説明

シート分離装置

【課題】分離ローラと分離部材を有するシート分離装置に関し、シートのジャムを解消するためのシートの引き抜き動作に伴う不具合を防止可能なシート分離装置を提供する。
【解決手段】多機能機1は、シート搬送ユニット40により、シート積載部31上の原稿シートを、シート搬送路Rに沿って搬送する。シート搬送ユニット40は、分離ローラ53、分離部材60、仕切カバー70を有するシート分離部50を備え、分離ローラ53と分離部材60の協働により、原稿シートを一枚ずつに分離して搬送する。仕切カバー70は、分離部材60より搬送方向下流側に、シート搬送路Rへ向かって突出形成された規制部75を有する。分離部材60は、分離パッド61と、延出部62Aが形成されたフィルム部材62を有している。延出部62Aは、分離パッド61の搬送方向下流側の端部よりもフィルム部材62を更に下流側に向かって、規制部75近傍まで延出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載されたシートを搬送する際に、分離部材と、分離ローラの協働によりシートを一枚ずつに分離するシート分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層されたシートを所定方向に搬送する際に、当該シートを一枚ずつに分離する機構として、分離ローラと、分離パッドを有するシート分離機構が知られている。このようなシート分離機構では、分離ローラは、シートの一面側と接触しつつ回転し、分離パッドは、シートの他面側から分離ローラに向かって、シートを押圧する。当該シート分離機構は、この分離ローラと、分離パッドの協働により、シートを一枚ずつに分離し得る。
【0003】
このようなシート分離機構に関する技術として、特許文献1記載の技術が知られている。当該特許文献1記載のシート分離機構は、シートの一面側に接触し、所定方向に回転駆動することで当該シートを搬送する分離ローラと、可撓性を有する薄板状の分離パッドにより構成されている。そして、当該分離パッドは、一端部が所定の取付部に固定され、他端部によってシートの他面側に接触可能に配設されている。従って、当該特許文献1記載のシート分離機構によれば、分離パッドによりシートの他面側から分離ローラに向かって押圧しつつ、分離ローラと接触しているシートを搬送することによって、シートを一枚ずつに分離して搬送し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−089238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、シート分離機構を有する装置においては、シートを搬送する過程で何らかの要因で、シートが蛇腹状に折れ曲がり、当該シートが分離ローラと分離パッドにより挟まれた状態で、シートのジャムが生じる可能性がある。この時、ユーザは、ジャムを解消するための作業を行うことになるが、特許文献1のようなシート分離機構の場合、ユーザによるジャム解消作業の結果、当該シート分離機構の故障を誘発してしまう場合がある。
【0006】
この点について、図6、図7を参照しつつ具体的に説明する。図6、図7においては、特許文献1とほぼ同様の構成を有する分離ユニットSEが、搬送ユニットFに配設されているものとし、搬送ユニットFは、シートSを所定の搬送方向(図6、図7中、左方向)へ搬送するように構成されているものとする。
【0007】
図6、図7に示すように、この場合の分離ユニットSEは、分離パッドPと、分離ローラRSを有して構成されている。分離パッドPは、一端部が仕切カバーCに固定されており、他端部をもって、当該シートSの他面側からシートSを分離ローラRSに押圧している。従って、当該分離ユニットSEであっても、シートSを一枚ずつに分離しつつ所定の搬送方向に搬送し得る。
【0008】
上記のように構成された搬送ユニットFにおいて、何らかの要因(他の部材との接触等)によりシートSが蛇腹状に折れ曲がり、分離ローラRSと分離パッドPに挟まれた状態で詰まり、ジャムを生じることがある。このような場合、ユーザは、シートSのジャムを解消すべく、シートSを前記搬送方向と逆方向(図6中、矢印で示す方向)へ引き抜こうとすることが考えられる。
【0009】
又、図6に示すように、ジャムの要因となっているシートSは、蛇腹状に折れ曲がっているため、蛇腹状のシートSの山部分Tが、分離パッドPの他端部よりも搬送方向下流側の空間に位置する場合がある。そして、この時、蛇腹状のシートSの山部分Tが、当該分離パッドPの他端部よりも高い場合もある。
【0010】
そして、当該分離パッドPの他端部よりも高い蛇腹状のシートSの山部分Tが、分離パッドPの他端部よりも搬送方向下流側の空間に位置している場合に、シートSは、ユーザによって、前記搬送方向と逆方向(図6中、矢印で示す方向)へ引き抜かれ得る。この時、分離パッドPの他端部は、シートSの引き抜きに伴って、シートSの山部分Tと接触した状態で前記搬送方向と逆方向(図6中、矢印で示す方向)へ移動する。この結果、分離パッドPは、他端側の先端がシートSの引き抜きに伴って折れ曲がってしまい、当該分離ユニットSEは、シートSを一枚ずつに分離し得ない状況となってしまう(図7参照)。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、分離ローラと分離部材を有するシート分離装置に関し、シートのジャムを解消するためのシートの引き抜き動作に伴う不具合を防止可能なシート分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面に係るシート分離装置は、シート積載部と、分離ローラと、分離部材と、付勢部材と、カバー部材とを有し、シート積載部に積載されたシートを、分離ローラと、分離部材との協働により、一枚ずつに分離して所定の搬送方向へ搬送し得る。そして、分離部材は、分離片とフィルム部材により構成され、カバー部材は、規制部を有する。ここで、カバー部材は、分離片よりも搬送方向下流側において、前記搬送経路に向かって突出形成された規制部を有している。従って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、当該シートの山部分は、規制部との接触によりつぶされる。更に、フィルム部材は、分離片の搬送方向下流側端部よりも更に下流側に延出された延出部を有している。つまり、シートの山部分における頂点が、フィルム部材の延出部と接触する為、当該シートの山部分が分離部材における搬送方向下流側端部より上方に位置することはない。即ち、当該シート分離装置によれば、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、図6に示すような状況となることはなく、もって、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0013】
そして、本発明の他の側面に係るシート分離装置において、前記フィルム部材の延出部は、前記カバー部材の前記規制部近傍まで延出されている。従って、当該シート分離装置は、分離部材と規制部との間において、当該シートの山部分における頂点を、確実にフィルム部材の延出部と接触させ得る。この結果、当該シートの山部分は、分離部材と規制部との間において、分離部材における搬送方向下流側端部より上方に位置することはない。即ち、当該シート分離装置によれば、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、図6に示すような状況となることはなく、もって、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。又、延出部と規制部の間に間隙が形成されている為、分離部材は、規制部と延出部の接触によって、その動作を妨げられることはなく、分離ローラとの協働により、確実にシートを一枚ずつに分離し得る。この結果、当該シート分離装置は、シートを一枚ずつに分離するという本来の機能を確保しつつ、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0014】
又、本発明の他の側面に係るシート分離装置において、前記カバー部材の規制部は、前記フィルム部材の延出部よりも前記搬送経路側となる位置まで突出形成されている。従って、当該規制部は、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、当該シートの山部分との接触により、シートの山部分を小さくつぶすことができる。これにより、当該シート分離装置は、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、確実に、図6に示すような状況となることを防止することができ、もって、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0015】
そして、本発明の他の側面に係るシート分離装置において、前記カバー部材の規制部は、前記フィルム部材の延出部が挿通される挿通孔を有しており、前記フィルム部材の延出部は、前記挿通孔内を移動可能な状態で前記挿通孔を挿通している。即ち、規制部と分離部材の間の空間は、フィルム部材の延出部により遮蔽されるので、当該シート分離装置は、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、確実に、図6に示すような状況となることを防止することができ、もって、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0016】
又、本発明の他の側面に係るシート分離装置において、前記カバー部材の規制部は、前記フィルム部材の延出部端部よりも前記搬送経路側に、前記搬送方向上流側に向かって突出形成された突出部を有する。従って、当該突出部は、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、当該シートの山部分との接触により、シートの山部分を小さくつぶすことができる。又、前記フィルム部材の延出部は、前記突出部の先端部よりも、前記搬送方向下流側まで延出されている。即ち、規制部と分離部材の間の空間は、フィルム部材の延出部と突出部により遮蔽されるので、当該シート分離装置は、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、確実に、図6に示すような状況となることを防止することができ、もって、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】多機能機の外観斜視図である。
【図2】シートカバーの構成に関する説明図である。
【図3】第1実施形態に係るシート分離部に関する断面図である。
【図4】第2実施形態に係るシート分離部に関する断面図である。
【図5】第3実施形態に係るシート分離部に関する断面図である。
【図6】シートのジャムが生じた場合のシート分離部に関する説明図(1)である。
【図7】シートのジャムが生じた場合のシート分離部に関する説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るシート分離装置を、シート搬送ユニット40を有する多機能機1のシート分離部50に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態に係る多機能機1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明において、多機能機1使用時のユーザの位置を基準にした方向を用いて説明する。即ち、図1における左下側を前側とし、図1における右上側を後側とする。又、多機能機1を前側から見たときを左右の基準とし、図1における左上側を左側とし、右下側を右側とする。
【0020】
図1に示すように、多機能機1は、本体筐体10と、シートカバー30とを有している。本体筐体10は、多機能機1における各種機能(スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等)を実現するための各種構成部品を、当該本体筐体10内部に収容している。
【0021】
又、本体筐体10は、当該本体筐体10の前側上面に、複数の操作部を有する操作パネル11と、種々の情報を表示する液晶ディスプレイ13を有している。操作パネル11は、多機能機1に対する種々の指示を入力する際に操作される。そして、本体筐体10の前面には、給紙カセット12が脱着可能に取り付けられている。当該給紙カセット12は、被記録媒体であるシートを積層状態で収容している。
【0022】
図1、図2に示すように、本体筐体10は、上面側にスキャナユニット20を有している。スキャナユニット20は、原稿載置台として機能するコンタクトガラス21、イメージセンサ22、スライド軸、モータ等を備えている(図2参照)。コンタクトガラス21は、所謂「プラテンガラス」であり、本体筐体10の左右方向に沿って長辺が位置するA4サイズよりもやや大きな長方形状に形成されている。
【0023】
イメージセンサ22は、所謂、密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)により構成され、コンタクトガラス21上に位置する原稿シートの画像を読み取る。当該イメージセンサ22は、主走査方向(即ち、本体筐体10における前後方向)がA4サイズの短辺に相当する長さの読取範囲を有しており、本体筐体10の左右方向に向かって伸びるスライド軸によって、左右方向の一定の範囲(A4サイズの長辺寸法に相当する範囲)内をスライド移動可能に保持されている。従って、当該多機能機1は、制御部によるモータの駆動制御に基づいて、イメージセンサ22をスライド軸に沿ってスライド移動しつつ、コンタクトガラス21上に載置された原稿シートの画像を読み取り得る。
【0024】
制御部は、CPU、ROM、RAM等を有しており、多機能機1の各機能に係る制御の中枢を担う。又、制御部は、操作パネル11と接続されている。従って、制御部は、操作パネルに対するユーザの入力操作に基づいて、ユーザ所望の制御を実行し得る。更に、制御部は、操作パネル11に対するユーザの入力操作や演算処理結果に基づいて、液晶ディスプレイ13上に種々の情報を表示し得る。
【0025】
ファクシミリ部は、スキャナユニット20により読み取った原稿シートの画像を、ネットワーク網を介して、ユーザ所望の相手先にファクシミリ通信する。又、当該ファクシミリ部は、ネットワーク網を介して、データ(ファクシミリデータ)を受信し得る。受信したファクシミリデータは、制御部によって画像形成部を制御することで、給紙カセット12内のシート等に印刷出力される。
【0026】
画像形成部は、制御部による制御に基づいて、入力された画像データを給紙カセット12内のシートへ印刷出力する。当該多機能機1は、スキャナユニット20により読み取った画像に基づく画像データを対象として、画像形成部を制御することで、コピー機能を実現する。又、当該多機能機1は、ネットワーク網を介して入力された印刷データを対象として、画像形成部を制御することで、プリンタ機能を実現する。
【0027】
ここで、シートカバー30は、本体筐体10上面の後端縁を軸に開閉自在に配設されており、閉じた場合に本体筐体10上面(即ち、コンタクトガラス21)を覆う(図2参照)。従って、シートカバー30を閉じた場合、当該シートカバー30は、コンタクトガラス21上にセットされた原稿シートをその位置に固定し得る。
【0028】
又、シートカバー30は、シート積載部31と、シート搬送ユニット40(所謂、ADF:Auto Document Feeder)とを有している。シート積載部31は、シートカバー30上面の右側部分に形成されており、複数枚の原稿シートを積層状態で載置可能に構成されている。
【0029】
そして、シート積載部31は、一対のシートガイド部材32を当該シート積載部31の内部に有している。当該シートガイド部材32は、シート積載部31内を双方とも前後方向へスライド可能に配設されている。尚、シートガイド部材32は、連動機構(図示せず)により、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドするように構成されている。従って、一対のシートガイド部材32の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせ得る。
【0030】
更に、シートガイド部材32は、夫々、仕切板32Aを有している。当該仕切板32Aは、シート積載部31の上方において、当該シート積載部31表面との間に、一定の間隔を隔てるように形成されている。
【0031】
そして、シート搬送ユニット40は、シートカバー30と一体に形成されており、シート分離部50と、シート搬送部80を有している(図2等参照)。当該シート搬送ユニット40は、シート積載部31に載置された原稿シートを連続して給紙し、シート分離部50によって、一枚ずつに分離して、当該原稿シートをシート搬送ユニット40内に形成された所定のシート搬送路Rに沿って搬送する。そして、当該多機能機1は、シート搬送ユニット40により原稿シートを搬送する途中で、スキャナユニット20等により画像を読み取る方式で、原稿の画像を読み取り得る。
【0032】
図2に示すように、当該シート搬送路Rは、シート積載部31表面と、シートガイド部材32の仕切板32A表面とを接続するように略U字状に形成されており、シート搬送ユニット40の左右方向に沿っている。尚、第1実施形態においては、シート積載部31表面からシート搬送路Rに沿って仕切板32Aへ向かう方向を原稿シートの搬送方向という。そして、原稿シートの幅方向とは、シート搬送路Rを搬送される原稿シートの幅方向(即ち、シート搬送ユニット40における前後方向)を意味する。
【0033】
シート分離部50は、シート搬送路Rにおけるシート積載部31側端部近傍に配設されており、シート積載部31表面に積載された原稿シートを一枚ずつに分離しつつ、シート搬送部80に対して搬送する。当該シート分離部50の構成については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0034】
シート搬送部80は、シート分離部50よりも搬送方向下流側に配設されており、複数の搬送ローラと、複数のピンチローラ等を有している。当該シート搬送部80は、複数の搬送ローラと、複数のピンチローラ等の回転駆動を制御することにより、シート分離部50により一枚ずつ分離・搬送された原稿シートを、シート搬送路Rに沿って搬送し、シートガイド部材32の仕切板32A上へ排出する。
【0035】
続いて、第1実施形態に係るシート分離部50の構成について、図3を参照しつつ詳細に説明する。図3に示すように、第1実施形態に係るシート分離部50は、給紙ローラ51と、シート接触部材52と、分離ローラ53と、分離部材60と、コイルバネ65と、仕切カバー70により構成されている。
【0036】
給紙ローラ51は、シート分離部50における搬送方向上流側においてシート搬送路Rを搬送される原稿シートの下面に沿う位置に回転自在に軸支されており、モータ(図示せず)の駆動により、シート積載部31に載置された原稿シートを搬送方向下流側へ搬送する。シート接触部材52は、シート搬送路Rを介して、給紙ローラ51と対向する位置に揺動自在に配設されており、給紙ローラ51上に位置する原稿シートの上面と接触している。当該シート接触部材52は、シート積載部31に積載された原稿シートを、給紙ローラ51に押圧する。又、シート接触部材52は、シート分離部50による原稿シートの分離を円滑に行うために、原稿シートを捌く機能を有する。
【0037】
分離ローラ53は、給紙ローラ51よりも搬送方向下流側において、シート搬送路Rを搬送される原稿シートの下面に沿う位置に回転自在に軸支されており、モータ(図示せず)の駆動に伴って回転する。そして、当該分離ローラ53は、分離部材60と協働することで、一枚の原稿シートのみを分離してシート搬送部80側(即ち、搬送方向下流側)へ搬送する。
【0038】
分離部材60は、シート接触部材52よりも搬送方向下流側において、シート搬送路Rを介して、分離ローラ53と対向する位置に配設されており、分離パッド61と、フィルム部材62により構成される。当該分離部材60は、略平板状に形成されており、搬送方向上流側の端部が仕切カバー70に固定され、搬送方向下流側の端部側で、分離ローラ53上に位置する原稿シートの上面に接触するように配設されている(図3参照)。そして、当該分離部材60は、当該原稿シートに摩擦力を付与することによって、分離ローラ53と協働して、原稿シートを一枚ずつに分離する。
【0039】
分離パッド61は、所定の可撓性及び摩擦係数を有する材料で構成された薄板状の部材であり、分離ローラ53上に位置する原稿シートに接触する接触面を有している。即ち、当該分離パッド61は、分離ローラ53上に位置する原稿シートの一面(上面)に接触し、当該原稿シートに摩擦力を付与することによって、分離ローラ53と協働して、原稿シートを一枚ずつに分離する。
【0040】
フィルム部材62は、分離パッド61の接触面の裏面側に貼着されるフィルム状の部材であり、当該分離パッド61の剛性を高めている。又、当該フィルム部材62は、分離パッド61の裏面側に貼着されることにより、分離パッド61の摩耗によるちぎれを防止すると共に、分離ローラ53と分離部材60によるシートの搬送時における振動に伴う異音の発生を防止する機能を果たす。そして、当該フィルム部材62は、延出部62Aを有している。当該延出部62Aについては、後述する。
【0041】
そして、コイルバネ65は、分離部材60におけるフィルム部材62と、仕切カバー70の間に取り付けられており、当該分離部材60を分離ローラ53に向かって付勢している。当該コイルバネ65の付勢力により、分離部材60は、分離ローラ53上に位置する原稿シートの一面(上面)と、確実に接触することとなり、もって、分離ローラ53と協働して、原稿シートを確実に一枚ずつに分離する。
【0042】
仕切カバー70は、シート搬送ユニット40内部において、上方部分と下方部分を区分する仕切りとして機能すると共に、シート接触部材52、分離部材60、コイルバネ65の取付部材として機能する。図3に示すように、仕切カバー70は、バネ取付部71と、規制部75とを有している。
【0043】
バネ取付部71は、仕切カバー70の下面側から下方に向かって突出形成されており、コイルバネ65を挿通することで、コイルバネ65を所定位置に位置決めする。尚、コイルバネ65は、バネ取付部71近傍における仕切カバー70下側表面と、分離部材60におけるフィルム部材62により挟持されることで、仕切カバー70に取り付けられる。そして、規制部75は、仕切カバー70の下面側において、分離部材60よりも搬送方向下流側にあたる部分を、シート搬送路Rに向かって突出形成して構成される。
【0044】
続いて、第1実施形態に係るシート分離部50における延出部62Aと、規制部75の関係性と機能について説明する。図3に示すように、延出部62Aは、分離部材60を構成する分離パッド61の搬送方向下流側に位置する端部(即ち、原稿シートと接触可能な端部)よりも、フィルム部材62の搬送方向下流側に位置する端部を延出して形成される。
【0045】
従って、フィルム部材62の延出部62Aは、仕切カバー70の規制部75近傍まで延出されており、当該延出部62Aと規制部75との間には、ごく僅かな間隙(例えば、2mm)が生じる。即ち、分離パッド61と規制部75の間は、フィルム部材62の延出部62Aによって、ほぼ遮蔽される。
【0046】
この結果、多機能機1において、原稿シートのジャムが生じ、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、分離パッド61と規制部75の間は、フィルム部材62の延出部62Aによって、ほぼ遮蔽されている為、蛇腹状の当該原稿シートの山部分における頂点を、確実にフィルム部材62の延出部62Aと接触させ得る。これにより、当該多機能機1によれば、当該原稿シートの山部分は、分離部材60と規制部75との間において、分離パッド61における搬送方向下流側端部より上方に位置することはないため、図6に示すような状況となることはなく、もって、分離部材60の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0047】
又、延出部62Aと規制部75の間に間隙が形成されている為、分離部材60は、規制部75と延出部62Aの接触によって、その動作を妨げられることはなく、分離ローラ53との協働により、確実に原稿シートを一枚ずつに分離し得る。この結果、当該多機能機1は、原稿シートを一枚ずつに分離するという本来の機能を確保しつつ、分離部材60の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0048】
更に、規制部75は、延出部62Aの端部よりも下方となる位置(即ち、延出部62Aよりもシート搬送路R側の位置)まで突出するように形成されている(図3参照)。これにより、蛇腹状に折れ曲がった原稿シートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、蛇腹状の当該原稿シートの山部分は、規制部75との接触により、より小さくつぶされる。従って、当該多機能機1は、確実に、図6に示すような状況となることを防止することができ、もって、分離部材60の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0049】
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態と異なる別の実施形態(第2実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第2実施形態に係る多機能機1は、第1実施形態に係る多機能機1と同一の基本的構成を有しており、シート分離部50の構成が相違する。従って、第1実施形態と同一の構成に関する説明は省略する。
【0050】
そして、第2実施形態に係るシート分離部50は、第1実施形態と同様に、給紙ローラ51、シート接触部材52、分離ローラ53、分離部材60、仕切カバー70により構成される。第2実施形態に係るシート分離部50は、分離部材60におけるフィルム部材62と、仕切カバー70における規制部75の構成で、上述した第1実施形態と相違する。
【0051】
図4に示すように、第2実施形態に係る規制部75は、前記分離部材60を構成するフィルム部材62の延長線上に、フィルム挿通孔75Aを有している。フィルム挿通孔75Aは、規制部75を貫通して形成されており、後述するようにフィルム部材62の延出部62Aによって挿通される。
【0052】
そして、第2実施形態に係る延出部62Aは、第1実施形態と同様に、分離パッド61の搬送方向下流側に位置する端部(即ち、シートと接触可能な端部)よりも、フィルム部材62の搬送方向下流側に位置する端部を延出して形成される。この点、第2実施形態に係る延出部62Aは、第1実施形態に係る延出部62Aよりも更に搬送方向下流側へ延出して構成されている。これにより、第2実施形態に係る分離部材60の延出部62Aは、フィルム挿通孔75Aを挿通して、規制部75よりも搬送方向下流側(図4中、左側)に位置する。
【0053】
従って、規制部75と分離部材60の間の空間は、フィルム部材62の延出部62Aにより完全に遮蔽される。この結果、当該多機能機1によれば、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がった原稿シートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、確実に、図6に示すような状況となることを防止することができ、もって、分離部材の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0054】
又、図4に示すように、フィルム挿通孔75Aは、フィルム部材62の厚みよりも大きく形成されている。従って、延出部62Aは、フィルム挿通孔75A内をある程度自由に移動し得る。この結果、当該多機能機1においては、分離部材60の挙動は、延出部62Aがフィルム挿通孔75Aを挿通していたとしても妨げられることはない。これにより、当該多機能機1は、原稿シートを一枚ずつに分離するという本来の機能を確保しつつ、分離部材60の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0055】
(第3実施形態)
次に、上述した第1実施形態、第2実施形態と異なる別の実施形態(第3実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第3実施形態に係る多機能機1は、第1実施形態、第2実施形態に係る多機能機1と同一の基本的構成を有しており、シート分離部50の構成が相違する。従って、第1実施形態、第2実施形態と同一の構成に関する説明は省略し、これらの相違点についてのみ、図面を参照しつつ説明する。
【0056】
そして、第3実施形態に係るシート分離部50は、第1実施形態、第2実施形態と同様に、給紙ローラ51、シート接触部材52、分離ローラ53、分離部材60、仕切カバー70により構成される。第3実施形態に係るシート分離部50は、仕切カバー70における規制部75の構成で、上述した第1実施形態、第2実施形態と相違する。
【0057】
図5に示すように、第3実施形態に係る規制部75は、当該規制部75の下端(即ち、シート搬送路R側の端部)に、突出片75Bを有している。当該突出片75Bは、フィルム部材62の延出部62Aよりも下方(即ち、シート搬送路R側)において、搬送方向上流側に向かって突出形成されている。従って、当該突出片75Bは、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がったシートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、蛇腹状の当該原稿シートの山部分との接触により、原稿シートの山部分を小さくつぶすことができる。
【0058】
更に、フィルム部材62の延出部62Aは、突出片75Bの先端よりも、搬送方向下流側まで延出されている。即ち、規制部75と分離部材60の間の空間は、フィルム部材62の延出部62Aと、規制部75の突出片75Bにより遮蔽されるので、当該多機能機1は、ジャムに伴って、蛇腹状に折れ曲がった原稿シートを当該搬送方向に逆らって引き抜く場合であっても、確実に、図6に示すような状況となることを防止することができ、もって、分離部材60の折れ曲がり(図7参照)等の不具合の発生を防止し得る。
【0059】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態に係る延出部62Aは、フィルム部材62の端部を、分離パッド61と規制部75の間の空間を少なくとも大部分閉塞する為に、搬送方向下流側に向かって延出した構成であればよい。即ち、フィルム部材62の端部において、全幅を延出する構成であってもよく、一部を延出する構成であってもよい。
【0060】
又、本実施形態においては、本発明に係るシート分離装置を、ADF(Auto Document Feeder)におけるシート分離部50に適用した場合について説明したが、この態様に限定するものではなく、積層状態で収容されたシートを搬送する際に、シートを一枚ずつ分離し、搬送するものであれば、種々の態様を採用し得る。例えば、プリンタ装置において、シートを積層状態で収容した給紙カセットから、当該シートを印刷機構部へ搬送する際に、シートを一枚ずつ分離し、搬送する機構として、本発明に係るシート分離装置を適用することも可能である。
【0061】
更に、本実施形態においては、本発明に係るシート分離装置を、多機能機1に適用して説明したが、この態様に限定されるものではなく、上述したように、プリンタ装置に適用してもよい、ADFを有するスキャナ装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 多機能機
30 シートカバー
31 シート積載部
40 シート搬送ユニット
50 シート分離部
53 分離ローラ
60 分離部材
61 分離パッド
62 フィルム部材
62A 延出部
65 コイルバネ
70 仕切カバー
75 規制部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載されるシート積載部と、
前記シート積載部から延び、前記シートが搬送される搬送経路に沿って回転自在に軸支され、前記シートの第1面と接触しつつ回転することで、当該シートを所定の搬送方向へ搬送する分離ローラと、
前記分離ローラと対向する位置において、前記シートの第2面側から接触可能に配設され、前記分離ローラと協働して当該シートを一枚ずつに分離する分離部材と、
前記分離部材を前記分離ローラに向かって付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の一部を保持するカバー部材と、を有するシート分離装置であって、
前記分離部材は、
平板状に形成され、前記搬送経路と対向する面に、前記シートの第2面と接触する接触面を有する分離片と、
前記分離片における接触面の裏面側に配設され、前記分離片の搬送方向下流側端部よりも更に下流側に延出された延出部を備えるフィルム部材と、により構成され、
前記カバー部材は、
前記分離片よりも搬送方向下流側において、前記搬送経路に向かって突出形成された規制部を有する
ことを特徴とするシート分離装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート分離装置であって、
前記フィルム部材の延出部は、
前記カバー部材の前記規制部近傍まで延出されており、当該延出部と前記規制部の間には、所定量の間隙が形成されている
ことを特徴とするシート分離装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート分離装置であって、
前記カバー部材の規制部は、
前記フィルム部材の延出部よりも前記搬送経路側となる位置まで突出形成されている
ことを特徴とするシート分離装置。
【請求項4】
請求項1記載のシート分離装置であって、
前記カバー部材の規制部は、
前記フィルム部材の延出部が挿通される挿通孔を有し、
前記フィルム部材の延出部は、
前記挿通孔内を移動可能な状態で前記挿通孔を挿通している
ことを特徴とするシート分離装置。
【請求項5】
請求項1記載のシート分離装置であって、
前記カバー部材の規制部は、
前記フィルム部材の延出部端部よりも前記搬送経路側に、前記搬送方向上流側に向かって突出形成された突出部を有し、
前記フィルム部材の延出部は、
前記突出部の先端部よりも、前記搬送方向下流側まで延出されている
ことを特徴とするシート分離装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206852(P2012−206852A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75780(P2011−75780)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】