説明

シート用パッド

【課題】その構造的強度を低くした第2の発泡体を、乗員着座時に膝下近傍に位置する前方部位に、該大腿部の裏側と当接することなくかつ露出するよう配置することで、乗員のペダル操作時等における大腿部裏側の圧力変動を小さくするようにし、更に着座時の大腿部裏側への圧迫感も低減して、座り心地自体も快適とし得るシート用パッドと、これを製造する方法を提供する。
【解決手段】座部30を構成し、所要の発泡体からなるシート用パッドにおいて、座部30の全体を構成する第1の発泡体16と、乗員着座時に膝下近傍に位置する前方部位35に、該大腿部の裏側と当接することなくかつ露出するよう配置され、前記第1の発泡体16よりも構造的強度を低く設定した第2の発泡体18とから構成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシート用パッドに関し、更に詳細には、着座時に大腿部が接触する部位を該大腿部側の第1の発泡体と、その下側に積層・配置され、該第1の発泡体より構造的強度が低くされた第2の発泡体とから構成することで、殊にペダル操作時の大腿部裏側の圧力変動を小さくし得るシート用パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば乗用車等の乗員室内に設置されるシートは、図7に示す如く、乗員の下半身のホールドを図る座部30と、この座部30の後部に傾動可能に設置されて乗員の上半身のホールドをなす図示しない背もたれと、この上部に設置されて乗員の頭部を保護する図示しないヘッドレストとから基本的に構成され、座部30は発泡成形されたポリウレタンフォームのシート用パッド12にファブリックや合成皮革または皮革等の表皮14を貼込んで形成されている。そして座部30のシート用パッド12は、機能的に前部サポート部34、後部サポート部36(センターサポート部)および左右のサイドサポート部38,38とに大別されているが、製造コスト、乗り心地機能や座部30の形状の関係から材質的には一種類のポリウレタンフォームを当該形状に成形することで座部30を構成するシート用パッド12として使用している。
【0003】
このような構造のシート用パッド12を採用する座部30については、以下の問題が指摘される。すなわち、
(1)座部30によってホールドされる乗員の部位は、最も荷重が掛かる臀部から余り荷重が掛からない大腿部までと幅広く、掛かる荷重の違い故に臀部をサポートする後部サポート部36を主に考えると、乗員が大腿部に硬さ故のしびれや圧迫感・異物感・抵抗感(以下、単に圧迫感と云う)といった不快さ感じてしまう。
(2)逆の場合には、臀部の沈み込みが大きくなり着座姿勢が不安定となってしまう。
(3)更に、何れであってもアクセルまたはブレーキといったペダルを操作する場合に、これに伴って上下に動く大臀部が、その動きに制限を受けたり、好適な支持が得られず、疲労が蓄積される原因となってしまう。
【0004】
これに対して、図8に示す如く、
(A)前部サポート部34において大腿部裏側から膝下近傍に位置する前方部位35の形状を大腿部の動きに対応し得るように、例えばケガキ形状にカットし、着座時に大腿部に感じる硬さを抑制する(図8(a)参照)、
(B)前部サポート部34を二層構造とし、その上部を硬度の小さい材質の発泡体で形成する(図8(b)参照)、
(C)前方部位35だけ硬度の小さい材質の発泡体で形成する(図8(c)参照)、といった対策が考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこの(A)〜(C)の各対策においては、夫々以下の問題が指摘される。すなわち図9に示す如く、
(A)大腿部に圧迫感を感じず、自然な感触を考えた場合、その形状が複雑化して成形が不可能または困難となったり、表皮14を貼込むに際してその特異な形状を保持できなくなってしまう(図9(a)参照)。
(B)、(C)基本的に大腿部か接触する表面が柔軟であるため、座部30の全体としての硬度バランスが崩れて乗員着座時の姿勢が前方に傾いた状態となり、殊にブレーキ等の制動時に乗員の前滑りが発生してしまい、安全上の問題も生じる(図9(b)、(c)参照)。
【0006】
またこの他、下記の[特許文献1]に記載の発明「車両用座席シート」の如く、座席シートの前側クッションを、上部クッション部材と下部クッション部材とによる二重構造に形成し、下部クッション部材の反発弾性を上部クッション部材に比較して小さくした座席シートが案出されている。このように構成することで、下方に位置する大臀部を上方へ動かすに際して、該前側クッションがゆっくりと元形状に回復させるようにして、大腿部と下部クッション部材との接触時間を低減して、発汗等による不快感を抑制するようになっている。しかし[特許文献1]記載の発明は、その反発弾性を小さくしたクッション部材を上部クッション部材の下方に配置したに過ぎない。従って、乗員が実際に着座した際の圧迫感をなくして感触を好適化するものではなく、またペダル操作時、殊に踏み込む際に大腿部裏側に掛かる荷重を低減する等の作用は考えられていなかった。
【特許文献1】特開昭63−166630号公報
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明に係るシート用パッドは、座部を構成し、所要の発泡体からなるシート用パッドにおいて、
前記座部の全体を構成する第1の発泡体と、
乗員着座時に膝下近傍に位置する前方部位に、該大腿部の裏側と当接することなくかつ露出するよう配置され、前記第1の発泡体よりも構造的強度を低く設定した第2の発泡体とからなり、
前記前方部位への荷重に伴い、前記第1の発泡体に先んじて前記第2の発泡体が変形することで大腿部裏側の圧力変動が小さくされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明した如く、本発明に係るシート用パッドによれば、その構造的強度を低くした第2の発泡体を、乗員着座時に膝下近傍に位置する前方部位に、該大腿部の裏側と当接することなくかつ露出するよう配置することで、乗員のペダル操作時等における大腿部裏側の圧力変動を小さくするようにした。また着座時の大腿部裏側への圧迫感も低減されるため、座り心地自体も快適とする効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明に係るシート用パッドにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお図7を参照して説明した従来技術で既出の同一部材については、同じ符号を付して示し、その詳細説明は省略する。実施例に係るシート用パッド12は、図1に示す如く、乗員が着座する座部30の全体が基本的に第1の発泡体16からなり、乗員着座時に該乗員の大腿部を支持すると共に、膝下近傍に位置する前方部位35に、該大腿部裏側と当接せずかつ露出するように第2の発泡体18が配置された構成となっている。ここで基本的に座部30の全体をなす第1の発泡体16については、通常のシート用パッド12を構成するポリウレタンフォームの如き公知かつシート用パッドに好適な物性とされた発泡体が使用されている。またその物性値である硬度または反発弾性率等は、製造されるシート用パッド12が使用される車両の用途、例えばスポーティカー用途や、ラグジュアリーカー用途に合わせて配合組成を変化させて好適に制御されている。なお本発明においては、説明の容易化のため、座部30には表皮が貼り付けられない、発泡体だけの状態として説明している。
【0010】
そして第2の発泡体18は、その構造的強度が第1の発泡体16より小さく設定され、かつ図2に示す如く、そのシート用パッド12の前後方向に沿って断面形状が座部30の前方側(図2における左側)から後方側(図2における右側)に向かって先細りになる略三角形状となっている(図2(a)参照)。この形状については、その後方側に向かって先細りになる一端が丸みを帯びた形状となっていたり、またはその上辺が後方側(図2における右側)を指向する略台形上や、これに近似する断面形状とされていてもよい(図2(b)参照)。ここでいう構造的強度とは、第2の発泡体18の骨格構造等に由来する強度のことであり、第1の発泡体16と第2の発泡体18とを積層して荷重を掛けた際に、第2の発泡体18が第1の発泡体16より先に変形する状態となっていれば問題ない。具体的には硬度または圧縮強度等の物性値で現すことが可能である。そしてこれらの物性値は、発泡体をなす弾性率、骨格強度、セル径、セルの分布または骨格におけるセル膜の有無(通気性)等によって変動する値であるため、これら各構造が第1の発泡体16に比較して硬度等を小さくするものであればよい、本実施例においては、通気性が高く、セル膜が完全に除去されているポリウレタンからなる三次元網目構造体が採用されている。またペダル操作に伴う大腿部裏側の上下動を考えた場合、加えられる荷重に比例して撓む量が増大する領域が大きい、すなわち収縮率が大きい(圧縮率が高い)物性が好ましい。
【0011】
またこの三角形をなす断面形状についても、実施例の如く第2の発泡体18と第1の発泡体16との接触部分が形成する上方の境界面20が、座部30の前方側(図2における左側)から後方側(図2における右側)に向かって上方に向かって所要角度傾斜している状態となるように構成することが望ましい。このような構成とすることで、図3に示す如く、ペダルを踏み込む際の大腿部の下方への動きによる荷重を、全て第2の発泡体18を下方に変形させる力として利用し得る(図3(a)参照)ようになるため、同じ物性値の発泡体を使用して場合であっても、より好適に圧力変動を小さくし得る。また異物感を感じない効果も奏する。例えば境界面20が座部30の前方側(図2における左側)から後方側(図2における右側)に向かって下方に向かって所要角度傾斜している構成(図3(b)参照)の場合、ペダルを踏み込む際の大腿部の下方への動きによる荷重が境界面20を前方に変形させる力(A)としても利用され、その後に第2の発泡体18を下方に変形させる力(B)として利用されるため、その変形に必要される荷重は、シート用パッド12の前後方向に沿って断面形状が座部30の後方側に向かって先細りになっている略三角形状の先端が上方を指向している場合より大きくなってしまう。これは同程度の小さな圧力変動を達成する場合にあっては、第2の発泡体18の構造的強度を高く設定することが可能となることを意味する。
【0012】
そして第2の発泡体18は、その反発弾性率が20〜70%、好適には20〜40%の範囲に設定されると共に、その密度が0.02〜0.04g/cmの範囲に設定されている。ここで反発弾性率は、ペダル操作時の大腿部裏側における圧力変動に関連しており、この値が20%未満となると、荷重に対する復元が遅く、通常的な大腿部の支持性が低下する。一方70%を超えると、荷重に対して反力が大きくなり、座部30を一種類のポリウレタンフォームで製造した場合と同じく大腿部裏側に圧迫感を感じることになる。また40%を超える場合、本発明が目的とする小さな圧力変動は達成されるものの、官能的に知覚できる程度の圧力差が残ってしまう。密度は、ペダル操作時の大腿部の上下動によって発生する撓みに関係しており、この値が0.02g/cm未満となると、所謂へたりやすい状態となり、永久圧縮歪みが悪化して、耐久消費財として問題が発生する。一方0.04g/cmを超えると、これに伴って硬度、すなわち構造的強度が高くなり、座部30を一種類のポリウレタンフォームで製造した場合と同じく、圧力変動による大腿部裏側に圧迫感を感じることになる。なお本発明においては、反発弾性率の測定は、JASO B 408の反発弾性試験に準拠して実施されることが望ましく、また密度の測定は、JASO B 408の見掛け密度試験に準拠して実施されることが望ましい。
【0013】
第1の発泡体16と第2の発泡体18とは、その境界に重複した重複部17が存在している。この重複部17により、第1の発泡体16と第2の発泡体18とは一体化された構成となっており、通常状態で掛けられる荷重程度では分離することがないようにされている。このような構成は、予め第2の発泡体18を座部30の外部輪郭形状と合致する内部輪郭形状を有する成形型内に設置し、ここに第1の発泡体16の発泡原料を注入する、所謂公知のインサート成形の採用によって達成される。すなわちインサートされた第2の発泡体18の骨格内に第1の発泡体となる発泡原料が入り込んで含浸された状態となり、これが発泡・硬化することで重複部17が形成される。そして発泡原料の発泡圧や粘度の制御により、重複部17の厚みが決定されている。殊に本実施例では、第2の発泡体18が三次元網目構造体、すなわち内部に流動体が入り込み易い骨格だけの構造となっているため、重複部17の厚み制御はより容易となっている。なお予め所要形状の第1の発泡体16および第2の発泡体18を製造し、接着剤等の接着手段によって一体化する方法も採用可能である。
【0014】
(実施例の作用)
以下に実施例に係る座部30をなすシート用パッド12の作用を説明する。まず乗員が着座した際の状態を説明すると、図4に示す如く、座部30全体で観察した際には、第1の発泡体16のシート用パッドとしての物性が作用して、高い荷重の掛かる臀部等において大きな変形は起こらず、かつ好適なクッション性が発現される(図4(a)参照)。従って、乗員の全体的な保持性等は悪化することがない。そして前方部位35においては、第2の発泡体18の存在により、大腿部によって掛かる小さな荷重によっても下方へ撓む変形が生じ、大腿部裏側に掛かる圧力が小さくなり、圧迫感等の不快な感触が低減される。この際、前部サポート部34においても変形するのは、第2の発泡体18が存在する前方部位35だけであるため、着座時に充分なサポートを受け得る臀部に近い大腿部については、着座時の感触が通常のシート用パッドに比較して変化することがない(図4(b)参照)。
【0015】
また前方部位35についても、大腿部に接触しているのは第1の発泡体16であり、かつ第1の発泡体16に先んじて第2の発泡体18が変形する(前方部位35の変形(撓み量)=第2の発泡体18の変形(撓み量))ため、大腿部が感じる初期的な感触を大腿部以外の部分と同様に維持しつつ、更に圧迫感を感じることはない構成となっている(図4(b)参照)。すなわち第1の発泡体16が付与するシート用パッド12として要求される感触と、着座時に大腿部に発生する圧迫感の低減とを両立し得る構成となっている。
【0016】
次に座部30に着座した乗員がペダル操作(踏み込み)をする場合を考えてみると、図5に示す如く、大腿部裏側に当接する前部サポート部34の全体について下方に荷重が掛けられると共に、膝下近傍が前方部位35を下方へ大きく押し下げる状態となる。この場合、大腿部裏側で臀部に近い部位については下方への荷重が少ないため、殊に圧迫感等の問題が生じることはない。そして膝下近傍の大腿部裏側については、第2の発泡体18の存在により容易かつ大きな撓みが許容されるため、圧迫感を感じることがない。また前述の所定範囲とされた反発弾性率により、膝下近傍の大腿部裏側に対しては、ペダルを適正に操作し得るに足るだけの支持性は確保されるため、ペダルに対して操作に必要とされる以外の、例えば身体を支持するための荷重が掛かることはない。
【0017】
更にペダル操作に掛かる踏みしろが大きくなって、ペダルおよび膝下近傍の大腿部裏側の双方に掛けられる荷重が大きくなる場合においては、第2の発泡体18が完全に圧縮された状態、すなわちソリッド状態に近づくことになるため、第1の発泡体16が撓み始め、この第1の発泡体16の強い構造的強度に起因する強い反力で大腿部裏側を強く支持する状態となる。このような状態となることで、ペダルを深く踏み込んだことによって掛かる大きな荷重を、ペダルを操作する足先だけでなく大腿部裏側でも大きく支持する状態となり、ペダル操作性を阻害することはない。
【0018】
一方、ペダルをリリースする場合は、その操作によって膝下近傍の大腿部裏側が上方へ戻ることになる。この場合、前方部位35は、前述の所定範囲とされた反発弾性率の発現により大腿部裏側を押し上げるため、これらの動作に伴う疲労を著しく軽減できる。また前述([0017])したようなペダルに大きな荷重を掛けるような操作を行なった場合、第1の発泡体16の強い構造的強度に起因する強い反力が掛かるため、大腿部裏側に掛かる支持力も大きくなり、その結果、容易なペダルリリースが可能となっている。
【0019】
(実験例)
以下に実施例に係るシート用パッドを座部として使用したシートについての実験例を示す。なお本発明はこの実験例に限定されるものではない。
【0020】
(実験1) 圧力変動について
反発弾性率50%、密度0.04g/cmとなる発泡体を準備し、これを第2の発泡体として使用して図2に示す構造となる実施例に係るシート用パッドを製造した。そしてこのシート用パッドを座部として使用し、ここに平均的な体重60kgの男性を乗員として着座させた際の圧力変動を観察した。ここで圧力変動は、圧力分散測定システム(商品名 Clinscat;ニッタ製)を使用して圧力分布として、着座時にシート用パッドに接触する大腿部裏側から臀部に至る部位に掛かる圧力(単位kPa)を測定することで評価した。また比較例として、全体が第1の発泡体だけからなる同一形状のシート用パッドを製造し、同様に圧力分布を測定した。
【0021】
(実験1の結果)
圧力分布の結果を図6に示す。ここて図6(a)は第2の発泡体が使用されている実施例に係るシート用パッドの結果であり、図6(b)は比較例に係るシート用パッドの結果である。この結果から、比較例においてはその圧力が2.13kPa(16.0mmHg)を超える領域が膝下近傍の大腿部裏側に広い範囲で認められ、更に一部は2.35kPa(17.6mmHg)をも超える高い押圧量となっており、当該部位に高い圧迫感が発生していることが確認できる。これに対して本発明に係る実施例については、最大でも2.13kPa(16.0mmHg)未満となっており、圧力が低減され、均質化されていることが確認された。
【0022】
(実験2) 反発弾性率および密度と圧力変動とについて
下記の表1の物性を備えるよう配合等を調整して製造した第2の発泡体を使用し、図2に示す構造となる実施例A−1〜A−4およびB−1〜B−3並びに比較例A−1、A−2、B−1およびB−2に係るのシート用パッド12を製造し、ここに平均的な体重60kgの男性を乗員として着座させた際の圧力変動を観察した。ここで圧力変動は、実験1に従って測定し、圧力分布の幅が1.71kPa(12.8mmHg)未満では◎、1.71kPa(12.8mmHg)〜2.13kPa(16.0mmHg)の範囲では○、2.13kPa(16.0mmHg)を超える場合では×として評価した。なおA系は密度を0.04g/cmとして反発弾性率(%)だけを変動させた例であり、B系は反発弾性率を40%として密度(g/cm)だけを変動させた例である。また反発弾性率および密度は、夫々JASO B 408の反発弾性試験およびJASO B 408の見掛け密度試験に準拠して測定した。
【表1】

【0023】
(実験2の結果)
前述した測定方法に従い得られた表1に併記する。この表1から分かる通り、反発弾性率および密度の範囲を本発明で記載した範囲内とすることで、好適なシート用パッドが得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、従来技術に内在している課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、殊に足によるペダルの操作を行なう自動車用の座部のシート用パッドとして好適であり、当該操作が考えられる乗り物や各種オペレーター、楽器奏者用のシート用パッド等の採用にも有意義である。また座り心地自体も快適化するため、一般的なシートに広く利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適な実施例に係るシート用パッドを用いた座部についての概略斜視図である。
【図2】実施例に係るシート用パッドを採用した座部の内部構造を示す断面図であって、第2の発泡体のシート用パッドの前後方向に沿った断面形状が、(a)略三角形状である場合と、(b)略台形形状である場合とを夫々示す図である。
【図3】前方部位における第2の発泡体の形状を示す説明図である。
【図4】実施例に係るシート用パッドを採用した座部に乗員が着座した際の状態を示す断面図であって、(a)は座部の全体図であり、(b)は前方部位の拡大図である。
【図5】実施例に係るシート用パッドを採用した座部に乗員が着座し、更にペダル操作をなした際の状態を示す断面図であって、(a)は座部の全体図であり、(b)は前方部位の拡大図である。
【図6】実験1の説明図であって、(a)は本発明に係るシート用パッドを使用した座部の圧力分布図と、(b)は従来技術に係るシート用パッドを使用した座部の圧力分布図である。
【図7】一般的な車両用シートの座部についての概略斜視図である。
【図8】従来技術に係るシート用パッドを採用した座部の内部構造を示す断面図である。
【図9】図8で示した各従来技術に係るシート用パッドの問題点を表す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
16 第1の発泡体
17 重複部
18 第2の発泡体
30 座部
35 前方部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部(30)を構成し、所要の発泡体からなるシート用パッドにおいて、
前記座部(30)の全体を構成する第1の発泡体(16)と、
乗員着座時に膝下近傍に位置する前方部位(35)に、該大腿部の裏側と当接することなくかつ露出するよう配置され、前記第1の発泡体(16)よりも構造的強度を低く設定した第2の発泡体(18)とからなり、
前記前方部位(35)への荷重に伴い、前記第1の発泡体(16)に先んじて前記第2の発泡体(18)が変形することで大腿部裏側の圧力変動が小さくされる
ことを特徴とするシート用パッド。
【請求項2】
前記第2の発泡体(18)は、その反発弾性率が20〜70%の範囲に設定されると共に、その密度が0.02〜0.04g/cmの範囲に設定されている請求項1記載のシート用パッド。
【請求項3】
前記第2の発泡体(18)は、シート用パッド(12)の前後方向に沿って切断した断面形状が、座部(30)における前部サポート部(34)の前方から後方に向かって先細りする略三角形状またはその上辺が後方に指向した略台形形状となっており、大腿部の上下動に対応的に変形するように構成されている請求項1または2記載のシート用パッド。
【請求項4】
前記第2の発泡体(18)は、三次元網目構造体から構成されている請求項1〜3の何れかに記載のシート用パッド。
【請求項5】
前記座部(30)は、予め前記第2の発泡体(18)を成形型内に入れておくインサート成形によって製造される請求項1〜4の何れかに記載のシート用パッド。
【請求項6】
前記第1の発泡体(16)と第2の発泡体(18)との間には、該第1の発泡体(16)の一部が重なった重複部(17)が形成され、これにより強固に一体化するようにされている請求項5記載のシート用パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−122504(P2006−122504A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317008(P2004−317008)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】