられている。
【0021】
シートフレーム22は、例えば、シート幅方向(矢印A1、A2方向)に設けられる一対の第1及び第2サイドフレーム部24、26と、前記第1及び第2サイドフレーム部24、26の前端部同士を接合するメインフレーム部(フロントフレーム)(図示せず)とを有し、前記第1及び第2サイドフレーム部24、26の後端部には、第1サイドフレーム部24と第2サイドフレーム部26とを接続するようにシート幅方向(矢印A1、A2方向)に沿ってメンバーフレーム(リアフレーム)28が設けられる。
【0022】
なお、車両用シート12において、第1サイドフレーム部24が、車体側(矢印A1方向)となり、第2サイドフレーム部26が、助手席側(矢印A2方向)となるように設けられ、前記第1サイドフレーム部24の前端部から中間部にかけて、シートクッション14の高さを調整可能なハイトレバー30や、シートバック16の傾斜角度を調整可能なリクライニングレバー32が設けられる。
【0023】
このメンバーフレーム28は、例えば、両端部が開口した管体からなり、車両の床面18に対して略平行に設けられると共に、その一端部が第1サイドフレーム部24を貫通し、他端部が、第2サイドフレーム部26を貫通した状態で固定される。
【0024】
次に、このような車両用シート12に付設されるシートベルト装置10について説明する。このシートベルト装置10は、車両におけるセンターピラー34(図1参照)内に一端部が収納されたシートベルト36と、前記シートベルト36の途中に設けられるタングプレート38と、前記タングプレート38が着脱自在に係合されるインナーバックル40と、前記シートベルト36の他端部に接続されるアンカープレート42と、前記アンカープレート42に連結され、前記シートベルト36を引張可能なプリテンショナー機構44とを含む。なお、シートベルト36の一端部は、センターピラー34内に収容されたシートベルトリトラクタ(図示せず)に接続されている。
【0025】
そして、車両用シート12に乗員が座った状態で、該乗員がシートベルト36を引張してタングプレート38をインナーバックル40に差し込むことにより、該タングプレート38と前記インナーバックル40とが係合され、前記シートベルト36によって前記乗員が拘束される。
【0026】
プリテンショナー機構44は、図1〜図3に示されるように、例えば、シートフレーム22を構成するメンバーフレーム28の後方(矢印B方向)、すなわち、車両用シート12における後席側に所定間隔離間して設けられ、有底筒状のシリンダ46と、該シリンダ46の一端部から外方に向かって突出し、アンカープレート42に接続されるワイヤケーブル48とを備える。このように、メンバーフレーム28の後方にシリンダ46を配置することにより、前記シリンダ46を、車両用シート12における後方スペースの大きさや組付作業性等を考慮した自由な位置に設置することができる。
【0027】
このシリンダ46は、メンバーフレーム28と略平行に配置され、その内部に軸線方向に沿って変位自在なピストン(変位体)50を備え、該ピストン50の中心には、ワイヤケーブル48の一端部が接続されている。なお、シリンダ46は、その一端部が、車両用シート12の第1サイドフレーム部24側(矢印A1方向)となり、他端部が、前記車両用シート12の第2サイドフレーム部26側(矢印A2方向)となるように設けられる。
【0028】
また、シリンダ46における一端部の外周には、半径外方向に突出した供給ポート52が形成され、該供給ポート52が前記シリンダ46の内部と連通している。この供給ポート52は、シリンダ46の内部に火薬を供給する供給口として用いられる。そして、供給ポート52は、キャップ54が装着されることによって封止される。
【0029】
そして、供給ポート52を通じて火薬がシリンダ46の内部において一端部とピストン50との間に供給され、例えば、車両衝突時に図示しない着火手段によって前記火薬に着火して爆発させることにより、その爆発によって発生する爆発ガスによって前記ピストン50がシリンダ46の他端部側(矢印A2方向)に向かって付勢されて変位する。その際、ピストン50に接続されたワイヤケーブル48の一端部が引張され、アンカープレート42と共にシートベルト36の他端部が引張されることとなる。すなわち、このシリンダ46は、火薬の爆発作用下にワイヤケーブル48に対して所定方向の付与される引張力を発生させる引張力発生手段として機能する。
【0030】
一方、シリンダ46の他端部には、第2サイドフレーム部26に固定された取付ブラケット56が内部に挿入されると共に、鉛直方向に貫通した一対の孔部58を介して固定用ボルト60が挿通され、前記取付ブラケット56のねじ孔62に螺合される。これにより、プリテンショナー機構44を構成するシリンダ46が、取付ブラケット56を介して第2サイドフレーム部26の後端部に固定される。
【0031】
特に、第2サイドフレーム部26とメンバーフレーム28との連結部にシリンダ46を固定することで、剛性の高い部分に固定されるため、該シリンダ46に引張力が発生した時においても安定した動作が可能となる。
【0032】
なお、シリンダ46の固定方法は、上述した取付ブラケット56を介した第2サイドフレーム部26への固定に限定されるものではなく、例えば、メンバーフレーム28に図示しない取付ステー等を設け、前記取付ステー等を介して前記メンバーフレーム28にシリンダ46を固定するようにしてもよい。この場合、取付ブラケット56で固定する場合と比較してより簡便にシリンダ46を固定することが可能である。
【0033】
ワイヤケーブル48は、シリンダ46を構成するピストン50とアンカープレート42とを接続可能な所定長さで形成され、その一端部が、シリンダ46の内部においてピストン50に接続され、他端部が、アンカープレート42に接続されている。また、ワイヤケーブル48は、その中間部において、第1サイドフレーム部24の後端部に設けられたガイド64の内部に挿通されると共に、該第1サイドフレーム部24の側面に設けられたガイドプーリ66に挿通されて上方へと導かれる。すなわち、上述したガイド64及びガイドプーリ66は、シリンダ46とアンカープレート42との間においてワイヤケーブル48を所定方向へと案内するガイド機構68として機能する。
【0034】
ガイド64は、例えば、略直角に折曲されたL字状に形成され、その内部にワイヤケーブル48の案内される溝部70を有している。そして、シリンダ46の一端部から車両用シート12の幅方向(矢印A1方向)に延在したワイヤケーブル48が、ガイド64の溝部70に挿通されることによって第1サイドフレーム部24に沿うように車両用シート12の前方側(矢印C方向)に向かって方向変換され、ガイドプーリ66へと導かれた後、前記ガイドプーリ66の外周面に沿って上方へと導かれアンカープレート42に接続される。なお、ガイドプーリ66は、第1サイドフレーム部24に対して回転自在に設けられている。
【0035】
本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナー機構44の適用されたシートベルト装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0036】
先ず、例えば、車両の衝突が図示しない衝撃センサ等によって検知されると、プリテンショナー機構44のシリンダ46の内部において、図示しない着火手段によって火薬が着火されて爆発する。これにより、火薬の爆発によって発生した爆発ガスによってピストン50がシリンダ46の他端部側(矢印A2方向)へと付勢されて変位し、該ピストン50と共にワイヤケーブル48の一端部が変位することにより、前記ワイヤケーブル48を介してアンカープレート42が乗員から離間するように下方へと引張される。その結果、引張されたシートベルト36が乗員の腰部近傍に密着し、該乗員をシートクッション14との間に拘束するため、車両の衝突時における前記乗員の前方(矢印C方向)への移動が確実に阻止される。
【0037】
この際、ワイヤケーブル48は、ガイド64及びガイドプーリ66によって経路が確実に確保され、且つ、案内されているため、安定的に動作させてシートベルト36を引張することが可能となる。
【0038】
また、上述したプリテンショナー機構44が動作するのと同時に、センターピラー34内に設けられたシートベルトリトラクタ(図示せず)によってシートベルト36の一端部側も引張されているため、シートベルト36が乗員の胸部近傍に密着し、該乗員をシートバック16との間に拘束している。
【0039】
すなわち、車両の衝突時には、シートベルト36の一端部及び他端部が共に引張され、乗員の胸部近傍及び腰部近傍がそれぞれ前記シートベルト36によって確実に拘束され、該乗員の前方(矢印C方向)への移動が阻止される。
【0040】
以上のように、第1の実施の形態では、車両用シート12は、両側部にそれぞれ設けられた第1及び第2サイドフレーム部24、26の後端部にメンバーフレーム28が設けられ、車両用シート12の幅方向(矢印A1、A2方向)に延在するメンバーフレーム28の近傍にプリテンショナー機構44を構成するシリンダ46を設けている。すなわち、車室内において、メンバーフレーム28の近傍には使われていない空間(スペース)を有しているため、該空間を利用してプリテンショナー機構44を構成するシリンダ46を設置する。
【0041】
このように、車室内において、比較的スペースに余裕のある車両用シート12の後方(矢印B方向)にプリテンショナー機構44のシリンダ46を設置することにより、前記プリテンショナー機構44を前記車両用シート12の側方や車体側に設ける場合と比較し、十分なスペースを有するメンバーフレーム28に沿わせて設置することで前記シリンダ46をコンパクトに配置することができ、しかも、設置スペースを確保しながら組付性を向上させることができる。
【0042】
また、プリテンショナー機構44を、車両用シート12において車体側となる第1サイドフレーム部24に設けた場合に懸念されるリクライニングレバー32等との設置スペースの重複を回避することができる。
【0043】
さらに、プリテンショナー機構44を車体側に設置する場合と比較し、車両用シート12に予め組み付けておくことも可能となるため、その組付作業を簡素化でき、それに伴って、組付性の向上及び組付工数の削減を図ることができる。
【0044】
さらにまた、プリテンショナー機構44を、車体に対して位置決めするという煩雑な作業が不要となるため、組付性を向上させることが可能となる。
【0045】
さらにまた、プリテンショナー機構44のシリンダ46を、剛性の高いメンバーフレーム28に沿わせて設置しているため、前記シリンダ46を介してワイヤケーブル48に対して引張力を付勢する際に効果的に伝達して引張することが可能となる。
【0046】
なお、プリテンショナー機構44は、上述した説明のようにシリンダ46が、メンバーフレーム28の後方(矢印B方向)に設置される場合に限定されるものではなく、例えば、図4に示されるプリテンショナー機構100のように、シリンダ102をメンバーフレーム28の上方に設けるようにしてもよい。この場合、シリンダ102の一端部から外部へと延在するワイヤケーブル48は、例えば、第1サイドフレーム部24の後端近傍に開口した挿通孔104に挿通されると共に、該挿通孔104に設けられたガイド106に沿って前方(矢印C方向)へと導かれる。
【0047】
また、図5に示されるプリテンショナー機構110のように、シリンダ112をメンバーフレーム28の前方(矢印C方向)に設けるようにしてもよく、この場合、前記メンバーフレーム28の上方に設けた場合と同様に、第1サイドフレーム部24の後端近傍に開口した挿通部114に挿通されたワイヤケーブル48がガイド116に沿って前方(矢印C方向)へと導かれる。
【0048】
このようにシリンダ102、112をメンバーフレーム28の上方又は前方に設けることにより、該メンバーフレーム28の下方となる空間(スペース)を有効活用することができる。例えば、車両用シート12の後方(矢印B方向)に位置した後席に乗員が乗車した際、その足元近傍のスペースがプリテンショナー機構100、110によって狭くなることが回避され、前記足元近傍に十分なスペースを確保することが可能となり、前記乗員の快適性を向上させることができる。
【0049】
さらに、図6に示されるプリテンショナー機構120のように、シリンダ122をメンバーフレーム28の下方に設けるようにしてもよい。この場合には、第2サイドフレーム部26における後端部下側に上下方向に延在するようにガイド124が設けられており、ワイヤケーブル48が、第2サイドフレーム部26の下方から上方に向かって導かれる。
【0050】
すなわち、車室内において、比較的スペースに余裕のある車両用シート12のメンバーフレーム28の近傍にプリテンショナー機構100、110、120のシリンダ102、112、122を設けるようにすればよい。このように、シリンダ102、112、122を、車両用シート12における下部スペースの大きさや組付作業性等を考慮した自由な位置に設置することができる。
【0051】
また、上述したプリテンショナー機構44では、シリンダ46の他端部が、第2サイドフレーム部26等に固定される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ピストン50の変位と共にシリンダ46を同一方向に可動させるようにしてもよい。
【0052】
次に、第2の実施の形態に係るプリテンショナー機構150の適用されたシートベルト装置152を図7及び図8に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係るプリテンショナー機構44の適用されたシートベルト装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0053】
この第2の実施の形態に係るプリテンショナー機構150では、車両用シート12を構成するメンバーフレーム28の内部にシリンダ154が収容されている点で、第1の実施の形態に係るプリテンショナー機構44と相違している。
【0054】
このプリテンショナー機構150を構成するシリンダ154は、その他端部側が直線状に形成された挿入部156を有し、第1サイドフレーム部24に開口したメンバーフレーム28の開口部158を通じて内部に挿入され、前記シリンダ154の一端部側が、前記メンバーフレーム28の外部に露呈している。
【0055】
シリンダ154の一端部には、他端部側に対して略直角に折曲された供給ポート160が形成されると共に、該供給ポート160とは反対方向に折曲され延在するガイドパイプ162が設けられる。
【0056】
この供給ポート160は、車両の後席側に臨むように配置され、一方、ガイドパイプ162は、前記車両の前方(矢印C方向)側に臨むように配置され、前記供給ポート160は、キャップ54が装着されることによって閉塞される。
【0057】
ガイドパイプ162は、管状に形成されてシリンダ154の外周面に接合され、シリンダ154の内部と連通すると共に、ピストン50に接続されたワイヤケーブル48が挿通可能に形成される。そして、ワイヤケーブル48は、ピストン50からガイドパイプ162の内部を通じて車両の前方(矢印C方向)側へと導かれた後、ガイドプーリ66の案内作用下に上方へと導かれている。なお、ガイドパイプ162は、その内周径がワイヤケーブル48の外周径と略同等若しくは若干大きくなるように設定される。
【0058】
挿入部156は、その外周径がメンバーフレーム28の内周径に対して略同等若しくは若干だけ小さくなるように形成され、前記メンバーフレーム28の内部に挿入された後、図示しない固定手段で固定される。
【0059】
以上のように、第2の実施の形態では、車両用シート12を構成するメンバーフレーム28の内部にシリンダ154の挿入部156を収容できるため、該メンバーフレーム28の近傍において前記シリンダ154が外部に設置されることがなく、第1の実施の形態におけるプリテンショナー機構44の適用されたシートベルト装置10と比較し、車両用シート12の後方スペースをより一層有効に活用することができる。
【0060】
そのため、例えば、車両用シート12の後方に位置する後席に乗車した乗員の足元近傍のスペースがプリテンショナー機構150によって狭くなることが回避され、前記足元近傍に十分なスペースを確保することが可能となり、前記乗員の快適性を向上させることができる。
【0061】
なお、本発明に係るシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構44は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
10、152…シートベルト装置 12…車両用シート
14…シートクッション 16…シートバック
22…シートフレーム 24…第1サイドフレーム部
26…第2サイドフレーム部 28…メンバーフレーム
36…シートベルト 42…アンカープレート
44、100、110、120、150…プリテンショナー機構
46、102、112、122、154…シリンダ
48…ワイヤケーブル 50…ピストン
56…取付ブラケット 64、106、116、124…ガイド
66…ガイドプーリ 156…挿入部
162…ガイドパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに乗車した乗員をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置において、車両衝突時において前記シートベルトを引張して前記乗員に対する拘束力を高めるプリテンショナー機構であって、
前記プリテンショナー機構は、前記シートベルトに対して一端部が連結されるケーブルと、
前記ケーブルの他端部に接続され、前記車両衝突時において変位体に推力を付与して変位させ、前記ケーブルを引張する引張力発生手段と、
を備え、
前記引張力発生手段が、前記車両用シートの下部に設けられ、車両の幅方向に沿って延在するメンバーフレームに沿わせて配置されることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項2】
請求項1記載のプリテンショナー機構において、
前記引張力発生手段は、内部に前記変位体が変位自在に設けられた筒状のシリンダからなり、前記シリンダが、前記車両用シートの下部に設けられ車両の幅方向に沿って延在するメンバーフレームと平行に設けられることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項3】
請求項2記載のプリテンショナー機構において、
前記シリンダは、前記メンバーフレームの内部に収容されることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリテンショナー機構において、
前記引張力発生手段を、前記メンバーフレームの後部又は下部に設け、前記ケーブルを案内するガイド機構が、前記車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームの外周面に沿って設けられることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−136590(P2011−136590A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295948(P2009−295948)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】