シートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構
【課題】車室内におけるプリテンショナー機構の取付位置の自由度を増加させることができ、しかも、組付工数の削減及び組付性の向上を図る。
【解決手段】シートベルト装置１０を構成するプリテンショナー機構４４は、シートベルト３６の端部に対してアンカープレート４２を介して接続されるワイヤケーブル４８と、該ワイヤケーブル４８の端部が接続されるシリンダ４６との備え、前記シリンダ４６が、車両用シート１２における助手席側に設けられた第２サイドフレーム部２６に対して配置される。そして、シリンダ４６内に充填された火薬が爆発することにより、ワイヤケーブル４８を介してアンカープレート４２が引張され、シートベルト３６によって乗員が拘束される。
【解決手段】シートベルト装置１０を構成するプリテンショナー機構４４は、シートベルト３６の端部に対してアンカープレート４２を介して接続されるワイヤケーブル４８と、該ワイヤケーブル４８の端部が接続されるシリンダ４６との備え、前記シリンダ４６が、車両用シート１２における助手席側に設けられた第２サイドフレーム部２６に対して配置される。そして、シリンダ４６内に充填された火薬が爆発することにより、ワイヤケーブル４８を介してアンカープレート４２が引張され、シートベルト３６によって乗員が拘束される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両用シートにおいて乗員を保護するシートベルト装置に関し、一層詳細には、車両衝突時において前記乗員の拘束を高めるシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、自動車等の車両に適用されるシートベルト装置では、車両衝突時にシートベルトの弛みを巻き取り、該乗員を拘束して保護するためのプリテンショナー機構が設けられている。このようなプリテンショナー機構は、例えば、シートベルトの一端部が、プリテンショナー機構を介して車体側に設けられると共に、前記シートベルトの他端部が、車両におけるセンターピラーの内部に導かれ、別のプリテンショナー機構に接続されている。
【０００３】
そして、車両衝突時には、シートベルトの一端部及び他端部に対して２つのプリテンショナー機構から互いに離間する方向に張力が付与され、引張されたシートベルトによって乗員が拘束される（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００４−３５９０２８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
上述したようなプリテンショナー機構を、車両用シートの側方となる車体側に設ける場合、例えば、車体側に設けられた位置決め孔に合わせるように組付作業を行う必要があり、その作業が煩雑であり組付工数が増加してしまうと共に、組付性が低下してしまうという問題がある。
【０００６】
そこで、上述したような課題を鑑みて、例えば、プリテンショナー機構を車体側に設ける代わりに、車両用シートにおいて車体側に臨んだ側部に設けることが想定される。しかしながら、車両用シートの側部には、一般的に、乗員の背面を支持するシートバックの角度を調整するための角度調整レバーや、座面の高さ調整を行うための座面調整レバー等が設けられているため、前記プリテンショナー機構の設置スペースが限られてしまい、一方、前記プリテンショナー機構を設置しようとした場合には、車両用シートの大型化を招くという問題がある。
【０００７】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、車室内における取付位置の自由度を増加させることができ、しかも、組付工数の削減及び組付性の向上を図ることが可能なシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両用シートに乗車した乗員をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置において、車両衝突時において前記シートベルトを引張して前記乗員に対する拘束力を高めるプリテンショナー機構であって、
前記プリテンショナー機構は、前記シートベルトに対して一端部が連結されるケーブルと、
前記ケーブルの他端部に接続され、前記車両衝突時において変位体に推力を付与して変位させ、前記ケーブルを引張する引張力発生手段と、
を備え、
前記引張力発生手段が、前記車両用シートにおいて、車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに設けられた凹部に設けられることを特徴とする（請求項１）。
【０００９】
また、引張力発生手段を、サイドフレームの外側面に取り付けられ、車両用シートの幅方向に窪んだ凹部に設けることが好ましい（請求項２）。
【００１０】
さらに、引張力発生手段は、車両用シートにおいて車両の中央部側に設けられ、ケーブルは、前記サイドフレームに設けられたガイド機構を介して前記車両用シートにおいて前記車両の幅方向外側に設けられたアンカープレートに連結されることが好ましい（請求項３）。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１の発明によれば、車両用シートにおける車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに設けられた凹部に、車両衝突時にケーブルを引張する引張力発生手段を設置することにより、前記引張力発生手段をコンパクトに配置することができると共に、該凹部によって剛性の高められた部位に前記引張力発生手段を設けているため、ケーブルを確実に作動させてシートベルトを介して乗員に対する拘束力を高めることができる。また、引張力発生手段を車両側に設置する場合と比較し、車両用シートにおける一方の側部に予め組み付けておくことも可能となるため、その組付作業を簡素化でき、それに伴って、組付性の向上及び組付工数の削減を図ることができる。さらに、凹部に引張力発生手段を設置することにより、車両用シートの幅寸法が大型化することがなく、該車両用シートのコンパクト化を図ることが可能となる。
【００１２】
請求項２の発明によれば、引張力発生手段が、サイドフレームの外側面に取り付けられ、車両用シートの幅方向に窪んだ凹部に収容されるため、該引張力発生手段が、前記サイドフレームにおける一方の側部から外側に突出することがなく、その結果、車両用シートにおける車両の中央部側のスペースが狭くなることが回避される。また、凹部の位置、大きさ等を変更することにより、引張力発生手段を所望の位置に取り付けることができる。
【００１３】
請求項３の発明によれば、車両用シートにおいて車両の中央部側に引張力発生手段を設け、ケーブルを、サイドフレームに設けられたガイド機構を介して車両の幅方向外側に設けられたアンカープレートに連結しているため、前記引張力発生手段によって前記ケーブルに付与された引張力が、前記アンカープレートを介してシートベルトへと確実に伝達され、該シートベルトを引張することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明の第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構を含むシートベルト装置が付設される車両用シートを示す正面図である。
【図２】図１に示す車両用シートを第１サイドフレーム部の後端部側から見た一部省略斜視図である。
【図３】図１に示す車両用シートを第２サイドフレーム部の後端部側から見た一部省略斜視図である。
【図４】本発明の第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構が付設された車両用シートを斜め後方から見た一部省略斜視図である。
【図５】図４のＶ−Ｖ線に沿った断面図である。
【図６】本発明の第３の実施の形態に係るプリテンショナー機構が付設された車両用シートを斜め後方から見た一部省略斜視図である。
【図７】図６のＶＩＩ−ＶＩＩ線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
本発明に係るシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【００１６】
図１は、本発明の第１の実施形態に係るプリテンショナー機構を備えたシートベルト装置の付設される車両用シートを示す正面図である。なお、以下の説明において、車両用シートに関し、「左右方向」、「左右」又は「シート幅方向」とは、図１に示す矢印Ａ１、Ａ２方向を示すと共に、車両における前席の運転席側の車両用シートに付設されるシートベルト装置１０について説明する。
【００１７】
先ず、シートベルト装置１０の付設される車両用シート１２について図１及び図２を参照しながら簡単に説明する。この車両用シート１２は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション１４と、該シートクッション１４の後端部に傾動自在に支持され前記乗員の背面を支持するシートバック１６とを含み、前記シートクッション１４の下部には、車両の床面１８に一組のシートレール２０を介して固定されるシートフレーム２２が設けられている。
【００１８】
シートフレーム２２は、例えば、シート幅方向（矢印Ａ１、Ａ２方向）に設けられる一対の第１及び第２サイドフレーム部２４、２６と、前記第１及び第２サイドフレーム部２４、２６の前端部同士を接合するメインフレーム部（フロントフレーム）（図示せず）とを有し、前記第１及び第２サイドフレーム部２４、２６の後端部には、第１サイドフレーム部２４と第２サイドフレーム部２６とを接続するようにシート幅方向（矢印Ａ１、Ａ２方向）に沿ってメンバーフレーム（リアフレーム）２８が設けられる。
【００１９】
なお、車両用シート１２において、第１サイドフレーム部２４が、車体側（矢印Ａ１方向）となり、第２サイドフレーム部２６が、助手席側（矢印Ａ２方向）となるように設けられると共に、前記第１サイドフレーム部２４の前端部から中間部にかけて、シートクッション１４の高さを調整可能なハイトレバー３０や、シートバック１６の傾斜角度を調整可能なリクライニングレバー３２が設けられる。
【００２０】
また、第２サイドフレーム部２６には、その側面２６ａに対して第１サイドフレーム部２４側（矢印Ａ１方向）に向かって所定深さで窪んだ取付用凹部３５が形成される。この取付用凹部３５は、第２サイドフレーム部２６の長手方向（矢印Ｂ、Ｃ方向）に沿って所定長さで形成される。そして、取付用凹部３５の内部には、後述するプリテンショナー機構４４を構成するシリンダ４６の一部が収容されて取付ブラケット５０ａ、５０ｂによって固定される。この際、シリンダ４６は、その断面形状の約半分が前記取付用凹部３５の内部に収容され、残りの半分が第２サイドフレーム部２６の側面２６ａより外側に突出している。
【００２１】
なお、第２サイドフレーム部２６において、取付用凹部３５を設けることにより、その剛性を高めることができるため、該取付用凹部３５にシリンダ４６を設けることにより、該シリンダ４６を確実に作動させることができ、シートベルト３６を所定の引張力で引張することが可能となる。
【００２２】
すなわち、第２サイドフレーム部２６の下部に取付用凹部３５を設けることにより、プリテンショナー機構４４を設けた場合における車両用シート１２の幅方向の大型化を抑制することができ、前記車両用シート１２のコンパクト化を図ることができる。
【００２３】
メンバーフレーム２８は、例えば、両端部が開口した管体からなり、車両の床面１８に対して略平行に設けられると共に、その一端部が第１サイドフレーム部２４を貫通し、他端部が、第２サイドフレーム部２６を貫通した状態で固定される。
【００２４】
次に、このような車両用シート１２に付設されるシートベルト装置１０について説明する。このシートベルト装置１０は、車両におけるセンターピラー３４（図１参照）内に一端部が収納されたシートベルト３６と、前記シートベルト３６の途中に設けられるタングプレート３８と、前記タングプレート３８が着脱自在に係合されるインナーバックル４０と、前記シートベルト３６の他端部に接続されるアンカープレート４２と、前記アンカープレート４２に連結され、前記シートベルト３６を引張可能なプリテンショナー機構４４とを含む。なお、シートベルト３６の一端部は、センターピラー３４内に収容されたシートベルトリトラクタ（図示せず）に接続されている。
【００２５】
そして、車両用シート１２に乗員が座った状態で、該乗員がシートベルト３６を引張してタングプレート３８をインナーバックル４０に差し込むことにより、該タングプレート３８と前記インナーバックル４０とが係合され、前記シートベルト３６によって前記乗員が拘束される。
【００２６】
プリテンショナー機構４４は、図１〜図３に示されるように、例えば、シートフレーム２２を構成する第２サイドフレーム部２６の側面２６ａ、すなわち、車両用シート１２における助手席側（矢印Ａ２方向）に設けられ、有底筒状のシリンダ４６と、該シリンダ４６の一端部から外方に向かって突出し、アンカープレート４２に接続されるワイヤケーブル４８とを備える。
【００２７】
このシリンダ４６は、第２サイドフレーム部２６の延在方向と略平行に設けられ、例えば、２つの取付ブラケット５０ａ、５０ｂを介して前記第２サイドフレーム部２６に固定されている。シリンダ４６の内部には、軸線方向に沿って変位自在なピストン（変位体）５２を備え、該ピストン５２の中心には、ワイヤケーブル４８の一端部が接続されている。なお、シリンダ４６は、その一端部が、車両用シート１２における後方側（矢印Ｂ方向）となり、他端部が、前記車両用シート１２における前方側（矢印Ｃ方向）となるように設けられる。
【００２８】
また、シリンダ４６における一端部の外周には、半径外方向に突出した供給ポート５４が形成され、該供給ポート５４が前記シリンダ４６の内部と連通している。この供給ポート５４は、シリンダ４６の内部に火薬を供給する供給口として用いられる。そして、供給ポート５４は、キャップ５６が装着されることによって封止される。
【００２９】
そして、供給ポート５４を通じて火薬がシリンダ４６の内部において一端部とピストン５２との間に供給され、例えば、車両衝突時に図示しない着火手段によって前記火薬に着火して爆発させることにより、その爆発によって発生する爆発ガスによって前記ピストン５２がシリンダ４６の他端部側（矢印Ｃ方向）に向かって付勢されて変位する。その際、ピストン５２に接続されたワイヤケーブル４８の一端部が引張され、アンカープレート４２と共にシートベルト３６の他端部が引張されることとなる。すなわち、このシリンダ４６は、火薬の爆発作用下にワイヤケーブル４８に対して所定方向の付与される引張力を発生させる引張力発生手段として機能する。
【００３０】
ワイヤケーブル４８は、シリンダ４６を構成するピストン５２とアンカープレート４２とを接続可能な所定長さで形成され、その一端部が、シリンダ４６の内部においてピストン５２に接続され、他端部が、アンカープレート４２に接続されている。また、ワイヤケーブル４８は、車両用シート１２を構成する第１及び第２サイドフレーム部２４、２６の後端部に設けられた第１及び第２ガイド５８、６０に挿通される。
【００３１】
第１及び第２ガイド５８、６０は、例えば、断面略Ｌ字状に形成され、その内部にワイヤケーブル４８の案内される溝部５８ａ、６０ａをそれぞれ有している。第１ガイド５８は、第２サイドフレーム部２６の後端部で略直角に折曲された中間部を境として、一端部が、該第２サイドフレーム部２６の側面２６ａに沿って前方（矢印Ｃ方向）に延在し、他端部が、第１サイドフレーム部２４側（矢印Ａ１方向）に向かってシート幅方向に延在している。
【００３２】
また、第２ガイド６０は、第１サイドフレーム部２４の後端部で略直角に折曲された中間部を境として、一端部が、第２サイドフレーム部２６側（矢印Ａ２方向）に向かってシート幅方向に延在し、他端部が、第１サイドフレーム部２４の側面に沿って前方（矢印Ｃ方向）へと延在している。
【００３３】
すなわち、第１ガイド５８は、シリンダ４６の一端部から外部に突出したワイヤケーブル４８を第２サイドフレーム部２６の後端部まで案内した後、第１サイドフレーム部２４側に向かってシート幅方向に案内し、第２ガイド６０は、第１ガイド５８の他端部から案内されたワイヤケーブル４８を、第１サイドフレーム部２４の後端部で折曲させた後、該第１サイドフレーム部２４に沿って前方へと案内している。
【００３４】
換言すれば、ワイヤケーブル４８は、第１ガイド５８の案内作用下にシリンダ４６から第２サイドフレーム部２６の側面２６ａに沿って延在した後、前記第２サイドフレーム部２６の後端部でシート幅方向に方向変換され、第２ガイド６０によって再び前方に向かって方向変換された後、第１サイドフレーム部２４に沿って車両用シート１２の前方側（矢印Ｃ方向）へと案内される。
【００３５】
そして、第１サイドフレーム部２４には、第２ガイド６０の前方にガイドプーリ６２が回転自在に設けられており、前記第２ガイド６０から導かれたワイヤガイドが、前記ガイドプーリ６２の外周面に沿って上方へと案内されアンカープレート４２に接続される。
【００３６】
上述したガイドプーリ６２、第１及び第２ガイド５８、６０は、シリンダ４６とアンカープレート４２との間においてワイヤケーブル４８を所定方向へと案内するガイド機構６４として機能する。
【００３７】
本発明の第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４の適用されたシートベルト装置１０は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【００３８】
先ず、例えば、車両の衝突が図示しない衝撃センサ等によって検知されると、プリテンショナー機構４４のシリンダ４６の内部において、図示しない着火手段によって火薬が着火されて爆発する。これにより、火薬の爆発によって発生した爆発ガスによってピストン５２がシリンダ４６の他端部側（矢印Ｃ方向）へと付勢されて変位し、該ピストン５２と共にワイヤケーブル４８の一端部が変位することにより、前記ワイヤケーブル４８を介してアンカープレート４２が乗員から離間するように下方へと引張される。
【００３９】
その結果、引張されたシートベルト３６が乗員の腰部近傍に密着し、該乗員をシートクッション１４との間に拘束するため、車両の衝突時における前記乗員の前方（矢印Ｃ方向）への移動が確実に阻止される。
【００４０】
この際、ワイヤケーブル４８は、第１及び第２ガイド５８、６０及びガイドプーリ６２によって経路が確実に確保され、且つ、案内されているため、安定的に動作させてシートベルト３６を引張することが可能となる。
【００４１】
また、上述したプリテンショナー機構４４が動作するのと同時に、センターピラー３４内に設けられたシートベルトリトラクタ（図示せず）によってシートベルト３６の一端部側も引張されているため、シートベルト３６が乗員の胸部近傍に密着し、該乗員をシートバック１６との間に拘束している。
【００４２】
すなわち、車両の衝突時には、シートベルト３６の一端部及び他端部が共に引張され、乗員の胸部近傍及び腰部近傍がそれぞれ前記シートベルト３６によって確実に拘束され、該乗員の前方（矢印Ｃ方向）への移動が阻止される。
【００４３】
以上のように、第１の実施の形態では、プリテンショナー機構４４を構成するシリンダ４６を、車両用シート１２において助手席側、すなわち、車両における中央部側となる第２サイドフレーム部２６の側面２６ａに設ける構成とすることにより、前記車両用シート１２の第１サイドフレーム部２４に設けられたリクライニングレバー３２等との設置スペースの重複を回避することができる。その結果、プリテンショナー機構４４のシリンダ４６を、車両用シート１２の助手席側において所望の位置に設けることが可能となる。
【００４４】
また、プリテンショナー機構４４を、車両側に設置する場合と比較し、車両用シート１２に予め組み付けておくことが可能となるため、その組付作業を簡素化でき、それに伴って、組付性の向上及び組付工数の削減を図ることができる。
【００４５】
さらに、プリテンショナー機構４４を、車両側に対して位置決めするという煩雑な作業が不要となるため、組付性を向上させることが可能となる。
【００４６】
なお、上述した第１の実施の形態では、シリンダ４６を含むプリテンショナー機構４４が、車両において運転席側となる車両用シート１２に設けられる場合について説明したが、例えば、助手席側となる車両用シートに設ける場合には、運転席側となり、リクライニングレバー等の設けられていないサイドフレーム部に対して前記シリンダが装着されることとなる。
【００４７】
次に、第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構１５０の適用されたシートベルト装置１５２を図４及び図５に示す。なお、上述した第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４の適用されたシートベルト装置１０と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【００４８】
この第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構１５０は、車両用シート１２を構成する第２サイドフレーム部１５４に設けられた取付用凹部１５６にシリンダ１５８が収容されている点で、第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４と相違している。
【００４９】
この取付用凹部１５６は、第２サイドフレーム部１５４の側面１５４ａに対して第１サイドフレーム部２４側（矢印Ａ１方向）に向かって所定深さで窪んで形成されると共に、前記第２サイドフレーム部１５４の長手方向（矢印Ｂ、Ｃ方向）に沿って所定長さで形成される。そして、取付用凹部１５６の内部には、シリンダ１５８が収容されて取付ブラケット５０ａ、５０ｂによって固定される。この際、シリンダ１５８は、第２サイドフレーム部１５４の側面１５４ａより外側に突出することがないため、前記第２サイドフレーム部１５４を含む車両用シート１２の幅寸法が増加することがない。
【００５０】
すなわち、第２サイドフレーム部１５４の下部に、取付用凹部１５６を設けることにより、プリテンショナー機構４４を設けた場合における車両用シート１２の幅方向の大型化を抑制している。その結果、車両用シート１２のコンパクト化を図ることができる。
【００５１】
また、シリンダ１５８の一端部から外部に突出したワイヤケーブル４８は、取付用凹部１５６から第２サイドフレーム部１５４の側面１５４ａ側へと導かれ、第１及び第２ガイド５８、６０、ガイドプーリ６２を経てアンカープレート４２に接続される。
【００５２】
この場合、シリンダ１５８には、供給ポート５４が、下方に向かって突出するように形成されている。
【００５３】
以上のように、第２の実施の形態では、プリテンショナー機構１５０を構成するシリンダ１５８を、助手席側となる車両用シートの第２サイドフレーム部２６の側方に設ける際、予め該第２サイドフレーム部に設けられ、第１サイドフレーム部２４側に向かって窪んだ取付用凹部１５６に収容可能な構成としている。そのため、シリンダ１５８が、第２サイドフレーム部１５４に対して側方に突出することがなく好適である。その結果、車両用シート１２における助手席側の空間が狭くなることが回避され、しかも、前記取付用凹部１５６の位置、大きさ等を変更することにより前記シリンダ１５８を所望の位置に取り付けることも可能となる。すなわち、プリテンショナー機構１５０のシリンダ１５８を、車両側の制約を受けることなく、車両用シート１２側に設けることによってその取付位置の自由度を増加させることができる。
【００５４】
また、供給ポート５４には、シリンダ１５８を作動させるための配線が接続されるが、該供給ポート５４を前記シリンダ１５８の横方向に設けた場合には、該配線を含めて車両用シート１２の幅方向に大型化してしまうため、前記供給ポート５４及びキャップ５６を、シリンダ１５８の下部に設けるとよい。これにより、配線を含めて供給ポート５４及びキャップ５６が、シリンダ１５８の側方に突出することがないため、車両用シート１２の幅方向への大型化を回避することができる。
【００５５】
さらに、第２サイドフレーム部１５４において、取付用凹部１５６を設けることにより、その剛性を高めることができるため、該取付用凹部１５６にシリンダ１５８を設けることにより、該シリンダ１５８を確実に作動させることができ、シートベルト３６を所定の引張力で引張することが可能となる。
【００５６】
次に、第３の実施の形態に係るプリテンショナー機構２００の適用されたシートベルト装置２０２を図６及び図７に示す。なお、上述した第１及び第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４、１５０の適用されたシートベルト装置１０、１５２と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【００５７】
この第３の実施の形態に係るプリテンショナー機構２００は、車両用シート１２を構成する第２サイドフレーム部２６の内側にシリンダ２０４が収容されている点で、第１及び第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４、１５０と相違している。
【００５８】
このシリンダ２０４は、第２サイドフレーム部２６の内側となる位置に収容され、該第２サイドフレーム部２６の内壁面２０６に対して取付ブラケット５０ａ、５０ｂで固定される。なお、第２サイドフレーム部２６には、前記取付ブラケット５０ａ、５０ｂを取り付けるために切り欠かれた装着孔２０７がそれぞれ開口し、該装着孔２０７を通じて前記取付ブラケット５０ａ、５０ｂが前記内壁面２０６に対して固定される。
【００５９】
また、第２サイドフレーム部２６の後端部近傍には、シリンダ２０４の一端部から突出したワイヤケーブル４８を案内する円柱状のガイド体２０８が設けられている。そして、シリンダ２０４の一端部から後方に向かって延在したワイヤケーブル４８が、ガイド体２０８の外周面に沿うことでシート幅方向（矢印Ａ２方向）へと方向変換した後、第１サイドフレーム部２４の後端部に同様に設けられた別のガイド体（図示せず）によって再び前方側（矢印Ｃ方向）へと方向変換してガイドプーリ６２を介してアンカープレート４２に接続されている。
【００６０】
以上のように、第３の実施の形態では、プリテンショナー機構２００を構成するシリンダ２０４を、車両用シート１２の第２サイドフレーム部２６の内側となるように設けることにより、前記シリンダ２０４が第２サイドフレーム部２６の側方に突出することがないため、車両用シート１２における助手席側の空間が狭くなることが回避され、しかも、前記第２サイドフレーム部２６を含むシートフレーム２２の内部空間を利用して配置することができるため、所望の位置に容易に設置することができる。すなわち、プリテンショナー機構２００のシリンダ２０４を、車両側の制約を受けることなく、車両用シート１２側に設けることによってその取付位置の自由度を増加させることができる。
【００６１】
また、第２サイドフレーム部２６を含むシートフレーム２２には、その上方にシートクッション１４が装着されて覆われるため、シリンダ２０４が車両用シート１２の外側から視認されることがなく好適である。
【００６２】
なお、本発明に係るシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構４４は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【００６３】
１０、１５２、２０２…シートベルト装置
１２…車両用シート １４…シートクッション
１６…シートバック ２２…シートフレーム
２４…第１サイドフレーム部 ２６、１５４…第２サイドフレーム部
３５、１５６…取付用凹部 ３６…シートベルト
４２…アンカープレート
４４、１５０、２００…プリテンショナー機構
４６、１５８、２０４…シリンダ ４８…ワイヤケーブル
５２…ピストン ５８…第１ガイド
６０…第２ガイド ６２…ガイドプーリ
２０８…ガイド体
【技術分野】
【０００１】
本発明は、車両用シートにおいて乗員を保護するシートベルト装置に関し、一層詳細には、車両衝突時において前記乗員の拘束を高めるシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、自動車等の車両に適用されるシートベルト装置では、車両衝突時にシートベルトの弛みを巻き取り、該乗員を拘束して保護するためのプリテンショナー機構が設けられている。このようなプリテンショナー機構は、例えば、シートベルトの一端部が、プリテンショナー機構を介して車体側に設けられると共に、前記シートベルトの他端部が、車両におけるセンターピラーの内部に導かれ、別のプリテンショナー機構に接続されている。
【０００３】
そして、車両衝突時には、シートベルトの一端部及び他端部に対して２つのプリテンショナー機構から互いに離間する方向に張力が付与され、引張されたシートベルトによって乗員が拘束される（例えば、特許文献１参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００４−３５９０２８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
上述したようなプリテンショナー機構を、車両用シートの側方となる車体側に設ける場合、例えば、車体側に設けられた位置決め孔に合わせるように組付作業を行う必要があり、その作業が煩雑であり組付工数が増加してしまうと共に、組付性が低下してしまうという問題がある。
【０００６】
そこで、上述したような課題を鑑みて、例えば、プリテンショナー機構を車体側に設ける代わりに、車両用シートにおいて車体側に臨んだ側部に設けることが想定される。しかしながら、車両用シートの側部には、一般的に、乗員の背面を支持するシートバックの角度を調整するための角度調整レバーや、座面の高さ調整を行うための座面調整レバー等が設けられているため、前記プリテンショナー機構の設置スペースが限られてしまい、一方、前記プリテンショナー機構を設置しようとした場合には、車両用シートの大型化を招くという問題がある。
【０００７】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、車室内における取付位置の自由度を増加させることができ、しかも、組付工数の削減及び組付性の向上を図ることが可能なシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
前記の目的を達成するために、本発明は、車両用シートに乗車した乗員をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置において、車両衝突時において前記シートベルトを引張して前記乗員に対する拘束力を高めるプリテンショナー機構であって、
前記プリテンショナー機構は、前記シートベルトに対して一端部が連結されるケーブルと、
前記ケーブルの他端部に接続され、前記車両衝突時において変位体に推力を付与して変位させ、前記ケーブルを引張する引張力発生手段と、
を備え、
前記引張力発生手段が、前記車両用シートにおいて、車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに設けられた凹部に設けられることを特徴とする（請求項１）。
【０００９】
また、引張力発生手段を、サイドフレームの外側面に取り付けられ、車両用シートの幅方向に窪んだ凹部に設けることが好ましい（請求項２）。
【００１０】
さらに、引張力発生手段は、車両用シートにおいて車両の中央部側に設けられ、ケーブルは、前記サイドフレームに設けられたガイド機構を介して前記車両用シートにおいて前記車両の幅方向外側に設けられたアンカープレートに連結されることが好ましい（請求項３）。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１の発明によれば、車両用シートにおける車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに設けられた凹部に、車両衝突時にケーブルを引張する引張力発生手段を設置することにより、前記引張力発生手段をコンパクトに配置することができると共に、該凹部によって剛性の高められた部位に前記引張力発生手段を設けているため、ケーブルを確実に作動させてシートベルトを介して乗員に対する拘束力を高めることができる。また、引張力発生手段を車両側に設置する場合と比較し、車両用シートにおける一方の側部に予め組み付けておくことも可能となるため、その組付作業を簡素化でき、それに伴って、組付性の向上及び組付工数の削減を図ることができる。さらに、凹部に引張力発生手段を設置することにより、車両用シートの幅寸法が大型化することがなく、該車両用シートのコンパクト化を図ることが可能となる。
【００１２】
請求項２の発明によれば、引張力発生手段が、サイドフレームの外側面に取り付けられ、車両用シートの幅方向に窪んだ凹部に収容されるため、該引張力発生手段が、前記サイドフレームにおける一方の側部から外側に突出することがなく、その結果、車両用シートにおける車両の中央部側のスペースが狭くなることが回避される。また、凹部の位置、大きさ等を変更することにより、引張力発生手段を所望の位置に取り付けることができる。
【００１３】
請求項３の発明によれば、車両用シートにおいて車両の中央部側に引張力発生手段を設け、ケーブルを、サイドフレームに設けられたガイド機構を介して車両の幅方向外側に設けられたアンカープレートに連結しているため、前記引張力発生手段によって前記ケーブルに付与された引張力が、前記アンカープレートを介してシートベルトへと確実に伝達され、該シートベルトを引張することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００１４】
【図１】本発明の第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構を含むシートベルト装置が付設される車両用シートを示す正面図である。
【図２】図１に示す車両用シートを第１サイドフレーム部の後端部側から見た一部省略斜視図である。
【図３】図１に示す車両用シートを第２サイドフレーム部の後端部側から見た一部省略斜視図である。
【図４】本発明の第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構が付設された車両用シートを斜め後方から見た一部省略斜視図である。
【図５】図４のＶ−Ｖ線に沿った断面図である。
【図６】本発明の第３の実施の形態に係るプリテンショナー機構が付設された車両用シートを斜め後方から見た一部省略斜視図である。
【図７】図６のＶＩＩ−ＶＩＩ線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１５】
本発明に係るシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【００１６】
図１は、本発明の第１の実施形態に係るプリテンショナー機構を備えたシートベルト装置の付設される車両用シートを示す正面図である。なお、以下の説明において、車両用シートに関し、「左右方向」、「左右」又は「シート幅方向」とは、図１に示す矢印Ａ１、Ａ２方向を示すと共に、車両における前席の運転席側の車両用シートに付設されるシートベルト装置１０について説明する。
【００１７】
先ず、シートベルト装置１０の付設される車両用シート１２について図１及び図２を参照しながら簡単に説明する。この車両用シート１２は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション１４と、該シートクッション１４の後端部に傾動自在に支持され前記乗員の背面を支持するシートバック１６とを含み、前記シートクッション１４の下部には、車両の床面１８に一組のシートレール２０を介して固定されるシートフレーム２２が設けられている。
【００１８】
シートフレーム２２は、例えば、シート幅方向（矢印Ａ１、Ａ２方向）に設けられる一対の第１及び第２サイドフレーム部２４、２６と、前記第１及び第２サイドフレーム部２４、２６の前端部同士を接合するメインフレーム部（フロントフレーム）（図示せず）とを有し、前記第１及び第２サイドフレーム部２４、２６の後端部には、第１サイドフレーム部２４と第２サイドフレーム部２６とを接続するようにシート幅方向（矢印Ａ１、Ａ２方向）に沿ってメンバーフレーム（リアフレーム）２８が設けられる。
【００１９】
なお、車両用シート１２において、第１サイドフレーム部２４が、車体側（矢印Ａ１方向）となり、第２サイドフレーム部２６が、助手席側（矢印Ａ２方向）となるように設けられると共に、前記第１サイドフレーム部２４の前端部から中間部にかけて、シートクッション１４の高さを調整可能なハイトレバー３０や、シートバック１６の傾斜角度を調整可能なリクライニングレバー３２が設けられる。
【００２０】
また、第２サイドフレーム部２６には、その側面２６ａに対して第１サイドフレーム部２４側（矢印Ａ１方向）に向かって所定深さで窪んだ取付用凹部３５が形成される。この取付用凹部３５は、第２サイドフレーム部２６の長手方向（矢印Ｂ、Ｃ方向）に沿って所定長さで形成される。そして、取付用凹部３５の内部には、後述するプリテンショナー機構４４を構成するシリンダ４６の一部が収容されて取付ブラケット５０ａ、５０ｂによって固定される。この際、シリンダ４６は、その断面形状の約半分が前記取付用凹部３５の内部に収容され、残りの半分が第２サイドフレーム部２６の側面２６ａより外側に突出している。
【００２１】
なお、第２サイドフレーム部２６において、取付用凹部３５を設けることにより、その剛性を高めることができるため、該取付用凹部３５にシリンダ４６を設けることにより、該シリンダ４６を確実に作動させることができ、シートベルト３６を所定の引張力で引張することが可能となる。
【００２２】
すなわち、第２サイドフレーム部２６の下部に取付用凹部３５を設けることにより、プリテンショナー機構４４を設けた場合における車両用シート１２の幅方向の大型化を抑制することができ、前記車両用シート１２のコンパクト化を図ることができる。
【００２３】
メンバーフレーム２８は、例えば、両端部が開口した管体からなり、車両の床面１８に対して略平行に設けられると共に、その一端部が第１サイドフレーム部２４を貫通し、他端部が、第２サイドフレーム部２６を貫通した状態で固定される。
【００２４】
次に、このような車両用シート１２に付設されるシートベルト装置１０について説明する。このシートベルト装置１０は、車両におけるセンターピラー３４（図１参照）内に一端部が収納されたシートベルト３６と、前記シートベルト３６の途中に設けられるタングプレート３８と、前記タングプレート３８が着脱自在に係合されるインナーバックル４０と、前記シートベルト３６の他端部に接続されるアンカープレート４２と、前記アンカープレート４２に連結され、前記シートベルト３６を引張可能なプリテンショナー機構４４とを含む。なお、シートベルト３６の一端部は、センターピラー３４内に収容されたシートベルトリトラクタ（図示せず）に接続されている。
【００２５】
そして、車両用シート１２に乗員が座った状態で、該乗員がシートベルト３６を引張してタングプレート３８をインナーバックル４０に差し込むことにより、該タングプレート３８と前記インナーバックル４０とが係合され、前記シートベルト３６によって前記乗員が拘束される。
【００２６】
プリテンショナー機構４４は、図１〜図３に示されるように、例えば、シートフレーム２２を構成する第２サイドフレーム部２６の側面２６ａ、すなわち、車両用シート１２における助手席側（矢印Ａ２方向）に設けられ、有底筒状のシリンダ４６と、該シリンダ４６の一端部から外方に向かって突出し、アンカープレート４２に接続されるワイヤケーブル４８とを備える。
【００２７】
このシリンダ４６は、第２サイドフレーム部２６の延在方向と略平行に設けられ、例えば、２つの取付ブラケット５０ａ、５０ｂを介して前記第２サイドフレーム部２６に固定されている。シリンダ４６の内部には、軸線方向に沿って変位自在なピストン（変位体）５２を備え、該ピストン５２の中心には、ワイヤケーブル４８の一端部が接続されている。なお、シリンダ４６は、その一端部が、車両用シート１２における後方側（矢印Ｂ方向）となり、他端部が、前記車両用シート１２における前方側（矢印Ｃ方向）となるように設けられる。
【００２８】
また、シリンダ４６における一端部の外周には、半径外方向に突出した供給ポート５４が形成され、該供給ポート５４が前記シリンダ４６の内部と連通している。この供給ポート５４は、シリンダ４６の内部に火薬を供給する供給口として用いられる。そして、供給ポート５４は、キャップ５６が装着されることによって封止される。
【００２９】
そして、供給ポート５４を通じて火薬がシリンダ４６の内部において一端部とピストン５２との間に供給され、例えば、車両衝突時に図示しない着火手段によって前記火薬に着火して爆発させることにより、その爆発によって発生する爆発ガスによって前記ピストン５２がシリンダ４６の他端部側（矢印Ｃ方向）に向かって付勢されて変位する。その際、ピストン５２に接続されたワイヤケーブル４８の一端部が引張され、アンカープレート４２と共にシートベルト３６の他端部が引張されることとなる。すなわち、このシリンダ４６は、火薬の爆発作用下にワイヤケーブル４８に対して所定方向の付与される引張力を発生させる引張力発生手段として機能する。
【００３０】
ワイヤケーブル４８は、シリンダ４６を構成するピストン５２とアンカープレート４２とを接続可能な所定長さで形成され、その一端部が、シリンダ４６の内部においてピストン５２に接続され、他端部が、アンカープレート４２に接続されている。また、ワイヤケーブル４８は、車両用シート１２を構成する第１及び第２サイドフレーム部２４、２６の後端部に設けられた第１及び第２ガイド５８、６０に挿通される。
【００３１】
第１及び第２ガイド５８、６０は、例えば、断面略Ｌ字状に形成され、その内部にワイヤケーブル４８の案内される溝部５８ａ、６０ａをそれぞれ有している。第１ガイド５８は、第２サイドフレーム部２６の後端部で略直角に折曲された中間部を境として、一端部が、該第２サイドフレーム部２６の側面２６ａに沿って前方（矢印Ｃ方向）に延在し、他端部が、第１サイドフレーム部２４側（矢印Ａ１方向）に向かってシート幅方向に延在している。
【００３２】
また、第２ガイド６０は、第１サイドフレーム部２４の後端部で略直角に折曲された中間部を境として、一端部が、第２サイドフレーム部２６側（矢印Ａ２方向）に向かってシート幅方向に延在し、他端部が、第１サイドフレーム部２４の側面に沿って前方（矢印Ｃ方向）へと延在している。
【００３３】
すなわち、第１ガイド５８は、シリンダ４６の一端部から外部に突出したワイヤケーブル４８を第２サイドフレーム部２６の後端部まで案内した後、第１サイドフレーム部２４側に向かってシート幅方向に案内し、第２ガイド６０は、第１ガイド５８の他端部から案内されたワイヤケーブル４８を、第１サイドフレーム部２４の後端部で折曲させた後、該第１サイドフレーム部２４に沿って前方へと案内している。
【００３４】
換言すれば、ワイヤケーブル４８は、第１ガイド５８の案内作用下にシリンダ４６から第２サイドフレーム部２６の側面２６ａに沿って延在した後、前記第２サイドフレーム部２６の後端部でシート幅方向に方向変換され、第２ガイド６０によって再び前方に向かって方向変換された後、第１サイドフレーム部２４に沿って車両用シート１２の前方側（矢印Ｃ方向）へと案内される。
【００３５】
そして、第１サイドフレーム部２４には、第２ガイド６０の前方にガイドプーリ６２が回転自在に設けられており、前記第２ガイド６０から導かれたワイヤガイドが、前記ガイドプーリ６２の外周面に沿って上方へと案内されアンカープレート４２に接続される。
【００３６】
上述したガイドプーリ６２、第１及び第２ガイド５８、６０は、シリンダ４６とアンカープレート４２との間においてワイヤケーブル４８を所定方向へと案内するガイド機構６４として機能する。
【００３７】
本発明の第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４の適用されたシートベルト装置１０は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【００３８】
先ず、例えば、車両の衝突が図示しない衝撃センサ等によって検知されると、プリテンショナー機構４４のシリンダ４６の内部において、図示しない着火手段によって火薬が着火されて爆発する。これにより、火薬の爆発によって発生した爆発ガスによってピストン５２がシリンダ４６の他端部側（矢印Ｃ方向）へと付勢されて変位し、該ピストン５２と共にワイヤケーブル４８の一端部が変位することにより、前記ワイヤケーブル４８を介してアンカープレート４２が乗員から離間するように下方へと引張される。
【００３９】
その結果、引張されたシートベルト３６が乗員の腰部近傍に密着し、該乗員をシートクッション１４との間に拘束するため、車両の衝突時における前記乗員の前方（矢印Ｃ方向）への移動が確実に阻止される。
【００４０】
この際、ワイヤケーブル４８は、第１及び第２ガイド５８、６０及びガイドプーリ６２によって経路が確実に確保され、且つ、案内されているため、安定的に動作させてシートベルト３６を引張することが可能となる。
【００４１】
また、上述したプリテンショナー機構４４が動作するのと同時に、センターピラー３４内に設けられたシートベルトリトラクタ（図示せず）によってシートベルト３６の一端部側も引張されているため、シートベルト３６が乗員の胸部近傍に密着し、該乗員をシートバック１６との間に拘束している。
【００４２】
すなわち、車両の衝突時には、シートベルト３６の一端部及び他端部が共に引張され、乗員の胸部近傍及び腰部近傍がそれぞれ前記シートベルト３６によって確実に拘束され、該乗員の前方（矢印Ｃ方向）への移動が阻止される。
【００４３】
以上のように、第１の実施の形態では、プリテンショナー機構４４を構成するシリンダ４６を、車両用シート１２において助手席側、すなわち、車両における中央部側となる第２サイドフレーム部２６の側面２６ａに設ける構成とすることにより、前記車両用シート１２の第１サイドフレーム部２４に設けられたリクライニングレバー３２等との設置スペースの重複を回避することができる。その結果、プリテンショナー機構４４のシリンダ４６を、車両用シート１２の助手席側において所望の位置に設けることが可能となる。
【００４４】
また、プリテンショナー機構４４を、車両側に設置する場合と比較し、車両用シート１２に予め組み付けておくことが可能となるため、その組付作業を簡素化でき、それに伴って、組付性の向上及び組付工数の削減を図ることができる。
【００４５】
さらに、プリテンショナー機構４４を、車両側に対して位置決めするという煩雑な作業が不要となるため、組付性を向上させることが可能となる。
【００４６】
なお、上述した第１の実施の形態では、シリンダ４６を含むプリテンショナー機構４４が、車両において運転席側となる車両用シート１２に設けられる場合について説明したが、例えば、助手席側となる車両用シートに設ける場合には、運転席側となり、リクライニングレバー等の設けられていないサイドフレーム部に対して前記シリンダが装着されることとなる。
【００４７】
次に、第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構１５０の適用されたシートベルト装置１５２を図４及び図５に示す。なお、上述した第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４の適用されたシートベルト装置１０と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【００４８】
この第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構１５０は、車両用シート１２を構成する第２サイドフレーム部１５４に設けられた取付用凹部１５６にシリンダ１５８が収容されている点で、第１の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４と相違している。
【００４９】
この取付用凹部１５６は、第２サイドフレーム部１５４の側面１５４ａに対して第１サイドフレーム部２４側（矢印Ａ１方向）に向かって所定深さで窪んで形成されると共に、前記第２サイドフレーム部１５４の長手方向（矢印Ｂ、Ｃ方向）に沿って所定長さで形成される。そして、取付用凹部１５６の内部には、シリンダ１５８が収容されて取付ブラケット５０ａ、５０ｂによって固定される。この際、シリンダ１５８は、第２サイドフレーム部１５４の側面１５４ａより外側に突出することがないため、前記第２サイドフレーム部１５４を含む車両用シート１２の幅寸法が増加することがない。
【００５０】
すなわち、第２サイドフレーム部１５４の下部に、取付用凹部１５６を設けることにより、プリテンショナー機構４４を設けた場合における車両用シート１２の幅方向の大型化を抑制している。その結果、車両用シート１２のコンパクト化を図ることができる。
【００５１】
また、シリンダ１５８の一端部から外部に突出したワイヤケーブル４８は、取付用凹部１５６から第２サイドフレーム部１５４の側面１５４ａ側へと導かれ、第１及び第２ガイド５８、６０、ガイドプーリ６２を経てアンカープレート４２に接続される。
【００５２】
この場合、シリンダ１５８には、供給ポート５４が、下方に向かって突出するように形成されている。
【００５３】
以上のように、第２の実施の形態では、プリテンショナー機構１５０を構成するシリンダ１５８を、助手席側となる車両用シートの第２サイドフレーム部２６の側方に設ける際、予め該第２サイドフレーム部に設けられ、第１サイドフレーム部２４側に向かって窪んだ取付用凹部１５６に収容可能な構成としている。そのため、シリンダ１５８が、第２サイドフレーム部１５４に対して側方に突出することがなく好適である。その結果、車両用シート１２における助手席側の空間が狭くなることが回避され、しかも、前記取付用凹部１５６の位置、大きさ等を変更することにより前記シリンダ１５８を所望の位置に取り付けることも可能となる。すなわち、プリテンショナー機構１５０のシリンダ１５８を、車両側の制約を受けることなく、車両用シート１２側に設けることによってその取付位置の自由度を増加させることができる。
【００５４】
また、供給ポート５４には、シリンダ１５８を作動させるための配線が接続されるが、該供給ポート５４を前記シリンダ１５８の横方向に設けた場合には、該配線を含めて車両用シート１２の幅方向に大型化してしまうため、前記供給ポート５４及びキャップ５６を、シリンダ１５８の下部に設けるとよい。これにより、配線を含めて供給ポート５４及びキャップ５６が、シリンダ１５８の側方に突出することがないため、車両用シート１２の幅方向への大型化を回避することができる。
【００５５】
さらに、第２サイドフレーム部１５４において、取付用凹部１５６を設けることにより、その剛性を高めることができるため、該取付用凹部１５６にシリンダ１５８を設けることにより、該シリンダ１５８を確実に作動させることができ、シートベルト３６を所定の引張力で引張することが可能となる。
【００５６】
次に、第３の実施の形態に係るプリテンショナー機構２００の適用されたシートベルト装置２０２を図６及び図７に示す。なお、上述した第１及び第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４、１５０の適用されたシートベルト装置１０、１５２と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【００５７】
この第３の実施の形態に係るプリテンショナー機構２００は、車両用シート１２を構成する第２サイドフレーム部２６の内側にシリンダ２０４が収容されている点で、第１及び第２の実施の形態に係るプリテンショナー機構４４、１５０と相違している。
【００５８】
このシリンダ２０４は、第２サイドフレーム部２６の内側となる位置に収容され、該第２サイドフレーム部２６の内壁面２０６に対して取付ブラケット５０ａ、５０ｂで固定される。なお、第２サイドフレーム部２６には、前記取付ブラケット５０ａ、５０ｂを取り付けるために切り欠かれた装着孔２０７がそれぞれ開口し、該装着孔２０７を通じて前記取付ブラケット５０ａ、５０ｂが前記内壁面２０６に対して固定される。
【００５９】
また、第２サイドフレーム部２６の後端部近傍には、シリンダ２０４の一端部から突出したワイヤケーブル４８を案内する円柱状のガイド体２０８が設けられている。そして、シリンダ２０４の一端部から後方に向かって延在したワイヤケーブル４８が、ガイド体２０８の外周面に沿うことでシート幅方向（矢印Ａ２方向）へと方向変換した後、第１サイドフレーム部２４の後端部に同様に設けられた別のガイド体（図示せず）によって再び前方側（矢印Ｃ方向）へと方向変換してガイドプーリ６２を介してアンカープレート４２に接続されている。
【００６０】
以上のように、第３の実施の形態では、プリテンショナー機構２００を構成するシリンダ２０４を、車両用シート１２の第２サイドフレーム部２６の内側となるように設けることにより、前記シリンダ２０４が第２サイドフレーム部２６の側方に突出することがないため、車両用シート１２における助手席側の空間が狭くなることが回避され、しかも、前記第２サイドフレーム部２６を含むシートフレーム２２の内部空間を利用して配置することができるため、所望の位置に容易に設置することができる。すなわち、プリテンショナー機構２００のシリンダ２０４を、車両側の制約を受けることなく、車両用シート１２側に設けることによってその取付位置の自由度を増加させることができる。
【００６１】
また、第２サイドフレーム部２６を含むシートフレーム２２には、その上方にシートクッション１４が装着されて覆われるため、シリンダ２０４が車両用シート１２の外側から視認されることがなく好適である。
【００６２】
なお、本発明に係るシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構４４は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【００６３】
１０、１５２、２０２…シートベルト装置
１２…車両用シート １４…シートクッション
１６…シートバック ２２…シートフレーム
２４…第１サイドフレーム部 ２６、１５４…第２サイドフレーム部
３５、１５６…取付用凹部 ３６…シートベルト
４２…アンカープレート
４４、１５０、２００…プリテンショナー機構
４６、１５８、２０４…シリンダ ４８…ワイヤケーブル
５２…ピストン ５８…第１ガイド
６０…第２ガイド ６２…ガイドプーリ
２０８…ガイド体
【特許請求の範囲】
【請求項１】
車両用シートに乗車した乗員をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置において、車両衝突時において前記シートベルトを引張して前記乗員に対する拘束力を高めるプリテンショナー機構であって、
前記プリテンショナー機構は、前記シートベルトに対して一端部が連結されるケーブルと、
前記ケーブルの他端部に接続され、前記車両衝突時において変位体に推力を付与して変位させ、前記ケーブルを引張する引張力発生手段と、
を備え、
前記引張力発生手段が、前記車両用シートにおいて、車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに設けられた凹部に設けられることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項２】
請求項１記載のプリテンショナー機構において、
前記引張力発生手段は、前記サイドフレームの外側面に取り付けられ、前記車両用シートの幅方向に窪んだ凹部に設けられることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項３】
請求項１又は２記載のプリテンショナー機構において、
前記引張力発生手段は、前記車両用シートにおいて車両の中央部側に設けられ、前記ケーブルは、前記サイドフレームに設けられたガイド機構を介して前記車両用シートにおいて前記車両の幅方向外側に設けられたアンカープレートに連結されることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項１】
車両用シートに乗車した乗員をシートベルトを介して拘束するシートベルト装置において、車両衝突時において前記シートベルトを引張して前記乗員に対する拘束力を高めるプリテンショナー機構であって、
前記プリテンショナー機構は、前記シートベルトに対して一端部が連結されるケーブルと、
前記ケーブルの他端部に接続され、前記車両衝突時において変位体に推力を付与して変位させ、前記ケーブルを引張する引張力発生手段と、
を備え、
前記引張力発生手段が、前記車両用シートにおいて、車両の前後方向に沿って延在するサイドフレームに設けられた凹部に設けられることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項２】
請求項１記載のプリテンショナー機構において、
前記引張力発生手段は、前記サイドフレームの外側面に取り付けられ、前記車両用シートの幅方向に窪んだ凹部に設けられることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【請求項３】
請求項１又は２記載のプリテンショナー機構において、
前記引張力発生手段は、前記車両用シートにおいて車両の中央部側に設けられ、前記ケーブルは、前記サイドフレームに設けられたガイド機構を介して前記車両用シートにおいて前記車両の幅方向外側に設けられたアンカープレートに連結されることを特徴とするシートベルト装置に用いられるプリテンショナー機構。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２０１１−１３６５９１（Ｐ２０１１−１３６５９１Ａ）
【公開日】平成２３年７月１４日（２０１１．７．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２９５９５５（Ｐ２００９−２９５９５５）
【出願日】平成２１年１２月２５日（２００９．１２．２５）
【出願人】（０００２２００６６）テイ・エス テック株式会社 (625)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年７月１４日（２０１１．７．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１２月２５日（２００９．１２．２５）
【出願人】（０００２２００６６）テイ・エス テック株式会社 (625)
【Ｆターム（参考）】
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