説明

シート状ゴム床材

【課題】 低発煙性、耐水性及び施工性に優れたシート状ゴム床材を提供することを課題としている。
【解決手段】 シート状基材(2)の一面側に粘着材層(3)が配されたシート状ゴム床材(1)であって、前記シート状基材(2)は、水酸化アルミニウムと三酸化アンチモンと塩素化パラフィンとスチレン−ブタジエンゴムとを含むゴム組成物で形成されており、前記粘着材層(3)は、難燃剤とポリブテンとブチルゴムとを含む非加硫ブチルゴム組成物で形成されており、前記粘着材層(3)には該粘着材層(3)が床と接する側に、離型層(4)が配されているシート状ゴム床材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状ゴム床材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の床(例えば、鉄道用車両の床など)に敷設される床材としては、燃焼ガスの毒性の規制等の観点から、塩ビ系のものに替えて、ゴム系のものが使用されるようになってきている。
この種のゴム系床材は、通常、耐水性に優れたエポキシ系接着剤やウレタン系接着剤を用いて床面に接着されたり、また、施工性に優れるゴム系の接着剤を使用しつつも継目部や端縁部からの雨水等の浸入を防ぐべく、斯かる場所をエポキシ系シール剤でシールするなどして、床に敷設されたりしている。
しかしながら、耐水性に優れたエポキシ系接着剤などは、反応時間が長く、また、接着後には剥離し難いことから、上記の如く敷設方法では、敷設時及び剥離時における施工性が悪いという問題が生じている。
【0003】
これに対し、耐水性(止水性を含む)を保ちつつ、敷設時及び剥離時の施工を容易にする方法として、例えば、床下地にゴム系粘着剤(スチレン−ブタジエン共重合体など)を塗布して粘着層を形成させ、その上に合成樹脂製床材を貼着させる施工方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−54391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のごとく合成樹脂製床材を床下地に敷設する方法においては、床面からの剥離時の施工性は良好であるものの、粘着材を床に塗布する必要があるため、敷設時の施工性は依然として低く、施工性が十分でないという問題がある。
【0005】
ところで、この種の床材に於いては、一般に難燃性(特に、低発煙性)に優れたものが要望されており、特に、鉄道車両の床用のものに於いては、低発煙性のものが要望されている。
【0006】
本発明は、上記問題点及び要望に鑑み、低発煙性、耐水性及び施工性に優れたシート状ゴム床材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係るシート状ゴム床材は、シート状基材の一面側に粘着材層が配されたシート状ゴム床材であって、前記シート状基材は、水酸化アルミニウムと三酸化アンチモンと塩素化パラフィンとスチレン−ブタジエンゴムとを含むゴム組成物で形成され、前記粘着材層は、難燃剤とポリブテンとブチルゴムとを含む非加硫ブチルゴム組成物で形成され、前記粘着材層には該粘着材層が床と接する側に、離型層が配されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成からなるシート状ゴム床材によれば、前記シート状基材に難燃剤として水酸化アルミニウムと三酸化アンチモンと塩素化パラフィンとが配合されているため、発煙性が抑制される。
さらに、前記粘着材層に配合されているポリブテン、非加硫ブチルゴムの粘着性により、床面へシート状ゴム床材が容易に敷設されることが可能であり、かつ、床面からシート状ゴム床材が容易に剥離されることが可能である。しかも、前記粘着材層により雨水等の水がシート状ゴム床材と床面との間に侵入することが抑制される。
また、前記粘着材層には該粘着材層が床面と接する側に、離型層が配されていることにより、粘着しやすい前記粘着材層があるにもかかわらず、前記粘着材層が前記シート状基材に対して粘着することなく、前記シート状ゴム床材を巻く、たたむ等によりコンパクト化して保管することができる。さらに、前記シート状ゴム床材を床面に敷設する際には、コンパクト化された前記シート状ゴム床材を容易に広げることができ、また、前記粘着材層から前記離型層を容易に剥離することができ、前記粘着材層から前記離型層を剥離しながら床面に前記離型層を貼っていくこともできる。
【0009】
また、本発明に係るシート状ゴム床材は、前記シート状基材に配合されている無機系化合物の配合率が、前記シート状基材に対して60〜70重量%であり、かつ、前記水酸化アルミニウムの配合率が前記シート状基材に対して18〜22重量%であり、かつ、前記塩素化パラフィンの配合率が前記シート状基材に対して1〜3重量%であることが好ましい。
【0010】
なお、前記無機系化合物とは、炭素原子をもたない化合物を意味し、具体的には、無機系難燃剤である水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、また、他の無機系充填剤であるクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンを含めたものを意味する。なお、イオウ系加硫剤、顔料は、前記無機系化合物に含まれていない。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシート状ゴム床材は、低発煙性、耐水性及び施工性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るシート状ゴム床材1の実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態のシート状ゴム床材1は、シート状基材2の一面側に粘着材層3が配されたシート状ゴム床材1であって、前記シート状基材2は、水酸化アルミニウムと三酸化アンチモンと塩素化パラフィンとスチレン−ブタジエンゴムとを含むゴム組成物で形成され、前記粘着材層3は、難燃剤とポリブテンとブチルゴムとを含む非加硫ブチルゴム組成物で形成され、前記粘着材層3には該粘着材層3が床と接する側に、離型層4が配されている。
【0014】
本実施形態のシート状ゴム床材1は、シート状基材2の一面側に粘着材層3が配されたシート状のものである。尚、粘着材層3のある側が床面と接触する側となる。また、粘着材層3には、床面と接触する側に離型層4が配されている。
【0015】
前記シート状基材2は、シート状に成形され、通常、加硫されてなるものである。前記シート状基材2の厚さとしては、特に限定されるものではなく、例えば、2〜6mmが挙げられる。
前記シート状基材2は、ゴム成分としてスチレン−ブタジエンゴムと、難燃剤として水酸化アルミニウムと三酸化アンチモンと塩素化パラフィンとが配合されたゴム組成物で形成されている。また、前記シート状基材2には、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモンをも含め、クレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなど、分子中に炭素原子をもたない無機系化合物が配合されている。
【0016】
前記粘着材層3は、通常、シート状に成形されている。また、加硫されていない非加硫のものである。前記粘着材層3の厚さとしては、特に限定されるものではなく、例えば、0.5〜2.0mmが挙げられる。
前記粘着材層3は、ゴム成分としてのポリブテンおよびブチルゴムと、難燃剤とが配合された非加硫ブチルゴム組成物で形成されている。
【0017】
前記離型層4は、通常、シート状となっている。前記離型層4の厚さとしては、特に限定されるものではなく、例えば、0.1〜1mmが挙げられる。
前記離型層4としては、特に限定されず、紙、プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0018】
以下、前記シート状基材2、前記粘着材層3および前記離型層4について詳細を説明する。
【0019】
前記シート状基材2に配合されている前記スチレン−ブタジエンゴムの、スチレン/ブタジエン重量比率は特に限定されるものではないが、23.5〜46が好ましい。この比率範囲であることにより、通常のゴム加工設備による加工がしやすくなる。
【0020】
前記シート状基材2に配合されている前記水酸化アルミニウムの配合率は、難燃性付与の観点から前記シート状基材2に対して18〜22重量%であることが好ましい。18重量%以上であることによりシート状ゴム床材1の難燃性が向上し、かつ、発煙量が少なくなるという利点があり、22重量%以下であることにより耐摩耗性等のゴム特性の低下が抑制されるという利点がある。
【0021】
前記シート状基材2に配合されている前記三酸化アンチモンの配合率は、難燃性付与の観点から前記シート状基材2に対して、2〜8重量%であることが好ましい。
【0022】
前記シート状基材2に配合されている前記塩素化パラフィンの配合率は、難燃性付与の観点から前記シート状基材2に対して1〜3重量%であることが好ましく、1.5〜2.5重量%であることがさらに好ましい。1重量%以上であることによりシート状ゴム床材1の難燃性が向上するという利点があり、3重量%以下であることにより毒性の高い燃焼ガスの発生量を少なくすることができるという利点がある。
【0023】
前記塩素化パラフィンの炭素数、塩素化率は特に限定されるものではないが、炭素数としては、通常、炭素数12〜26が例示できる。また、塩素化パラフィン分子量中に占める塩素原子の原子量の割合として表す塩素化率としては、難燃性付与の観点から、通常、塩素化率40〜70%が例示できる。
【0024】
前記シート状基材2に配合されている無機系化合物の配合率は、前記シート状基材2に対して60〜70重量%であることが好ましく、63〜69重量%であることがさらに好ましい。60重量%以上であることにより難燃性が向上し、かつ、発煙量が少なくなるという利点があり、70重量%以下であることにより加工性がより容易となり、耐摩耗性等のゴム特性がより優れるという利点がある。
【0025】
前記シート状基材2には、前記スチレン−ブタジエンゴムの他に、ゴム成分として天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム(ハイスチレンゴム)、イソブチレンゴム、ブチルゴム(イソブテン−イソプレン共重合体)等が配合され得る。
【0026】
前記シート状基材2には、上記のゴム成分の他に、一般にゴム成形に用いられる加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等の架橋剤、加硫遅延剤が配合され得る。さらに、本発明の目的を損わない範囲で、その他の添加剤等も配合され得る。
【0027】
前記加硫剤としては、例えば、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
前記イオウ系の加硫剤としては、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
前記有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
【0028】
前記加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
【0029】
前記加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらの亜鉛塩等が挙げられる。
【0030】
前記加硫遅延剤としては、例えば、有機酸、ニトロソ化合物、ハロゲン化物、2−メルカプトベンツイミダゾール、N−シクロヘキシルチオフタルイミド(商品名「サントガードPVI」)等が挙げられる。
【0031】
前記添加剤としては、例えば、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどの充てん剤(フィラー)、ワックス、シランカップリング剤、活性剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、分散剤、脱水剤、粘着付与剤、帯電防止剤、加工助剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、ゴム組成物用の一般的なものを挙げることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択される。
【0032】
本実施形態の前記粘着材層3は、難燃剤とポリブテンとブチルゴムとを含む非加硫ブチルゴム組成物で形成されている。
【0033】
前記難燃剤は、前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、5〜15重量部配合されていることが好ましく、8〜12重量部配合されていることがより好ましい。前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、前記難燃剤が5重量部以上配合されていることにより、前記粘着材層3の難燃性が向上し、発煙量が少なくなるという利点があり、15重量部以下配合されていることにより前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0034】
前記難燃剤としては、無機系難燃剤、有機系難燃剤等が挙げられる。前記無機系難燃剤および前記有機系難燃剤の配合比としては、特に限定されないが、前記無機系難燃剤の方がより有毒ガスを発生しにくいという点で、前記有機系難燃剤1重量部に対して前記無機系難燃剤2〜5重量部が好ましい。
【0035】
前記無機系難燃剤は、前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、5〜10重量部配合されていることが好ましく、7〜8重量部配合されていることがより好ましい。前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、前記無機系難燃剤が5重量部以上配合されていることにより、前記粘着材層3の難燃性が向上し、発煙量が少なくなるという利点があり、10重量部以下であることにより前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0036】
前記有機系難燃剤は、前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、1〜5重量部配合されていることが好ましく、2〜3重量部配合されていることがより好ましい。前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、前記有機系難燃剤が1重量部以上配合されていることにより、前記粘着材層3の難燃性が向上し、発煙量が少なくなるという利点があり、5重量部以下であることにより前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0037】
前記無機系難燃剤としては、金属水酸化物、アンチモン系化合物、その他無機系化合物(赤リン系化合物を含む)が挙げられる。なかでも毒性が比較的低いという点で、金属水酸化物が好ましい。前記有機系難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物等が挙げられる。なかでも毒性が比較的低いという点で、ハロゲン系化合物が好ましい。
【0038】
前記金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。なかでも入手しやすいという点で、水酸化アルミニウムが好ましく、該水酸化アルミニウムとしては、前記シート状基材2に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0039】
前記水酸化アルミニウムは、前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、5〜10重量部配合されていることが好ましく、7〜8重量部配合されていることがより好ましい。前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、前記水酸化アルミニウムが5重量部以上配合されていることにより、前記粘着材層3の難燃性が向上し、発煙量が少なくなるという利点があり、10重量部以下であることにより前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0040】
前記アンチモン系化合物としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等を挙げることができる。
【0041】
前記その他無機系化合物としては、ホウ酸亜鉛、モリブデン系化合物、赤リン等を挙げることができる。
【0042】
前記有機系難燃剤としての前記ハロゲン系化合物としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、デカブロモジフェニルオキシド等を挙げることができる。なかでも入手しやすいという点で、塩素化パラフィンが好ましく、該塩素化パラフィンとしては、前記シート状基材2に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0043】
前記塩素化パラフィンは、前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、1〜5重量部配合されていることが好ましく、2〜3重量部配合されていることがより好ましい。前記非加硫ブチルゴム組成物100重量部に対して、前記塩素化パラフィンが1重量部以上配合されていることにより、前記粘着材層3の難燃性が向上し、発煙量が少なくなるという利点があり、5重量部以下であることにより前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0044】
前記水酸化アルミニウムと前記塩素化パラフィンとは、前記粘着材層3の難燃性をより優れたものにし得るという点で、併用されていることがより好ましい。
【0045】
前記有機系難燃剤としての前記リン系化合物としては、赤リン系難燃剤等を挙げることができる。
【0046】
前記粘着材層3に配合されている前記ポリブテンは、イソブテンの重合体である。前記ポリブテンの数平均分子量としては、特に限定されるものではなく、例えば、350〜2900が挙げられる。前記ポリブテンは、分子量の異なるポリブテンが混合されて併用され得る。
【0047】
前記粘着材層3に配合されている前記ブチルゴムは、イソブテンとイソプレンとの共重合体である。イソブテンとイソプレンとの組成比は、特に限定されないが、容易に入手できる市販品の場合、イソブテンが組成中の大半を占める。前記ブチルゴムの数平均分子量としては、特に限定されるものではなく、例えば、350〜2900が挙げられる。
【0048】
前記ポリブテンと前記ブチルゴムとの配合比は、前記ポリブテン100重量部に対して前記ブチルゴム90〜110重量部であることが好ましい。この配合比範囲であることにより、前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0049】
前記ポリブテンの配合量および前記ブチルゴムの配合量の和であるゴム成分配合量と、前記難燃剤配合量との比は、前記ゴム成分100重量部に対して前記難燃剤15〜20重量部であることが好ましい。前記ゴム成分100重量部に対して前記難燃剤が15重量部以上であることにより、前記粘着材層3の難燃性が向上し、発煙量が少なくなるという利点があり、20重量部以下であることにより前記粘着材層3の粘着性がより適度なものになるという利点がある。
【0050】
前記粘着材層3には、その他、ゴム工業で通常用いられている添加剤が配合され得る。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの無機充填剤(フィラー)、脂肪族系炭化水素樹脂等の粘着付与剤、石油系炭化水素系の軟化剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、ゴム組成物用の一般的なものを挙げることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択される。
【0051】
なお、シート状基材2の一面側に粘着材層3が配された本実施形態のシート状ゴム床材1は、使用時まで巻かれた状態で保管され得る。この場合、使用時において、シート状基材2と粘着材層3とが乖離しやすくする点で、粘着材層3の表面に離型層4が形成されていることが好ましい。
【0052】
前記離型層4としては、使用時に前記粘着材層3から容易に剥離され得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シート状の紙、シート状のプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0053】
次に、本実施形態のシート状ゴム床材1の製造方法について説明する。
【0054】
本実施形態のシート状ゴム床材1は次のようにして製造することができる。
【0055】
まず、前記シート状基材2を作製するため、上記の如きシート状基材2用の組成物(未加硫)を準備し、例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等を用いてこれを混練りした後、カレンダー等を用いてシート状に成形し、次に、得られたシート状基材2(未加硫)を、ロートプレス等の連続加硫機によって、加圧加熱して、シート状基材2を製造することができる。
【0056】
次に、前記粘着材層3を作製するため、上記の如き粘着材層3用の組成物(未加硫)を準備し、例えば、ニーダーミキサー、ロール等を用いてこれを混練りした後、押出し機等を用いてシート状に成形する方法等によって、粘着材層3(未加硫)を製造することができる。
【0057】
上記の如く調製した前記シート状基材2の一面側に上記粘着材層3を貼り付けることにより、シート状ゴム床材1を製造することができる。
【0058】
なお、シート状に製造された本実施形態のシート状ゴム床材1は、離型層4を構成する剥離紙を前記粘着材層3上に配し、該剥離紙を外側にして巻くことにより、使用時まで保管することができる。また、敷設時には、巻いたシート状ゴム床材1を広げながら、剥離紙を剥離していくことができ、さらに略同時に粘着材層3を床面に付着させることもできる。このようにして、本実施形態のシート状ゴム床材1は敷設時の施工性を向上させることができる。
【0059】
本実施形態のシート状ゴム床材1を敷設することができる床の材質としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、ブリキ、トタン、銅などの金属、モルタル等が挙げられる。
【0060】
本実施形態のシート状ゴム床材1は、発煙性が抑制され、耐水性を有し、敷設・剥離時の施工容易性がある。よって、これらの特性が要求される電車の床(ステンレス製)に敷設されるゴム床材として好適に用いられる。
【実施例】
【0061】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
まず、表1の実施例1の配合に従い組成物をバンバリーミキサー、オープンロールを用いて混練り加工し、次にカレンダーロールにて圧延加工を行ってシート状の長尺物とし、連続加硫機(ロートプレス)にて加硫加工(160℃、15分)させて、加硫したシート状基材(幅1000mm、長さ10m、厚さ3mm)を作製した。
次に表2の非加硫ブチルゴム組成物1の配合に従い、該組成物をオープンニーダーで混練りし、次に押し出し機によって厚さ1mmのシート状とし、粘着材層(非加硫)を作製した。さらに、剥離層としてニッパ社製の両面シリコーン処理した剥離紙(品番:CL−73×2)を用い、該剥離紙を粘着材層の片面側に配して、該剥離紙を外側にしながら粘着材層とともに巻き取った。剥離紙とともに巻かれたこの粘着材層を予め作製した上記シート状基材の裏面側に転圧にて貼り付けた。このようにして、シート状基材、粘着材層および剥離層が積層された、厚さ4mm、幅1000mm、長さ10mのシート状ゴム床材を製造した。
【0063】
【表1】

【0064】
表1で示したゴム組成の成分について、詳細を以下に示す。
SBR:スチレン−ブタジエンゴム、JSR社製 商品名「JSR1502」
ハイスチレンゴム:JSR社製 商品名「JSR0061」
ブチルゴム:日本ブチル社製 商品名「Butyl268」
クレー:R.T.Vanderbilt社製 商品名「Dixie Clay」
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製 商品名「重炭」
水酸化アルミニウム:昭和電工社製 商品名「ハイジライトH−42M」
三酸化アンチモン:鈴裕化学社製 商品名「ファイアカット AT3」
塩素化パラフィン:味の素ファインテクノ社製、商品名「エンパラ70F」
老化防止剤:大内新興化学社製、「ノクラック224」
粘着付与剤:脂肪族系炭化水素樹脂、日本ゼオン社製、商品名「クイントンA−100」
ジエチレングリコール:三菱化学社製 商品名「ジエチレングリコール」
シランカップリング剤:デグサジャパン社製 商品名「Si−69」
酸化亜鉛:ハクスイテック社製、商品名「酸化亜鉛3種G」
ステアリン酸:日本油脂社製、商品名「ビーズステアリン酸椿」
酸化チタン:石原産業社製 商品名「タイペーク CR−60」
黄色顔料マスターバッチ:山陽色素社製 商品名「PIGMOTEX YELLOW TRN」
茶色顔料:戸田ピグメント社製 商品名「500R」
青色顔料マスターバッチ:山陽色素社製 商品名「PIGMOTEX BLUE BS pure」
黒色顔料:東洋カーボン社製 商品名「シースト3」
緑色顔料マスターバッチ:山陽色素社製 商品名「PIGMOTEX GREEN LX」
イオウ:細川化学工業社製、商品名「オイル硫黄」
加硫促進剤:大内新興化学社製、商品名「ノクセラー NS−P」
【0065】
【表2】

【0066】
表2で示した非加硫ブチルゴム組成物の成分について、詳細を以下に示す。
ブチルゴム:JSR社製 商品名「JSR BUTYL065」
クレー:竹原化学工業社製 商品名「クレー」(無機充てん剤)
シリカ:徳山ソーダ社製 商品名「トクシールGU」(補強性充填剤)
ポリブテン1:新日本石油社製 商品名「ポリブテンHV−300」
ポリブテン2:新日本石油社製 商品名「ポリブテンHV−1900」
脂肪族系炭化水素樹脂:日本ゼオン社製 商品名「クイントンA-100」(粘着付与剤)
ナフテン系鉱油:出光興産社製 商品名「プロセスオイルNR−26」(軟化剤)
塩素化パラフィン:味の素ファインテクノ社製、商品名「エンパラ70F」
水酸化アルミニウム:昭和電工社製 商品名「ハイジライトH−42M」
【0067】
(実施例2)
表1の実施例2の配合とした点以外は、実施例1と同様にしてシート状ゴム床材を製造した。
【0068】
(実施例3)
表1の実施例3の配合とした点以外は、実施例1と同様にしてシート状ゴム床材を製造した。
【0069】
(実施例4)
表1の実施例4の配合とした点以外は、実施例1と同様にしてシート状ゴム床材を製造した。
【0070】
(実施例5)
表1の実施例5の配合とした点以外は、実施例1と同様にしてシート状ゴム床材を製造した。
【0071】
(実施例6)
表1の実施例6の配合とした点以外は、実施例1と同様にしてシート状ゴム床材を製造した。
【0072】
(比較例1)
表1の比較例1の配合とした点以外は、実施例1と同様にしてシート状ゴム床材を製造した。
【0073】
<発煙性の試験>
ASTM E662に規定される試験方法に準拠し、有炎燃焼(有炎モード)及び無炎燃焼(無炎モード)下での発煙量を測定した。試験方法の概要を次に示す。
密閉した発煙箱中に試料を垂直に置き、無炎燃焼試験は電熱ヒーターで輻射熱を与えて加熱発煙させ、有炎燃焼試験は電熱ヒーターとガスバーナーとで燃焼、発煙させるものである。発生した煙は光電管による透過光の強さから減光係数を求め、比光学密度(単位面先あたりの発煙量)を求めるものである。
燃焼開始から1.5分後の発煙量をDs at1.5min、4分後の発煙量をDs at4.0min、燃焼時間20分間での最大発煙量をDs maxとして示した。
発煙量の多少の目安として、アメリカ防火協会規格NFPAコードNo.130の値、つまり、1.5分値100以下、かつ、4分値200以下を参考値とした。なお、剥離紙を剥離したあとのシート状ゴム床材を用いた。結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
<燃焼ガス分析>
上記発煙性の試験において、有炎燃焼4分時の燃焼ガスを採取し、検知管によって次に示すガス量を測定した。対象ガスは、HCN、CO、NO+NO2、SO2、HCl、HFとした。結果を表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
(調製例1)
表1の実施例1の配合に従い、実施例1と同様にして、幅1000mm、長さ6mのシート状基材を作製した。次に、表2の非加硫ブチルゴム組成物1の配合で製造した粘着材層を実施例1と同様にして上記シート状基材の裏面側に貼り付け、切断し、厚さ4mm、長さ6mの試験用サンプルを3本調製した。
【0078】
(調製例2)
表1の実施例5の配合とした点以外は、実施例1と同様にして、試験用サンプルを調製した。
【0079】
(調製例3)
表1の実施例1の配合に従い、実施例1と同様にして、幅1000mm、長さ6mのシート状基材を作製した。次に、このシート状基材を切断し、長さ6mのシート状基材を3本作製した。さらに、裏面側に溶液型接着剤(クロロプレンゴム系接着剤:ノガワケミカル社製 商品名「ダイヤボンドCK370」)を塗布して試験用サンプルを調製した。
【0080】
(調製例4)
表2の非加硫ブチルゴム組成物2の配合とした点以外は、実施例1と同様にして、試験用サンプルを調製した。
【0081】
<耐水性試験>
調製例1〜3のシート状ゴム床材等の試験用サンプルを用い、耐水性試験として、23℃雰囲気下における水中浸漬前後のはく離力を測定した。
はく離力の測定は、JIS K6854−2「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に規定される試験方法に準拠して行った。なお、はく離スピードは200mm/分とした。浸漬条件は、23℃で水中に168時間とした。取り出し後、ただちにはく離試験を行った。結果は3回の平均値として算出した。結果を表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
表5から認識できるように、調製例1、調製例2では、水に浸漬したあとのはく離力が比較的大きい。しかも、水に浸漬した後のはく離力が浸漬前のはく離力より上昇している。従って、調製例1、調製例2のシート状ゴム床材は、耐水性に優れているといえる。
【0084】
<低温はく離試験>
調製例1,4のシート状ゴム床材等の試験用サンプルを用い、低温はく離試験として、5℃雰囲気下における水中浸漬前後のはく離力を測定した。
なお、温度雰囲気を変更した点、および水浸漬をしなかった点以外は、上記の「耐水性試験」と同様な方法で試験した。結果を表6に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
調製例4は、調製例1に比較してはく離力が高く、はく離が粘着材破壊となった。このように、粘着材層の組成を適宜調整することにより、所望の温度雰囲気下における所望のはく離力を有するものが調製され得る。
【0087】
<施工性の試験>
ステンレス板(SUS304:厚さ1.2mm×1m×2m)を床に並べて、幅3m×長さ6mの下地を構成した。幅1mの床材を幅方向に3枚継ぎにて貼り付けを行い、その際の施工性について確認した。試験サンプルは、実施例1で用いたはく離紙を調製例1〜3の試験サンプルに貼り付けて調製したものを用いた。
なお、施工性の確認として、施工時間(施工に要する時間)、位置調整(位置合わせの容易性)、環境対応(環境に対する負荷)、廃材の発生量をその項目とした。なお、環境に対する負荷とは、有機溶剤の発生量の多少を意味し、該発生量の少ない方が優れている。また、廃材の発生量とは、施工に伴って発生するゴミの量を意味し、該量の少ない方が優れている。結果を表7に示す。
【0088】
【表7】

【0089】
上記施工性の試験の結果から、次のことが認識できる。即ち、調製例1や調製例2のシート状ゴム床材は、床に貼り付けることで施工できるため、調製例3と比較して、接着剤を塗布する時間や硬化する時間が必要ない。従って、施工時間が短く、施工性に優れる。また、調製例1や調製例2のシート状ゴム床材は、床に対する位置がいったん決められても、再度、より容易に位置を調整することができるという位置調整の点で優れる。さらに、調製例1や調製例2のシート状ゴム床材は、有機溶剤をほとんど含まないため、環境対応の点で優れる。加えて、調製例1や調製例2のシート状ゴム床材は、はく離紙が主な廃材となるだけであり、調製例3の施工において用いる接着剤容器などの廃材が発生せず、廃材の発生の点で調製例3より優れる。
【0090】
上記各試験結果によれば、難燃性のうちの低発煙性に優れることが認められる。また、水に浸漬後にはく離力が低下することなく、むしろ上昇していることから耐水性が高いことが認められる。さらに、施工性に優れることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】一実施形態のシート状ゴム床材を示す断面図。
【符号の説明】
【0092】
1:シート状ゴム床材、2:シート状基材、3:粘着材層、4:離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材(2)の一面側に粘着材層(3)が配されたシート状ゴム床材(1)であって、前記シート状基材(2)は、水酸化アルミニウムと三酸化アンチモンと塩素化パラフィンとスチレン−ブタジエンゴムとを含むゴム組成物で形成され、前記粘着材層(3)は、難燃剤とポリブテンとブチルゴムとを含む非加硫ブチルゴム組成物で形成され、前記粘着材層(3)には該粘着材層(3)が床と接する側に、離型層(4)が配されていることを特徴とするシート状ゴム床材(1)。
【請求項2】
前記シート状基材(2)に配合されている無機系化合物の配合率が、前記シート状基材(2)に対して60〜70重量%であり、かつ、前記水酸化アルミニウムの配合率が前記シート状基材(2)に対して18〜22重量%であり、かつ、前記塩素化パラフィンの配合率が前記シート状基材(2)に対して1〜3重量%である請求項1記載のシート状ゴム床材(1)。

【図1】
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【公開番号】特開2009−184184(P2009−184184A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25034(P2008−25034)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】