説明

シート敷設装置

【課題】開孔片の貼り付け位置を正確に設定して貼り付き漏れがないようにして、めくれを確実に防止できる構成の孔開け機構を備えたシート敷設装置を提供する。
【解決手段】種子テープとポリエチレン等のシートを同時に繰り出して敷設するシート敷設装置において、保持部材に支持され、切断開孔部の上流に折り曲げ部を残してシートSを切断する刃11と、刃11を支持する刃支持部11Aと、界面活性剤を収容したタンク20Aとパイプ20Bにより連通され、該界面活性剤をシートSに滴下可能な吐出管20cを有する界面活性剤供給手段20と、パイプ20Bの延長方向途中で界面活性剤供給手段20に該界面活性剤が流れる前に相当する位置に配置されている電磁弁21とを備え、刃11によるシートSの押し切り位置近傍で非開孔部表面に界面活性剤を滴下することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートと種子テープを同時に敷設するシート敷設装置に関し、さらに詳しくは、発芽用開孔部をシートに形成した際に生成される開孔片の貼り付けを行う孔開け機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、種子テープとポリエチレンなどが用いられるシートとを敷設するシート敷設装置においては、種子テープに設けられた種子の位置に対応するシート側に発芽用の開孔を設けることが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、シートリールから繰り出されるシートにおける種子テープの種子位置を対象として、スリット状に切り込みを入れることができる昇降可能な刃を用いて、例えば矩形の一片を残して三片を切り込み、コ字形の舌片状の切断部を設ける構成が開示されている。
【0003】
一方、前記特許文献1に開示されているようにシートに切り込みを入れることで舌片状の切断部を設けた場合には、舌片がシートの表面と面一となったままとなり、種子の位置を覆った状態になることがある。そこで、切断後に舌片を強制的に折り返すことで確実に開孔部を形成できるようにした構成も本出願人により提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2には、種子テープ上の種子の位置に合わせてシート側に舌片部を形成した後、舌片を折り返し手段を構成する折り曲げ部を通過させる過程で反転させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−65522号公報
【特許文献2】特開2007−202509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開孔部を形成するために折り返される舌片部は、シート側の非開孔部に重ねられ、図4に示すように、畑などの土壌にシートを敷設する際、土壌側とシートの非開孔部との間に位置するように施工される。
ところで、種子からの発芽を促す目的で開孔部を設ける場合には、単に舌片部が折り返されただけでは強風などの外力により舌片部がめくれてしまうことがある。
このため、図4に示した施工状態を得ようとしても、めくれてしまった舌片部によって開孔部が塞がれていることもあり、種子からの発芽ができなくなることがある。
【0006】
そこで、特許文献2に開示されているように、折り返された舌片をシート側の非開孔部表面に貼り付けるようにした構成が提案されている。
特許文献2には、舌片部の貼り付けを行う構成として、シートの非開孔部表面に糊付けを行う構成が開示されている。
【0007】
しかし、この構成の場合、糊が非開孔部表面に接触するまでに必要とされる糊支持体の移動ストロークが糊の消費量に応じて変化するため、その移動ストローク調整が難しいという問題がある。
また、糊付け位置は、穿孔位置を基準として折り返された舌片部が非開孔部表面に接触する位置であることが重要となる。このため、穿孔作業に用いられる昇降可能な刃の位置を基準として糊支持体が位置決めされる。
しかし、糊支持体が昇降可能な刃の支持部と一体化されている場合には、舌片部を有するシートが同一面において昇降方向と直角な方向に移動することから、糊支持体に対して剪断方向の力が作用する。このため、糊支持体の位置が初期段階での位置と異なってしまうこともあるが、その際の位置調整が難しいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記従来のシート敷設装置、特に折り返された舌片状の開孔片の貼り付けにおける問題に鑑み、開孔片の貼り付け位置を正確に設定して貼り付き漏れがないようにして、めくれを確実に防止できる構成の孔開け機構を備えたシート敷設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明による請求項1記載のシート敷設装置は、
種子テープと樹脂シートを同時に繰り出して敷設するシート敷設装置において、
保持部材に支持され、切断開孔部の上流に折り曲げ部を残してシートを切断する刃と、
前記刃を支持する刃支持部と、
界面活性剤を収容したタンクとパイプにより連通され、該界面活性剤を前記シートに滴下可能な吐出管を有する界面活性剤供給手段と、
前記パイプの延長方向途中で前記界面活性剤供給手段に該界面活性剤が流れる前に相当する位置に配置されている電磁弁と、
前記保持部材を昇降する駆動手段と、
前記刃がシートを押し切る時にシートの逃げを防止するための受け台と、前記折り曲げ部でシートにつながる開孔片を折り返す折返し手段と、
前記界面活性剤が付着したシートに前記開孔片を接着する折返し接着手段と、
を備えて構成されている。
【0010】
本発明による請求項2記載のシート敷設装置は、請求項1記載の発明において、
前記界面活性剤供給手段の近傍には、前記シートにおける非開孔面に前記界面活性剤を塗布するブラシが設けられて構成されている。
【0011】
本発明による請求項3記載のシート敷設装置は、請求項2記載の発明において、
前記ブラシは、前記折り返された開孔片が非開孔面に接触する前に前記界面活性剤を滴下できる位置に設けられて構成されている。
【0012】
本発明による請求項4記載のシート敷設装置は、請求項1記載の発明において、
前記電磁弁は、前記保持部材とは別に位置する不動部に設けられて構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシート敷設装置によれば、界面活性剤供給手段を用いて界面活性剤を滴下することにより界面活性剤をシートの非開孔部表面に拡散させることができるので、界面活性剤供給手段に剪断力などを作用させることがない。この結果、不用意な力が界面活性剤の滴下位置に作用しないので、貼り付け位置に対応した界面活性剤の供給が維持できる。
【0014】
しかも、シートの非開孔部表面に滴下される界面活性剤は、ブラシにより非開孔部表面に塗布される際にブラシ幅領域内で均されるので、液滴を均一供給することができ、液滴の均一拡散に加えて厚さのムラを防止できる。この結果、開孔片が貼り付く範囲に確実に界面活性剤を存在させて開孔片の貼り付けを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態によるシート敷設装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示したシート敷設装置の作用を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態によるシート敷設装置により得られるシートの状態を示す斜視図である。
【図4】シート敷設施工状態の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明によるシート敷設装置1の分解斜視図であり、同図においてシート敷設装置1は、刃ユニット10と界面活性剤供給手段20とを備えている。
刃ユニット10は、その詳細が本願出願人の先願である特許文献2に開示されている構成を備えており、図2を用いてその概略を説明すると次の通りである。
【0017】
図2において、刃ユニット10は、刃11を有する刃支持部11Aと刃支持部11Aに設けられている刃11により押し切られたシートSから生成される舌片状の開孔片を折り返す折り返し部材12とを備えている。
【0018】
刃ユニット10は、筐体10Aの内部に設けられた駆動部材13により昇降可能な保持部材10Bを備えており、保持部材10Bには、リンク機構部10Cを介して保持部材10Bと同様に昇降可能な刃11を備えた刃支持部11Aが一体化されている。
【0019】
折り返し部材12は、刃ユニット10側の刃支持部11Aに延長方向一端が支持されており、その先端がシートSの移動路内に進出している。
折り返し部材12は、刃支持部11A側に掛け止められているバネ12AによりシートSに向けた移動習性をもち、刃11により押し切られたシートSの開孔片に接触して開孔片を折り返すとともに、折り返した開孔片をシートSの非開孔部表面に押しつける部材として用いられる。
【0020】
シートSの移動路を挟んで刃11と対向する位置には、受け台14が設けられている。
受け台14は、上方に向け付勢されて可撓性を有した折り返し板14Aを備えており、刃11により押し切られた舌片状の開孔片が折り返し板14Aに乗り上げることで、図2(B)において二点鎖線で示すように、開孔片S1を反転させて折り返す部材として用いられる。
【0021】
一方、界面活性剤供給手段20は、図1に示すように、界面活性剤が収容されているタンク20Aに対してパイプ20Bにより連通された吐出管20Cを備えている。
【0022】
タンク20Aには、界面活性剤として、シートSを貼り付けることができる特性を有した石けん水や農業用の展着剤が収容されている。
【0023】
パイプ20Bの延長方向途中には、界面活性剤供給手段20の吐出管20Cに界面活性剤が流れる前に相当する位置に電磁弁21が配置されている。
電磁弁21は、後述する支持ブラケット22により、可動部である刃ユニット10側の保持部材10Bとは別の不動部に相当する筐体10Aによって支持されている。
電磁弁21は、少なくとも刃11によるシートSの押し切りが行われる前の時点で界面活性剤の供給が行える態位を設定されるようになっており、押し切られた開孔片の貼り付け準備を可能にしている。なお、電磁弁21の解放時期は、刃11の押し切りと同時であっても良い。
【0024】
界面活性剤供給手段20は、電磁弁21とともに電磁弁21が取り付けられた支持ブラケット22により刃ユニット10の筐体10Aに支持されている。これにより、可動部の稼動状態に関係なく、常に、界面活性剤の滴下位置、つまり、吐出管20Cの位置を変化させないように維持することができる。
【0025】
一方、刃ユニット10の筐体10Aには、図1に示すように、界面活性剤供給手段20の吐出管20Cが位置する面と同じ面に、シートSの表面に接触可能なブラシ23が設けられている。
ブラシ23は、筐体10Aに締結される支持ブラケット23Aにより筐体10Aに対して一体的に取り付けられている。
【0026】
ブラシ23は、シートSの表面に接触することにより界面活性剤供給手段20の吐出管20Cから滴下された界面活性剤に接触することになる。そしてシートS表面に滴下された界面活性剤をブラシ自身の幅の領域でシートSの表面に均しながら塗布する。
【0027】
なお、図1において、符号30は、刃ユニット10を畝幅方向に移動させるために用いられるレール部材を示し、符号31は、タンク20Aを刃ユニット10と一体的に支持するための支持部材を示し、符号32は、吐出管20Cの保持用ロックバンドを示している。
【0028】
本実施形態は以上のような構成であるから、その作用を図2に基づき説明すると次の通りである。
シートSは受け台14に設けられている折り返し板14Aを押し下げて受け台14の上面を移動する(図2(A))。
このとき、シートSは、折り返し部材12により押圧されることで皺の発生を抑えられて土壌表面に密着することができる。
【0029】
シートSに開孔片を形成する際には、図2(B)に示すように、刃ユニット10の刃支持部11Aが下降してシートSを押し切る作業が行われる。
これに先立ち、界面活性剤供給手段20では、電磁弁21が開放され、タンク20Aから界面活性剤が吐出管20Cに向け流されることで吐出管20Cから界面活性剤がシートSの表面に滴下(図2(B)中、符号Dで示す状態)される。
シートSの表面に滴下された界面活性剤は、シートSが移動するのに合わせてブラシ23の少なくとも幅領域内で均されながら均一に塗布される。
【0030】
図2(B)に示したように、刃11によってシートSが押し切られると刃11は上昇して初期位置に複動する一方、押し切られることにより舌片状をなす開孔片S1は、受け台14側の折り返し板14Aに乗り上げることで反転される。
【0031】
反転された状態の開孔片(図2(C)中、符号S1で示す部分)は、図2(C)に示すように、折り返し部材12により押圧されることによりシートSの非開孔部表面に押しつけられ、その位置に塗布されている界面活性剤に接触して非開孔部表面に貼り付けられる。
【0032】
図3は、図2に示した工程によるシートSの接合状態を示しており、図2において折り返された開孔片(便宜上、符号S1で示す)がシートSの非開孔部表面に貼り付けられている。
【0033】
以上のような構成においては、シートSの開孔片を非開孔部表面に接着するために用いられる界面活性剤供給手段20が電磁弁21とともに刃ユニット10内での可動部である保持部材10Bとは別の不動部に取り付けられているので、可動部の機械的誤差や経時的な寸法誤差に関係なく、界面活性剤の滴下位置を適正な位置に維持することができる。
しかも、界面活性剤の滴下作業で済むことにより、移動するシートSからの剪断力を受けることもないので、滴下位置の狂いを防止して折り返された開孔片を正確な位置で接着することができる。
さらに、滴下された界面活性剤は、単に滴下にとどまらず、ブラシによってシートSの表面で均されながら塗布されるので、均一な液膜厚さを設定して接着強度を均一化することができる。これにより、強風などの影響による開孔片のめくれが生じにくいシート敷設装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によるシート敷設装置は、大規模農家における播種作業の効率を大幅に改善できるため、農業分野で広く利用できる。農業機械の製造分野においても同様に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 シート敷設装置
10 刃ユニット
11 刃
11A 刃支持部
20 界面活性剤供給手段
20C 吐出管
21 電磁弁
23 ブラシ
S シート
S1 開孔片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子テープと樹脂シートを同時に繰り出して敷設するシート敷設装置において、
保持部材に支持され、切断開孔部の上流に折り曲げ部を残してシートを切断する刃と、
前記刃を支持する刃支持部と、
界面活性剤を収容したタンクとパイプにより連通され、該界面活性剤を前記シートに滴下可能な吐出管を有する界面活性剤供給手段と、
前記パイプの延長方向途中で前記界面活性剤供給手段に該界面活性剤が流れる前に相当する位置に配置されている電磁弁と、
前記保持部材を昇降する駆動手段と、
前記刃がシートを押し切る時にシートの逃げを防止するための受け台と、前記折り曲げ部でシートにつながる開孔片を折り返す折返し手段と、
前記界面活性剤が付着したシートに前記開孔片を接着する折返し接着手段と、
を備えて構成したシート敷設装置。
【請求項2】
前記界面活性剤供給手段の近傍には、前記シートにおける非開孔面に前記界面活性剤を塗布するブラシが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート敷設装置。
【請求項3】
前記ブラシは、前記折り返された開孔片が非開孔面に接触する前に前記界面活性剤を滴下できる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のシート敷設装置。
【請求項4】
前記電磁弁は、前記保持部材とは別に位置する不動部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート敷設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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