説明

シート搬送装置

【課題】所定の搬送経路に沿って、シートを搬送するシート搬送装置に関し、薄型化に対応した場合であっても、付勢部材の付勢力に基づく樹脂製のカバー部材の変形を防止可能なシート搬送装置を提供する。
【解決手段】多機能機1は、シート搬送路Rに沿って原稿シートを搬送するシート搬送ユニット50を有している。シート搬送ユニット50は、ユニット本体部60と、ユニット本体部60上面に取り付けられた上部カバー70を有する。上部カバー70には、シート搬送路R上の原稿シートと接触して搬送する搬送従動ローラ80と、第1面86、第2面87、第3面88を有する金属製のプレート部材85と、搬送従動ローラ80をシート搬送路R側に付勢するコイルバネ90が取り付けられる。コイルバネ90の一端は、搬送従動ローラ80のローラ軸82に接触し、他端は、上部カバー70のシート搬送路R側の面に位置するプレート部材85の第1面86と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送経路に沿って、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多機能機やスキャナ装置等においては、シート搬送装置を有するものが知られている。当該シート搬送装置は、所定箇所に積載されたシートの画像の読み取り等を連続的に行うために、当該シートを所定の搬送経路に沿って搬送する。
【0003】
このようなシート搬送装置に関する発明として、特許文献1記載の発明が知られている。当該特許文献1に係るシート搬送装置は、樹脂により形成されたカバー部材によって、シートが搬送される搬送経路の一部を構成し、カバー部材に配設されたローラ部材の回転に伴い、シートを搬送経路に沿って搬送する。そして、特許文献1記載のシート搬送装置においては、付勢部材が、カバー部材と、ローラ部材の回転軸の間に配設されており、一端部が当該回転軸、他端部がカバー部材表面と接触することにより、ローラ部材を搬送経路側に付勢している。これにより、特許文献1記載のシート搬送装置は、当該付勢部材の付勢力によって、搬送経路上のシートに、ローラ部材を確実に接触させることができ、当該ローラ部材の回転により、確実に、シートを搬送経路に沿って搬送し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−238252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年、装置の小型化・薄型化が要望されている。当該装置の薄型化に対応する方策として、例えば、特許文献1のようなシート搬送装置においては、カバー部材の厚みを薄くすることが考えられる。カバー部材を薄く形成した場合、上述した特許文献1のような構成では、付勢部材の一端部が当該カバー部材と接触しているため、薄く形成されたカバー部材が、付勢部材の付勢力によって変形してしまう。又、特許文献1のような構成の場合、カバー部材は、シート搬送装置等の装置における外表面を構成するため、付勢力による変形は、当該装置の美観を損ねてしまう。
【0006】
本発明は、所定の搬送経路に沿って、シートを搬送するシート搬送装置に関し、薄型化に対応した場合であっても、付勢部材の付勢力に基づく樹脂製のカバー部材の変形を防止可能なシート搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るシート搬送装置は、カバー部材と、ローラ部材と、付勢部材とを有し、付勢部材によりローラ部材を付勢することで、搬送経路上のシートに対して、ローラ部材を確実に接触させ、ローラ部材の回転により、搬送経路に沿って当該シートを搬送し得る。そして、当該シート搬送装置は、カバー部材と付勢部材の間に、第1面、第2面、第3面を有して構成された金属製のプレート部材を有している。従って、付勢部材は、樹脂性であるカバー部材よりも剛性の高い金属製のプレート部材と接触するため、当該シート搬送装置は、付勢部材の付勢力によるカバー部材の変形を防止し得る。又、当該プレート部材は、カバー部材の前記搬送経路側の面に沿って延びる第1面と、第1面の一端縁から前記搬送経路側へ向かって延びた第2面と、前記第2面の端縁から、当該第2面と異なる方向へ延びた第3面により構成されている。従って、当該プレート部材は、第1面、第2面、第3面により構成されることで、付勢部材の付勢力に対して、十分な剛性を有することとなる。この結果、当該シート搬送装置は、付勢部材の付勢力によるカバー部材の変形を、プレート部材によって、確実に防止し得る。
【0008】
そして、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記プレート部材の第3面は、前記搬送経路に沿い、且つ、当該搬送経路を搬送されるシートの搬送方向下流側に向かって、前記第2面の端縁から延びている。即ち、当該プレート部材の第3面は、搬送経路を搬送されるシートを、搬送方向下流側に案内する機能を果たす。従って、シート搬送装置は、プレート部材によって、カバー部材の変形を防止すると共に、搬送経路に沿ったシートの搬送を円滑に行い得る。
【0009】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記プレート部材の第3面は、前記ローラ部材に対して搬送方向上流側に隣接して配設されている。ここで、カバー部材の薄型化により、カバー部材自体が上下方向に撓んだ場合には、その撓みによってシートを案内するガイドと搬送ローラとの位置関係がずれ、シートの搬送がスムーズに行われないことが考えられる。この点、当該シート搬送装置によれば、プレート部材によりカバー部材の変形が防止され、その結果、プレート部材(特に、第3面)とローラ部材との位置関係がずれることを防止でき、安定したシートの搬送を実現し得る。
【0010】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記カバー部材は、位置決め部と、回動軸保持部とを有している。そして、前記ローラ部材は、前記位置決め部に位置決めされた前記プレート部材の第1面に対して、前記付勢部材の一端部を接触させた状態で、前記ローラ部材の回動軸を、前記付勢部材の他端部を接触させつつ、前記回動軸保持部に保持させることにより、前記カバー部材に取り付けられる。この結果、当該シート搬送装置は、ネジ等の別部品を用いることなく、カバー部材、ローラ部材、プレート部材を、所定位置に組み付け得る。従って、当該シート搬送装置によれば、作業者等は、カバー部材、ローラ部材、プレート部材の組立、交換、分解作業を容易に行い得る。
【0011】
そして、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記プレート部材の第1面は、前記付勢部材の一端部と接触可能に延出された延出部と、前記第2面から端部までの寸法が前記延出部よりも短く形成された補強部と、を有して構成されている。従って、当該シート搬送装置によれば、プレート部材の第1面を必要最小限の大きさで形成することができ、もって、プレート部材に係るコストを低減し得る。又、当該シート搬送装置は、延出部よりも短く形成された補強部に隣接するスペースに、他の部材を配置させることができ、薄型化により限られたスペースを有効に活用し得る。
【0012】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記カバー部材は、側壁部と、補強リブを有している。側壁部は、前記搬送経路を搬送されるシートの搬送方向に直交する幅方向の両端部に、前記搬送経路側に向かって立設されている。そして、補強リブは、前記側壁部に沿って立設され、前記幅方向に亘って配設される前記プレート部材の第1面と接触する。当該シート搬送装置によれば、前記カバー部材の側壁部近傍は、当該側壁部及び補強リブが形成されていることにより、他の部分よりも高い剛性を有する。そして、当該シート搬送装置は、補強リブが前記プレート部材の第1面と接触するので、付勢部材の付勢力を、カバー部材における剛性の高い部分に分散することができ、もって、付勢部材の付勢力によるカバー部材の変形を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】多機能機の外観斜視図である。
【図2】上部カバー、カバートレイの回動状態を示す多機能機の外観斜視図である。
【図3】シート搬送ユニットを有するシートカバーの構成を示す断面図である。
【図4】シート搬送ユニットの構成を示す拡大断面図である。
【図5】上部カバーを回動した状態のシート搬送ユニットを示す拡大断面図である。
【図6】上部カバーの構成を示す外観斜視図である。
【図7】上部カバーに関する分解斜視図である。
【図8】シート搬送ユニットのローラ軸に沿った断面図である。
【図9】軸保持部近傍の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るシート搬送装置を、多機能機1のシート搬送ユニット50に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
先ず、本実施形態に係る多機能機1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明において、多機能機1使用時のユーザの位置を基準にした方向を用いて説明する。即ち、図1における左下側を前側とし、図1における右上側を後側とする。又、多機能機1を前側から見たときを左右の基準とし、図1における左上側を左側とし、右下側を右側とする。
【0016】
図1に示すように、多機能機1は、本体筐体10と、シートカバー30とを有している。本体筐体10は、多機能機1における各種機能(スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等)を実現するための各種構成部品を、当該本体筐体10内部に収容している。
【0017】
又、本体筐体10は、当該本体筐体10の前側上面に、複数の操作部を有する操作パネル11と、種々の情報を表示する液晶ディスプレイ13を有している。操作パネル11は、多機能機1に対する種々の指示を入力する際に操作される。そして、本体筐体10の前面には、給紙カセット12が脱着可能に取り付けられている。当該給紙カセット12は、被記録媒体であるシートを積層状態で収容している。
【0018】
図1〜図3に示すように、本体筐体10は、上面側にスキャナユニット20を有している。スキャナユニット20は、原稿載置台として機能するコンタクトガラス21、イメージセンサ22、スライド軸、モータ等を備えている(図3参照)。コンタクトガラス21は、所謂「プラテンガラス」であり、本体筐体10の左右方向に沿って長辺が位置するA4サイズよりもやや大きな長方形状に形成されている。
【0019】
イメージセンサ22は、所謂、密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)により構成され、コンタクトガラス21上に位置する原稿シートの画像を読み取る。当該イメージセンサ22は、主走査方向(即ち、本体筐体10における前後方向)がA4サイズの短辺に相当する長さの読取範囲を有しており、本体筐体10の左右方向に向かって伸びるスライド軸によって、左右方向の一定の範囲(A4サイズの長辺寸法に相当する範囲)内をスライド移動可能に保持されている。従って、当該多機能機1は、制御部によるモータの駆動制御に基づいて、イメージセンサ22をスライド軸に沿ってスライド移動しつつ、コンタクトガラス21上に載置された原稿シートの画像を読み取り得る。
【0020】
制御部は、CPU、ROM、RAM等を有しており、多機能機1の各機能に係る制御の中枢を担う。又、制御部は、操作パネル11と接続されている。従って、制御部は、操作パネルに対するユーザの入力操作に基づいて、ユーザ所望の制御を実行し得る。更に、制御部は、操作パネル11に対するユーザの入力操作や演算処理結果に基づいて、液晶ディスプレイ13上に種々の情報を表示し得る。
【0021】
ファクシミリ部は、スキャナユニット20により読み取った原稿シートの画像を、ネットワーク網を介して、ユーザ所望の相手先にファクシミリ通信する。又、当該ファクシミリ部は、ネットワーク網を介して、データ(ファクシミリデータ)を受信し得る。受信したファクシミリデータは、制御部によって画像形成部を制御することで、給紙カセット12内のシート等に印刷出力される。
【0022】
画像形成部は、制御部による制御に基づいて、入力された画像データを給紙カセット12内のシートへ印刷出力する。当該多機能機1は、スキャナユニット20により読み取った画像に基づく画像データを対象として、画像形成部を制御することで、コピー機能を実現する。又、当該多機能機1は、ネットワーク網を介して入力された印刷データを対象として、画像形成部を制御することで、プリンタ機能を実現する。
【0023】
ここで、シートカバー30は、本体筐体10上面の後端縁を軸に開閉自在に配設されており、閉じた場合に本体筐体10上面(即ち、コンタクトガラス21)を覆う(図3参照)。従って、シートカバー30を閉じた場合、当該シートカバー30は、コンタクトガラス21上にセットされた原稿シートをその位置に固定し得る。
【0024】
又、シートカバー30は、カバートレイ31と、シートガイド部材32と、シートガイド面33と、シート搬送ユニット50(所謂、ADF:Auto Document Feeder)とを有している。図1〜図3に示すように、カバートレイ31は、シートカバー30上面中央部に、当該カバートレイ31の一端部に形成された回動軸を中心に回動可能に設けられている。図1に示すように、カバートレイ31を閉じた状態(以下、この位置を閉鎖位置という)では、カバートレイ31は、シートカバー30の外表面を構成し、シート搬送ユニット50の外表面(即ち、後述する化粧カバーD表面)と同一平面を形成する。
【0025】
尚、カバートレイ31が閉鎖位置にある場合に、シートカバー30の外表面を構成する面を、カバートレイ31の「第1面」といい、その裏面側(閉鎖位置にある場合に内側の面)を、カバートレイ31の「第2面」という。
【0026】
又、カバートレイ31を所定量回動し、所定の使用位置(図2、図3参照)へ回動すると、一対のシートガイド部材32と、シートガイド面33が外部に露出する。シートガイド部材32は、カバートレイ31の下方に形成されたシートガイド面33上を双方とも前後方向へスライド可能に配設されている。当該シートガイド部材32は、連動機構(図示せず)により、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドするように構成されている。従って、一対のシートガイド部材32の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせ得る。これにより、当該多機能機1においては、シートガイド部材32を操作することにより、シートガイド部材32を基準にして原稿シートを整列させることができ、原稿シートが搬送方向に対して傾くのを抑制し得る。
【0027】
更に、シートガイド部材32は、夫々、仕切板32Aを有している。当該仕切板32Aは、シートガイド面33の上方において、当該シートガイド面33との間に、一定の間隔を隔てるように形成されている。
【0028】
そして、カバートレイ31が使用位置に位置する場合、カバートレイ31の第2面が上方を向き、且つ、シートガイド面33に向かって下り勾配となる傾斜をなす状態となる(図2、図3参照)。従って、カバートレイ31が使用位置にある場合、当該カバートレイ31の第2面には、複数枚の原稿シートを積層状態で載置可能な状態となる。
【0029】
尚、カバートレイ31の回動軸の下方には、凹部が形成されている。当該凹部は、カバートレイ31が回動する際に、カバートレイ31の回動軸側の端部が通過する為の空間を構成する。従って、当該カバートレイ31は、当該凹部によって、回動軸を中心に円滑に回動する。又、当該凹部によって、シートガイド面33表面とカバートレイ31の回動軸を高さ方向に接近させ得るので、シートカバー30の薄型化を図り得る。
【0030】
そして、シート搬送ユニット50は、シートカバー30の左側部分において、シートカバー30と一体に形成されており、カバートレイ31の第2面、シートガイド面33に載置された原稿シートを連続して給紙し、一枚ずつに分離して、シート搬送ユニット50内に形成された所定のシート搬送路R(図4参照)に沿って搬送する。そして、当該多機能機1は、シート搬送ユニット50により原稿シートを搬送する途中で、スキャナユニット20等により画像を読み取る方式で、原稿シートの画像を読み取り得る。
【0031】
図3に示すように、当該シート搬送路Rは、カバートレイ31の第2面、シートガイド面33から延び、シートガイド部材32の仕切板32A表面を接続するように略U字状に形成されており、シート搬送ユニット50の左右方向に沿っている。尚、本実施形態においては、シートガイド面33表面からシート搬送路Rに沿って仕切板32Aへ向かう方向を原稿シートの搬送方向という。そして、原稿シートの幅方向とは、シート搬送路Rを搬送される原稿シートの幅方向(即ち、シート搬送ユニット50における前後方向)を意味する。
【0032】
図1〜図4に示すように、シート搬送ユニット50は、ユニット本体部60と、上部カバー70により構成されている。ユニット本体部60は、シート搬送ユニット50の下部を構成し、シート搬送ユニット50の主要部として機能する。上部カバー70は、シート搬送ユニット50の上部を構成し、図1〜図5に示すように、シート搬送ユニット50左端部を中心に回動自在に軸支されている。そして、上部カバー70の内側面(下面)は、ユニット本体部60の上面と協働して、シート搬送路Rの一部を構成する。
【0033】
尚、上部カバー70の外表面(即ち、シート搬送ユニット50の上面)には、化粧カバーDが、着脱自在に取り付けられている。当該化粧カバーDは、透明樹脂により形成されており、上部カバー70の上面と協働することにより、所定の模様が形成された化粧シートを保持している。従って、当該化粧シートの模様は、透明樹脂製の化粧カバーDを介して、視認することができる。又、当該化粧シートは、化粧カバーDを上部カバー70から着脱することで、異なる模様の化粧シートに交換し得る。
【0034】
図3、図4等に示すように、ユニット本体部60は、搬送ローラ対61と、搬送駆動ローラ62と、シートホルダ63を有して構成されている。そして、当該ユニット本体部60は、内部にシート搬送路Rの一部を有している。上述したように、当該ユニット本体部60は、その上面と上部カバー70の内側面により、ユニット本体部60内部に形成されたシート搬送路Rに連続するシート搬送路Rを構成する。
【0035】
図3、図4に示すように、搬送ローラ対61は、一対のローラがシート搬送路Rを介して相互に対向するように配設されており、制御部による制御に従って、シート搬送路R上に位置する原稿シートを挟持しつつ回転駆動する。搬送駆動ローラ62は、ユニット本体部60の上面に沿って、回転自在に配設されており、ユニット本体部60の上面に沿ったシート搬送路Rを搬送される原稿シートを、シートガイド部材32の仕切板32A上面に向かって搬送する。
【0036】
そして、シートホルダ63は、搬送ローラ対61よりも搬送方向上流側に配設されており、シート搬送路R上の原稿シートを、コンタクトガラス21側に押し当てる。ここで、当該多機能機1においては、シート搬送ユニット50を用いて原稿シートの画像を読み取る場合に、イメージセンサ22は、シートホルダ63の下方に位置する。従って、当該多機能機1は、シートホルダ63下方を通過する原稿シートから、コンタクトガラス21を介して、イメージセンサ22により画像を読み取ることができる。この時、当該原稿シートは、シートホルダ63により、コンタクトガラス21側へ押圧されているため、より高精度で画像内容を読み取り得る。
【0037】
上述したように、上部カバー70は、シート搬送ユニット50の上部を構成し、シート搬送ユニット50左端部を中心に回動自在に軸支されている。そして、上部カバー70の内側面(下面)は、ユニット本体部60の上面と協働して、シート搬送路Rの一部を構成する。上部カバー70は、側壁部71、ガイドリブ72、位置決め部75を有しており、搬送従動ローラ80、プレート部材85、コイルバネ90が取り付けられる(図4、図5、図6参照)。
【0038】
側壁部71は、図6、図7に示すように、上部カバー70の前側端縁部及び後側端縁部(図6、図7中、左上側端縁及び右下側端縁)に沿って立設されており、シート搬送路R側(図6、図7中、上方向)に向かって突出している。従って、当該側壁部71は、上部カバー70の他の部分(例えば、中央部分)よりも、高い剛性を有している。
【0039】
ガイドリブ72は、上部カバー70の内側面に一定間隔を隔ててシート搬送路Rに向かって立設されており(図6、図7参照)、その端面は、所定の円弧を描くように形成されている。シート搬送路Rを搬送される原稿シートは、当該ガイドリブ72の端面に接触することにより、所定の円弧を描くようにガイドされつつ、搬送駆動ローラ62に向かって搬送される。又、上部カバー70は、当該ガイドリブ72の端面によって、シート搬送路Rを搬送される原稿シートと接触する為、当該原稿シートとの接触面積を小さくし得る。これにより、当該シート搬送ユニット50は、摩擦の影響を低減しつつ、原稿シートをシート搬送路Rに沿って搬送し得る。
【0040】
位置決め部75は、上部カバー70において、ユニット本体部60における搬送駆動ローラ62の配設位置と対向し、且つ、原稿シートの幅方向(多機能機1の前後方向)に亘る一定の範囲を区画するように立設されたリブにより構成される。当該位置決め部75は、後述するプレート部材85を所定位置に位置決めする機能を果たす。
【0041】
そして、位置決め部75には、軸保持部76、バネ保持部77、補強リブ78が形成されている。図6、図7に示すように、軸保持部76は、位置決め部75において、各側壁部71近傍に当該側壁部71に沿って立設形成されており、シート搬送路Rに向かって延びる溝部を介して、後述する搬送従動ローラ80のローラ軸82の端部を、夫々回転自在に保持する(図9参照)。
【0042】
バネ保持部77は、位置決め部75において、シート搬送路Rの幅方向(多機能機1の前後方向)に沿って、一定の間隔を隔てた2箇所に立設されており(図6、図7参照)、後述するコイルバネ90を挿通することにより、当該コイルバネ90の配設位置を位置決めしつつ保持する(図4参照)。
【0043】
補強リブ78は、位置決め部75において、各側壁部71及び軸保持部76近傍に当該側壁部71に沿って立設形成されたリブであり(図7参照)、シート搬送路Rに向かって若干量突出している(図9参照)。
【0044】
続いて、上部カバー70に取り付けられる搬送従動ローラ80、プレート部材85、コイルバネ90の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図4、図5に示すように、搬送従動ローラ80は、搬送駆動ローラ62とシート搬送路Rを介して対向する位置に回転自在に配設され、当該搬送駆動ローラ62と協働して、シート搬送路R上の原稿シートを、搬送方向下流側へ搬送する。
【0045】
当該搬送従動ローラ80は、ローラ本体部81と、ローラ軸82により構成されている。ローラ本体部81は、シート搬送路R上の原稿シートと接触する部分であり、円柱状のゴム等により構成される。ローラ軸82は、搬送従動ローラ80の回転軸を構成し、シート搬送路Rの幅方向に亘って延びる軸部材である。図6、図7に示すように、当該ローラ軸82の両端部は、上述した軸保持部76によって回転自在に保持されている。又、当該搬送従動ローラ80において、ローラ本体部81は、一定の間隔を隔てた3箇所において、ローラ軸82の外周に配設される。
【0046】
コイルバネ90は、搬送従動ローラ80をシート搬送路R側に向かって付勢する付勢部材であり、上部カバー70とローラ軸82の間に配設される。上述したように、コイルバネ90は、位置決め部75の2箇所に形成されたバネ保持部77によって挿通されることにより、所定の2箇所に配設される(図6〜図8参照)。
【0047】
プレート部材85は、第1面86と、第2面87と、第3面88とを有する金属製の板状部材であり、図6、図7に示すように、上部カバー70の位置決め部75に配設される。第1面86は、位置決め部75の内部において、コイルバネ90と上部カバー70の間に位置し、上部カバー70の内側面と接触するように延びたプレート部材85の一平面である。当該第1面86は、延出部86Aと、補強部86Bを有している。延出部86Aは、位置決め部75におけるバネ保持部77の形成位置に対応する部分を、所定量延出して構成される。従って、延出部86Aは、コイルバネ90の一端部と接触する(図6、図8参照)。補強部86Bは、位置決め部75におけるバネ保持部77の形成位置以外の部分を、延出部86Aよりも少なく延出して構成される。
【0048】
図5〜図9に示すように、第2面87は、第1面86(即ち、延出部86A及び補強部86B)の搬送方向上流側の端縁から、シート搬送路Rに向かって延出されたプレート部材85の一平面である。当該第2面87は、当該シート搬送路Rを越えるまで延出されるものではなく、シート搬送路R近傍(例えば、ガイドリブ72の端面近傍)まで延出される。第3面88は、第2面87のシート搬送路R側の端縁から、シート搬送路Rに沿って延出されたプレート部材85の一平面である。図4、図5に示すように、当該第3面88は、位置決め部75近傍のガイドリブ72の端縁が延びる方向に沿って延出されている。又、第3面88の先端は、ローラ本体部81近傍まで延び、シート搬送路Rの上流側から搬送されてくる原稿シートを、ローラ本体部81と搬送駆動ローラ62とのニップ位置に向けて案内する。
【0049】
次に、上部カバー70に対する搬送従動ローラ80、プレート部材85、コイルバネ90の取付について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図5に示すように、先ず、プレート部材85が、上部カバー70の位置決め部75内に取り付けられる。上述したように、位置決め部75は、リブにより区画されているため、プレート部材85は、上部カバー70における所定位置に位置決めされる。又、プレート部材85の第1面を構成する延出部86Aには、バネ保持部77に対応する挿通孔が形成されている(図7参照)。従って、プレート部材85は、延出部86Aの挿通孔をバネ保持部77で挿通することによっても、上部カバー70における所定位置に位置決めされる。これにより、プレート部材85の第1面は、上部カバー70の内側面(つまり、シート搬送路R側の面)と接触する。より具体的には、プレート部材85の第1面86における原稿シートの幅方向両端部分が、上部カバー70の位置決め部75内において、補強リブ78の先端部に接触する(図9参照)。
【0050】
位置決め部75にプレート部材85を位置決めした後、コイルバネ90が、バネ保持部77に配置される。具体的には、コイルバネ90は、当該コイルバネ90をバネ保持部77によって挿通することで、プレート部材85の延出部86A上に位置決めされる。従って、当該コイルバネ90の一端部は、バネ保持部77によって位置決めされているため、プレート部材85の第1面86である延出部86Aと接触する(図4、図6、図8参照)。
【0051】
そして、位置決め部75内にプレート部材85及びコイルバネ90を位置決めした状態で、搬送従動ローラ80が、軸保持部76を介して上部カバー70に取り付けられる。図6等に示すように、バネ保持部77の形成位置は、搬送従動ローラ80におけるローラ本体部81の間(即ち、ローラ軸82部分)に対応するため、コイルバネ90の他端部は、搬送従動ローラ80のローラ軸82と接触する。
【0052】
ローラ軸82の両端部を夫々、上部カバー70の軸保持部76に形成された溝部にはめ込むと、搬送従動ローラ80は、ローラ軸82に対する付勢力と、軸保持部76の協働により、位置決め部75に対してシート搬送路R側において、シート搬送路Rの幅方向に亘って延びるように位置決めされると共に、回転可能に軸支される(図6等参照)。
【0053】
つまり、前記搬送従動ローラ80は、前記位置決め部75に位置決めされた前記プレート部材85の第1面86に対して、前記コイルバネ90の一端部を接触させた状態で、前記搬送従動ローラ80のローラ軸82を、前記コイルバネ90の他端部を接触させつつ、前記軸保持部76に保持させることにより、前記上部カバー70に取り付けられる。そして、上部カバー70に対して、搬送従動ローラ80、プレート部材85、コイルバネ90を取り付ける際に、ネジ等の別部材を用いることはない。従って、多機能機1によれば、作業者等は、上部カバー70に対する、搬送従動ローラ80、プレート部材85、コイルバネ90の組立、交換、分解作業を容易に行い得る。
【0054】
図4等に示すように、本実施形態に係る多機能機1において、コイルバネ90は、搬送従動ローラ80のローラ軸82と、プレート部材85の第1面86の間に配設されているので、当該多機能機1は、搬送従動ローラ80を、シート搬送路Rを介して、搬送駆動ローラ62に向かって付勢し得る。この結果、多機能機1は、シート搬送路R上に位置する原稿シートに対して、搬送従動ローラ80のローラ本体部81を確実に接触させることができ、搬送従動ローラ80と搬送駆動ローラ62により、シート搬送路R上の原稿シートを挟持しつつ回転駆動することで、シート搬送路Rに沿ってシートを搬送し得る。
【0055】
ここで、プレート部材85は、第1面86、第2面87、第3面88により構成されている金属製のプレート部材であるため、樹脂製の上部カバー70よりも高い剛性を有している。従って、コイルバネ90の付勢力は、プレート部材85に作用することになるため、当該多機能機1は、コイルバネ90の付勢力による上部カバー70の変形を防止し得る。この結果、当該多機能機1によれば、上部カバー70の厚みを薄くした場合であっても、コイルバネ90の付勢力による上部カバー70の変形を防止し得るので、多機能機1の小型化・薄型化に対応し得る。
【0056】
又、プレート部材85の第3面88は、位置決め部75近傍のガイドリブ72の端縁が延びる方向に沿って、搬送方向下流側へ延出されている(図4参照)。即ち、当該プレート部材85の第3面88は、シート搬送路Rを搬送される原稿シートを、搬送方向下流側に案内する機能を果たす。従って、当該多機能機1は、プレート部材85によって、上部カバー70の変形を防止すると共に、シート搬送路Rに沿った原稿シートの搬送を円滑に行い得る。
【0057】
又、プレート部材85の第3面88は、搬送従動ローラ80に対して、搬送方向上流側に隣接して配設される。ここで、上部カバー70の薄型化により上部カバー70自体が上下方向に撓んだ場合には、その撓みによって原稿シートを案内するガイドと搬送従動ローラ80や搬送駆動ローラ62との位置関係がずれ、原稿シートの搬送がスムーズに行われないことが考えられる。この点、本実施形態に係る多機能機1によれば、プレート部材85により上部カバー70の変形を防止し得る。これにより、当該多機能機1は、プレート部材85と、搬送従動ローラ80や搬送駆動ローラ62との位置関係にずれが生じることを防止することができ、もって、安定した原稿シートの搬送を実現し得る。
【0058】
更に、プレート部材85の第1面86は、延出部86Aと、補強部86Bにより構成されている(図7等参照)。延出部86Aは、バネ保持部77によって挿通される挿通孔を有している為、当該バネ保持部77に取り付けられるコイルバネ90の一端部と確実に接触する。そして、補強部86Bを形成することにより、シート搬送路Rの幅方向全体に、第1面86が存在することとなり、プレート部材85の剛性を高めることができる。又、補強部86Bにおける延出量は、延出部86Aにおける延出量よりも小さいため、プレート部材85の第1面86を必要最小限の大きさで形成することができ、もって、プレート部材85に係るコストを低減し得る(図6、図7参照)。
【0059】
更に、プレート部材85の第1面における原稿シートの幅方向に沿った両端部は、夫々、上部カバー70の側壁部71近傍に形成された補強リブ78と接触する。ここで、側壁部71は、上部カバー70の幅方向端部において、シート搬送路R側に向かって立設形成されている為、当該側壁部71近傍の剛性は、上部カバー70の他の部分よりも高い。又、補強リブ78は、夫々、側壁部71に沿って立設されている為、側壁部71近傍の剛性を更に高め得る。そして、当該多機能機1においては、補強リブ78がプレート部材85の第1面86と接触するので、コイルバネ90の付勢力を、上部カバー70における剛性の高い部分に分散することができ、もって、コイルバネ90の付勢力による上部カバー70の変形を防止し得る。
【0060】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、本発明に係るシート搬送装置を、多機能機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ADFを有するスキャナ装置に適用することも可能である。
【0061】
又、本実施形態においては、搬送従動ローラ80は、搬送駆動ローラ62と共に、シート搬送路R上の原稿シートを挟持・搬送するように構成していたが、この構成に限定されるものではない。即ち、コイルバネ90の付勢力により、搬送従動ローラ80がシート搬送路R側に付勢されていれば、シート搬送路Rの他方の面にローラが配設されている必要はなく、平滑な搬送路面であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 多機能機
30 シートカバー
50 シート搬送ユニット
60 ユニット本体部
62 搬送駆動ローラ
70 上部カバー
80 搬送従動ローラ
82 ローラ軸
85 プレート部材
86 第1面
87 第2面
88 第3面
90 コイルバネ
R シート搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが搬送される搬送経路の一部を構成し、樹脂により形成されたカバー部材と、
前記カバー部材における前記搬送経路側の面に回転自在に配設され、前記シートを搬送経路に沿って搬送するローラ部材と、
前記カバー部材と前記ローラ部材の回転軸との間に配設され、前記ローラ部材の回転軸と一端部が当接することにより、前記ローラ部材を前記搬送経路側へ付勢する付勢部材と、を有するシート搬送装置であって、
前記カバー部材と前記付勢部材の間に配設される金属製のプレート部材を有し、
当該プレート部材は、
前記カバー部材の前記搬送経路側の面に沿って延び、前記付勢部材の他端部と接触する第1面と、
前記第1面の一端縁から前記搬送経路側へ向かって延びた第2面と、
前記第2面の端縁から、当該第2面と異なる方向へ延びた第3面と、を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート搬送装置であって、
前記第3面は、
前記搬送経路に沿い、且つ、当該搬送経路を搬送されるシートの搬送方向下流側に向かって、前記第2面の端縁から延びている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載のシート搬送装置であって、
前記第3面は、
前記ローラ部材に対して、前記搬送方向上流側に隣接して配設されている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のシート搬送装置であって、
前記カバー部材は、
当該カバー部材の搬送経路側において、前記プレート部材の第1面を着脱可能に位置決めする位置決め部と、
前記位置決め部から前記搬送経路方向へ所定寸法離間した位置で、前記ローラ部材の回動軸を回転自在に保持する回動軸保持部と、を有し、
前記ローラ部材は、
前記位置決め部に位置決めされた前記プレート部材の第1面に対して、前記付勢部材の一端部を接触させた状態で、前記ローラ部材の回動軸を、前記付勢部材の他端部を接触させつつ、前記回動軸保持部に保持させることにより、前記カバー部材に取り付けられる
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のシート搬送装置であって、
前記プレート部材の第1面は、
前記付勢部材の一端部と接触可能に延出された延出部と、
前記第2面から端部までの寸法が前記延出部よりも短く形成された補強部と、を有して構成されている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のシート搬送装置であって、
前記カバー部材は、
前記搬送経路を搬送されるシートの搬送方向に直交する幅方向の両端部に、前記搬送経路側に向かって立設された側壁部と、
前記側壁部に沿って立設され、前記幅方向に亘って配設される前記プレート部材の第1面と接触する補強リブとを有する
ことを特徴とするシート搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214263(P2012−214263A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79515(P2011−79515)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】