説明

シートベルト装置

【課題】モータ作動音を可及的に抑制しつつ、周囲環境の湿度に拘わらず、ウェビングを常に規定の巻取り位置まで収納できるシートベルト装置を提供する。
【解決手段】モータ10を制御するコントローラ21に、バックルスイッチ39がONからOFFに切り換わったときに、モータ10をウェビング巻取り方向に回転駆動する収納制御手段35を設ける。ウェビング5の近傍の湿度を検出する湿度センサ44を設ける。収納制御手段35は、湿度センサ44による検出湿度が高いほどウェビング5の巻取り速度が速くなるようにモータ10の駆動電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシートに着座した乗員をウェビングによって拘束するシートベルト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に装備されるシートベルト装置として、ウェビングの巻取りをモータの動力によって行うものが知られている。
この種のシートベルト装置としては、緊急時のウェビングの引き込みをモータによって行うだけでなく、ウェビング装着時の弛み取りや、ウェビングを外した後の収納作動もモータの動力によって助勢するものがある(例えば、特許文献1参照)。
このシートベルト装置は、ウェビングの収納時には、モータが設定電力で巻取り方向に駆動され、それによってウェビングがベルトリールに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−28932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のシートベルト装置の場合、ウェビングの収納時には、モータが常にほぼ一定の電力で巻取り方向に駆動されるため、梅雨期等で車室内の湿度が高い場合にも、同様の速度でウェビングの巻取りが行われる。
しかし、シートベルト装置に用いられるウェビングは湿度を吸収し易い化学繊維によって形成されているため、周囲の湿度が高い場合には吸収した湿度が大きな作動抵抗となる。このため、湿度の高い場合には、ウェビングの作動抵抗の増大によってウェビングが規定の巻取り位置まで収納できなくなる可能性が考えられる。
また、ウェビングの収納時にモータに付与する電力を大きくすれば、ウェビングを規定の巻取り位置まで確実に収納できるようになるが、この場合には、乾燥時にウェビングの巻取り速度が必要以上に速くなり、モータ作動音の増大を招いてしまう。
【0005】
そこでこの発明は、モータ作動音を可及的に抑制しつつ、周囲環境の湿度に拘わらず、ウェビングを常に規定の巻取り位置まで収納できるシートベルト装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るシートベルト装置では、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
請求項1に係る発明は、シートに着座した乗員を拘束するウェビング(例えば、後述の実施形態におけるウェビング5)が巻回されるベルトリール(例えば、後述の実施形態におけるベルトリール12)と、前記ベルトリールに駆動力を伝達可能なモータ(例えば、後述の実施形態におけるモータ10)と、乗員による前記ウェビングの装着状態と非装着状態を検出する脱着状態検出手段(例えば、後述の実施形態におけるバックルスイッチ39)と、この脱着状態検出手段による検出結果が装着状態から非装着状態に切り換わったときに前記モータをウェビング巻取り方向に回転駆動する収納制御手段(例えば、後述の実施形態における収納制御手段35)と、を備えたシートベルト装置であって、前記ウェビングの近傍の湿度を検出する湿度検出手段(例えば、後述の実施形態における湿度センサ44)を備え、前記収納制御手段は、前記湿度検出手段の検出結果に応じて前記モータの巻取り速度を制御することを特徴とする。
これにより、湿度検出手段がウェビングの近傍の湿度を検出し、ウェビングの収納時には、湿度検出手段の検出した検出結果に応じてモータの巻取り速度が制御される。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るシートベルト装置において、前記収納制御手段は、前記湿度検出手段による検出湿度が高いほど前記ウェビングの巻取り速度が速くなるように前記モータの駆動電力を制御することを特徴とする。
これにより、ウェビングの収納時には、湿度検出手段の検出湿度が高いほど巻取り速度が速くなるようにモータの駆動電力が制御されるため、ウェビングの作動抵抗が湿度によって増大する分だけモータの巻取り速度が増速されることになる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係るシートベルト装置において、車室内の音を検出する車室音検出手段(例えば、後述の実施形態における風量モード検出部45,オーディオスイッチ46)を備え、前記収納制御手段は、前記湿度検出手段による検出湿度が高いほど前記ウェビングの巻取り速度が速くなり、かつ、同じ検出湿度であれば、前記車室音検出手段による検出音のレベルが小さいほど前記ウェビングの巻取り速度が遅くなるように前記モータの駆動電力を制御することを特徴とする。
これにより、ウェビングの収納時には、湿度検出手段の検出湿度が高いほど巻取り速度が速くなるようにモータの駆動電力が制御され、さらに、同じ検出湿度であっても、室音検出手段による検出音のレベルが小さい場合には、モータ作動音がより小さくなるようにモータの駆動電力が制御されることになる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ウェビングの収納時に、湿度検出手段の検出したウェビングの近傍の湿度に応じてモータの巻取り速度が制御されるため、必要外のモータ作動音の増大を招くことなく、周囲環境の湿度の高い場合であってもウェビングを常に規定の巻取り位置まで収納することができる。
【0010】
また、特に、請求項3に係る発明によれば、ウェビングの収納時に、ウェビングの近傍の湿度に応じたモータの巻取り速度の制御を行いつつも、室音検出手段による検出音のレベルが小さい場合には、モータ作動音がより小さくなるようにモータの駆動電力を制御するため、乗員に与える異音による不快感をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1の実施形態のシートベルト装置の概略構成図である。
【図2】同実施形態のシートベルト装置のコントローラを中心とする概略構成図である。
【図3】同実施形態のシートベルト装置のウェビングの収納制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】同実施形態の変形例の湿度検出制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】この発明の第2の実施形態のシートベルト装置におけるウェビングの収納制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】同実施形態のシートベルト装置のウェビングの収納制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図3に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態のシートベルト装置1の全体概略構成を示す図であり、同図中2は、乗員3の着座するシートである。この実施形態のシートベルト装置1は、所謂三点式のシートベルト装置であり、図示しないセンタピラーに取付けられたリトラクタ4からウェビング5が上方に引き出され、そのウェビング5がセンタピラーの上部側に支持されたスルーアンカ6に挿通されるとともに、ウェビング5の先端がシート2の車室外側寄りのアウタアンカ7を介して車体フロアに固定されている。そして、ウェビング5のスルーアンカ6とアウタアンカ7の間にはタングプレート8が挿通されており、そのタングプレート8は、シート2の車体内側寄りの車体フロアに固定されたバックル9に対して脱着可能となっている。
ウェビング5は、初期状態ではリトラクタ4に巻取られており、乗員3が手で引き出してタングプレート8をバックル9に固定することにより、乗員3の主に胸部と腹部をシート2に対して拘束する。また、このシートベルト装置1は、緊急時や車両の挙動変化が大きいときや、ウェビング5の弛み取り時や、ウェビング5をリトラクタ4に巻取り収納するとき等に、電動式のモータ10によってウェビング5の巻取りを行う。
【0013】
リトラクタ4は、図2に示すようにケーシング(図示せず)に回転可能に支持されたベルトリール12にウェビング5が巻回されるとともに、ケーシングの一端側にベルトリール12の軸が突出している。このベルトリール12の軸は、動力伝達機構13を介してモータ10の回転軸10aに連動可能に接続されている。動力伝達機構13は、モータ10の回転を減速してベルトリール12に伝達する。また、リトラクタ4には、ベルトリール12をウェビング巻取り方向に付勢する巻取りばね50が設けられ、ベルトリール12とモータ10がクラッチ20によって切り離された状態において、巻取りばね50によるウェビング巻取り方向の付勢力がベルトリール12に作用するようになっている。
なお、クラッチ20は、モータ10の正転方向の回転トルクの入力を契機として動力伝達機構13を接続状態にし、モータ10の逆転方向の回転トルクの入力を契機として動力伝達機構13を遮断状態にする。
【0014】
また、リトラクタ4には、ベルトリール12の回転位置を検出する回転センサ11が設けられている。この回転センサ11は、例えば、円周方向に沿って異磁極が交互に着磁され、ベルトリール12と一体に回転する磁性円板と、この磁性円板の外周縁部に近接配置された一対のホール素子と、ホール素子の検出信号を処理するセンサ回路とから成り、センサ回路で処理されたパルス信号がコントローラ21に出力されるようになっている。
この場合、ベルトリール12の回転に応じてセンサ回路からコントローラ21に入力されたパルス信号は、ベルトリール12の回転量や、回転速度、回転方向等を検出するのに用いられる。つまり、コントローラ21においては、パルス信号をカウントすることによってベルトリール12の回転量(ウェビング5の巻取り・引き出し量)を検出し、パルス信号の変化速度(周波数)を演算することによってベルトリール12の回転速度(ウェビング5の巻取り・引き出し速度)を求め、さらに、パルス信号の波形の立ち上がりの比較によってベルトリール12の回転方向を検出する。
【0015】
ところで、コントローラ21の入力側には、図2に示すように回転センサ11の他に、タングプレート8とバックル9の係合状態(ウェビング5の脱着状態)を検出するバックルスイッチ39(脱着状態検出手段)と、モータ10に通電されている電流を検出する電流センサ40が接続されるとともに、車室内の湿度(ウェビング5の近傍の湿度)を検出する湿度センサ44(湿度検出手段)が接続されている。なお、図2において、45は、エアコンファンの風量モード検出部であり、46は、オーディオスイッチである。これらは、後に説明する第2の実施形態において用いられる。
【0016】
コントローラ21は、タングプレート8がバックル9から外されてバックルスイッチ39の検出信号がONからOFFに切り換わったときに、モータ10の通電電流が規定値に達するまでモータ10を正転方向(ウェビング巻取り方向)に回転駆動させる収納制御手段35を備えている。収納制御手段35は、湿度センサ44の出力信号を常時監視し、湿度センサ44の出力信号に応じてモータ10の駆動電力と、モータ10を自動停止させるべく上記の通電電流の規定値(電流規定値)を変更するようなっている。
収納制御手段35では、例えば、湿度センサ44によって検出される湿度を、20%,50%,75%を境界として4つの領域に分け、これらの領域の湿度に応じてモータ10の駆動電力を小,中,大,極大の4段階に切り換えるとともに、電流規定値も同様に4段階に切り換える。モータ10の駆動電力と電流規定値は、湿度の増加に応じて増大するように設定されている。
【0017】
以下、このシートベルト装置1のコントローラ21によるウェビング5の収納制御の一例を図3のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS101においては、バックルスイッチ39の検出信号がONからOFFに切り換わったか否かを判定し、Yesの場合にはステップS102に進んで湿度センサ44の信号を読み込み、Noの場合にはリターンする。
【0018】
つづく、ステップS103においては、湿度センサ44の信号を基にして湿度が20%以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS104に進み、Noの場合にはステップS105へと進む。ステップS104では、収納制御手段35が所定の小電力でモータ10をウェビング巻取方向に駆動する。
ステップS105においては、湿度センサ44の信号を基にして湿度が50%以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS106に進み、Noの場合にはステップS107へと進む。ステップS106では、収納制御手段35が中電力でモータ10をウェビング巻取方向に駆動する。
ステップS107においては、湿度センサ44の信号を基にして湿度が75%以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS108に進み、Noの場合にはステップS109へと進む。ステップS108では、収納制御手段35が大電力でモータ10をウェビング巻取方向に駆動し、ステップS109では、収納制御手段35が極大電力でモータ10をウェビング巻取方向に駆動する。
なお、ステップS104,S106,S108,S109の説明で用いた小電力、中電力、大電力、極大電力は、これらの各ステップでの駆動電力を比較した場合の相対的な電力の大小を意味し、各電力の大小は、小電力<中電力<大電力<極大電力であるものとする。
【0019】
ステップS104においてモータ10を小電力で駆動した後には、つづくステップS110において、モータ10の通電電流が第1の電流規定値(例えば、3.0A)以上になったか否かを判定し、ここでYesの場合には、ステップS111に進んでモータ10の駆動を停止し、Noの場合には、ステップS104に戻って小電力でのモータ10の駆動を継続する。
【0020】
また、ステップS106においてモータ10を中電力で駆動した後には、ステップS112において、モータ10の通電電流が第2の電流規定値(例えば、3.5A)以上になったか否かを判定する。ここでYesの場合には、ステップS111に進んでモータ10の駆動を停止し、Noの場合には、ステップS106に戻って中電力でのモータ10の駆動を継続する。
【0021】
一方、ステップS108においてモータ10を大電力で駆動した後には、ステップS113において、モータ10の通電電流が第3の電流規定値(例えば、4.0A)以上になったか否かを判定する。ここでYesの場合には、ステップS111に進んでモータ10の駆動を停止し、Noの場合には、ステップS108に戻って大電力でのモータ10の駆動を継続する。
【0022】
また、ステップS109においてモータ10を極大電力で駆動した後には、ステップS114において、モータ10の通電電流が第4の電流規定値(例えば、4.5A)以上になったか否かを判定する。ここでYesの場合には、ステップS111に進んでモータ10の駆動を停止し、Noの場合には、ステップS109に戻って大電力でのモータ10の駆動を継続する。
【0023】
なお、ステップS110,S112,S113,S114の説明で用いた第1の電流規定値、第2の電流規定値、第3の電流規定値、第4の電流規定値は、第1の電流規定値<第2の電流規定値<第3の電流規定値<第4の電流規定値の大小関係となっている。また、モータ10の駆動が自動停止されることになる各電流規定値は、モータ10の駆動時における最大トルクを規定する。
【0024】
したがって、このコントローラ21によるウェビング5の収納制御によれば、ウェビング5の近傍の湿度に応じて、湿度が高いほど値が大きくなるようにモータ10の駆動電力と電流規定値が変更されることになる。このため、ウェビング5の近傍の湿度が高くウェビング5の作動抵抗が大きくなる状況ほど、ウェビング5の巻取り速度が速く、かつ最大巻取りトルクも大きくなる。よって、この収納制御によれば、ベルトリール12を規定の巻取り位置まで確実に収納作動させることができる。
【0025】
また、この収納制御においては、湿度が高いほど値が大きくなるようにモータ10の駆動電力と電流規定値が変更されるため、乾燥時に必要以上の速さでウェビング5が巻き取られることがない。したがって、この収納制御を採用した場合には、モータ10が必要以上の速度で回転してその作動音が乗員の耳障りになることがないため、乗員の快適性を阻害することもない。
【0026】
なお、以上ではウェビング5の近傍の湿度を検出するために専用の湿度センサ44を設けるようにしているが、専用の湿度センサ44を設けることなく、ウェビング5の移動速度とモータ10の通電電流の関係からウェビング5の近傍の湿度を推測(検出)するようにしても良い。
【0027】
以下、ウェビング5の移動速度と通電電流の関係から湿度を推測する場合の例について、図4のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS201おいては、バックルスイッチ39の検出信号がONからOFFに切り換わったか否かを判定し、Yesの場合にはステップS202に進み、Noの場合にはリターンする。
ステップS202においては、ベルトリール5が一定速度で回転するように(ウェビング5が一定速度で変位するように)モータ10をウェビング巻取り方向に駆動する。
【0028】
ステップS203においては、このときモータ10の通電電流を検出して通電電流が第1の電流値(例えば、3.0A)以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS204に進み、Noの場合にはステップS205へと進む。
ステップS205においては、モータ10の通電電流が第2の電流値(例えば、3.5A)以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS206に進み、Noの場合にはステップS207へと進む。
ステップS207においては、モータ10の通電電流が第3の電流値(例えば、4.0A)以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS208に進み、Noの場合にはステップS209へと進む。
なお、ステップS203,S205,S207の説明で用いた第1の電流値,第2の電流値,第3の電流値は、第1の電流値<第2の電流値<第3の電流値の大小関係となっている。
【0029】
そして、モータ10の通電電流が第1の電流値以下であると判定されてステップS204に進んだ場合には、ウェビング5の湿度が20%以下であるものと推定する。
通電電流が第1の電流値を超え、かつ第2の電流値以下であると判定されてステップS206に進んだ場合には、ウェビング5の湿度が20%を超え50%以下の範囲であるものと推定する。
同様に、モータ10の通電電流が第2の電流値を超え、かつ第3の電流値以下であると判定されてステップS208に進んだ場合には、ウェビング5の湿度が50%を超え75%以下の範囲であるものと推定する。
また、通電電流が第3の電流値を超えると判定されてステップS209に進んだ場合には、ウェビング5の湿度が75%を超えるものと推定する。
【0030】
したがって、ウェビング5の巻取り収納の初期に以上の処理を短時間実行することにより、湿度センサを用いることなく、ウェビング5の実際の作動抵抗を基にしてウェビング5の湿度をほぼ正確に推定することができる。
【0031】
つづいて、図5,図6に示す第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、図2を適宜参照するものとする。
この第2の実施形態のシートベルト装置は、全体の構成は第1の実施形態とほぼ共通であるが、図2に示すようにコントローラ21の入力側に、バックルスイッチ39と電流センサ40が接続されている他に、エアコンファンの風量モードが大である否かを検出する風量モード検出部45と、車室内のオーディオがONであるか否かを検出するためにオーディオスイッチ46が接続されている。なお、この実施形態においては、風量モード検出部45とオーディオスイッチ46が、車室内の音を検出する車室音検出手段を構成している。
【0032】
また、第2の実施形態の収納制御手段35は、第1の実施形態と同様に、タングプレート8がバックル9から外されてバックルスイッチ39の検出信号がONからOFFに切り換わったときに、モータ10の通電電流が規定値に達するまでモータ10を正転方向(ウェビング巻取り方向)に回転駆動させるとともに、湿度センサ44の出力信号に応じてモータ10の駆動電力(駆動電流)を変更するが、このモータ10の駆動電力の変更に際しては、さらにエアコンの風量モードとオーディオのON,OFFの状態を考慮して行われるようになっている。
【0033】
具体的には、例えば、エアコンの送風状態とオーディオのON,OFF状態に応じてモータ10の駆動速度を仮決定し、その仮決定した駆動速度に対応する駆動電流値に、湿度に応じた係数を掛けあわせてモータ10の駆動速度を最終決定し、この駆動速度が得られるようにモータ10の駆動電力(駆動電流)を変更する。
したがって、第2の実施形態の収納制御手段35による制御では、湿度センサ44による検出湿度が高いほどモータ10の駆動速度が速くなり、かつ、同じ検出湿度であれば、エアコンやオーディオよる音のレベルが小さいほど駆動速度が遅くなるようにモータ10の駆動電流が制御される。また、この収納制御手段35による制御において、エアコンやオーディオよる音のレベルが大きいほど駆動速度が速くなり、かつ、同じ音のレベルであれば、湿度センサ44による検出湿度が高いほどウェビング5の巻取り速度が速くなる。
【0034】
以下、この第2の実施形態の収納制御の一例を図5,図6のフローチャートに基づいて説明する。
図5のステップS301においては、バックルスイッチ39の検出信号がONからOFFに切り換わったか否かを判定し、Yesの場合にはステップS302に進んで湿度センサ44の信号を読み込み、Noの場合にはリターンする。
つづくステップS303においては、車室音に応じたモータ10の駆動速度を仮決定する。
【0035】
図6は、このステップS303におけるモータ速度の仮決定の具体的な処理を示すフローチャートである。
図6のステップS401においては、エアコンのファンが作動し、かつ風量モードが大であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS402に進み、Noの場合にはステップS403へと進む。
ステップS403においては、オーディオスイッチ46がONであるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS404に進み、Noの場合にはステップS405へと進む。
【0036】
エアコンの風量モードが大で、ステップS402に進んだときには、モータ10の駆動速度を大に仮決定する。
エアコンの風量モードが大ではなく、かつオーディオスイッチ46がONの場合に、ステップS404に進んだときには、モータ10の駆動速度を中に仮決定する。
また、エアコンの風量モードが大ではなく、かつオーディオスイッチ46がOFFの状態の場合に、ステップS405に進んだときには、モータ10の駆動速度を小(通常速度)に仮決定する。
なお、この実施形態においては、エアコンの送風モードが大の場合に車室内の音のレベルが最も大きく、次にオーディオスイッチ46がONの場合に音のレベルが大きくなるものとして制御の設定を行っている。
【0037】
このようにして図5のステップS303において、車室音に応じたモータ速度を仮決定すると、つづくステップS304においては、湿度センサ44の信号を基にして湿度が20%以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS305に進み、Noの場合にはステップS306へと進む。
ステップS306においては、湿度センサ44の信号を基にして湿度が50%以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS307に進み、Noの場合にはステップS308へと進む。
ステップS308においては、湿度センサ44の信号を基にして湿度が75%以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合にはステップS309に進み、Noの場合にはステップS310へと進む。
【0038】
湿度が20%以下の範囲で、ステップS305に進んだ場合には、ステップS303で仮決定したモータ10の駆動速度(大,中,小)を得るべく駆動電流に、「湿度20%以下」に対応する係数1を掛け合わせた値が実際の駆動電流となるようにモータ10を駆動し、その後にステップS311に進んでモータ10の駆動を停止する。
【0039】
また、湿度が20%を超え、かつ50%以下の範囲で、ステップS307へと進んだ場合には、ステップS303で仮決定したモータ10の駆動速度(大,中,小)を得るべく駆動電流に、「湿度50%以下」に対応する係数a(a>1)を掛け合わせた値が実際の駆動電流となるようにモータ10を駆動し、その後にステップS311に進んでモータ10の駆動を停止する。
【0040】
同様に、湿度が50%を超え、かつ75%以下の範囲で、ステップS309へと進んだ場合には、ステップS303で仮決定したモータ10の駆動速度(大,中,小)を得るべく駆動電流に、「湿度75%以下」に対応する係数b(b>a>1)を掛け合わせた値が実際の駆動電流となるようにモータ10を駆動し、その後にステップS311に進んでモータ10の駆動を停止する。
【0041】
また、湿度が75%を超える範囲で、ステップS310へと進んだ場合には、ステップS303で仮決定したモータ10の駆動速度(大,中,小)を得るべく駆動電流に、「湿度75%を超える」に対応する係数c(c>b>a>1)を掛け合わせた値が実際の駆動電流となるようにモータ10を駆動し、その後にステップS311に進んでモータ10の駆動を停止する。
【0042】
したがって、この第2の実施形態の収納制御では、第1の実施形態と同様に、ウェビング5の近傍の湿度が高いほど速度が速くなるようにモータ10の駆動電流が変更されるため、ウェビング5の近傍の湿度が高くウェビング5の作動抵抗が大きくなる状況においても、ベルトリール12を確実に規定の巻取り位置まで収納作動させることができる。
【0043】
また、この第2の実施形態の収納制御の場合にも、湿度が高いほど値が大きくなるようにモータ10の駆動電流が変更されるため、乾燥時に必要以上の速さでウェビング5が巻き取られることで、作動音が乗員の耳障りになるのを防止することができる。
【0044】
さらに、この第2の実施形態の収納制御によれば、モータ10の駆動電流の変更に際して、さらにエアコンの風量モードとオーディオのON,OFFの状態が考慮され、車室内の音のレベルが小さい場合ほど、モータ10の駆動速度を遅くしてモータ10の作動音が小さくなるように補正されるため、車室内の乗員に与えるモータ作動音による不快感をより抑制することができる。
【0045】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…シートベルト装置
5…ウェビング
10…モータ
12…ベルトリール
35…収納制御手段
39…バックルスイッチ(脱着状態検出手段)
44…湿度センサ(湿度検出手段)
45…風量モード検出部(車室音検出手段)
46…オーディオスイッチ(車室音検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を拘束するウェビングが巻回されるベルトリールと、
前記ベルトリールに駆動力を伝達可能なモータと、
乗員による前記ウェビングの装着状態と非装着状態を検出する脱着状態検出手段と、
この脱着状態検出手段による検出結果が装着状態から非装着状態に切り換わったときに前記モータをウェビング巻取り方向に回転駆動する収納制御手段と、を備えたシートベルト装置であって、
前記ウェビングの近傍の湿度を検出する湿度検出手段を備え、
前記収納制御手段は、前記湿度検出手段の検出結果に応じて前記モータの巻取り速度を制御することを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】
前記収納制御手段は、前記湿度検出手段による検出湿度が高いほど前記ウェビングの巻取り速度が速くなるように前記モータの駆動電力を制御することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
車室内の音を検出する車室音検出手段を備え、
前記収納制御手段は、前記湿度検出手段による検出湿度が高いほど前記ウェビングの巻取り速度が速くなり、かつ、同じ検出湿度であれば、前記車室音検出手段による検出音のレベルが小さいほど前記ウェビングの巻取り速度が遅くなるように前記モータの駆動電力を制御することを特徴とする請求項2に記載のシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52828(P2013−52828A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193812(P2011−193812)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】