説明

シート構造

【課題】シートバックの表皮部材の下端部と、シートクッションの表皮部材の後端部とを、バックフレームのロアフレーム部にそれぞれ巻き込んで張設することによって、シートクッションの後縁と、シートバックの下縁とを連続状に接合することができるシート構造を提供する。
【解決手段】シートバック50の表皮部材55の下端部には、バックフレーム51のロアフレーム部54に巻き込まれる巻込部56と、ロアフレーム部54に干渉することなく切り込まれる切込み部57とがシート幅方向に交互に形成される。シートクッション30の表皮部材36の後端部には、シートバック50の表皮部材55の切込み部57に挿入され、かつシートバック50のロアフレーム部54に巻き込まれる巻込部37と、ロアフレーム部54に干渉することなく切り込まれる切込み部38とがシート幅方向に交互に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの軽量化やコスト低減等を図るために、クッションフレームに表皮部材を張設したシートクッションと、バックフレームに表皮部材を張設したシートバックとを備えたシート構造が知られている。
これにおいては、シートクッションのクッションフレームを前後左右のフレーム部によって方形枠状に形成し、その前後左右の各フレーム部に表皮部材の四周縁を巻き込んでクッションフレームに表皮部材を張設してシートクッションを構成している。
また、シートバックにおいても、そのバックフレームを上下左右のフレーム部によって方形枠状に形成し、その上下左右の各フレーム部に表皮部材の四周縁を巻き込んでバックフレームに表皮部材を張設してシートバックを構成している。
なお、座部を構成する複数の座板材後部の間に、背部を構成する複数の背板材を嵌入した折り畳み式椅子としては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−272030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記したシート構造においては、クッションフレームの前後左右の四つのフレーム部に表皮部材の四周縁を巻き込んでシートクッションを構成し、バックフレームの上下左右の四つのフレーム部に表皮部材の四周縁を巻き込んでシートバックを構成している。
このため、シートクッションの後縁と、シートバックの下縁との間に隙間は生じ、見栄えが悪化される。
例えば、シートクッションを昇降機構によって昇降可能に支持し、下降位置にあるシートクッションを後方へ回動させながら上昇位置に配置切替し、上昇位置にあるシートクッションを前方へ回動させながら下降位置に配置切替に構成した場合、下降位置に配置切替されたシートクッションの後縁と、シートバックの下縁との間には、シートクッションが前方へ移動した分だけ大きい隙間が発生する。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、シートバックの表皮部材の下端部と、シートクッションの表皮部材の後端部とを、バックフレームのロアフレーム部にそれぞれ巻き込んで張設することによって、シートクッションの後縁と、シートバックの下縁とを連続状に接合することができるシート構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るシート構造は、クッションフレームに表皮部材が張設されたシートクッションと、バックフレームに表皮部材が張設されたシートバックとを備えたシート構造であって、
前記シートバックの表皮部材の下端部には、前記バックフレームのロアフレーム部に巻き込まれる巻込部と、前記ロアフレーム部に干渉することなく切り込まれる切込み部とがシート幅方向に交互に形成され、
前記シートクッションの表皮部材の後端部には、前記シートバックの表皮部材の切込み部に挿入され、かつ前記シートバックのロアフレーム部に巻き込まれる巻込部と、前記ロアフレーム部に干渉することなく切り込まれる切込み部とがシート幅方向に交互に形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、シートバックの表皮部材の下端部のシート幅方向に交互に形成した巻込部と切込み部とのうち、巻込部をバックフレームのロアフレーム部に巻き込む一方、シートクッションの表皮部材の後端部のシート幅方向に交互に形成した巻込部と切込み部とのうち、巻込部を、シートバックの表皮部材の切込み部に挿入してシートバックのロアフレーム部に巻き込むことによって、シートクッションの後縁と、シートバックの下縁とを連続状に接合することができる。
この結果、シートクッションの後縁と、シートバックの下縁との間に生じる隙間が原因となる見栄えの悪化を防止することができる。
また、シートクッションの表皮部材の後端部の巻込部を、シートバックのロアフレーム部に巻き込む構造上、クッションフレームの後フレール部を廃止することが可能となり、この分だけクッションフレームの構造を簡略化することができると共に軽量化を図ることができる。
【0008】
請求項2に係るシート構造は、請求項1に記載のシート構造であって、
シートクッションは、昇降機構によって下降位置と上昇位置とに配置切替可能に支持され、
前記シートクッションの表皮部材の後部近傍には、前記シートクッションの昇降動作に伴ってクッションフレームの後縁部に沿って屈曲可能な屈曲部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、シートクッションの昇降動作に伴ってシートクッションの表皮部材の後部近傍に形成された屈曲部がクッションフレームの後縁部に沿って屈曲することによって、シートクッションの表皮部材がシートクッションの昇降動作の妨害となることを防止することが可能となる。
【0010】
請求項3に係るシート構造は、請求項2に記載のシート構造であって、
昇降機構は、下降位置にあるシートクッションを後方へ回動させながら上昇位置に配置切替可能なリンク機構によって構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、下降位置にあるシートクッションを後方へ回動させながら上昇位置に配置切替するリンク機構を昇降機構に用いることによって、シートクッションが下降位置と上昇位置とに配置切替されたときに、シートクッションの表皮部材が過大に引張されたり、緩むことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施例1に係るシート構造を示す斜視図である。
【図2】同じくシートクッションの表皮部材の後端部の巻込部をシートバックのロアフレーム部に巻き込んだ状態を拡大して示す斜視図である。
【図3】同じくシートクッションが下降位置に配置された状態を示す側面図である。
【図4】同じくシートクッションが上昇位置に配置された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
この実施例1に係るシート構造は、車両用シートに採用される場合を例示する。
図1に示すように、車両用シートは、車室のフロアパネルにスライドレール装置10によって前後方向へスライド可能に、かつ昇降機構20によって上下方向に移動可能に配設されたシートクッション30と、このシートクッション30の後部にリクライニング機構によって傾き調整可能に配設されたシートバック50とを備える。
【0015】
また、スライドレール装置10は、車室のフロアパネルに固定されるロアレール11と、このロアレール11に沿って前後方向へスライド可能に組み付けられるアッパレール12とを備えている。
そして、アッパレール12に、昇降機構20を介してシートクッション30が下降位置を上昇位置とに配置切り替え可能に装着される。
また、この実施例1において、昇降機構20は、下降位置にあるシートクッション30を後方へ回動させながら上昇位置に配置切替可能な前リンク22と後リンク25とを備えた四節のリンク機構21によって構成されている。
すなわち、図1に示すように、前リンク22と後リンク25の下部は、ピン23、26によってアッパレール12の前後部にそれぞれ回動可能に連結され、前リンク22と後リンク25の上部は、ピン24、27によってシートクッション30の左右の両サイドフレーム部33の前後の連結部34、35に回動可能に連結されている。
そして、図3に示すように、シートクッション30が下降位置に配置されたときには、前リンク22と後リンク25が前方に向けて斜め傾斜状をなし、下降位置にあるシートクッション30が上昇位置に配置切替されるときには、前リンク22と後リンク25が後方へ回動させながら直立状をなす。
【0016】
車両用シートの軽量化やコスト低減等を図るために、シートクッション30は、クッションフレーム31に、ネット部材、布部材等よりなる表皮部材36が張設されることによって構成されている。
また、シートバック50においても、バックフレーム51に、ネット部材、布部材等よりなる表皮部材55が張設されることによって構成されている。
【0017】
シートバック50のバックフレーム51は、アッパフレーム部52と左右の両サイドフレーム部53と、ロアフレーム部54とを備えて方形枠状に形成されている。
そして、表皮部材55の上端部と左右両側部は、バックフレーム51のアッパフレーム部52と左右の両サイドフレーム部53に巻き込まれて留められている。
図2に示すように、表皮部材55の下端部には、バックフレーム51のロアフレーム部54に巻き込まれる単数又は複数の巻込部56と、ロアフレーム部54に干渉することなく切り込まれる単数又は複数の切込み部57とがシート幅方向に交互に形成されている。
【0018】
シートクッション30のクッションフレーム31は、フロントフレーム部32と左右の両サイドフレーム部33とを備えてU字状に形成されている。
そして、表皮部材36の前端部と左右両側部は、フロントフレーム部32と左右の両サイドフレーム部33に巻き込まれて留められている。
図2に示すように、表皮部材36の後端部には、シートバック50の表皮部材55の切込み部57に挿入され、かつバックフレーム51のロアフレーム部54に巻き込まれる単数又は複数の巻込部37と、ロアフレーム部54に干渉することなく切り込まれる単数又は複数の切込み部38とがシート幅方向に交互に形成されている。
また、シートクッション30の表皮部材36の後部近傍には、シートクッション30の昇降動作に伴ってクッションフレーム31の後縁部(左右の両サイドフレーム部33の後縁部)に沿って屈曲可能な屈曲部39が形成されている。
【0019】
この実施例1に係るシート構造は上述したように構成される。
したがって、シートバック50の表皮部材55の下端部のシート幅方向に交互に形成した巻込部56と切込み部57とのうち、巻込部56を、バックフレーム51のロアフレーム部54に巻き込む一方、シートクッション30の表皮部材36の後端部のシート幅方向に交互に形成した巻込部37と切込み部38とのうち、巻込部37を、シートバック50の表皮部材55の切込み部57に挿入してバックフレーム51のロアフレーム部54に巻き込むことによって、シートクッション30の後縁と、シートバック50の下縁とを連続状に接合することができる。
この結果、シートクッション30の後縁と、シートバック50の下縁との間に生じる隙間が原因となる見栄えの悪化を防止することができる。
【0020】
また、シートクッション30の表皮部材36の後端部の巻込部37を、バックフレーム51のロアフレーム部54に巻き込む構造上、クッションフレーム31の後側のフレーム部を廃止することが可能となり、この分だけクッションフレーム31の構造を簡略化することができると共に軽量化を図ることができる。
【0021】
また、この実施例1において、図3に示すように、昇降機構20をなすリンク機構21の前リンク22と後リンク25とを前方に向けて斜め傾斜状をなすことでシートクッション30が下降位置に配置される。
このように、前リンク22と後リンク25とを有するすリンク機構21によって昇降機構20を簡単に構成することができる。
また、図3に示すように、下降位置にある前リンク22と後リンク25とを、図4に示すように、直立状をなす状態まで後方へ回動させることによって、シートクッション30を上昇位置に配置切替することができる。
シートクッション30の昇降動作に伴ってシートクッション30の表皮部材36の後部近傍に形成された屈曲部39がクッションフレーム31の後縁部をなす左右の両サイドフレーム部33の後縁部に沿って屈曲することによって、シートクッション30の表皮部材36がシートクッション30の昇降動作の妨害となることを防止することが可能となる。 さらに、シートクッション30の表皮部材36が過大に引張されたり、緩むことを防止することが可能となる。
【0022】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、図3と図4の二点鎖線に示すように、シートクッション30の表皮部材36において、後端部の巻込部37を延長し、その延長部37aを巻取装置60の巻取ドラムに接続することで、表皮部材36に所望とする張力を付与することも可能である。
この場合には、シートクッション30の昇降動作時に、表皮部材36が過大に引張されたり、緩むことを良好に防止することができる。
【符号の説明】
【0023】
30 シートクッション
31 クッションフレーム
32 フロントフレーム部
33 サイドフレーム部
36 表皮部材
37 巻込部
38 切込み部
39 屈曲部
50 シートバック
51 バックフレーム
52 アッパフレーム部
53 サイドフレーム部
54 ロアフレーム部
55 表皮部材
56 巻込部
57 切込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションフレームに表皮部材が張設されたシートクッションと、バックフレームに表皮部材が張設されたシートバックとを備えたシート構造であって、
前記シートバックの表皮部材の下端部には、前記バックフレームのロアフレーム部に巻き込まれる巻込部と、前記ロアフレーム部に干渉することなく切り込まれる切込み部とがシート幅方向に交互に形成され、
前記シートクッションの表皮部材の後端部には、前記シートバックの表皮部材の切込み部に挿入され、かつ前記シートバックのロアフレーム部に巻き込まれる巻込部と、前記ロアフレーム部に干渉することなく切り込まれる切込み部とがシート幅方向に交互に形成されていることを特徴とするシート構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシート構造であって、
シートクッションは、昇降機構によって下降位置と上昇位置とに配置切替可能に支持され、
前記シートクッションの表皮部材の後部近傍には、前記シートクッションの昇降動作に伴ってクッションフレームの後縁部に沿って屈曲可能な屈曲部が形成されていることを特徴とするシート構造。
【請求項3】
請求項2に記載のシート構造であって、
昇降機構は、下降位置にあるシートクッションを後方へ回動させながら上昇位置に配置切替可能なリンク機構によって構成されていることを特徴とするシート構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−224173(P2012−224173A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92854(P2011−92854)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】