シート搬送装置
【課題】多数の突部を外周面に有するローラによって、所定の搬送経路に沿ってシートを搬送するシート搬送装置に関し、シートの巻き込みによるジャムの発生を防止しつつ、シートの見栄えに与える影響を低減し得るシート搬送装置を提供する。
【解決手段】多機能機は、シート搬送路に沿って原稿シートを搬送するシート搬送ユニットを有している。シート搬送ユニットは、ユニット本体部と、上部カバー７０を有する。上部カバー７０には、搬送従動ローラが回転可能に軸支されており、当該搬送従動ローラを基準として搬送方向下流側には、複数の逆走防止リブ７５が形成されている。搬送従動ローラは、ローラ軸に対して、多数の突部を有する複数の当接部を、間隔を隔てて備えている。逆走防止リブ７５は、搬送方向下流側であって、シート搬送路側から上部カバー７０の第１面に向かって傾斜した傾斜面７６を有している。
【解決手段】多機能機は、シート搬送路に沿って原稿シートを搬送するシート搬送ユニットを有している。シート搬送ユニットは、ユニット本体部と、上部カバー７０を有する。上部カバー７０には、搬送従動ローラが回転可能に軸支されており、当該搬送従動ローラを基準として搬送方向下流側には、複数の逆走防止リブ７５が形成されている。搬送従動ローラは、ローラ軸に対して、多数の突部を有する複数の当接部を、間隔を隔てて備えている。逆走防止リブ７５は、搬送方向下流側であって、シート搬送路側から上部カバー７０の第１面に向かって傾斜した傾斜面７６を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、所定の搬送経路に沿って、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、多機能機やスキャナ装置等においては、シート搬送装置を有するものが知られている。当該シート搬送装置は、所定の搬送経路に沿った位置に回転可能に軸支されたローラを有しており、当該ローラの回転によって、シートを搬送経路に沿って搬送するように構成されている。
【０００３】
このようなシート搬送装置に関する発明として、特許文献１記載の発明が知られている。当該特許文献１に係るシート搬送装置は、カバーと、当該カバーに回転可能に配設され、多数の突起を周面に備える排出ローラを有している。そして、当該シート搬送装置は、排出ローラを回転させることで、シートを搬送経路に沿って搬送し、排出トレイに排出する。又、当該特許文献１に係るシート搬送装置は、排出ローラの回転に伴う突起の移動によって、搬送ローラ近傍に位置するシートの後端部を、搬送方向下流側へ蹴り出すように構成されている。これにより、当該シート搬送装置は、搬送方向下流側における排出ローラ近傍から、シートを、更に下流側へ向かって搬送し、排出トレイへ排出し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００９−２０５０８５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、特許文献１記載のシート搬送装置のように、排出ローラの外周面に多数の突起を形成した場合であっても、当該排出ローラに対して搬送方向下流側の状況（即ち、排出トレイ上におけるシートの積載状況等）により、シートを十分に搬送方向下流側に搬送することができずに、シートの後端が当該排出ローラ近傍に位置したままになってしまう場合があった。
【０００６】
多数の突起を有する排出ローラの下流側近傍に、シートの後端が位置する場合、当該シートの後端は、当該排出ローラの回転に伴う多数の突起の移動によって、搬送経路から離間し、カバー側に接近する方向に移動してしまうことがある。そして、当該排出ローラは、搬送経路側でシートを搬送方向へ搬送するように回転している為、当該排出ローラとカバーとの間にシートが位置した場合、前記搬送方向と逆方向へシートを搬送してしまう。即ち、シート搬送装置は、多数の突起を有する排出ローラの下流側近傍に、シートの後端が位置する場合、「シートの逆走に起因するシートの巻き込み」が発生する場合があり、当該シート搬送装置におけるジャムが生じてしまう場合があった。
【０００７】
当該特許文献１のようなシート搬送装置において、上述のジャム等の不具合を防止する為には、少なくとも、「排出ローラとカバーとの間へのシートの移動を制限すること」「シート後端部を、確実に、排出ローラ近傍から下流側に移動させること」の何れかが必要となる。
【０００８】
ここで、「排出ローラとカバーの間へのシートの移動を制限」する構成として、当該排出ローラの下流側に、カバー表面から搬送経路に向かって突出するリブを形成することが考えられる。このようなリブを形成することで、排出ローラの回転に伴う突起の移動によって、シートの後端が、排出ローラとカバーの間に向かって移動したとしても、当該シートの移動は、当該リブとの接触によって制限され、シートの巻き込みに基づくジャムの発生を防止し得る。
【０００９】
このようなリブを形成した場合、シート後端は、当該排出ローラの回転に伴う突起の移動によって当該リブに接触し、リブとの接触により搬送経路側に戻ることになる。つまり、シート後端が排出ローラ近傍に位置し続けていれば、当該シート後端は、排出ローラの回転に伴う突起の移動によって、断続的にリブと接触してしまう。この結果、当該シート後端部が、リブとの接触による影響（例えば、リブとの接触による損傷等）を受け、当該シートの見栄えを低下させてしまう場合がある。
【００１０】
本発明は、多数の突部を外周面に有するローラによって、所定の搬送経路に沿ってシートを搬送するシート搬送装置に関し、シートの巻き込みによるジャムの発生を防止しつつ、シートの見栄えに与える影響を低減し得るシート搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の一側面に係るシート搬送装置は、カバー部材と、ローラ部材と、排出トレイと、を有し、シートを搬送経路に沿って、所定の搬送方向へ搬送し、当該シートを排出トレイへ排出する。ローラ部材は、ローラ軸によって、複数の当接部を相互に間隔を隔てて保持して構成されており、各当接部は、外周面に多数の突部を有している。そして、カバー部材は、前記搬送経路と直交する軸方向において、前記ローラ部材におけるローラ軸のみが存在する部分の前記搬送方向下流側に、リブを有している。当該リブは、カバー部材の第１面から前記搬送経路に向かって立設されている。即ち、当該リブは、ローラ部材の搬送方向下流側において、カバー部材の第１面とローラ部材の間の空間への移動経路を遮っている。これにより、当該シート搬送装置は、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシートの巻き込みや、ジャムの発生を防止し得る。又、当該リブは、傾斜面を有しており、当該傾斜面は、前記第１面に対して鉛直な鉛直方向（即ち、第１面に対して鉛直な鉛直成分のみを考慮した場合）において、前記搬送経路側から前記第１面に近接する方向であって、前記搬送方向下流側へ傾斜している。ここで、シート後端は、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によって、搬送経路側から第１面へ向かう方向に移動し、リブの傾斜面に接触する。この移動に伴い当該シートがリブに及ぼす力は、前記鉛直方向の成分を含んでおり、当該リブの傾斜面は上述のように構成されているので、傾斜面がシートに及ぼす反力は、搬送方向下流側の排出トレイへ向かう。即ち、当該シート搬送装置は、リブの傾斜面により、シート後端部の移動による力の反力を、当該シートを搬送方向下流側へ移動させる力として作用させ、もって、シート後端部を、ローラ近傍から更に下流側（排出トレイ側）に向かって移動させ得る。この結果、当該シート搬送装置は、この点においても、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシートの巻き込みや、ジャムの発生を防止し得る。
【００１２】
そして、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記リブは、前記当接部の最も搬送方向下流側に位置する表面に沿って、軸方向に延びた延長線上に位置する前記傾斜面上に、第１点を有する。即ち、第１点は、搬送方向に沿った観点で考察した場合に、当該ローラ部材の回転に伴う突部の移動によって、最も大きく第１面に対して近接・離間するように移動するシート後端部が接触する傾斜面上の点を意味する。そして、当該リブは、鉛直方向における所定の条件を満たすことによって、前記軸方向において、前記第１点が当該リブに最も近い当接部の端面から離間した位置となるように、前記カバー部材の第１面に立設されている。ここで、シートの後端部は、前記軸方向に略沿って延びており、当該ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシート後端部の移動量を、軸方向に沿った観点で考察すると、当接部及び突部と接触する部分が、第１面に対する移動量の最も大きい部分であり、当接部から軸方向に離間する程、第１面に対する移動量が小さくなる。そして、この移動量が大きい程、リブの傾斜面と接触した場合に、シートの後端部に損傷等の影響が生じる蓋然性が高くなる。つまり、当該シート搬送装置は、リブの傾斜面上でシート後端部に損傷等の影響を最も与え得る第１点を、軸方向に所定距離以上離間させることができるので、リブの傾斜面との接触によるシート後端部の損傷等の影響を最低限に抑え得る。
【００１３】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記リブの傾斜面は、前記第１面と平行な平面において、前記軸方向に対して斜めに延びている。シートの後端部は、略軸方向に延びている為、リブの傾斜面は、前記第１面と平行な平面において、前記シートの後端部に対しても斜めに延びる。従って、当該シート搬送装置によれば、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によって、シートの後端部がリブの傾斜面に断続的に接触する場合であっても、シートを搬送方向下流側に少しでも移動すれば、シート後端部における異なる位置を、リブの傾斜面と接触させ得る。これにより、シート後端部において、リブの傾斜面と接触する部分を分散させることができるので、当該シート搬送装置は、リブの傾斜面との接触に起因するシート後端部の見栄えの低下を軽減し得る。
【００１４】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記カバー部材は、前記ローラ部材を構成するローラ軸における両端部分と、当該ローラ軸における中央部分において、当該ローラ部材よりも搬送方向下流側に、夫々、前記リブを有している。即ち、当該シート搬送装置によれば、ローラ部材の搬送方向下流側において、シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態（例えば、シートが斜行していた場合等）であっても、当該シートの後端部は、ローラ軸における両端部分、中央部分の何れかに位置するリブと接触する。従って、当該シート搬送装置は、ローラ部材の搬送方向下流側において、シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態であっても、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシートの巻き込みや、ジャムの発生を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】多機能機の外観斜視図である。
【図２】上部カバー、カバートレイの回動状態を示す多機能機の外観斜視図である。
【図３】シート搬送ユニットを有するシートカバーの構成を示す断面図である。
【図４】シート搬送ユニットの構成を示す拡大断面図である。
【図５】上部カバーに対して、搬送従動ローラ、プレート部材、コイルバネを取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【図６】上部カバーの構成を示す外観斜視図である。
【図７】上部カバーの構成を示す平面図である。
【図８】上部カバーの搬送方向に沿った断面を示す断面図である。
【図９】上部カバーの軸方向に沿った断面を示す断面図である。
【図１０】当接部と逆走防止リブの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
以下、本発明に係るシート搬送装置を、多機能機１のシート搬送ユニット５０に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００１７】
先ず、本実施形態に係る多機能機１の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明において、多機能機１使用時のユーザの位置を基準にした方向を用いて説明する。即ち、図１における左下側を前側とし、図１における右上側を後側とする。又、多機能機１を前側から見たときを左右の基準とし、図１における左上側を左側とし、右下側を右側とする。
【００１８】
図１に示すように、多機能機１は、本体筐体１０と、シートカバー３０とを有している。本体筐体１０は、多機能機１における各種機能（スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等）を実現するための各種構成部品を、当該本体筐体１０内部に収容している。
【００１９】
又、本体筐体１０は、当該本体筐体１０の前側上面に、複数の操作部を有する操作パネル１１と、種々の情報を表示する液晶ディスプレイ１３を有している。操作パネル１１は、多機能機１に対する種々の指示を入力する際に操作される。そして、本体筐体１０の前面には、給紙カセット１２が脱着可能に取り付けられている。当該給紙カセット１２は、被記録媒体であるシートを積層状態で収容している。
【００２０】
図１〜図３に示すように、本体筐体１０は、上面側にスキャナユニット２０を有している。スキャナユニット２０は、原稿載置台として機能するコンタクトガラス２１、イメージセンサ２２、スライド軸、モータ等を備えている（図３参照）。コンタクトガラス２１は、所謂「プラテンガラス」であり、本体筐体１０の左右方向に沿って長辺が位置するＡ４サイズよりもやや大きな長方形状に形成されている。
【００２１】
イメージセンサ２２は、所謂、密着型イメージセンサ（ＣＩＳ：Contact Image Sensor）により構成され、コンタクトガラス２１上に位置する原稿シートの画像を読み取る。当該イメージセンサ２２は、主走査方向（即ち、本体筐体１０における前後方向）がＡ４サイズの短辺に相当する長さの読取範囲を有しており、本体筐体１０の左右方向に向かって伸びるスライド軸によって、左右方向の一定の範囲（Ａ４サイズの長辺寸法に相当する範囲）内をスライド移動可能に保持されている。従って、当該多機能機１は、制御部によるモータの駆動制御に基づいて、イメージセンサ２２をスライド軸に沿ってスライド移動しつつ、コンタクトガラス２１上に載置された原稿シートの画像を読み取り得る。
【００２２】
制御部は、ＣＰＵ、ＲＯＭ、ＲＡＭ等を有しており、多機能機１の各機能に係る制御の中枢を担う。又、制御部は、操作パネル１１と接続されている。従って、制御部は、操作パネルに対するユーザの入力操作に基づいて、ユーザ所望の制御を実行し得る。更に、制御部は、操作パネル１１に対するユーザの入力操作や演算処理結果に基づいて、液晶ディスプレイ１３上に種々の情報を表示し得る。
【００２３】
ファクシミリ部は、スキャナユニット２０により読み取った原稿シートの画像を、ネットワーク網を介して、ユーザ所望の相手先にファクシミリ通信する。又、当該ファクシミリ部は、ネットワーク網を介して、データ（ファクシミリデータ）を受信し得る。受信したファクシミリデータは、制御部によって画像形成部を制御することで、給紙カセット１２内のシート等に印刷出力される。
【００２４】
画像形成部は、制御部による制御に基づいて、入力された画像データを給紙カセット１２内のシートへ印刷出力する。当該多機能機１は、スキャナユニット２０により読み取った画像に基づく画像データを対象として、画像形成部を制御することで、コピー機能を実現する。又、当該多機能機１は、ネットワーク網を介して入力された印刷データを対象として、画像形成部を制御することで、プリンタ機能を実現する。
【００２５】
ここで、シートカバー３０は、本体筐体１０上面の後端縁を軸に開閉自在に配設されており、閉じた場合に本体筐体１０上面（即ち、コンタクトガラス２１）を覆う（図３参照）。従って、シートカバー３０を閉じた場合、当該シートカバー３０は、コンタクトガラス２１上にセットされた原稿シートをその位置に固定し得る。
【００２６】
又、シートカバー３０は、カバートレイ３１と、シートガイド部材３２と、シートガイド面３３と、シート搬送ユニット５０（所謂、ADF：Auto Document Feeder）とを有している。図１〜図３に示すように、カバートレイ３１は、シートカバー３０上面中央部に、当該カバートレイ３１の一端部に形成された回動軸を中心に回動可能に設けられている。図１に示すように、カバートレイ３１を閉じた状態（以下、この位置を閉鎖位置という）では、カバートレイ３１は、シートカバー３０の外表面を構成し、シート搬送ユニット５０の外表面（即ち、後述する化粧カバーＤ表面）と同一平面を形成する。
【００２７】
又、カバートレイ３１を所定量回動し、所定の使用位置（図２、図３参照）へ回動すると、一対のシートガイド部材３２と、シートガイド面３３が外部に露出する。シートガイド部材３２は、カバートレイ３１の下方に形成されたシートガイド面３３上を双方とも前後方向へスライド可能に配設されている。当該シートガイド部材３２は、連動機構（図示せず）により、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドするように構成されている。従って、一対のシートガイド部材３２の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせ得る。これにより、当該多機能機１においては、シートガイド部材３２を操作することにより、シートガイド部材３２を基準にして原稿シートを整列させることができ、原稿シートが搬送方向に対して傾くのを抑制し得る。
【００２８】
更に、シートガイド部材３２は、夫々、仕切板３２Ａを有している。当該仕切板３２Ａは、シートガイド面３３の上方において、当該シートガイド面３３との間に、一定の間隔を隔てるように形成されている。
【００２９】
そして、カバートレイ３１が使用位置に位置する場合、カバートレイ３１の第２面が上方を向き、且つ、シートガイド面３３に向かって下り勾配となる傾斜をなす状態となる（図２、図３参照）。従って、カバートレイ３１が使用位置にある場合、当該カバートレイ３１の第２面には、複数枚の原稿シートを積層状態で載置可能な状態となる。
【００３０】
尚、カバートレイ３１の回動軸の下方には、凹部が形成されている。当該凹部は、カバートレイ３１が回動する際に、カバートレイ３１の回動軸側の端部が通過する為の空間を構成する。従って、当該カバートレイ３１は、当該凹部によって、回動軸を中心に円滑に回動する。又、当該凹部によって、シートガイド面３３表面とカバートレイ３１の回動軸を高さ方向に接近させ得るので、シートカバー３０の薄型化を図り得る。
【００３１】
そして、シート搬送ユニット５０は、シートカバー３０の左側部分において、シートカバー３０と一体に形成されており、カバートレイ３１の第２面、及びシートガイド面３３に載置された原稿シートを連続して給紙し、一枚ずつに分離して、シート搬送ユニット５０内に形成された所定のシート搬送路Ｒ（図４参照）に沿って搬送する。そして、当該多機能機１は、シート搬送ユニット５０により原稿シートを搬送する途中で、スキャナユニット２０等により画像を読み取る方式で、原稿シートの画像を読み取り得る。
【００３２】
図４に示すように、当該シート搬送路Ｒは、使用位置にあるカバートレイ３１の上面、シートガイド面３３から延び、シートガイド部材３２の仕切板３２Ａ表面を接続するように略Ｕ字状に形成されており、シート搬送ユニット５０の左右方向に沿っている。尚、本実施形態においては、シートガイド面３３表面からシート搬送路Ｒに沿って仕切板３２Ａへ向かう方向を原稿シートの搬送方向という。そして、原稿シートの幅方向とは、シート搬送路Ｒを搬送される原稿シートの幅方向（即ち、シート搬送ユニット５０における前後方向）を意味する。
【００３３】
図１〜図４に示すように、シート搬送ユニット５０は、ユニット本体部６０と、上部カバー７０により構成されている。ユニット本体部６０は、シート搬送ユニット５０の下部を構成し、シート搬送ユニット５０の主要部として機能する。上部カバー７０は、シート搬送ユニット５０の上部を構成し、図１〜図４に示すように、シート搬送ユニット５０左端部を中心に回動自在に軸支されている。そして、上部カバー７０の内側面（下面）は、ユニット本体部６０の上面と協働して、シート搬送路Ｒの一部を構成する。
【００３４】
尚、上部カバー７０の外表面（即ち、シート搬送ユニット５０の上面）には、化粧カバーＤが、着脱自在に取り付けられている。当該化粧カバーＤは、透明樹脂により形成されており、上部カバー７０の上面と協働することにより、所定の模様が形成された化粧シートを保持している。従って、当該化粧シートの模様は、透明樹脂製の化粧カバーＤを介して、視認することができる。又、当該化粧シートは、化粧カバーＤを上部カバー７０から着脱することで、異なる模様の化粧シートに交換し得る。
【００３５】
図３、図４等に示すように、ユニット本体部６０は、搬送ローラ対６１と、搬送駆動ローラ６２と、シートホルダ６３を有して構成されている。そして、当該ユニット本体部６０は、内部にシート搬送路Ｒの一部を有している。上述したように、当該ユニット本体部６０は、その上面と上部カバー７０の内側面により、ユニット本体部６０内部に形成されたシート搬送路Ｒに連続するシート搬送路Ｒを構成する。
【００３６】
搬送ローラ対６１は、一対のローラがシート搬送路Ｒを介して相互に対向するように配設されており、制御部による制御に従って、シート搬送路Ｒ上に位置する原稿シートを挟持しつつ回転駆動する。搬送駆動ローラ６２は、ユニット本体部６０の上面に沿って、回転自在に配設されており、ユニット本体部６０の上面に沿ったシート搬送路Ｒを搬送される原稿シートを、シートガイド部材３２の仕切板３２Ａ上面に向かって搬送する。
【００３７】
そして、シートホルダ６３は、搬送ローラ対６１よりも搬送方向上流側に配設されており、シート搬送路Ｒ上の原稿シートを、コンタクトガラス２１側に押し当てる。ここで、当該多機能機１においては、シート搬送ユニット５０を用いて原稿シートの画像を読み取る場合に、イメージセンサ２２は、シートホルダ６３の下方に位置する。従って、当該多機能機１は、シートホルダ６３下方を通過する原稿シートから、コンタクトガラス２１を介して、イメージセンサ２２により画像を読み取ることができる。この時、当該原稿シートは、シートホルダ６３により、コンタクトガラス２１側へ押圧されているため、より高精度で画像内容を読み取り得る。
【００３８】
上述したように、上部カバー７０は、シート搬送ユニット５０の上部を構成し、シート搬送ユニット５０左端部を中心に回動自在に軸支されている。そして、上部カバー７０の内側面を構成する第１面（図３、図４中、上部カバー７０の下面）は、ユニット本体部６０の上面と協働して、シート搬送路Ｒの一部を構成する。上部カバー７０は、側壁部７１、ガイドリブ７２、位置決め部７３、逆走防止リブ７５を有しており、搬送従動ローラ８０、プレート部材８５、コイルバネ９０が取り付けられる（図４〜図７参照）。
【００３９】
側壁部７１は、図５〜図７に示すように、上部カバー７０の前側端縁部及び後側端縁部に沿って立設されており、シート搬送路Ｒ側に向かって突出している。従って、当該側壁部７１は、上部カバー７０の他の部分（例えば、中央部分）よりも、高い剛性を有している。
【００４０】
ガイドリブ７２は、上部カバー７０の第１面からシート搬送路Ｒに向かって立設されており（図５、図６参照）、原稿シートの搬送方向（即ち、多機能機１の左右方向）に沿って延びている。当該ガイドリブ７２は、上部カバー７０の第１面において、一定間隔を隔てて複数立設されており、その端面は、夫々、所定の円弧を描くように形成されている。シート搬送路Ｒを搬送される原稿シートは、当該ガイドリブ７２の端面に接触することにより、所定の円弧を描くようにガイドされつつ、搬送駆動ローラ６２に向かって搬送される。又、上部カバー７０は、当該ガイドリブ７２の端面によって、シート搬送路Ｒを搬送される原稿シートと接触する為、当該原稿シートとの接触面積を小さくし得る。これにより、当該シート搬送ユニット５０は、摩擦の影響を低減しつつ、原稿シートをシート搬送路Ｒに沿って搬送し得る。
【００４１】
位置決め部７３は、上部カバー７０において、ユニット本体部６０における搬送駆動ローラ６２の配設位置と対向し、且つ、原稿シートの幅方向（多機能機１の前後方向）に亘る一定の範囲を区画するように立設されたリブにより構成される。当該位置決め部７３は、後述するプレート部材８５を所定位置に位置決めする機能を果たす。
【００４２】
そして、位置決め部７３には、バネ保持部７３Ａ、軸保持部７４が形成されている。図６、図７に示すように、バネ保持部７３Ａは、位置決め部７３において、シート搬送路Ｒの幅方向（多機能機１の前後方向）に沿って、一定の間隔を隔てた２箇所に立設されており、後述するコイルバネ９０を挿通することにより、当該コイルバネ９０を位置決めしつつ保持する（図４参照）。
【００４３】
軸保持部７４は、位置決め部７３において、各側壁部７１近傍に当該側壁部７１に沿って立設形成されており（図６、図７参照）、シート搬送路Ｒに向かって延びる溝部を介して、後述する搬送従動ローラ８０のローラ軸８２の端部を、夫々回転自在に保持する。
【００４４】
逆走防止リブ７５は、前記軸保持部７４よりも搬送方向下流側（即ち、多機能機１における右方向）において、上部カバー７０の第１面における所定箇所から、シート搬送路Ｒに向かって立設されている。又、当該逆走防止リブ７５は、シート搬送路Ｒの幅方向（後述する搬送従動ローラ８０の軸方向）に沿った３箇所に形成されており、夫々、後述する傾斜面７６を、シート搬送路Ｒ側の端縁部に有している。尚、逆走防止リブ７５の具体的構成については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００４５】
続いて、上部カバー７０に取り付けられる搬送従動ローラ８０、プレート部材８５、コイルバネ９０の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図４、図５に示すように、搬送従動ローラ８０は、搬送駆動ローラ６２とシート搬送路Ｒを介して対向する位置に回転自在に配設され、当該搬送駆動ローラ６２と協働して、シート搬送路Ｒ上の原稿シートを、搬送方向下流側へ搬送する。
【００４６】
当該搬送従動ローラ８０は、円柱状に形成された複数の当接部８１と、ローラ軸８２により構成されている。各当接部８１は、シート搬送路Ｒ上の原稿シートと接触する部分であり、軟質ゴム等により構成されている。ローラ軸８２は、搬送従動ローラ８０の回転軸を構成し、シート搬送路Ｒの幅方向（即ち、多機能機１の前後方向）に亘って延びる軸部材である。図５、図９に示すように、当該ローラ軸８２の両端部は、上述した軸保持部７４によって回転自在に保持されている。
【００４７】
当該搬送従動ローラ８０において、各当接部８１は、相互に一定の間隔を隔てた３箇所に、ローラ軸８２に対して配設されている。又、各当接部８１は、ローラ軸８２周りに位置する外周面に、多数の突部８１Ａを有している（図５、図９参照）。当該突部８１Ａは、ローラ軸８２を中心とした放射状に、当接部８１の外周面を突出させることにより形成される。従って、当該当接部８１の突部８１Ａは、搬送従動ローラ８０の回転に伴って、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に位置する原稿シートの後端部を蹴り出すことができ、原稿シートを搬送方向下流側へ搬送し得る。
【００４８】
プレート部材８５は、略コ字状に折曲形成された金属製の板状部材であり、図４、図５に示すように、上部カバー７０の位置決め部７３に配設される。従って、当該プレート部材８５は、上部カバー７０の第１面と、後述するコイルバネ９０の間に位置する為、その剛性によって上部カバー７０の変形を防止する。
【００４９】
コイルバネ９０は、搬送従動ローラ８０をシート搬送路Ｒ側に向かって付勢する付勢部材であり、上部カバー７０とローラ軸８２の間に配設される。従って、当該コイルバネ９０は、ローラ軸８２を介して、搬送従動ローラ８０をシート搬送路Ｒ側へ付勢する為、シート搬送路Ｒに沿って搬送される原稿シートに対して、搬送従動ローラ８０を確実に接触させる。上述したように、コイルバネ９０は、位置決め部７３の２箇所に形成されたバネ保持部７３Ａによって挿通されることにより、所定の２箇所に配設される（図５参照）。
【００５０】
続いて、本実施形態に係る多機能機１における逆走防止リブ７５と搬送従動ローラ８０の関係について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００５１】
上述したように、多機能機１は、シート搬送ユニット５０によって、使用位置にあるカバートレイ３１の上面、及びシートガイド面３３に積載された原稿シートを、シート搬送路Ｒに沿って搬送し、上部カバー７０の第１面とユニット本体部６０上面の間を介して、当該原稿シートを、シートガイド部材３２の仕切板３２Ａ表面上に排出する。つまり、当該シートガイド部材３２の仕切板３２Ａは、本実施形態に係る多機能機１において、「排出トレイ」として機能する。この場合に、仕切板３２Ａにおける排出された原稿シートの積載状況によっては、原稿シートは、搬送駆動ローラ６２、搬送従動ローラ８０が回転していても、十分に搬送されない場合がある。そうすると、当該原稿シートの後端が搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に滞留する可能性がある。
【００５２】
ここで、原稿シートをシート搬送路Ｒに沿って所定の搬送方向へ搬送する為に回転した場合、搬送従動ローラ８０表面の突部８１Ａは、ローラ軸８２の芯を基準に搬送方向下流側では、当該搬送従動ローラ８０の回転に伴って、シート搬送路Ｒ側から上部カバー７０の第１面側に向かって移動し、ローラ軸８２の芯を基準として上部カバー７０の第１面側においては、シート搬送路Ｒにおける搬送方向と逆方向に移動する。
【００５３】
従って、原稿シートの後端が搬送従動ローラ８０近傍に位置し、搬送従動ローラ８０に形成された多数の突部８１Ａが原稿シートの後端に接触した場合、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の回転に伴い、シート搬送路Ｒに沿った位置から上部カバー７０の第１面に対して近接する方向へ移動してしまう。更に、当該原稿シートの後端が、搬送従動ローラ８０における上部カバー７０の第１面側に位置してしまうと、当該原稿シートは、シート搬送路Ｒにおける搬送方向と逆方向に搬送（即ち、原稿シートが逆走）されてしまい、シート搬送路Ｒにおけるジャムの要因となり得る。
【００５４】
この点、多機能機１における上部カバー７０の第１面側には、逆走防止リブ７５が、前記搬送従動ローラ８０よりも搬送方向下流側において、シート搬送路Ｒに向かって立設されており（図５〜図１０参照）、当該所定箇所における上部カバー７０の第１面と、後述する搬送従動ローラ８０の間への経路を閉塞する（図８参照）。従って、原稿シートの後端部が、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に位置し、搬送従動ローラ８０の回転に伴い第１面側に移動した場合であっても、逆走防止リブ７５は、当該原稿シートの後端部と接触することで、当該原稿シートの後端部を元の位置（即ち、シート搬送路Ｒ上）に戻すことができる。この結果、当該多機能機１は、逆走防止リブ７５によって、搬送従動ローラ８０における上部カバー７０の第１面側に対する原稿シート後端の進入を防止し、原稿シートの逆走及びジャムの発生を防止し得る。
【００５５】
又、図８に示すように、各逆走防止リブ７５は、上部カバー７０の第１面に対して鉛直な断面において、シート搬送路Ｒ側の端縁部に傾斜面７６を有している。当該傾斜面７６は、原稿シートの搬送方向下流側であって、シート搬送路Ｒ側から上部カバー７０の第１面に向かって傾斜している（図８中、右上方向）。そして、搬送従動ローラ８０の回転に伴って、原稿シートの後端が第１面側に移動した場合、当該原稿シートの後端は、各逆走防止リブ７５の傾斜面７６に接触する。
【００５６】
上述したように、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の回転に伴って、シート搬送路Ｒから上部カバー７０の第１面に向かって移動しようとするので、原稿シートの後端部が傾斜面７６に加える力は、当該逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触によって、原稿シートの搬送方向下流側に向かう力に変換され、原稿シートを搬送方向下流側へ移動させる力として作用する。つまり、当該多機能機１は、原稿シートの後端と逆走防止リブ７５の傾斜面７６の接触により、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に位置する原稿シートの後端を更に搬送方向下流側へ移動させることができ、搬送従動ローラ８０近傍から離間させる。これにより、当該多機能機１は、原稿シートの後端と、搬送従動ローラ８０の突部８１Ａの接触が生じる可能性を低減することができ、当該突部８１Ａとの接触に起因する原稿シートの巻き込みやジャム等の発生を防止し得る。
【００５７】
図５〜図９に示すように、逆走防止リブ７５は、上部カバー７０の第１面における４箇所に形成されている。具体的には、逆走防止リブ７５は、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側において、搬送従動ローラ８０の軸方向（即ち、多機能機１における前後方向）に沿って、上部カバー７０の前側端縁部側、及び、後側端縁部側に夫々１箇所、軸方向の中央部分（即ち、２つの当接部８１の間に相当する位置）の２箇所に立設されている。
【００５８】
従って、当該多機能機１によれば、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側において、原稿シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態（例えば、原稿シートが斜行していた場合等）であっても、当該原稿シートの後端部は、ローラ軸８２における両端部分、中央部分の何れかに位置する逆走防止リブ７５の傾斜面７６と接触する。即ち、当該多機能機１は、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側において、原稿シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態であっても、突部８１Ａとの接触に起因する原稿シートの巻き込みや、ジャムの発生を、確実に防止し得る。
【００５９】
又、各逆走防止リブ７５は、軸方向に関し、搬送従動ローラ８０における当接部８１が存在しない位置（即ち、ローラ軸８２のみが存在する位置）に立設されている（図５、図８参照）。つまり、当該多機能機１によれば、逆走防止リブ７５を、搬送従動ローラ８０のローラ軸８２近傍に形成し得る為、当接部８１による原稿シートの搬送を妨げることはなく、且つ、突部８１Ａとの接触に起因するジャム等の発生を、各逆走防止リブ７５によって確実に防止し得る。
【００６０】
図７に示すように、逆走防止リブ７５の傾斜面７６は、上部カバー７０の第１面に平行な平面において、円周の１／４に相当する円弧を描くように形成されており、搬送従動ローラ８０の軸方向（多機能機１の前後方向）に対して斜めに延びている。そして、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の軸方向と略同一方向に延びている為、逆走防止リブ７５の傾斜面７６は、上部カバー７０の第１面に平行な平面において、原稿シートの後端に対しても斜めに延びる。
【００６１】
ここで、原稿シートの後端部が搬送従動ローラ８０近傍に位置した場合、当該原稿シートの後端部は、搬送従動ローラ８０の回転に伴う突部８１Ａとの接触により、上部カバー７０の第１面に向かって移動し、逆走防止リブ７５の傾斜面７６と接触する。そして、逆走防止リブ７５の傾斜面７６と接触することにより、当該原稿シートの後端部は、シート搬送路Ｒ上の元の位置に戻る。この点、図５、図８等に示すように、搬送従動ローラ８０の当接部８１外周面には、多数の突部８１Ａが形成されているため、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の回転に伴う突部８１Ａの接触が起こる度に、逆走防止リブ７５の傾斜面７６と断続的に接触する。
【００６２】
この場合において、原稿シートの後端部は、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触により損傷するが、傾斜面７６との接触が少ない回数であれば、損傷の程度は軽微なものとなる。一方、原稿シートの後端部における同一箇所が、傾斜面７６と多数回に亘って接触してしまうと、損傷の程度が傷として視認可能な程度にまで大きくなり、原稿シートの見栄えを低下させてしまう場合がある。
【００６３】
この点、多機能機１においては、搬送従動ローラ８０の回転に伴い、原稿シートの後端部が断続的に、逆走防止リブ７５の傾斜面７６に接触する場合であっても、上述した傾斜面７６との接触に伴う傾斜面７６からの反力の作用により、原稿シートは、少しずつ搬送方向下流側に移動し、且つ、当該傾斜面７６が、上部カバー７０の第１面に平行な平面において、原稿シートの後端に対しても斜めに延びているため、傾斜面７６と接触する部分を、原稿シート後端部の異なる位置（原稿シートの幅方向に異なる位置）に変更し得る。従って、当該多機能機１によれば、搬送従動ローラ８０の回転によって、原稿シートの後端部が逆走防止リブ７５の傾斜面７６に断続的に接触する場合であっても、原稿シートの後端部において、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触部分を分散させることができ、原稿シートの後端部における見栄えの低下を軽減し得る。
【００６４】
続いて、多機能機１における搬送従動ローラ８０の当接部８１と、逆走防止リブ７５の配設位置の関係について説明する。図１０に示すように、搬送従動ローラ８０の軸方向（多機能機１における前後方向）において、逆走防止リブ７５は、当該逆走防止リブ７５の傾斜面７６における第１点ＰＡが所定の条件を満たすように、最も近い当接部８１から離間した位置に形成される。
【００６５】
ここで、傾斜面７６上の第１点ＰＡについて、図８を参照しつつ説明する。第１点ＰＡを説明する上で、搬送方向における原稿シートの後端部の位置と、傾斜面７６との接触による損傷の程度について考察する。上述したように、原稿シートの後端部は、搬送従動ローラ８０の回転に伴う突部８１Ａとの接触により、上部カバー７０の第１面側に向かって移動しようとする。原稿シートの後端部が突部８１Ａとの接触により移動する関係上、原稿シートの後端部は、当接部８１における最も搬送方向下流側の表面に当該原稿シートの後端部が位置する場合に、上部カバー７０の第１面側に向けて最も大きく移動することになる。即ち、この状態の場合、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触によって、原稿シートの後端部が、最も大きく損傷すると考えられる。そして、原稿シートの後端部は、搬送従動ローラ８０の軸方向と略平行に延びているため、この場合に原稿シートの後端部と接触する傾斜面７６上の点は、前記当接部８１に沿って、軸方向に延びた延長線上に位置する。本実施形態においては、この点を「第１点ＰＡ」といい、「搬送方向に沿った観点で考察した場合に、当該搬送従動ローラ８０の回転によって、上部カバー７０の第１面に対して最も大きく近接・離間する（原稿シートの後端部のばたつきが大きくなる）原稿シートの後端部が接触する傾斜面７６上の点を意味する。
【００６６】
続いて、搬送従動ローラ８０の回転に伴う原稿シートの後端部の移動量（即ち、第１面に対して鉛直方向への移動量）について、搬送従動ローラ８０の軸方向の観点から考察する。上述したように、搬送従動ローラ８０は、３つの当接部８１と、ローラ軸８２により構成されており、各当接部８１は、相互に間隔を隔てて、ローラ軸８２に取り付けられている（図９参照）。当接部８１と接触する部分が、上部カバー７０の第１面に対する移動量が最も大きい部分となり、当接部８１から軸方向に離間する程、上部カバー７０の第１面に対する移動量が小さくなる。
【００６７】
逆走防止リブ７５は、ローラ軸８２に沿った軸方向において、当該逆走防止リブ７５に対して最も近い当接部８１の端面から離間した位置に、前記第１点ＰＡが位置するように、前記上部カバー７０の第１面に立設されている（図１０参照）。具体的には、逆走防止リブ７５の配設位置は、鉛直方向における第１点と、当該逆走防止リブ７５に最も近い当接部８１の端面及び当該端面における最も上部カバー７０の第１面側に位置する点（以下、第２点ＰＢ）との位置関係によって定められている。即ち、図１０に示すように、前記逆走防止リブ７５における第１点ＰＡと、当接部８１端面における第２点ＰＢを結ぶ線と、前記第２点を鉛直方向に通る線によってなす角度θが、６５度以上であり、且つ、９０度よりも小さくなる位置に、第１点ＰＡが位置するように、軸方向における逆走防止リブ７５の配設位置は定められている。
【００６８】
図１０に示すように、当該多機能機１は、逆走防止リブ７５の傾斜面７６上で原稿シートの後端部を最も損傷させ得る第１点ＰＡが、上述した条件を満たすように、逆走防止リブ７５を形成することによって、当該第１点ＰＡを、最も近い当接部８１から軸方向に所定距離以上離間させることができる。そして、最も近い当接部８１から軸方向への距離は、原稿シートの後端部に対する損傷の程度に対応するので、多機能機１は、逆走防止リブ７５を、上述のように形成することで、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触による原稿シートの後端部の損傷を最低限に抑え得る。
【００６９】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、本発明に係るシート搬送装置を、多機能機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ＡＤＦを有するスキャナ装置や、画像形成装置に適用することも可能である。
【００７０】
又、本実施形態においては、搬送従動ローラ８０は、３つの当接部８１と、ローラ軸８２により構成されていたが、この態様に限定されるものではなく、当接部８１の数や軸方向への長さ等、種々の変更を行うことができる。
【００７１】
更に、本実施形態においては、逆走防止リブ７５は、搬送従動ローラ８０を基準として搬送方向下流側における４箇所に立設していたが、この態様に限定されるものではない。搬送従動ローラ８０を基準として搬送方向下流側において、ローラ軸８２の両端側及び中央部分に配設されていればよく、逆走防止リブ７５の数は、適宜変更することができる。
【００７２】
そして、逆走防止リブ７５の傾斜面７６は、上部カバー７０の第１面と平行な平面において、前記搬送従動ローラ８０の軸方向に対して斜めに延びていればよく、種々の態様を採用し得る。例えば、上部カバー７０の第１面と平行な平面において、搬送従動ローラ８０の軸方向に対して、直線状に斜めに延びている構成であってもよい。
【符号の説明】
【００７３】
１ 多機能機
３０ シートカバー
５０ シート搬送ユニット
６０ ユニット本体部
７０ 上部カバー
７５ 逆走防止リブ
７６ 傾斜面
８０ 搬送従動ローラ
８２ ローラ軸
８１ 当接部
８１Ａ 突部
Ｒ シート搬送路
【技術分野】
【０００１】
本発明は、所定の搬送経路に沿って、シートを搬送するシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、多機能機やスキャナ装置等においては、シート搬送装置を有するものが知られている。当該シート搬送装置は、所定の搬送経路に沿った位置に回転可能に軸支されたローラを有しており、当該ローラの回転によって、シートを搬送経路に沿って搬送するように構成されている。
【０００３】
このようなシート搬送装置に関する発明として、特許文献１記載の発明が知られている。当該特許文献１に係るシート搬送装置は、カバーと、当該カバーに回転可能に配設され、多数の突起を周面に備える排出ローラを有している。そして、当該シート搬送装置は、排出ローラを回転させることで、シートを搬送経路に沿って搬送し、排出トレイに排出する。又、当該特許文献１に係るシート搬送装置は、排出ローラの回転に伴う突起の移動によって、搬送ローラ近傍に位置するシートの後端部を、搬送方向下流側へ蹴り出すように構成されている。これにより、当該シート搬送装置は、搬送方向下流側における排出ローラ近傍から、シートを、更に下流側へ向かって搬送し、排出トレイへ排出し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００９−２０５０８５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかしながら、特許文献１記載のシート搬送装置のように、排出ローラの外周面に多数の突起を形成した場合であっても、当該排出ローラに対して搬送方向下流側の状況（即ち、排出トレイ上におけるシートの積載状況等）により、シートを十分に搬送方向下流側に搬送することができずに、シートの後端が当該排出ローラ近傍に位置したままになってしまう場合があった。
【０００６】
多数の突起を有する排出ローラの下流側近傍に、シートの後端が位置する場合、当該シートの後端は、当該排出ローラの回転に伴う多数の突起の移動によって、搬送経路から離間し、カバー側に接近する方向に移動してしまうことがある。そして、当該排出ローラは、搬送経路側でシートを搬送方向へ搬送するように回転している為、当該排出ローラとカバーとの間にシートが位置した場合、前記搬送方向と逆方向へシートを搬送してしまう。即ち、シート搬送装置は、多数の突起を有する排出ローラの下流側近傍に、シートの後端が位置する場合、「シートの逆走に起因するシートの巻き込み」が発生する場合があり、当該シート搬送装置におけるジャムが生じてしまう場合があった。
【０００７】
当該特許文献１のようなシート搬送装置において、上述のジャム等の不具合を防止する為には、少なくとも、「排出ローラとカバーとの間へのシートの移動を制限すること」「シート後端部を、確実に、排出ローラ近傍から下流側に移動させること」の何れかが必要となる。
【０００８】
ここで、「排出ローラとカバーの間へのシートの移動を制限」する構成として、当該排出ローラの下流側に、カバー表面から搬送経路に向かって突出するリブを形成することが考えられる。このようなリブを形成することで、排出ローラの回転に伴う突起の移動によって、シートの後端が、排出ローラとカバーの間に向かって移動したとしても、当該シートの移動は、当該リブとの接触によって制限され、シートの巻き込みに基づくジャムの発生を防止し得る。
【０００９】
このようなリブを形成した場合、シート後端は、当該排出ローラの回転に伴う突起の移動によって当該リブに接触し、リブとの接触により搬送経路側に戻ることになる。つまり、シート後端が排出ローラ近傍に位置し続けていれば、当該シート後端は、排出ローラの回転に伴う突起の移動によって、断続的にリブと接触してしまう。この結果、当該シート後端部が、リブとの接触による影響（例えば、リブとの接触による損傷等）を受け、当該シートの見栄えを低下させてしまう場合がある。
【００１０】
本発明は、多数の突部を外周面に有するローラによって、所定の搬送経路に沿ってシートを搬送するシート搬送装置に関し、シートの巻き込みによるジャムの発生を防止しつつ、シートの見栄えに与える影響を低減し得るシート搬送装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明の一側面に係るシート搬送装置は、カバー部材と、ローラ部材と、排出トレイと、を有し、シートを搬送経路に沿って、所定の搬送方向へ搬送し、当該シートを排出トレイへ排出する。ローラ部材は、ローラ軸によって、複数の当接部を相互に間隔を隔てて保持して構成されており、各当接部は、外周面に多数の突部を有している。そして、カバー部材は、前記搬送経路と直交する軸方向において、前記ローラ部材におけるローラ軸のみが存在する部分の前記搬送方向下流側に、リブを有している。当該リブは、カバー部材の第１面から前記搬送経路に向かって立設されている。即ち、当該リブは、ローラ部材の搬送方向下流側において、カバー部材の第１面とローラ部材の間の空間への移動経路を遮っている。これにより、当該シート搬送装置は、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシートの巻き込みや、ジャムの発生を防止し得る。又、当該リブは、傾斜面を有しており、当該傾斜面は、前記第１面に対して鉛直な鉛直方向（即ち、第１面に対して鉛直な鉛直成分のみを考慮した場合）において、前記搬送経路側から前記第１面に近接する方向であって、前記搬送方向下流側へ傾斜している。ここで、シート後端は、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によって、搬送経路側から第１面へ向かう方向に移動し、リブの傾斜面に接触する。この移動に伴い当該シートがリブに及ぼす力は、前記鉛直方向の成分を含んでおり、当該リブの傾斜面は上述のように構成されているので、傾斜面がシートに及ぼす反力は、搬送方向下流側の排出トレイへ向かう。即ち、当該シート搬送装置は、リブの傾斜面により、シート後端部の移動による力の反力を、当該シートを搬送方向下流側へ移動させる力として作用させ、もって、シート後端部を、ローラ近傍から更に下流側（排出トレイ側）に向かって移動させ得る。この結果、当該シート搬送装置は、この点においても、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシートの巻き込みや、ジャムの発生を防止し得る。
【００１２】
そして、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記リブは、前記当接部の最も搬送方向下流側に位置する表面に沿って、軸方向に延びた延長線上に位置する前記傾斜面上に、第１点を有する。即ち、第１点は、搬送方向に沿った観点で考察した場合に、当該ローラ部材の回転に伴う突部の移動によって、最も大きく第１面に対して近接・離間するように移動するシート後端部が接触する傾斜面上の点を意味する。そして、当該リブは、鉛直方向における所定の条件を満たすことによって、前記軸方向において、前記第１点が当該リブに最も近い当接部の端面から離間した位置となるように、前記カバー部材の第１面に立設されている。ここで、シートの後端部は、前記軸方向に略沿って延びており、当該ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシート後端部の移動量を、軸方向に沿った観点で考察すると、当接部及び突部と接触する部分が、第１面に対する移動量の最も大きい部分であり、当接部から軸方向に離間する程、第１面に対する移動量が小さくなる。そして、この移動量が大きい程、リブの傾斜面と接触した場合に、シートの後端部に損傷等の影響が生じる蓋然性が高くなる。つまり、当該シート搬送装置は、リブの傾斜面上でシート後端部に損傷等の影響を最も与え得る第１点を、軸方向に所定距離以上離間させることができるので、リブの傾斜面との接触によるシート後端部の損傷等の影響を最低限に抑え得る。
【００１３】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記リブの傾斜面は、前記第１面と平行な平面において、前記軸方向に対して斜めに延びている。シートの後端部は、略軸方向に延びている為、リブの傾斜面は、前記第１面と平行な平面において、前記シートの後端部に対しても斜めに延びる。従って、当該シート搬送装置によれば、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によって、シートの後端部がリブの傾斜面に断続的に接触する場合であっても、シートを搬送方向下流側に少しでも移動すれば、シート後端部における異なる位置を、リブの傾斜面と接触させ得る。これにより、シート後端部において、リブの傾斜面と接触する部分を分散させることができるので、当該シート搬送装置は、リブの傾斜面との接触に起因するシート後端部の見栄えの低下を軽減し得る。
【００１４】
又、本発明の他の側面に係るシート搬送装置において、前記カバー部材は、前記ローラ部材を構成するローラ軸における両端部分と、当該ローラ軸における中央部分において、当該ローラ部材よりも搬送方向下流側に、夫々、前記リブを有している。即ち、当該シート搬送装置によれば、ローラ部材の搬送方向下流側において、シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態（例えば、シートが斜行していた場合等）であっても、当該シートの後端部は、ローラ軸における両端部分、中央部分の何れかに位置するリブと接触する。従って、当該シート搬送装置は、ローラ部材の搬送方向下流側において、シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態であっても、ローラ部材の回転に伴う突部の移動によるシートの巻き込みや、ジャムの発生を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】多機能機の外観斜視図である。
【図２】上部カバー、カバートレイの回動状態を示す多機能機の外観斜視図である。
【図３】シート搬送ユニットを有するシートカバーの構成を示す断面図である。
【図４】シート搬送ユニットの構成を示す拡大断面図である。
【図５】上部カバーに対して、搬送従動ローラ、プレート部材、コイルバネを取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【図６】上部カバーの構成を示す外観斜視図である。
【図７】上部カバーの構成を示す平面図である。
【図８】上部カバーの搬送方向に沿った断面を示す断面図である。
【図９】上部カバーの軸方向に沿った断面を示す断面図である。
【図１０】当接部と逆走防止リブの位置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
以下、本発明に係るシート搬送装置を、多機能機１のシート搬送ユニット５０に具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００１７】
先ず、本実施形態に係る多機能機１の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の説明において、多機能機１使用時のユーザの位置を基準にした方向を用いて説明する。即ち、図１における左下側を前側とし、図１における右上側を後側とする。又、多機能機１を前側から見たときを左右の基準とし、図１における左上側を左側とし、右下側を右側とする。
【００１８】
図１に示すように、多機能機１は、本体筐体１０と、シートカバー３０とを有している。本体筐体１０は、多機能機１における各種機能（スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能等）を実現するための各種構成部品を、当該本体筐体１０内部に収容している。
【００１９】
又、本体筐体１０は、当該本体筐体１０の前側上面に、複数の操作部を有する操作パネル１１と、種々の情報を表示する液晶ディスプレイ１３を有している。操作パネル１１は、多機能機１に対する種々の指示を入力する際に操作される。そして、本体筐体１０の前面には、給紙カセット１２が脱着可能に取り付けられている。当該給紙カセット１２は、被記録媒体であるシートを積層状態で収容している。
【００２０】
図１〜図３に示すように、本体筐体１０は、上面側にスキャナユニット２０を有している。スキャナユニット２０は、原稿載置台として機能するコンタクトガラス２１、イメージセンサ２２、スライド軸、モータ等を備えている（図３参照）。コンタクトガラス２１は、所謂「プラテンガラス」であり、本体筐体１０の左右方向に沿って長辺が位置するＡ４サイズよりもやや大きな長方形状に形成されている。
【００２１】
イメージセンサ２２は、所謂、密着型イメージセンサ（ＣＩＳ：Contact Image Sensor）により構成され、コンタクトガラス２１上に位置する原稿シートの画像を読み取る。当該イメージセンサ２２は、主走査方向（即ち、本体筐体１０における前後方向）がＡ４サイズの短辺に相当する長さの読取範囲を有しており、本体筐体１０の左右方向に向かって伸びるスライド軸によって、左右方向の一定の範囲（Ａ４サイズの長辺寸法に相当する範囲）内をスライド移動可能に保持されている。従って、当該多機能機１は、制御部によるモータの駆動制御に基づいて、イメージセンサ２２をスライド軸に沿ってスライド移動しつつ、コンタクトガラス２１上に載置された原稿シートの画像を読み取り得る。
【００２２】
制御部は、ＣＰＵ、ＲＯＭ、ＲＡＭ等を有しており、多機能機１の各機能に係る制御の中枢を担う。又、制御部は、操作パネル１１と接続されている。従って、制御部は、操作パネルに対するユーザの入力操作に基づいて、ユーザ所望の制御を実行し得る。更に、制御部は、操作パネル１１に対するユーザの入力操作や演算処理結果に基づいて、液晶ディスプレイ１３上に種々の情報を表示し得る。
【００２３】
ファクシミリ部は、スキャナユニット２０により読み取った原稿シートの画像を、ネットワーク網を介して、ユーザ所望の相手先にファクシミリ通信する。又、当該ファクシミリ部は、ネットワーク網を介して、データ（ファクシミリデータ）を受信し得る。受信したファクシミリデータは、制御部によって画像形成部を制御することで、給紙カセット１２内のシート等に印刷出力される。
【００２４】
画像形成部は、制御部による制御に基づいて、入力された画像データを給紙カセット１２内のシートへ印刷出力する。当該多機能機１は、スキャナユニット２０により読み取った画像に基づく画像データを対象として、画像形成部を制御することで、コピー機能を実現する。又、当該多機能機１は、ネットワーク網を介して入力された印刷データを対象として、画像形成部を制御することで、プリンタ機能を実現する。
【００２５】
ここで、シートカバー３０は、本体筐体１０上面の後端縁を軸に開閉自在に配設されており、閉じた場合に本体筐体１０上面（即ち、コンタクトガラス２１）を覆う（図３参照）。従って、シートカバー３０を閉じた場合、当該シートカバー３０は、コンタクトガラス２１上にセットされた原稿シートをその位置に固定し得る。
【００２６】
又、シートカバー３０は、カバートレイ３１と、シートガイド部材３２と、シートガイド面３３と、シート搬送ユニット５０（所謂、ADF：Auto Document Feeder）とを有している。図１〜図３に示すように、カバートレイ３１は、シートカバー３０上面中央部に、当該カバートレイ３１の一端部に形成された回動軸を中心に回動可能に設けられている。図１に示すように、カバートレイ３１を閉じた状態（以下、この位置を閉鎖位置という）では、カバートレイ３１は、シートカバー３０の外表面を構成し、シート搬送ユニット５０の外表面（即ち、後述する化粧カバーＤ表面）と同一平面を形成する。
【００２７】
又、カバートレイ３１を所定量回動し、所定の使用位置（図２、図３参照）へ回動すると、一対のシートガイド部材３２と、シートガイド面３３が外部に露出する。シートガイド部材３２は、カバートレイ３１の下方に形成されたシートガイド面３３上を双方とも前後方向へスライド可能に配設されている。当該シートガイド部材３２は、連動機構（図示せず）により、一方に連動して他方が一方とは逆方向へスライドするように構成されている。従って、一対のシートガイド部材３２の間隔を変更する際には、一方を操作するだけで、双方を互いに接近又は離間する方向へスライドさせ得る。これにより、当該多機能機１においては、シートガイド部材３２を操作することにより、シートガイド部材３２を基準にして原稿シートを整列させることができ、原稿シートが搬送方向に対して傾くのを抑制し得る。
【００２８】
更に、シートガイド部材３２は、夫々、仕切板３２Ａを有している。当該仕切板３２Ａは、シートガイド面３３の上方において、当該シートガイド面３３との間に、一定の間隔を隔てるように形成されている。
【００２９】
そして、カバートレイ３１が使用位置に位置する場合、カバートレイ３１の第２面が上方を向き、且つ、シートガイド面３３に向かって下り勾配となる傾斜をなす状態となる（図２、図３参照）。従って、カバートレイ３１が使用位置にある場合、当該カバートレイ３１の第２面には、複数枚の原稿シートを積層状態で載置可能な状態となる。
【００３０】
尚、カバートレイ３１の回動軸の下方には、凹部が形成されている。当該凹部は、カバートレイ３１が回動する際に、カバートレイ３１の回動軸側の端部が通過する為の空間を構成する。従って、当該カバートレイ３１は、当該凹部によって、回動軸を中心に円滑に回動する。又、当該凹部によって、シートガイド面３３表面とカバートレイ３１の回動軸を高さ方向に接近させ得るので、シートカバー３０の薄型化を図り得る。
【００３１】
そして、シート搬送ユニット５０は、シートカバー３０の左側部分において、シートカバー３０と一体に形成されており、カバートレイ３１の第２面、及びシートガイド面３３に載置された原稿シートを連続して給紙し、一枚ずつに分離して、シート搬送ユニット５０内に形成された所定のシート搬送路Ｒ（図４参照）に沿って搬送する。そして、当該多機能機１は、シート搬送ユニット５０により原稿シートを搬送する途中で、スキャナユニット２０等により画像を読み取る方式で、原稿シートの画像を読み取り得る。
【００３２】
図４に示すように、当該シート搬送路Ｒは、使用位置にあるカバートレイ３１の上面、シートガイド面３３から延び、シートガイド部材３２の仕切板３２Ａ表面を接続するように略Ｕ字状に形成されており、シート搬送ユニット５０の左右方向に沿っている。尚、本実施形態においては、シートガイド面３３表面からシート搬送路Ｒに沿って仕切板３２Ａへ向かう方向を原稿シートの搬送方向という。そして、原稿シートの幅方向とは、シート搬送路Ｒを搬送される原稿シートの幅方向（即ち、シート搬送ユニット５０における前後方向）を意味する。
【００３３】
図１〜図４に示すように、シート搬送ユニット５０は、ユニット本体部６０と、上部カバー７０により構成されている。ユニット本体部６０は、シート搬送ユニット５０の下部を構成し、シート搬送ユニット５０の主要部として機能する。上部カバー７０は、シート搬送ユニット５０の上部を構成し、図１〜図４に示すように、シート搬送ユニット５０左端部を中心に回動自在に軸支されている。そして、上部カバー７０の内側面（下面）は、ユニット本体部６０の上面と協働して、シート搬送路Ｒの一部を構成する。
【００３４】
尚、上部カバー７０の外表面（即ち、シート搬送ユニット５０の上面）には、化粧カバーＤが、着脱自在に取り付けられている。当該化粧カバーＤは、透明樹脂により形成されており、上部カバー７０の上面と協働することにより、所定の模様が形成された化粧シートを保持している。従って、当該化粧シートの模様は、透明樹脂製の化粧カバーＤを介して、視認することができる。又、当該化粧シートは、化粧カバーＤを上部カバー７０から着脱することで、異なる模様の化粧シートに交換し得る。
【００３５】
図３、図４等に示すように、ユニット本体部６０は、搬送ローラ対６１と、搬送駆動ローラ６２と、シートホルダ６３を有して構成されている。そして、当該ユニット本体部６０は、内部にシート搬送路Ｒの一部を有している。上述したように、当該ユニット本体部６０は、その上面と上部カバー７０の内側面により、ユニット本体部６０内部に形成されたシート搬送路Ｒに連続するシート搬送路Ｒを構成する。
【００３６】
搬送ローラ対６１は、一対のローラがシート搬送路Ｒを介して相互に対向するように配設されており、制御部による制御に従って、シート搬送路Ｒ上に位置する原稿シートを挟持しつつ回転駆動する。搬送駆動ローラ６２は、ユニット本体部６０の上面に沿って、回転自在に配設されており、ユニット本体部６０の上面に沿ったシート搬送路Ｒを搬送される原稿シートを、シートガイド部材３２の仕切板３２Ａ上面に向かって搬送する。
【００３７】
そして、シートホルダ６３は、搬送ローラ対６１よりも搬送方向上流側に配設されており、シート搬送路Ｒ上の原稿シートを、コンタクトガラス２１側に押し当てる。ここで、当該多機能機１においては、シート搬送ユニット５０を用いて原稿シートの画像を読み取る場合に、イメージセンサ２２は、シートホルダ６３の下方に位置する。従って、当該多機能機１は、シートホルダ６３下方を通過する原稿シートから、コンタクトガラス２１を介して、イメージセンサ２２により画像を読み取ることができる。この時、当該原稿シートは、シートホルダ６３により、コンタクトガラス２１側へ押圧されているため、より高精度で画像内容を読み取り得る。
【００３８】
上述したように、上部カバー７０は、シート搬送ユニット５０の上部を構成し、シート搬送ユニット５０左端部を中心に回動自在に軸支されている。そして、上部カバー７０の内側面を構成する第１面（図３、図４中、上部カバー７０の下面）は、ユニット本体部６０の上面と協働して、シート搬送路Ｒの一部を構成する。上部カバー７０は、側壁部７１、ガイドリブ７２、位置決め部７３、逆走防止リブ７５を有しており、搬送従動ローラ８０、プレート部材８５、コイルバネ９０が取り付けられる（図４〜図７参照）。
【００３９】
側壁部７１は、図５〜図７に示すように、上部カバー７０の前側端縁部及び後側端縁部に沿って立設されており、シート搬送路Ｒ側に向かって突出している。従って、当該側壁部７１は、上部カバー７０の他の部分（例えば、中央部分）よりも、高い剛性を有している。
【００４０】
ガイドリブ７２は、上部カバー７０の第１面からシート搬送路Ｒに向かって立設されており（図５、図６参照）、原稿シートの搬送方向（即ち、多機能機１の左右方向）に沿って延びている。当該ガイドリブ７２は、上部カバー７０の第１面において、一定間隔を隔てて複数立設されており、その端面は、夫々、所定の円弧を描くように形成されている。シート搬送路Ｒを搬送される原稿シートは、当該ガイドリブ７２の端面に接触することにより、所定の円弧を描くようにガイドされつつ、搬送駆動ローラ６２に向かって搬送される。又、上部カバー７０は、当該ガイドリブ７２の端面によって、シート搬送路Ｒを搬送される原稿シートと接触する為、当該原稿シートとの接触面積を小さくし得る。これにより、当該シート搬送ユニット５０は、摩擦の影響を低減しつつ、原稿シートをシート搬送路Ｒに沿って搬送し得る。
【００４１】
位置決め部７３は、上部カバー７０において、ユニット本体部６０における搬送駆動ローラ６２の配設位置と対向し、且つ、原稿シートの幅方向（多機能機１の前後方向）に亘る一定の範囲を区画するように立設されたリブにより構成される。当該位置決め部７３は、後述するプレート部材８５を所定位置に位置決めする機能を果たす。
【００４２】
そして、位置決め部７３には、バネ保持部７３Ａ、軸保持部７４が形成されている。図６、図７に示すように、バネ保持部７３Ａは、位置決め部７３において、シート搬送路Ｒの幅方向（多機能機１の前後方向）に沿って、一定の間隔を隔てた２箇所に立設されており、後述するコイルバネ９０を挿通することにより、当該コイルバネ９０を位置決めしつつ保持する（図４参照）。
【００４３】
軸保持部７４は、位置決め部７３において、各側壁部７１近傍に当該側壁部７１に沿って立設形成されており（図６、図７参照）、シート搬送路Ｒに向かって延びる溝部を介して、後述する搬送従動ローラ８０のローラ軸８２の端部を、夫々回転自在に保持する。
【００４４】
逆走防止リブ７５は、前記軸保持部７４よりも搬送方向下流側（即ち、多機能機１における右方向）において、上部カバー７０の第１面における所定箇所から、シート搬送路Ｒに向かって立設されている。又、当該逆走防止リブ７５は、シート搬送路Ｒの幅方向（後述する搬送従動ローラ８０の軸方向）に沿った３箇所に形成されており、夫々、後述する傾斜面７６を、シート搬送路Ｒ側の端縁部に有している。尚、逆走防止リブ７５の具体的構成については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００４５】
続いて、上部カバー７０に取り付けられる搬送従動ローラ８０、プレート部材８５、コイルバネ９０の構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図４、図５に示すように、搬送従動ローラ８０は、搬送駆動ローラ６２とシート搬送路Ｒを介して対向する位置に回転自在に配設され、当該搬送駆動ローラ６２と協働して、シート搬送路Ｒ上の原稿シートを、搬送方向下流側へ搬送する。
【００４６】
当該搬送従動ローラ８０は、円柱状に形成された複数の当接部８１と、ローラ軸８２により構成されている。各当接部８１は、シート搬送路Ｒ上の原稿シートと接触する部分であり、軟質ゴム等により構成されている。ローラ軸８２は、搬送従動ローラ８０の回転軸を構成し、シート搬送路Ｒの幅方向（即ち、多機能機１の前後方向）に亘って延びる軸部材である。図５、図９に示すように、当該ローラ軸８２の両端部は、上述した軸保持部７４によって回転自在に保持されている。
【００４７】
当該搬送従動ローラ８０において、各当接部８１は、相互に一定の間隔を隔てた３箇所に、ローラ軸８２に対して配設されている。又、各当接部８１は、ローラ軸８２周りに位置する外周面に、多数の突部８１Ａを有している（図５、図９参照）。当該突部８１Ａは、ローラ軸８２を中心とした放射状に、当接部８１の外周面を突出させることにより形成される。従って、当該当接部８１の突部８１Ａは、搬送従動ローラ８０の回転に伴って、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に位置する原稿シートの後端部を蹴り出すことができ、原稿シートを搬送方向下流側へ搬送し得る。
【００４８】
プレート部材８５は、略コ字状に折曲形成された金属製の板状部材であり、図４、図５に示すように、上部カバー７０の位置決め部７３に配設される。従って、当該プレート部材８５は、上部カバー７０の第１面と、後述するコイルバネ９０の間に位置する為、その剛性によって上部カバー７０の変形を防止する。
【００４９】
コイルバネ９０は、搬送従動ローラ８０をシート搬送路Ｒ側に向かって付勢する付勢部材であり、上部カバー７０とローラ軸８２の間に配設される。従って、当該コイルバネ９０は、ローラ軸８２を介して、搬送従動ローラ８０をシート搬送路Ｒ側へ付勢する為、シート搬送路Ｒに沿って搬送される原稿シートに対して、搬送従動ローラ８０を確実に接触させる。上述したように、コイルバネ９０は、位置決め部７３の２箇所に形成されたバネ保持部７３Ａによって挿通されることにより、所定の２箇所に配設される（図５参照）。
【００５０】
続いて、本実施形態に係る多機能機１における逆走防止リブ７５と搬送従動ローラ８０の関係について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【００５１】
上述したように、多機能機１は、シート搬送ユニット５０によって、使用位置にあるカバートレイ３１の上面、及びシートガイド面３３に積載された原稿シートを、シート搬送路Ｒに沿って搬送し、上部カバー７０の第１面とユニット本体部６０上面の間を介して、当該原稿シートを、シートガイド部材３２の仕切板３２Ａ表面上に排出する。つまり、当該シートガイド部材３２の仕切板３２Ａは、本実施形態に係る多機能機１において、「排出トレイ」として機能する。この場合に、仕切板３２Ａにおける排出された原稿シートの積載状況によっては、原稿シートは、搬送駆動ローラ６２、搬送従動ローラ８０が回転していても、十分に搬送されない場合がある。そうすると、当該原稿シートの後端が搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に滞留する可能性がある。
【００５２】
ここで、原稿シートをシート搬送路Ｒに沿って所定の搬送方向へ搬送する為に回転した場合、搬送従動ローラ８０表面の突部８１Ａは、ローラ軸８２の芯を基準に搬送方向下流側では、当該搬送従動ローラ８０の回転に伴って、シート搬送路Ｒ側から上部カバー７０の第１面側に向かって移動し、ローラ軸８２の芯を基準として上部カバー７０の第１面側においては、シート搬送路Ｒにおける搬送方向と逆方向に移動する。
【００５３】
従って、原稿シートの後端が搬送従動ローラ８０近傍に位置し、搬送従動ローラ８０に形成された多数の突部８１Ａが原稿シートの後端に接触した場合、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の回転に伴い、シート搬送路Ｒに沿った位置から上部カバー７０の第１面に対して近接する方向へ移動してしまう。更に、当該原稿シートの後端が、搬送従動ローラ８０における上部カバー７０の第１面側に位置してしまうと、当該原稿シートは、シート搬送路Ｒにおける搬送方向と逆方向に搬送（即ち、原稿シートが逆走）されてしまい、シート搬送路Ｒにおけるジャムの要因となり得る。
【００５４】
この点、多機能機１における上部カバー７０の第１面側には、逆走防止リブ７５が、前記搬送従動ローラ８０よりも搬送方向下流側において、シート搬送路Ｒに向かって立設されており（図５〜図１０参照）、当該所定箇所における上部カバー７０の第１面と、後述する搬送従動ローラ８０の間への経路を閉塞する（図８参照）。従って、原稿シートの後端部が、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に位置し、搬送従動ローラ８０の回転に伴い第１面側に移動した場合であっても、逆走防止リブ７５は、当該原稿シートの後端部と接触することで、当該原稿シートの後端部を元の位置（即ち、シート搬送路Ｒ上）に戻すことができる。この結果、当該多機能機１は、逆走防止リブ７５によって、搬送従動ローラ８０における上部カバー７０の第１面側に対する原稿シート後端の進入を防止し、原稿シートの逆走及びジャムの発生を防止し得る。
【００５５】
又、図８に示すように、各逆走防止リブ７５は、上部カバー７０の第１面に対して鉛直な断面において、シート搬送路Ｒ側の端縁部に傾斜面７６を有している。当該傾斜面７６は、原稿シートの搬送方向下流側であって、シート搬送路Ｒ側から上部カバー７０の第１面に向かって傾斜している（図８中、右上方向）。そして、搬送従動ローラ８０の回転に伴って、原稿シートの後端が第１面側に移動した場合、当該原稿シートの後端は、各逆走防止リブ７５の傾斜面７６に接触する。
【００５６】
上述したように、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の回転に伴って、シート搬送路Ｒから上部カバー７０の第１面に向かって移動しようとするので、原稿シートの後端部が傾斜面７６に加える力は、当該逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触によって、原稿シートの搬送方向下流側に向かう力に変換され、原稿シートを搬送方向下流側へ移動させる力として作用する。つまり、当該多機能機１は、原稿シートの後端と逆走防止リブ７５の傾斜面７６の接触により、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側近傍に位置する原稿シートの後端を更に搬送方向下流側へ移動させることができ、搬送従動ローラ８０近傍から離間させる。これにより、当該多機能機１は、原稿シートの後端と、搬送従動ローラ８０の突部８１Ａの接触が生じる可能性を低減することができ、当該突部８１Ａとの接触に起因する原稿シートの巻き込みやジャム等の発生を防止し得る。
【００５７】
図５〜図９に示すように、逆走防止リブ７５は、上部カバー７０の第１面における４箇所に形成されている。具体的には、逆走防止リブ７５は、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側において、搬送従動ローラ８０の軸方向（即ち、多機能機１における前後方向）に沿って、上部カバー７０の前側端縁部側、及び、後側端縁部側に夫々１箇所、軸方向の中央部分（即ち、２つの当接部８１の間に相当する位置）の２箇所に立設されている。
【００５８】
従って、当該多機能機１によれば、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側において、原稿シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態（例えば、原稿シートが斜行していた場合等）であっても、当該原稿シートの後端部は、ローラ軸８２における両端部分、中央部分の何れかに位置する逆走防止リブ７５の傾斜面７６と接触する。即ち、当該多機能機１は、搬送従動ローラ８０の搬送方向下流側において、原稿シートの後端部が軸方向に対して傾斜した状態であっても、突部８１Ａとの接触に起因する原稿シートの巻き込みや、ジャムの発生を、確実に防止し得る。
【００５９】
又、各逆走防止リブ７５は、軸方向に関し、搬送従動ローラ８０における当接部８１が存在しない位置（即ち、ローラ軸８２のみが存在する位置）に立設されている（図５、図８参照）。つまり、当該多機能機１によれば、逆走防止リブ７５を、搬送従動ローラ８０のローラ軸８２近傍に形成し得る為、当接部８１による原稿シートの搬送を妨げることはなく、且つ、突部８１Ａとの接触に起因するジャム等の発生を、各逆走防止リブ７５によって確実に防止し得る。
【００６０】
図７に示すように、逆走防止リブ７５の傾斜面７６は、上部カバー７０の第１面に平行な平面において、円周の１／４に相当する円弧を描くように形成されており、搬送従動ローラ８０の軸方向（多機能機１の前後方向）に対して斜めに延びている。そして、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の軸方向と略同一方向に延びている為、逆走防止リブ７５の傾斜面７６は、上部カバー７０の第１面に平行な平面において、原稿シートの後端に対しても斜めに延びる。
【００６１】
ここで、原稿シートの後端部が搬送従動ローラ８０近傍に位置した場合、当該原稿シートの後端部は、搬送従動ローラ８０の回転に伴う突部８１Ａとの接触により、上部カバー７０の第１面に向かって移動し、逆走防止リブ７５の傾斜面７６と接触する。そして、逆走防止リブ７５の傾斜面７６と接触することにより、当該原稿シートの後端部は、シート搬送路Ｒ上の元の位置に戻る。この点、図５、図８等に示すように、搬送従動ローラ８０の当接部８１外周面には、多数の突部８１Ａが形成されているため、原稿シートの後端は、搬送従動ローラ８０の回転に伴う突部８１Ａの接触が起こる度に、逆走防止リブ７５の傾斜面７６と断続的に接触する。
【００６２】
この場合において、原稿シートの後端部は、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触により損傷するが、傾斜面７６との接触が少ない回数であれば、損傷の程度は軽微なものとなる。一方、原稿シートの後端部における同一箇所が、傾斜面７６と多数回に亘って接触してしまうと、損傷の程度が傷として視認可能な程度にまで大きくなり、原稿シートの見栄えを低下させてしまう場合がある。
【００６３】
この点、多機能機１においては、搬送従動ローラ８０の回転に伴い、原稿シートの後端部が断続的に、逆走防止リブ７５の傾斜面７６に接触する場合であっても、上述した傾斜面７６との接触に伴う傾斜面７６からの反力の作用により、原稿シートは、少しずつ搬送方向下流側に移動し、且つ、当該傾斜面７６が、上部カバー７０の第１面に平行な平面において、原稿シートの後端に対しても斜めに延びているため、傾斜面７６と接触する部分を、原稿シート後端部の異なる位置（原稿シートの幅方向に異なる位置）に変更し得る。従って、当該多機能機１によれば、搬送従動ローラ８０の回転によって、原稿シートの後端部が逆走防止リブ７５の傾斜面７６に断続的に接触する場合であっても、原稿シートの後端部において、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触部分を分散させることができ、原稿シートの後端部における見栄えの低下を軽減し得る。
【００６４】
続いて、多機能機１における搬送従動ローラ８０の当接部８１と、逆走防止リブ７５の配設位置の関係について説明する。図１０に示すように、搬送従動ローラ８０の軸方向（多機能機１における前後方向）において、逆走防止リブ７５は、当該逆走防止リブ７５の傾斜面７６における第１点ＰＡが所定の条件を満たすように、最も近い当接部８１から離間した位置に形成される。
【００６５】
ここで、傾斜面７６上の第１点ＰＡについて、図８を参照しつつ説明する。第１点ＰＡを説明する上で、搬送方向における原稿シートの後端部の位置と、傾斜面７６との接触による損傷の程度について考察する。上述したように、原稿シートの後端部は、搬送従動ローラ８０の回転に伴う突部８１Ａとの接触により、上部カバー７０の第１面側に向かって移動しようとする。原稿シートの後端部が突部８１Ａとの接触により移動する関係上、原稿シートの後端部は、当接部８１における最も搬送方向下流側の表面に当該原稿シートの後端部が位置する場合に、上部カバー７０の第１面側に向けて最も大きく移動することになる。即ち、この状態の場合、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触によって、原稿シートの後端部が、最も大きく損傷すると考えられる。そして、原稿シートの後端部は、搬送従動ローラ８０の軸方向と略平行に延びているため、この場合に原稿シートの後端部と接触する傾斜面７６上の点は、前記当接部８１に沿って、軸方向に延びた延長線上に位置する。本実施形態においては、この点を「第１点ＰＡ」といい、「搬送方向に沿った観点で考察した場合に、当該搬送従動ローラ８０の回転によって、上部カバー７０の第１面に対して最も大きく近接・離間する（原稿シートの後端部のばたつきが大きくなる）原稿シートの後端部が接触する傾斜面７６上の点を意味する。
【００６６】
続いて、搬送従動ローラ８０の回転に伴う原稿シートの後端部の移動量（即ち、第１面に対して鉛直方向への移動量）について、搬送従動ローラ８０の軸方向の観点から考察する。上述したように、搬送従動ローラ８０は、３つの当接部８１と、ローラ軸８２により構成されており、各当接部８１は、相互に間隔を隔てて、ローラ軸８２に取り付けられている（図９参照）。当接部８１と接触する部分が、上部カバー７０の第１面に対する移動量が最も大きい部分となり、当接部８１から軸方向に離間する程、上部カバー７０の第１面に対する移動量が小さくなる。
【００６７】
逆走防止リブ７５は、ローラ軸８２に沿った軸方向において、当該逆走防止リブ７５に対して最も近い当接部８１の端面から離間した位置に、前記第１点ＰＡが位置するように、前記上部カバー７０の第１面に立設されている（図１０参照）。具体的には、逆走防止リブ７５の配設位置は、鉛直方向における第１点と、当該逆走防止リブ７５に最も近い当接部８１の端面及び当該端面における最も上部カバー７０の第１面側に位置する点（以下、第２点ＰＢ）との位置関係によって定められている。即ち、図１０に示すように、前記逆走防止リブ７５における第１点ＰＡと、当接部８１端面における第２点ＰＢを結ぶ線と、前記第２点を鉛直方向に通る線によってなす角度θが、６５度以上であり、且つ、９０度よりも小さくなる位置に、第１点ＰＡが位置するように、軸方向における逆走防止リブ７５の配設位置は定められている。
【００６８】
図１０に示すように、当該多機能機１は、逆走防止リブ７５の傾斜面７６上で原稿シートの後端部を最も損傷させ得る第１点ＰＡが、上述した条件を満たすように、逆走防止リブ７５を形成することによって、当該第１点ＰＡを、最も近い当接部８１から軸方向に所定距離以上離間させることができる。そして、最も近い当接部８１から軸方向への距離は、原稿シートの後端部に対する損傷の程度に対応するので、多機能機１は、逆走防止リブ７５を、上述のように形成することで、逆走防止リブ７５の傾斜面７６との接触による原稿シートの後端部の損傷を最低限に抑え得る。
【００６９】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、本発明に係るシート搬送装置を、多機能機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ＡＤＦを有するスキャナ装置や、画像形成装置に適用することも可能である。
【００７０】
又、本実施形態においては、搬送従動ローラ８０は、３つの当接部８１と、ローラ軸８２により構成されていたが、この態様に限定されるものではなく、当接部８１の数や軸方向への長さ等、種々の変更を行うことができる。
【００７１】
更に、本実施形態においては、逆走防止リブ７５は、搬送従動ローラ８０を基準として搬送方向下流側における４箇所に立設していたが、この態様に限定されるものではない。搬送従動ローラ８０を基準として搬送方向下流側において、ローラ軸８２の両端側及び中央部分に配設されていればよく、逆走防止リブ７５の数は、適宜変更することができる。
【００７２】
そして、逆走防止リブ７５の傾斜面７６は、上部カバー７０の第１面と平行な平面において、前記搬送従動ローラ８０の軸方向に対して斜めに延びていればよく、種々の態様を採用し得る。例えば、上部カバー７０の第１面と平行な平面において、搬送従動ローラ８０の軸方向に対して、直線状に斜めに延びている構成であってもよい。
【符号の説明】
【００７３】
１ 多機能機
３０ シートカバー
５０ シート搬送ユニット
６０ ユニット本体部
７０ 上部カバー
７５ 逆走防止リブ
７６ 傾斜面
８０ 搬送従動ローラ
８２ ローラ軸
８１ 当接部
８１Ａ 突部
Ｒ シート搬送路
【特許請求の範囲】
【請求項１】
シートが搬送される搬送経路の一部を構成するカバー部材と、
前記カバー部材における前記搬送経路側の第１面に沿って回転自在に配設され、前記シートを搬送経路に沿って所定の搬送方向へ搬送するローラ部材と、
前記ローラ部材より搬送方向下流側に位置し、当該ローラ部材によって搬送されたシートが排出される排出トレイと、を有するシート搬送装置であって、
前記ローラ部材は、
円柱形状に形成され、外周面に多数の突部を有する当接部と、
前記搬送方向と直交する方向に延び、複数の当接部を相互に間隔を隔てて保持するローラ軸と、により構成され、
前記カバー部材は、
前記搬送経路と直交する軸方向において、前記ローラ部材におけるローラ軸のみが存在する部分の前記搬送方向下流側に、前記第１面から前記搬送経路に向かって立設されたリブを有し、
前記リブは、
前記第１面に対して鉛直な鉛直方向において、前記搬送経路側から前記第１面に近接する方向であって、前記搬送方向下流側へ傾斜した傾斜面を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項２】
請求項１記載のシート搬送装置であって、
前記リブは、
前記当接部の最も搬送方向下流側に位置する表面に沿って、軸方向に延びた延長線上に位置する前記傾斜面上に、第１点を有し、
前記鉛直方向において、前記第１点と、当該リブに最も近い当接部の端面において、最も第１面に近い第２点を結ぶ線と、前記第２点を鉛直方向に通る線によってなす角度が、６５度以上であり、且つ、９０度よりも小さくなる位置に形成されることにより、
前記軸方向において、前記第１点が当該リブに最も近い当接部の端面から離間した位置に位置するように、前記カバー部材の第１面に立設されている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項３】
請求項１又は請求項２記載のシート搬送装置であって、
前記リブの傾斜面は、
前記第１面と平行な平面において、前記軸方向に対して斜めに延びている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項４】
請求項１乃至請求項３の何れかに記載のシート搬送装置であって、
前記カバー部材は、
前記ローラ部材を構成するローラ軸における両端部分と、当該ローラ軸における中央部分において、
当該ローラ部材よりも搬送方向下流側に、夫々、前記リブを有している
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項１】
シートが搬送される搬送経路の一部を構成するカバー部材と、
前記カバー部材における前記搬送経路側の第１面に沿って回転自在に配設され、前記シートを搬送経路に沿って所定の搬送方向へ搬送するローラ部材と、
前記ローラ部材より搬送方向下流側に位置し、当該ローラ部材によって搬送されたシートが排出される排出トレイと、を有するシート搬送装置であって、
前記ローラ部材は、
円柱形状に形成され、外周面に多数の突部を有する当接部と、
前記搬送方向と直交する方向に延び、複数の当接部を相互に間隔を隔てて保持するローラ軸と、により構成され、
前記カバー部材は、
前記搬送経路と直交する軸方向において、前記ローラ部材におけるローラ軸のみが存在する部分の前記搬送方向下流側に、前記第１面から前記搬送経路に向かって立設されたリブを有し、
前記リブは、
前記第１面に対して鉛直な鉛直方向において、前記搬送経路側から前記第１面に近接する方向であって、前記搬送方向下流側へ傾斜した傾斜面を有する
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項２】
請求項１記載のシート搬送装置であって、
前記リブは、
前記当接部の最も搬送方向下流側に位置する表面に沿って、軸方向に延びた延長線上に位置する前記傾斜面上に、第１点を有し、
前記鉛直方向において、前記第１点と、当該リブに最も近い当接部の端面において、最も第１面に近い第２点を結ぶ線と、前記第２点を鉛直方向に通る線によってなす角度が、６５度以上であり、且つ、９０度よりも小さくなる位置に形成されることにより、
前記軸方向において、前記第１点が当該リブに最も近い当接部の端面から離間した位置に位置するように、前記カバー部材の第１面に立設されている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項３】
請求項１又は請求項２記載のシート搬送装置であって、
前記リブの傾斜面は、
前記第１面と平行な平面において、前記軸方向に対して斜めに延びている
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項４】
請求項１乃至請求項３の何れかに記載のシート搬送装置であって、
前記カバー部材は、
前記ローラ部材を構成するローラ軸における両端部分と、当該ローラ軸における中央部分において、
当該ローラ部材よりも搬送方向下流側に、夫々、前記リブを有している
ことを特徴とするシート搬送装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２０１２−２３６７０７（Ｐ２０１２−２３６７０７Ａ）
【公開日】平成２４年１２月６日（２０１２．１２．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−１０８２９４（Ｐ２０１１−１０８２９４）
【出願日】平成２３年５月１３日（２０１１．５．１３）
【出願人】（０００００５２６７）ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１２月６日（２０１２．１２．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年５月１３日（２０１１．５．１３）
【出願人】（０００００５２６７）ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Ｆターム（参考）】
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