説明

シート取出装置

【課題】シートの特性変動や外乱の影響に強く、シートの重搬送を抑制することができるシート取出装置の提供。
【解決手段】積層された複数のシートSのうち、最上層のシートSを吸着し下層の他のシートSと分離して取り出すシート取出装置1であって、シートSを吸着する吸着面10aを備える吸着ホルダ7、及び、該吸着ホルダ7を吊り下げて支持すると共に吸着面10aに連通する気体流路8を備えて該気体流路8内の負圧の大きさに応じて長さ方向に収縮するベローズ管9を有する吸着部6を複数備え、複数の吸着部6を少なくとも2つの組に分け、第1の組に属する吸着部6A,6Cの吸着面10aの高さと、第2の組に属する吸着部6B,6Dの吸着面10aの高さとを、互いに異ならせるように、組毎に上記負圧を制御する負圧制御配管系20を備えるという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート取出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、マガジンに収められたシート(正極、負極、セパレータ)を一枚ずつ取り出して積層する電極積層装置が開示されている。
当該電極積層装置は、シートを重ねて複数枚収容するマガジンからシートを取り出す吸引機構を備える。この装置は、シートの重搬送を抑制すべく、最上層のシートをバキュームヘッドで吸着して引き上げつつ、当該シートを一対の電極押さえロッドで押さえ込むことで、最上層のシートを凸となるように湾曲させ、最上層のシートとその下のシートとの間に空気を入り込ませて、シートを容易に分離させる構成となっている。
【0003】
また、下記特許文献2には、カセットに収められたシート(印刷版)のうち最上層のシートを吸着し下層の他のシートと分離して枚葉する吸着枚葉装置が開示されている。
当該吸着枚葉装置は、シートを吸着する吸着盤と、該吸着盤よりも高い剛性を有する高剛性吸着盤とを備える。この装置は、通常の吸着盤及び高剛性吸着盤でシートを吸着し、その剛性差で、シートを波状に屈曲させ、最上層のシートとその下のシートとの間に空気を入り込ませて、シートを容易に分離させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−50583号公報
【特許文献2】特許第3938904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構成では、電極押さえロッド及びコイルバネ等の機構が必要となり、シートの特性(種類、材質、剛性等)に合わせた機械的な調整が必要となる。また、上記特許文献2に開示された構成では、吸着盤の剛性差が必要となり、同様にシートの特性に合わせた機械的な調整が必要となる。
したがって、上記従来技術は、シートの特性変動や、また、外乱の影響に弱いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シートの特性変動や外乱の影響に強く、シートの重搬送を抑制することができるシート取出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、積層された複数のシートのうち、最上層のシートを吸着し下層の他のシートと分離して取り出すシート取出装置であって、上記シートを吸着する吸着面を備える吸着ホルダ、及び、該吸着ホルダを吊り下げて支持すると共に上記吸着面に連通する気体流路を備えて該気体流路内の負圧の大きさに応じて長さ方向に収縮するベローズ管を有する吸着部を複数備え、上記複数の吸着部を少なくとも2つの組に分け、第1の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さと、第2の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さとを、互いに異ならせるように、組毎に上記負圧を制御する負圧制御装置を備えるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、吸着ホルダをベローズ管で吊り下げて支持し、シート吸着の際の負圧の大きさによって、吸着面を高さ方向に変位自在とさせる。そして、本発明は、この吸着部を複数設け、それらを複数の組に分け、組毎に負圧を制御することで、吸着面の高低差を付け、吸着したシートの裏側に空気を回り込ませ、当該シートとその下のシートとの分離を促し、重搬送を抑制する。
【0008】
また、本発明においては、上記負圧制御装置は、上記取り出し中、上記第1の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さと、上記第2の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さとの大小関係を、交互に切り替えるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、シートの取り出し中、第1の組に属する吸着部の吸着面と、第2の組に属する吸着部の吸着面との高さ関係を交互に逆転させることで、重搬送をより確実に抑制する。
【0009】
また、本発明においては、上記負圧制御装置は、上記シートの端部に対応する位置を吸着する上記吸着部を含む第1の組と、上記第1の組以外の上記吸着部を含む第2の組と、に組み分けするという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、空気が回り込み易いシートの端部に対応する位置を吸着する吸着部を同期して駆動させることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記負圧制御装置は、上記取り出しの際、上記第1の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さを、上記第2の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さよりも先行して大きくするという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、シートの取り出しの際、シートの端部に対応する位置を吸着する吸着部を含む第1の組の吸着面を、第2の組よりも先行して持ち上げることで、シートの端部から空気を裏側に回り込ませ易くする。
【0011】
また、本発明においては、上記吸着ホルダに、錘が着脱自在に取り付けられる錘取付部を備えるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、吸着ホルダに錘を取り付けることを可能とさせ、ベローズ管が負圧によって変位する幅を調整することができる。
【0012】
また、本発明においては、上記シートの端部に対応する位置を吸着する上記吸着ホルダの上記錘は、該吸着ホルダの上記吸着面が上記シートの端部に向けて傾く偏りをもたせる位置に取り付けられるという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、錘を吸着ホルダ取り付けることで、重さ的な偏りをもたせて吸着面をシートの端部に向けて傾かせることで、シートの取り出し際、シートの端部を持ち上げて空気を回り込ませ易くすることができる。
【0013】
また、本発明においては、上記負圧制御装置は、上記取り出し中、上記複数の吸着部の組み分けを変更するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明は、シートの取り出し中、吸着面の高低差を付けるパターンを変更させることで、重搬送をより確実に抑制する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積層された複数のシートのうち、最上層のシートを吸着し下層の他のシートと分離して取り出すシート取出装置であって、上記シートを吸着する吸着面を備える吸着ホルダ、及び、該吸着ホルダを吊り下げて支持すると共に上記吸着面に連通する気体流路を備えて該気体流路内の負圧の大きさに応じて長さ方向に収縮するベローズ管を有する吸着部を複数備え、上記複数の吸着部を少なくとも2つの組に分け、第1の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さと、第2の組に属する上記吸着部の上記吸着面の高さとを、互いに異ならせるように、組毎に上記負圧を制御する負圧制御装置を備えるという構成を採用することによって、本発明は、吸着ホルダをベローズ管で吊り下げて支持し、シート吸着の際の負圧の大きさによって、吸着面を高さ方向に変位自在とさせる。そして、本発明は、この吸着部を複数設け、それらを複数の組に分け、組毎に負圧を制御することで、吸着面の高低差を付け、吸着したシートの裏側に空気を回り込ませ、当該シートとその下のシートとの分離を促し、重搬送を抑制する。
したがって、本発明では、シートとは接しない部位に設けられたベローズ管を収縮させて吸着面を変位させ、また、吸着部の組毎の吸着面の高低差も負圧の大きさで調整できる。このため、本発明は、シートの特性変動や外乱の影響に強く、シートの重搬送を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態におけるシート取出装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるシート取出装置の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態におけるシート取出装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態におけるシート取出装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第3実施形態におけるシート取出装置の構成と作用を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態におけるシート取出装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の第4実施形態におけるシート取出装置の作用を示す図である。
【図8】本発明の別実施形態におけるシートに対する吸着部の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるシート取出装置1の構成を示す図である。
シート取出装置1は、収容部2と、ハンド装置3とを有する。シート取出装置1は、収容部2に積層されているシートSを一枚ずつハンド装置3で取り出す構成となっている。シートSとしては、正極、負極、セパレータ、用紙、フィルム等を用いることができる。
【0018】
ハンド装置3は、ロボットアーム4に接続されるハンドベース5と、ハンドベース5に支持されて複数設けられた吸着部6とを有する。ロボットアーム4は、少なくともハンドベース5をZ軸方向に昇降移動させることが可能な構成を有する。本実施形態では、多軸(例えば6軸)の関節駆動機構を有するロボットアーム4を用いており、ハンドベース5を任意の方向に移動させることが可能な構成となっている。
【0019】
吸着部6は、シートSを吸着する吸着面10aを備える吸着ホルダ7と、吸着ホルダ7を吊り下げて支持すると共に吸着面10aに連通する気体流路8を備えて該気体流路8内の負圧の大きさに応じて長さ方向(Z軸方向)に収縮するベローズ管9とを有する。
吸着ホルダ7は、吸着面10aを有する多孔質体10を有し、吸着面10aの周囲を気密に閉塞して多孔質体10を保持する構成となっている。
【0020】
多孔質体10は、内部に無数の微細孔を備え、端面に平坦な吸着面10aを有する円柱形状を有する。多孔質体10の種類は、多孔質セラミックス、多孔質プラスチック、多孔質金属等の材料から適宜選択されて構成されている。
吸着ホルダ7は、多孔質体10を囲う有底円筒形状を有する。吸着ホルダ7の円筒底中央には、吸着ホルダ7の内側空間に連通する吸引口11が貫通して形成されている。この吸引口11には、ベローズ管9を介して後述する負圧制御配管系20の配管21が接続されている。
【0021】
ベローズ管9は、一端部が配管21の先端部と連通し、他端部が吸着ホルダ7の吸引口11と連通するように設けられている。本実施形態のベローズ管9は、吸着ホルダ7を吊下して支持する構成となっている。ベローズ管9は、その蛇腹機構により任意の方向に自由な曲げが可能な柔軟性を有する。本実施形態のベローズ管9は、柔軟性の高い樹脂材から形成されている。なお、所定の柔軟性を確保できれば、他の材料、例えば薄板金属材等からベローズ管9を形成しても良い。また、本実施形態のベローズ管9は、吸着面10aの水平面に対する傾きを変位自在とさせると共に、負圧制御配管系20による吸引に応じて伸縮自在な構成となっている。
【0022】
上記構成の吸着部6は、X軸方向において間隔をあけて、互いに異なる位置に設けられている。本実施形態では、図において左側から順に、吸着部6A、吸着部6B、吸着部6C、吸着部6Dが設けられている。吸着部6A,6Dは、シートSの端部に対応する位置を吸着する構成となっている。また、吸着部6B,6Cは、吸着部6A,6Dの間において、シートSの略中央部に対応する位置を吸着する構成となっている。
【0023】
シート取出装置1は、上記構成の複数の吸着部6を少なくとも2つの組に分け、第1の組に属する吸着部6の吸着面10aの高さと、第2の組に属する吸着部6の吸着面10aの高さとを、互いに異ならせるように、組毎に負圧を制御する負圧制御配管系(負圧制御装置)20を有する。本実施形態では、吸着部6A,6Cが第1の組に属し、また、吸着部6B,6Dが第2の組に属するように、組み分けされている。
負圧制御配管系20は、吸引ライン22a,22b,22c,22dと、吸引ライン22a,22bに対する吸引ライン22c,22dの接続を切り替える電磁弁23と、を有する。
【0024】
吸引ライン22aは、不図示の吸引装置に接続され、負圧P1で空気を吸引する構成となっている。また、吸引ライン22bは、不図示の吸引装置に接続され、負圧P2で空気を吸引する構成となっている。負圧P1と負圧P2は、互いに異なる大きさに設定されている。本実施形態では、吸引ライン22aよりも、吸引ライン22bの方が、吸引力が大きくなるように負圧P1<負圧P2の関係で設定されている。
吸引ライン22cは、第1の組に属する吸着部6A,6Cの配管21に分岐して接続される構成となっている。また、吸引ライン22dは、第2の組に属する吸着部6B,6Dの配管21に分岐して接続される構成となっている。
【0025】
吸引ライン22a,22bと、吸引ライン22c,22dとは、電磁弁23を介して接続されている。電磁弁23は、吸引ライン22aと吸引ライン22cとを接続させると共に吸引ライン22bと吸引ライン22dとを接続させる第1モードと、吸引ライン22aと吸引ライン22dとを接続させると共に吸引ライン22bと吸引ライン22cとを接続させる第2モードと、に切り替える構成となっている。したがって、第1モードのときは、吸着部6A,6Cが負圧P1でシートSの吸着を行い、吸着部6B,6Dが負圧P2でシートSの吸着を行うことができる。また、第2モードのときは、吸着部6A,6Cが負圧P2でシートSの吸着を行い、吸着部6B,6Dが負圧P1でシートSの吸着を行うことができる。
【0026】
続いて、本実施形態のシート取出装置1の動作について、図2を参照して説明する。
図2は、本発明の第1実施形態におけるシート取出装置1の動作を説明するための図である。
【0027】
先ず、ロボットアーム4でハンドベース5を下方に移動させ、各吸着部6の吸着面10aを、最上層のシートSに対し同一面で接触させた状態とする。次に、吸着面10aがシートSと接触した状態で、吸引ライン22a,22bを介して減圧し、各吸着部6における吸着を行う。具体的に、吸引ライン22a,22bが減圧されると、配管21、ベローズ管9、吸引口11、多孔質体10内部の微細孔を介して空気が引かれ、吸着面10aに吸着力が作用する。これによって、吸着面10aに接触しているシートSは、吸着面10aに吸着される。
【0028】
各吸着部6でシートSの各部位を吸着した後、ロボットアーム4でハンドベース5を上方に移動させる。ハンドベース5を上方に移動させると、各吸着部6が一体的に引き上げられ、シートSが持ち上げられる。
この時、図2(a)に示すように、電磁弁23は、第1モードに設定されている。第1モードのときは、第1の組に属する吸着部6A,6Cの気体流路8が負圧P1で引かれ、第2の組に属する吸着部6B,6Dの気体流路8が負圧P2で引かれる。そうすると、第1の組に属する吸着部6A,6Cにおけるベローズ管9の収縮量と、第2の組に属する吸着部6B,6Dのベローズ管9の収縮量とに差が生じる。
【0029】
具体的には、第1の組に属する吸着部6A,6Cにおけるベローズ管9の収縮量よりも、第2の組に属する吸着部6B,6Dのベローズ管9の収縮量が大きくなる。この結果、第1の組に属する吸着部6A,6Cと、第2の組に属する吸着部6B,6Dとの間で、吸着面10aの高低差が生じるので、吸着したシートSを波状に屈曲させることができる。シートSが波状に屈曲すると、その下のシートとの間に空気が回り込み易くなり、当該シートSとその下のシートSとの分離を促して重搬送を抑制することができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、より確実に重搬送を抑制するべく、シートSの取り出し中、第1の組に属する吸着部6A,6Cの吸着面10aの高さと、第2の組に属する吸着部6B,6Dの吸着面10aの高さとの大小関係を交互に切り替える処理を行う。具体的には、電磁弁23を、第1モードと第2モードとに交互に切り替えることで行う。
図2(a)に示す第1モードから図2(b)に示す第2モードへと切り替えが行われると、第1の組に属する吸着部6A,6Cの吸着面10aと、第2の組に属する吸着部6B,6Dの吸着面10aの高さ関係が逆転する。そうすると、吸着したシートSが、逆位相で波状に屈曲するため、当該シートSとその下のシートSとの分離をより確実に行うことができる。
【0031】
上記電磁弁23による切り替えは、1回または複数回、予め設定された回数分行う。そして、不図示のセンサー等でシートSの重複搬送の有無を確認できたら、ロボットアーム4を駆動させ、吸着したシートSを所定位置へと搬送する。
【0032】
したがって、上述の本実施形態によれば、積層された複数のシートSのうち、最上層のシートSを吸着し下層の他のシートSと分離して取り出すシート取出装置1であって、シートSを吸着する吸着面10aを備える吸着ホルダ7、及び、該吸着ホルダ7を吊り下げて支持すると共に吸着面10aに連通する気体流路8を備えて該気体流路8内の負圧の大きさに応じて長さ方向に収縮するベローズ管9を有する吸着部6を複数備え、複数の吸着部6を少なくとも2つの組に分け、第1の組に属する吸着部6A,6Cの吸着面10aの高さと、第2の組に属する吸着部6B,6Dの吸着面10aの高さとを、互いに異ならせるように、組毎に上記負圧を制御する負圧制御配管系20を備えるという構成を採用することによって、シートSとその下のシートSとの分離を促し、重搬送を抑制することができる。また、本実施形態では、シートSとは接しない部位に設けられたベローズ管9を収縮させて吸着面10aを変位させ、また、吸着部6の組毎の吸着面10aの高低差も負圧の大きさで調整できるので、シートSの特性変動や外乱の影響に強くなる。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図3は、本発明の第2実施形態におけるシート取出装置1の構成を示す図である。
図に示すように、第2実施形態の負圧制御配管系20では、シートSの端部に対応する位置を吸着する吸着部6(6A,6D)を含む第1の組と、該第1の組以外の吸着部6(6B,6C)を含む第2の組とに、組み分けされている。
【0034】
負圧制御配管系20は、吸引ライン22a,22b,22e,22fと、吸引ライン22a,22bに対する吸引ライン22e,22fの接続を切り替える電磁弁23と、を有する。吸引ライン22eは、第2の組に属する吸着部6B,6Cの配管21に分岐して接続される構成となっている。また、吸引ライン22fは、第1の組に属する吸着部6A,6Dの配管21に分岐して接続される構成となっている。
【0035】
吸引ライン22a,22bと、吸引ライン22e,22fとは、電磁弁23を介して接続されている。電磁弁23は、吸引ライン22aと吸引ライン22eとを接続させると共に吸引ライン22bと吸引ライン22fとを接続させる第1モードと、吸引ライン22aと吸引ライン22fとを接続させると共に吸引ライン22bと吸引ライン22eとを接続させる第2モードと、に切り替える構成となっている。したがって、第1モードのときは、吸着部6A,6Dが負圧P2でシートSの吸着を行い、吸着部6B,6Cが負圧P1でシートSの吸着を行うことができる。また、第2モードのときは、吸着部6A,6Dが負圧P1でシートSの吸着を行い、吸着部6B,6Cが負圧P2でシートSの吸着を行うことができる。
【0036】
続いて、第2実施形態のシート取出装置1の動作について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の第2実施形態におけるシート取出装置1の動作を説明するための図である。
【0037】
第2実施形態では、図4(a)に示すように、シートSの取り出しの際、電磁弁23を第1モードに設定し、第1の組に属する吸着部6A,6Dの吸着面10aの高さを、第2の組に属する吸着部6B,6Cの高さよりも先行して大きくする処理を行う。当該処理により、第1の組に属する吸着部6A,6Dが、同期してシートSの端部を持ち上げると、シートSの端部からシートSの間に空気が回り込み易くなる。
【0038】
また、図4(a)に示す第1モードから図4(b)に示す第2モードへと切り替えが行われると、第1の組に属する吸着部6A,6Dの吸着面10aと、第2の組に属する吸着部6B,6Cの吸着面10aの高さ関係が逆転する。そうすると、第1モードでシートS端部に回り込んだ空気が、中央部に引き込まれるため、当該シートSとその下のシートSとの分離速度を速めることができる。
したがって、第2実施形態によれば、シートSの分離性能を高め、より確実にシートSの重搬送を抑制することができる。
【0039】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図5は、本発明の第3実施形態におけるシート取出装置1の構成と作用を示す図である。なお、第3実施形態のシート取出装置1は、第1実施形態と同構成の負圧制御配管系20を備える。
【0040】
図5(a)に示すように、第3実施形態では、吸着ホルダ7に、錘W1が着脱自在に取り付けられる錘取付溝(錘取付部)30を備える構成となっている。吸着ホルダ7は、ベローズ管9に吊り下げられているので、吸着ホルダ7の荷重によって、ベローズ管9の長さを調整することができる。
錘取付溝30は、吸着ホルダ7の外周面にリング状に形成された凹部である。錘W1は、錘取付溝30に嵌め込むことができる形状を有する。本実施形態の錘W1は、例えば、円弧状の2つの部材からなり、錘取付溝30に嵌め込んだ状態で両者をネジ部材で締結させることで、吸着ホルダ7に対し取り付けられる。
【0041】
上記構成によれば、図5(b)に示すように、シートSを取り出す際に、第1の組に属する吸着部6A,6Cの吸着面10aと、第2の組に属する吸着部6B,6Dの吸着面10aと、の高低差を大きくすることができる。このため、シートSの特性に応じた変形の調整が容易に可能となる。
したがって、第3実施形態によれば、吸着ホルダ7に錘W1を取り付けることを可能とさせ、ベローズ管9が負圧によって変位する幅を調整し、重搬送を抑制するシートSの変形を最適にさせることができる。
【0042】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図6は、本発明の第4実施形態におけるシート取出装置1の構成を示す図である。なお、第4実施形態のシート取出装置1は、第2実施形態と同構成の負圧制御配管系20を備える。
【0043】
図に示すように、第4実施形態では、シートSの端部に対応する位置を吸着する吸着部6A,6Dの吸着ホルダ7の錘W2は、該吸着ホルダ7の吸着面10aがシートSの端部に向けて傾く偏りをもたせる位置に取り付けられている。ベローズ管9は、その蛇腹機構により任意の方向に自由な曲げが可能な柔軟性を有するため、吸着ホルダ7に重さ的な偏りを持たすことで、吸着面10aを傾けることができる。
【0044】
第4実施形態における錘取付部は、シートSの端部に対して逆側の吸着ホルダ7の外周面に設けられた雌ネジ孔31及び雄ネジ部材32から構成される。雌ネジ孔31は、吸着ホルダ7の外周面に形成されている。また、雄ネジ部材32は、雌ネジ孔31に螺入/螺入解除自在な構成となっている。錘W2は、雄ネジ部材32に挿通された状態で、吸着ホルダ7に対し取り付けられる。
【0045】
上記構成によれば、図7(a)に示す各吸着部6の吸着面10aを最上層のシートSに対し同一面で接触させた状態から、図7(b)に示すシートSの持ち上げ状態に移行する際に、シートSの端部を反る様に変形させることができる。このため、シートSの取り出しの際、シートSの端部を持ち上げて空気を回り込ませ易くすることができる。また、シートSの取り出しの際は電磁弁23を第1モードに設定し、第1の組に属する吸着部6A,6Dの吸着面10aの高さを、第2の組に属する吸着部6B,6Cの高さよりも先行して大きくする処理を行うことで、空気を回り込ませる効果をより高めることができる。
したがって、第4実施形態によれば、シートSの分離性能を高め、より確実にシートSの重搬送を抑制することができる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、負圧制御装置は、電磁弁23を備える負圧制御配管系20であると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、吸着部6毎に吸引装置を設け、組毎に吸引装置の駆動を同期して制御することで、負圧を制御する構成であっても良い。
【0048】
また、例えば、上記実施形態では、組み分けした吸着部6の負圧を交互に切り替えて、重搬送を抑制すると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、負圧制御装置が、シートSの取り出し中に、複数の吸着部6の組み分けを変更することで、シートSに対して異なる変形を与える構成であっても良い。
例えば、図8に示すように、シートSに対して、複数列(列C1〜C4)で、且つ、複数行(行R1〜R4)のマトリクス状に吸着部6が設けられている場合に、先ず、列C1〜C4毎に組み分けを行い、次に、行R1〜R4毎に組み分けを行うことで、X軸方向とY軸方向とに、波状の屈曲した変形をシートSに対し与えることができる。このため、例えば、X軸方向の変形に下層のシートSが追従してきた場合であっても、方向の異なるY軸方向の変形を加えることで、下層のシートSの追従を振り切ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…シート取出装置、6(6A,6B,6C,6D)…吸着部、7…吸着ホルダ、8…気体流路、9…ベローズ管、10a…吸着面、20…負圧制御配管系(負圧制御装置)、23…電磁弁、30…錘取付溝(錘取付部)、31…雌ネジ孔、32…雄ネジ部材、S…シート、W1…錘、W2…錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のシートのうち、最上層のシートを吸着し下層の他のシートと分離して取り出すシート取出装置であって、
前記シートを吸着する吸着面を備える吸着ホルダ、及び、該吸着ホルダを吊り下げて支持すると共に前記吸着面に連通する気体流路を備えて該気体流路内の負圧の大きさに応じて長さ方向に収縮するベローズ管を有する吸着部を複数備え、
前記複数の吸着部を少なくとも2つの組に分け、第1の組に属する前記吸着部の前記吸着面の高さと、第2の組に属する前記吸着部の前記吸着面の高さとを、互いに異ならせるように、組毎に前記負圧を制御する負圧制御装置を備えることを特徴とするシート取出装置。
【請求項2】
前記負圧制御装置は、前記取り出し中、前記第1の組に属する前記吸着部の前記吸着面の高さと、前記第2の組に属する前記吸着部の前記吸着面の高さとの大小関係を、交互に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のシート取出装置。
【請求項3】
前記負圧制御装置は、前記シートの端部に対応する位置を吸着する前記吸着部を含む第1の組と、前記第1の組以外の前記吸着部を含む第2の組と、に組み分けすることを特徴とする請求項1または2に記載のシート取出装置。
【請求項4】
前記負圧制御装置は、前記取り出しの際、前記第1の組に属する前記吸着部の前記吸着面の高さを、前記第2の組に属する前記吸着部の前記吸着面の高さよりも先行して大きくすることを特徴とする請求項3に記載のシート取出装置。
【請求項5】
前記吸着ホルダに、錘が着脱自在に取り付けられる錘取付部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート取出装置。
【請求項6】
前記シートの端部に対応する位置を吸着する前記吸着ホルダの前記錘は、該吸着ホルダの前記吸着面が前記シートの端部に向けて傾く偏りをもたせる位置に取り付けられることを特徴とする請求項5に記載のシート取出装置。
【請求項7】
前記負圧制御装置は、前記取り出し中、前記複数の吸着部の組み分けを変更することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート取出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86950(P2012−86950A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235481(P2010−235481)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】