説明

シート給送装置および印刷装置

【課題】装置の省スペース化および小型化を図るために、吸引ベルトピッチ間を小さく、または駆動(従動)ローラの直径を小さくした場合でも、DCファンのエア吸引駆動源で対応できるエア給送装置およびこれを有する印刷装置を実現し提供する。
【解決手段】シロッコファン15aを備え、吸引中継管13は吸引チャンバ12の用紙幅方向Yの両側に連通・接続されると共に、シロッコファン15aが吸引ベルト11の上方近傍に配置された吸引ユニット10Aを有し、かつ、用紙束2の両側端面にエアaを吹き付ける一対のサイド吐出チャンバ42、用紙束2の先端面にエアaを吹き付けるフロント吐出チャンバ20、フロント吐出中継管24、サイド吐出中継管43、フロント・サイド吐出駆動源チャンバ44、フロント・サイド吐出駆動源チャンバ44に連通・接続された単一のシロッコファン25から構成されるフロント・サイド吐出ユニット30を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置および印刷装置に関し、詳しくは、エアを吹き付けることにより積載されたシート束からシート同士を分離させ、分離された最上位の1枚のシートをエア吸引しつつ給送するエア吸引式のシート給送装置およびこれを有する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積載されたシート束からシートを1枚ずつ取り出し給送するシート給送装置(給紙装置)には、周知のとおり、摩擦式およびエア式のものがある(摩擦式については図12参照)。エア式の給紙装置は、エアを吹き付け・吐出することによりシート束からシート同士を分離させ、分離された最上位の1枚のシートをエア吸引しつつ給送するものである(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
図8および図9に、従来のエア式の給紙装置500(以下、「エア給紙装置500」ともいう)の一例を示す。エア給紙装置500の原理は、概略以下の(1)〜(3)の工程・動作で行われる。
(1)用紙束2の先端面および両側端面にエアaを吹き付けることで、用紙間にエアが入り、図8に示すように用紙束2の用紙S同士が分離しバラける。
(2)分離した用紙S1,Sの最上位の用紙S1を1枚のみ吸引することで、吸引ベルト11に用紙S1が貼り付き・保持される。
(3)吸引ベルト11が回転・走行することで、用紙S1を1枚給送・搬送する。
【0004】
用紙束2の先端面および両側端面にエアaを吹き付ける工程(1)で機能する構成部品(構成要素)の動作は、次のようである。図8に示すように、用紙束2の前方からはフロントエア吐出駆動源としてのDCファンからなるフロントエア吐出ファン23によりエアaの流れを作り、このエアaがフロント吐出チャンバ20を通りフロントエア吐出口21から外に出て、用紙束2の先端面(前端面)に吹き付ける。ここで、フロントエア吐出口21を備えたフロント吐出チャンバ20およびフロントエア吐出ファン23は、フロント吐出ユニット22を構成している。
【0005】
また、図8および図9に示すように、用紙束2の左右の両側端面からも同様に、サイドエア吐出駆動源としてのDCファンからなる左右一対のサイドエア吐出ファン41,41よりエアaの流れを作り、このエアaがサイド吐出チャンバ42を通り外に出て、用紙束2の各側端面に吹き付ける。上記各エアが用紙束2の先端面および両側端面に吹き付けることで、用紙束2の上部が図8に示すように1枚ずつ分離しバラける。
ここで、サイドエア吐出ファン41,41およびサイド吐出チャンバ42は、サイド吐出ユニット40を構成している。フロント吐出ユニット22およびサイド吐出ユニット40は、給紙トレイ3上に積載された用紙束2の両側端面および先端面にエアを吹き付けることにより用紙Sを1枚ずつ分離させるエア分離手段を構成している。
【0006】
分離した最上位の用紙S1を1枚のみ吸引する工程(2)および吸引ベルト11が回転・走行することで用紙S1を1枚搬送する工程(3)で機能する構成部品(構成要素)は、吸引ベルト11、駆動ローラ14a、従動ローラ14b、吸引チャンバ12、吸引中継管(ダクト)13、エア吸引駆動ファン15、吸引駆動源チャンバ17、吸引ベルト駆動モータ47である。
用紙束2における最上位の用紙S1の上方に、一対の回転部材としての駆動ローラ14aと従動ローラ14bとの間に巻き掛けられた無端ベルトからなる吸引ベルト11が有り、吸引ベルト11には、エア吸引用の多数の孔11aが形成されている。なお、図9においては、図示の簡明化を図るため、孔11aの形成箇所を駆動ローラ14aと従動ローラ14bとの間の吸引ベルト11の特定の範囲に形成されているように描かれているが、孔11aが吸引ベルト11における用紙搬送方向Xおよびこれと直交する用紙幅方向Yの全体に亘って、当然吸引ベルト11の下側および各ローラ上14a,14bにも等ピッチで形成されていることは無論である(後述する図2も同様)。
用紙束2が積載されている給紙トレイ3の左右外側には、後述する給紙ユニット500A(該給紙トレイ3を含め上記工程(1)〜(3)で機能するほぼ全ての構成部品で構成される)を構成する図示しない一対のユニット側板が配設されていて、駆動ローラ14aと従動ローラ14bとは、上記一対のユニット側板に図8中矢印方向(時計回り方向)に回転可能に軸支されている。また、給紙ユニットを構成しないエア給紙装置にあっては、駆動ローラ14aと従動ローラ14bとは、装置本体に固着された図示しない一対の側板に図8中矢印方向(時計回り方向)に回転可能に軸支される。
駆動ローラ14aの軸の一端は、カップリング14cを介して、上記一方のユニット側板側に固設された、ベルト駆動手段としての吸引ベルト駆動モータ47の出力軸47aに接続されている。吸引ベルト駆動モータ47は、速度可変制御および回転による搬送距離の制御が容易で正確な、例えばステッピングモータからなる。
【0007】
駆動ローラ14aと従動ローラ14bとの間であって、上下の吸引ベルト11で囲まれた空間には、下向きに開口12aを形成されほぼ箱状をなす、エアaを吸引する吸引チャンバ12が設けられている。吸引チャンバ12の一側には、吸引中継管13が図9に示す吸引口13aを介して連通・接続されている。
エア吸引をする駆動源は、エア吸引駆動源としてのエア吸引駆動ファン15であり、このエア吸引駆動ファン15には、吸引駆動源チャンバ17が連通・接続されている。従って、吸引チャンバ12とエア吸引駆動ファン15とは、吸引中継管(ダクト)13と吸引駆動源チャンバ17とを介して連通・接続されている。
上記した吸引ベルト11、駆動ローラ14a、従動ローラ14b、吸引チャンバ12、吸引中継管13、エア吸引駆動ファン15、吸引駆動源チャンバ17、吸引ベルト駆動モータ47は、吸引ユニット10を構成している。
上記した吸引ユニット10中、吸引ベルト11、吸引チャンバ12、吸引中継管13、エア吸引駆動ファン15、吸引駆動源チャンバ17は、エア吸引手段を構成している。
また、上記した吸引ユニット10中、吸引ベルト11、駆動ローラ14a、従動ローラ14b、吸引ベルト駆動モータ47は、上記エア吸引手段により吸引・保持された用紙Sを給送するシート給送手段を構成している。
【0008】
上記工程(2)および(3)での動作は、次のようである。すなわち、エア吸引駆動ファン15を駆動させることにより、吸引駆動源チャンバ17および吸引中継管13を介して、吸引チャンバ12によりエアaが吸引されると、吸引チャンバ12の内部が負圧になり、吸引チャンバ12の開口12a面に対向した範囲の吸引ベルト11の孔11aからエアaが吸引されるので、上記(1)の工程で1枚に分離された最上位の用紙S1が吸引ベルト11に貼り付け・吸着保持される。
用紙S1が吸引ベルト11に貼り付いたら、吸引ベルト駆動モータ47を駆動させて、駆動ローラ14aを図8中矢印方向に回転させ、吸引ベルト11を走行させることで、用紙搬送方向X(以下、「給紙方向X」ともいう)の下流側に配設された上下一対のレジストローラ113a,113bまで用紙S1を搬送する。レジストローラ対113a,113bまで用紙S1を搬送後、吸引ベルト駆動モータ47の駆動を停止させることにより、吸引ベルト11の走行を停止させ、所定時間、吸引動作待ちをする。残りの用紙S1の搬送は、レジストローラ対113a,113bの回転により行う。用紙S1の後端が用紙束2の先端面を突き当てている前面板4の近傍にくると、上記したと同様の動作によって次の1枚に分離された用紙Sが吸引ベルト11に貼り付く。この工程・動作を繰り返すことで給紙をするのが、エア給紙のシステムである。なお、前面板4には、フロントエア吐出口21から吹き付けるエアaを通過させるための図示しない縦長状の複数のスリットが開けられている。
【0009】
図8および図9において、500Aはエア給紙装置500を構成する構成部品(構成要素)のうち、レジストローラ対113a,113bを除いて一体的に構成された給紙ユニットを示している。給紙ユニット500Aは、図示しないネジ等の締結手段を含む着脱手段を介して、例えば後述する図12に示す孔版印刷装置の装置本体50に対して着脱自在に構成されている。
【0010】
エアの吸引力は、吸引チャンバ12の開口12a面に対向した範囲に位置する吸引ベルト11の孔11aのトータルの面積(以下、「吸引ベルト孔面積」という)と、これらの孔11aから吸引するエアの速度とで決まる。エアの吸引力を大きくするには、一般的に、上記吸引ベルト孔面積は大きく、エアの速度は速いほうがよい。これは、エアの吸引力が大きくなって用紙Sを吸引・保持する働きが良好となるためである。なお、ここでいうエアの吸引力とは、単位時間当たりのエアの容積・風量を意味している。
吸引ベルト11の孔11aより吸引する風速を速くするには、吸引ベルト11の上記トータルの孔11aの面積より大きな断面積の吸引中継管13がよい。
従来の吸引中継管13は、
(イ)図8および図9に示したように、吸引ベルト11の横から1箇所にて吸引していた。
(ロ)図9に示すように、用紙吸引方向である上方向より吸引する方式であった。
【0011】
【特許文献1】特開2005−162456号公報
【特許文献2】特開2007−31070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記(イ)の吸引ベルト11の横から1箇所で吸引する方式では、吸引中継管13の大きさ・断面積は、吸引ベルト11ピッチ間、すなわちローラ14a,14b間の距離で決まってしまう(図8参照)。つまり、吸引中継管13の大きさ・断面積は、図8に示す関係から、吸引ベルトピッチ間より短く、駆動(従動)ローラ14a(14b)の直径より小さくなってしまう。
【0013】
今までは、スペースの制約等のないため、吸引ベルト孔面積<吸引中継管(ダクト)断面積であったが、スペースを小さくしなければならない場合、すなわち吸引ベルトピッチ短く、または駆動(従動)ローラの直径を小さくしなければならないが、これでは吸引中継管13の断面積も小さくなってしまう。つまり、吸引ベルト孔面積>吸引中継管(ダクト)断面積となってしまい、吸引力が落ちてしまう。
【0014】
もし、吸引ベルト孔面積>吸引中継管(ダクト)断面積の関係で吸引力を上げるとなると、エア吸引駆動ファン15の静圧を上げることにより、吸引中継管13を通過する風速を上げることで対応していた。
しかしながら、エア吸引駆動ファン15の静圧を上げるとなると、DC(直流)ファンモータ(以下、「DCファン」という)では限界があり、電気掃除機に使用されているAC(交流)モータ等で駆動する大きなブロアを使用していた。これでは、大きなブロア自体によるスペース確保、装置の大型化およびコストアップが避けられなかった。
また、別の観点から従来の技術を考察すると、図8および図9に示した従来例のエア給紙装置500の吸引ユニット10のように、エア給紙装置およびこれを有する孔版印刷装置を含む印刷装置本体の省スペース化および小型化を図るために、吸引ベルトピッチ間を小さく、または駆動(従動)ローラの直径を小さくした場合、1つの吸引チャンバから1つの吸引中継管(ダクト)を接続する構成しか考慮されていなかったとも言える。
【0015】
一方、上記(ロ)に関して、用紙吸引方向である上方向より吸引する一例を図10に示している。この方式では、吸引ベルト孔面積≒吸引面積となるが、上側の吸引ベルト11と吸引駆動源チャンバ17aとの間、特に駆動ローラ14a近傍の上側の吸引ベルト11と吸引駆動源チャンバ17aとの間に隙間19が発生することにより、エアが漏れてしまい、安定した吸引搬送ができないという問題点があった。なお、図10において、吸引チャンバ12aと上下の吸引ベルト11との間、従動ローラ14b近傍の吸引駆動源チャンバ17aと吸引ベルト11との間には、吸引時に吸引力が働いて密着傾向となるため、上記部位の隙間19と比較して無視してよいレベルである。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題点・事情に鑑みてなされたものであり、エア給送方式のシート給送装置およびこれを有する孔版印刷装置を含む印刷装置において、装置の省スペース化および小型化を図るために、吸引ベルトピッチ間を小さく、または駆動(従動)ローラの直径を小さくした場合でも、DCファンのエア吸引駆動源で対応できるようにすると共にスペースの効率化(構成要素の集約化)を図ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するとともに上述した目的を達成するために、請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・構成を採っている。
請求項1記載の発明は、積載されたシート束の両側端面および先端面のうちの少なくとも一方の端面にエアを吹き付けることによりシートを1枚ずつ分離させるエア分離手段と、分離された最上位のシートを吸引し搬送するための、一対の回転部材の間に巻き掛けられシート搬送方向に走行するベルトと、上記各回転部材の間であって上記ベルトに囲まれた空間に設けられた吸引チャンバと、該吸引チャンバに連通・接続される吸引口を備えた吸引中継管と、該吸引中継管に連通・接続されたエア吸引駆動源とを具備するシート給送装置において、上記吸引中継管は、上記吸引口を介して、上記吸引チャンバにおける上記シート搬送方向と直交するシート幅方向の少なくとも両側に連通・接続されていることを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のシート給送装置において、上記エア吸引駆動源は、上記ベルトの上方近傍に配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のシート給送装置において、上記エア分離手段は、シート束の両側端面にエアを吹き付けるサイドエア吐出口と、該サイドエア吐出口に連通・接続され、エアを吸引するエア吸引口とエアを吐出するエア吐出口とを備えたエア吹付駆動源とを有し、上記エア吹付駆動源は、上記エア吸引駆動源の上記エア吐出口近傍に配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載のシート給送装置において、上記エア分離手段は、シート束の両側端面にエアを吹き付けるサイドエア吐出口と、シート束の前端面にエアを吹き付けるフロントエア吐出口と、上記サイドエア吐出口および上記フロントエア吐出口に連通・接続され、エアを吸引するエア吸引口とエアを吐出するエア吐出口とを備えたエア吹付駆動源とを有し、上記エア吹付駆動源は、上記エア吸引駆動源の上記エア吐出口近傍に配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか一つに記載のシート給送装置において、上記エア吹付駆動源および上記エア吸引駆動源は、上記エア吸引口と上記エア吐出口とを備えたシロッコファンからなることを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のシート給送装置において、上記エア吸引駆動源としての上記シロッコファンは、複数配設されており、上流側の上記シロッコファンの上記エア吐出口に、該上流側の上記シロッコファンに隣る下流側の上記シロッコファンの上記エア吸引口を連通・接続して配置したことを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか一つに記載のシート給送装置において、上記ベルトを駆動する駆動手段を上記エア吸引駆動源の近傍に配置し、上記エア吹付駆動源、上記エア吸引駆動源および上記駆動手段を覆うカバー部材を有することを特徴とする。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7の何れか一つに記載のシート給送装置と、上記シート給送装置により給送されたシートに印刷画像を形成する印刷画像形成手段とを有することを特徴とする印刷装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記課題を解決して上記目的を達成することが可能な新規なシート給送装置およびこれを有する印刷装置を実現し提供することができる。請求項毎の発明の効果を挙げれば、以下のとおりである。
請求項1記載の発明によれば、上記構成により、装置の省スペース化および小型化を図るために、ベルトピッチ間を小さく、または回転部材の直径を小さくした場合でも、DCファンのエア吸引駆動源で対応できると共に、吸引中継管は、その吸引口を介して、吸引チャンバにおけるシート搬送方向と直交するシート幅方向の少なくとも両側に連通・接続されていることにより、ベルトにおけるシート幅方向の両側からエアが吸引されるので、シートに対する吸引面積を実質2倍にした状態で1枚に分離された最上位のシートをベルトに確実に貼り付け・吸着保持させて給送することができる。
【0026】
請求項2記載の発明によれば、上記構成により、請求項1記載の作用効果に伴い、スペースの効率化(構成部品や構成部材等の構成要素の集約化)を図るための前提条件が構成されると共に、吸引中継管の長さを短くできることによって、管摩擦損失およびコストを抑えることができる。
【0027】
請求項3、4記載の発明によれば、上記構成により、エア吸引駆動源のエア吐出口から吐き出されたエアをエア吹付駆動源が吸引できることにより、エア吹付駆動源の吸引効率をよくすることができる。
【0028】
請求項5記載の発明によれば、上記構成により、DCファンとして小型化に寄与できると共に、それぞれの静圧をアップしてシートを1枚ずつ確実に分離した上で、十分に吸引・保持して給送することができる。
【0029】
請求項6記載の発明によれば、上記構成により、静圧がさらにアップすることにより、シートを十分かつ確実に吸引・保持して給送することができると共に、シロッコファンのエア吐出口から吐き出された静圧のアップされたエアをエア吹付駆動源またはエア吹付駆動源としてのシロッコファンが吸引できることにより、エア吹付駆動源の吸引効率をさらによくすることができる(請求項3、4を引用した請求項5であって、この請求項5を引用した請求項6記載の発明の場合)。
【0030】
請求項7記載の発明によれば、上記構成により、ベルトを駆動する駆動手段をエア吸引駆動源の近傍に配置し、エア吹付駆動源、エア吸引駆動源および駆動手段を覆うカバー部材を有することにより、カバー部材によって各駆動音が遮音・低減されるので、低騒音給送が可能となる。
【0031】
請求項8記載の発明によれば、上記構成により、請求項1ないし7の何れか一つに記載のシート給送装置を有することによる効果を奏する孔版印刷装置を含む印刷装置を実現し提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図を参照して、本発明を実施するための最良の形態および実施例を含む実施形態を説明する。上述した背景技術例、実施形態および変形例等に亘り、同一の機能を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素をそのまま引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、実施形態等のそれと区別するものとする。
【0033】
まず、図11および図12を参照して、本発明を適用する印刷装置の一例としてのデジタル感熱式の孔版印刷装置の全体構成を説明する。図11は、上記デジタル感熱式の孔版印刷装置の全体構成を模式的に示し、図12は、図11における主として孔版印刷装置本体200の全体構成を示している。
図11および図12に示す孔版印刷装置では、活性エネルギー線硬化型インキの使用が可能であるため、その活性エネルギー線硬化型のインキを硬化させるための活性エネルギー線硬化定着装置201が図12の孔版印刷装置本体の排紙側に併設されている。活性エネルギー線硬化型インキとしては、その一例として紫外線硬化型インキが用いられ、活性エネルギー線硬化定着装置としては、その一例として紫外線硬化定着装置が用いられる。
【0034】
図11および図12において、200は、図12に詳しく示す孔版印刷装置本体であり、孔版印刷装置本体200の右側には給紙部110が設けられている。上記したように、孔版印刷装置本体200の排紙側に、活性エネルギー線硬化定着装置201が併設されている。この活性エネルギー線硬化定着装置201内には、活性エネルギー線ランプや用紙を搬送するモータやベルト、吸着ファン等が組み込まれている。そして、活性エネルギー線硬化定着装置201内で活性エネルギー線硬化型インキを用紙上に定着させ、ベルト・吸着搬送で排紙台52へ印刷・定着済み用紙を排紙させるように構成されている。
活性エネルギー線硬化定着装置201の内部構成は、例えば本出願人が提案した特開2006−281658号公報の図1に示されている紫外線照射装置としてのUV照射装置(2)と同様である。これとの関連で、図12に示す孔版印刷装置本体200側には、上記特開2006−281658号公報の図4等に記載されている孔版印刷制御装置(55)と同様の構成が配設されている。
【0035】
次に、図12を参照して、孔版印刷装置本体200側の全体構成について説明する。図12において、50は、孔版印刷装置本体200側の骨組みをなす装置本体を示す。同図に示すように、装置本体50の上部にある、80で示す部分は原稿読取装置としての原稿読取部を、その下方の100で示す部分はデジタル感熱孔版式の製版装置としての製版部を、製版部100の左側に129で示す部分は多孔性円筒状の版胴を外周部に備えた印刷ドラム121が配置された印刷ドラム装置としての印刷ドラム部を、印刷ドラム121の下方の120で示す部分は印圧装置としての印圧部を、印刷ドラム121の左側に70で示す部分は排版装置としての排版部を、製版部100の下方の110で示す部分は給紙装置としての給紙部を、印圧装置120の左側であって排版装置70の下方の130で示す部分は排紙装置としての排紙部を、それぞれ示している。
なお、図11および図12において、孔版印刷装置本体200の符号と共に、括弧を付して示す150,151,152はそれぞれ後述する第1の実施形態、その変形例2に係る孔版印刷装置本体であることを表しており、本発明を適用する孔版印刷装置本体200と区別している。
【0036】
原稿読取部80は、図示しない原稿載置台上から移送される原稿60の表面の画像を読み取る機能を、製版部100は、ロール状に巻かれたマスタ101を製版し給版搬送する機能を、印刷ドラム部129は、製版済みのマスタ101をその外周面に巻装し印刷ドラム121上の製版済みのマスタ101にインキを供給する機能を、印圧部120は、後述する押圧手段により印刷ドラム121に対してシート状の記録媒体・被印刷媒体としての用紙Sを押し付けて用紙S上に印刷画像を形成する機能を、排版部70は、印刷ドラム121の外周面から使用済みのマスタ101を剥ぎ取りこれを排版ボックス74内に排出・排版する機能を、給紙部110は、給紙台としての給紙トレイ51上に積載された用紙Sを印刷ドラム部129と印圧部120との間に給送する機能を、排紙部130は、印刷ドラム部129と印圧部120にて印刷された用紙Sを排紙台52に排出する機能を、それぞれ有する。
【0037】
図12および図13を参照して、孔版印刷装置本体での基本的な全体動作について、説明する。先ず、使用者が、原稿読取部80の上部に配置された図示しない原稿載置台に印刷すべき画像を持った原稿60を載置・セットし、図13に示す操作パネル90の製版スタートキー91を押す。この製版スタートキー91の押下に伴い、製版スタート信号が生成されこれがトリガとなって、先ず排版工程が実行される。すなわち、この状態においては、印刷ドラム121の外周面(版胴の外周面)に前回の印刷で使用された使用済みのマスタ101が装着されたまま残っている。印刷ドラム121は、図示しない駆動機構を介して印刷ドラム駆動手段(図示せず、例えばメインモータ等)に連結されていて、印刷ドラム駆動手段によって回転駆動される。
【0038】
印刷ドラム121が図中矢印方向Aと反対方向に回転し、印刷ドラム121の外周面に装着されていた使用済みのマスタ101の後端部が排版部70の排版剥離ローラ対71a,71bに近づくと、同ローラ対71a,71bは回転しつつ一方の排版剥離ローラ71bで使用済みのマスタ101の後端部をすくい上げ、排版剥離ローラ対71a,71bの左方に配設された排版コロ対73a,73bと排版剥離ローラ対71a,71bとの間に掛け渡された排版搬送ベルト対72a,72bで構成される排版剥離搬送装置により、使用済みのマスタ101は印刷ドラム121の外周面から漸次剥され矢印方向X1方向へ搬送されつつ排版ボックス74内へ排出されていわゆる排版工程が終了する。この時印刷ドラム121は反時計回り方向への回転を続けている。排出された使用済みのマスタ101は、その後、圧縮板75によって排版ボックス74の内部で圧縮される。
【0039】
排版工程と並行して、原稿読取部80が作動して原稿読み取りが行われる。すなわち、図示しない原稿載置台に載置された原稿60は、分離ローラ81、前原稿搬送ローラ対82a,82bおよび後原稿搬送ローラ対83a,83bのそれぞれの回転により矢印X2からX3方向(以下、「原稿搬送方向X2」という)に搬送されつつ露光読み取りに供される。このとき、原稿60が多数枚あるときは、分離ブレード84の作用でその最下部の原稿のみが搬送される。
上側の後原稿搬送ローラ83aは、例えばステッピングモータからなる原稿搬送モータ(図示せず)によって回転駆動される。上側の前原稿搬送ローラ82aは、上側の搬送ローラ83aと搬送ローラ82aとの間に掛け渡されたタイミングベルト(図示せず)を介して上記原稿搬送モータによって回転駆動され、各ローラ82b,83bはそれぞれ従動回転する。
【0040】
原稿60の画像読み取りは、コンタクトガラス85上を搬送されつつ、蛍光灯86により照明された原稿60の表面からの反射光を、ミラー87で反射させレンズ88を通して、CCD(電荷結合素子等の光電変換素子)からなる画像センサ89に入射させることにより行われる。その画像が読み取られた原稿60は原稿トレイ80A上に排出される。
【0041】
原稿60の光学情報(画像データ)は画像センサ89で光電変換され、そのアナログの電気信号はアナログ/デジタル(A/D)変換部(図示せず)に入力されデジタルの画像信号に変換される。このデジタルの画像信号は図示しない制御部内の画像処理部(図示せず)で孔版用に画像処理を施され、こうして画像処理を施された2値の黒画素および白画素に関するデジタル画像信号は、図示しないサーマルヘッド駆動制御部に入力される。このサーマルヘッド駆動制御部は、主としてサーマルヘッド駆動回路(図示せず)を介して図12に示すサーマルヘッド102の個々の発熱体102aを制御するものであり、図示しない制御手段からの指令を受けて制御動作を行う。
【0042】
なお、上記A/D変換部へ入力される光学情報(画像データ)は上記CCDで読み取ったものに限らず、例えば密着イメージセンサ(CIS)等からのものでも構わない。また、上記図示しない制御部内のサーマルヘッド駆動制御部に入力されるデジタル画像データは、パソコン等のコンピュータから送信されるデジタル画像信号であっても構わない。
上記図示しない制御部内のサーマルヘッド駆動制御部に入力したデジタル画像信号は、サーマルヘッド駆動用の信号としてデジタル画像データ信号等を生成されて、サーマルヘッド駆動回路(図示せず)を介してサーマルヘッド102に送信される。
【0043】
一方、このような原稿走査および画像読み取り動作と並行して、デジタル信号化された画像情報(デジタル画像信号)に基づき製版および給版工程が行われる。すなわち、上記製版スタート信号がトリガとなって、プラテンローラ103に連結されたステッピングモータ(図示せず)が回転駆動されることにより、図示しないマスタ支持部材を介してマスタ101を繰り出し可能にセットされ、芯管101aの周りにロール状に巻かれて形成されたマスタロール101Aからマスタ101が引き出される。この時、マスタ101は、マスタ101を介してサーマルヘッド102に押し付けられているマスタ搬送手段としてのプラテンローラ103およびテンションローラ対105a,105bの一定速度の回転により、図中矢印X4で示す副走査方向X4(以下、「マスタ搬送方向X4」ともいう)の下流側に搬送される。
搬送されるマスタ101に対して、サーマルヘッド102の主走査方向にライン状に並んで配列された多数の微小な発熱体102aが、上記図示しない制御部内のサーマルヘッド駆動制御部から送られてくるデジタル画像データ信号に応じて各々位置選択的に発熱し、発熱した発熱体102aに接触しているマスタ101の熱可塑性樹脂フィルム部分が加熱溶融穿孔される。このようにして、画像情報に応じたマスタ101の位置選択的な溶融穿孔により、画像情報が穿孔パターンとしてマスタ101に書き込まれる。
【0044】
プラテンローラ103は、タイミングベルトおよびギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介して上記図示しないステッピングモータに連結されていて、ステッピングモータにより回転される。上記ステッピングモータの回転駆動力は、ギヤ等の回転伝達部材(図示せず)を介して、テンションローラ対105a,105bおよび電磁クラッチ(図示せず)を介して上下一対の反転ローラ107a,107bに伝達されるようになっている。なお、上記電磁クラッチに代えて、反転ローラ対107a,107bの駆動ローラを回転させる、上記ステッピングモータとは別のステッピングモータを配設した装置もある。
【0045】
サーマルヘッド102は、上記したように画像センサ89、それぞれ図示しない、上記A/D変換部、上記画像処理部等を経由して、あるいは図示しないパソコン等からのデジタル画像信号を受信するための図示しないパソコン・コントローラやインターフェース装置、データ展開部等を経由して上記画像処理部を介して、図示しない制御部のサーマルヘッド駆動制御部で処理されて送出されるデジタル画像データ信号を含むサーマルヘッド駆動用の信号に基づいて、多数の発熱体102aを位置選択的に加熱することにより、マスタ101を位置選択的に加熱溶融穿孔し製版する製版手段としての機能を有する。サーマルヘッド102は、図示しない周知の接離手段により、マスタ101を介してプラテンローラ103に接離自在となっている。
【0046】
図11および図12で使用されるマスタ101としては、例えば熱可塑性樹脂フィルムと、和紙繊維とか合成繊維あるいは和紙繊維および合成繊維を混抄したもの等からなる多孔質支持体とを貼り合わせたラミネート構造のものが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)系のものが用いられる。
製版部100は、装置本体50に対して周知の着脱手段を介して着脱自在な製版ユニットを構成している。上記着脱手段としては、例えば、装置本体50側に設けられ製版ユニットを案内する断面コ字形状の案内部材と、製版ユニット側に設けられ上記案内部材に対して摺動可能な凸状部材との組合せが挙げられる。このように装置本体50側には、図示しない案内部材等が配設されることからも、給紙ユニット110Aにおける高さ方向Zの省スペース化および小型化が要望されている。
【0047】
画像情報が書き込まれた製版済みのマスタ101の先端は、反転ローラ対107a,107bにより印刷ドラム121の版胴外周部側へ向かって送り出され、さらに給版ガイド板108により進行方向を下方へ変えられ、図12に二点鎖線で示す給版位置状態にある印刷ドラム121の拡開したマスタクランパ122へ向かって垂れ下がる。このとき印刷ドラム121は、排版工程により使用済みのマスタ101を既に除去されている。
そして、装置本体50側に配設されマスタクランパ122を開閉する図示しない開閉装置の作動により、製版済みのマスタ101の先端が一定のタイミングでマスタクランパ122によってクランプ・保持されると、印刷ドラム121は図中矢印A方向(時計回り方向)に回転しつつ外周面に製版済みのマスタ101を徐々に巻き付けていく。製版済みのマスタ101の後端部は、製版完了後にカッタ104により一定の長さに切断されて、1版の製版済みのマスタ101が印刷ドラム121の外周面に完全に巻装された段階で製版および給版工程が終了する。
【0048】
その後、プラテンローラ103、テンションローラ対105a,105bおよび反転ローラ対107a,107bの回転により、切断された上流側の残りのマスタ101の先端が反転ローラ対107a,107bのニップ部に向けて搬送される。こうして搬送されたマスタ101の先端が図示しないマスタ先端検知センサによって検知され、マスタ101の先端が初期位置を占めたと判断されると、プラテンローラ103、テンションローラ対105a,105bおよび反転ローラ対107a,107bの回転が停止し、次の製版に備えた製版待機状態になる。マスタ101の初期位置は、例えば、反転ローラ対107a,107bのニップ部で挟持された位置から少し前方にはみ出た位置に予め設定されている。
【0049】
次いで、印刷工程が開始される。先ず、給紙トレイ51上に積載された用紙Sのうちの最上位の1枚が、給紙コロ111により引き出され、さらに分離コロ対112a,112bの協働作用により1枚に分離されてレジストローラ対113a,113bに向けて矢印X方向(以下、「用紙搬送方向X」または「給紙方向X」ともいう)に給送され、さらにレジストローラ対113a,113bにより印刷ドラム121の回転と同期した所定のタイミングで印圧部120における印刷ドラム121とプレスローラ123との間に給送される。このプレスローラ123は、図示しない公知のプレスローラ変位手段により印刷ドラム121の外周面に接離自在になされており、外周面に製版済みのマスタ101が巻装された印刷ドラム121に対して給送されてきた用紙Sを押し付けて印刷画像を用紙S上に形成する押圧手段として機能する。そして、給送されてきた用紙Sが、印刷ドラム121とプレスローラ123との間に挿入されてくると、印刷ドラム121の外周面下方に離間していたプレスローラ123が揺動・上昇されることにより、印刷ドラム121の外周面に巻装されている製版済みのマスタ101に押し付けられる。こうして、印刷ドラム121の多孔部から滲み出たインキの粘性による付着力によって、製版済みのマスタ101が印刷ドラム121の外周面上に密着すると同時に、さらに製版済みのマスタ101の穿孔パターン部からインキが滲み出し、この滲み出たインキが用紙Sの表面に転移されて、印刷画像が形成される。
【0050】
この時、印刷ドラム121の内周側では、支軸124を兼ねるインキ供給管124からインキローラ125とドクターローラ126との間に形成されるインキ溜まり127にインキが供給され、印刷ドラム121の回転方向と同一方向に、かつ、印刷ドラム121の回転速度と同期して回転しながら内周面に転接するインキローラ125により、インキが印刷ドラム121の内周側に供給される。
なお、インキ供給管124、インキローラ125およびドクターローラ126は、印刷ドラム121上の製版済みのマスタ101にインキを供給するインキ供給手段を構成する。押圧手段は、プレスローラ123に限らず、印刷ドラム(版胴)121の直径とほぼ同径の圧胴等も用いられ、このような圧胴方式の孔版印刷装置でも無論、本発明は適用される。
上記したとおり、印刷ドラム121、上記インキ供給手段およびプレスローラ123は、印刷部110により給送されてきた用紙Sにインキによる印刷画像を形成する印刷画像形成手段を構成している。
【0051】
上質紙等への非コート紙に印刷する場合に使用するインキとしては、例えばW/O型のエマルジョンインキが好ましく用いられる。以下、図11および図12に示す孔版印刷装置例においては、説明の簡明化を図るために活性エネルギー線硬化型インキとしての紫外線硬化型インキが用いられるものとして説明する。以下、単にインキというときは、活性エネルギー線硬化型インキ(紫外線硬化型インキ)を意味するものとする。
【0052】
印圧部120において印刷画像が形成された用紙Sは、排紙部130における排紙剥離爪114により印刷ドラム121から剥がされ、吸引用ファン118に吸引されつつ、吸着排紙入口ローラ115および吸着排紙出口ローラ116に掛け渡された多孔性の搬送ベルト117に吸着され、この搬送ベルト117の反時計回り方向の回転・走行により、矢印X5のように排紙台52へ向かって搬送され、排紙台52上に順次排出積載される。このようにしていわゆる版付け印刷が終了する。
版付け印刷終了後、プレスローラ123は印刷ドラム121から離間し、印刷ドラム121は図12においてマスタクランパ122が略真上となる初期位置(ホームポジション)に復帰して、印刷待機状態となる。
【0053】
次に、図13に示す操作パネル90に配置されている図示しない印刷速度設定キーを押下することにより、所望する印刷速度値を設定し、これに前後して操作パネル90のテンキー93で印刷枚数をセットし、印刷スタートキー92を押すと上記版付け印刷と同様の工程で、給紙、印刷および排紙の各工程が設定された印刷速度でセットした印刷枚数分繰り返して行われ、孔版印刷の全工程が終了する。
【0054】
図12において、レジストローラ対113a,113bを除き二点鎖線で囲んだ部分は、図示しないネジ等の締結手段を含む着脱手段を介して、装置本体50に対して着脱自在に構成された給紙ユニット110Aを示している。給紙ユニット110Aは、上述した摩擦方式によるシート給送装置として構成されている。給紙ユニット110Aでは、分離手段として分離コロ対112,112bを用いたが、給紙ローラと摩擦部材である摩擦パッドとの組み合わせたものも用いられる。
図12において、給紙ユニット110Aの符号と共に括弧を付して示す1Aは、図示しないネジ等の締結手段を含む着脱手段を介して、装置本体50に対して着脱自在に構成された後述する第1の実施形態に係る給紙ユニットを表している。
また、エア給紙装置は、例えば大量給紙が可能な大量給紙ユニットと組み合わせ、印刷装置本体に対し外付けオプションとして装着可能なように構成してもよい。
【0055】
ここで、図13に示した操作パネル90を補説する。操作パネル90は、原稿読取部80の上部の一側部に配置されている。操作パネル90には、図13に詳しく示すように、周知の製版スタートキー91、印刷スタートキー92、テンキー93、試し刷りキー94、エンターキー95、モードクリアキー96、タッチパネル98および表示器99等が配設されている。また、操作パネル90には、報知手段およびシートの種類を認識するシート種類認識手段としての用紙種類設定手段として機能するものも配設されている。
製版スタートキー91は、原稿の画像の読み取りから排版、製版、給版、給紙、版付け印刷、排紙工程に至るまでの一連の工程(動作)を起動するための動作起動手段としての機能を、テンキー93は、印刷枚数等を入力・設定する機能を、印刷スタートキー92は、テンキー93で入力・設定された印刷枚数分の印刷動作の起動等を行う機能を、試し刷りキー94は、試し刷り印刷動作を起動する機能を、それぞれ有する。エンターキー95は、各種設定時に数値等を確定・設定する機能を、モードクリアキー96は、各種モード設定状態を消去・クリアする機能を有し、それぞれそれらの機能を発揮させたい場合等に押下される。
【0056】
タッチパネル98は、図示しないタッチパネル駆動回路を含むLCD(液晶表示装置)駆動回路により駆動され、周知のタッチパネル方式で画面表示された各種モードや種々の選択設定手段(上述の用紙種類設定手段)を白黒反転表示させて選択設定できるように構成されている。
タッチパネル98に配設されたLCD画面からなる表示手段ないしは報知手段は、使用するインキや各シロッコファン15a,15bによる回転数による風量が薄紙、普通紙、コート紙あるいは厚紙に見合っていない場合に、それを表示ないしは報知するものである。
用紙種類設定手段は、用紙として、薄紙、普通紙、コート紙を選択設定することが可能な用紙種類認識手段としての機能を有し、具体的にはタッチパネル98に設けられた薄紙設定キー131、普通紙設定キー132およびコート紙設定キー133で構成されている。用紙種類設定手段は、上記したものに限らず、より詳細に厚紙等を設定可能なキーを配設してもよい。
【0057】
例えば、コート紙設定キー133でコート紙(アート紙等を含む)を選択設定した場合、その表面の平滑度が高い(ツルツル状態)ため、図11および図12に示した給紙ユニット110Aの摩擦分離方式では1枚ずつ用紙Sを分離することができない。そのため、コート紙設定キー133からのコート紙設定に係る信号に基づいて、図示しない制御手段がその旨(エア給紙装置の給紙ユニットを装着する旨)をタッチパネル98の上記LCD画面に表示・報知させると共に、給紙部110を含む孔版印刷装置本体200の印圧部120、印刷ドラム部129および排紙部130等を非作動状態にさせることで、給紙、印刷、排紙動作を禁止するように構成される(後述の第1の実施形態および変形例1、2でも同様)。
【0058】
(第1の実施形態)
図1〜図4を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
第1の実施形態は、図8および図9に示したエア給紙装置500の給紙ユニット500Aと比較して、図1〜図4に示すように、エア給紙装置1の給紙ユニット1Aを用いることのみ相違する。エア給紙装置1の給紙ユニット1Aは、エア給紙装置500の給紙ユニット500Aと比較して、給紙ユニット500Aの吸引ユニット10に代えて、吸引ユニット10Aを用いる点、給紙ユニット500Aのサイド吐出ユニット40およびフロント吐出ユニット22に代えて、エア分離手段としてのフロント・サイド吐出ユニット30を用いる点、これら吸引ユニット10Aおよびフロント・サイド吐出ユニット30の採用に伴い、それらを構成する後述するエア吸引駆動源等およびエア吹付駆動源等を後述するように特有の配置で構成した点、吸引ユニット10Aを構成する後述する吸引駆動源としての1つのシロッコファン15a、フロント・サイド吐出ユニット30を構成する後述するエア吹付駆動源としての単一のシロッコファン25および吸引ベルト駆動モータ47からなる3つの駆動源・駆動手段を覆うカバー部材としての静音カバー35(図1および図2中太い一点鎖線で示す)を用いる点が主に相違する。
エア給紙装置1の給紙ユニット1Aは、上記相違点を詳細に後述する点以外は図8および図9に示したエア給紙装置500の給紙ユニット500Aと同様である。図11および図12において、摩擦方式の給紙ユニット110Aと共に括弧を付して示すエア方式の給紙ユニット1Aは、給紙ユニット110Aに代えて同図に括弧を付して示す孔版印刷装置本体150に装着・適用したことを表している。
【0059】
第1の実施形態の吸引ユニット10Aは、図8および図9に示した従来の吸引ユニット10と比較して、図1〜図4に示すように、エア吸引駆動源としてのエア吸引ファン15aをシロッコファン15aとして明定・限定すると共に、シロッコファン15aを吸引ベルト11の上方近傍に配置した点、および吸引チャンバ12が吸引ベルト11における用紙幅方向Yに沿って延びて形成されていて、吸引中継管(ダクト)13を、その吸引口13aが吸引チャンバ12における用紙幅方向Yの少なくとも両側(本実施形態では2箇所)に連通・接続した点、これに伴い、吸引チャンバ12における用紙幅方向Yの両側から吸引中継管13を吸引駆動源チャンバ17に連通・接続した点、吸引ベルト11を駆動する駆動手段としての吸引ベルト駆動モータ47をシロッコファン15a(エア吸引駆動源)の近傍に配置した点が主に相違する。
【0060】
図1および図2において、吸引ベルト11、駆動ローラ14a、従動ローラ14bおよび単一の吸引チャンバ12、左右の吸引中継管13、吸引駆動源チャンバ17、シロッコファン15a、吸引ベルト駆動モータ47は、吸引ユニット10Aを構成している。
上記した吸引ユニット10A中、吸引ベルト11、吸引チャンバ12、左右の吸引中継管13、吸引駆動源チャンバ17、シロッコファン15aは、エア吸引手段を構成している。
また、上記した吸引ユニット10A中、吸引ベルト11、駆動ローラ14a、従動ローラ14b、吸引ベルト駆動モータ47は、上記エア吸引手段により吸引・保持された用紙Sを給送するシート給送手段を構成している。
【0061】
フロント・サイド吐出ユニット30は、上述したように、給紙トレイ3上に積載された用紙束2の両側端面および先端面にエアを吹き付けることにより用紙Sを1枚ずつ分離させるエア分離手段を構成している。
フロント・サイド吐出ユニット30は、用紙束2の両側端面にエアaを吹き付けるサイドエア吐出口42aを備えた左右一対のサイド吐出チャンバ42,42と、用紙束2の前端面(先端面)にエアaを吹き付けるフロントエア吐出口21を備えたフロント吐出チャンバ20と、フロント吐出チャンバ20に連通・接続されたフロント吐出中継管(ダクト)24と、各サイド吐出チャンバ42,42を介してサイドエア吐出口42aにそれぞれ連通・接続された左右のサイド吐出中継管(ダクト)43と、左右のサイド吐出中継管43およびフロント吐出中継管24にそれぞれ連通・接続されたフロント・サイド吐出駆動源チャンバ44と、このフロント・サイド吐出駆動源チャンバ44に連通・接続され、エアaを吸引するエア吸引口25a1とエアaを吐出するエア吐出口25a2とを備えた単一のエア吹付駆動源としてのDCエア吹付駆動ファンであるシロッコファン25とから主に構成されている。
そして、本実施形態では、シロッコファン25としては用紙束2の先端面および両側端面に吹き付けるエアaを生成する。シロッコファン25がシロッコファン15aのエア吐出口15a2近傍に配置されていることを特徴としている。シロッコファン25の静圧仕様は、シロッコファン15aと同等である。
【0062】
本実施形態では、上述したように、吸引ベルト駆動モータ47をシロッコファン15aの近傍に配置するため、吸引ベルト11を駆動する吸引ベルト駆動モータ47の駆動力伝達方式を、図9に示したカップリング14cを介しての吸引ベルト駆動モータ47直結駆動方式から、歯付きのベルト48、歯付きの駆動プーリ47a、歯付きのプーリ14dを用いた駆動力伝達手段に変更している。すなわち、図2に示すように、駆動ローラ14aの軸の一端に固着された歯付きのプーリ14dと、吸引ベルト駆動モータ47の出力軸に固着された歯付きの駆動プーリ47aと、歯付きのプーリ14dと歯付きの駆動プーリ47aとの間に巻き掛けられた歯付きのベルト48とからなる駆動力伝達手段を採用している。なお、駆動力伝達手段は、図2に示した手段に限らず、ギヤ列を用いたもの等でもよい。
【0063】
当然のことながら、吸引ユニット10Aの各連通・接続部、ちなみにシロッコファン15aのエア吸引口15a1と吸引駆動源チャンバ17との接続部、各吸引中継管13と吸引駆動源チャンバ17との接続部、吸引駆動源チャンバ17とシロッコファン15aのエア吸入口15a1との接続部、吸引チャンバ12と各吸引中継管13の吸引口13aとの接続部、およびフロント・サイド吐出ユニット30の各連通・接続部、ちなみにシロッコファン25のエア吐出口15b2とフロント・サイド吐出チャンバ44との接続部、フロント・サイド吐出チャンバ44と各サイド吐出中継管43との接続部、各サイド吐出中継管43と各サイド吐出チャンバ42との接続部、フロント・サイド吐出チャンバ44とフロント吐出中継管24との接続部、フロント吐出中継管24とフロント吐出チャンバ20との接続部は、それぞれエア漏れがないように適切な嵌合接続形状により、また適宜のシールテープ等の貼り付けによってエア漏れ防止が図られている。
【0064】
図5に、シロッコファン15a,15b,25の具体的な製品例を示す。図3中、15c,25cはシロッコファン15a,15b,25に設けられている多翼ファンを、15d,25dはシロッコファン15a,15b,25に設けられているDCファンモータに電力を供給するリード線をそれぞれ示している。なお、シロッコファンの名称は当業者の間で広く用いられている用語であるが、その正式名称(学術用語)は、遠心送風機の多翼ファンに相当する。
【0065】
次に、図1〜図4を参照して、エア給紙装置1の給紙ユニット1Aの給紙動作を説明する。先ず、DCファンからなるシロッコファン25を駆動させることにより、エアaの流れを作り、このエアaがフロント・サイド吐出駆動源チャンバ44および左右の各サイド吐出中継管43,43を通り外に出て、各サイド吐出チャンバ42のサイドエア吐出口42aから用紙束2の各側端面に吹き付ける。
これと同時に、上記したようにシロッコファン25の駆動によって作られたエアaの一部は、フロント吐出中継菅(ダクト)を介してフロント吐出チャンバ20を通り、フロントエア吐出口21から外に出て、用紙束2の先端面(前端面)に吹き付ける。このように、各エアaが用紙束2の先端面および両側端面に吹き付けることで、用紙束2の上部が図1に示すように1枚ずつ確実に分離しバラける。
【0066】
次いで、所定のタイミングでシロッコファン15aを駆動させることにより、吸引駆動源チャンバ17および左右の各吸引中継管13,13を介して、単一の吸引チャンバ12からエアaが吸引されると、吸引チャンバ12の内部が負圧になり、吸引チャンバ12の開口12a面に対向した範囲の両サイドの吸引ベルト11の孔11aからエアaが吸引されるので、図8および図9を参照して説明した従来の吸引ユニット10による場合と比べて、吸引面積を実質2倍にした状態で1枚に分離された最上位の用紙S1が吸引ベルト11に確実に貼り付け・吸着保持される。
【0067】
用紙S1が吸引ベルト11に貼り付いたら、吸引ベルト駆動モータ47を駆動させることで、駆動ローラ14aが図1中矢印方向に回転し、吸引ベルト11が走行することで、給紙方向Xの下流側のレジストローラ113a,113bまで用紙S1が搬送される。レジストローラ対113a,113bまで用紙S1が搬送された後、吸引ベルト駆動モータ47の駆動を停止させることにより、吸引ベルト11の走行が停止し、所定時間、吸引動作待ちをする。残りの用紙S1の搬送は、レジストローラ対113a,113bの回転により行う。用紙S1の後端が用紙束2の先端面を突き当てている前面板4の近傍にくると、上記したと同様の動作によって次の1枚に分離された用紙Sが吸引ベルト11に貼り付く。この時、シロッコファン15aを駆動させることにより、エア吐出口15a2から吐き出されたエアaが、シロッコファン25を駆動させることによりエア吸引口25a1を介して吸引することで、シロッコファン25の吸引効率がよくなる。以上の工程・動作を繰り返すことでエア給紙が続行される。
【0068】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、次の諸利点・効果を奏する。すなわち、第1に、上記特有の構成の吸引ユニット10Aを有することにより、装置の省スペース化および小型化を図るために、吸引ベルト11のピッチ間を小さく、または駆動・従動ローラ14a,14bの直径を小さくした場合でも、DCファンであるシロッコファン15aで対応できると共に、吸引駆動源チャンバ17および左右の各吸引中継管13,13を介して、単一の吸引チャンバ12により用紙幅方向Yの左右の吸引ベルト11の孔11aからエアaが吸引されるので、図8および図9を参照して説明した従来の吸引ユニット10による場合と比べて、用紙S1に対する吸引面積を実質2倍にした状態で1枚に分離された最上位の用紙S1を吸引ベルト11に確実に貼り付け・吸着保持させて給送することができる。用紙S1における用紙幅方向Yの両側から吸引することに伴い、吸引駆動源としてのシロッコファン15aを吸引ベルト11の上方近傍に配置することが可能となり、後述する第2および第3の効果を奏する前提となるスペースの効率化(構成部品や構成部材等の集約化)を図ることができると共に、吸引中継管(ダクト)13の長さを短くできることによって、管摩擦損失およびコストをできるだけ抑えることができる。
【0069】
第2に、上記特有の構成のフロント・サイド吐出ユニット30を有することにより、用紙束2の両側端面および先端面にエアaを吹き付けるエア吹付駆動源を単一のシロッコファン25で構成すると共に、シロッコファン25がシロッコファン15aのエア吐出口15a2近傍に配置されていることにより、シロッコファン15aの吐き出したエアaをエア吸引口25a1を備えたシロッコファン25が吸引できることで、エア吹付駆動源としてのシロッコファン25の吸引効率をよくすることができる。
【0070】
第3に、吸引ベルト11を駆動する吸引ベルト駆動モータ47をシロッコファン15aの近傍に配置することにより、3つの駆動手段・駆動源、すなわちエア吸引駆動源としてのシロッコファン15a、エア吹付駆動源としての単一のシロッコファン25および駆動手段としての吸引ベルト駆動モータ47を1箇所にまとめ、その上から、これら3つの駆動手段・駆動源を覆うカバー部材としての静音カバー35(図1および図2中太い一点鎖線で示す)を設置することで、駆動音が遮音され低減されるので、低騒音給紙が可能となる。
【0071】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態の変形例1を説明する。変形例1は、第1の実施形態と比較して、図1および図2を借りて説明すると、給紙ユニット1Aを構成するエア分離手段としてのフロント・サイド吐出ユニット30に代えて、フロント吐出中継管24を除去することにより、用紙束2の両側端面にエアaを吹き付けるサイドエア吐出側のエア分離手段の構成と、用紙束2の前端面にエアaを吹き付けるフロントエア吐出側のエア分離手段の構成とを分離した点が主に相違する。この相違点以外は、変形例1は、第1の実施形態と同様である。
【0072】
用紙束2の両側端面にエアaを吹き付けるサイドエア吐出側のエア分離手段のの構成は、各サイド吐出チャンバ42,42を介してサイドエア吐出口42aにそれぞれ連通・接続された左右のサイド吐出中継管(ダクト)43と、左右のサイド吐出中継管43のみにそれぞれ連通・接続されたサイド吐出駆動源チャンバ44と、このサイド吐出駆動源チャンバ44に連通・接続され、エアaを吸引するエア吸引口25a1とエアaを吐出するエア吐出口25a2とを備えた単一のエア吹付駆動源としてのDCエア吹付駆動ファンであるシロッコファン25とからなる。
【0073】
用紙束2の前端面にエアaを吹き付ける構成は、例えば図8に示したフロント吐出ユニット22と同様の構成であり、フロントエア吐出源としたはDCファンとしての例えばシロッコファン等で構成される。
本変形例によれば、第1の実施形態における第1および第2の利点・効果とほぼ同様の利点・効果を奏する。但し、本変形例では、上述した構成であることにより、図1および図2に示したように、ファン15a、シロッコファン25および吸引ベルト駆動モータ47を1箇所にまとめ、その上から、これら3つの駆動源・駆動手段を静音カバー35で覆うことができるが、フロント吐出チャンバ20に連通・接続されたフロントエア吐出源としてのDCファンの集約化が第1の実施形態ほど望めない。
【0074】
変形例1に限らず、変形例1におけるエア分離手段の構成から例えば図8に示したフロント吐出ユニット22を除去し、エア分離手段として、用紙束2の両側端面にエアaを吹き付ける変形例1と同様のサイドエア吐出側の構成のみで構成してもよい。
【0075】
(第1の実施形態の変形例2)
図6および図7を参照して、第1の実施形態の変形例2を説明する。
変形例2は、第1の実施形態と比較して、第1の実施形態のエア給紙装置1の給紙ユニット1Aの吸引ユニット10Aおよびこれを有する孔版印刷装置本体150に代えて、図6、図7、図11および図12に示すように、給紙ユニット1Bの吸引ユニット10Bおよびこれを有する孔版印刷装置本体151を用いることのみ相違する。
吸引ユニット10Bは、図1〜図3に示した吸引ユニット10Aと比較して、単一のシロッコファン15aに代えて、図1および図2に示すように、エア吸引駆動源として複数(本変形例では2つ)のシロッコファン15a,15bを用いることを明定・限定した点、すなわちエアを吸引するエア吸引口15a1とエアを吐出するエア吐出口15a2とを備えたシロッコファン15aおよびエア吸引口15b1とエアを吐出するエア吐出口15b2とを備えたシロッコファン15bを用いることを明定した点、エア排出経路の上流側のシロッコファン15aのエア吐出口15a2に、隣る下流側のシロッコファン15bのエア吸引口15b1を連通・接続して配置した点が主に相違する。
変形例2の給紙ユニット1Bは、上記相違点以外は図1〜図4に示した給紙ユニット1Aと同様である。図11および図12において、摩擦方式の給紙ユニット110Aと共に括弧を付して示すエア方式の給紙ユニット1Bは、給紙ユニット110Aに代えて同図に括弧を付して示す孔版印刷装置本体151に装着したことを表している。
【0076】
DCファンでも静圧が上げる方式として、エア吸引駆動源としてのエア吸引駆動ファンをシロッコファン15a,15bとし、そのシロッコファン15a,15bを両図に示すように配置するものである。すなわち、図1および図2に示したと同様にして左右の吸引中継管(ダクト)13に吸引駆動源チャンバ17を連通・接続した後、図6および図7に示すように、吸引駆動源チャンバ17に上流のシロッコファン15aのエア吸引口15a1が連通・接続されている。
そして、上流のシロッコファン15aのエア吐出口15a2にはファン接続ダクト45が連通・接続されており、それから下流のシロッコファン15bのエア吸引口15b1にはファン接続ダクト45が連通・接続されており、最も下流側にシロッコファン15bのエア吐出口15b2が開口されていて、エアを吐出するようになっている。換言すれば、2つのシロッコファン15a,15bが直列に連通・接続された構成である。
当然のことながら、吸引中継管13と吸引駆動源チャンバ17との接続部、吸引駆動源チャンバ17とシロッコファン15aのエア吸入口15a1との接続部、シロッコファン15aのエア吐出口15a2とファン接続ダクト45との接続部、シロッコファン15bのエア吸引口15b1とファン接続ダクト45との接続部は、それぞれエア漏れがないように適切な嵌合接続形状により、また適宜のシールテープ等の貼り付けによってエア漏れ防止が図られている。
【0077】
各シロッコファン15a,15bは、その静圧仕様が同等のもの、すなわち静圧仕様を含め形状・寸法等が共通のものである。2つのシロッコファン15a,15bを直列に連通・接続した構成にすることで、シロッコファン15a,15bの何れか一方の場合と比べて、静圧を約50%アップさせることができる。例えば1つのシロッコファンの静圧が仮に400Paとすると、図6および図7に示したようにシロッコファン15a,15bを直列に接続した構成と、シロッコファン15a,15bのうちの何れか一方のみに構成した場合との比較試験を行った結果、本変形例では600Paに約50%アップすることができた。
一般的に、その静圧仕様が同等の2つのシロッコファンを直列に連通・接続した構成の場合、理論上の静圧は約2倍になるが、本変形例では吸引駆動源チャンバ17およびファン接続ダクト45による摩擦、負荷抵抗等により約50%アップすることが分かった。
なお、本変形例においては、各シロッコファン15a,15bは、DCファンからなるので、各々の回転数を可変することで、静圧および風量を変えることも可能であるが、本変形例では各シロッコファン15a,15bは最大の回転数で回転駆動される。
【0078】
図6および図7において、吸引ベルト11、駆動ローラ14a、従動ローラ14bおよび吸引チャンバ12、左右の吸引中継管13、吸引駆動源チャンバ17、各シロッコファン15a,15b、ファン接続ダクト45、吸引ベルト駆動モータ47は、吸引ユニット10Bを構成している。
上記した吸引ユニット10B中、吸引ベルト11、吸引チャンバ12、左右の吸引中継管13、吸引駆動源チャンバ17、各シロッコファン15a,15bは、エア吸引手段を構成している。
また、上記した吸引ユニット10B中の、上記エア吸引手段により吸引・保持された用紙Sを給送するシート給送手段の構成部品は、第1の実施形態と同様である。
【0079】
本変形例によれば、第1の実施形態と同様の第1〜第3の効果を奏すると共に、給紙ユニット1Bおよびこれを有する孔版印刷装置本体151において、省スペース化および小型化を図るために、吸引ベルト11のピッチ間を小さく、または駆動(従動)ローラ14a(14b)の直径を小さくした場合でも、DCファンを備えたシロッコファン15a,15bを上述したように直列に連通・接続して配置したことにより、静圧がアップすることで用紙Sを十分に吸引・保持して給送することができるようになった。また、シロッコファン25がシロッコファン15bのエア吐出口15b2近傍に配置されていることにより、シロッコファン15bの吐き出したエアaをエア吸引口25a1を備えたシロッコファン25が吸引できることで、エア吹付駆動源としてのシロッコファン25の吸引効率を第1の実施形態のそれよりもよくすることができる。
【0080】
以上説明したとおり、本発明を特定の実施形態や変形例等について説明したが、本発明が開示する技術的範囲は、上述した実施形態や変形例あるいは実施例等に例示されているものに限定されるものではなく、それらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態のエア給紙装置の給紙ユニットを示す幾分模式的な正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の吸引ユニット周りの幾分模式的な側面図である。
【図4】図1のフロント・サイド吐出ユニット周りの幾分模式的な側面図である。
【図5】(a)は、第1の実施形態および変形例2に使用されるシロッコファンの製品例を示す下面図、(b)は、同ファンの右側面図、(c)は、同ファンの平面図である。
【図6】第1の実施形態の変形例2における給紙ユニットを示す幾分模式的な正面図である。
【図7】図6の給紙ユニットにおける吸引ユニット周りの下面図である。
【図8】従来のエア給紙装置の要部を示す一部断面正面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】図8とは別の従来のエア給紙装置の要部を示す一部断面正面図である。
【図11】本発明を適用する孔版印刷装置の全体構成を示す概略的な正面図である。
【図12】図11の孔版印刷装置本体の全体構成を示す正面図である。
【図13】図11の孔版印刷装置本体に用いられる操作パネルの平面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 エア給紙装置(シート給送装置)
1A,1B 給紙ユニット
2 用紙束(シート束)
3 給紙トレイ(シート積載台、給紙台)
10A,10B 吸引ユニット(シート給送装置、給紙ユニットを構成)
11 吸引ベルト(ベルト、エア吸引手段を構成)
12 吸引チャンバ(エア吸引手段を構成)
13 吸引中継管(エア吸引手段を構成)
14a 駆動ローラ(シート給送手段を構成)
14b 従動ローラ(シート給送手段を構成)
15a,15b シロッコファン(エア吸引駆動源、エア吸引手段を構成)
15c,25c 多翼ファン
17 吸引駆動源チャンバ(エア吸引手段を構成)
20 フロント吐出チャンバ(エア分離手段を構成)
23 フロントエア吐出ファン(フロントエア吐出源)
24 フロント吐出中継管(エア分離手段を構成)
25 シロッコファン(エア吹付駆動源、エア分離手段を構成)
25a1 シロッコファンのエア吸入口25a1
25a2 シロッコファンのエア吐出口25a2
30 フロント・サイド吐出ユニット(エア分離手段)
35 静音カバー(カバー部材)
42 サイド吐出チャンバ(エア分離手段を構成)
43 サイド吐出中継管(エア分離手段を構成)
44 フロント・サイド吐出駆動源チャンバ(エア分離手段を構成)
45 ファン接続ダクト(エア吸引手段を構成)
50 装置本体
121 印刷ドラム(印刷画像形成手段を構成)
123 プレスローラ(印刷画像形成手段を構成)
150,151,152 孔版印刷装置本体(印刷装置)
S 用紙(シート、被印刷媒体)
X 用紙搬送方向(シート搬送方向)
Y 用紙幅方向(シート幅方向)
Z 高さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載されたシート束の両側端面および先端面のうちの少なくとも一方の端面にエアを吹き付けることによりシートを1枚ずつ分離させるエア分離手段と、分離された最上位のシートを吸引し搬送するための、一対の回転部材の間に巻き掛けられシート搬送方向に走行するベルトと、上記各回転部材の間であって上記ベルトに囲まれた空間に設けられた吸引チャンバと、該吸引チャンバに連通・接続される吸引口を備えた吸引中継管と、該吸引中継管に連通・接続されたエア吸引駆動源とを具備するシート給送装置において、
上記吸引中継管は、上記吸引口を介して、上記吸引チャンバにおける上記シート搬送方向と直交するシート幅方向の少なくとも両側に連通・接続されていることを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート給送装置において、
上記エア吸引駆動源は、上記ベルトの上方近傍に配置されていることを特徴とするシート給送装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のシート給送装置において、
上記エア分離手段は、シート束の両側端面にエアを吹き付けるサイドエア吐出口と、該サイドエア吐出口に連通・接続され、エアを吸引するエア吸引口とエアを吐出するエア吐出口とを備えたエア吹付駆動源とを有し、
上記エア吹付駆動源は、上記エア吸引駆動源の上記エア吐出口近傍に配置されていることを特徴とするシート給送装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のシート給送装置において、
上記エア分離手段は、シート束の両側端面にエアを吹き付けるサイドエア吐出口と、シート束の前端面にエアを吹き付けるフロントエア吐出口と、上記サイドエア吐出口および上記フロントエア吐出口に連通・接続され、エアを吸引するエア吸引口とエアを吐出するエア吐出口とを備えたエア吹付駆動源とを有し、
上記エア吹付駆動源は、上記エア吸引駆動源の上記エア吐出口近傍に配置されていることを特徴とするシート給送装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載のシート給送装置において、
上記エア吹付駆動源および上記エア吸引駆動源は、上記エア吸引口と上記エア吐出口とを備えたシロッコファンからなることを特徴とするシート給送装置。
【請求項6】
請求項5記載のシート給送装置において、
上記エア吸引駆動源としての上記シロッコファンは、複数配設されており、
上流側の上記シロッコファンの上記エア吐出口に、該上流側の上記シロッコファンに隣る下流側の上記シロッコファンの上記エア吸引口を連通・接続して配置したことを特徴とするシート給送装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一つに記載のシート給送装置において、
上記ベルトを駆動する駆動手段を上記エア吸引駆動源の近傍に配置し、
上記エア吹付駆動源、上記エア吸引駆動源および上記駆動手段を覆うカバー部材を有することを特徴とするシート給送装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一つに記載のシート給送装置と、
上記シート給送装置により給送されたシートに印刷画像を形成する印刷画像形成手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−190840(P2009−190840A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33736(P2008−33736)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】