説明

シート成形トレイおよび食品入トレイ

【課題】内部が減圧された場合であっても、側部が変形することがなく、外観を良好に維持することが可能なシート成形トレイおよび食品入トレイを提供する。
【解決手段】シート成形トレイ10は、側部11と、側部11に連結された底部20と、側部11の周囲に設けられたフランジ部30とを備えている。底部20は、中央底部25と、中央底部25周縁に位置する周縁底部26とを有している。中央底部25は、第1楕円形状25aをもち、周縁底部26は、第1楕円形状25aの長軸L1から90°ずれた長軸L2を有する第2楕円形状26aをもっている。シート成形トレイ10内部が減圧された際、底部20がシート成形トレイ10の内方に向けて凹み、側部11が変形しないようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を収納するとともに、収納した食品が加熱調理殺菌されるシート成形トレイおよび食品入トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トレイ状の容器に食品素材を充填し、容器に蓋材をシールして密封した後、マイクロウェーブを用いることにより食品素材を加熱調理および殺菌することが行われている。この場合、蓋材には逆止弁が取り付けられており、逆止弁は容器の破裂防止の為、容器内の圧力が高くなったとき、容器内の空気および蒸気を逃がす構造となっている。容器内の食品素材を加熱し終わった際、逆止弁は閉じられ、容器内が減圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−179881号公報
【特許文献2】実公平4−42116号公報
【特許文献3】特開平8−133345号公報
【特許文献4】特開2011−42385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように容器内が減圧された場合、容器が内方に向けて変形する。しかしながら、このような容器として、従来知られている容器(例えば特許文献1〜4参照)を用いた場合、容器内が減圧された際、容器の側部が大きく変形してしまい、外観の見栄えが悪化するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、内部が減圧された場合であっても、側部が変形することがなく、外観を良好に維持することが可能なシート成形トレイおよび食品入トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、食品を収納するとともに、収納した食品が加熱調理殺菌される際に用いられるシート成形トレイにおいて、側部と、側部に連結された底部と、側部の周囲に設けられたフランジ部とを備え、底部は、中央底部と、中央底部周縁に位置する周縁底部とを有し、中央底部は、第1楕円形状をもち、周縁底部は、第1楕円形状の長軸から90°ずれた長軸を有する第2楕円形状をもつことを特徴とするシート成形トレイである。
【0007】
本発明は、周縁底部は側部より薄肉となっていることを特徴とするシート成形トレイである。
【0008】
本発明は、側部は、その上端部が円形状の水平断面を有するとともに、その下端部が楕円形状の水平断面を有していることを特徴とするシート成形トレイである。
【0009】
本発明は、シート成形トレイと、シート成形トレイ内に収納された食品と、シート成形トレイのフランジ部に溶着された蓋材とを備えたことを特徴とする食品入トレイである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、底部が側部より変形しやすい形状となっているため、シート成形トレイの内部が減圧された場合に側部が変形することがなく、外観を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるシート成形トレイおよび蓋材を示す斜視図。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるシート成形トレイを示す平面図。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態によるシート成形トレイを示す部分断面図(図2における切断線III−IIIに沿う断面図)。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態によるシート成形トレイを示す底面図。
【図5】図5は、シート成形トレイを用いて食品入トレイを作製する工程を示す概略図。
【図6】図6(a)−(d)は、食品入トレイを調理する工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1乃至図6は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0013】
まず、図1乃至図4により、本実施の形態によるシート成形トレイの概要について説明する。
【0014】
図1乃至図4に示すシート成形トレイ10は、後述するように食品16を収納するとともに、収納した食品16が加熱調理殺菌される際に用いられるものである。このようなシート成形トレイ10は、側部11と、側部11の下方に連結された底部20と、側部11の上方周囲に設けられたフランジ部30とを備えている。
【0015】
このうち側部11は、その上端部11bが円形状の水平断面を有するとともに、その下端部11aが楕円形状の水平断面を有しており、側部11の水平方向の断面積は、フランジ部30側(上端部11b)から底部20側(下端部11a)に向けて徐々に小さくなっている。なお、本明細書において「水平断面」および「垂直断面」とは、底部20を接地させた状態における、水平方向の断面および垂直方向の断面をいう(図3)。
【0016】
フランジ部30は、側部11の周縁に位置するフランジ周縁部31と、側部11から容器外側方向に向けて水平に延び、喫食時にユーザーに把持される2箇所の把持部32とからなっている。このうち把持部32には、それぞれ平面略四角形状からなる複数の凹部33が形成されている。この複数の凹部33は、ユーザーが加熱調理されたシート成形トレイ10を持ち運ぶ際、指に熱が伝わりにくくするために設けられている。
【0017】
また、底部20は、側部11より容易に変形可能な形状からなっており、中央に位置する中央底部25と、中央底部25の周縁に位置する周縁底部26とを有している。このうち中央底部25は略平坦な面からなり、中央底部25の外周は、第1楕円形状25aをもっている。一方、周縁底部26は、側部11の下端部11aに連接しており、周縁底部26の外周は第2楕円形状26aをもっている。なお、周縁底部26を構成する第2楕円形状26aは、側部11の下端部11aの楕円形状と一致している。
【0018】
さらに、周縁底部26を構成する第2楕円形状26aは、中央底部25を構成する第1楕円形状25aより大きく、第1楕円形状25aの全体が、第2楕円形状26aの内部に配置されている。
【0019】
図4に示すように、中央底部25を構成する第1楕円形状25aは、短軸S1と長軸L1とを有している。また、周縁底部26を構成する第2楕円形状26aは、短軸S2と長軸L2とを有している。この場合、第1楕円形状25aの中心C1と第2楕円形状26aの中心C2は一致している。また、第2楕円形状26aの長軸L2は、第1楕円形状25aの長軸L1から90°ずれている。換言すれば、第2楕円形状26aの長軸L2は、第1楕円形状25aの短軸S1と同一直線上に位置している。
【0020】
さらに、図4に示すように、第2楕円形状26aの長軸L2は、シート成形トレイ10の長手方向軸X1に対して45°ずれて配置されている。
【0021】
なお、シート成形トレイ10が変形する前の状態では、周縁底部26は中央底部25に対して傾斜して設けられている。図3に示すように、第2楕円形状26aの長軸L2に沿う垂直断面において、周縁底部26と中央底部25とがなす角αは、15°〜20°とすることができる。一方、第2楕円形状26aの短軸S2に沿う垂直断面において、周縁底部26と中央底部25とがなす角は、35°〜40°とすることができる。
【0022】
このようなシート成形トレイ10は、熱可塑性樹脂、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の単層シート又はEVOHやナイロン等のバリア層を含む多層シートを成形(シート成形)することにより作製されたものである。
【0023】
なお、シート成形トレイ10の周縁底部26は、側部11より薄肉となっている。とりわけ、側部11の厚みをt1とし、周縁底部26の厚みをt2とした場合(図3参照)、0.05mm<t1―t2<0.3mmとすることが好ましい。このように、シート成形トレイ10の周縁底部26を、側部11より薄肉とすることにより、側部11より底部20が更に変形しやすくなり、シート成形トレイ10の内部が減圧された場合に側部11が変形することを確実に防止することができる。
【0024】
ところで、シート成形トレイ10には食品16(図5参照)が収納され、その後、フランジ部30に蓋材(蓋フィルム)40(図1参照)が溶着されてシート成形トレイ10が密封される。このような蓋材40は、例えばPE(ポリエチレン)またはPP(ポリプロピレン)からなり、例えば略中央部に逆止弁手段41が設けられている。この逆止弁手段41は、シート成形トレイ10内が加圧された場合、その内部の空気や蒸気を逃がすことができるが、外部の空気がシート成形トレイ10内に流入しない構造となっている。なお、逆止弁手段41としては従来公知のものを用いることができるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について図5および図6を用いて説明する。
【0026】
図5は、シート成形トレイ10を用いて食品入トレイ15を作製する工程を示している。図5において、符号50は、食品入トレイ15を作製する食品入トレイ製造装置を示している。食品入トレイ製造装置50は、上流側から順に、トレイ供給装置51、充填装置53、逆止弁供給装置54、加熱装置55および冷却装置56を有している。また、食品入トレイ製造装置50は、コンベア等からなる搬送装置52を有しており、シート成形トレイ10は搬送装置52によって搬送される。
【0027】
図5において、まず、空の状態のシート成形トレイ10が、トレイ供給装置51から搬送装置52に対して供給される。
【0028】
続いて、トレイ供給装置51の下流側に設けられた充填装置53により、シート成形トレイ10に対して食品16が充填される。このとき、食品16は生の素材、半調理した素材、又は調合素材の状態で充填される。なお、充填装置53においては、複数種類の素材を順次充填するようになっていても良い。
【0029】
一方、搬送装置52近傍に逆止弁供給装置54が設けられており、この逆止弁供給装置54において、蓋材40に対して逆止弁手段41が取り付けられる。
【0030】
その後、逆止弁手段41が取り付けられた蓋材40は、搬送装置52上を流れてきたシート成形トレイ10に対して、例えばヒートシールによって溶着され、食品16が充填されたシート成形トレイ10が密閉される。
【0031】
続いて、蓋材40によって密閉されたシート成形トレイ10は、充填装置53の下流側に設けられた加熱装置55内に搬送される。この加熱装置55は、例えばマイクロウェーブ加熱装置からなっており、シート成形トレイ10内の食品16を加熱調理するとともに食品16を殺菌する役割を果たす。
【0032】
この加熱装置55内において、シート成形トレイ10内の食品16は、加熱調理および殺菌される。このとき、シート成形トレイ10内の圧力が高められ、蓋材40が上方に膨らむ。そして、シート成形トレイ10内が所定の圧力まで達すると、食品16から生じた水蒸気や空気は、逆止弁手段41から外部へ放出される。水蒸気や空気が放出された後、シート成形トレイ10内の圧力が低下し、逆止弁手段41が閉じて蓋材40は下方に向けて戻される。
【0033】
このようにして食品16が加熱および殺菌された後、シート成形トレイ10は加熱装置55から出て冷却装置56に搬送される。この搬送中にシート成形トレイ10内が減圧される。この冷却装置56において、食品16を収納したシート成形トレイ10は0〜10℃まで冷却される。
【0034】
冷却装置56において冷却された後、シート成形トレイ10は、冷却装置56から搬出される。このようにして、シート成形トレイ10と、シート成形トレイ10内に収納された食品16と、シート成形トレイ10のフランジ部30に溶着された蓋材40とを備えた食品入トレイ15が得られる。
【0035】
ところで、本実施の形態において、上述したように、シート成形トレイ10の底部20は、中央底部25と、中央底部25周縁に位置する周縁底部26とを有している。中央底部25は第1楕円形状25aをもち、周縁底部26は、第1楕円形状25aの長軸L1から90°ずれた長軸L2を有する第2楕円形状26aをもっている。
【0036】
このことにより、冷却装置56で冷却されてシート成形トレイ10内が減圧された際、底部20がシート成形トレイ10の内方に向けて凹み、中央底部25がシート成形トレイ10内に反転するようになっている(図3の仮想線参照)。これに対して、側部11は変形することないので、外方から見てシート成形トレイ10の変形が目立つことがない。また、中央底部25がシート成形トレイ10内に反転したとき、側部11の下端部11aが接地部となるので、シート成形トレイ10が不安定にならず、安定して接地させることができる。
【0037】
とりわけ中央底部25の第1楕円形状25aの長軸L1と、周縁底部26の第2楕円形状26aの長軸L2とを90°ずらしたことにより、底部20がシート成形トレイ10の内方に向けて凹みやすい構造となっている。
【0038】
さらに、シート成形トレイ10の周縁底部26が側部11より薄肉となっているので、側部11を変形させることなく、底部20をより確実にシート成形トレイ10の内方に凹ませることができる。
【0039】
次に、このようにして作製された食品入トレイ15を喫食時にユーザーが調理する際の作用について述べる。図6(a)−(d)は、食品入トレイ15を調理する工程を示している。
【0040】
図6(a)に示すように、食品入トレイ15は、電子レンジ等の調理器60に入れられて加熱される。このとき、シート成形トレイ10内の圧力が高められ、蓋材40が上方に膨らみ、水蒸気および空気が逆止弁手段41から放出される(図6(b))。この際、逆止弁手段41から音が生じるようになっていても良い。
【0041】
加熱が完了した後、食品入トレイ15は調理器60から取出される。続いて食品入トレイ15は自然冷却されて、シート成形トレイ10内が再度減圧され、蓋材40が下方に向けて凹む(図6(c))。その後、蓋材40をフランジ部30から剥離することにより、シート成形トレイ10内の食品16を食べることができる(図6(d))。
【0042】
このように本実施の形態によれば、底部20が側部11より変形しやすい形状となっているため、シート成形トレイ10の内部が減圧された際、底部20がシート成形トレイ10の内方に向けて凹み、側部11が変形しない。このことにより、食品入トレイ15の外観を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 シート成形トレイ
11 側部
15 食品入トレイ
16 食品
20 底部
25 中央底部
25a 第1楕円形状
26 周縁底部
26a 第2楕円形状
30 フランジ部
31 フランジ周縁部
32 把持部
33 凹部
40 蓋材
41 逆止弁手段
50 食品入トレイ製造装置
51 トレイ供給装置
52 搬送装置
53 充填装置
54 逆止弁供給装置
55 加熱装置
56 冷却装置
60 調理器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納するとともに、収納した食品が加熱調理殺菌される際に用いられるシート成形トレイにおいて、
側部と、
側部に連結された底部と、
側部の周囲に設けられたフランジ部とを備え、
底部は、中央底部と、中央底部周縁に位置する周縁底部とを有し、
中央底部は、第1楕円形状をもち、周縁底部は、第1楕円形状の長軸から90°ずれた長軸を有する第2楕円形状をもつことを特徴とするシート成形トレイ。
【請求項2】
周縁底部は側部より薄肉となっていることを特徴とする請求項1記載のシート成形トレイ。
【請求項3】
側部は、その上端部が円形状の水平断面を有するとともに、その下端部が楕円形状の水平断面を有していることを特徴とする請求項1または2記載のシート成形トレイ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載のシート成形トレイと、
シート成形トレイ内に収納された食品と、
シート成形トレイのフランジ部に溶着された蓋材とを備えたことを特徴とする食品入トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−246031(P2012−246031A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120596(P2011−120596)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】