説明

シート成形金型および抜き型ならびにシート成形容器

【課題】薄肉化した場合でも、開口周縁で手を怪我をすることがなく安全で、且つ、外力が作用しても破損しにくい耳付きのシート成形容器を提供する。
【解決手段】周壁の外側に膨出部を有して開口周縁を折り返してなる耳付きの容器本体または蓋のシート成形金型であって、周壁を成形する固定金型と、該固定金型の周囲を上下動して耳を成形する可動金型とからなり、該可動金型は、下降位置において周壁と連続して外向きに水平なフランジを形成するフランジ支持部と、上昇移動に伴ってフランジを上方に折り返す膨出部支持部とを備え、さらに該膨出部支持部は折り返されたフランジに膨出部を形成可能な凹状成形面を有する。固定刃の雌刃は、口縁の下方内周に前記金型における可動金型の凹状成形面に対応する形状の耳挿入部を形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空成形等のプラスチックシート成形分野において、容器本体やその蓋の開口周縁を安全な形状とし、且つ、薄肉化であっても耐久性を付与する成形技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品用容器を始めとする様々な分野において、薄肉のプラスチックシートを真空、圧空、またはこれらを併用する真空圧空したシート成形容器が使用されている。ここで、最も身近に目にする弁当や惣菜、インスタント食品などの食品用容器において、容器本体に蓋を外嵌合によって装着する蓋付き容器としては、例えば特許文献1〜8に示されるものが公知である。即ち、特許文献1〜8に例示される蓋付き容器の一般的な構成は、図8に簡略的に示すように、容器本体70の開口周縁71に外方に突出する環状若しくは円弧状の突状部72が形成される一方、蓋80は前記容器本体70の開口周縁71に外側から弾性的に嵌め込まれる内寸に形成した周壁81に前記突状部72に係合する係合部82を形成してなり、閉蓋時には前記係合部82が前記突状部に弾性的に係合することで蓋80の脱落を防止する一方、蓋80の周壁81を所定以上の力で外側に広げることで開蓋するものである。
【0003】
このような食品用の蓋付き容器については、食生活の変化やコンビニエンスストアの台頭等を背景に、年々需要が増加し、その流通量も膨大なものとなっている。そのため、メーカー側にとっては、材料コストの低減や資源節約、廃棄処理に係る地球環境への負担軽減をいかに解決するかが課題とされ、その一つの解決手段として、シート厚をできるだけ小さく(薄肉化)する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−99288号公報
【特許文献2】特開2007−91240号公報
【特許文献3】特開2006−315719号公報
【特許文献4】特開2006−213373号公報
【特許文献5】特開2006−160349号公報
【特許文献6】特開2006−1582号公報
【特許文献7】特開2005−35613号公報
【特許文献8】特開2005−225500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した食品用の蓋付き容器は、開蓋の際、蓋80を拡開変形する必要があるため、蓋80の開口周縁に指掛け用として外向きに水平あるいはフレア状のフランジ83(耳とも称することがある)を形成することが多い。図6は、フレア状のフランジ83を示している。このフランジ83は、指を引っかけやすい大きさ(寸法)に積極的に形成するが、従来の抜き型で打ち抜いた場合は、隣接する容器同士の連結フランジを開口周縁に沿って忠実に切断することが難しく、1ミリ程度のフランジは不可避に形成される。そして、打ち抜き後の当該フランジ83の先端は鋭角なエッジを構成し、薄肉化するほど当該先端は刃物のように鋭くなるため、開蓋の際、消費者が指を怪我する恐れがあった。
【0006】
また、単にシート厚を薄くすれば、当然、強度が犠牲となるため、開蓋時にフランジ83が指掛け部分で破損して、うまく開蓋できないことがあった。また、それ以前に、陳列や箱詰めのとき、隣合う容器が接触したり、運搬時の振動によっても、フランジ83は破損することがある。さらに、カップ麺やインスタントスープなど、工場で内容物を詰めた製品の場合、最終的にはプラスチックフィルムでシュリンクパックして出荷されるが、このシュリンクパック(包装)時にフィルムがフランジ83を押圧(圧迫)して破損させることがあった。このように、従来の構成であると、薄肉化に伴ってフランジ83の強度も低下し、破損事故が多発する要因となっており、フランジ83が破損した、いわゆる耳割れを起こした製品は、その尖った耳割れ部によって消費者の指を怪我させたり、シュリンクパックを破く恐れがより高まる。このため、耳割れした製品は返品の対象となり、メーカー側にとっても薄肉化に伴う歩留まりの悪さが問題となる。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、薄肉化した場合でも、開口周縁で手を怪我をすることがなく安全で、且つ、外力が作用しても破損しにくい耳付きのシート成形容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、先ず、本発明のシート成形容器から説明すると、シート成形中に開口周縁に耳を形成した後、抜き型で前記耳の周囲を打ち抜いて得た耳付きの容器本体または蓋であって、前記耳は、開口周縁を周壁の外側に折り返してなり、折り返し基部と打ち抜かれた先端(耳の端縁)の間には前記先端よりも外方に膨出する膨出部を有する。本容器によれば、開口周縁に外方に膨腹したポケット状の耳が形成され、膨出部の最大膨出部分が容器の外寸を規定する。そして、耳の打ち抜かれた先端は膨出部よりも内側に位置するため、指やシュリンクパックのフィルムが直接当該先端に触れない。なお、本発明において、単に容器というときは、容器本体(いわゆる身)または蓋の双方の概念を有する。つまり、本発明は耳付きの容器本体または耳付きの蓋の双方に適用することができる。
【0009】
本発明を容器の蓋に適用した場合、消費者は開蓋の際、耳の主に折り返し基部に指を掛けて、周壁を若干外側に広げるように上方に引き上げるが、本発明の耳はシートを折り返した二重構造であるため、従来のように一枚シートのフランジよりも高い強度を示す。また、折り返し基部がバネのような弾性を発揮するため、耳に上向き(開蓋時)のみならず、内向き(シュリンクパック時)の力がかかったとしても、当該外力は弾性的に吸収され、耳が破損することを回避する。
【0010】
特に耳の膨出部が湾曲状である場合は、耳全体の弾力性が高まる。さらに、容器の周壁側にも耳の膨出部と対称に内方に湾曲する膨出部を設けたものにあっては、当該周壁側膨出部と耳側膨出部とが折り返し基部を介してほぼ環状のバネを構成し、耳に作用するあらゆる方向の外力を最も有効に吸収することができる。
【0011】
次に、本発明のシート成形金型は、上述したシート成形容器、即ち、開口周縁を周壁の外側に折り返してなり、折り返し基部と打ち抜かれた先端の間に前記先端よりも外方に膨出する膨出部を有する耳付きの容器本体または蓋をシート成形するための金型であって、開口下向きに前記容器本体の底面または蓋の天面およびその周囲に周壁を成形する凸型の固定金型と、該固定金型の周囲を上下動する可動金型とからなり、前記固定金型は、周壁の成形面の下側に連続して内方に括れた前記膨出部の凹状成形面を有する一方、前記可動金型は、下降位置において前記凹状成形面で成形された前記膨出部と連続して外向きに水平なフランジを形成すると共に、上昇移動に伴って前記フランジを下方から押し上げる上面側のフランジ支持部と、前記凹状成形面とは対称に外方に膨出し、前記上昇移動のとき前記凹状成形面で成形された前記膨出部を折り返し可能に支持する内面側の膨出部支持部とを備える。
【0012】
当該本発明の金型において、先ず可動金型が下降位置にあるとき、通常のシート成形法と同じく、容器本体の底または蓋の天面およびその周囲に周壁などの主要部が形成される。このとき固定金型の凹状成形面により膨出部が内向きに膨出した状態で前記周壁と連続して成形される。この第1段階成形の後、第2段階成形として、シートが完全硬化する前の軟化あるいは半硬化にあるうちに、可動金型を上昇移動させることによって、上面側のフランジ支持部によりフランジを下方から押し上げながら、内面側の膨出部支持部により周壁との境界を折り返し基部として膨出部を周壁の外側に折り返す。
【0013】
なお、膨出部は前記第1段階成形時に主に固定金型の凹状成形面により成形されるが、第2段階成形でも可動金型の膨出部支持部によって形が整えられる。さらに、固定金型の周壁成形面に膨出部支持部の上側に連続して第二の凹状成形面を設けたものにあっては、折り返された外向き膨出部と対称に折り返し基部を介して周壁側にも内向き膨出部が成形され、上述したほぼ環状の耳を成形することができる。なお、これら凹状成形面(第一)および第二凹状成形面を湾曲状とすることで、湾曲状の膨出部を成形することができる。
【0014】
なお、本金型を適用できるシート成形法の代表的なものは、真空成形法、熱板圧空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法であるが、シートが軟化状態の間に膨出部の成形が完了できるものであれば、他のシート成形法を採用することも自由である。ただし、膨出部の成形はシート成形の最終工程となり、このときシートは半硬化状態となっていることも想定される。しかも、シート厚を薄くすれば、小さな圧力で成形できる反面、冷却硬化も早まるため、どちらに重点を置くかで採用する成形法も変わるが、一般的には、高い圧力にて成形を行う真空圧空成形法を採用することが好ましい。
【0015】
そして、上述した本発明の金型によるシート成形後に、隣合う耳付きの容器本体または蓋の間のフランジを前記耳に沿って切断するシート成形容器の抜き型として、本発明では、開口下向きに搬送されるシート成形容器の前記フランジを下方から支持する上面支持部の内側に前記耳が挿入可能な上向き開口の筒状または凹状の雌刃と、該雌刃に嵌入可能な下向き凸状の雄刃とを備え、前記雌刃は、その口縁を挿入後の前記耳と前記フランジの連結角部に進入可能に内向きに突成するという手段を用いる。
【0016】
当該本発明の抜き型によれば、雌刃を上昇あるいは雌刃を下降させることによって雄刃が雌刃に嵌入し、雌刃口縁と雄刃外面とのせん断によってプラスチックシートを切断するが、雌刃口縁は内向きに突成されて、耳とフランジの鋭角状の連結角部に入り込んだ状態で雄刃を嵌入できるため、切断後、打ち抜かれた耳の先端は膨出部の内側とすることができる。つまり、膨出部の外寸よりも小さい内寸の打ち抜き先端を形成することができる。
【0017】
また、雌刃は、口縁の下方内周に前記金型における可動金型の凹状成形面に対応する形状の耳挿入部を形成することで、耳の外形と雌刃の耳挿入部の内形が一致し、打ち抜き時に耳の膨出部を変形させることなく打ち抜きを行うことができる。特に、耳挿入部が口縁に向かって縮径した湾曲状である場合、湾曲状の膨出部を有する耳に対応する。さらに、より好ましくは、雄刃は刃先の内側に下方に突出して耳内(膨出部と周壁の間)に挿入され、打ち抜き時に耳内の周壁を内側から内向きに変形可能なガイドを設ける。この手段によれば、ガイドが打ち抜き時に一時的に耳内の周壁を内向きに変形するため、より確実に耳をフランジの連結角部に沿って切断できると共に、その切断面はフランジとほぼ直角となり、耳の先端は鋭利なエッジを構成しない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耳付きシート成形容器によれば、耳の膨出部が容器の外寸を構成し、抜き型によって打ち抜かれた耳先端が当該膨出部よりも内側となるため、指等が直接前記先端に触れることがなく安全である。また、シュリンクパックを施した場合もフィルムが前記先端に触れず、不用意なフィルム破れの恐れがない。さらに、耳は弾性を有するため、上下あるいは左右の押圧力が作用しても、膨出部や折り返し基部でこれを吸収して耳の破損が防止される。
【0019】
このように、本発明のシート成形容器は、シート厚を薄くしても、弾性力によって耳の破損が防止されるから、使用するプラスチックシートのシート厚を極限まで薄くできる。例えば、従来の60〜80%の薄さの耳付き容器を提供できる。このため、材料コストが大幅に低減すると共に、資源の節約や地球環境への負担軽減にも大きく寄与する。また、薄肉化によって、シート成形後の冷却時間が短縮されるため、全体の成形時間も短くなり、また、抜き型の刃の消耗も大幅に改善される。
【0020】
一方、本発明のシート成形金型によれば、上述した耳付きの本発明容器を成形することができる。また、成形法も従来から変更することなく、固定金型も既存のものが使用でき、可動金型を追加するだけであるから、成形装置を大幅に変更する必要がない。
【0021】
さらに、本発明の抜き型によれば、上記本発明のシート成形金型と組み合わせて使用することで、より確実に耳の先端を膨出部よりも内側に位置させた状態で、容器をフランジから切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】耳付き蓋の実施形態を示した概略図
【図2】耳付き蓋を装着した容器全体をシュリンクパックした出荷状態を示す概略図
【図3】シート成形容器の金型の実施形態を示した概略図
【図4】金型の別実施形態を示した概略図
【図5】シート成形容器の抜き型の実施形態を示した概略図
【図6】抜き型の別実施形態を示した概略図
【図7】抜き型のさらなる別実施形態を示した概略図
【図8】従来の耳付きシート成形容器を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。先ず、図1は本発明を蓋に適用した耳付き容器を示しており、天面1の周囲に連続して下方に延成した段付きの周壁2の下端、すなわち開口周縁には耳3が形成されている。この耳3は、周壁2の下端(開口周縁)を上方に折り返してなり、且つ、その先端3aと折り返し基部3bの間には前記先端3aよりも外方に膨出する湾曲状の膨出部3cを有している。言い換えれば、耳3の先端3aは膨出部3cよりも周壁2寄りの内側に位置する。
【0024】
この実施形態では、インスタント麺等を内容物とする容器本体4の開口上縁に外向きのカール部4aを形成し、この容器本体4に着脱自在に外嵌合する蓋を例示している。つまり、蓋の周壁2には前記カール部4aに弾性的に係合する係合溝2aが形成されており、この係合溝2aの下側に耳3を構成している。
【0025】
従って、この実施形態の蓋は、周壁2を弾性的に拡開することによって容器本体4から取り外すものであるが、このとき耳3は指掛け部として機能する。そして、耳3は折り返し基部3bの弾性によって、指によって上方(斜め上)に押し上げる力を吸収し、開蓋時の耳3の破損を防止する。
【0026】
また、製品出荷の際は、図2に示すように、全体がプラスチックフィルム5によってシュリンクパックされ、耳3が内向きの押圧されるが、この圧迫力は折り返し基部3bや膨出部3cの弾性力によって吸収されるため、耳3が割れたり破損することがない。さらに、耳の先端3aは上述のように膨出部3cよりも内側(周壁2寄り)に位置するため、この先端3aにプラスチックフィルム5が接触せず、先端3aによるプラスチックフィルム5の破れも防止される。
【0027】
さらに、本実施形態では、耳3の弾力性をより高めるため、周壁2にも内向きの膨出部2bを形成している。この周壁側膨出部2bは耳3の膨出部3cと対称な位置および形状に形成している。このため、耳3は全体として断面がほぼ環状をなすことから、上下左右あらゆる方向からの押圧力を効果的に吸収する。
【0028】
このように、本実施形態の蓋(シート成形容器)は、耳3が弾性力によって外力を吸収して耳割れを回避できることから、厚めのシートを用いて耳割れを防止していた従来製品よりも、シート厚を20〜40%程度、薄くすることができる。
【0029】
なお、膨出部3cの形状は、指やシュリンクパックのフィルムとの接触を和らげるため湾曲状が好ましいが、くの字に屈曲した形状であってもよく、鋭利な耳先端3aが内側となるような形状であれば、その他の形状でもよい。また、周壁2にも内向き膨出部2bを設けることが好ましいが、省略して、この部分をストレートに成形することも可能である。さらにまた、上記実施形態では蓋への適用を例示したが、容器本体の開口周縁に同様の耳を設けることも本発明の範囲である。
【0030】
次に、上記耳付きの蓋を成形する金型について説明する。図3は、その金型を用いた成形工程を示したもので、10は蓋の周壁2を成形する固定金型、11は固定金型10の周囲を上下動して耳3を成形する可動金型である。固定金型10は、側面を周壁成形面10aとし、開口下向きの状態で容器を成形する凸型である。また、固定金型10の周壁成形面10aには、可動金型11の上昇位置において湾曲状成形面11cと対向する部分に、当該湾曲状成形面11cと対称に内方に括れた膨出部の凹状成形面10bを設けている。一方、可動金型11は、図3(a)の下降位置と同図(b)の上昇位置の間を上下動するもので、下降位置において周壁2と連続して外向きに水平なフランジ20を成形する平面状のフランジ支持部11aと、上昇移動に伴って前記凹状成形面10bによって成形された膨出部を上方に折り返す膨出部支持部11bとを備える。このうち、膨出部支持部11bは、フランジ支持部11aの直下に外向き(図面、左側)に湾曲状に括れる湾曲状成形面11cが構成されている。さらに、この実施形態では、固定金型10の周壁成形面10aに、凹状成形面10bの上側に連続して第二の凹状成形面10cを形成することで、図1に示した環状の耳を形成できるため、好ましい構成であるが、この第二の凹状成形面10cは省略可能な選択的構成である。
【0031】
当該金型によれば、先ず可動金型11を下降させた第1段階成形の状態(図3(a))で、加熱軟化させたプラスチックシートを真空、圧空、または真空圧空により両金型10・11に密着させることで、固定金型10によって周壁2が形成されると同時に、その凹状成形面10bによって耳側の膨出部が成形され、また、可動金型11のフランジ支持部11aによって膨出部と連続して水平なフランジ20が形成される。またこのとき、固定金型10の第二凹状成形面湾曲状成形面10cによって、周壁2には後に周壁側の膨出部となる部分が内向きに膨らんだ状態で成形される。
【0032】
次に、第2段階成形として、プラスチックシートが軟化している間あるいは半硬化の状態で可動金型11を上昇させることで、フランジ20が可動金型11の膨出部支持部11bによって周壁2の外側上方に折り返され、且つ、湾曲状成形面11cによって外方に湾曲状に膨らむ膨出部3cを精度よく成形した耳3が成形される。
【0033】
そして、当該第2段階成形後、可動金型11を再度下降位置に戻して成形シートを離型し、次工程の打ち抜きで耳3の周囲に残る水平なフランジ20を耳3に沿って切断することで、切断面、即ち耳3の先端3aが膨出部3cよりも周壁2側内向きに位置する、図1に示した耳付き蓋を得ることができる。
【0034】
図4は、別実施形態の金型を示す。この別実施形態の金型は、固定金型30のみからなり、その中央に周壁2を成形する凹状の周壁成形面31を設けた凹型である。そして、周壁成形面31の周囲には、耳3を成形する所定高さ突出する凸状成形部32を設けている。この凸状成形部32は、外面側(図面上、左側)が外方に膨らむ湾曲状成形面32aを構成している。また、この実施形態では、凸状成形部32の内面側にも内方に膨らむ湾曲状成形面32bを形成しているが、こちらの成形面32bは省略可能な選択的事項である。
【0035】
そして、図4に示す別実施形態の金型によれば、軟化したプラスチックシートを金型に密着させるだけで、図1に示すような耳付き容器(蓋)の成形が完了する。従って、金型の構造や成形が簡易であるという観点からは、上述した可動金型11を備えた図3の凸型の金型よりも有利である。これに対して、別実施形態の金型は凸状成形部32がアンダーカットを構成し、離型時には無理抜きとなるため、耳3の成形精度や離型の容易性という観点では、図3の凸型の金型が有利である。
【0036】
なお、金型についての実施形態では、蓋を成形することを説明したが、蓋と容器本体とは周壁の高さや開口径が異なるものの、本発明はこうした細部を限定するものではなく、開口周縁の耳を成形するものであるから、容器本体についても上記実施形態と同じ構成の金型を用いて耳付き容器を成形することができる。
【0037】
ただし、何れの金型を使用したとしても、成形された耳3とフランジ20の連結角部21を正確に切断する必要がある。フランジ20の中途を切断すると、その切断面が膨出部3cよりも外側となり、図1の耳付き容器を得られない恐れがあるからである。
【0038】
そこで、続いて、成形後の耳3とフランジ20の連結角部21を正確に切断可能な抜き型の実施形態を図5に示す。図5において、50は固定刃、60は可動刃である。固定刃50は、開口下向きに搬送されるシート成形容器のフランジ20を下方から支持する上面支持部51の内側に雌刃52を設けてなる。雌刃52は打ち抜き後の容器を下方に落下させる中空状であり、その口縁53が刃先として機能する。
【0039】
一方、可動刃60は、固定刃50の雌刃52に嵌入可能に上下動する雄刃61を備える。また、雄刃61の内側はシート成形容器の天面1および周壁2と同じ形状の逃げ凹部62としている。
【0040】
ここで、本発明の固定刃50の雌刃52について、さらに詳述すると、該雌刃52はシート成形容器の耳3が挿入可能な形状および径を有し、且つ、口縁53は雌刃52内に耳3を挿入した状態でフランジ20との連結角部21に進入可能な内向きに突成している。より具体的には、本実施形態の場合、口縁53直下の内周面に、上述した金型における可動金型11の湾曲状成形面11cに対応する外向き湾曲状の耳挿入部54を設けている。そして、この耳挿入部54は口縁53に向かって縮径する。
【0041】
当該構成の抜き型によれば、可動刃60を下降させて打ち抜きを行う際、開口下向きに搬送されるシート成形容器の耳3が固定刃50の雌刃52内に設けた湾曲状の耳挿入部54に未変形の状態で挿入保持される。なお、口縁53の内径は耳3における膨出部3cの外径(容器の外寸)よりも小径であるため、この耳3が口縁53を通過する際、膨出部3cが内向きに変形するが、この変形は耳3の弾性力によって吸収され、通過後は、元の形状に弾性的に復元して、上述のように耳挿入部54に未変形の状態で保持される。そして、耳3が挿入された状態で、雌刃52の口縁53は耳3とフランジ20との連結角部21に位置することになり、可動刃60を真っ直ぐ下降させることで、当該連結角部21を正確に切断することができる。このように本抜き型によって連結角部21が正確に切断されることによって、図1に示したような、切断面、即ち耳3の先端3aが膨出部3cよりも周壁2側内向きに位置する耳付き蓋を得ることができる。
【0042】
なお、耳挿入部53の内面形状は、上述のように可動金型11の湾曲状成形面11c、言い換えれば耳3の膨出部3cの形状と一致させるもので、これにより耳3を圧迫させず未変形の状態で正確にフランジ20との連結角部21を切断するものである。従って、抜き型における耳挿入部53の内面形状は、本実施形態に限定されず、例えば、耳3にくの字形の膨出部を成形した場合は、これに対応して、くの字形の耳挿入部とすることができる。また、上述した実施形態では、雄刃側51を可動、雌刃52側を固定するようにしたが、雄刃側を固定し、雌刃側を上下動可能に可動するようにしてもよい。
【0043】
ところで、より安全な耳を構成する場合は、耳の先端の切断面は直角であることが好ましい。この点、上記実施形態の抜き型は、耳を未変形の状態として打ち抜くものであるため、忠実にフランジ20との連結角部21を切断すると、切断面が90度未満、即ち鋭角となることがある。もちろん、連結角部21よりも若干外側でフランジ20を切断すれば耳側の先端はほぼ直角の切断面となるが、この場合、膨出部の外寸を大きく設定しなければ耳先端が膨出部の内側に位置しなくなるため、徒に容器外寸が大きくなる。
【0044】
そこで、こうした不都合がなく、安全な耳が得られる抜き型の別実施形態を図6に示す。図6に示す抜き型では、雄刃40はその刃先41の内側に下方に突出するガイド42を設けている。雌刃は図5のものと同じである。そして、雄刃40のガイド42は、耳3の内部、即ち膨出部と周壁の間に挿入され、且つ、打ち抜き時に耳内の周壁を内側から内向きに変形させるようにしている。つまり、ガイド42を下降させることで、その先端で内向きに括れる耳の周壁側膨出部の内面に内向きの力を作用させる。これにより、耳3は、周壁側膨出部の変形につられて、折り返し基部がガイド42の先端直下に位置するように耳側の膨出部も内方に寄せられる。この結果、耳側の膨出部とフランジ20の連結角部21は鋭角の状態(アンダーカットの状態)からほぼ直角の状態となるため、この状態で雄刃40を雌刃に嵌入することで、耳3の先端切断面をフランジ20に対してほぼ90度とすることができる。
【0045】
図7は、さらなる別実施形態の抜き型を示したもので、図6の雄型を採用しつつ、雌型45の口縁46の形状を変更している。即ち、この実施形態における雌型45の口縁46は、図5・6に示した内面フレア状の口縁とはせず、刃として機能する部分を一定範囲で同一内径の肉厚な円筒状としている。従って、先鋭な口縁とした図5・6の雌刃よりも刃の耐久性を高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 蓋の天面
2 蓋の周壁
3 蓋の耳
3a 耳の先端
3b 耳の折り返し基部
3c 耳の膨出部
4 容器本体
10 固定金型
10a 周壁成形面
11 可動金型
11a フランジ支持部
11b 膨出部支持部
11c 凹状成形面
20 水平フランジ
21 フランジ
50 固定刃
51 上面支持部
52 雌刃
53 口縁
60 可動刃
61 雄刃
62 逃げ凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口周縁を周壁の外側に折り返してなり、折り返し基部と打ち抜かれた先端の間に前記先端よりも外方に膨出する膨出部を有する耳付きの容器本体または蓋をシート成形するための金型であって、開口下向きに前記容器本体の底面または蓋の天面およびその周囲に周壁を成形する凸型の固定金型と、該固定金型の周囲を上下動する可動金型とからなり、前記固定金型は、周壁成形面の下側に連続して内方に括れた前記膨出部の凹状成形面を有する一方、前記可動金型は、下降位置において前記凹状成形面で成形された前記膨出部と連続して外向きに水平なフランジを形成すると共に、上昇移動に伴って前記フランジを下方から押し上げる上面側のフランジ支持部と、前記凹状成形面とは対称に外方に膨出し、前記上昇移動のとき前記凹状成形面で成形された前記膨出部を折り返し可能に支持する内面側の膨出部支持部とを備えることを特徴としたシート成形金型。
【請求項2】
凹状成形面は湾曲状である請求項1のシート成形容器の成形金型。
【請求項3】
さらに固定金型の周壁成形面には凹状成形面の上側に連続して第二の凹状成形面を設けた請求項2記載のシート成形金型。
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れか一項記載の金型によるシート成形後に、隣合う耳付きの容器本体または蓋の間のフランジを前記耳に沿って切断するシート成形容器の抜き型であって、開口下向きに搬送されるシート成形容器の前記フランジを下方から支持する上面支持部の内側に前記耳が挿入可能な上向き開口の雌刃と、前記雌刃に嵌入可能な雄刃とからなり、前記雌刃は、口縁が挿入後の前記耳と前記フランジの連結角部に進入可能に内向きに突出することを特徴としたシート成形容器の抜き型。
【請求項5】
雌刃は、口縁の下方内周に耳の膨出部に対応する形状の耳挿入部を形成した請求項4記載のシート成形容器の抜き型。
【請求項6】
耳挿入部は、口縁に向かって縮径した湾曲状である請求項5記載のシート成形容器の抜き型。
【請求項7】
雄刃は内側に下方に突出して耳内に挿入され、打ち抜き時に耳内の周壁を内向きに変形可能なガイドを有する請求項4、5または6記載のシート成形容器の抜き型。
【請求項8】
開口周縁に耳を形成した耳付きの容器本体または蓋であって、前記耳は、開口周縁を外側に折り返してなり、折り返し基部と外側先端の間には外方に膨出する膨出部を有することを特徴としたシート成形容器。
【請求項9】
膨出部は湾曲状である請求項8記載のシート成形容器。
【請求項10】
さらに周壁にも耳の膨出部と対称位置に内方に湾曲する膨出部を設けた請求項9記載のシート成形容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−105316(P2011−105316A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259214(P2009−259214)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【特許番号】特許第4555887号(P4555887)
【特許公報発行日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592035246)株式会社山田工作所 (8)
【出願人】(591148370)吉村化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】