説明

シート搬送装置、及びシート処理装置

【課題】
本発明は、シート材の搬送異常等の後に行う復旧作業を短時間で且つ簡便に行うことができるシート搬送装置及びシート処理装置を提供する。
【解決手段】
押圧手段205により原稿載置板201を実質的に押し下げて、原稿D´の取り出しスペースを十分に確保しつつ、原稿載置板201の押し下げ動作に連動するように給送ローラ211に対向する付勢手段である分離パッド213を原稿載置板201の端部で押し下げて、分離パッド213を給送ローラ211から退避させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、紙等のシート材を搬送するシート搬送装置、及びシート処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数枚の原稿を1枚ずつ分離して搬送する原稿自動搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)を搭載した画像読取装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の画像読取装置に搭載される原稿自動搬送装置においては、原稿の搬送経路をU字形とし、給紙トレイ上に載置される原稿を搬送経路内に取り込み、原稿をU字状に反らせながら搬送するようになっている。
【0004】
また、従来の画像読取装置においては、給紙トレイとは別に装置の側面側に給紙ガイドを設け、原稿をU字形に反らせて搬送する搬送経路に対し、その給紙ガイド上から原稿を別途給送できるようになっている。
【0005】
ここで、上述した従来の画像読取装置では、紙詰まり等の搬送異常後において、復旧作業に多大な手間がかかるという問題がある。例えば、給紙ガイド側からの原稿給送時において紙詰まり等の搬送異常が生じた場合には、原稿が給紙機構(例えばローラ等)内に強固に挟持されているため、詰まった原稿が取り出し難いという問題がある。特に、比較的サイズの小さい原稿、例えば、葉書や名刺等の搬送において異常が生じた場合、その後の復旧作業が非常に手間であるという問題がある。
【0006】
また、紙詰まり等の搬送異常後においては、詰まった原稿を強引に取り出そうとすると、原稿が破れたり、給紙機構が損傷したりするおそれがある。なお、原稿が破れてしまうと、給紙機構等に残った原稿が更に取り出し難くなってしまう。
【0007】
上記の問題は、原稿読取装置に限って発生するものではなく、例えば、シート材を搬送する手段を備えた他の処理装置においても同様に発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−239255号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み、シート材の搬送異常等の後に行う復旧作業を短時間で且つ簡便に行うことができるシート搬送装置及びシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明のシート搬送装置は、シート材が載置されるシート載置板を保持するシート載置手段と、前記シート載置板上の前記シート材を装置内に搬送するシート搬送手段とを備え、前記シート搬送手段は、前記シート載置板上の前記シート材を装置内に取り込むシート取込手段と、前記シート取込手段に対向して設けられて前記シート材を前記シート取込手段に付勢する付勢手段とを有し、前記シート載置手段は、前記シート載置板をその厚み方向に可動自在に保持すると共に、前記シート載置板をその厚み方向に押圧する押圧手段を有し、前記押圧手段による前記シート載置板の押圧動作に連動して、前記シート載置板の端部で前記付勢手段を押圧して前記シート取込手段から離れる方向に動作させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するための他の態様に係る本発明のシート処理装置は、シート材が載置されるシート載置板を保持するシート載置手段と、前記シート材に所定の処理を施すシート処理手段と、前記シート載置板上の前記シート材を前記シート処理手段に搬送するシート搬送手段とを備え、前記シート搬送手段は、前記シート載置手段とは別の位置から供給される他のシート材を搬送するシート搬送経路を有すると共に、前記シート搬送経路は、折り返し部を含む経路からなり、且つ前記シート処理手段は、前記シート搬送経路の折り返し部よりも搬送方向下流側に配設され、前記シート載置手段からの前記シート材の供給経路は、前記シート搬送経路の折り返し部又はその搬送方向下流側で前記シート搬送経路と合流しており、前記シート搬送手段は、前記シート載置板上の前記シート材を装置内に取り込むシート取込手段と前記シート取込手段に対向して設けられて前記シート材を前記シート取込手段に付勢する付勢手段とを有し、前記シート載置手段は、前記シート載置板をその厚み方向に可動自在に保持すると共に、前記シート載置板をその厚み方向に押圧する押圧手段を有し、前記押圧手段による前記シート載置板の押圧動作に連動して、前記シート載置板の端部で前記付勢手段を押圧して前記シート取込手段から離れる方向に動作させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押圧手段によりシート載置板を押し下げて、シート材の取り出しスペースを十分に確保しつつ、シート載置板の押し下げ動作に連動するように付勢手段をシート載置板の端部で押し下げて、付勢手段をシート取込手段から退避させるようにしたので、シート材に加わる力を実質的に低減又は解除することができ、シート取込手段と付勢手段との間からシート材を比較的容易に取り外すことができるため、例えば、シート材の搬送異常等の後に行う復旧作業を短時間で且つ簡便に行うことができるという効果を奏する。
【0013】
特に、本発明は、シート材の搬送異常時において、装置内部へのシート材の取込口近傍でシート材が詰まった際に、その後の復旧作業を短時間で且つ簡便に行うことができるという点で優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1に係る画像読取装置の構成を示す概略断面図。
【図2】実施形態1に係る画像読取装置の要部を示す概略断面図。
【図3】実施形態1に係る画像読取装置の要部を示す斜視図。
【図4】実施形態1に係る原稿載置ユニットの概略構成を示す斜視図。
【図5】実施形態1に係る原稿載置ユニットの概略構成を示す斜視図。
【図6】実施形態1に係る原稿載置ユニットの動作を説明する概略断面図。
【図7】実施形態1に係る画像読取装置での搬送異常時の状態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る画像読取装置の構成を示す概略図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の画像読取装置1は、原稿Dを搬送しながら原稿Dの片面又は両面の画像を読み取る処理装置の一例であり、装置下部を構成する下部ユニット10と、この下部ユニット10に対して開閉する方向に回動自在に設けられる上部ユニット20とを備え、上下に二分割された構造を有している。
【0018】
例えば、本実施形態では、上部ユニット20の幅方向一端部側は、対応する下部ユニット10の幅方向一端部に対してヒンジ等からなるリンク部材30により2箇所で回動自在に連結されており、上部ユニット20が下部ユニット10に対して開閉自在となっている。具体的には、本実施形態の画像読取装置1は、原稿Dの幅方向、すなわち、搬送方向と直交する方向において上部ユニット20が開閉自在になっている。
【0019】
上部ユニット20は、上端部に設けられて複数の原稿Dを載置する原稿載置台21と、この原稿載置台21から原稿Dを略U字状に搬送する搬送経路22と、この搬送経路22の出口(開口)近傍に設けられた原稿排出台23とを有する。
【0020】
また、上部ユニット20の搬送経路22の一端側、すなわち、原稿載置台21側で原稿Dの給送口(取込口)近傍には、原稿載置台21から上部ユニット20内部への原稿Dの取込を行う取込手段となるピックアップローラ24が設けられている。
【0021】
さらに、搬送経路22のピックアップローラ24より搬送方向下流側には、給送ローラ25とこの給送ローラ25に対向する分離ローラ26とが配置されている。すなわち、ピックアップローラ24で取り込まれた原稿Dは、その下流側において給送ローラ25及び分離ローラ26で1枚ずつ分離しながら搬送されるようになっている。
【0022】
また、上部ユニット20の搬送経路22には、給送ローラ25及び分離ローラ26よりも搬送方向下流側において、2組の搬送ローラ対27,28が間隔をあけて併設されている。なお、このような上部ユニット20の搬送経路22の他端側、すなわち、原稿Dの排出口側には、搬送経路22より排出される原稿Dを受ける原稿排出台23が設けられている。この原稿排出台23は、上述した原稿載置台21の下方に位置している。
【0023】
したがって、このような搬送経路22を有する上部ユニット20では、原稿載置台21からピックアップローラ24により原稿Dが上部ユニット20内部に取り込まれ、給送ローラ25及び分離ローラ26により1枚ずつ略U字状の搬送経路22に給送され、搬送ローラ対27,28を経由して、原稿載置台21の下方に位置する原稿排出台23に1枚ずつ排出されるようになっている。
【0024】
また、本実施形態では、上部ユニット20の搬送経路22、詳細には、搬送方向が変更される折り返し部(Uターンカーブ)より少し下流側おいては、2組の搬送ローラ対27,28で挟まれた壁部に、原稿Dの一方面側の画像を主走査方向、すなわち、原稿搬送方向に対して直交する方向に読み取る第1画像読取部40が配設されている。
【0025】
第1画像読取部40は、原稿Dの幅寸法に対応する長さを有し、搬送経路22に対向する側に配置されるコンタクトガラス41と、搬送経路22(実際には搬送経路22を通過する原稿D)に光を照射する光源42と、原稿Dからの反射光を受光して原稿Dの画像を読み取るラインイメージセンサ43とで構成されている。
【0026】
また、このような第1画像読取部40に対向する側の搬送経路22の内壁には、例えば、黒色の対向部材50が設けられている。なお、この対向部材50の搬送方向下流側には、シェーディング補正のため、例えば、白色の色基準部材51が隣接して設けられている。ここでいうシェーディング補正とは、ラインイメージセンサ43により色基準部材51を読み取って光源の「光量むら」、ラインイメージセンサ43の「感度むら」をラインイメージセンサ43の画素単位で補正することをいう。
【0027】
また、上部ユニット20の搬送経路22、具体的には第1画像読取部40よりも搬送方向上流側には、搬送途中の原稿通過を検知するレジストセンサ60が配置されている。これにより、原稿Dの搬送状態が、レジストセンサ60により検知され、第1画像読取部40での原稿Dの読取動作のタイミングを図ることが可能となっている。
【0028】
例えば、第1画像読取部40での原稿Dの読取動作は、レジストセンサ60及び第1画像読取部40間の距離をLとし搬送速度をVとすると、第1画像読取部40に原稿Dが到達するL/V秒後に開始するようになっている。すなわち、本実施形態の画像読取装置では、例えば、原稿Dが第1画像読取部40に所定時間経過しても到達しなかった場合等において、異常と判断する。勿論、異常については、原稿搬送の状態検知を行うセンサ等によって検知するようにしてもよい。また、異常の種類は特に限定されないが、例えば、紙詰まり等のジャム、重送等が挙げられる。
【0029】
このような上部ユニット20が搭載される下部ユニット10は、上端面の一部がガラス板11で構成されている。具体的には、ガラス板11は、原稿Dの幅寸法に対応した長尺の第1ガラス板111と、原稿サイズに対応する大きさ寸法の第2ガラス板112とで構成されている。
【0030】
そして、このようなガラス板11の下方側には、原稿Dの画像を読み取る第2画像読取部70が設けられている。なお、この第2画像読取部70は、光源72と、ラインイメージセンサ73とで構成されている。この第2画像読取部70は、ガラス板11(詳細には第2ガラス板112)の面方向に沿って移動可能に設けられている。すなわち、第2ガラス板112上に載置される原稿Dは、第2画像読取部70が第2ガラス板112に沿って移動しながら原稿面を読み取るようになっている。
【0031】
また、このような第2画像読取部70は、待機ポジション、すなわち、第1ガラス板111の下方位置において、上述した上部ユニット20内で搬送される原稿Dの他方面を主走査方向(原稿搬送方向と直交する方向)に読み取るようになっている。
【0032】
具体的には、待機ポジションの第2画像読取部70及び第1ガラス板111に対向する上部ユニット20の下端部を搬送経路22に達するまで貫通した開口部が設けられている。なお、搬送経路22の開口部に対向する壁部には、例えば、黒色の対向部材50が設けられている。また、第1ガラス板111と第2ガラス板112との間には、シェーディング補正のため、例えば、白色の色基準部材51が原稿Dの幅寸法に対応する長さで設けられている。
【0033】
そして、第2画像読取部70は、待機ポジションにおいて、この開口部に対応する搬送経路22を原稿Dが通過する際に、その原稿Dの他方面を読み取るようになっている。これにより、本実施形態では、上部ユニット20において原稿Dを1回搬送するだけで、原稿Dの両面側の画像を読み取ることが可能となる。
【0034】
なお、実際には、第1画像読取部40、及び第2画像読取部70のそれぞれは、搬送経路22を搬送する原稿Dに光源から光を照射して原稿から反射された光をラインイメージセンサ43,73で光電変換し、図示しないA/D変換部でデジタル化処理を施し、所定の色深度の画像データを出力する。そして、図示しない画像処理部では、第1画像読取部40及び第2画像読取部70から出力された画像データに対して、シェーディング処理、原稿位置検知処理、画像補正処理等を行った後、ホストPC等に送信するようになっている。
【0035】
そして、本実施形態の画像読取装置1では、上部ユニット20を開状態、すなわち、下部ユニット10に対して傾ける方向に動作させることで、下部ユニット10の第2ガラス板112(画像読取面)が開放され、この第2ガラス板112上でも画像読取を行うことができる。
【0036】
すなわち、本実施形態では、略U字形状の搬送経路22により複数枚の原稿Dを順次搬送しながら画像読取を行うことは勿論のこと、上部ユニット20を持ち上げることで開放される画像読取面(第2ガラス板112)を介して第2画像読取部70により、適宜、原稿Dを搬送しなくても、或いは、搬送できない原稿等について直接画像の読取を実行することができる。
【0037】
なお、本実施形態の画像読取装置1では、上述したように、上部ユニット20内において原稿Dの搬送経路22が略U字形状となっており、上部ユニット20の長手方向一端部近傍で原稿Dの搬送経路22が折り返しとなっている。
【0038】
そして、本実施形態では、上部ユニット20の原稿載置台21側とは反対側の端部には、上述した原稿Dの搬送経路22の折り返し部に対応して、別の原稿D´を載置する原稿載置手段となる原稿載置ユニット200が接続されている。なお、この原稿載置ユニット200から原稿D´の給送を行う場合には、上記原稿載置台21側からの原稿Dの搬送機構(ピックアップローラ24等)の駆動は停止する。このように、原稿載置台21側からの原稿Dの搬送駆動と、原稿載置ユニット200からの原稿D´の搬送駆動とは、図示しないが、駆動切替手段により適宜切替可能となっている。
【0039】
ここで、図1、及び図2〜図7を参照し、本実施形態の画像読取装置の要部、具体的には、別の原稿D´を載置する原稿載置手段の原稿載置ユニット200について詳細に説明する。なお、図2は、図2の画像読取装置の要部を示す概略断面図である。図3は、本発明の実施形態1に係る画像読取装置の要部を示す斜視図である。図4及び図5は、原稿載置ユニットの概略構成を示す斜視図である。図6は、原稿載置ユニットの動作を説明する概略断面図である。図7は、搬送異常時の状態を示す概略図である。
【0040】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、上部ユニット20の搬送経路22に対して、原稿載置ユニット200上の原稿D´を供給する供給経路222が合流している。この供給経路222は、本実施形態では、搬送経路22の折り返し部よりも下流側の搬送方向に沿った所定の傾きで設けられている。これにより、供給経路222から搬送経路22に合流する原稿D´は、折り返し部による反りの影響を受けず、第1画像読取部40及び第2画像読取部70に向かってスムーズに搬送することができる。
【0041】
ここで、原稿載置ユニット200は、図2及び図3に示すように、上部ユニット20の端面(側面)に対して開閉自在に設けられている。そして、このような原稿載置ユニット200は、上部ユニット20の側面に対して全体が収納されるようになっている。なお、原稿載置ユニット200の収納状態においては、上部ユニット20の側面と原稿載置ユニット200の底面とが同一面となる。
【0042】
また、原稿載置ユニット200は、原稿D´を載置する原稿載置板201をその厚み方向に可動自在に保持している。例えば、本実施形態では、図2に示すように、原稿載置ユニット200上にコイル状のばね部材202が装着され、このばね部材202上に原稿載置板201が支持されている。これにより、原稿載置板201は、その厚さ方向に昇降自在となっている。さらに、図3〜図5に示すように、原稿載置ユニット200の端部、具体的には、上部ユニット20との連結側とは反対側の端部においては、内方に突出する回転軸203がそれぞれ両側に設けられている。そして、原稿載置板201は、原稿D´の取込口側、すなわち、上部ユニット20側とは反対側の基端部201aが回転軸203により回動自在に保持されている。また、このような原稿載置板201の先端部側は、幅方向両側にそれぞれ突出した一対の押圧突起部201bが設けられている。
【0043】
さらに、このような原稿載置板201の幅方向一端部、詳細には、搬送経路22側と反対側の端部で且つその幅方向一端部には、略矩形の切り欠き部204が設けられている。このような切り欠き部204には、原稿載置板201をその厚さ方向に押圧する押圧手段205が装着されている。押圧手段205は、本実施形態では、原稿載置板201の切り欠き部204に係合する係合部206と、この係合部206の端部から原稿載置板201上に突出して設けられた突出部207とからなる。
【0044】
このような押圧手段205は、係合部206を切り欠き部204に係合させた状態で、原稿載置板201の面方向で且つ上部ユニット20への原稿D´の取込方向と直交する方向に、スライド移動自在に設けられている。一方、原稿載置ユニット200の押圧手段205側とは反対側の端部には、壁部208が設けられている。これにより、原稿載置板201上に載置される原稿D´は、押圧手段205のスライド移動によって突出部207と壁部208とで挟まれ、幅方向の整列性が整えられるようになっている。
【0045】
そして、本実施形態では、押圧手段205の突出部207を押圧することにより、原稿載置板201が回転軸203を基軸としてばね部材202の弾性変形により搬送経路22側に傾斜しながら押し下げられるようになっている。すなわち、原稿載置板201は、回転軸203により回動自在に保持されているので、押圧手段205の突出部207を押圧すると、ばね部材202が弾性変形する。これにより、図6に示すように、原稿載置板201は、全体的に搬送経路22(上部ユニット20)側に傾斜しながら押し下げられるようになっている。
【0046】
なお、本実施形態では、原稿載置板201の水平面に対する傾斜角度は、図2に示すように、原稿載置板201を押圧しない状態において、搬送経路22に合流する供給経路222、及び搬送経路22の折り返し部より下流側の経路の水平面に対する傾斜角度とそれぞれ略同じ角度となるようにしている。これにより、搬送経路22に対する原稿D´のスムーズな供給搬送を実現することができる。これに対し、原稿載置板201を押圧した状態では、図6に示すように、原稿載置板201の水平面に対する傾斜角度は、搬送経路22に合流する供給経路222、及び搬送経路22の折り返し部より下流側の経路の水平面に対する傾斜角度よりも実質的に大きくなる。これにより、原稿D´の取込口が実質的に拡開されるため、詳細は後述するが、原稿D´の取り出しスペース等を十分に確保することができる。
【0047】
一方、このような原稿載置板201の上方には、図3等に示すように、原稿D´に付勢するピックアップローラ210が設けられている。さらに、このピックアップローラ210よりも搬送経路22側には、原稿D´を上部ユニット20(装置)内部に取り込むための取込手段となる給送ローラ211が配設されている。なお、ピックアップローラ210及び給送ローラ211は、回転ベルト212により相互に連結され、回転ベルト212を介して回転動力が伝達されるようになっている。
【0048】
また、図4等に示すように、給送ローラ211に対向する部分には、例えば、本実施形態では、給送ローラ211をその下方から付勢する付勢手段となる分離パッド213が配置されている。
【0049】
ここで、この分離パッド213は、給送ローラ211に当接する当接部214と、この当接部214から原稿載置板201側に向かって延設された傾斜部215とからなる。また、分離パッド213の当接部214に対向する原稿載置ユニット200の端部上には、付勢ばね217が設置されている(図2等参照)。すなわち、分離パッド213は、この付勢ばね217により昇降自在に支持され、給送ローラ211に対して所定の押圧力で付勢するよう構成されている。また、分離パッド213の傾斜部215の先端側、すなわち、原稿載置板201側の端部には、幅方向両側に突出するフランジ部216が設けられている。
【0050】
そして、上述した分離パッド213は、図6に示すように、押圧手段205による原稿載置板の押し下げに連動して、給送ローラ211から離れる方向(退避する方向)に押し下げられるようになっている。
【0051】
すなわち、本実施形態では、押圧手段205の突出部207を押圧すると、上述したように、原稿載置板201が搬送経路22側に傾斜しながら押し下げられる。この際、原稿載置板201の押圧突起部201bが分離パッド213のフランジ部216に当接して分離パッド213を連動させる。これにより、分離パッド213が給送ローラ211から退避する方向に降下するようになっている。
【0052】
このように、本実施形態の画像読取装置1では、押圧手段205(突出部207)を押圧して原稿載置板201を押し下げるようにしたので、例えば、原稿D´の搬送異常等の後に行う復旧作業を短時間で且つ簡便に行うことができる。
【0053】
例えば、図7に示すような搬送異常、詳細には、原稿D´が原稿載置板201及びピックアップローラ210の間、給送ローラ211及び分離パッド213の間、さらに搬送経路22の搬送ローラ対27の間の3箇所でそれぞれ挟持された状態で詰まった場合には、原稿D´に加わる力が非常に強くなる。このため、このように複数個所で押圧された原稿D´をそのまま取り出すことは非常に難しい。
【0054】
本実施形態では、図7のような原稿D´が詰まった状態から原稿D´を取り出す際において、押圧手段205(突出部207)を押圧して原稿載置板201を押し下げることにより、原稿D´の取込口が押圧前と比べて大きく拡開するため、原稿D´の取込口近傍で原稿D´が詰まった場合でも、原稿D´の取り出しスペースを確保でき、原稿D´を取り出し易くすることができる。
【0055】
特に、原稿D´は、ピックアップローラ210と原稿載置板201との間に挟持されているので、原稿載置板201を押し下げることにより、ピックアップローラ210から原稿D´に加わる力を低減又は解除することができるため、原稿D´を取り出し易くすることができる。
【0056】
また、本実施形態では、原稿載置板201の押し下げ動作(押圧動作)に連動するように分離パッド213を押し下げ、分離パッド213を給送ローラ211から退避させるようにしたので、給送ローラ211及び分離パッド213から原稿D´に加わる力を低減又は解除することができ、給送ローラ211と分離パッド213との間から詰まった原稿D´を取り出し易くすることができる。
【0057】
特に、本実施形態では、原稿載置ユニット200から原稿D´として名刺や葉書等の比較的小さいサイズの原稿を給送する場合において、搬送異常により原稿D´が取込口近傍で詰まった際において、その後の復旧作業を短時間で且つ簡便に行うことができる。
【0058】
また、本実施形態のように、原稿D´を取り出し易くすることで、ピックアップローラ210、給送ローラ211、及び分離パッド213の負荷を低減することができるため、これら部材の耐久性を向上することができる。なお、ピックアップローラ210等の磨耗等による劣化を低減することができるため、例えば、清音化やモータ省電力化にも有効である。
【0059】
なお、上述したように、本実施形態の画像読取装置1では、原稿載置板201を押し下げることにより、原稿D´の取込口を拡開することができるため、原稿D´の搬送異常後に限らず、通常の使用時においても、ピックアップローラ210と原稿載置板201との間に、原稿D´をセットし易くできるという効果もある。
【0060】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1について説明したが、勿論、本発明は上述の実施形態1に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、給送ローラ211に対する付勢手段として分離パッド213を例示して説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、分離ローラであってもよい。この場合においても、押圧手段により分離ローラを押し下げて、分離ローラを給送ローラ等の取込手段から退避させるようにすることで、上述した実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、上述した実施形態1では、上部ユニット20に搬送経路22を設けた場合について説明したが、勿論本発明はこれに限定されず、下部ユニットに搬送経路を設けてもよいし、上部ユニットから下部ユニットに連続する搬送経路を設けるようにしてもよい。なお、本発明は、搬送経路の形状についてもU字形状に限定されるものではない。
【0062】
さらに、上述した実施形態1では、上部ユニット20に第1画像読取部40を設け、下部ユニット10に第2画像読取部70を設けた構造例について説明したが、勿論本発明はこれに限定されず、上部ユニットだけに画像読取部を設けてもよいし、下部ユニットだけに画像読取部を設けるようにしてよい。また、各ユニットにおける画像読取部の設置位置についても特に限定されない。例えば、下部ユニット上の原稿載置面を覆う蓋部材の内部に画像読取部を設け、この画像読取部を原稿載置面に沿って移動可能に設けるようにしてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態1では、押圧手段205をスライド移動自在に設けることで原稿D´の幅方向の整列用リブを兼ねた構成例を用いて説明したが、勿論本発明はこれに限定されず、押圧手段をスライド移動させないようにしてもよい。
【0064】
さらに、上述した実施形態1では、押圧手段205を原稿載置板201の基端部201aに設けた構造例を用いて説明したが、本発明は勿論これに限定されず、押圧手段を原稿載置面の原稿取込口側に設けるようにしてもよい。これにより、付勢手段を効率的に押し下げることができる。
【0065】
また、上述した実施形態1では、押圧手段205を原稿D´の幅方向にスライド移動させて原稿D´の幅方向の整列性を整える規制手段を兼ねるようにしたが、勿論これに限定されず、例えば、原稿載置板に載置される原稿の後端側、すなわち、取込口側とは反対側の端部に押圧手段を設けると共にその押圧手段を原稿の取込方向にスライド移動自在に設けることにより、押圧手段で原稿の取込方向の整列性を整えるようにしてもよい。
【0066】
さらに、上述した実施形態1では、上部ユニット20の搬送経路22に別途、原稿D´を合流搬送させる原稿載置ユニット200に本発明を適用した場合について説明したが、勿論これに限定されず、例えば、原稿サイズに関係なく、原稿を搬送経路に取り込む取込手段を含む構成部分に本発明を適用可能である。
【0067】
なお、上述した実施形態1では、本発明のシート搬送装置を適用した一例として原稿の画像読取装置1を挙げて説明したが、本発明は、広くシート材の搬送装置、又はこのような搬送装置を搭載したシート処理装置の全般を対象としたものである。すなわち、本発明は、紙やフィルム等のシート材の搬送、画像読取、又は印刷の何れかの処理、あるいはこれら各処理のうち2つ以上組み合わせた処理を実行する各種の処理装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
D,D´ 原稿
1 画像読取装置
10 下部ユニット
20 上部ユニット
22 搬送経路
30 リンク部材
40 第1画像読取部
70 第2画像読取部
200 原稿載置ユニット
201 原稿載置板
202 ばね部材
203 回転軸
204 切り欠き部
205 押圧手段
206 係合部
207 突出部
208 壁部
210 ピックアップローラ
211 給送ローラ
212 回転ベルト
222 供給経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材が載置されるシート載置板を保持するシート載置手段と、前記シート載置板上の前記シート材を装置内に搬送するシート搬送手段とを備え、
前記シート搬送手段は、前記シート載置板上の前記シート材を装置内に取り込むシート取込手段と、前記シート取込手段に対向して設けられて前記シート材を前記シート取込手段に付勢する付勢手段とを有し、
前記シート載置手段は、前記シート載置板をその厚み方向に可動自在に保持すると共に、前記シート載置板をその厚み方向に押圧する押圧手段を有し、
前記押圧手段による前記シート載置板の押圧動作に連動して、前記シート載置板の端部で前記付勢手段を押圧して前記シート取込手段から離れる方向に動作させるようにしたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記シート搬送手段は、前記シート載置手段とは別の位置から供給される他のシート材を搬送するシート搬送経路を有すると共に、前記シート搬送経路は、折り返し部を含む経路からなり、前記シート載置手段からの前記シート材の供給経路は、前記シート搬送経路の折り返し部又はその搬送方向下流側で前記シート搬送経路と合流していることを特徴とする請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記シート材を整列する規制手段を兼ねることを特徴とする請求項1又は2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記シート載置板上に突出して設けられると共に前記シート載置板の面方向で且つ前記シート材の取込方向と直交する方向に移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記シート載置板は、前記シート材の取込口側とは反対側の端部で回動自在に保持されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記シート載置手段の端部近傍に開口する前記シート材の取込口は、前記押圧手段による前記シート載置板の押圧により押圧前と比べて大きく拡開するようにしたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記付勢手段は、複数枚の前記シート材を1枚ずつ分離する分離パッド又は分離ローラであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
シート材が載置されるシート載置板を保持するシート載置手段と、前記シート材に所定の処理を施すシート処理手段と、前記シート載置板上の前記シート材を前記シート処理手段に搬送するシート搬送手段とを備え、
前記シート搬送手段は、前記シート載置手段とは別の位置から供給される他のシート材を搬送するシート搬送経路を有すると共に、前記シート搬送経路は、折り返し部を含む経路からなり、且つ前記シート処理手段は、前記シート搬送経路の折り返し部よりも搬送方向下流側に配設され、前記シート載置手段からの前記シート材の供給経路は、前記シート搬送経路の折り返し部又はその搬送方向下流側で前記シート搬送経路と合流しており、
前記シート搬送手段は、前記シート載置板上の前記シート材を装置内に取り込むシート取込手段と前記シート取込手段に対向して設けられて前記シート材を前記シート取込手段に付勢する付勢手段とを有し、
前記シート載置手段は、前記シート載置板をその厚み方向に可動自在に保持すると共に、前記シート載置板をその厚み方向に押圧する押圧手段を有し、
前記押圧手段による前記シート載置板の押圧動作に連動して、前記シート載置板の端部で前記付勢手段を押圧して前記シート取込手段から離れる方向に動作させるようにしたことを特徴とするシート処理装置。
【請求項9】
前記シート処理手段が、前記シート材に対して画像読取、又は印刷の何れかの処理、あるいはこれら各処理のうち2つ以上組み合わせた所定の処理を実行するものであることを特徴とする請求項8記載のシート処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−254441(P2010−254441A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107496(P2009−107496)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】