説明

シート材切断装置

【課題】シート材切断装置において、回転刃の昇温やシート材の一部溶着を確実に防止して、適正な切断を長時間に渡り可能とすることを前提として、冷却液の補充を確実で且つ短時間で行えるようにする。
【解決手段】作業支持台2と、回転刃16により作業支持台2上のシート材Wを切断する切断ヘッド3と、切断ヘッド3を移動させるヘッド移動機構4と、冷却液を貯留するタンク35及びこのタンク35内の冷却液を回転刃16に付着させる冷却具36を有して切断ヘッド3に設けられた冷却手段5と、タンク35へ冷却液を補充する補充手段6とを具備しており、補充手段6は、冷却液を貯留する貯留部70と、タンク35への給水時に当該タンク35と貯留部70との間を相互連通させる送り配管部47及び戻り配管部48と、給水時に戻り配管部48内を負圧にさせる負圧発生装置71とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生地等の薄いシート材を切断する装置として、シート材を広げて支持する作業支持台と、水平な回転軸まわりに回転する回転刃により作業支持台上のシート材を切断する切断ヘッドと、この切断ヘッドを前記作業支持台の上方で移動(水平移動、旋回動作及び昇降動作の組み合わせ)させるヘッド移動機構とを有したものが知られている。この種、切断装置では、回転する回転刃とシート材又は作業支持台との間で摩擦が生じるため、回転刃が昇温し、シート材が化繊等である場合には、シート材の一部(繊維など)が刃先に溶着する問題があった。
【0003】
そこで本出願人は、嘗て、回転刃に冷却液を付着させて冷却させる技術を開発して特許出願し、特許されている(特許文献1参照)。この先願に係る装置(以下、先願装置)では、適量の冷却液を貯留するタンクを切断ヘッドに搭載させている。そして、このタンクの冷却液が減少したときには、ヘッド移動機構によって切断ヘッドを作業支持台の一側部などへ設置した貯留部(タンクよりも貯留量の多い大型タンク)まで移動させ、この貯留部からタンクへと冷却液の補充を行わせる構造としていた。
【0004】
切断ヘッドに搭載したタンクには、冷却液の液面が所定水位を割った時点を検出する水位センサを設けて、冷却液の補充タイミングを判断できるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4497867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記先願装置の開発により、回転刃を確実に冷却させ、シート材の一部溶着を防止することは可能となったが、切断ヘッドに設けたタンクへ冷却液を補充するに際して、水位センサが検出誤動作や検出不良などを稀に起こす問題があった。水位センサが検出誤動作や検出不良などを起こすのは、冷却液の表面張力をはじめ、タンク内の冷却液が切断ヘッドの移動に伴って液面揺れを生じることや、水位センサまわりの明るさが一定しないことなどが要因として考えられる。
【0007】
一方で、タンクへ冷却液を補充するために必要とされる時間を短縮して、シート材の切断に係るサイクルタイムを可及的に短くしたいとの要請もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、回転刃に対するシート材の一部溶着を確実に防止して、適正な切断を長時間に渡り可能とすることを前提として、冷却液の補充を確実で且つ短時間で行えるようにしたシート材切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係るシート材切断装置は、シート材を広げて支持する作業支持台と、水平な回転軸まわりに回転する回転刃により作業支持台上のシート材を切断する切断ヘッドと、この切断ヘッドを前記作業支持台の上方で移動させるヘッド移動機構と、冷却液を貯留するタンク及びこのタンク内の冷却液を前記回転刃に付着させる冷却具を有して前記切断ヘッドに設けられた冷却手段と、前記タンクへ冷却液を補充する補充手段とを具備しており、前記補充手段は、冷却液を貯留する貯留部と、少なくとも前記冷却手段のタンクへの給水時に当該タンクと前記貯留部との間を相互連通させる送り配管部及び戻り配管部と、前記給水時にタンクから戻り配管部を介して貯留部に至る経路内の一部を負圧にさせる負圧発生装置とを有していることを特徴とする。
【0009】
前記ヘッド移動機構は、作業支持台上を跨って架設されたY軸ガイドレールを有してこのY軸ガイドレールで前記切断ヘッドを保持するものであって、前記Y軸ガイドレールは、当該Y軸ガイドレールの長手方向と平面視直交する方向に沿って作業支持台上をX軸移動可能とされていると共に、前記切断ヘッドは、前記Y軸ガイドレールの長手方向に沿ってY軸移動可能なものとすればよい。
【0010】
そのうえで、前記補充手段は、前記負圧発生装置がY軸ガイドレールの一端側に配設されており、前記送り配管部及び戻り配管部は、前記負圧発生装置と前記貯留部とを接続する元配管部と、前記冷却手段に付随して前記切断ヘッドに設けられ前記元配管部とは分離した遊離配管部とを有して、前記給水時には切断ヘッドのY軸移動を伴って負圧発生装置と遊離配管部とが連通接続される構成とすればよい。
【0011】
なお、ここにおいて「Y軸」の方向や「X軸」の方向は、平面視したときにこれらY軸とX軸とが互いに直交していることを特定したものであって、作業支持台やこの作業支持台上で支持されるシート材に対する固有の方向を限定したものではない。
この場合、前記補充手段は、貯留部が作業支持台の一側部に設置されたものとすればよい。
【0012】
前記補充手段の送り配管部及び戻り配管部は、前記冷却手段のタンク上部からタンク内へ連通する状態で垂下する各別の立管部を有しており、タンクにはこれら立管部の各管端より上部にも貯留水位が確保されたものとするのが好適である。
前記補充手段による前記冷却手段への冷却液給水動作は、前記ヘッド移動機構による切断ヘッドの移動量情報に基づいて制御される構成とすればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るシート材切断装置によれば、回転刃に対するシート材の一部溶着を確実に防止して、適正な切断を長時間に渡り可能とすることを前提として、冷却液の補充を確実で且つ短時間で行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るシート材切断装置の第1実施形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係るシート材切断装置の第1実施形態を示した平面図である。
【図3】切断ヘッドを示した側面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】タンクの上昇時を示した切断ヘッドの断面図(図3のA−A線断面図に対応)である。
【図6】タンクの給水時を示した切断ヘッドの断面図(図3のA−A線断面図に対応)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図6は、本発明に係るシート材切断装置1の第1実施形態を示している。このシート材切断装置1は、シート材Wを広げて支持する作業支持台2と、この作業支持台2上のシート材Wを切断する切断ヘッド3と、この切断ヘッド3を移動させるヘッド移動機構4とを有している。またこのシート材切断装置1では、切断ヘッド3に対して冷却手段5が設けられており、この冷却手段5に対して冷却液を補充するための補充手段6が設けられている。
【0016】
なお、本第1実施形態では、シート材Wが長方形状に切断された生地であって、この生地から衣類などを仕立てるうえで必要とされる種々様々な形状をした生地パーツPを切り出す場合を説明する。
まず、シート材切断装置1の概要を説明する。
作業支持台2は、一対のローラ7に対して通気性素材で形成されたベルト8を巻回することで、台上面(上部張り側ベルトの上面)を水平面とした駆動ベルトコンベアが構成されたものとしてある。従って、この作業支持台2の上流側(図2右側)から供給されるシート材Wを台上面の所定位置(切断位置)へ搬入し、またシート材Wから切り出された生地パーツPを作業支持台2の下流側(図2左側)へ搬出できるものとしてある。作業支持台2から搬出された生地パーツPは、吸着移送装置9などによって積層等によるストック位置10へと移送される。
【0017】
この作業支持台2に対してシート材Wを固定するには、シート材Wに対する切断位置(切断ヘッド3の下方位置)又は台上面の全面を、台上面を介して台下方へ吸引することにより、シート材Wの一部又は全部を台上面に吸い付ける方法等が採用される。なお、作業支持台2は、固定の台などによって構成することもできる。
切断ヘッド3は、図3に示すように、水平な回転軸15に支持されて当該回転軸15のまわりで回転可能とされた回転刃16を有している。この回転刃16は、外周部全周に刃先を有する金属製の円板刃である。この切断ヘッド3は、回転刃16の上方に設けられたモータ17の出力軸からベベルギヤ機構等の伝動手段18を介して側方の巻掛け伝動手段19(図4乃至図6参照)を駆動し、この巻掛け伝動手段19によって回転軸15に回転駆動を伝え、この回転軸15と共に回転刃16を一体回転させる構造となっている。
【0018】
本第1実施形態では、回転刃16の下側の刃先を取り囲む(上下に貫通するスリットに回転刃16の下側の刃先を差し入れる)状態で押さえ板20を設けてある。この押さえ板20は、上下方向のスライドをガイドするスライドガイド21(図4乃至図6参照)によって上下動自在に支持され、当該押さえ板20の自重により、回転刃16の下端よりも若干下となる高さを維持するように保持されている。
【0019】
従って、回転刃16の下端が作業支持台2上のシート材Wを切断するときに、押さえ板20がその自重によってシート材Wを作業支持台2上へ押さえるようになっている。
ヘッド移動機構4は、図1及び図2に示すように、作業支持台2の上方を幅方向(図2の上下方向であって、以下「Y軸方向」と言う)に跨って(横断して)架設されたY軸ガイドレール25を有している。このY軸ガイドレール25の両端部には、作業支持台2の両側部上で所定高さを保持させる移動脚部26が設けられている。この移動脚部26は、作業支持台2の両側部上を、Y軸ガイドレール25の長手方向に平面視直交する方向(図2の左右方向であって、以下「X軸方向」と言う)に沿って移動自在とされている。
【0020】
Y軸ガイドレール25には、その長手方向(Y軸方向)に沿って移動自在となる移動台部27が設けられており、この移動台部27に、昇降機構28及び旋回機構29を介して前記した切断ヘッド3が設けられている。すなわち、この移動台部27の移動を受けて、切断ヘッド3は、Y軸ガイドレール25の長手方向に沿ったY軸移動が可能となっている。
【0021】
移動脚部26をX軸移動させる駆動部や、移動台部27をY軸移動させる駆動部は、ロッドレスシリンダをはじめ、チェーンやベルト等の巻掛機構、伸縮式の流体圧シリンダ、ネジ送り機構等を採用することができる。
移動台部27に設けられる昇降機構28は、切断ヘッド3の回転刃16を、作業支持台2上のシート材Wを切断可能な下降位置と、シート材W上方へ浮き上がらせる上昇位置との間で昇降させるためのものである。この昇降機構28は、例えば、流体圧シリンダやラックとピニオンを組み合わせたモータ駆動機構、ソレノイド等により構成される。
【0022】
また、移動台部27に設けられる旋回機構29は、切断ヘッド3の回転刃16を、縦軸回りに旋回させるためのものである。この旋回機構29は、例えば、回転刃16を回転駆動させるモータ17の外周部に、外歯のリングギヤ30(図3乃至図6参照)を同軸配置で設けておき、これらモータ17、リングギヤ30、回転刃16を一体で縦軸まわりに旋回自在とし、そのうえでリングギヤ30をパルスモータ31(図1参照)などで回転駆動させる構成とすればよい。
【0023】
このような構成のヘッド移動機構4では、Y軸ガイドレール25のX軸移動と、移動台部27のY軸移動との組み合わせによって切断ヘッド3(回転刃16)を水平移動させ、この水平移動の移動方向に対して回転刃16の下側の刃先を向けるように旋回機構29を駆動させ、また非切断位置では昇降機構28の駆動により回転刃16をシート材Wの上方へ浮き上げさせるものである。
【0024】
次に、切断ヘッド3に対して設けられた冷却手段5について説明する。
冷却手段5は、図3乃至図6に示すように、冷却液を貯留するタンク35と、このタンク35内の冷却液を回転刃16に付着させる冷却具36とを有している。また、冷却手段5には冷却中断機構37が設けられている。
冷却液としては、水、シリコン油、アルコールなど種々のものを利用可能であるが、冷却効率、コスト等の観点から水を利用するのが好適である。
【0025】
タンク35は、上部解放の箱形をしたタンク本体40と、このタンク本体40の上部を塞ぐ蓋体41とを有している。タンク本体40は、切断ヘッド3と一緒に移動させる(殊に旋回させる)という事情から、あまり大型にはできない。とは言え、小さすぎると冷却液を頻繁に補充しなければならず、シート材切断装置1としての稼働効率に影響を及ぼすことになる。
【0026】
従って、タンク容量として、ある程度の上限・下限が設けられるが、冷却液の消費量はシート材Wの材質や面積、厚さ、切断量の大小、使用環境等により左右されることになるので、具体的な数値が限定されるわけではない。本第1実施形態では、約20分の切断で冷却液の補充を1回行うことを目安として、タンク容量を設定するものとした。
なお、このタンク35には、蓋体41を上下に貫通して、後述する送り配管部47用の立管部45と戻り配管部48用の立管部46とが設けられている。そして、これら立管部45,46における下側の各管端は、蓋体41の下面よりもタンク内方(下方)へ突出した状態となっている。そのため、前記したタンク容量は、これら立管部45,46における下側の各管端よりも下位側で設定される。また、このタンク35には、立管部45,46における下側の各管端より上部にも、貯留水位が確保されていることになる(その理由については後述する)。
【0027】
冷却具36は、フェルト、布、スポンジ等の吸水性を有する素材により形成するか、又は刷毛やブラシ等の保水性を有する構造としてあり、回転刃16へ向けた先端部には、回転刃16を挟み込むようにスリットが形成されている。冷却具36が刷毛やブラシである場合には、植毛部分間がスリットに相当する。また、冷却具36の後端部は、タンク35の蓋体41又はタンク本体40を貫通してタンク35内へ導入され、タンク35内の冷却液に漬けられるように配置されている。
【0028】
なお、図例では、冷却具36の先端部が回転刃16の上部を挟み込むように配置してあるが、回転刃16の中心高さ付近としたり、やや下寄りとしてもよい。また、ヘッド移動機構4による移動方向の先方でも後方でもよい。
従って、この冷却具36により、毛細管現象等によってタンク35内の冷却液が回転刃16の両面に供給される状態が保持され、回転刃16に冷却液が付着して回転刃16が冷却液の温度で直接冷却されると共に、付着した冷却液の気化を伴って更に冷却されるものとなる。すなわち、切断中における回転刃16の昇温が防止されて、回転刃16の熱に起因したシート材Wの溶着が防止され、その結果、回転刃16の切れ味が長時間にわたり良好に維持され、シート材Wが適正に(確実且つ切断面が綺麗に)切断されることになる。
【0029】
なお、冷却具36のスリットに回転刃16が挟み込まれることで、回転刃16の回転時には当該回転刃16の両面が冷却具36に擦過する状態となる。そのため、回転刃16の両面に付着するシート材Wの切断屑が除去される利点もある。
冷却中断機構37は、切断対象となるシート材Wの材質により回転刃16の冷却が不要な場合や切断装置1の不使用時、或いは回転刃16の研磨時や交換作業時などに、冷却具36を上昇させ、回転刃16から離反させるためのものである。この冷却中断機構37は、図4及び図5に示すように、タンク35の上部に対応する配置として、切断ヘッド3に固定された支持部材50と、この支持部材50から下方突出状に設けられた昇降ガイド(立管部45,46)と、この昇降ガイドに沿ってタンク35を上下動させる昇降操作部52とを有している。
【0030】
支持部材50は直方体のブロック状に形成されており、その内部には、ブロック側面とブロック下面とをL型に繋ぐように貫通する2本の通路43,44が形成されている。一方の通路43は、タンク35に冷却液を送る送り配管部47(詳細は後述する)の一部として用いられ、他方の通路44は、タンク35内の空気を吸引し且つ余剰の冷却液を回収する戻り配管部48(詳細は後述する)の一部として用いられる。すなわち、支持部材50は、タンク35に対して冷却液を供給するための配管部材を兼ねている。
【0031】
昇降ガイドは、2本の立管部45,46によって形成されている。これら立管部45,46は、支持部材50内に形成された各通路43,44に対して、それらの下口側へ内部連通状に接続されている。この昇降ガイド(立管部45,46)に対し、タンク35の蓋体41が上下摺動自在に支持されている。昇降ガイド(立管部45,46)の下端部には、それぞれ、タンク35の下降限界を設定するストッパ53が設けられている。
【0032】
また、支持部材50とタンク35との間には、タンク35を上昇位置で保持させる係止機構54が設けられている。本第1実施形態の係止機構54は支持部材50の下面に埋め込んだ永久磁石55と、タンク35の蓋体41に植設状に設けたアジャスタボルト56とによって構成してある。すなわち、永久磁石55とアジャスタボルト56との吸着により、タンク35が上昇したままの状態に保持される。なお、言うまでもなく、アジャスタボルト56の螺合度合いを調節することで、タンク35の上昇位置を調節することができる。
【0033】
なお、永久磁石55とアジャスタボルト56とは上下逆に入れ替えて配置してもよい。また、アジャスタボルト56は、他の磁性体(ボルト構造を有しないものや突出していないものを含む)に置換可能である。
昇降操作部52は、前記タンク35に対して係脱自在に係合する把持具60と、この把持具60を横移動させる係脱駆動部61と、把持具60を上下動させる昇降駆動部62とを有している。把持具60は、タンク35を上下から把持できるようにコ字型に形成されており、横(水平)移動によってタンク35に係合又は離脱可能となっている。
【0034】
図5に示すように、タンク35を把持具60で把持した状態にして、昇降駆動部62を上昇駆動させたとき、タンク35は、前記係止機構54(永久磁石55とアジャスタボルト56)の吸着で上昇位置を保持するようになる。一方、この状態から昇降駆動部62を下降駆動させると、係止機構54の吸着状態が破壊されてタンク35は下降し、ストッパ53が蓋体41の下面に係止することでタンク35はその下降位置を保持するようになる。
【0035】
図例では、中間ブラケット63に係脱駆動部61を設け、係脱駆動部61で把持具60を中間ブラケット63に対して横移動させると共に、中間ブラケット63を昇降駆動部62で昇降させる構造とした。しかし、中間ブラケット63に昇降駆動部62を設け、昇降駆動部62で把持具60を中間ブラケット63に対して昇降させると共に、中間ブラケット63を係脱駆動部61で横移動させる構造としてもよい。係脱駆動部61や昇降駆動部62は、エアシリンダ、ソレノイド、或いはモータ駆動の巻掛け機構や歯車機構等とすればよい。
【0036】
なお、図示は省略するが、昇降操作部52は、ヘッド移動機構4におけるY軸ガイドレール25の一端部に設けておき、切断ヘッド3をY軸ガイドレール25に沿ってY軸移動させたときに、昇降操作部52を作動させてタンク35の上下動を行わせるようにしてもよい。
次に、冷却手段5(タンク35)に対して冷却液を補充するための補充手段6について説明する。
【0037】
補充手段6は、図1及び図2に示すように、冷却手段5のタンク35よりも大型で十分量の冷却液を貯留できるようにした貯留部70と、この貯留部70と冷却手段5のタンク35との間を相互連通させる送り配管部47及び戻り配管部48と、負圧発生装置71とを有している。
貯留部70は、その容量や設置位置など、特に限定されるものではない。本第1実施形態では作業支持台2におけるY軸方向の一側部であって、且つ、X軸方向の一端部に設置されたものとしている。なお、作業支持台2におけるX軸方向の中間位置、或いは、切断作業位置に合わせて貯留部70を配置してもよいし、場合によっては、Y軸ガイドレール25の一端部などに設けることも可能である。
【0038】
負圧発生装置71は、貯留部70の冷却液をタンク35へ給水する際に、タンク35から戻り配管部48を介して貯留部70に至る経路内の一部を負圧にさせるためのものである。この負圧発生装置71についても、その設置位置は特に限定されるものではない。本第1実施形態では、負圧発生装置71として、エア圧を利用して負圧を生じさせるエジェクター等を採用した。また、この負圧発生装置71は、Y軸ガイドレール25の一端側に配設して、Y軸ガイドレール25と一緒にX軸移動するものとした。
【0039】
送り配管部47は、図1及び図2に示すように、貯留部70と後述する横突出駆動装置82とを直接(負圧発生装置71を経由しないで)接続する送り用の元配管部73と、図4乃至図6に示すように、冷却手段5に付随して切断ヘッド3に設けられる送り用の遊離配管部74とを有している。
これら元配管部73と遊離配管部74との間は、負圧発生装置71と冷却手段5(切断ヘッド3)との間で、互いに分離した関係にあり、冷却手段5のタンク35への給水時にのみ、接続されるようになっている。
【0040】
元配管部73は可撓性ホースなどにより形成されており、Y軸ガイドレール25が作業支持台2上をX軸移動するときに、貯留部70と負圧発生装置71との間を接続し続けることができる長さで形成されている。
これに対し、遊離配管部74は、冷却手段5の冷却中断機構37が具備する支持部材50内の通路43と、この通路43に連通接続された立管部45の管内とによって形成されている。すなわち、遊離配管部74は、切断ヘッド3に設けられており、切断ヘッド3と一緒に、ヘッド移動機構4の作動によって作業支持台2上をY軸移動するようになっている。
【0041】
図4と図6との比較によって明らかなように、これら元配管部73と遊離配管部74との相互間での接続と分離は、これらの一方側に設けられた雄側(プラグ型)コネクタ具80と、他方側に設けられた雌側(ソケット型)コネクタ具81とによる同軸上の抜き差しにより行われる。これら雄側コネクタ具80と雌側コネクタ具81との抜き差しは、負圧発生装置71側に設けられるエアシリンダ等の横突出駆動装置82(図1参照)の作動により、確実に行われるようになっている。
【0042】
戻り配管部48は、図1及び図2に示すように、貯留部70と負圧発生装置71とを接続する戻り用の元配管部75と、図4乃至図6に示すように、冷却手段5に付随して切断ヘッド3に設けられる戻り用の遊離配管部76とを有している。これら元配管部75と遊離配管部76との間は、負圧発生装置71と冷却手段5(切断ヘッド3)との間で、互いに分離した関係にあり、冷却手段5のタンク35への給水時にのみ、接続されるようになっている。
【0043】
元配管部75は可撓性ホースなどにより形成されており、Y軸ガイドレール25が作業支持台2上をX軸移動するときに、貯留部70と負圧発生装置71との間を接続し続けることができる長さで形成されている。
これに対し、遊離配管部76は、冷却手段5の冷却中断機構37が具備する支持部材50内の通路44と、この通路44に連通接続された立管部46の管内とによって形成されている。すなわち、遊離配管部76は、切断ヘッド3に設けられており、切断ヘッド3と一緒に、ヘッド移動機構4の作動によって作業支持台2上をY軸移動するようになっている。
【0044】
図4と図6との比較によって明らかなように、これら元配管部75と遊離配管部76との相互間での接続と分離は、これらの一方側に設けられた雄側(プラグ型)コネクタ具80と、他方側に設けられた雌側(ソケット型)コネクタ具81とによる同軸上の抜き差しにより行われる。これら雄側コネクタ具80と雌側コネクタ具81との抜き差しは、負圧発生装置71側に設けられるエアシリンダ等の横突出駆動装置82(図1参照)の作動により、確実に行われるようになっている。
【0045】
なお、負圧発生装置71側に設けられるコネクタ具(図例では雄側コネクタ具80)には、他方のコネクタ具(図例では雌側コネクタ具81)との接続時の過剰押圧を緩和吸収するために、コイルバネなどを用いたダンパ83を設けてある。
以上を要するに、この補充手段6は、冷却手段5のタンク35へ給水するに際し、まずヘッド移動機構4が作動し、切断ヘッド3をY軸ガイドレール25に沿って、負圧発生装置71が設けられた端部へ向けてY軸移動させ、負圧発生装置71の側近で切断ヘッド3を停止させる。そして、次に負圧発生装置71に設けられた横突出駆動装置82が横突出動作を行い、負圧発生装置71に設けられた雄側コネクタ具80を、冷却手段5のタンク35(切断ヘッド3側)に設けられた雌側コネクタ具81へ差し込ませ、押圧状態に保持する。これにより、負圧発生装置71を介して、元配管部73,75と遊離配管部74,76とがそれぞれ連通接続される。すなわち、タンク35と貯留部70との間が、送り配管部47及び戻り配管部48によって、それぞれ、相互連通されることになる。
【0046】
この状態で、負圧発生装置71が作動して、戻り配管部48内を負圧にする。そのため、戻り用の遊離配管部76(通路44と立管部46の管内)を介してタンク35内が負圧化され、送り配管部47内(即ち、送り用の遊離配管部74(立管部45の管内と通路43)及び元配管部73)を介して貯留部70からタンク35へ向けて冷却液が吸引される。
【0047】
従って、タンク35内に残留していた冷却液がエアと一緒に、戻り配管部48を介して貯留部70へと回収されると同時に、貯留部70からの冷却液が送り配管部47を介してタンク35内へと一気に給水される。前記したように、タンク35内には、立管部45,46における下側の各管端が下突出状態で設けられているので、これら立管部45,46における下側の各管端が満水時の液面となる。
【0048】
このとき、タンク35内には、立管部45,46における下側の各管端より上部に、貯留水位が確保されていることになる。そのため、負圧発生装置71が作動を停止したときに、立管部45,46内に残る少量の冷却水がタンク35内に流下するようになったとしても、タンク35から冷却水が溢れるようなことはない。
この補充手段6において、冷却手段5のタンク35に冷却液を給水する動作は、ヘッド移動機構4による切断ヘッド3の移動量情報に基づいて制御されるようになっている。すなわち、作業支持台2上に広げられた一枚のシート材Wに対し、切り出す生地パーツPの切断パターンは、予め、ヘッド移動機構4の動作を制御するコンピュータへ入力される。この入力情報により、切断ヘッド3の移動距離、すなわち、回転刃16による切断距離(この切断距離等が「切断ヘッド3の移動量情報」である)を把握することができ、冷却液の消費量も予測できることになる。
【0049】
従って、タンク35が空になる前に、確実に冷却液の補充タイミングを判断することができるものであり、タンク35に対する水位センサなどの検出手段も不要である。
なお、給水のための動作タイムは、Y軸ガイドレール25に沿った切断ヘッド3のY軸移動時間と、負圧発生装置71による極めて短時間の作動時間だけでよい(切断ヘッド3のX軸移動に係る時間は不要である)ことから、大幅な時間短縮が可能となっている。従って、作業支持台2上の切断作業位置へシート材Wを搬入したり、切断後に得られた生地パーツPを下流側へ搬出したりする時間を利用して、給水動作を完了させることが可能となり、シート材切断装置1としての稼働効率を高めることができる利点がある。
【0050】
以上、詳説したところから明らかなように、本発明に係るシート材切断装置1では、冷却手段5のタンク35へ給水が必要となったときに、このタンク35と貯留部70との間を送り配管部47及び戻り配管部48によって相互連通させ、負圧発生装置71によって戻り配管部48内を負圧にさせることで、貯留部70からタンク35内へ冷却液を一気に送り込むようにしている。
【0051】
そして、タンク35への給水タイミングを、ヘッド移動機構4による切断ヘッド3の移動量情報に基づき、判別するようにしている。すなわち、タンク35内の実質的な冷却液量を検出するものではない(水位センサなどは不要にしている)。これらのことから、冷却液の補充を確実で且つ短時間で行えるものとしている。それ故、回転刃16に対するシート材Wの一部溶着を確実に防止して、適正な切断を長時間に渡り可能とできるものである。
【0052】
回転刃16の冷却を確実化できるため、回転刃16の回転数を高め、よって切断速度を高め、シート材切断装置1としての稼働効率を高められることは言うまでもない。
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
回転刃16は、円板刃とすることが限定されるものではなく、多角形状の板刃や歯車状の板刃などを採用することもできる。
【0053】
冷却具36は、スリットを有さず、回転刃16の片面のみに当接させる構造としてもよい。
補充手段6において、送り配管部47は、元配管部73と遊離配管部74とが分離したものとすることが限定されるものではなく、可撓性ホースなどで一連に接続されたものとすることが可能である。戻り配管部48についても同様である。
【0054】
シート材Wは、ロール体から巻き出した連続(帯状)生地としてもよい。また生地質は何ら限定されない。生地の他、樹脂シートや紙などとしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 シート材切断装置
2 作業支持台
3 切断ヘッド
4 ヘッド移動機構
5 冷却手段
6 補充手段
7 ローラ
8 ベルト
9 吸着移送装置
10 ストック位置
15 回転軸
16 回転刃
17 モータ
18 伝動手段
19 巻掛け伝動手段
20 押さえ板
21 スライドガイド
25 Y軸ガイドレール
26 移動脚部
27 移動台部
28 昇降機構
29 旋回機構
30 リングギヤ
31 パルスモータ
35 タンク
36 冷却具
37 冷却中断機構
40 タンク本体
41 蓋体
43 通路
44 通路
45 立管部
46 立管部
46 送り配管部
47 戻り配管部
50 支持部材
52 昇降操作部
53 ストッパ
54 係止機構
55 永久磁石
56 アジャスタボルト
60 把持具
61 係脱駆動部
62 昇降駆動部
63 中間ブラケット
70 貯留部
71 負圧発生装置
73 送り用の元配管部
74 送り用の遊離配管部
75 戻り用の元配管部
76 戻り用の遊離配管部
80 雄側コネクタ具
81 雌側コネクタ具
82 横突出駆動装置
83 ダンパ
P 生地パーツ
W シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を広げて支持する作業支持台と、水平な回転軸まわりに回転する回転刃により作業支持台上のシート材を切断する切断ヘッドと、この切断ヘッドを前記作業支持台の上方で移動させるヘッド移動機構と、冷却液を貯留するタンク及びこのタンク内の冷却液を前記回転刃に付着させる冷却具を有して前記切断ヘッドに設けられた冷却手段と、前記タンクへ冷却液を補充する補充手段とを具備しており、
前記補充手段は、冷却液を貯留する貯留部と、少なくとも前記冷却手段のタンクへの給水時に当該タンクと前記貯留部との間を相互連通させる送り配管部及び戻り配管部と、前記給水時にタンクから戻り配管部を介して貯留部に至る経路内の一部を負圧にさせる負圧発生装置とを有している
ことを特徴とするシート材切断装置。
【請求項2】
前記ヘッド移動機構は、作業支持台上を跨って架設されたY軸ガイドレールを有してこのY軸ガイドレールで前記切断ヘッドを保持するものであって、前記Y軸ガイドレールは、当該Y軸ガイドレールの長手方向と平面視直交する方向に沿って作業支持台上をX軸移動可能とされていると共に、前記切断ヘッドは、前記Y軸ガイドレールの長手方向に沿ってY軸移動可能としており、
前記補充手段は、前記負圧発生装置がY軸ガイドレールの一端側に配設されており、前記送り配管部及び戻り配管部は、前記負圧発生装置と前記貯留部とを接続する元配管部と、前記冷却手段に付随して前記切断ヘッドに設けられ前記元配管部とは分離した遊離配管部とを有して、前記給水時には切断ヘッドのY軸移動を伴って負圧発生装置と遊離配管部とが連通接続される構成である
ことを特徴とする請求項1記載のシート材切断装置。
【請求項3】
前記補充手段は、貯留部が作業支持台の一側部に設置されていることを特徴とする請求項2記載のシート材切断装置。
【請求項4】
前記補充手段の送り配管部及び戻り配管部は、前記冷却手段のタンク上部からタンク内へ連通する状態で垂下する各別の立管部を有しており、タンクにはこれら立管部の各管端より上部にも貯留水位が確保されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシート材切断装置。
【請求項5】
前記補充手段による前記冷却手段への冷却液給水動作は、前記ヘッド移動機構による切断ヘッドの移動量情報に基づいて制御される構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシート材切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate