説明

シート荷重判定装置

【課題】シートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出して大人着座状態かチャイルドシート固縛状態かを判定するシート荷重判定装置において、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止し得るシート荷重判定装置を提供する。
【解決手段】シート荷重判定装置1は、車両Cのシート9を支持する複数の支持部94〜97のうち左側の支持部94、96に配設されて支持部94、96に作用する荷重を検出する荷重センサ2F、2Rと、車両Cの横加速度Gyに対して正の相関をもつ情報値を横加速度相関情報値(例えば、横加速度Gy、ヨーレイトγ、遠心加速度Vγ又は操舵角δ)として検出すると共に、横加速度相関情報値の絶対値が所定値以下であるか否かを判定する横加速度相関情報判定手段と、横加速度相関情報値の絶対値が所定値以下であるときにのみ、荷重センサ2F、2Rが検出した荷重に基づいてシート荷重判定を行う判定部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートに着座する乗員などの荷重体を判定するシート荷重判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に装備されたシートベルトやエアバッグ等の各種安全装置の性能を向上させるため、シートに着座している乗員の体重に合わせてこれらの安全装置の動作をコントロールする場合がある。例えば、乗員がシートに着座してシートベルトを装着しないときに、「シートベルト未装着」のアラームを表示することが一般的になっている。また、北米法規では、助手席に大人が着座している大人着座状態には、事故時にエアバッグを展開するように定められている。さらに、助手席にチャイルドシートを後ろ向きに固縛して幼児が運転者と対面するようにしたチャイルドシート固縛状態には、エアバッグの展開による衝撃が逆効果となるのでこれを禁止するよう定められている。そして、大人着座状態であることの判定は小柄な成人女性の体重を判定基準として行い、チャイルドシート固縛状態の判定についても判定基準が定められている。このように、シートに作用する荷重を検出して正しくシート荷重を判定することは、安全性の面で極めて重要である。
【0003】
乗員の体重すなわちシートの支持部に作用する荷重を測定する装置の一例が、特許文献1のシート荷重判定装置(車両用シートの荷重検出構造)に開示されている。このシート荷重判定装置では、シートの支持部となるシート側のロアレールとフロア側のレッグ部材との間4箇所に歪ゲージを利用した荷重検出手段を配設し、4箇所で検出された荷重値を加算して乗員の体重を求めるようになっている。ただし、乗員の有無及び大人着座状態かチャイルドシート固縛状態かを判定するためには、必ずしもシートの全支持部に作用する全荷重を正確に計測する必要がないので、一部の支持部にのみ荷重検出手段を配設して全荷重のうちの一部を検出する装置も開示されている。
【0004】
例えば、特許文献2に開示されているシート荷重判定装置(乗員検知装置)は、前側左右と後側左右の4支持部のうち、左右いずれかの側の前後2箇所、または対角線方向の前後2箇所にのみ荷重センサを配設している。また、特許文献3に開示されているシート荷重判定装置は、前側左右と後側左右の4支持部のうち、後側左右の2箇所にのみ荷重センサを配設している。これにより、荷重センサの数量を削減して、部品コスト及び組立・配線コストを低減している。
【0005】
特許文献2及び3のように一部の支持部にのみ荷重検出手段を配設してシートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出する装置では、シート上の乗員の位置や姿勢が変化すると一部の支持部における荷重の分担比率が変化して、検出される荷重値が変動する。この影響によるシート荷重の誤判定を防止するために、特許文献2には、前後2箇所で検出された荷重値を加算したり、一定時間内での荷重値の変動量が大きいときにのみエアバッグを展開したりする態様が開示されている。また、特許文献3には、左右2箇所で検出された荷重値を加算したり、車両の発進に伴う荷重値の増加傾向に基づいて大人着座状態かチャイルドシート固縛状態かを判定したりする態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3904913号公報
【特許文献2】特開平9−207638号公報
【特許文献3】特開2011−16423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び3に開示されているシートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出する装置は、コストを低減できる点では好ましいが、依然として乗員が着座する位置や姿勢により検出される荷重値が変動しやすい。
【0008】
例えば、前後2箇所の支持部に作用する荷重を検出する特許文献2に記載のシート荷重判定装置においては、乗員の姿勢が前後に変化することに対してはシート荷重判定精度の低下を防止できるものの、乗員の姿勢が左右に大きく変化したときにはシート荷重判定精度の低下を防止する必要がある。また、左右2箇所の支持部に作用する荷重を検出する特許文献3に記載のシート荷重判定装置においては、乗員の姿勢が左右に変化することに対してはシート荷重判定精度の低下を防止できるものの、乗員の姿勢が前後に大きく変化したときの対策が必要となる。
【0009】
このため、シートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出する従来のシート荷重判定装置は、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止するために、各支持部で検出された荷重値を加算したり、減算したり、荷重値の変動量を算出したりする演算処理を行っている。発明者は、このような荷重値の演算処理とは異なる方法で、シート上の乗員の位置や姿勢の変化によるシート荷重判定精度の低下の悪影響を排除できないかと考えた。
【0010】
本発明は、シート荷重判定精度の低下に繋がるような乗員の位置や姿勢の変化は、車両にある程度大きな横加速度が作用している状況において発生しやすいという実情に着目してなされたものであり、シートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出して、シートに大人が着座している大人着座状態か、シートにチャイルドシートが固縛されているチャイルドシート固縛状態かを判定するシート荷重判定装置において、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止し得るシート荷重判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に係るシート荷重判定装置の構成上の特徴は、車両のシートを支持する複数の支持部のうち左右のいずれか一側の該支持部に配設されて該支持部に作用する荷重を検出する荷重センサと、前記車両の車幅方向の加速度である横加速度に対して正の相関をもつ情報値を横加速度相関情報値として検出すると共に、該横加速度相関情報値の絶対値が所定値以下であるか否かを判定する横加速度相関情報判定手段と、前記横加速度相関情報値の絶対値が前記所定値以下であるときにのみ、前記荷重センサが検出した前記荷重に基づいて、前記シートに大人が着座している大人着座状態か、前記シートにチャイルドシートが固縛されているチャイルドシート固縛状態かを判定する判定部と、を備えることである。
【0012】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1に記載のシート荷重判定装置において、前記荷重センサが、複数の前記支持部のうち左右のいずれか一側の前後に離間した2箇所の各該支持部に配設されていることである。
【0013】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置において、前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両の前記横加速度を検出する横加速度検出手段を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該横加速度検出手段により検出された該横加速度であることである。
【0014】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置において、前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、該車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段と、を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該車速及び該ヨーレイトの積として算出された遠心加速度であることである。
【0015】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置において、前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該ヨーレイト検出手段により検出された該ヨーレイトであることである。
【0016】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置において、前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両の操舵角を検出する舵角検出手段を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該車両の走行中に該舵角検出手段により検出された該操舵角であることである。
【0017】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置において、請求項3〜6に記載の横加速度相関情報判定手段から選ばれる2つ以上を備えることである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、車両のシートを支持する複数の支持部のうち左右のいずれか一側の支持部に荷重センサが配設されており、車両に作用する横加速度に対して正の相関をもつ横加速度相関情報値の絶対値が所定値以下であるときにのみ、荷重センサが検出した荷重に基づいてシート荷重判定を行う。すなわち、車両にある程度大きな横加速度が作用している状況においてはシート荷重判定を行わない。
【0019】
車両に横加速度が作用すると、車両及び乗員には横加速度の作用方向に向かう力が作用する。これにより、車体のロールが大きくなったり、乗員が横加速度の作用方向に傾いたり、あるいは乗員が横加速度に抗して姿勢を鉛直に保とうとするため、シート上の乗員の位置や姿勢が変化して、シートの左右の支持部における荷重の左右分担比率が変化しやすくなる。そして、横加速度がある程度大きくなると、シートの左右のいずれか一側に配設された荷重センサが検出する荷重の変動も大きくなるため、荷重センサが検出した荷重に基づいて正確にシート荷重判定を行うことができなくなる。
【0020】
本発明においては、車両にある程度大きな横加速度が作用している状況においてはシート荷重判定を行わない構成としている。これにより、正確にシート荷重判定を行うことができなくなりそうな状況を極力排除することが可能となり、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0021】
なお、本発明の構成によれば、シートの左右のいずれか一側に配設される荷重センサの個数によらずシート荷重判定精度の低下を防止することができる。よって、荷重センサを配設する個数は限定されない。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、荷重センサが、シートを支持する複数の支持部のうち左右のいずれか一側の前後に離間した2箇所の各支持部に配設されている。これにより、特許文献2と同様に、前後2箇所で検出された荷重値を加算することによって、乗員やシートの前後方向の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。したがって、上述した請求項1に係る発明の効果と組み合わされることにより、乗員の前後左右方向の様々な位置や姿勢の変化に対してシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、横加速度相関情報判定手段は、車両の横加速度を検出する横加速度検出手段を備えると共に、横加速度相関情報値が、横加速度検出手段により検出された横加速度である。Gセンサ等の横加速度検出手段で検出される横加速度(横加速度相関情報値)は、車両に加わる遠心力及び車体の傾きに起因して走行中・停車中を問わず車両に作用する全ての横加速度である。したがって、本発明によれば、車両の走行中・停車中を問わず車両に作用する全ての横加速度を漏れなく検出できるため、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止する効果が高い。
【0024】
なお、車両に作用する横加速度には、車両の旋回中に車両に加わる遠心力によって発生する車幅方向の遠心加速度成分と、車体の水平からの傾きに応じて重力加速度を車幅方向にベクトル分解した傾斜成分とが含まれている。車体の水平からの傾きは、車両に加わる遠心力による車体のロール、車両の片荷状態、あるいは傾斜路面(横断勾配が大きい路面)等において発生する。
【0025】
請求項4に係る発明によれば、横加速度相関情報判定手段は、車両の車速を検出する車速検出手段と、車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段とを備えると共に、横加速度相関情報値が、車速及びヨーレイトの積として算出された遠心加速度である。上述したとおり、車両に作用する横加速度には、遠心加速度成分と傾斜成分とが含まれている。そして、車速及びヨーレイトの積として算出された遠心加速度は、この遠心加速度成分に相当する。
【0026】
一般に、シート上の乗員の位置や姿勢に影響を及ぼすほどに車体が大きく傾くことは希である。この点を考慮すれば、横加速度相関情報値として、横加速度に含まれる傾斜成分を無視して、横加速度に含まれる遠心加速度成分(遠心加速度)のみを用いたとしても、車両にある程度大きな横加速度が作用している状況を把握できる。したがって、請求項4に係る発明においても、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、横加速度相関情報判定手段は、車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段を備えると共に、横加速度相関情報値が、ヨーレイト検出手段により検出されたヨーレイトである。車体の回転角速度であるヨーレイトは、車両の旋回により発生する。上述したとおり、車両に作用する横加速度に含まれる遠心加速度成分(遠心加速度)は、車速及びヨーレイトの積として算出されるため、ヨーレイトは車両に作用する横加速度に対して正の相関をもつことが多い。したがって、請求項5に係る発明においても、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0028】
請求項6に係る発明によれば、横加速度相関情報判定手段は、車両の操舵角を検出する舵角検出手段を備えると共に、横加速度相関情報値が、車両の走行中に舵角検出手段により検出された操舵角である。右左折や急カーブ走行のように車両のハンドルを大きく操作するときには、車両に大きな遠心力が加わり、車両に作用する横加速度が大きくなりやすい。すなわち、車両の走行中の操舵角は車両に作用する横加速度に対して正の相関をもつことが多い。したがって、請求項6に係る発明においても、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0029】
なお、操舵角が大きくかつ車速が速いほど車両に大きな遠心力が加わる。上述したように車速及びヨーレイトの積が車両に作用する遠心加速度であることを考慮すると、車速及び操舵角の積は車両に作用する遠心加速度と高い相関があるといえる。よって、横加速度相関情報値を、車速及び操舵角の積とすることにより、請求項6に係る発明よりも、車両に作用する横加速度と横加速度相関情報値との相関が高くなるため、シート荷重判定精度の低下を防止する効果をより高くすることができる。
【0030】
請求項7に係る発明によれば、シート荷重判定装置は、請求項3〜6に記載の横加速度相関情報判定手段から選ばれる2つ以上を備えている。このように複数の横加速度相関情報判定手段を組み合わせることは、上述した効果を重ね合わせることとなるため、シート荷重判定装置のシート荷重判定精度の向上に寄与する。また、複数の横加速度相関情報判定手段を組み合わせることにより、ある横加速度相関情報判定手段に作動不良が発生したとしても他の横加速度相関情報判定手段が正常に作動するため、シート荷重判定装置の作動確実性が向上する。
【0031】
なお、多くの場合、車両には、Gセンサ等の横加速度検出手段、車速センサ等の車速検出手段、ヨーレイトセンサ等のヨーレイト検出手段、舵角センサ等の舵角検出手段が搭載されているため、車両に作用する横加速度を検出するための専用の検出手段を新たに車両に搭載する必要性は小さい。したがって、車両に本発明のシート荷重判定装置を装備するにあたって部品コスト及び組立コストが問題となる可能性は小さい。
【0032】
以上のように、本発明によれば、シートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出するシート荷重判定装置において、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止し得るシート荷重判定装置を提供することができる。
【0033】
以上のように、本発明によれば、シートの全支持部に作用する全荷重のうちの一部を検出して大人着座状態かチャイルドシート固縛状態かを判定するシート荷重判定装置において、シート上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止し得るシート荷重判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1実施形態のシート荷重判定装置を装備した車両を模式的に説明する説明図である。
【図2】第1実施形態のシート荷重判定装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】車両走行中の横加速度の発生状況を説明する説明図であって、(a)は平坦路面を直進している状況、(b)は平坦路面を右旋回している状況、(c)は平坦路面を左旋回している状況、(d)は左傾斜路面を直進している状況、(e)は右傾斜路面を直進している状況を示している。
【図4】第1実施形態のシート荷重判定フローチャートである。
【図5】第2実施形態のシート荷重判定フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のシート荷重判定装置の実施形態について図面を参照しつつ詳しく説明する。
<第1実施形態>
(1)シート荷重判定装置1の構成
図1に示す車両Cとしては、左ハンドルの車両Cを想定している。図1は車両Cを斜め上方から見た模式的な斜視図であり、シート荷重判定装置1によるシート荷重判定の対象となる助手席のシート9が見えるように、車体の屋根部を切り取って示されている。なお、運転席のシートは図示していない。シート荷重判定装置1によりシート9に着座する乗員などの荷重体のシート荷重判定を行い、この判定結果に基づいて助手席前面のダッシュボードに内蔵されたエアバッグAの展開が制御される。以下の説明において、上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0036】
シート9は、車両Cの前後方向に延在する一対のロアレール91及びアッパレール92からなるスライド機構により、前後に移動可能とされている。また、シート9のクッションに覆われた下部フレーム93は、その下面の4隅で支持部94〜97を介してアッパレール92に支持されている。
【0037】
図1に示すように、車両Cは、エンジンルーム内又は車室内に荷重判定ECU4(電子制御装置)を備えている。この荷重判定ECU4に、シート9に配設された2つの荷重センサ2F、2Rと、バックルスイッチ3とが接続されている。また、この荷重判定ECU4に、Gセンサ5(横加速度検出手段)と、車速センサ6(車速検出手段)と、ヨーレイトセンサ7(ヨーレイト検出手段)と、舵角センサ8(舵角検出手段)とが接続されている。
【0038】
図2に示すように、荷重判定ECU4は、荷重検出部4aと、走行検出部4bと、判定部4cと、エアバッグ制御部4dと、横加速度判定部4eと、遠心加速度判定部4fと、ヨーレイト判定部4gと、操舵角判定部4hとを備えている。
【0039】
本実施形態において、シート荷重判定装置1は、上述した各部材(各部)のうちの荷重センサ2F、2Rと、バックルスイッチ3と、Gセンサ5と、車速センサ6と、荷重判定ECU4内の荷重検出部4aと、走行検出部4bと、判定部4cと、エアバッグ制御部4dと、横加速度判定部4eとにより構成されている。なお、本実施形態においては、ヨーレイトセンサ7、舵角センサ8、遠心加速度判定部4f、ヨーレイト判定部4g、及び操舵角判定部4hを使用していないため説明を省略する。
【0040】
シート9の前方左の支持部94には荷重センサ2Fが、後方左の支持部96には荷重センサ2Rがそれぞれ配設されている。シート9の右側の前後に離間した2つの支持部95、97は単に荷重を支える構造となっている。両荷重センサ2F、2Rは歪みゲージ式のセンサであり、それぞれの電気出力EF、ERは、荷重判定ECU4の荷重検出部4aに取り込まれている。
【0041】
シートベルトの着脱状態を検出するバックルスイッチ3は、シート9に設けられたシートベルトを装着するためのバックル内に配設されており、出力されるバックル情報BSWが荷重判定ECU4の判定部4cに取り込まれている。
【0042】
荷重判定ECU4は、演算部、記憶部、入力部、出力部、などを備えてソフトウェアで動作する電子制御装置である。荷重判定ECU4内の後述する荷重検出部4a、走行検出部4b、判定部4c、エアバッグ制御部4d、及び横加速度判定部4eの各機能手段は、ソフトウェアを主体にして実現されている。
【0043】
Gセンサ5は、車両Cに作用する加速度を検出するセンサであり、X、Y、Zの3方向の加速度Gx、Gy、Gzを検出できるセンサである。Gセンサ5は、X方向を車両Cの前後方向、Y方向を車両Cの車幅方向、Z方向を車両Cの上下方向に向けた状態で、車両Cの重心位置付近に取り付けられている。Y方向の加速度Gyが車両Cに作用する横加速度であり、本発明の横加速度相関情報値に相当する。横加速度Gyには、車両Cに加わる遠心力及び車体の傾きに起因して走行中・停車中を問わず車両Cに作用する全ての横加速度が含まれている。横加速度Gyは、荷重判定ECU4の横加速度判定部4eに取り込まれている。
【0044】
車速センサ6は、車両Cの左右の車輪にそれぞれ一つずつ配設されており、車輪の回転状態を検出することにより車速Vを検出するセンサである。車速Vは、荷重判定ECU4の走行検出部4bに取り込まれている。
【0045】
荷重検出部4aは、荷重判定ECU4の入力部にあってA/D変換器を有し、両荷重センサ2F、2Rの電気出力EF、ERから所定の工学変換式により前方左の荷重値WF及び後方左の荷重値WR(いずれも単位はNまたはkgw)を求める。そして、荷重検出部4aにより、2つの荷重値WF、WRの和である荷重和WA(WF+WR)、及び2つの荷重値WF、WRの差である荷重差WB(=WR−WF)が算出されて出力される。ここで、荷重検出部4aは、所定のサンプリング周期で動作し、直近の複数の生データを平均化する移動平均処理を施して荷重和WA及び荷重差WBを出力する。
【0046】
ここで、予め荷重検出部4a、荷重値WF、荷重値WR、荷重和WA及び荷重差WBのゼロ点校正を行う。ゼロ点校正時には、車両Cが傾斜せずかつシート9に荷重体が載っていない基準状態において、両荷重センサ2F、2Rにシート9の自重の一部が作用している。そして、このときの電気出力EF、ERがゼロとなるようにレベル調整する。あるいは、電気出力EF、ERは非ゼロのままで荷重値WF、WRがゼロとなるように、荷重検出部4aの工学変換式の諸定数を定める。ゼロ点校正を行うことにより、荷重値WF、荷重値WR、荷重和WA及び荷重差WBは、シート9の自重を除外した荷重体のみに相当する量となる。
【0047】
走行検出部4bは、車速センサ6から出力された車速V、あるいは荷重検出部4aから出力された荷重差WBを基にして車両Cが走行中か停車中かを検出する部分である。車速Vに基づく検出は、言うまでもなく車速Vが出力されたときに走行中を検出することができる。一方、荷重差WBに基づく検出は、停車中の車両Cが発進したときの加速によって、左前方の荷重値WFが減少すると共に、左後方の荷重値WRが増加して、荷重差WB(=WR−WF)が増加する現象を利用する。すなわち、荷重差WBがあるレベル以上で所定時間にわたり所定の増加率以上で増加したときに車両Cが発進して走行中となったと判定する。走行検出部4bは、車両Cが走行中か停車中かの検出結果を荷重判定ECU4の判定部4cに出力する。
【0048】
なお、車両Cが走行中か停車中かを検出する方法は他にもある。例えば、Gセンサ5が検出する車両Cの前後方向の加速度Gxの変化に基づいて検出することもできるし、図略のアクセルセンサの検出信号に基づいて検出することもできる。
【0049】
判定部4cは、荷重検出部4aから出力された荷重和WA及び荷重差WBを各判定値と比較したり、荷重和WA及び荷重差WBの変動量(経時変化)を各判定値と比較したりすることによって、荷重体が「大人」である大人着座状態か、荷重体が「チャイルドシート」であるチャイルドシート固縛状態かを判定する。「大人」とは、小柄な成人女性以上の体重を有する大人を意味する。幼児を保持するための「チャイルドシート」は、シートベルトによりシート9に固縛される。荷重体の具体的な判定方法については、公知の技術等(特許文献2及び3等)を参照できるため説明を省略する。
【0050】
上述した荷重和WA及び荷重差WBの各判定値を車両Cの走行中と停車中とで異なる値とすることによってシート荷重判定精度が向上する場合があるため、判定部4cによるシート荷重判定は、車両Cが走行中か停車中かを区別して行う。
【0051】
判定部4cは、「大人」であるか「チャイルドシート」であるかの判定結果を、エアバッグ制御部4dに出力する。この出力は、所定の周期で繰り返されて新しい判定結果に更新される。ここで、後述する横加速度判定部4eから判定部4cに車両Cにある程度大きな横加速度Gyが作用しているという判定結果が出力されているときには、判定部4cは、シート荷重判定を行わない。このとき、既にエアバッグ制御部4dが記憶していた判定結果は、新しい判定結果に更新されることなく保持されている。
【0052】
エアバッグ制御部4dは、判定部4cの判定結果を受け取り次第、エアバッグ制御信号Sを出力し、判定結果が「大人」であればエアバッグAの事故時展開を許容し、「チャイルドシート」であればエアバッグAの事故時展開を禁止する。
【0053】
横加速度判定部4eは、Gセンサ5から出力された横加速度Gyの絶対値が所定値以下であるか否かを判定し、判定結果を判定部4cに出力する。横加速度Gyは、車両Cに実際に作用している横加速度に対して相関係数1の正の相関をもつ情報値であるため、本発明における横加速度相関情報値に相当する。Gセンサ5と横加速度判定部4eとにより本発明の横加速度相関情報判定手段10が構成されている。
【0054】
シート荷重判定装置1に備わる横加速度相関情報判定手段10によって、正確にシート荷重判定を行うことができなくなりそうな状況を極力排除することが可能となっている。車両Cにある程度大きな横加速度Gyが作用すると、シート9上の乗員の位置や姿勢が変化して、シート9の左右の支持部94〜97における荷重の左右分担比率が変化しやすくなる。この点について図3を参照しつつ説明する。
【0055】
図3(a)は車両Cが平坦路面を直進しているとき状況を模式的に示している。このとき横加速度Gy=0であり、シート9上の乗員が故意に動こうとしない限り、乗員の位置や姿勢が大きく変化することはない。この状態において荷重センサ2F、2Rの出力により得られる荷重和WAは、乗員等の荷重体の重量のほぼ1/2の値となっており、荷重和WAに基づいてシート荷重判定を正確に行うことが可能である。
【0056】
一方、横加速度Gy≠0である図3(b)〜(e)に示す各状況においては、シート9の左右の支持部94〜97における荷重の左右分担比率が変化して、荷重和WAが図3(a)に示す状況よりも増加(WA+α)又は減少(WA−α)する。このため、横加速度Gyがある程度大きい場合には、荷重和WAの増減も大きくなり、荷重和WAに基づいてシート荷重判定を正確に行うことができなくなる。
【0057】
ここで、図3(b)は車両Cが平坦路面を右旋回している状況を示しており、横加速度Gyがプラス方向(左側)に大きくなることによって荷重和WAが増加している。図3(c)は車両Cが平坦路面を左旋回している状況を示しており、横加速度Gyがマイナス方向(右側)に大きくなることによって荷重和WAが減少している。図3(d)は車両Cが左傾斜路面を直進している状況を示しており、重力加速度Ggを車幅方向にベクトル分解した傾斜成分としての横加速度Gyがプラス方向(左側)に大きくなることによって荷重和WAが増加している。図3(e)は車両Cが右傾斜路面を直進している状況を示しており、同様に傾斜成分としての横加速度Gyがマイナス方向(右側)に大きくなることによって荷重和WAが減少している。
【0058】
(2)シート荷重判定装置1の動作
次に、本実施形態のシート荷重判定装置1の動作について、図4のシート荷重判定フローチャートを参照しつつ説明する。シート荷重判定フローでは、まず、イグニッションスイッチがオンされるか、あるいはシートベルトが装着されてバックル情報BSWがオンされると、荷重判定ECU4における動作が開始される。次に、ステップS1で、両荷重センサ2F、2Rは電気出力EF、ERを出力し、荷重検出部4aは所定のサンプリング周期で検出した電気出力EF、ERから所定の工学変換式により荷重和WA及び荷重差WBを出力する。
【0059】
ステップS2で、走行検出部4bは、車速センサ6から出力された車速V、あるいは荷重検出部4aから出力された荷重差WBを基にして車両Cが走行中か停車中かを検出する。そして、車両Cが停車中と判定されたときにはステップS3を経てステップS4に移行する。また、車両Cが走行中と判定されたときにはステップS7を経てステップS8に移行する。
【0060】
ステップS4で、横加速度判定部4eは、Gセンサ5から出力された横加速度Gyの絶対値が所定値以下であるか否かを判定し、横加速度Gyの絶対値が所定値以下である場合には、判定結果を判定部4cに出力してステップS5に移行する。また、横加速度Gyの絶対値が所定値以下となっていない場合には、判定結果を判定部4cに出力することなくステップS2に戻る。
【0061】
ステップS5で、判定部4cは、荷重検出部4aから出力された荷重和WA及び荷重差WBを各判定値と比較したり、荷重和WA及び荷重差WBの変動量(経時変化)を各判定値と比較したりする。そして、ステップS6で、この比較結果に基づいて、荷重体が「大人」である大人着座状態か、荷重体が「チャイルドシート」であるチャイルドシート固縛状態かを判定する。荷重体が「大人」でも「チャイルドシート」でもない場合には「空席」と判定する。シート荷重判定後はステップS2に戻り、車両Cの発進までステップS2〜ステップS6が繰り返し実行される。繰り返しの途中で、シート荷重判定結果が変更になったときには、新しい判定結果に更新される。
【0062】
車両Cが発進すると、ステップS8で内蔵タイマの時間TをリセットしてT=0にした後、ステップS9に移行する。ステップS9では、ステップS4と同様に、横加速度Gyの絶対値が所定値以下であるか否かを判定する。横加速度Gyの絶対値が所定値以下である場合には、判定結果を判定部4cに出力してステップS10に移行する。また、横加速度Gyの絶対値が所定値以下となっていない場合には、判定結果を判定部4cに出力することなくステップS9を再度実行する。
【0063】
ステップS10及びステップS11は、ステップS5及びステップS6と同様であるため説明を省略する。ステップS11で荷重体が「大人」、「チャイルドシート」、「空席」のいずれに相当するか判定した後、ステップS12に移行する。ステップS12で時間Tが所定時間TAだけ経過したか否かを調べ、経過していなければステップS9に戻り判定を繰り返す。時間Tが所定時間TAだけ経過していればステップS13に移行する。
【0064】
時間Tが所定時間TAだけ経過するまでの期間のシート荷重判定結果は、更新されることなく全ての判定結果が判定部4cに記憶されており、ステップS13において、この期間中の全ての判定結果が同じ結果であったか否かを判定する。全ての判定結果が同じ結果である場合には、ステップS14において判定結果を確定させて動作を終了する。また、全ての判定結果が同じ結果とはなっていない場合には、シート9上の乗員が故意に大きく動いたり、走行中に乗員がシート9から移動したりしたものと判断してステップS8まで戻る。
【0065】
停車中及び走行中の別なく、「大人」、「チャイルドシート」及び「空席」の判定結果は逐次エアバッグ制御部4dに出力される。エアバッグ制御部4dは、判定結果を受け取り次第、エアバッグ制御信号Sを出力して、エアバッグAを制御する。
【0066】
なお、車両Cの停車中よりも走行中の方がエアバッグAを展開する必要性が高くなるため、走行中のシート荷重判定の誤判定を極力避ける必要がある。そこで、走行中のシート荷重判定フローには、ステップS13の判定を設けて、停車中よりも判定結果の確定を厳密にしている。ここで、所定時間TAを長くするほど判定結果の確定が厳密になり、所定時間TAをゼロに近づければ、停車中と同様に、逐次新しいシート荷重判定結果がエアバッグ制御部4dに出力されることになる。
【0067】
(3)シート荷重判定装置1の効果
このような本実施形態の構成によれば、車両Cのシート9を支持する複数の支持部94〜97のうち左側の前後に離間した2箇所の支持部94、96に荷重センサ2F、2Rが配設されている。そして、車両Cに作用する横加速度Gyを横加速度相関情報値として、横加速度Gyの絶対値が所定値以下であるときにのみ、荷重センサ2F、2Rが検出した荷重値WF、WRに基づいてシート荷重判定を行う。すなわち、車両Cにある程度大きな横加速度Gyが作用している状況においてはシート荷重判定を行わない。
【0068】
車両Cにある程度大きな横加速度Gyが作用すると、シート9上の乗員の位置や姿勢が変化して、シート9の左右の支持部94〜97における荷重の左右分担比率が変化しやすくなる。このような状況においては、荷重センサ2F、2Rが検出した荷重値WF、WRに基づいて正確にシート荷重判定を行うことができなくなる。本実施形態によれば、このような正確にシート荷重判定を行うことができなくなりそうな状況を極力排除することが可能となり、シート9上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0069】
また、本実施形態の構成によれば、前後に離間した2箇所の支持部94、96に荷重センサ2F、2Rが配設されているため、前後2箇所で検出された荷重値WF、WRを加算することによって、乗員やシート9の前後方向の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。したがって、上述した横加速度Gyが作用している状況においてはシート荷重判定を行わない構成と組み合わされることにより、乗員の前後左右方向の様々な位置や姿勢の変化に対してシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態の構成によれば、横加速度相関情報判定手段10は、車両Cの横加速度Gyを検出するGセンサ5を備えると共に、横加速度相関情報値が、Gセンサ5により検出された横加速度Gyである。Gセンサ5で検出される横加速度Gyには、車両Cに加わる遠心力及び車体の傾きに起因して走行中・停車中を問わず車両Cに作用する全ての横加速度が含まれている。したがって、本実施形態によれば、車両Cの走行中・停車中を問わず車両Cに作用する全ての横加速度を漏れなく検出できるため、シート9上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止する効果が高い。
【0071】
<第2実施形態>
図1及び2を参照しつつ本実施形態のシート荷重判定装置の構成を説明する。上述した第1実施形態においては、Gセンサ5と横加速度判定部4eとにより本発明の横加速度相関情報判定手段10を構成していたが、本実施形態においては、ヨーレイトセンサ7とヨーレイト判定部4gとにより本発明の横加速度相関情報判定手段10を構成している。その他の構成については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0072】
ヨーレイトセンサ7は、車両Cのヨーレイトγ(車体の回転角速度)を検出するセンサであり、ヨーレイトセンサ7の軸を車両Cの上下方向に合わせた状態で、Gセンサ5と同位置である車両Cの重心位置付近に取り付けられている。
【0073】
荷重判定ECU4内に備わるヨーレイト判定部4gは、ヨーレイトセンサ7から出力されたヨーレイトγの絶対値が所定値以下であるか否かを判定し、判定結果を判定部4cに出力する。
【0074】
上述したように、車両Cに作用する横加速度には、車両Cの旋回中に車両Cに加わる遠心力によって発生する車幅方向の遠心加速度成分と、車体の水平からの傾きに応じて重力加速度Ggを車幅方向にベクトル分解した傾斜成分とが含まれている。そして、車両Cの旋回により発生するヨーレイトγは、横加速度に含まれている遠心加速度成分に対して相関がある。
【0075】
一般に、シート9上の乗員の位置や姿勢に影響を及ぼすほどに車体が大きく傾くことは希であることを考慮すれば、多くの場合、横加速度に含まれている傾斜成分を無視したとしても差し障りない。このような考えに基づけば、車両Cの旋回により発生するヨーレイトγは、車両Cに作用する横加速度に対して正の相関をもつことが多いと考えることができる。
【0076】
次に、本実施形態のシート荷重判定装置の動作について、図5のシート荷重判定フローチャートを参照しつつ説明する。上述したとおりヨーレイトγは、車両Cの旋回により発生するため、本実施形態においては、車両Cの走行中にのみ横加速度相関情報判定手段10が機能する。よって、本実施形態のシート荷重判定フローは、図4に示した第1実施形態のシート荷重判定フローのステップS4に相当するステップを有していない。
【0077】
本実施形態のシート荷重判定フローにおけるステップSS1、SS2、SS3、SS4、SS5、SS6、SS7、SS9、SS10、SS11、SS12及びSS13は、第1実施形態のシート荷重判定フローにおけるステップS1、S2、S3、S5、S6、S7、S8、S10、S11、S12、S13及びS14とそれぞれ同様であるため説明を省略する。
【0078】
第1実施形態のシート荷重判定フローでは、ステップS9において、Gセンサ5から出力された横加速度Gyの絶対値が所定値以下であるか否かを判定していたが、本実施形態のシート荷重判定フローでは、ステップSS8においてヨーレイトセンサ7から出力されたヨーレイトγの絶対値が所定値以下であるか否かを判定している。
【0079】
このような本実施形態の構成によれば、横加速度相関情報判定手段10は、車両Cのヨーレイトγを検出するヨーレイトセンサ7を備えると共に、横加速度相関情報値が、ヨーレイトセンサ7により検出されたヨーレイトγである。
【0080】
上述したとおり、多くの場合、横加速度に含まれる傾斜成分を無視したとしても差し障りない。このような考えに基づけば、車両Cの旋回により発生するヨーレイトγは、車両Cに作用する横加速度に対して正の相関をもつことが多いと考えることができる。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、正確にシート荷重判定を行うことができなくなりそうな状況を極力排除することが可能となり、シート9上の乗員の位置や姿勢の変化に伴うシート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0081】
<その他の実施形態>
本発明のシート荷重判定装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができることは言うまでもない。
【0082】
例えば、第1及び第2実施形態においては、車両Cのシート9を支持する前後に離間した2箇所の支持部94、96に荷重センサ2F、2Rが配設されている。しかし、本発明の構成によれば、荷重センサの個数によらずシート荷重判定精度の低下を防止することができることから、荷重センサを配設する個数は限定されず、荷重センサの配設個数を1個のみにすることもできる。
【0083】
また、第1及び第2実施形態においては、バックルスイッチ3が検出したバックル情報BSWがオンされると、荷重判定ECU4における動作が開始される構成となっているが、バックルスイッチ3を配設しない構成とすることもできる。
【0084】
また、第1及び第2実施形態においては、荷重判定ECU4内に走行検出部4bを備えているが、走行検出部4bを備えることなく、車両Cが走行中か停車中かを区別することなしに判定部4cによるシート荷重判定を行うこともできる。
【0085】
また、第2実施形態においては、ヨーレイトセンサ7とヨーレイト判定部4gとにより本発明の横加速度相関情報判定手段10を構成している。しかし、車両Cに作用する横加速度に含まれている遠心加速度成分に対して相関がある横加速度相関情報値はヨーレイトγの他にもあり、横加速度相関情報判定手段10を以下の構成とすることもできる。
【0086】
例えば、横加速度相関情報判定手段10を、車速センサ6(車速検出手段)と、ヨーレイトセンサ7(ヨーレイト検出手段)と、荷重判定ECU4内の遠心加速度判定部4fとにより構成することもできる(図2参照)。そして、横加速度相関情報値を、車速V及びヨーレイトγの積として算出された遠心加速度Vγとして、遠心加速度判定部4fにより遠心加速度Vγの絶対値が所定値以下であるか否かを判定する構成とすることができる。遠心加速度Vγは、ヨーレイトγのみよりも、車両Cに作用する横加速度に対する相関が高いため、第2実施形態よりもシート荷重判定精度の低下を防止する効果を高めることができる。
【0087】
これとは別の構成として、例えば、横加速度相関情報判定手段10を、舵角センサ8(舵角検出手段)と、荷重判定ECU4内の操舵角判定部4hとにより構成することもできる(図2参照)。図1に示すように、舵角センサ8は、車両Cのハンドルの切れ角(操舵角δ)を検出するセンサであり、図略のステアリングシャフトに取り付けられている。そして、横加速度相関情報値を、車両Cの走行中に舵角センサ8により検出された操舵角δとして、操舵角判定部4hにより操舵角δの絶対値が所定値以下であるか否かを判定する構成とすることができる。
【0088】
走行中に車両Cのハンドルを大きく操作するときには、車両Cに大きな遠心力が加わり、車両Cに作用する横加速度が大きくなりやすい。すなわち、車両Cの走行中の操舵角δは車両Cに作用する横加速度に対して正の相関をもつことが多い。したがって、上述した構成により、第2実施形態と同様に、シート荷重判定精度の低下を防止することができる。
【0089】
なお、操舵角δが大きくかつ車速Vが速いほど車両Cに大きな遠心力が加わることを考慮すると、車速V及び操舵角δの積は車両Cに作用する遠心加速度と高い相関があるといえる。よって、横加速度相関情報値を、車速V及び操舵角δの積とすることにより、単に走行中の操舵角δを横加速度相関情報値とするよりも、車両Cに作用する横加速度と横加速度相関情報値との相関が高くなるため、シート荷重判定精度の低下を防止する効果をより高くすることができる。
【0090】
また、上述した横加速度Gy、ヨーレイトγ、遠心加速度Vγ又は操舵角δを横加速度相関情報値として用いる各横加速度相関情報判定手段10のうち2つ以上を組み合わせることもできる。複数の横加速度相関情報判定手段10を組み合わせることは、上述した効果を重ね合わせることとなるため、シート荷重判定装置1のシート荷重判定精度の向上に寄与する。また、ある横加速度相関情報判定手段10に作動不良が発生したとしても他の横加速度相関情報判定手段10が正常に作動するため、シート荷重判定装置1の作動確実性が向上する。
【符号の説明】
【0091】
1 …シート荷重判定装置 2F …前方左の荷重センサ
2R …後方左の荷重センサ 4c …判定部
5 …Gセンサ(横加速度検出手段) 6 …車速センサ(車速検出手段)
7 …ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出手段)
8 …舵角センサ(舵角検出手段) 9 …助手席のシート
94〜97…支持部 10 …横加速度相関情報判定手段
C …車両 Gy …横加速度(横加速度相関情報値)
V …車速 WF …前方左の荷重値
WR …後方左の荷重値 γ …ヨーレイト(横加速度相関情報値)
δ …操舵角(横加速度相関情報値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートを支持する複数の支持部のうち左右のいずれか一側の該支持部に配設されて該支持部に作用する荷重を検出する荷重センサと、
前記車両の車幅方向の加速度である横加速度に対して正の相関をもつ情報値を横加速度相関情報値として検出すると共に、該横加速度相関情報値の絶対値が所定値以下であるか否かを判定する横加速度相関情報判定手段と、
前記横加速度相関情報値の絶対値が前記所定値以下であるときにのみ、前記荷重センサが検出した前記荷重に基づいて、前記シートに大人が着座している大人着座状態か、前記シートにチャイルドシートが固縛されているチャイルドシート固縛状態かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とするシート荷重判定装置。
【請求項2】
前記荷重センサが、複数の前記支持部のうち左右のいずれか一側の前後に離間した2箇所の各該支持部に配設されている請求項1に記載のシート荷重判定装置。
【請求項3】
前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両の前記横加速度を検出する横加速度検出手段を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該横加速度検出手段により検出された該横加速度である請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置。
【請求項4】
前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段と、該車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段と、を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該車速及び該ヨーレイトの積として算出された遠心加速度である請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置。
【請求項5】
前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両のヨーレイトを検出するヨーレイト検出手段を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該ヨーレイト検出手段により検出された該ヨーレイトである請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置。
【請求項6】
前記横加速度相関情報判定手段は、前記車両の操舵角を検出する舵角検出手段を備えると共に、前記横加速度相関情報値が、該車両の走行中に該舵角検出手段により検出された該操舵角である請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置。
【請求項7】
請求項3〜6に記載の横加速度相関情報判定手段から選ばれる2つ以上を備える請求項1又は2に記載のシート荷重判定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate