説明

シート分割巻取機のタッチローラ装置

【課題】シート分割巻取機において、一対の揺動支持腕により支持したタッチローラに、巻取ロールとの接触圧に影響を及ぼさないよう所要の回転駆動力を付与することができ、しかも容易にタッチローラを交換することができるタッチローラ装置を得る。
【解決手段】揺動中心軸線CLと同心に揺動支持腕9に固設した軸体18の中空の部分に第1の伝動軸20を同心に設け、揺動支持腕9に固設した補助腕17に第2の伝動軸21をタッチローラ2と同心に設け、第1の伝動軸20を回転駆動するモータ22を軸体18の内側の端部に設け、第1の伝動軸20の回転を第2の伝動軸21に伝達する伝動装置23を補助腕17の外側沿いに設ける。片方の揺動支持腕9から外側に突出している中心支持軸14の端部と、補助腕17から突出している第2の伝動軸21の端部とを連結する歯車形軸継手29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、紙、金属箔等の広幅の帯状シートを所要幅の帯状シートに分割しながら、分割した帯状シートを上下又は左右に交互に振分けて巻取るシート分割巻取機のタッチローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のシート分割巻取機には、分割した帯状シート毎の巻芯に巻取モータの回転駆動力を伝動装置により伝達することにより、巻芯を所要の巻取トルクで中心駆動しながら、その巻芯のまわりに、分割した帯状シートを巻取るものがある。このシート分割巻取機のタッチローラ装置はタッチローラを備え、このタッチローラは帯状シートの巻取中に、巻芯のまわりに帯状シートが巻取られることによって形成される巻取ロールの外周面に接触すると共に、この巻取ロールへ帯状シートを案内する。
【0003】
従来、タッチローラ装置には、分割された帯状シートの巻取直前の伸び(張力)を調節するために、分割された各帯状シートに共通のタッチローラを一対のフレーム間の固定位置に回転自在に両端支持し、この共通のタッチローラを、分割した帯状シートの供給速度に応じた所定の回転速度で回転駆動することができるようにしたものがある。このタッチローラ装置を備えるシート分割巻取機では、共通タッチローラと巻取ロールとの接触圧を調節するために、分割した帯状シート毎に、一対の基台上に夫々揺動可能に一対の巻取アームを設け、巻芯を一対の巻取アームの先端部に両端支持し、巻取アームと基台間に設けた流体シリンダ装置により巻取アームに所要の揺動力を付与することができるようにするのが一般的である。
【0004】
タッチローラと巻取ロールとを接触させると、巻取ロール上に巻取られつつある帯状シートに随伴する空気の量が制限されるので、タッチローラと巻取ロールとを接触圧を調節することによって、巻取ロールを形成している帯状シートの巻層相互間に封入される空気の量を調節することができ、帯状シートの巻層相互間の摩擦係数が、その巻層相互間に封入された空気によって著しく低下するのを防ぎ、帯状シートが巻層相互間でスリップして巻取ロールが巻崩れるのを防ぐことができる。しかし、共通のタッチローラでは機械的強度の観点からその外径を大きくする必要があり、タッチローラの外径が大きいと、巻取ロールとタッチローラとの接触圧が小さくなり、巻取中に帯状シートに随伴する空気量を十分抑えることができない場合が生ずる。
【0005】
そこで、従来のシート分割巻取機には、分割した帯状シート毎にタッチローラ装置を備えたものがある(例えば特公昭63−63451号公報参照)。このタッチローラ装置では、タッチローラの長さを、分割した帯状シートの幅に応じた長さにし、タッチローラの外径を小さくすることができ、巻取中の帯状シートに随伴する空気を制限する効果を高めることができる。
【0006】
しかし、タッチローラを固定位置に保持し、巻取アームの揺動力を流体圧シリンダ装置により調節することで、タッチローラと巻取ロールとの接触圧を調節する場合、巻取アームは大重量で慣性が大きい巻取ロールを保持するので、しかも巻取アーム自体の重量も大きくなるので、巻取アームの揺動力を流体圧シリンダ装置により微細に調節することは困難である。
【0007】
そこで、分割した帯状シート毎に設ける従来のタッチローラ装置には、一対の支持台上に揺動可能に設けた一対の揺動支持腕によりタッチローラを両端支持し、この揺動支持腕に流体圧シリンダ装置により揺動力を付与するようにしたものがある(例えば特公昭63−63451号公報の第3図、第4図に示す実施例参照)。このタッチローラ装置では、タッチローラを回転駆動するために、各タッチローラ装置に共通のモータにより、各支持台を貫通するラインシャフトを回転駆動し、このラインシャフトから歯車等の伝動装置を介して揺動支持腕上のタッチローラに回転駆動力を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭63−63451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来のタッチローラ装置では、支持台を貫通するラインシャフトから、歯車等の伝動装置を介して、支持台上の揺動の可能な揺動支持腕で支持したタッチローラに回転駆動力を伝達するので、タッチローラに伝達される回転駆動力が揺動支持腕の揺動力に影響を及ぼす。そのため、タッチローラと巻取ロールとの接触圧を所要の大きさに正確に調節するには、タッチローラの回転駆動力による、揺動支持腕の揺動力への影響を考慮し、その影響分を補償する必要がある。しかもシート分割巻取機では帯状シートの分割幅は多様に変わり、それに応じてタッチローラの長さが変る。また巻取ロールの中心駆動力に応じてタッチローラの負荷も変る。それゆえ、タッチローラと巻取ロールとの接触圧と、ラインシャフトからタッチローラに伝達される回転駆動力との関係は非常に複雑であり、タッチローラに伝達される回転駆動力を正確に把握するには、それを時々刻々実測する必要がある。したがって、タッチローラと巻取ロールとの接触圧を正確に制御するには、そのための制御装置が複雑で高価なものになる。
【0010】
また、共通のラインシャフトの回転をタッチローラに伝達するので、単にベルト伝動装置や歯車伝動装置を設けたのでは、タッチローラに伝達するトルクを個別に調節することができず、そのためには、ラインシャフトからタッチローラまでの伝動装置の中に、例えばパウダークラッチのような伝達トルク調節手段を介在させる必要がある。しかし、そのトルク調節手段の占有空間が大きいためタッチローラ装置が大型化し、シート分割巻取機の巻取最小幅等の巻取条件を満たせなくなる場合が多い。またラインシャフトの回転を歯車伝動装置によりタッチローラに伝達する場合は、歯車の摩耗粉等が帯状シートに付着しないよう伝導装置にカバーを施す必要があり、そのカバーが、タッチローラの交換作業を面倒にする原因となる。
【0011】
そこで、本発明は、シート分割巻取機において、一対の揺動支持腕により両端支持したタッチローラに、該タッチローラと巻取ロールとの接触圧に影響を及ぼさないように所要の回転駆動力を付与することがで、しかも容易にタッチローラを交換することができるタッチローラ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、帯状シートの巻取ロールの外周面に接触すると共に該巻取ロールへ帯状シートを案内するタッチローラと、前記タッチローラに平行する揺動中心軸線を中心に揺動可能に夫々の支持台上に設けた、前記タッチローラを両端支持する一対の揺動支持腕と、前記タッチローラを前記巻取ロールに所定の接触圧で接触させるための、前記揺動支持腕に揺動力を付与する揺動力付与機構とを備える、シート分割巻取機のタッチローラ装置であって、前記タッチローラは、帯状シートが巻掛けられる胴部と、該胴部に固設し該胴部の両端から突出した中心支持軸とからなり、該中心支持軸に夫々回転自在に装着したハウジングを有し、前記一対の揺動支持腕は夫々前記ハウジングを着脱可能に保持する保持部を有し、前記一対の揺動支持腕のうち少なくとも片方の揺動支持腕は、当該揺動支持腕より外側に前記タッチローラの軸線方向に間隔をとって配置すると共に当該揺動支持腕に固設した補助腕と、前記揺動中心軸線と同心に配置すると共に当該揺動支持腕に固設し、かつ前記支持台に回動自在に装着した中空の軸体とを有することと、前記軸体の中空の部分に同心に第1の伝動軸を設け、前記補助腕に第2の伝動軸を前記タッチローラと同心に設け、前記軸体の内側の端部に前記第1の伝動軸を回転駆動するモータを設けると共に、前記第1の伝動軸の回転を第2の伝動軸に伝達するための伝動装置を前記補助腕の外側沿いに設けたことと、前記保持部により前記ハウジングを保持したとき前記片方の揺動支持腕から外側へ突出している前記中心支持軸の端部と、前記補助腕からタッチローラ側へ突出している第2の伝動軸の端部とを連結する歯車形軸継手を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タッチローラを回転駆動するためのモータを、揺動支持腕に固設した軸体の内側の端部に設け、そのモータの回転駆動力を第1の伝動軸から、揺動支持腕に固設した補助腕の外側沿いに設けた伝動装置により第2の伝動軸に伝達し、補助腕に設けた第2の伝動軸からタッチローラの中心支持軸に歯車形軸継手により伝達するので、モータ及びモータからタッチローラのまでの伝動系は全て同じ揺動支持腕上に配置される。それゆえ、モータの回転動力は揺動支持腕の支持台に対する揺動力に影響を及ぼすことがなく、タッチローラと巻取ロールとの接触圧に影響を及ぼさないよう、かつタッチローラ毎に個別に所要の回転駆動力を付与することができる。したがって、シート分割巻取機において各巻取ロールの、巻取モータによる中心駆動力の不足分を、夫々のタッチローラによる表面駆動力で補うことができるので、外径の小さい巻芯に多量の帯状シートを巻取って大きい外径の巻取ロールを形成する場合であっても、品質の良い巻取ロールを形成することが可能になる。またモータ及び伝動系を設置しても、一対の揺動支持腕の占有空間は殆ど増大せず、しかも、タッチローラと巻取ロールの接触圧の制御が複雑にならない。そのため、例えば、既存のシート分割巻取機において、駆動しないタッチローラを備えたタッチローラ装置を、本発明のタッチローラ装置に容易に変更することができる場合が多い。更に、一対の揺動支持腕によりタッチローラを両端支持すると、タッチローラの中心支持軸の外側端と第2の伝動軸のタッチローラ側端とが向き合うので、歯車形軸継手により中心駆動軸と第2の伝動軸とを簡単に短時間で連結したり連結を解いたりすることができる。また補助腕の外側沿いに設けた伝動装置により第1の伝動軸の回転を第2の伝動軸に伝達するので、この伝動装置とタッチローラの着脱作業とは無関係になり、タッチローラの交換作業が容易になる。更に、伝動装置で生じる磨耗粉等が飛散しないように、この伝動装置をカバーで覆うことも比較的容易であり、歯車形軸継手により連結した中心駆動軸の端部と第2の伝動軸の端部とは、歯車形軸継手の外筒で覆われるので、モータからタッチローラへの伝動系で摩耗粉等の異物が発生しても、その異物の飛散を十分に抑えることができる。したがって、本発明によるタッチローラ装置は、帯状シートに異物が付着して不良品となるのを防止するという観点からも優れている。
【0014】
また、前記歯車型軸継手は、第2の伝動軸の内側端部に固着した、外歯歯車のついた第1の内筒と、前記タッチローラの中心支持軸の端部に固着した、外歯歯車のついた第2の内筒と、前記第1の内筒の外歯歯車並びに前記第2の内筒の外歯歯車に噛合う内歯歯車を持つ外筒とからなり、前記外筒を第2の内筒側へ付勢する圧縮コイルバネ装置と、前記外筒の前記第2の内筒側への移動を制限する外筒移動制限手段と、前記内歯歯車が前記第2の内筒上の外歯歯車から外れる位置に前記外筒が移動したとき、前記圧縮コイルバネ装置の、前記外筒を第2の内筒側へ付勢する働きを停止させることができる外筒付勢停止手段とを備えることによって、タッチローラの中心支持軸と第2の伝動軸とを、簡単な操作により、短時間で確実に連結、解放することができる。
【0015】
また、前記外筒付勢停止手段は、前記可動リングの内周面に設けた突起と、前記第1の内筒の外周面に形成した、前記第1の内筒の後端面から中心軸線に平行に伸長すると共に前記突起を受け入れ可能な溝とからなるものでは、作業者が工具を使用することなく手作業でタッチローラの中心支持軸と第2の伝動軸とを確実に連結、解放することができるので便利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係るシート分割巻取機の概略平面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に係るシート分割巻取機の概略側面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例に係るシート分割巻取機のタッチローラ装置の正面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例に係るシート分割巻取機のタッチローラ装置の側面図である。
【図5】図5は、図3におけるA−A矢視断面図である。
【図6】図6は、歯車形軸継手の拡大断面図である。
【図7】図7は、連結を解いた状態を示す歯車形軸継手の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2に示すシート分割巻取機において、広幅の帯状シートS0はスリッター1に供給され、スリッター1を通過する際に、広幅の帯状シートS0の幅方向に所要間隔で配置した複数の刃物Kによって夫々帯状シートS0の長手方向に切断され、それによって複数の帯状シートSに分割され、分割された複数の帯状シートSは個々の巻芯Cのまわりに同時に巻取られて巻取ロールRとなる。複数の帯状シートSの個々の巻芯Cは、スリッター1を挟んで前後(図1の紙面では上下)に並ぶ、広幅の帯状シートS0の幅方向に平行な二つの軸線上に、帯状シートSの並びの順に交互に配置してある。前後に並ぶ軸線上の巻芯Cの列の内側には、分割された帯状シートS毎に、タッチローラ2を備えるタッチロール装置3が配設してある。タッチローラ2は、帯状シートSを巻取っているとき、巻取ロールRの外周面に接触すると共に該巻取ロールRへ帯状シートSを案内する。
【0018】
各巻芯Cは夫々一対の巻取アーム4の先端部の内側に対向するように設けた一対の巻芯チャック5に装着してあり、片方の巻芯チャック5には、巻取アーム4上に設けた巻取モータ6の回転駆動力を、図示しない伝動装置を介して伝達可能にし、巻取モータ6は帯状シートSの巻取中に作動するようにしてある。したがって、帯状シートSの巻取中、各巻芯Cは夫々一対の巻取アーム4で両端支持された状態で巻取モータ6により個別に回転駆動される。
【0019】
前側の巻芯Cを両端支持する各一対の巻取アーム4は、巻芯Cに平行に設けた前側の支持基台7上に、巻芯Cの長手方向に位置替え可能に装着してあり、後側の巻芯Cを両端支持する各一対の巻取アーム4は、巻芯Cに平行に設けた後側の支持基台7上に、夫々巻芯Cの長手方向に位置替え可能に装着してあり、帯状シートSの巻取中には支持基台7に固定される。
【0020】
前側及び後側の支持基台7は、夫々巻芯Cの長手方向に直交する方向かつ水平方向に案内されて移動可能であり、帯状シートSの巻取中に巻取ロールRが巻太るに従いタッチローラ2から巻芯Cを離反させるために、巻取ロールRの巻太り量に応じてタッチローラ2から後退することができるようにしてある。
【0021】
図3乃至図5に示すように、タッチローラ装置3は、タッチローラ2に平行する揺動中心軸線CLを中心に揺動可能に夫々の支持台8上に設けた、タッチローラ2を両端支持する一対の揺動支持腕9、10と、タッチローラ2を巻取ロールRに所定の接触圧で接触させるための、揺動支持腕9に揺動力を付与する公知の揺動力付与機構11とを備える。
【0022】
各支持台8は、タッチローラ2に平行に固設したレール12にスライド可能に装着してあり、帯状シートSの巻取中はレール12上の所要位置に固定されるようになっている。
【0023】
タッチローラ2は、帯状シートが巻掛けられる胴部13と、該胴部13に固着し該胴部13の両端から突出した一対の中心支持軸14とからなり、中心支持軸14に夫々回転自在に装着したハウジング15を有し、一対の揺動支持腕9、10は夫々ハウジング15を着脱可能に保持する保持部16を有する。
【0024】
ハウジング15は円筒状の部材からなり、その内周部にはベアリング14aの外輪を嵌めて保持しており、ベアリング14aの内輪は中心支持軸14に嵌めてある。一対の揺動支持腕9、10が有する保持部16は夫々同じように構成されている。揺動支持腕9、10に設けた保持部16は、揺動支持腕9、10の上端付近の手前側に夫々形成した、ハウジング15の外周面の直径に相当する幅の切欠き16aと、揺動支持腕9の上部に夫々螺着した、ハンドル付きボルト16bとからなる。
【0025】
図3において、揺動支持腕9の右側を外側とし、揺動支持腕9の左側であって揺動支持腕10までの間を内側としている。一対の揺動支持腕9、10のうち片方の揺動支持腕9は、当該揺動支持腕9より外側にタッチローラ2の軸線方向に間隔をとって配置すると共に当該揺動支持腕9に固設した補助腕17と、揺動中心軸線CLと同心に配置すると共に当該揺動支持腕9に固設し、かつ支持台8に回動自在に装着した中空の軸体18とを有する。もう片方の揺動支持腕10は、該揺動支持腕10に固設し、かつ支持台8に回転自在に装着した軸体19を有する。
【0026】
補助腕17は、この実施例ではその下端を軸体18の外周面に嵌めてロックナットで締め付け固定すると共に揺動支持腕9の側面に固着したステー9aにボルトで固定してある。軸体18は、支持台8のブラケット8aの先端部にベアリング8bを介して装着してある。
【0027】
片方の揺動支持腕9に固設した軸体18の中空の部分には、第1の伝動軸20が軸体18と同心に設けてあり、補助腕17には第2の伝動軸21がタッチローラ2と同心に設けてあり、軸体18の内側の端部には第1の伝動軸20を回転駆動するモータ22が設けてあり、第1の伝動軸20の回転を第2の伝動軸21に伝達するための伝動装置23が補助腕17の外側沿いに設けてある。第1の伝動軸20は軸体18にベアリング20aを介して回転自在に装着してあり、第2の伝動軸21は、補助腕17の先端部にベアリング21aを介して回転自在に装着してある。
【0028】
モータ22は、速度が変化してもトルクが略一定となる特性を有しており、出力されるトルクが、設定したトルクとなるよう図示しない制御装置によって制御されようになっている。伝動装置23は、この実施例では、第1の伝動軸20の外側端部に固着したプーリ24と第2の伝動軸21の外側端部に固着したプーリ25と、プーリ24とプーリ25とに掛けた無端ベルト26とからなり、無端ベルト26に適正な張力を付与するためのテンショナー27を有しており、更に図3に二点鎖線で示すように、ここで発生する摩耗粉等の異物が飛散するのを防ぐためのカバー23aで覆われている。第1の伝動軸20の内側端部とモータ22の出力軸とは軸継手28により連結してある。
【0029】
一対の揺動支持腕9、10の保持部18によりタッチローラ2のハウジング15を保持したとき、タッチローラ2の揺動支持腕9側の中心支持軸14の先端は、揺動支持腕9から外側に突出し、補助腕17からタッチローラ2側に突出している第2の伝動軸21の先端に向き合う。そこで、タッチローラ装置3は、中心支持軸14の先端部と第2の伝動軸21のタッチローラ2側の先端部とを連結する歯車形軸継手29を備えている。
【0030】
したがって、軸体18の端部に装着したモータ22の出力軸の回転は、第1の伝動軸20、伝動装置23、第2の伝動軸21から、中心支持軸14を経てタッチローラ2の胴部13に伝達され、それらは何れも揺動支持腕9上にあるので、モータ22は、支持台8に対する揺動支持腕9の揺動力に影響を及ぼすことなくタッチローラ2を回転駆動することができる。
【0031】
図6に示すように、歯車形軸継手29は、第2の伝動軸21の内側の端部に固着した、外歯歯車30のついた第1の内筒31と、タッチローラ2の中心支持軸14の外側の端部に固着した、外歯歯車32のついた第2の内筒33と、第1の内筒31の外歯歯車30並びに第2の内筒33の外歯歯車32に噛合う内歯歯車34を持つ外筒35とからなる。そして外筒35を第2の内筒33側へ付勢する圧縮コイルバネ装置36と、外筒35の内歯歯車34が、第2の内筒33上の外歯歯車21と第1の内筒31上の外歯歯車30の両方に跨って適正に噛合う状態を維持するための、外筒35の第2の内筒33側への移動を制限する外筒移動制限手段37と、内歯歯車34が第2の内筒33上の外歯歯車32から外れる位置に外筒35が移動したとき、圧縮コイルバネ装置36の、外筒35を第2の内筒33側へ付勢する働きを停止させることができる外筒付勢停止手段38とを備えている。
【0032】
圧縮コイルバネ装置36は、第2の伝動軸21の外周に該第2の伝動軸21の軸線方向に移動可能に設けた、外筒35の外側の端面に係合可能な可動リングと39と、この可動リング39の後方に配置して第2の伝動軸21に固設した鍔40と、可動リング39と鍔40の間に設けた圧縮コイルバネ41とからなる。
【0033】
外筒移動制限手段37は、この実施例では第2の内筒33の外周に円周方向に形成した溝に装着した、外筒35の第2の内筒側の端面に係合するスナップリング42からなる。
【0034】
外筒付勢停止手段38は、可動リング39の内周面に設けた突起43と、第1の内筒31の外周面に形成した、第1の内筒31の後端面から中心軸線に平行に伸長する、突起43を受け入れ可能な溝44とからなる。可動リング39の内周面は、第1の内筒31の外周面にスライド可能に嵌め合わせてある。
【0035】
突起43は、可動リング39の外周面に設けた孔にピン45を、その先端が可動リング39の内周面から突出するように装着することによって設けてあり、鍔40は、リング状の鍔部材46を第2の伝動軸21の外周面に嵌めて固着することによって設けてある。リング状の鍔部材46の、可動リング39の後端面に沿う部分は、その部分に突起43を受容可能にするために、少なくとも突起43の直径に相当する幅より大きい幅にわたって外径を小さくしてある。
【0036】
以上のように構成したシート分割巻取のタッチローラ装置3では、広幅の帯状シートS0スリッター1により所要幅の複数の帯状シートSに分割しながら巻芯Cのまわりに巻取るとき、揺動力付与機構11により揺動支持腕9、10に所要の揺動力を付与することで、タッチローラ2を巻取ロールRの外周面に所要の接触圧で接触させると共に、モータ22によりタッチローラ2を回転駆動することで、巻取モータ6による巻芯Cの中心駆動力と、タッチローラ2と巻取ロールRの間の摩擦力を介してタッチローラ2から巻取ロールRに伝達される表面駆動力とにより巻取ロールRを回転駆動する。
【0037】
上述のシート分割巻取機ではスリッター1から送られてくる帯状シートSの幅が多様に変わるため、図3に示すタッチローラ2と構成が同じで長さの異なる複数種類のタッチローラ2が予め準備してあり、タッチローラ2の交換が必要になると、それまで使用していたタッチローラ2を、必要な長さのタッチローラ2に交換する。
【0038】
この交換作業は、歯車形軸継手29によるタッチローラ2の中心支持軸14と第2の伝動軸21との連結を解き、タッチローラ2の両側のハウジング15を保持部16から解放して、タッチローラ2を一対の揺動支持腕9、10から取外す。次に、一対の揺動支持腕9、10の相互間隔が、必要なタッチローラ2の長さに応じた間隔となり、かつ、送られてくる帯状シートの位置に対応する位置でタッチローラ2を支持できるように、支持台8をレール12に沿って移動することにより、一対の揺動支持腕9、10を所要位置につけ、図示しない拘束手段により支持台8をレール12に対して移動しないよう拘束する。その後、必要なタッチローラ2の両側のハウジング15を一対の揺動支持腕9、10の保持部16により保持する。
【0039】
ハウジング15を保持部16から解放するには、ハンドル付きボルト16bを締付け方向と逆の方向に回す。そうすると、そのハンドル付きボルト16bの先端は切欠き16a内から後退してハウジング15を切欠き16aから取外すことができるようになる。
【0040】
保持部16によりハウジング15を保持するには、ハウジング15を切欠き16aに嵌めてハンドル付きボルト16bを締付け方向に回す。そうすると、そのハンドル付きボルト16bの先端は切欠き16a内に突出してハウジング15の外周面に係合し、ハウジング15を揺動支持腕9に締付けて固定することができる。
【0041】
図6はタッチローラ2の中心支持軸14と第2の伝動軸21とを連結している状態を示し、図7は両者の連結を解いた状態を示す。タッチローラ2の中心支持軸14と第2の伝動軸21との連結を解くには、図6において、外筒35を圧縮コイルバネ装置36の付勢力に抗して第2の伝動軸21側へ押し、図7に示すように外筒35が第2の内筒33の外歯歯車21から外れる位置まで、外筒35を圧縮コイルバネ装置36の付勢力に抗して第2の伝動軸側へ移動させる。それによって可動リング39の内周面の突起43は溝44から脱出する。その後、可動リング39と第1の内筒31とを中心軸線を中心に相対的に、突起43が溝44に面する位置から第1の内筒31の後端面に係合可能な位置に移動するまで所要角度だけ回転させる。この状態で可動リング39を第2の伝動軸21側へ押すのをやめると、可動リング39は、圧縮コイルバネ装置36の付勢力を受けて中心支持軸14側へ移動しようとするが、突起43が第1の内筒31の後端面に係合するので、中心支持軸14側へ移動することができず、その状態が維持される。
【0042】
図7において、タッチローラ2の中心支持軸14と第2の伝動軸21とを連結するには、突起43が溝44に面する位置まで外筒35を第2の伝動軸21に対して回転させると共に、第2の内筒33の外歯歯車32が外筒31の内歯歯車32に噛合うように中心支持軸14と第2の伝動軸21とを相対的に回転させる。そうすると、外筒35は、圧縮コイルバネ装置36の付勢力により、図6示す位置に移動して中心支持軸14と第2の伝動軸21とが連結される。
【符号の説明】
【0043】
2 タッチローラ
3 タッチローラ装置
8 支持台
9 揺動支持腕
10 揺動支持腕
11 揺動力付与機構
13 胴部
14 中心支持軸
15 ハウジング
16 保持部
17 補助腕
18 軸体
20 第1の伝動軸
21 第2の伝動軸
22 モータ
23 伝動装置
29 歯車形軸継手
30 外歯歯車
31 第1の内筒
32 外歯歯車
33 第2の内筒
34 内歯歯車
35 外筒
36 圧縮コイルバネ装置
37 外筒移動制限手段
38 外筒拘束解放手段
39 可動リング
40 鍔
41 圧縮コイルバネ
42 スナップリング
43 突起
44 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状シートの巻取ロールの外周面に接触すると共に該巻取ロールへ帯状シートを案内するタッチローラと、前記タッチローラに平行する揺動中心軸線を中心に揺動可能に夫々の支持台上に設けた、前記タッチローラを両端支持する一対の揺動支持腕と、前記タッチローラを前記巻取ロールに所定の接触圧で接触させるための、前記揺動支持腕に揺動力を付与する揺動力付与機構とを備える、シート分割巻取機のタッチローラ装置であって、前記タッチローラは、帯状シートが巻掛けられる胴部と、該胴部に固設し該胴部の両端から突出した中心支持軸とからなり、該中心支持軸に夫々回転自在に装着したハウジングを有し、前記一対の揺動支持腕は夫々前記ハウジングを着脱可能に保持する保持部を有し、前記一対の揺動支持腕のうち少なくとも片方の揺動支持腕は、当該揺動支持腕より外側に前記タッチローラの軸線方向に間隔をとって配置すると共に当該揺動支持腕に固設した補助腕と、前記揺動中心軸線と同心に配置すると共に当該揺動支持腕に固設し、かつ前記支持台に回動自在に装着した中空の軸体とを有することと、前記軸体の中空の部分に同心に第1の伝動軸を設け、前記補助腕に第2の伝動軸を前記タッチローラと同心に設け、前記軸体の内側の端部に前記第1の伝動軸を回転駆動するモータを設けると共に、前記第1の伝動軸の回転を第2の伝動軸に伝達するための伝動装置を前記補助腕の外側沿いに設けたことと、前記保持部により前記ハウジングを保持したとき前記片方の揺動支持腕から外側に突出している前記中心支持軸の端部と、前記補助腕から突出している第2の伝動軸の端部とを連結する歯車形軸継手を備えることを特徴とする、シート分割巻取装置のタッチローラ装置。
【請求項2】
前記歯車型軸継手は、第2の伝動軸の内側端部に固着した、外歯歯車のついた第1の内筒と、前記タッチローラの中心支持軸の端部に固着した、外歯歯車のついた第2の内筒と、前記第1の内筒の外歯歯車並びに前記第2の内筒の外歯歯車に噛合う内歯歯車を持つ外筒とからなり、前記外筒を第2の内筒側へ付勢する圧縮コイルバネ装置と、前記外筒の前記第2の内筒側への移動を制限する外筒移動制限手段と、前記内歯歯車が前記第2の内筒上の外歯歯車から外れる位置に前記外筒が移動したとき、前記圧縮コイルバネ装置の、前記外筒を第2の内筒側へ付勢する働きを停止させることができる外筒付勢停止手段とを備える請求項1に記載の、シート分割巻取装置のタッチローラ装置。
【請求項3】
前記圧縮コイルバネ装置は、前記第2の伝動軸の外周に該第2の伝動軸の軸線方向に移動可能に設けた、前記外筒の外側の端面に係合可能な可動リングと、前記可動リングの後方に配置して前記第2の伝動軸に固設した鍔部と、前記可動リングと前記鍔部の間に装着した圧縮コイルバネとからなり、前記外筒付勢停止手段は、前記可動リングの内周面に設けた突起と、前記第1の内筒の外周面に形成した、前記第1の内筒の後端面から中心軸線に平行に伸長すると共に前記突起を受け入れ可能な溝とからなる請求項2に記載の、シート分割巻取装置のタッチローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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