説明

シート材給送装置及び記録装置

【課題】厚紙等の剛性の高いシート材の給紙不良及び傷の発生を抑制できるシート材給送装置及び記録装置を提供する。
【解決手段】複数の用紙を積層して支持する支持面に対し傾斜して当接した用紙を分離する分離部材12を備える給送装置であって、分離部材12は、上記傾斜に沿った方向に送出される用紙と当接する当接面60と、上記傾斜に沿った方向に送出される用紙と非当接の通過面70とを、支持面と直交する高さ方向において交互に複数有して、当接面60と隣り合う下側の通過面70は、該当接面60と一面で連なる連続面を形成する形状を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材給送装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、布、フィルム等の各種のシート材に文字や画像等を記録する記録装置としては、例えば複写機、プリンター、ファクシミリ等が挙げられる。この種の記録装置においては、複数のシート材を積層して支持するスタック部(支持部)から1枚のシート材を分離して記録処理を行う記録部等へ給紙するシート材給送装置が設けられる。このシート材給送装置は、2枚以上のシート材が同時に給紙されてしまう重送(ダブルフィード、マルチフィード)を防止するべく、下記特許文献1に記載のように、シート材支持面に対して所定角度で傾斜する分離傾斜部を設け、ピックアップローラーでシート材を分離傾斜部に向かって送り出し、この分離傾斜部の傾斜面に当接したシート材に送出方向と逆方向の負荷(反力、摩擦力を含む)を作用させて、重なったシート材を分離する斜面分離方式の分離手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−2266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この斜面分離方式に係る分離傾斜部においてはシート材に作用する負荷を高めるべく、上記特許文献1に記載のように、その傾斜面を鋸歯形状(階段形状)としている。この鋸歯形状は、上記傾斜に沿った方向に送出される上記シート材と当接する当接面と、上記傾斜に沿った方向に送出されるシート材と非当接の通過面とを、シート材を支持する支持面と直交する高さ方向において交互に複数有して構成されている。
尚、当接面は、支持面に対し略垂直な面を有して、支持面に沿って給紙されるシート材と当接する際に負荷(反力)を作用させる部位となっている。一方、通過面は、支持面(水平面)に沿う方向に延在しており、支持面に沿って給紙されるシート材と非当接の部位となっている。この鋸歯形状は、垂直な面の当接面と、水平な面の通過面と、当接面と通過面とが直角に交わる頂点部からなる歯形状が、複数設けられて構成されている。
【0005】
ところで、近年、記録処理を実施できるシート材の種類(材質、サイズ、厚さ等)は、多種多様になってきている。このため、スタック部に複数種のシート材を収容させ、共通の分離手段で複数種のシート材を分離させる形態が採られている。しかしながら、種類が異なるシート材は、その剛性が異なるため、従来の分離傾斜部ではその剛性に対応して、シート材の分離に適した負荷を作用させることが難しいという問題がある。
例えば、上述した従来の当接面と通過面の角度によっては、シート材(特に普通紙より剛性の高い厚紙)が当接する角度がきつく、当接した際の負荷(反力)が強く作用して、ピックアップローラーと用紙との間に滑りが生じて給紙が不可となる給紙不良や当接時に傷が発生する原因となってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、厚紙等の剛性の高いシート材の給紙不良及び傷の発生を抑制できるシート材給送装置及び記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、複数のシート材を積層して支持する支持面に対し傾斜して当接した上記シート材を分離する分離傾斜部を備えるシート材給送装置であって、上記分離傾斜部は、上記傾斜に沿った方向に送出される上記シート材と当接する当接面と、上記傾斜に沿った方向に送出される上記シート材と非当接の通過面とを、上記支持面と直交する高さ方向において交互に複数有して、上記当接面と隣り合う下側の上記通過面は、該当接面と一面で連なる連続面を形成する形状を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、当接面とそれと隣り合う下側の通過面とが一面で連続して連なることから、支持面に沿って給紙されるシート材が通過面にも当接するようになるため、シート材が当接した際の負荷(反力)が下がり、厚紙等の剛性の高いシート材の給紙不良及び傷の発生を抑制できる。
【0008】
また、本発明においては、上記通過面は、上記当接面に接すると共にそれと隣り合う下側の上記当接面の上端縁と交差する曲面形状を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、支持面に沿って給紙されるシート材が通過面と当接した際に、その通過面からそれと隣り合う上側の当接面への移行が滑らかになる。また、該通過面は、それと隣り合う下側の当接面と交差して頂点部を形成するため、傾斜に沿った方向にシート材が送出される際の負荷を確保できる。
【0009】
また、本発明においては、上記当接面の断面輪郭は、上記支持面に対し所定角度で傾く直線であり、上記通過面の断面輪郭である曲線における接線の上記支持面に対する角度は、上記所定角度以下であるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、分離傾斜部にシート材が当接した際の負荷はそのシート材の当接角度の大きさによるため、通過面を曲面としてその接線の角度を、当接面の角度以下にすれば、通過面に当接した際のシート材の負荷(反力)を下げることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記交差する頂点部は、上記通過面と上記下側の当接面とに跨る第2曲面形状を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、シート材に対する傷の発生を抑制することができる。
【0011】
また、本発明においては、先に記載のシート材給送装置と、上記シート材給送装置により給送される上記シート材に対し記録処理を行う記録部と、を有する記録装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、厚紙等の剛性の高いシート材の給紙不良及び傷の発生を抑制できる記録装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態における分離部材の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態における分離部材の要部構成を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施形態における分離部材と用紙との特徴的な当接状態を時系列的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るシート材搬送装置及び記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1の用紙搬送経路を示す側断面図である。
なお、以下の説明においては、図1に示すように、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0015】
以下、図1を参照しつつプリンター1の全体構成について概説する。尚、図1はプリンター1の用紙搬送経路上に配置されるローラーを図示する為に、ほぼ全てのローラーを同一面上に描いているが、その奥行き方向(Y軸方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。
【0016】
プリンター1は、給送装置(シート材給送装置)2を備え、当該給送装置2から被記録媒体としての用紙(シート材)Pを1枚ずつ給送し、記録手段(記録部)4においてインクジェット記録を行い、装置前方側(+X側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出する構成を備えている。またプリンター1は装置後部に両面ユニット7を着脱自在に備えており、最初に記録の行われた用紙Pの第1面に対し反対側の第2面が記録ヘッド42と対向するよう湾曲反転させ、これにより用紙Pの両面に記録が実行可能となっている。
【0017】
給送装置2は、用紙カセット(支持部)11と、ピックアップローラー16と、分離手段21と、を備えている。複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な用紙カセット11は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されており、図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラー16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられ、用紙カセット11に収容された用紙と接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを用紙カセット11から−X方向(送出方向)に送り出す構成となっている。
【0018】
用紙カセット11に収容された用紙先端と対向する位置には分離部材(分離傾斜部)12が設けられており、給送されるべき最上位の用紙Pの先端が分離部材12に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの第1段階分離が行われる。分離部材12の下流側には、分離ローラー22と中間ローラー23とを備えて構成された、用紙Pの第2段階分離を行う分離手段21が設けられている。また、分離手段21の下流側には、中間ローラー23との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラー27が設けられている。
【0019】
また、給送装置2は、搬送手段5と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、図示を省略するモータによって回転駆動される搬送駆動ローラー35と、該搬送駆動ローラー35に圧接して従動回転するようガイド対向部37に軸支される搬送従動ローラー36とを備えて構成され、この搬送手段5により用紙Pが記録ヘッド42と対向する位置に向けて精密送りされる。
【0020】
搬送手段5より上流側のガイド対向部37には、用紙端検知センサ13が設けられる。用紙端検知センサ13は、用紙Pの先端及び後端の位置を検出するセンサであり、本実施形態では、機械的な機構によって用紙Pの端を検知するメカニカルセンサを用いている。より詳しくは、用紙端検知センサ13は、ガイド対向部37から第2搬送経路9(後述)上に突出すると共にY軸方向に延びる軸周りに回動可能なレバーを備えて、このレバーが用紙Pと接触したときの回動を検知することにより、用紙Pの端を検知する構成となっている。
【0021】
尚、給送装置2により給送される用紙Pのスキューは、搬送駆動ローラー35(第1搬送ローラー)と、その上流側の中間ローラー23(第2搬送ローラー)とを利用した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御により除去される。
【0022】
具体的には、用紙Pの先端を搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36との間に食い付かせて順送方向(下流側)に所定量に送り出した後、上流側の中間ローラー23を順送方向に回転させている状態で搬送駆動ローラー35を逆転させ、用紙先端を搬送駆動ローラー35の逆送方向(上流側)に吐き出す。これにより用紙Pは中間ローラー23と搬送駆動ローラー35との間で撓んで、用紙P先端が搬送駆動ローラー35と搬送従動ローラー36とのニップ点に倣い、スキューが矯正される。
【0023】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(Y軸方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示を省略するモータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。この記録ヘッド42は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に応じたインクを噴射可能な構成となっている。
【0024】
記録ヘッド42の下流側に設けられた排出手段6は、図示を省略するモータによって回転駆動される排出駆動ローラー44と、当該排出駆動ローラー44に接して従動回転する排出従動ローラー45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0025】
また、給送装置2は、所定高さで用紙Pを搬送する第1搬送経路8と、第1搬送経路8よりも低い高さで用紙Pを搬送する第2搬送経路9と、第1搬送経路8と第2搬送経路9とが合流する合流部10と、を備えている。第1搬送経路8において用紙Pは、分離ローラー22、中間ローラー23、アシストローラー27によって搬送される。また、第2搬送経路9において用紙Pは、搬送駆動ローラー35、搬送従動ローラー36、排出駆動ローラー44、排出従動ローラー45によって搬送される。
【0026】
合流部10よりも下流側の第2搬送経路9(9A)は、記録ヘッド42に用紙Pを導く共通搬送経路を構成する。一方、合流部10よりも上流側の第2搬送経路9(9B)は、合流部10よりも上流側の第1搬送経路8と合流する用紙反転用搬送経路を構成する。
両面印刷の場合、第2搬送経路9Aを搬送されて第1面に記録の行われた用紙Pは、搬送手段5、排出手段6、のこれらによる逆送り動作によって、第1面に記録が実行された際に用紙後端となっていた側が先端となって、第2搬送経路9Bに誘い込まれ、分離ローラー22、中間ローラー23との間に誘導される。
【0027】
中間ローラー23は図示を省略するモータにより図1の時計回り方向に回転駆動されており、分離ローラー22、中間ローラー23との間に誘い込まれた用紙は、中間ローラー23とアシストローラー27との間を通って再び合流部10に到達し、第2搬送経路9Aを介して記録手段4に導かれ、以降同様に記録が実行される。
【0028】
尚、以上説明した用紙搬送経路中に設けられるピックアップローラー16、中間ローラー23、搬送駆動ローラー35、排出駆動ローラー44、のこれら回転駆動されるローラーは、全て共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成されている。
【0029】
次に、図2及び図3を参照して、本発明に係る分離部材12の特徴的な構成について詳しく説明する。
図2は、本発明の実施形態における分離部材12の構成を示す側面図である。図3は、本発明の実施形態における分離部材12の要部構成を示す拡大図である。
【0030】
分離部材12は、用紙カセット11の土手部15に固定されている。分離部材12は、複数の用紙Pを積層して支持する支持面(水平面)14(図1参照)に対し所定角度で傾斜する傾斜部51を有して、当接した用紙Pに負荷を与えて分離する構成となっている。用紙Pと当接する傾斜部51は、図3に示すように、当接面60、通過面70、当接面60と通過面70とが交差する頂点部80から構成される歯形が高さ方向(Z軸方向)で連なった略鋸歯形状(略階段形状)となっている。尚、この鋸歯形状は、部品点数及びコスト面の関係で、分離部材12に一体形成されている。
【0031】
傾斜部51は、当接面60と通過面70とを高さ方向で交互に複数有している。
当接面60は、傾斜部51に沿って搬送される用紙Pと当接する構成となっている。また、当接面60は、支持面14に沿って搬送される用紙Pと当接する構成となっている。この当接面60は、その断面輪郭(X‐Z断面輪郭)が、支持面14(X‐Y平面)に対し所定角度で傾いた直線となっている。
一方、通過面70は、傾斜部51に沿って搬送される用紙Pと非当接となる構成となっている。また、通過面70は、支持面14に沿って搬送される用紙Pと当接する構成となっている。この通過面70は、その断面輪郭(X‐Z断面輪郭)が、曲線となる曲面形状を有する構成となっている。
【0032】
本実施形態の当接面60と通過面70とは、一面で連続的に連なっている。より詳しくは、ある特定の当接面60(以下、仮に上側当接面60aと称する)と、それと隣り合う下側の通過面70とが一面で連続的に連なっている。
また、その通過面70は、上側当接面60aと下側で隣り合う当接面60(以下、仮に下側当接面60bと称する)とは、一面で連続的に連なっておらず、下側当接面60bの上端縁61と交差して頂点部80を形成する構成となっている。
すなわち、本実施形態の通過面70は、上側当接面60aと接すると共に下側当接面60bの上端縁61と交差する所定曲率の曲面形状を有する。
尚、本実施形態では、該一面の高さ方向において、当接面60が3分の2程度占めて、残りの3分の1は通過面70が占めている。
【0033】
当接面60の断面輪郭に係る直線の支持面14に対する分離傾斜角度は、剛性の低い薄紙(例えば、普通紙)に対応した角度に設定されている。この分離傾斜角度は、傾斜部51の角度(頂点部80を結ぶ直線の角度)より大きく、当接面60が支持面14に対し垂直に近い状態となる角度(70度程度)となるように設定されている。
【0034】
一方、通過面70の断面輪郭に係る曲線の接線の支持面14に対する分離傾斜角度は、当接面60の分離傾斜角度以下で設定されている。より詳しくは、通過面70の分離傾斜角度は、上端縁61と交差する位置では0度で、当接面60(上側当接面60a)に向かうにつれて漸次大きくなり、最後は当接面60の分離傾斜角度と一致する構成となっている。すなわち、通過面70の分離傾斜角度は、剛性の高い厚紙(写真用紙、往復ハガキ等の専用紙)に対応した角度に設定されている。
【0035】
尚、本実施形態の頂点部80は、用紙Pに対する擦傷を抑制するべく面取りされており、通過面70と下側当接面60bとに跨る曲面形状(第2曲面形状)を有する。
【0036】
続いて、上記構成の分離部材12の特徴的な作用について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施形態における分離部材12と用紙Pとの特徴的な当接状態を時系列的に示す模式図である。
【0037】
図4(a)に示す状態で、ピックアップローラー16が用紙カセット11に積層された最上の用紙Pに当接して回転駆動すると、用紙Pが−X方向(支持面14に沿った方向)に送り出されて分離部材12の傾斜部51に当接する。
【0038】
傾斜部51における通過面70に、用紙Pが当接した場合、図4(b)に示す状態となる。通過面70は、当接面60の分離傾斜角度以下で構成されているため、用紙Pの当接角度が小さくなり、支持面14に沿った方向で用紙Pが当接した際の負荷(反力)が小さくなる。したがって、用紙Pが剛性の高い専用紙の場合であっては、通過面70と当接することでその当接した際の反力が小さくなるため、ピックアップローラー16と用紙Pとの間に滑りが生じて給紙が不可となる給紙不良や傷の発生が抑制される。
【0039】
次に、図4(c)に示すように、ピックアップローラー16のさらなる回転駆動により用紙Pが押し出されると、用紙Pは、当接した通過面70から当接面60(上側当接面60a)に移行する。本実施形態の通過面70は、曲面形状を有するため、当接した通過面70から当接面60への滑らかな移行が可能となり、この際の傷の発生も抑制される。
【0040】
最後に、図4(d)に示すように、ピックアップローラー16のさらなる回転駆動により用紙Pが押し出されると、用紙Pは、複数の頂点部80と当接しつつ傾斜部51に沿って送出される。この時、用紙Pは、当接面60と当接して、通過面70とは非当接となっている。頂点部80は、傾斜に沿った方向に送出される用紙Pに対して摩擦力を付与する。また、本実施形態の頂点部80は、面取りされた曲面形状を有するため、この頂点部80を用紙Pが跨ぐ際の擦傷の発生を抑制することができる。
【0041】
したがって、上述した本実施形態によれば、複数の用紙Pを積層して支持する支持面14に対し傾斜して当接した用紙Pを分離する分離部材12を備える給送装置2であって、分離部材12は、上記傾斜に沿った方向に送出される用紙Pと当接する当接面60と、上記傾斜に沿った方向に送出される用紙Pと非当接の通過面70とを、支持面14と直交する高さ方向において交互に複数有して、当接面60(上側当接面60a)と隣り合う下側の通過面70は、該上側当接面60aと一面で連なる連続面を形成する形状を有するという構成を採用することによって、支持面14に沿って給紙される用紙Pが通過面70にも当接するようになるため、用紙Pが当接した際の負荷(反力)が下がり、厚紙等の剛性の高い用紙Pの給紙不良及び傷の発生を抑制できる。また、厚紙等の剛性の高い用紙Pの負荷を下げることができるため、ピックアップローラー16やそれを駆動させるモータ等の駆動系の負荷を下げることに貢献できる。
【0042】
尚、普通紙等の剛性の低い用紙Pは、その剛性に対応した分離傾斜角度を有する当接面60において当接することにより、適切な負荷が作用してその重送が抑制されることとなる。従って、本実施形態では、剛性の低い薄紙等の用紙Pに対する分離能力を保つことができつつ、剛性の高い厚紙等の用紙Pに対する給紙時の負荷を下げることができる。
【0043】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
尚、上述の実施形態においては、記録装置がインクジェットプリンターである場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…プリンター(記録装置)、2…給送装置(シート材給送装置)、11…用紙カセット(支持部)、12…分離部材(分離傾斜部)、14…支持面、16…ピックアップローラー、51…傾斜部、60…当接面、60a…上側当接面、60b…下側当接面、61…上端縁、70…通過面、80…頂点部、P…用紙(シート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート材を積層して支持する支持面に対し傾斜して当接した前記シート材を分離する分離傾斜部を備えるシート材給送装置であって、
前記分離傾斜部は、前記傾斜に沿った方向に送出される前記シート材と当接する当接面と、前記傾斜に沿った方向に送出される前記シート材と非当接の通過面とを、前記支持面と直交する高さ方向において交互に複数有して、
前記当接面と隣り合う下側の前記通過面は、該当接面と一面で連なる連続面を形成する形状を有することを特徴とするシート材給送装置。
【請求項2】
前記通過面は、前記当接面に接すると共にそれと隣り合う下側の前記当接面の上端縁と交差する曲面形状を有することを特徴とする請求項1に記載のシート材給送装置。
【請求項3】
前記当接面の断面輪郭は、前記支持面に対し所定角度で傾く直線であり、
前記通過面の断面輪郭である曲線における接線の前記支持面に対する角度は、前記所定角度以下であることを特徴とする請求項2に記載のシート材給送装置
【請求項4】
前記交差する頂点部は、前記通過面と前記下側の当接面とに跨る第2曲面形状を有することを特徴とする請求項2または3に記載のシート材給送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート材給送装置と、
前記シート材給送装置により給送される前記シート材に対し記録処理を行う記録部と、を有することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157152(P2011−157152A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18330(P2010−18330)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】