説明

シート状体位置決め搬送機構及び画像記録装置

【課題】 搬送されるフィルム等のシート状体を幅寄せして位置決めるための駆動源をステッピングモータとした場合、ステッピングモータのトルクが比較的小さくて済みかつシート状体の寸法ばらつきがあっても精度よく位置決めることのできるシート状体位置決め搬送機構及び画像記録装置を提供する。
【解決手段】 このシート状体位置決め搬送機構は、シート状体Fを搬送する搬送手段と、搬送されたシート状体の搬送方向Hと直交方向wの位置を矯正し位置決める矯正手段と、を備え、矯正手段は、搬送方向と略直交方向に正逆移動しシート状体と係合してシート状体を幅寄せする一対の幅寄せ部材1,2と、幅寄せ部材を駆動するステッピングモータと、を有し、幅寄せ部材がシート状体を位置決めたときに発生する負荷値が所定の閾値thを超えるとステッピングモータが脱調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状体を搬送方向の直交方向に位置決めて搬送するシート状体位置決め搬送機構及び画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
露光部で熱現像感光フィルムにレーザ光を照射して露光し、現像部で熱現像して潜像を可視化する画像記録装置において、露光部に搬送される際のフィルムの幅方向の位置を位置決め機構により幅寄せすることで位置決めしている(下記特許文献1参照)。熱現像感光フィルムは、通常、170μm前後のPETベースに乳剤を塗布し、200μm前後の厚さとなっている。
【0003】
通常、フィルム断裁時には、図8のように、広幅の元巻きから、14インチ幅で数カ所にわたり断裁し(スリッタ方向)、この14インチ幅ロールを、更に17・14・11の3サイズに断裁する(クロス方向)。14インチ幅に断裁するのは、上記3サイズが市場での使用量の大半を占めるからである。他のサイズは、専用幅ロールに断裁し(上記例では8インチ)、この後、10インチに断裁すると六切サイズとなる。スリッタ方向及びクロス方向ともに断裁による寸法のばらつきを生じるが、一般的には、スリッタ方向よりもクロス方向の寸法のばらつきが大きい。
【0004】
上述のような熱現像感光フィルムを一対の幅寄せ爪を用いて幅寄せ移動させる場合、下記特許文献2のように、搬送方向の搬送経路に曲率を持たせることで、その搬送経路に沿ったフィルムは所定の剛性を有するので、一方の幅寄せ爪で押圧されて、フィルム自身が変形(座屈)することなく、姿勢を維持したまま横方向へ移動し幅寄せされる。この後、両方の幅寄せ爪で係止されると、幅寄せ爪のストローク(幅寄せ)に伴って弾性変形し中央が凸状に撓む(中凸状)ことになる。フィルムの中央が凸状に撓んで中凸状となった状態で幅寄せ爪の係止が解かれると、撓みにより蓄積されていた弾性エネルギーが解放されてフィルムの位置がずれてしまうおそれがある。
【0005】
上述の幅寄せ爪を搬送方向と直交する左右方向に移動させる駆動系を特許文献2のようにパルスモータ(ステッピングモータ)を含む構成とした場合、パルスモータの選定に際しては、従来は、幅寄せ移動速度の選定後、当該移動速度に見合い、かつ、フィルムを中凸状に移動させることができるような強大なパワー(出力トルク)を発揮する型式が選定されていたので、コストも増加していた。
【特許文献1】特開2003−167300号公報
【特許文献2】特開2004−99204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、搬送されるフィルム等のシート状体を幅寄せして位置決めるための駆動源をステッピングモータとした場合、ステッピングモータのトルクが比較的小さくて済みかつシート状体の寸法ばらつきがあっても精度よく位置決めることのできるシート状体位置決め搬送機構及び画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によるシート状体位置決め搬送機構は、シート状体を搬送する搬送手段と、前記搬送されたシート状体の搬送方向と直交方向の位置を矯正し位置決める矯正手段と、を備え、前記矯正手段は、前記搬送方向と略直交方向に正逆移動し前記シート状体と係合して前記シート状体を幅寄せする少なくとも1つの幅寄せ部材と、前記幅寄せ部材を駆動するステッピングモータと、を有し、前記ステッピングモータの出力トルクが、前記幅寄せ部材の前記シート状体の位置決め過程で発生する負荷値に対し所定の関係となるよう選定されていることを特徴とする。
【0008】
このシート状体位置決め搬送機構によれば、ステッピングモータで駆動された幅寄せ部材が移動しシート状体と係合するときに発生する負荷値がその係合状態に応じて変化するが、ステッピングモータの出力トルクが位置決め過程で発生する負荷値に対し所定の関係となるよう選定されているので、例えば、シート状体が位置決められたときの負荷値に応じてステッピングモータが脱調するように選定することで、その脱調した時点で位置決めが完了する。このように、ステッピングモータの特性である出力トルクに基づいて制御するので、ステッピングモータのトルクが比較的小さくて済むとともに、シート状体と係合するときに発生する負荷値に基づいて制御するので、シート状体の寸法ばらつきがあっても精度よく位置決めることができる。
【0009】
上記シート状体位置決め搬送機構において前記シート状体が前記幅寄せ部材に係合し、目標位置に位置決められた後、当該シート状体が平坦な状態を保った状態で前記ステッピングモータが脱調するよう出力トルクが選定されることが好ましい。これにより、シート状体が中凸状に弾性変形する前に目標位置に位置決められるので、位置決め後にシート状体が中凸状からの弾性復帰で位置が変わってしまうことを防ぐことができる。
【0010】
また、所定の閾値を前記シート状体が前記幅寄せ部材に部分的に係合したときに発生する第1負荷値と前記幅寄せ矯正が完了したときに発生する第2負荷値との間に設定し、前記負荷値が前記所定の閾値を超えると前記ステッピングモータが脱調するように構成できる。
【0011】
また、前記搬送手段は複数サイズのシート状体を位置決め可能であり、この場合にも、シート状体と係合するときに発生する負荷値に基づいて制御するので、各サイズのシート状体を精度よく位置決めることができる。
【0012】
また、前記矯正手段は、前記幅寄せ部材を一対有し、前記一対の幅寄せ部材で前記シート状体をセンタ基準で幅寄せするように構成できる。なお、一対の幅寄せ部材はステッピングモータのトルクにより回転がラックピニオン構造を介して直線駆動されるようになっている。
【0013】
本発明による画像記録装置は、シート状媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送されたシート状媒体を走査して潜像を形成する露光手段と、前記露光手段の走査に対する、前記シート状媒体の搬送方向と直交方向の位置を矯正し位置決める矯正手段と、前記搬送手段、前記露光手段及び前記矯正手段を制御する制御手段と、を備える画像記録装置であって、前記矯正手段は、前記搬送方向と略直交方向に正逆移動し前記シート状媒体と係合して前記シート状媒体を幅寄せする少なくとも1つの幅寄せ部材と、前記幅寄せ部材を駆動し移動させるステッピングモータと、を有し、前記ステッピングモータの出力トルクが、前記幅寄せ部材の前記シート状媒体の位置決め過程で発生する負荷値に対し所定の関係となるよう選定されていることを特徴とする。
【0014】
この画像記録装置によれば、ステッピングモータで駆動された幅寄せ部材が移動しシート状媒体と係合するときに発生する負荷値がその係合状態に応じて変化するが、ステッピングモータの出力トルクが位置決め過程で発生する負荷値に対し所定の関係となるよう選定されているので、例えば、シート状媒体が位置決められたときの負荷値に応じてステッピングモータが脱調するように選定することで、その脱調した時点で位置決めが完了する。このように、ステッピングモータの特性である出力トルクに基づいて制御するので、ステッピングモータのトルクが比較的小さくて済むとともに、シート状媒体と係合するときに発生する負荷値に基づいて制御するので、シート状媒体の寸法ばらつきがあっても精度よく位置決めることができる。従って、露光手段の走査による潜像をシート状媒体に正確な位置に形成することができる。
【0015】
上記画像記録装置において前記シート状媒体が前記幅寄せ部材に係合し、目標位置に位置決められた後、当該シート状媒体が平坦な状態を保った状態で前記ステッピングモータが脱調するよう出力トルクが選定されることが好ましい。これにより、シート状媒体が中凸状に弾性変形する前に目標位置に位置決められるので、位置決め後にシート状媒体が中凸状からの弾性復帰で位置が変わってしまうことを防ぐことができる。
【0016】
また、所定の閾値を前記シート状媒体が前記幅寄せ部材に部分的に係合したときに発生する第1負荷値と前記幅寄せ矯正が完了したときに発生する第2負荷値との間に設定し、前記負荷値が前記所定の閾値を超えると前記ステッピングモータが脱調するように構成できる。
【0017】
また、前記搬送手段は複数サイズのシート状媒体を位置決め可能であり、前記制御手段はサイズに関わらず同一の制御を行うことができる。各サイズにおいてシート状媒体と係合するときに発生する負荷値に基づいて制御するので、各サイズのシート状体を精度よく位置決めることができる。
【0018】
また、前記シート状媒体は所定の寸法サイズを有し、前記制御手段はその寸法サイズのばらつきに関わらず同一の制御を行うことができる。
【0019】
また、前記矯正手段は、前記幅寄せ部材を一対有し、前記一対の幅寄せ部材で前記シート状媒体をセンタ基準で幅寄せするように構成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシート状体位置決め搬送機構及び画像記録装置によれば、搬送されるシート状体・シート状媒体を幅寄せして位置決めるための駆動源をステッピングモータとした場合に、ステッピングモータのトルクが比較的小さくて済みかつシート状体・シート状媒体の寸法ばらつきがあっても精度よく位置決めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0022】
〈第1の実施の形態〉
【0023】
図1は第1の実施の形態によるシート状体位置決め搬送機構を概略的に示す要部平面図(a)及び要部正面図(b)である。図2は図1のシート状体位置決め搬送機構の要部上面図(a)及び要部側面図(b)である。
【0024】
図1、図2に示すように、シート状体位置決め搬送機構は、略L字状に構成され互いに平行に対向し合う側面部1a,2a上にラック1b,2bが形成された一対の第1及び第2の幅寄せ部材1,2と、正逆回転可能なステッピングモータ7と、ステッピングモータ7により歯車7aを介して回転し幅寄せ部材1,2のラック1b,2bと噛み合うピニオン3と、シート状のフィルムFを搬送方向Hに搬送するように幅寄せ部材1,2の上流側に配置された搬送ローラ対4と、を備える。
【0025】
図1(a)のように、ステッピングモータ7が正回転することでピニオン3が回転方向rに回転すると、第1及び第2の幅寄せ部材1,2が搬送方向Hと直交する幅方向wに互い接近するように移動し、フィルムFの両側端に向け移動しフィルムFを幅寄せする。また、ステッピングモータ7が逆回転することでピニオン3が回転方向r’に回転すると、第1及び第2の幅寄せ部材1,2が搬送方向Hと直交する幅方向wの逆の幅方向w’に互い遠ざかるように移動する。
【0026】
図1(b)のように、第2の幅寄せ部材2の上端面2cの上方に光反射型の位置センサ6が配置されている。図2(a)のように第2の幅寄せ部材2がホーム位置6aまで移動すると、位置センサ6が上端面2cを検知し、この検知信号によりステッピングモータ7がホーム位置6aで停止する。なお、第1及び第2の幅寄せ部材1,2は共通のピニオン3で互いに同じ移動量だけ移動するので、第2の幅寄せ部材2がホーム位置6aに位置するときは、第1の幅寄せ部材1もホーム位置にある。
【0027】
図2(b)のように、搬送ローラ対4は、駆動ローラ4aと従動ローラ4bを有し、従動ローラ4bは圧着解除可能であり、駆動ローラ4aに対し実線位置でフィルムを搬送可能なニップを形成し、破線位置でニップを解除している。
【0028】
図2(a)のように、複数サイズのフィルムF1,F2,F3の内のいずれかのフィルムFが搬送されてくると、第1及び第2の幅寄せ部材1,2がステッピングモータ7の回転によりホーム位置から幅方向wに移動し、フィルムFの側端に係合することでフィルムFを幅寄せし目標位置に位置決めする。
【0029】
ここで、ステッピングモータについて図3を参照して説明する。図3は図1のステッピングモータの回転速度と出力トルクとの関係を示すカーブである。
【0030】
ステッピングモータは入力したパルス数(1秒間当たりのパルス数)に対応する回転数が得られるが、過負荷が作用すると、ロータとステータとの関係が乱れ、所望の回転が得られなくなる、いわゆる脱調状現象が発生する。ステッピングモータが例えば図3のカーブaのような回転速度と出力トルクとの関係を有する場合、必要トルクがカーブaの内側(カーブc側)に入っていなければならず、必要トルクがカーブaの外側(カーブb側)にあると、ステッピングモータは正常に回転しなくなり脱調状態となる。
【0031】
本実施の形態では、ステッピングモータ7で駆動された第1及び第2の幅寄せ部材1,2がホーム位置から幅方向wに移動し、フィルムFの側端に係合して幅寄せし、目標位置に位置決めし、このとき、フィルムFは中凸状に弾性変形していない。このフィルムFの側端と係合するときに発生する負荷値がその係合状態に応じて変化し、かかる係合が進むと負荷値が大きくなるが、その負荷値(必要トルク)が所定値に達するとステッピングモータ7が脱調し、第1及び第2の幅寄せ部材1,2を駆動(移動)できなくなる。このようにして、脱調した状態でフィルムFが位置決められる。従って、フィルムFが中凸状に弾性変形する前でかつ目標位置に位置決められたときに幅寄せ部材1,2による係合で最大負荷値が発生し、この負荷値に達したときにステッピングモータ7が脱調するようにステッピングモータを選定する。
【0032】
例えば、ステッピングモータ7の脱調トルクが図3のカーブaとカーブbとの間にあるときは、カーブaまたはcの特性を有するステッピングモータを選定する。また、ステッピングモータ7の脱調トルクが図3のカーブaとカーブcとの間にあるときは、カーブcの特性を有するステッピングモータを選定する。
【0033】
具体的には、第1及び第2の幅寄せ部材1,2がフィルムFの側端に部分的に係合したときに発生する負荷値と上記最大負荷値との間に所定の閾値を設定し、ステッピングモータ7をその脱調トルクが所定の閾値(またはその近傍の値)になるように選定する。
【0034】
次に、図1乃至図3のシート状体位置決め搬送機構による位置決め搬送の動作について図4を参照して説明する。図4は偏った位置にあるフィルムFを図1,図2のシート状体位置決め搬送機構により搬送し目標位置に位置決める様子及び幅寄せ部材の幅寄せ位置と負荷の関係を模式的に示す図である。
【0035】
図4のように、フィルムFはその側端Fa、Fbが第1及び第2の幅寄せ部材1,2に対し略平行であるが側端Fb側に偏っている状態で搬送方向Hに搬送され、第1及び第2の幅寄せ部材1,2がステッピングモータ7の回転でホーム位置6aから幅方向wに移動を開始すると、まず、第2の幅寄せ部材2がフィルムFの側端Fbに係合し、第1の幅寄せ部材1が側端Faに係合するまで、片側の側端Fbで部分的に幅寄せし、フィルムFからの反力による負荷値がt1からt2に上昇する。
【0036】
次に、第1及び第2の幅寄せ部材1,2が幅方向wに更に移動し、フィルムFの側端Fb側のみならずに第1の幅寄せ部材1が側端Faに係合すると、フィルムFは中凸状に弾性変形することなく目標位置に位置決めされる。このとき、フィルムFは両側端Fa,Fbで幅寄せ部材1,2に係合するため、フィルムFからの反力による負荷値がt2から所定の閾値thを超えてt3に急激に上昇する。この後、ステッピングモータのロータとステータとの関係をリセットし、離間する方向へモータを逆転し、幅寄せ部材1,2をホーム位置(サイズ毎に異なる位置設定でも良い)に戻し、搬送ローラ対を圧着して、位置決めされたフィルムを搬送する。
【0037】
上述のように、フィルムFからの反力による負荷値が所定の閾値thを超えるので、ステッピングモータ7が脱調する。このため、ステッピングモータ7はそれ以上にフィルムFを移動させることができなくなり、フィルムFは、更に幅寄せされることなく中凸状に弾性変形せずに(撓まずに)目標位置に位置決めされ、その位置決め状態で搬送される。
【0038】
次に、偏りかつ曲がった位置にあるフィルムFを位置決め搬送する動作について図5を参照して説明する。図5は偏りかつ曲がった位置にあるフィルムFを図1,図2のシート状体位置決め搬送機構により搬送し目標位置に位置決める様子及び幅寄せ部材の幅寄せ位置と負荷の関係を模式的に示す図である。
【0039】
図5のように、フィルムFは、その側端Fa、Fbが第1及び第2の幅寄せ部材1,2に対し曲がりかつ側端Fb側に偏っている状態で搬送方向Hに搬送され、まず、第2の幅寄せ部材2がフィルムFの側端Fbに部分的に係合すると、フィルムFからの反力による負荷値がt11からt12に上昇する。
【0040】
次に、第1及び第2の幅寄せ部材1,2が幅方向wに更に移動し、第1の幅寄せ部材1がフィルムFの側端Faにも部分的に係合する。このように、フィルムFは両側端Fa,Fbで幅寄せ部材1,2に部分的に係合するため、フィルムFからの反力による負荷値がt12からt13に上昇するが、フィルムFも移動するので、さほど増大しない。
【0041】
更に、第1及び第2の幅寄せ部材1,2が移動すると、フィルムFは両側端Fa,Fbが幅寄せ部材1,2に係合し倣うことで平行になり、フィルムFは中凸状に弾性変形することなく目標位置に位置決めされる。このとき、フィルムFは両側端Fa,Fbで幅寄せ部材1,2に係合するため、フィルムFからの反力による負荷値がt13から所定の閾値thを超えてt14に上昇する。このように、フィルムFからの反力による負荷値が所定の閾値thを超えるので、ステッピングモータ7が脱調する。このため、ステッピングモータ7はそれ以上にフィルムFを移動させることができなくなり、フィルムFは、更に幅寄せされることなく中凸状に弾性変形せずに(撓まずに)目標位置に位置決めされ、その位置決め状態で搬送される。
【0042】
以上のように、図1〜図3のシート状体位置決め搬送機構によれば、一対の幅寄せ部材を左右方向(幅方向w、w’)に移動させる駆動系をステッピングモータ7を含む構成とし、そのステッピングモータ7の出力トルクを選定することで、図4,図5のように、フィルムFの幅寄せ完了(位置矯正完了)後、更に幅寄せ部材1,2が移動しようとしても強大なフィルムからの反力が作用するため、ステッピングモータ7が脱調することとなり、従って、左右の幅寄せ部材1,2に係止された状態で精度よく幅方向に位置決めされるとともに、中凸状に撓みが発生することがないので、フィルム自身に撓みにより蓄えられた弾性エネルギーが解放して矯正位置からフィルムがずれてしまうことはない。
【0043】
従来、パルスモータの選定に際しては、フィルムを中凸状に移動させるような強大な出力トルクを発揮する型式が選定され、部品コストも増加するものであったが、本実施の形態では、低トルクの型式のパルスモータが使用可能となり、部品コスト減を実現でき、かつ、幅寄せ性能も向上するといった従来にない効果を発揮する。
【0044】
また、幅寄せ方向(幅方向w)の幅寄せ部材1,2の制御は、図(a)のようにフィルムサイズF1,F2,F3に係わらず同一で良く、制御・駆動系が複雑にならずに好ましい。
【0045】
また、幅寄せ部材1,2は各々のフィルムの両側端を係止した状態に応じて脱調ポイントがずれるだけであるので、フィルム幅方向センタは常に同一となり、フィルム断裁のばらつきを考慮する必要がない。
【0046】
また、特に、小サイズ(例えば六切縦搬送)のフィルムでは、図5の負荷値の差Δt(t14−t13)が、フィルムのアスペクト比の関係上、大きくなるので、モータ選定等の設計自由度が大きくなり、好ましい。
【0047】
〈第2の実施の形態〉
【0048】
次に、図1乃至図5で説明したシート状体位置決め搬送機構を備える画像記録装置について図6,図7を参照して説明する。
【0049】
図6は第2の実施の形態による画像記録装置の要部を示す正面図である。図7は図6の画像記録装置の露光部を概略的に示す図である。
【0050】
図6に示すように画像記録装置100は、シート状の熱現像感光材料である熱現像感光フィルム(以下、「フィルム」という場合もある。)を所定枚数でパッケージした包装体を装填する第1及び第2の装填部11,12と、フィルムを1枚づつ露光・現像のために搬送する搬送部5とを有する供給部110と、供給部110から給送されたフィルムを露光し潜像を形成する露光部120と、潜像を形成されたフィルムを熱現像する熱現像部130と、現像されたフィルムの濃度を測定し濃度情報を得る濃度計200や搬送ローラ144A等を含む冷却搬送部150と、を備える。
【0051】
供給部110の第1及び第2の装填部11,12には、サイズの異なるフィルムをそれぞれ装填し、第1の装填部11または第2の装填部12からフィルムが1枚づつ搬送部5、搬送ローラ対139,140,141により図6の矢印方向(1)に搬送される。搬送ローラ対139,140,141がフィルムを露光部120に向け下降搬送する。
【0052】
次に、フィルムは、矢印方向(2)に搬送ローラ対4で水平搬送され、更に搬送ローラ対142で副走査搬送されながら露光部120でレーザ光が照射され潜像が形成される。
【0053】
次に、搬送ローラ対146,145,144,143により矢印方向(3)へ搬送される。搬送ローラ対146,145,144,143が潜像の形成されたフィルムを熱現像部130に向け上昇搬送する。
【0054】
次に、フィルムは熱現像部130で潜像が可視像化され、更に矢印方向(4)へ搬送ローラ144Aにより搬送され冷却搬送部150で冷却されてから排出部160に排出される。なお、搬送ローラ対139,141,4,142,146,145,144,143は、モータ等により回転駆動される。
【0055】
次に、露光部について説明する。図7のように、露光部120は、画像信号Sに基づき強度変調されたレーザ光Lを、回転多面鏡113によって偏向して、フィルムF上を主走査すると共に、フィルムFをレーザ光Lに対して主走査の方向と略直角な方向に相対移動させることにより副走査し、レーザ光Lを用いてフィルムFに潜像を形成する。
【0056】
露光部120のより具体的な構成を以下に述べる。図7において、外部の画像出力装置121から出力された画像データをネットワーク等を介して受信し、その画像データのデジタル信号である画像信号Sは、D/A変換器122においてアナログ信号に変換され、変調回路123に入力される。変調回路123は、かかるアナログ信号に基づき、レーザ光源部110aのドライバ124を制御して、レーザ光源部110aから変調されたレーザ光Lを照射させる。
【0057】
レーザ光源部110aから照射されたレーザ光Lは、レンズ112を通過し、シリンドリカルレンズ115により上下方向にのみ収束されて、図中矢印A’方向に回転する回転多面鏡113に対し、その駆動軸に垂直な線像として入射するようになっている。回転多面鏡113は、レーザ光Lを主走査方向に反射し偏向し、偏向されたレーザ光Lは、2枚のレンズを組み合わせてなるシリンドリカルレンズを含むfθレンズ114を通過した後、光路上に主走査方向に延在して設けられたミラー116で反射されて、搬送ローラ対142により、矢印Y方向に搬送されている(副走査される)フィルムFの被走査面117上を、矢印X方向に繰り返し主走査する。すなわち、レーザ光Lを、フィルムF上の被走査面117の全面にわたって走査する。このようにして、フィルムFに画像信号Sに基づく潜像が形成される。
【0058】
図7のように、露光部120の搬送ローラ対142の上流側には、図1,図2と同様の搬送ローラ対4が配置されており、その下流側の搬送ローラ対4と搬送ローラ対142との間には、図1,図2と同様のシート状体位置決め搬送機構が配置されている。このため、図4,図5のように、フィルムFが搬送ローラ対141から偏ったり曲がったりした状態で搬送されてきても、幅寄せ部材1,2により幅方向に精度よく位置決められてから、露光部120でレーザ光により露光走査され、露光部120の走査による潜像をフィルムFの正確な位置に形成することができる。
【0059】
図6のように、熱現像部130は、フィルムFを外周にほぼ密着して保持しつつ加熱可能な加熱ドラム14を有し、加熱ドラム14は回転自在な円筒形状のアルミニウム製のスリーブの内周面に貼り付けられた加熱源であるヒータに対する通電制御により所定温度に加熱される。
【0060】
図6のように、加熱ドラム14の外方には、案内部材かつ押圧部材として加熱ドラム14に比べて小径の回転自在の対向ローラ16が複数本設けられており、加熱ドラム14の回転中心軸に対して平行にかつ加熱ドラム14の外周面に対向するように配置されている。
【0061】
加熱ドラム14は、対向ローラ16との間にフィルムFを挟んだ状態で回転しながら、フィルムFを所定の最低熱現像温度以上に、所定の熱現像時間維持することで、フィルムFに形成された潜像を可視画像として形成する。ここで、最低熱現像温度とは、フィルムFに形成された潜像が熱現像され始める最低温度のことであり、例えば95℃以上である。一方、熱現像時間とは、フィルムFの潜像を所望の現像特性に現像するために、最低熱現像温度以上に維持するべき時間をいう。なお、フィルムFは、40℃以下では実質的に熱現像されないものであることが好ましい。
【0062】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1乃至図5で説明したシート状体位置決め搬送機構は、図6のような画像記録装置以外のタイプの画像記録装置に適用してもよいことは勿論であり、またフィルム以外のシート状体を搬送する各種装置に適用できる。
【0063】
また、図1,図2では一対の幅寄せ部材で幅寄せする構成としたが、1つの幅寄せ部材で幅寄せする構成であってもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施の形態によるシート状体位置決め搬送機構を概略的に示す要部平面図(a)及び要部正面図(b)である。
【図2】図1のシート状体位置決め搬送機構の要部上面図(a)及び要部側面図(b)である。
【図3】図1のステッピングモータの回転速度と出力トルクとの関係を示すカーブである。
【図4】偏った位置にあるフィルムFを図1,図2のシート状体位置決め搬送機構により搬送し目標位置に位置決める様子及び幅寄せ部材の幅寄せ位置と負荷の関係を模式的に示す図である。
【図5】偏りかつ曲がった位置にあるフィルムFを図1,図2のシート状体位置決め搬送機構により搬送し目標位置に位置決める様子及び幅寄せ部材の幅寄せ位置と負荷の関係を模式的に示す図である。
【図6】第2の実施の形態による画像記録装置の要部を示す正面図である。
【図7】図6の画像記録装置の露光部を概略的に示す図である。
【図8】広幅の元巻きからフィルムを断裁する方法を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0065】
1,2 第1及び第2の幅寄せ部材
1a,2a 側面部
1b,2b ラック
3 ピニオン
4 搬送ローラ対
4b 従動ローラ
5 ステッピングモータ
6 位置センサ
6a ホーム位置
7 ステッピングモータ
11,12 装填部
14 加熱ドラム
16 対向ローラ
100 画像記録装置
120 露光部
130 熱現像部
F フィルム(シート状体、シート状媒体)
Fa,Fb 側端
H 搬送方向
th 閾値
w,w’ 幅方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状体を搬送する搬送手段と、
前記搬送されたシート状体の搬送方向と直交方向の位置を矯正し位置決める矯正手段と、を備え、
前記矯正手段は、前記搬送方向と略直交方向に正逆移動し前記シート状体と係合して前記シート状体を幅寄せする少なくとも1つの幅寄せ部材と、前記幅寄せ部材を駆動するステッピングモータと、を有し、
前記ステッピングモータの出力トルクが、前記幅寄せ部材の前記シート状体の位置決め過程で発生する負荷値に対し所定の関係となるよう選定されていることを特徴とする位置決め搬送機構。
【請求項2】
前記シート状体が前記幅寄せ部材に係合し、目標位置に位置決められた後、当該シート状体が平坦な状態を保った状態で前記ステッピングモータが脱調するよう出力トルクが選定されていることを特徴とする請求項1に記載のシート状体位置決め搬送機構。
【請求項3】
所定の閾値を前記シート状体が前記幅寄せ部材に部分的に係合したときに発生する第1負荷値と前記幅寄せ矯正が完了したときに発生する第2負荷値との間に設定し、前記負荷値が前記所定の閾値を超えると前記ステッピングモータが脱調することを特徴とする請求項1または2に記載のシート状体位置決め搬送機構。
【請求項4】
前記搬送手段は複数サイズのシート状体を位置決め可能であることを特徴とする請求項1,2または3に記載のシート状体位置決め搬送機構。
【請求項5】
前記矯正手段は、前記幅寄せ部材を一対有し、前記一対の幅寄せ部材で前記シート状体をセンタ基準で幅寄せすることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシート状体位置決め搬送機構。
【請求項6】
シート状媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送されたシート状媒体を走査して潜像を形成する露光手段と、
前記露光手段の走査に対する、前記シート状媒体の搬送方向と直交方向の位置を矯正し位置決める矯正手段と、
前記搬送手段、前記露光手段及び前記矯正手段を制御する制御手段と、を備える画像記録装置であって、
前記矯正手段は、前記搬送方向と略直交方向に正逆移動し前記シート状媒体と係合して前記シート状媒体を幅寄せする少なくとも1つの幅寄せ部材と、前記幅寄せ部材を駆動するステッピングモータと、を有し、
前記ステッピングモータの出力トルクが、前記幅寄せ部材の前記シート状媒体の位置決め過程で発生する負荷値に対し所定の関係となるよう選定されていることことを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】
前記シート状媒体が前記幅寄せ部材に係合し、目標位置に位置決められた後、当該シート状媒体が平坦な状態を保った状態で前記ステッピングモータが脱調するよう出力トルクが選定されていることを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項8】
所定の閾値を前記シート状媒体が前記幅寄せ部材に部分的に係合したときに発生する第1負荷値と前記幅寄せ矯正が完了したときに発生する第2負荷値との間に設定し、前記負荷値が前記所定の閾値を超えると前記ステッピングモータが脱調することを特徴とする請求項6または7に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記搬送手段は複数サイズのシート状媒体を位置決め可能であり、前記制御手段はサイズに関わらず同一の制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記シート状媒体は所定の寸法サイズを有し、前記制御手段はその寸法サイズのばらつきに関わらず同一の制御を行うことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項11】
前記矯正手段は、前記幅寄せ部材を一対有し、前記一対の幅寄せ部材で前記シート状媒体をセンタ基準で幅寄せすることを特徴とする請求項6乃至10のいずれか1項に記載の画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−3514(P2006−3514A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178150(P2004−178150)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】