説明

シート処理装置と画像形成装置

【課題】ステープラによる綴じ処理をしないときの処理速度を確保しつつ、ステープラによる綴じ処理時の側端整合の整合性を低下させないようにする。
【解決手段】処理ローラホルダ211に設けられた処理ローラは、シートを幅規制板239に当接させた状態で、そのシートの上をさらに移動するようになっている。処理ローラの幅規制板239への移動速度は、ステープラによってシートを綴じる処理情報を得たとき、綴じる処理情報を得ていないときよりも遅く設定されている。このため、シート処理装置は、ステープラによる綴じ処理をしないときの処理速度を確保しつつ、ステープラによる綴じ処理時の側端整合の整合性を低下させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを加工する加工処理とシートを加工しない未加工処理とを選択的に行なうシート処理装置と、このシート処理装置を装置本体に備えた画像形成装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
シートに画像を形成する画像形成装置には、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等がある。画像形成装置には、シートに画像を形成する装置本体と、画像形成されたシートを処理するシート処理装置とで構成されているタイプのものがある。
【0003】
シート処理装置には、シートを束状にして綴じるステープル処理と、綴じないノンステープル処理とを選択的に行なえるタイプのものがある。このタイプのシート処理装置は、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている従来のシート処理装置は、ステープル処理をするとき、シートの搬送方向に沿った縁(側端ともいう)を整合してシートを束状にした後、シート束の所定の位置を綴じていた。シートの側端整合は、移動部材でシートをシートの搬送方向に対して直交する方向に移動させて、シートの側端を位置決め壁に当接させ、移動規制されたシート上を、移動部材を滑らせて行っている。
【0005】
従来のシート処理装置は、ノンステープル処理のときもシートの側端整合を行って、シートを排出していた。シート処理装置は、ノンステープル処理のときには、シートの側端整合をすることなくそのまま排出してもよいが、ステープル処理と異なった動作をしなければならず、その分、構成が複雑になる。このため、従来のシート処理装置は、構造を簡素化するため、ノンステープル処理のときも、シートの側端整合を行ってから排出するよになっている。
【0006】
このシート処理装置における、シートの側端整合の動作速度は、画像形成装置の装置本体から送られてくるシートの搬送間隔に対応した速度に合わせるのが好ましい。
【0007】
【特許文献1】特開2007−320708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年の画像形成装置は、画像形成速度が速くなっており、シート処理装置もそれに合わせて、シートの側端整合の処理時間を速くしなければならない。
【0009】
しかし、従来のシート処理装置は、シートの側端整合の処理速度を速くすると、移動部材でシートを位置決め壁に当接させていたため、移動部材がシートを位置決め壁に当接させる速度や、シート上を滑る速度も速くなり、シートに座屈が生じおそれがある。このため、綴じられたシート束は、シートの座屈によって、シートの側端の整合性が低下して、見栄えが悪くなることがあった。
【0010】
なお、以上の説明では、シートを束状にして綴じるときのことを述べたが、シートに孔をあける場合においても、シートの側端の整合性が低いと、シートの同じ位置に孔をあけることができないという課題がある。
【0011】
すなわち、従来のシート処理装置は、ステープラ、穿孔装置等の処理手段による加工処理をしない(未加工処理)ときの処理速度を画像形成速度に合わせるのにともなって、加工処理の処理時間も合わせると、シートの整合性が低下するという課題があった。
【0012】
また、シート加工処理時において、シートの側端の整合性が低いシート処理装置を備えた画像形成装置は、再度、シートに画像を形成し直さなければならないことがあった。
【0013】
そこで、本発明は、処理手段による加工処理をしないときの処理速度を確保しつつ、処理手段による加工処理時の側端整合の整合性を低下させるのを防止したシート処理装置を提供することにある。
【0014】
本発明は、シートの加工処理時の整合性を低下させるのを防止したシート処理装置を備えて、再度、シートに画像を形成し直すことを少なくした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のシート処理装置は、排出されたシートが積載される積載手段と、前記積載手段に積載された前記シートの上面に接触してシート排出方向に対して交差する方向に移動して前記シートを同方向に移動させる移動手段と、前記移動手段によって移動させられた前記シートのシート排出方向に沿った側端を受け止めて前記側端を整合する側端整合手段と、前記側端整合手段によって側端整合された前記シートを処理する処理手段と、を備え、前記移動手段が、前記シートを前記側端整合手段に当接させた状態でさらに移動させるようになっており、さらに、前記移動手段が前記側端整合手段に接近する移動速度を、前記処理手段によってシートを処理させる加工処理情報を得たとき、前記加工処理情報を得ていないときよりも遅い速度に切り換える速度切り換え手段を備えている。
【0016】
本発明の画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像を形成されたシートを処理するシート処理装置と、を備え、前記シート処理装置は、上記のシート処理装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシート処理装置は、移動手段が側端整合手段に接近する移動速度を、加工処理情報を得たとき、加工処理情報を得ていないときよりも遅い速度に切り換えるようになっている。
【0018】
このため、本発明のシート処理装置は、加工処理情報を得ていない未加工処理時の作動速度を遅くすることなく、高速の画像処理をする画像形成装置に対応することができる。
【0019】
また、本発明のシート処理装置は、加工処理情報を得たとき、シートに座屈が生じるのを少なくして、側端の整合性を高めたシート束を綴じるので、側端の揃った見栄えのよいシート束を提供することができる。
【0020】
すなわち、本発明のシート処理装置は、加工処理情報を得ていないときの生産性を確保しつつ、加工処理情報を得ているときの整合性をより安定させることができるという効果を奏する。
【0021】
本発明の画像形成装置は、シートの加工処理時の整合性を低下させるのを防止したシート処理装置を備えているので、再度、シートに画像を形成し直すことを少なく、画像形成効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態のシート処理装置と、このシート処理装置を装置本体に備えた画像形成装置とを図に基づいて説明する。
【0023】
(画像形成装置)
図1は、本発明の実施形態における画像形成装置のシート搬送方向に沿った断面図である。画像形成装置150は、シートに画像を形成する装置である。画像形成装置150には、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等がある。画像形成装置150は、シートに画像を形成する装置本体150Aと、画像が形成されたシートを処理するシート処理装置300とで構成されている。シート処理装置300は、画像形成装置の装置本体150Aに購入選択肢(いわゆるオプション)として接続されている。シート処理装置300は、装置本体150Aに内蔵されていてもよい。
【0024】
シート処理装置は、シートの縁を揃えてシートを束状にした後、綴じる(以下、「ステープル」という)処理と、シートの縁を揃えてシートを束状にした後、綴じないで排出する(以下、「ノンステープル」という)処理とを選択的に行なえるようになっている。
【0025】
なお、シート束を綴じることをステープルという。シートの縁を揃えることを整合という。
【0026】
画像形成装置150の装置本体150Aは、外部からの情報に基づいてシートに画像を形成するようになっている。装置本体150Aは、下部に、シートを収納したシートカセット151を図1の右方向に引き出し自在に備えている。シートカセット151のシートSは、ピックアップローラ261によってシートカセット151から送り出されて、搬送ローラ対262、レジストローラ対263によって、画像形成手段である例えば感光体ドラム264と転写ローラ265との間に送り込まれる。感光体ドラム264には、予めトナー画像が形成されている。このため、感光体ドラム264のトナー画像がシートに転写される。トナー画像を転写されたシートSは、定着器266によってトナー画像を定着されてから、排紙ローラ対153によって、シート処理装置300に送り込まれる。
【0027】
装置本体150Aとシート処理装置300は、装置本体150Aに設けられた操作パネル152をユーザが操作することによって、作動するようになっている。装置本体150Aの制御は、本体制御部140によって行われる。
【0028】
(シート処理装置)
本発明の実施形態のシート処理装置を図に基づいて説明する。
【0029】
なお、実施形態の説明において、シート搬送方向とは、図1の左右方向(矢印X方向)のことである。シートの排出方向は、図1の左から右への方向である。シートの後端とは、シート搬送方向上流側の縁のことであり、上流端と言う場合もある。シートの先端とは、シート搬送方向下流側の縁のことであり、下流端と言う場合もある。シートの側端とは、シート搬送方向に沿った縁のことである。シートの幅方向とは、シート搬送方向に対して交差する方向で、かつシートの表面に沿った方向(図5,6の矢印Y方向)のことである。上下方向とは、図1の上下方向(矢印Z方向)のことである。
【0030】
また、図1、図2に示すシート処理装置と、図8、図9に示すシート処理装置は、向きが互いに逆になっている。
【0031】
シート処理装置300は、装置本体150Aから処理トレイ205上にシートを受け入れて、そのシートの側端を幅規制板239(図10)で整合し、束状にしたシートをステープラ254(図3)で綴じるステープル処理を行なうようになっている。
【0032】
また、シート処理装置は、装置本体150Aから処理トレイ205上にシートを受け入れて、そのシートの側端を幅規制板239(図10)で整合し、束状にしたシートをステープル処理しないでそのまま排出するノンステープル処理も行なえるようになっている。
【0033】
なお、シート処理装置300は、処理手段である例えばステープラ254の代わりに穿孔装置を備えて、シートに孔をあける孔あけ処理を行なえるようにしてもよい。このため、処理手段は、ステープラに限定されるものではない。また、シートを側端整合した後、ステープル処理や孔あけ処理等を総称して加工処理という。さらに、処理トレイ205にシートを排出して幅規制板239に接近又は当接させる処理までしてステープル処理や孔あけ処理を行なわない処理を未加工処理という。
【0034】
シート処理装置300は、CPU100(図1)によって作動を制御されるようになっている。CPU100(図13)は、シリアルI/O130を介して、装置本体150Aの本体制御部140(図1)と信号の授受をしながら、シート処理装置300を作動制御するようになっている。CPU100と本体制御部140は、いずれか一方を他方に一体化してもよい。
【0035】
CPU100には、装置本体150Aからシート受入部201に送り込まれてくるシートを検知する入口センサ202(図2)が接続されている。また、TDスライダ244(図3、図4)がホームポジションにいるか否かを検知するTDスライダ位置センサ248(図4)も接続されている。TDスライダ位置センサ248によって、TDスライダ244がホームポジションにいることを検知したとき、爪249(図5)は上方に回動した位置にいる。
【0036】
CPU100には、搬送モータ206(図3)とTDモータ216(図3)とクランプソレノイド240(図3)も接続されている。搬送モータ206は、駆動ローラ203a(図1)を回転させるようになっている。TDモータ216は、TDスライダ244をシート搬送方向に移動させて爪249をシート搬送方向に移動させるようになっている。クランプソレノイド240は、爪241aを上下方向に回転させるようになっている。爪241aは、シートを処理トレイ205に押し付けたり、開放したりするようなっている。また、TDモータ216は、不図示の機構を介して処理ローラ204をシート搬送方向と、シートの幅方向とに移動させるようになっている。
【0037】
CPU100には、CPUが実行する図14の制御手順等と、ステープル処理を行なう場合の処理ローラ204の移動速度(V1)と、ステープル処理を行なわない場合の処理ローラの移動速度(V2)とをあらかじめ記憶しているROM110が接続されている。また、CPU100には、CPU100の演算データ、装置本体150Aの本体制御部140から受信した制御データ等の各種データを記憶するRAM121も接続されている。
【0038】
なお、装置本体150Aに設けられている操作パネル152は、シート処理装置300に設けられていてもよい。この場合、操作パネル152は、CPU100に接続されていてもよい。
【0039】
図2において、シート受入部201は、装置本体150Aの排紙ローラ対153(図1)から排出されたシートSを受け取る部分である。このシート受入部201に排出されたシートSは、入口センサ202に検知された後、搬送ローラ対203の回転と、回転止めされた処理ローラ204の移動とによって搬送されて、積載手段である例えば処理トレイ205上に排出される。
【0040】
シートを処理トレイ205に排出する搬送ローラ対203は、駆動ローラ203aと、従動ローラ203bとで構成されている。駆動ローラ203aは、図3に示すように、搬送モータ206から、搬送モータ206に取り付けられている搬送モータギア207、搬送プーリギア208、搬送ベルト209、搬送プーリ210を介して回転力を得て、駆動回転するようになっている。
【0041】
処理ローラ204は、円筒部材の外周部にゴムもしくは発泡体等ゴムに近い弾性を備えた弾性体を設けて円筒状に形成されて、処理ローラホルダ211(図2、図8、図9、図11)に保持されている。処理ローラホルダ211は、図示しないカム機構によりローラホルダ軸212を中心に上下方向へ回転できるようになっている。処理ローラ204は、シートの上面に接触して、回転しないで処理ローラホルダ211によってシート排出方向の下流側または上流側へ移動し、シートを同じ方向に移動させるようになっている。
【0042】
図2、図8において、処理ローラ204は、搬送ローラ対203(203a,203b)がシートSを処理トレイ205に搬送するとき、上方に待避している。このため、シートSの先端は処理ローラ204に邪魔されることなく処理トレイ205上に排出される。
【0043】
(爪241aの上下動作の説明)
図5において、固定部材に設けられたクランプソレノイド240は、固定部材に回転自在に支持された爪軸241を回転させて、爪軸241に設けてある爪241aでシートを処理トレイ205に押し付けたり、開放したりするようになっている。
【0044】
図8(A)、(B)に示すように、搬送ローラ対203や処理ローラ204がシートSを排出搬送しているとき、クランプソレノイド240(図5)はオフになっている。クランプソレノイド240がオフで、かつ処理トレイ205に既にシートが積載されている場合、爪軸241(図5)の爪241aが、爪軸ばね243の牽引力によってそのシートの上流端部を処理トレイ205に押さえ付けている。このため、処理トレイ205に既に積載されている先行シートは、次に送られてくる後続シートによって下流側へ連れ送りされることがない。
【0045】
クランプソレノイド240は、オンになると、爪軸ばね243に抗して爪軸241の爪241aを上方へ回動させて、後端規制板242にシートSの後端を当接しやすくする。
【0046】
そして、処理ローラ204は、回転止めした状態で上流側へ移動して、シートの後端を後端規制板242に突き当てる(図9(B)、図10(A))。その後、処理ローラ204は、シートの幅方向(図10(B)の矢印方向)に移動して、側端整合手段である例えば幅規制板239に接近し、シートの側端を幅規制板239に突き当てる。処理ローラ204は、多少、幅方向への移動を継続してシート上を滑り、シートの側端を幅規制板239に確実に突き当てる。
【0047】
その後、処理ローラ204は、上方に待避してシートから離れるとき、クランプソレノイド240がオフになる(図11(A))。すると、爪軸ばね243により爪軸241が回転して、爪241aがシートを処理トレイ205に押さえ込む。これによって、シートは、後端と側端とを整合されて、処理トレイ205に保持され、後続シートによる連れ送りもなく、整合が乱れることがない。
【0048】
(処理トレイ205上でのシート整合動作説明)
ROM110には、予め、ステープル処理を行なう場合の処理ローラ204の幅規制板239への移動速度(V1)と、ステープル処理を行なわない場合の処理ローラ204の幅規制板239への移動速度(V2)とが記憶されている。
【0049】
図8乃至図11において、シート処理装置300(図8(A))は、搬送ローラ対203により、画像形成装置の装置本体150Aから受け取ったシートを処理トレイ205へ搬送する(図14、S901)。シートが入口センサに検知されて搬送ローラ対203のニップから抜ける前に、処理ローラ204が落下しながらシート排出方向(下流側)に移動して、搬送ローラ対203とともにシートを搬送する(図8(B))。このとき、処理ローラ204は、処理ローラホルダ211に対して回転停止しており、シートを確実に下流側へ搬送することができる。
【0050】
そして、処理ローラ204は、シートSが搬送ローラ対203のニップを抜けた後も、下流側へ移動を継続して、最大移動地点に到達する(図9(A))。そして、処理ローラ204は、後端規制板242に接近移動を開始する。すなわち、処理ローラ204は、回転停止したまま、シート排出方向の上流側に移動を開始する。略同時に、CPU100がクランプソレノイド240(図5)をONにして、爪軸241が回動して、爪241aが上方に退避する。爪241aは、上方に回転して、シートが後端規制板242に当接するのに邪魔にならない位置に退避する。
【0051】
処理ローラ204は、シートを後端規制板242に突き当て、若干量シートの上を滑って(図9(B)、図10(A))、シートの後端を後端規制板242に確実に突き当てる(S903)。その後、処理ローラ204は、幅規制板239接近移動して、シートを幅規制板239に移動させる。
【0052】
操作パネル152にステープル処理情報がユーザによって入力されている場合(S907でYES)、処理ローラ204はシートを幅規制板239に突き当て、若干、シートの上を滑る(図10(B))。このときの処理ローラ204の移動速度は、ステープル処理時においては、後述するノンステープル処理時の速度(V2)より遅い速度(V1)であり、その速度でシートを幅規制板239に突き当てる(S909)。
【0053】
その後、処理ローラ204が上方に退避する直前にクランプソレノイド240(図5)がOFFになり、後端整合、幅整合(側端整合)されたシートの上流側端部を爪241aが処理トレイ205に押さえ付ける(図11(A)、S911)。処理ローラ204は、上方に待避したまま、幅規制板239から離れる方向へ移動してホームポジションに戻る(S913)。これによって、シートの整合動作が完了する(図11(B))。シート処理装置は、以上の動作を繰り返して処理トレイ205上にシートを束状に集積する(S915)。
【0054】
(処理トレイ205上で整合されたシート束の綴じ動作説明)
側端を整合されて、処理トレイ205に束状に積載されたシートは、ステープラ254によって綴じられる(S917)。ステープル処理は、ユーザによって、操作パネル152にシートを綴じる加工処理情報が入力されたときに行われる。
【0055】
図3に示すようにシート処理装置300には幅規制板239に側端整合されたシートを綴じるステープラ254が設けられている。本実施形態のステープラ254は、シート幅方向に対して固定されており、処理トレイ205上で整合されたシート束の片側一端に綴じ動作を行なうようになっている。ステープラ254は、図12に示すように通紙可能な最大シート幅よりも内側に配置されている。したがって、シートSが処理トレイ205に排出されるとき、シートSはステープラ254の上部を通過して搬送されるようになっている。このため、ステープラ254は、搬送パスも兼ねている。
【0056】
綴じたシート束をトレイ154に排出する動作は、後述する。
【0057】
以上説明したように、シート処理装置300は、操作パネル152にシートを綴じる加工処理情報が入力されているときには、入力されていないときよりも、処理ローラ204の移動速度が遅く設定されている。処理ローラ204の移動速度は、速度切り換え手段である例えばCPU100がTDモータ216を制御することによって切り換えることができる。処理ローラ204、TDモータ216等からなる機構は、移動手段の一例である。
【0058】
すなわち、CPUは、TDモータを制御して、処理ローラが幅規制板239に接近する移動速度を、ステープラによってシートを綴じる加工処理情報を得たとき、加工処理情報を得ていないノンステープル処理のときよりも遅い速度に切り換えるようになっている。
【0059】
この場合、処理ローラ204が幅規制板239に接近する移動速度は、移動開始の時点から遅くてもよいし、シートの側端が幅規制板239に当接する直前に減速して遅くしてもよい。すなわち、シートを減速移動させてもよい。
【0060】
また、ノンステープル処理のとき、処理ローラ204が幅規制板239に接近する移動速度は、後述する高速画像形成に対応した速度であってもよいし、高速画像形成でない普通の画像形成に対応した速度であってもよい。いずれにしても、処理ローラ204が幅規制板239に接近する移動速度は、シートを綴じる加工処理情報を得たとき、シートを綴じる加工処理情報を得ていないときよりも遅くなっていればよい。
【0061】
したがって、シート処理装置は、ステープル処理のとき、ノンステープル処理のときよりも処理ローラ204をゆっくりと移動させて、シートが幅規制板239に突き当たるときの衝突エネルギーを軽減するようになっている。
【0062】
よって、シート処理装置は、シートに座屈が生じるのを少なくして、側端の整合性を高めたシート束を綴じるので、側端の揃った見栄えのよいシート束を提供することができる。
【0063】
なお、ステープラの代わりに穿孔装置を設けた場合、側端の整合性を高めたシート束に孔をあけるため、重なっている全てのシートの所定の位置に孔をあけることができる。
【0064】
(処理トレイ205(図1)上で整合したシート束をトレイ154に排出するTDスライダ244(図4)と爪249の動作説明)
TDスライダ244(図3)は、下ガイド215(図2)の下方に設置されているTDモータ216により、シート排出方向に移動するようになっている。
【0065】
図4、図5において、爪249は、TDスライダ244に上下方向に回動可能に取り付けられている。また、爪249を下方に牽引する爪ばね250が、爪249とTDスライダ244との間に設けられている。TDスライダ244のホームポジションは、センサ検知部245a(図4(A))がTDスライダ位置センサ248によって検知されてセンサギア245が回転停止しているときの位置である。TDスライダ244がホームポジションにいるとき、図5に示すように、処理トレイ205の凸部205aに爪249のレバー部249aが乗り上げて、爪249が上方に回動したままになっている。
【0066】
図6に示すように、TDスライダ244(図4)の移動によりシート束SAをトレイ154(図1)に排出するとき、TDスライダ244の移動にともない、爪249のレバー部249aは、爪ばね250に引かれて、処理トレイ205の凸部205aを降りる。すると、爪249は、下方に回動して、シート押し出し部でシート束SAの上流端部を押しながら、上方から処理トレイ205に押さえ付ける。
【0067】
図1、図5、図7において、トレイ紙押さえ251は、TDスライドギア246の下部に突設されたカム部246bの回転による紙押さえレバープレス252の移動と、トレイ紙押さえばね253の弾力とによって、上下方向に回動するようになっている。
【0068】
図7(A)において、トレイ紙押さえ251は、処理トレイ205上に整合されたシート束が爪249で処理トレイ205に押し付けられながら滑ってトレイ154に排出されるまで、トレイ154に先に積載されているシート束をトレイ154に押圧している。すなわち、トレイ紙押さえ251は、図1、図5に示すように、トレイ154上に位置している。なお、処理トレイ205には、爪249がシート束を処理トレイ205に押さえ付けて、下流側に移動できるようにシート搬送方向に沿ったスリット205b(図5)が形成されている。
【0069】
そして、図7(B)に示すように、シート束がトレイ154に落下する前にTDスライドギア246が回転する。すると、カム部246bが回転しながら、紙押さえレバープレス252をスリット部252aと不図示のピンとの案内によって、矢印E方向に移動させる。紙押さえレバープレス252は、紙押さえばね253に抗して、移動しながらトレイ紙押さえの軸251aを回転させて、トレイ紙押さえ251を矢印G方向に回動させる。トレイ紙押さえ251は、処理トレイ205の不図示の下部空間に進入して待避する。すなわち、トレイ紙押さえ251は、シート処理装置300内に引っ込む。これによって、トレイ紙押さえ251は、後続のシート束がトレイ154に落下するのに邪魔になることがない。
【0070】
シート束がトレイ154に落下すると、図7(C)に示すように、TDスライドギア246のカム部246bは、回転して、紙押さえレバープレス252に対する作用を止める。すると、紙押さえレバープレス252が紙押さえばね253のばね力により矢印F方向に移動し、トレイ紙押さえ251が矢印K方向に回転して、トレイ154上のシート束をトレイ154に押さえ付ける。以上でシート束のトレイ154への積載が完了する(S919)。
【0071】
(ノンステープル処理(未加工処理)の動作説明)
ノンステープル処理は、次のようにして行われる。まず、シート処理装置は、以上説明した処理S901、処理S903と同様の処理をする。そして、処理S907で、ステープル処理情報が入力されていないとき(S907でNO)、処理ローラ204は、ROMに記憶されている速度V2で幅規制板に接近する(S921)。その後、処理S911、S913と同様な処理S923、S925がCPUの制御によって行われる。後続シートがある場合(S927でYES)、処理S901に戻り、処理S903が行われる。そして、処理S907において、ノンステープル処理であるので、処理S921がCPUの制御によって行われる。後続シートがなくなると(S927でNO)、シート束は、排出されて(S919)、ノンステープル処理が終了する。
【0072】
(ノンステープル処理におけるシートの側端整合の動作説明)
次に、以上説明したシート処理装置を、画像形成の処理速度が速い画像形成装置に対応させた場合の動作を説明する。
【0073】
以上の説明におけるノンステープル処理は、シートの側端を幅規制板239(図10)に整合させて、束状にして排出するようになっているが、幅規制板239に整合させる(突き当てる)ことなく、束状にして排出するようになっていてもよい。以下、その場合について説明する。
【0074】
処理ローラ204の幅規制板239への移動速度は、画像形成装置から受け入れるシートの画像形成速度に対応した速度に設定されているのが好ましい。このため、画像形成の処理速度が速い画像形成装置からシートが送られてくる場合、処理ローラ204の移動速度が、速い速度に設定することが考えられる。仮に、この速い速度でシートを幅規制板239に突き当てると、突き当たるときの衝撃エネルギーが大きく、シートに座屈が生じるおそれがある。このため、シートの側端整合精度を高くする必要のあるステープル処理時には、上記のように、処理ローラ204の幅規制板239への移動速度を遅くして、座屈の発生率を低くしている。しかし、ノンステープル処理はシート束を綴じる必要が無いので、シートの側端整合精度はステープル処理より低くてもよい。
【0075】
そこで、ノンステープル処理時において、処理ローラ204でシートを幅規制板239に移動させるとき、シートが幅規制板239に突き当たる前にクランプソレノイド240(図5)をOFFすると、画像形成処理の速い画像形成装置に対応することができる。
【0076】
すなわち、シートが幅規制板239に当接する以前に、爪241aによってシートの上流側端部を処理トレイ205に押さえ付けて、シートの移動を規制する。このようにすると、シートは、側端が幅規制板239に突き当たる前に停止して、座屈することが防止される。クランプソレノイド240、爪軸241、爪241a等からなる機構は、移動阻止手段の一例である。
【0077】
その後、処理ローラ204は、シート上を滑った後、上方に待避し、幅規制板239から離れる方向へ移動してホームポジションに戻る。シート処理装置は、この動作を繰り返して処理トレイ205上にシート束を集積した後、ステープル処理のときと同様にしてシート束をトレイ154に排出する。
【0078】
しかし、このノンステープル処理動作において、シートが幅規制板239に突き当たる前にシートを停止させてシートを積層させていくと、シートの幅方向の位置が毎回若干ばらつくことがある。すなわち、処理トレイ205に積載されている先行シート上を後続シートが移動するため、先行シートが後続シートに追従して幅規制板239に接近することがある。結果として、シートの側端整合が若干乱れて、ステープル処理より側端の整合性が劣る傾向にある。しかし、ノンステープル処理はシート束を綴じる必要が無いので、シートの側端整合精度はステープル処理より低くてもよい。このため、側端整合の乱れ量は、ステープル処理時においては許されない量であっても、ノンステープル処理においては許される量になるようにクランプソレノイド240のOFFタイミングが設定されている。なお、後続シートに追従移動する先行シートが幅規制板239に受け止められる。
【0079】
以上説明したシート処理装置の全ての動作は、CPU100の制御によって行われる。すなわち、CPU100は、クランプソレノイド240を制御して、爪241aがシートの移動を阻止する作動タイミングを、ステープラでシートを綴じる加工処理情報を得ていないとき、加工処理情報を得たときよりも早いタイミングに切り換えるようになっている。しかも、加工処理情報を得ていないときの爪241aの作動タイミングは、処理ローラ204がシートを幅規制板239に当接させる以前に設定されている。そして、加工処理情報を得ているときの作動タイミングは、処理ローラ204がシートを幅規制板239に当接させた後に設定されている。
【0080】
したがって、シート処理装置は、画像形成装置の画像形成の処理速度が速くなっても、ノンステープル処理においては対応することができて、処理の生産性を低下させることが少ない。
【0081】
また、シート処理装置は、ノンステープル処理速度を高速の画像形成速度に合わせてあるが、ステープル処理時にはシートをゆっくりと幅規制板に当接させるので、シートに座屈が生じることが少なく、側端の揃った見栄えのよいシート束を提供することができる。
【0082】
以上の説明は、ノンステープル処理において、シートの側端が幅規制板239に当接する以前に、爪241aがシートを処理トレイ205に押さえ付けて、シートの移動を阻止しているが、幅規制板239にシートが多少当接してから移動を阻止し保持してもよい。ただし、爪241aの作動タイミングは、処理ローラ204が、シートを幅規制板239に当接させてから、移動を停止しない間である。クランプソレノイド240、爪軸241、爪241a等からなる機構は、移動阻止手段の一例である。
【0083】
(ノンステープル処理時において、シートを1枚ずつ排出する動作説明)
以上の説明で、ノンステープル処理のシートは、束状にされて排出されるようになっているが1枚ずつ排出してもよい。シートを1枚ずつ排出する場合の動作を説明する。
【0084】
ノンステープル処理において、幅規制板239に当接させられるシート、あるいは幅規制板に当接する前に爪241aによって移動を阻止されるシートであっても、シートを移動させた処理ローラ204は、上方に待避してホームポジションに戻る。
【0085】
処理ローラ204が上方に退避した後、CPU100は、クランプソレノイド240を制御して爪241aを上方に回転させて、シートを解放させる。そして、CPU100は、搬送モータ206を制御して、TDスライダ244(図4)を移動させ、排出手段である例えば爪249でシートを1枚、トレイ154(図1)に排出する。
【0086】
このときの処理ローラ204の移動速度は、画像形成装置から受け入れるシートの移動速度に設定されている。したがって、処理ローラ204は、ステープル処理時に比べて速い速度で作動する。よって、この速度においてシートを幅規制板239に突き当てた場合、突き当たるときの衝撃エネルギーが大きく、シートが座屈するおそれがある。しかし、シートを1枚ずつ、処理トレイ205に排出するため、例え、座屈したとしても後続シートを処理トレイ205に迎え入れるとき、既に、処理トレイ205に先行シートが無いため、後続シートに対してなんら影響を与えることはない。
【0087】
なお、この場合もCPUは、TDモータを制御して、処理ローラが幅規制板に接近する移動速度を、ステープラによってシートを綴じる加工処理情報を得たとき、加工処理情報を得ていないノンステープル処理のときよりも遅い速度に切り換えるようになっている。
【0088】
このように、シート処理装置は、ノンステープル処理に、幅規制板に当接させられるシート、あるいは幅規制板に当接する前に爪によって移動を阻止されるシートを1枚ずつ排出すると、ノンステープル処理速度を高速の画像形成速度に合わせることができる。また、ステープル処理時にはシートをゆっくりと幅規制板に当接させるので、シートに座屈が生じることが少なく、側端の揃った見栄えのよいシート束を提供することができる。
【0089】
以上の説明において、移動手段である例えば処理ローラ204は、回転止めされた状態で、シートの搬送方向とシートの幅方向とに移動して、シートを同方向に移動させるようになっているので、単にシートに接触する部材であってもよい。したがって、移動手段は、処理ローラ204に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態における画像形成装置のシート搬送方向に沿った断面図である。
【図2】本発明の実施形態におけるシート処理装置のシート搬送方向に沿った断面図である。
【図3】図2のシート処理装置において、上半分を取り除いた斜視図である。
【図4】TDスライダと爪の動作説明用の図である。(A)は、駆動力伝達方向選択機構が、押さえ作動機構を選択した図である。(B)は、(A)の状態から爪が下流側に移動した図である。
【図5】処理トレイの斜視図である。
【図6】爪がシートを処理トレイに押さえた図である。
【図7】トレイ紙押さえの動作説明用の図である。(A)は、トレイ紙押さえがトレイ上にいるときのトレイ紙押さえの図である。(B)は、トレイ紙押さえがトレイから離れた待機位置にいるときのトレイ紙押さえの図である。(C)は、トレイ紙押さえがシート束をトレイに押さえ付けているときのトレイ紙押さえの図である。
【図8】シート束をシート排出方向に排出する様子を示す図であり、図3の矢印R方向から見た図である。(A)は、シートがシート処理装置に送り込まれてきた図である。(B)は、シートの後端が処理トレイに排出される直前の図である。
【図9】処理ローラがシートの後端を整合するときの動作説明用の図であり、図3の矢印R方向から見た図である。(A)は、シートが後端規制板に接近している状態を示した図である。(B)は、シートが後端規制板に当接した図である。
【図10】処理ローラがシートの側端を整合するときの動作説明用の図である。(A)は、シートが最大移動地点から幅規制板に接近するときの図である。(B)は、シートが幅規制板に当接した図である。
【図11】シート処理装置を下流側から見た図である。(A)は、後端整合、幅整合(側端整合)されたシートの上流側端部を爪が処理トレイに押さえ付けている図である。(B)は、(A)の状態から処理ローラが上昇してホームポジションに戻った図である。
【図12】ステープラの位置を説明するためのシート処理装置の平面図である。
【図13】シート処理装置の制御ブロック図である。
【図14】シート処理装置において、ステープル処理、ノンステープル処理の動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
S シート
SA シート束
100 CPU(速度切り換え手段)
140 制御部
150 画像形成装置
150A 装置本体
152 操作パネル
154 トレイ
204 処理ローラ(移動手段)
205 処理トレイ(積載手段)
239 幅規制板(側端整合手段)
241a 爪(移動阻止手段、保持手段)
242 後端規制板
249 爪(排出手段)
254 ステープラ(処理手段)
264 感光体ドラム(画像形成手段)
300 シート処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出されたシートが積載される積載手段と、
前記積載手段に積載された前記シートの上面に接触してシート排出方向に対して交差する方向に移動して前記シートを同方向に移動させる移動手段と、
前記移動手段によって移動させられた前記シートのシート排出方向に沿った側端を受け止めて前記側端を整合する側端整合手段と、
前記側端整合手段によって側端整合された前記シートを処理する処理手段と、を備え、
前記移動手段が、前記シートを前記側端整合手段に当接させた状態でさらに移動させるシート処理装置において、
前記移動手段が前記側端整合手段に接近する移動速度を、前記処理手段によってシートを処理させる加工処理情報を得たとき、前記加工処理情報を得ていないときよりも遅い速度に切り換える速度切り換え手段を備えた、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記速度切り換え手段は、前記加工処理情報を得たとき、前記移動手段を前記側端整合手段に対して減速移動させることが可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記加工処理情報を得ていないとき、前記移動手段が前記シートを前記側端整合手段に当接させる以前に、前記シートの移動を阻止する移動阻止手段を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
前記加工処理情報を得ていないとき、前記移動手段が前記シートを前記側端整合手段に当接させてから移動を停止しない間に、前記シートを保持する保持手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記処理手段によって処理されない前記シートを1枚ずつ排出する排出手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート処理装置。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像を形成されたシートを処理するシート処理装置と、を備え、
前記シート処理装置は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシート処理装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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