説明

シート材排出搬送機構およびプリンタ

【課題】簡単な構成で従来の目的を両方確実に達成可能なシート材排出搬送機構と、そのシート材排出搬送機構を備え、小型化・薄型化が可能なプリンタを提供すること。
【解決手段】駆動ローラ9と従動ローラ10のうちその回転軸中心を下方に位置させて配設された一方のローラの外周に対し、切欠き開口部が形成された筒状の嵌着部本体に搬送ガイド用突部と回転規制手段が設けられた搬送ガイドリング11を、切欠き開口部において駆動ローラ9と従動ローラ10とを常に圧接させるとともに、シート材Sを正搬送するように駆動ローラ9が回転すると、回転規制手段が装置本体に配設された正搬送時の係合手段に係合する正搬送時の規制位置まで回転し、搬送ガイド用突部をシート材の搬送経路から退避させて位置させるように嵌着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を1枚ずつ、装置内の処理部へ正逆搬送することにより供給し、前記処理部に於いて所望の処理を行った後、前記シート材を排紙部へ搬送するシート材排出搬送機構に関し、さらには、そのシート材排出搬送機構を備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリンタ、複写機、スキャナ等の画像形成装置においては、シート材を1枚ずつ正逆搬送することにより処理部へ供給して所望の処理を行ない、その後、処理済みの前記シート材を排紙部へ搬送(排紙)する構成が採用されている。
【0003】
このような画像形成装置においては、シート材を挟持した状態で回転することによって前記シート材を搬送するローラ部材とは別に、シート材を確実に排紙部へ排紙するための機構が配設されることがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、逆搬送される処理中の用紙との間に生じる摩擦等によって、排紙部にストックされている処理済みの用紙を、前記処理中の用紙の逆搬送時に巻き込んでしまうこと(巻き込み搬送)を防止するための機構が配設されることもある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−31307号
【特許文献2】特開平5−43113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な構成で前記従来の目的を両方確実に達成可能なシート材排出搬送機構と、そのシート材排出搬送機構を備え、小型化・薄型化が可能なプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決可能な発明のシート材排出搬送機構は、装置本体のシート材の搬送経路における排紙部の直上流に前記シート材の搬送経路を挟んで夫々の回転軸中心の位置を上下方向にずらして配設された、正逆回転可能な駆動ローラと、前記駆動ローラに圧接して従動回転する従動ローラとを有するシート材排出搬送機構であって、切欠き開口部が形成された筒状の嵌着部本体を備え、前記嵌着部本体には、搬送ガイド用突部と回転規制手段が設けられた搬送ガイドリングが、前記回転軸中心を下方に位置させて配設された一方のローラの外周に対し、前記切欠き開口部において前記駆動ローラと従動ローラとを常に圧接させるとともに、シート材を逆搬送するように前記駆動ローラが回転すると、前記一方のローラと共に、前記回転規制手段が前記装置本体に配設された逆搬送時の係合手段に係合する逆搬送時の規制位置まで回転し、前記搬送ガイド用突部を前記駆動ローラと従動ローラが圧接する位置の直下流において前記シート材の搬送経路を遮ぎるように位置させ、その後は前記駆動ローラが反転するまで、前記一方のローラと摺接しつつ逆搬送時の規制位置にとどまり、シート材を正搬送するように前記駆動ローラが回転すると、前記一方のローラと共に、前記回転規制手段が前記装置本体に配設された正搬送時の係合手段に係合する正搬送時の規制位置まで回転し、前記搬送ガイド用突部を前記シート材の搬送経路から退避させて位置させ、その後は前記駆動ローラが反転するまで、前記一方のローラと摺接しつつ正搬送時の規制位置にとどまるように嵌着されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記シート材排出搬送機構は、前記搬送ガイド用突部が、前記駆動ローラと従動ローラが圧接する位置の直下流においてシート材の搬送経路を遮って位置したときに、シート材の搬送方向下流側へ対向し、前記シート材の搬送経路に90°以上の角度で交差する面を備えて突出形成されていることを特徴とする。
【0009】
そして、本発明のプリンタは、シート材を正逆搬送することによりシート材の搬送経路に配設された印刷部へ供給し、前記シート材に所望の印刷を行なった後、前記シート材を正搬送して処理済みのシート材がストックされる排紙部へ排出するプリンタにおいて、前記シート材の搬送経路における前記排紙部の直上流に、前述の特徴を有するシート材排出搬送機構が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えたシート材排出搬送機構およびこのシート材排出搬送機構を備えたプリンタによれば、シート材を逆搬送するように前記駆動ローラが回転して、前記駆動ローラと従動ローラに挟持されたシート材が逆搬送されるとき、搬送ガイドリングも駆動ローラと共に、前記装置本体に配設された逆搬送時の係合手段に回転規制手段が係合する逆搬送時の規制位置まで回転する。この逆搬送時の規制位置に回転した状態においては、搬送ガイドリングに形成された搬送ガイド用突部が前記駆動ローラと従動ローラが圧接する位置の直下流においてシート材の搬送経路を遮ぎり、逆搬送されているシート材に対し下方から当接して、前記逆搬送されているシート材を若干押し上げる。このとき、前記排紙部にストックされていた印刷済みのシート材が巻き込み搬送されていたとしても、逆搬送されるシート材に下方から当接している搬送ガイド用突部に、その印刷済みシート材の後端部を当接させることで、該印刷済みシート材の巻き込み搬送を阻止することができる。
【0011】
特に、搬送ガイド用突部に前記シート材の搬送経路に前述の範囲内の鈍角で交差して位置する面を形成することにより、逆搬送されているシート材の走行を利用して、前記逆搬送されているシート材から印刷済みのシート材を刮げ落とすように剥離させることができる。
【0012】
また、シート材を正搬送するように前記駆動ローラが回転して、前記駆動ローラと従動ローラに挟持されたシート材が正搬送されるとき、搬送ガイドリングも駆動ローラと共に、前記装置本体に配設された搬送時の係合手段に回転規制手段が係合する搬送時の規制位置まで回転する。このとき、前記搬送ガイドリングは搬送ガイド用突部をシート材の搬送経路から待避させるようへ回転するので、シート材の搬送を阻害することはない。
【0013】
そして、シート材が正搬送され、駆動ローラと従動ローラによるシート材の後端部の挟持が解除されたあと、その挟持が解放された印刷済みのシート材の後端部が駆動ローラと従動ローラとの圧接位置近傍に残った状態になっている場合(不完全排紙状態)であっても、次に、シート材の搬送方向が切り替えられ、搬送ガイドリングが回動する際に、前記搬送ガイド用突起が不完全排紙状態のシート材に対し下方から当接し、若干押し上げ、排紙部へ送る押圧力を加えることで、良好な排紙を実行することができる。
【0014】
このように、本発明のシート材排出搬送機構によれば、簡単な構成でシート材を確実に排紙部へ排紙することができるとともに、印刷済みのシート材の巻き込み搬送を防止することができる。そして、本発明のシート材排出搬送機構を備えたプリンタは、大きな駆動機構を備えた別装置を搭載する必要もないので、小型化・薄型化のニーズに応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のシート材の搬送排紙機構を備えたプリンタの斜視図
【図2】図1のプリンタの排紙部が配設された側の側面図
【図3】図1のプリンタのシート材の逆搬送時の要部断面図
【図4】図3のIVに囲む部分の拡大説明図
【図5】図1のプリンタのシート材の正搬送時の要部断面図
【図6】図5のVIに囲む部分の拡大説明図
【図7】搬送ガイドリングの全体形状を示す斜視図
【図8】排紙ユニットの(a)上流側側板側視野斜視図、(b)下流側側板側視野斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシート材排出搬送機構は、シート材を正逆搬送することにより用紙搬送経路に配設された処理部へ供給し、前記シート材に所望の処理を行なった後、前記シート材を正搬送して処理済みのシート材がストックされる排紙部へ排出する装置に配設される。以下では、前記装置はプリンタであり、前記処理および処理部は印刷および印刷部であって、シート材を1枚ずつ印刷部へ正逆搬送することにより供給し、前記印刷部に於いてインクの転写を重ね、所望の情報を記録した後、前記シート材を搬送方向下流の排紙部へ搬送し、排紙するプリンタを本実施形態として説明する。
【0017】
本実施形態のプリンタ1は、底板2a、互いに対向する前側板2bおよび後側板2cと天板2dからなる筐体2を備えている。この筐体2の内部に配設される印刷部には、発熱素子がライン状に配列されたサーマルヘッド3を下面に取り付けたヘッド取付台4に対し、前記前側板2bおよび後側板2c間に懸架されたプラテンローラ5が接離(プラテンアップ/ダウン)可能に配設されている。
【0018】
前記前側板2bには、筐体2の内部に形成されたカセット装着部にリボンカセット6を挿入するための、略めがね状のリボンカセット挿入口7が形成されている。
【0019】
前記リボンカセット6は、略矩形状をしたカセットケース6a内に、イエロー、マゼンタ、シアンそしてブラックまたはオーバーコートの各色のインク層がフィルム材に順次繰り返し形成された長尺なインクリボン6bを両端側から巻回した巻取り軸6cおよび送出し軸6dが離間させて回転可能に配設されており、両軸6c,6d間には、送出し軸6dから巻取り軸6cへ搬送供給されるインクリボン6bの搬送経路が形成されている。
【0020】
そして、前記リボンカセット6は、前記両軸間6c,6dにプリンタ1の印刷部に配設されたサーマルヘッド3を位置させ、前記プラテンローラ5が前記搬送経路に位置するインクリボン6bを介してサーマルヘッド3に圧接可能に前記カセット装着部に装着されている。
【0021】
ここで、前記後側板2cには、カセット装着部内に突出し、リボンカセット6に収納される送出し軸6dおよび巻取り軸6cにそれぞれ嵌合する送出しボビンおよび巻取りボビン(いずれも不図示)が回転可能に配設されている。よって、前記リボンカセット6は、前記カセット装着部に装着され、送出しボビンおよび巻取りボビンが図示しない回転駆動機構によって回転することで、前記送出し軸6dおよび巻取り軸6cが回転して前記インクリボン6bを走行させるように構成されている。
【0022】
そして、本実施形態においては、前記筐体2の内部における前記印刷部の上流側および下流側には、シート材Sを正逆搬送するためのシート材搬送機構8が配設されている。本実施形態において、前記印刷部の下流側に配設されるシート材搬送機構8は、前記プリンタ1のシート材Sの搬送経路における前記排紙部の直上流に配設され、特に、印刷済みのシート材Sをプリンタ本体内から前記排紙部へ排出するためのシート材排出搬送機構8Aとされている。
【0023】
このシート材排出搬送機構8Aは、リボンカセット6に収納されるインクリボン6bの幅方向に延在し、図示しない駆動源により正逆回転自在とされて軸支された駆動ローラ9と、前記インクリボン6bの幅方向に延在し、前記駆動ローラ9と当接して従動回転可能に支持された従動ローラ10を有している。前記駆動ローラ9と従動ローラ10は夫々の回転軸中心を上下方向にずらし、前記シート材Sの搬送経路を挟んで圧接させて配置されており、本実施形態においては、駆動ローラ9の上方において従動ローラ10を圧接させるようにして支持されている。
【0024】
そして、前記駆動ローラ9と従動ローラ10のうち前記回転軸中心が下方に配設された駆動ローラ9の長手方向中央部における外周には、シート材排出搬送機構8Aを構成し、筒状の周壁11cを長さ方向に分断する切欠開口部11bにより径方向断面C字状とされた嵌着部本体11aを有する搬送ガイドリング11が、前記切欠開口部11bにおいて前記駆動ローラ9と従動ローラ10とを常に圧接させるようにして弱嵌着されている。ここでいう「弱嵌着」とは、常時は嵌着するローラと共に回転するが、搬送ガイドリング11自体に回転を規制する力が作用することにより、嵌着しているローラとの間に滑りを生じさせ、搬送ガイドリング11自体は回転せずにそのままの位置で留まる嵌着具合をいうものとする。
【0025】
詳しくは、前記搬送ガイドリング11の前記周壁11cの前記切欠開口部11bを構成する一縁辺部分に、後述する搬送ガイド用突部11dが形成されている。さらには、前記搬送ガイドリング11の周壁11cには、該搬送ガイドリング11の回転中に前記筐体2に形成された係合手段と係合することにより、前記搬送ガイド用突部11dを所望の位置に位置させる回転規制手段として、外周面に突出する突出部と、前記周壁の幅方向両端部に張り出す張り出し部とを有する回転規制用突部11eが形成されている。
【0026】
本実施形態においては、前記筐体2に形成される係合手段は、前記排紙部において前記シート材排出搬送機構8Aと隣接させて配設された排紙ユニット12に形成されている。
【0027】
ここで、前記排紙ユニット12は、プリンタ本体内におけるシート材Sの搬送方向下流側となる一端側で、前記リボンカセット6の巻取り軸6cが収納された部分の下方に配設されており、底板12a、シート材Sの搬送経路を挟んで互いに対向する前側板12bおよび後側板12c、シート材Sの搬送経路の上流側に配設された上流側側板12d、並びに、天井板12fを備えている。前記上流側側板12dと底板12aを挟んで対向する側面は、前記底板12a上に積層される印刷済みのシート材Sの先端側、あるいは、前記駆動ローラ9および従動ローラ10に挟持されつつ搬送されているシート材Sの先端側を、さらにシート材Sの搬送方向下流側へ延出させる下流側開口13とされている。前記天井板12fは、前記リボンカセット6の巻取り軸6cが収納された部分の形状に合わせて、平面視凹状の曲面に形成されている。
【0028】
そして、前記シート材排出搬送機構8Aと隣接する前記上流側側板12dには、前記駆動ローラ9と従動ローラ10が圧接する位置に対向させて、前記シート材Sの搬送経路を確保するための上流側開口14が形成されている。そして、本実施形態においては、前記上流側開口14の下辺中央部には、前記駆動ローラ9に嵌着された搬送ガイドリング11の搬送ガイド用突部11d部分の幅方向寸法に合わせ、前記搬送ガイド用突部11d部分を収納配置可能なコ字状の第1切欠き部15が形成されている。この第1切欠き部15の下辺中央部には、さらに、搬送ガイドリング11の周壁11c部分の幅方向寸法に合わせ、周壁11c部分を収納配置可能なコ字状の第2切欠き部16が形成されており、前記第1切欠き部15の下辺における前記第2切欠き部16の両隣には夫々、前記シート材排出搬送機構8Aの配設方向へ突出する位置規制突部17が形成されている。
【0029】
前記位置規制突部17の下面は、前記筐体2側に形成された逆搬送時の係合手段として作用され、前記位置規制突部17の上面は、排紙ユニット12に形成された正搬送時の係合手段として作用される。また、前記搬送ガイドリング11に形成された回転規制用突部11eは、前記シート材Sを逆搬送する際の前記回転規制手段として作用され、前記搬送ガイド用突部11dは、前記シート材Sを正搬送する際の前記回転規制手段として作用される。
【0030】
よって、本実施形態においては、前記回転規制用突部11eは、前記駆動ローラ9の正搬送時に前記搬送ガイド用突部11dを前記駆動ローラ9と従動ローラ10が圧接する位置の直下流においてシート材Sの搬送経路を遮って位置させたときに、前記位置規制突部17に対し、前記回転規制用突部11eの張り出し部を下方から係合するように、前記搬送ガイドリング11に形成されている。
【0031】
また、本実施形態においては、前記上流側側板12dのシート材排出搬送機構8Aに対向する面における前記第2切欠き部16の下辺部分は、前記第1切欠き部15側へ向かうにしたがって板厚が漸次薄くなる傾斜面に形成され、回動する搬送ガイドリング11を位置させる回動空間が確保されている。さらに、前記上流側側板12dにおける前記上流側開口14の上辺部分には、該排紙ユニット12内において前記底板2a方向へ向けて傾斜させて、小片状の案内板18が配設されており、前記駆動ローラ9および従動ローラ10に挟持されて排紙ユニット12内に搬送されたシート材Sの先端部を案内板18の傾斜面に当接させることで、該シート材Sの先端部を該排紙ユニット12の底板12a方向へ案内し、シート材Sを搬送経路へ導くように構成されている。
【0032】
このように構成された本実施形態のシート材排出搬送機構8Aを備えたプリンタ1においては、情報の記録に供される記録紙やOHPシートなどのシート材Sを1枚ずつ、印刷部へ正逆搬送することにより供給し、前記印刷部に於いてインクの転写を重ね、所望の情報を記録した後、前記シート材Sを排紙部へ搬送する。
【0033】
すなわち、前記印刷部に於いては、プラテンローラ5を圧接状態にして、前記インクリボン6bとシート材Sとを重ねた状態で前記サーマルヘッド3とプラテンローラ5の間に挟持する。このとき、インクリボンの搬送機構(図示せず)によりインクリボン6bを搬送させるとともに、筐体2内に配設されたシート材排出搬送機構8Aによりシート材Sを正搬送させて、前記発熱素子に適宜通電し、インクリボン6bの最初の色のインクを転写する。そして、最初の色のインクの転写が終わったところで、前記プラテンローラ5を圧接解除状態にして前記シート材Sを逆搬送して、次の色のインクを転写するためのシート材Sの頭出しを行なう。このようにして、シート材Sの正搬送と逆搬送を行ない、最後の色のインクを転写するための頭出しをした後は、シート材Sを正搬送しつつ最後の色のインクを転写し、そのまま、シート材排出搬送機構8Aにより、印刷済みのシート材Sを排紙ユニット12へ搬送する。
【0034】
その際、本実施形態のプリンタ1においては、シート材排出搬送機構8Aが次のように機能する。
【0035】
前記搬送ガイドリング11は、シート材Sを逆搬送するように前記駆動ローラ9が回転すると、搬送ガイドリング11に形成された前記回転規制手段としての回転規制用突部11eが、第2切欠き部16において前記筐体2に配設された逆搬送時の係合手段である前記位置規制突部17の下面に係合することによってその回転が規制されるまで、つまり、シート材Sの逆搬送時の規制位置に至るまで、前記駆動ローラ9と共に回転する。
【0036】
そして、前記回転規制用突部11eが前記位置規制突部17の下面と係合した後は、前記搬送ガイドリング11の内周面を前記駆動ローラ9の外周面と摺接させつつ、前記逆搬送時の規制位置に留まる。
【0037】
このように搬送ガイドリング11が逆搬送時の規制位置へ回転するとき、前記搬送ガイド用突部11dは、前記駆動ローラ9と従動ローラ10が圧接する位置の直下流においてシート材Sの搬送経路を遮って位置するように移動する。
【0038】
ここで、前記搬送ガイド用突部11dは、搬送ガイドリング11が逆搬送時の規制位置へ回転し、前記駆動ローラ9と従動ローラ10が圧接する位置の直下流においてシート材Sの搬送経路を遮って位置したときに、シート材Sの搬送方向下流側へ対向し、前記シート材Sの搬送経路に90°以上の角度で交差する面(端部当接面)11fを備えるとともに、前記周壁11cの幅方向両端部に張り出し部が形成されている。
【0039】
よって、シート材Sを逆搬送するように前記駆動ローラ9が回転して、前記駆動ローラ9と従動ローラ10に挟持されたシート材Sが逆搬送されるとき、前記駆動ローラ9の外周に対し嵌着され、駆動ローラ9と共に回転する搬送ガイドリング11に形成された搬送ガイド用突部11dが、前記駆動ローラ9と従動ローラ10が圧接する位置の直下流においてシート材Sの搬送経路を遮ぎり、逆搬送されているシート材Sに対し下方から当接して若干押し上げる。このとき、逆搬送されるシート材Sに下方から当接した搬送ガイド用突部11dの前記端部当接面11fは、前記排紙ユニット12にストックされていた印刷済みのシート材S’が、静電気等によって逆搬送されるシート材Sに吸着され、その逆搬送に巻き込まれて搬送(巻き込み搬送)されることがあっても、その印刷済みシート材S’の後端部を当接させ、該印刷済みシート材S’のそれ以上の逆搬送を阻止する。特に、端部当接面11fを、前記シート材Sの搬送経路に前述のような向きと角度で交差して位置するように形成することにより、逆搬送されるシート材Sの走行を利用して、そのシート材Sから巻き込み搬送されている印刷済みのシート材S’を刮げ落とすように剥離させることができる。
【0040】
前記搬送ガイドリング11は、逆に、シート材Sを正搬送するように前記駆動ローラ9が回転すると、正搬送時の回転規制手段としての搬送ガイド用突部11d、具体的には前記端部当接面11fが、前記第1切欠き部15に於いて、前記筐体2に配設された逆搬送時の係合手段である前記位置規制突部17の上面に係合することによってその回転が規制されるまで、つまり、シート材Sの正搬送時の規制位置に至るまで、前記駆動ローラ9と共に回転する。
【0041】
そして、前記搬送ガイド用突部11dが前記位置規制突部17の上面と係合した後は、前記搬送ガイドリング11の内周面を前記駆動ローラ9の外周面と摺接させつつ、前記正搬送時の規制位置に留まる。
【0042】
このように搬送ガイドリング11が正搬送時の規制位置へ回転するとき、前記搬送ガイド用突部11dは、シート材Sの搬送経路から離間し、前記第1切欠き部15に移動する。
【0043】
よって、シート材Sを正搬送するように前記駆動ローラ9が回転して、前記駆動ローラ9と従動ローラ10に挟持されたシート材Sが正搬送されるときは、前記搬送ガイドリング11がシート材Sの搬送を阻害することはない。
【0044】
そして、本実施形態においては、シート材Sが正搬送され、駆動ローラ9と従動ローラ10によるシート材Sの後端部の挟持が解除されたあと、その挟持が解放された印刷済みのシート材Sの後端部が駆動ローラ9と従動ローラ10との圧接位置近傍に残った状態になっている場合(不完全排紙状態)であっても、次にシート材Sの搬送方向が切り替えられ、搬送ガイドリング11が逆搬送時の規制位置へ回転する際に、前記搬送ガイド用突起が不完全排紙状態のシート材Sに対し下方から当接し、若干押し上げ、排紙ユニット12の底板2a面上の所定のストック位置へ送る押圧力を加えることで、良好な排紙を実行することができる。
【0045】
なお、この搬送ガイド用突部11dが、不完全排紙状態のシート材Sの排紙を促した後、前記駆動ローラ9と従動ローラ10が圧接する位置の直下流においてシート材Sの搬送経路を遮ぎるように位置することとなるのは、前述の通りである。
【0046】
このように、本実施形態のシート材排出搬送機構8Aは、簡単な構成でシート材Sを確実に排紙ユニット12へ排紙することができるとともに、印刷済みのシート材Sの巻き込み搬送を防止することができる。そして、本実施形態のシート材排出搬送機構8Aを備えたプリンタ1も、小型化・薄型化のニーズに反することもなく、上述の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、前記筐体2側に形成された逆搬送時の係合手段、正搬送時の係合手段として、排紙ユニット12に形成された位置規制突部17を利用し、この位置規制突部17との位置関係において、搬送ガイドリング11に回転規制用突部11eを形成したが、前記筐体2側の係合手段は、この排紙ユニット12やその位置規制突部17に限るものではなく、搬送ガイドリング11に設けられる回転規制用突部11eも、適宜、その形成位置を調整することができるものとする。
【0048】
さらには、本実施形態においては、正搬送時における回転規制手段としては、搬送ガイド用突部11dを併用することとしたが、例えば、逆搬送時に回転規制手段として作用する前記回転規制用突部11eをそのまま正搬送時における回転規制手段として用い、筐体2側に設けられる正搬送時の係合手段の形成位置を調整してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 プリンタ
2 筐体
2a 底板
2b 前側板
2c 後側板
2d 天板
3 サーマルヘッド
4 ヘッド取付台
5 プラテンローラ
6 リボンカセット
6a カセットケース
6b インクリボン
6c 巻取り軸
6d 送出し軸
7 リボンカセット挿入口
8 シート材搬送機構
8A シート材排出搬送機構
9 駆動ローラ
10 従動ローラ
11 搬送ガイドリング
11a 嵌着部本体
11b 切欠開口部
11c 周壁
11d 搬送ガイド用突部
11e 回転規制用突部
11f 端部当接面
12 排紙ユニット
12a 底板
12b 前側板
12c 後側板
12d 上流側側板
12f 天井板
13 下流側開口
14 上流側開口
15 第1切欠き部
16 第2切欠き部
17 位置規制突部
18 案内板
S シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体のシート材の搬送経路における排紙部の直上流に前記シート材の搬送経路を挟んで夫々の回転軸中心の位置を上下方向にずらして配設された、正逆回転可能な駆動ローラと、前記駆動ローラに圧接して従動回転する従動ローラとを有するシート材排出搬送機構であって、
切欠き開口部が形成された筒状の嵌着部本体を備え、前記嵌着部本体には、搬送ガイド用突部と回転規制手段が設けられた搬送ガイドリングが、
前記回転軸中心を下方に位置させて配設された一方のローラの外周に対し、
前記切欠き開口部において前記駆動ローラと従動ローラとを常に圧接させるとともに、
シート材を逆搬送するように前記駆動ローラが回転すると、前記回転規制手段が前記装置本体に配設された逆搬送時の係合手段に係合する逆搬送時の規制位置まで前記一方のローラと共に回転し、前記搬送ガイド用突部を前記駆動ローラと従動ローラが圧接する位置の直下流において前記シート材の搬送経路を遮ぎるように位置させ、その後は前記駆動ローラが反転するまで、前記一方のローラと摺接しつつ逆搬送時の規制位置にとどまり、
シート材を正搬送するように前記駆動ローラが回転すると、前記回転規制手段が前記装置本体に配設された正搬送時の係合手段に係合する正搬送時の規制位置まで前記一方のローラと共に回転し、前記搬送ガイド用突部を前記シート材の搬送経路から退避させて位置させ、その後は前記駆動ローラが反転するまで、前記一方のローラと摺接しつつ正搬送時の規制位置にとどまるように嵌着されていることを特徴とするシート材排出搬送機構。
【請求項2】
前記搬送ガイド用突部は、前記駆動ローラと従動ローラが圧接する位置の直下流においてシート材の搬送経路を遮って位置したときに、シート材の搬送方向下流側へ対向し、前記シート材の搬送経路に90°以上の角度で交差する面を備えて突出形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート材排出搬送機構。
【請求項3】
シート材を正逆搬送することによりシート材の搬送経路に配設された印刷部へ供給し、前記シート材に所望の印刷を行なった後、前記シート材を正搬送して処理済みのシート材がストックされる排紙部へ排出するプリンタであって、
前記シート材の搬送経路における前記排紙部の直上流に、請求項1または請求項2に係るシート材排出搬送機構が設けられたことを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−207551(P2011−207551A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75073(P2010−75073)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】