説明

シート貼付装置及び貼付方法

【課題】接着シートの貼付不良を防止でき、接着シートの向きを容易且つ迅速に変更して貼付できるようにすること。
【解決手段】シート貼付装置10は、接着シートSを繰り出す繰出手段11と、この繰出手段11から繰り出される接着シートSを支持する支持手段12と、繰出手段11で繰り出される接着シートSと同じ方向に同じ速度で支持手段12を移動させる移動手段15と、支持手段12に一体的に設けられた押圧手段13と、支持手段12を接着シートSの平面内で回転可能に設けられた回転手段17と、この回転手段17の回転角度を制御する機能を有する制御手段19とを備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置及び貼付方法に係り、更に詳しくは、支持手段に支持された接着シートを被着体に押圧して貼付することができるシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被着体にラベル等の接着シートを貼付するシート貼付装置が広く利用されるに至っており、かかるシート貼付装置としては、例えば、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1のシート貼付装置は、帯状の剥離シートに仮着された接着シートをピールプレートにより剥離して接着シートを繰り出し可能な繰出手段と、この繰出手段から繰り出された接着シートを支持する支持手段と、この支持手段における接着シートの繰り出し方向下流側に設けられた押圧ローラと、支持手段を傾斜姿勢と水平姿勢との間で変位させる変位手段と、支持手段を水平方向に移動させる移動手段とを備えている。
【0003】
特許文献1のシート貼付装置において接着シートの貼付を行う場合、移動手段によって繰出手段から繰り出される接着シートと同じ方向に同じ速度で支持手段を移動させ、当該支持手段の吸引領域により接着シートを吸着支持させる。次に、被着体に対向する位置に、接着シートを吸着支持した支持手段を移動手段により移動させる。次いで、変位手段を作動して支持手段を傾斜姿勢とし、接着シートの一端側を押圧ローラで被着体に押圧した状態で、支持手段と被着体とを相対移動させて接着シートを被着体に貼付する。
【0004】
特許文献2のシート貼付装置は、一端側に押圧ローラが設けられて接着シートを吸着支持可能な支持手段を備えている。この支持手段は、回転機構を介して回転可能に設けられ、当該回転により押圧ローラの位置を変更可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−134020号公報
【特許文献2】特開2006−103047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1にあっては、図5(A)に示されるように、接着シートSの繰り出し方向下流側に支持手段50における押圧ローラ51が位置する。このため、ピールプレート52による剥離シートRLの折り返しに伴い、接着シートSが剥離されても、上方から吸着支持されることがないため、当該接着シートSの剥離初め領域が垂れ下がる傾向がある。そして、接着シートSと同じ方向に同速度で支持手段50が移動すると、同図(B)に示されるように、支持手段50の吸引領域がピールプレート52上から抜け出たときに、接着シートSの垂れ下がった領域を吸引領域が吸引してしまい、押圧ローラ51近傍で接着シートSが折れ曲がった状態で吸着支持されてしまう場合がある。このような状態のまま、接着シートSを被着体に貼付すると、接着シートSが押圧ローラ51で押圧されないことで接着シートSが貼付されなかったり、接着シートSが折れ曲がった状態のまま被着体に貼付されたりして接着シートSの貼付不良を発生してしまう、という不都合がある。
【0007】
ところで、特許文献2では、支持手段を回転して向きを変更できるものの、当該支持手段が繰り出し方向に移動可能となっていないため、図5や特許文献1のように、ピールプレート上で支持手段により接着シートを支持することができない。また、ねじを着脱することで、前記回転機構による回転の規制や解除を行うため、接着シートを支持してから貼付する一連の処理の中で、支持手段やこれに支持される接着シートの向きを変更できなくなる、という不都合を招来する。
【0008】
[発明の目的]
本発明の目的は、接着シートの貼付不良を防止することができ、接着シートの向き等を容易且つ迅速に変更して貼付することができるシート貼付装置及び貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、接着シートを繰り出す繰出手段と、この繰出手段から繰り出される接着シートを支持する支持手段と、繰出手段で繰り出される接着シートと同じ方向に同じ速度で支持手段を移動させる移動手段と、支持手段に一体的に設けられた押圧手段と、支持手段に支持された接着シートを押圧手段により被着体に押圧するように支持手段を変位可能な変位手段と、支持手段を接着シートの平面内で回転可能に設けられた回転手段と、この回転手段の回転角度を制御する機能を有する制御手段とを備える、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記制御手段は、前記支持手段を接着シートの貼付方向に応じた方向となるように、前記回転手段による回転角度を制御可能に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0011】
また、前記制御手段は、前記支持手段を前記繰出手段の接着シートの繰出方向に応じた方向となるように、前記回転手段による回転角度を制御可能に設けられる、という構成を採用してもよい。
【0012】
更に、前記制御手段は、前記支持手段を前記被着体の搬送方向に応じた方向となるように、前記回転手段による回転角度を制御可能に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0013】
また、本発明の貼付方法は、接着シートを繰り出す工程と、
繰り出される接着シートと同じ方向に同じ速度で支持手段を移動させて当該支持手段で接着シートを支持する工程と、
前記支持手段を接着シートの平面内で回転させる工程と、
前記支持手段及びこれに一体的に設けられた押圧手段を移動し、支持手段に支持された接着シートを押圧手段によって被着体に押圧して貼付する工程とを備える、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来のように接着シートの繰り出し方向下流側に押圧ローラが位置する状態を避けて、支持手段が接着シートを支持することができるため、接着シートの剥離初め領域が垂れ下がるようなことはなくなる。また、支持手段で接着シートを支持した後、当該接着シートの平面内で支持手段を回転可能としたので、被着体へ貼付する前の段階で接着シートの向きを簡単且つ迅速に変更できる。これにより、接着シート毎に貼付開始位置の向きを変更したり、被着体の搬送方向に応じて接着シートの向きを変更したりすることを容易に行うことが可能となる。
また、支持手段を、接着シートの貼付方向に応じた方向となるように回転させたり、繰出手段の接着シートの繰出方向に応じた方向に回転させたり、被着体の搬送方向に応じた方向に回転させたりすることで、接着シートの向き(接着シートが剥離シートに仮着されている向き)や被着体の搬送方向を考慮して装置の配置を決定する必要がなくなり、設計の自由度が増すという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るシート貼付装置の概略正面図。
【図2】シート貼付装置の動作説明図。
【図3】シート貼付装置の動作説明図。
【図4】支持手段の向きを模式的に示した説明用平面図。
【図5】(A)及び(B)は、従来例の不具合説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」は、図1を基準として用いる。
【0017】
図1〜図4において、シート貼付装置10は、被着体Wに貼付するための接着シートSを繰り出す繰出手段11と、この繰出手段11から繰り出される接着シートSを支持する支持手段12と、この支持手段12に一体的に設けられた押圧手段13と、これら支持手段12及び押圧手段13を左右方向に移動させる移動手段15と、この移動手段15に支持された変位手段16及び回転手段17と、前記各手段を制御する制御手段19とを備えて構成されている。なお、シート貼付装置10は、左方向に被着体Wを搬送可能なベルトコンベア等からなる搬送手段20の上方に図示しないフレーム等を介して設けられている。
【0018】
前記繰出手段11は、帯状の剥離シートRLに接着シートSが所定間隔を隔てて仮着されたロール状の原反Rを支持する支持軸21と、この支持軸21ら繰り出された原反Rの剥離シートRLを折り返して当該剥離シートRLから接着シートSを剥離するピールプレート22と、ピールプレート22を経た後の剥離シートRLを挟み込む駆動ローラ24及びピンチローラ25と、これらを通過した後の剥離シートRLを図示しない駆動源によって所定のトルクで巻き取る巻取軸26とを備えている。駆動ローラ24は、モータMを介して回転可能に設けられている。
【0019】
前記支持手段12は、下面側に図示しない吸着孔を備えた吸着ヘッド28からなり、当該吸着孔が図示しない吸引ポンプに接続されて接着シートSを吸着支持可能に設けられている。
【0020】
前記押圧手段13は、吸着ヘッドの28の右端側の図1中紙面直交方向両側に連結さられたブラケット31と、このブラケット31介して回転可能に支持された押圧ローラ32とを有する。押圧ローラ32の下端は、吸着ヘッド28の下面と同じ高さとされ、これにより、吸着ヘッド28に吸着支持されてフラットとなる接着シートS右端側が押圧ローラ32の下端に接するようになっている。なお、押圧ローラ32に接する接着シートSの端部が当該接着シートSの貼付開始端となる。
【0021】
前記移動手段15は、スライダ15Aを左右方向に移動可能な直動モータと、スライダ15Aに連結された直動モータ34とからなり、直動モータ34の出力軸34Aの先端に回転手段17が支持されている。
【0022】
前記変位手段16は、フレームFと、このフレームFと吸着ヘッド28との間に設けられたヒンジ29と、シリンダ35とを備えている。シリンダ35は、ヒンジ29の回転中心をその回転中心として吸着ヘッド28を回動可能に設けられ、これにより、吸着ヘッド28が水平姿勢と傾斜姿勢との間で変位可能となっている。
【0023】
前記回転手段17は、直動モータ34の出力軸34Aと変位手段16のフレームFとの間に設けられた回動モータからなり、接着シートSの平面内で吸着ヘッド28を回転可能に設けられている。
【0024】
前記制御手段19は、シーケンサやパーソナルコンピュータ等で構成することができる。制御手段19には、操作パネル等からなる図示しない入力手段が接続され、この入力手段により各手段の作動条件やデータ等を入力可能となっている。また、制御手段19は、繰出手段11による接着シートSの繰出タイミング、吸着ヘッド28による接着シートSの支持及びその解除、移動手段15、直動モータ34、シリンダ35の移動方向、移動量、移動速度等を制御する機能の他、回転手段17の回転速度、回転角度、回転方向等を制御する機能を備えている。
【0025】
次に、本実施形態に係る接着シートSの貼付方法について説明する。
【0026】
被着体Wが搬送手段20によって図1中左方向に搬送されてピールプレート22先端下方の所定位置に達すると、図示しないセンサによって検知されて被着体Wの搬送が停止される。一方、繰出手段11において、接着シートSの直上位置に吸着ヘッド28を位置させた後、直動モータ34を作動させ、吸着ヘッド28の下面を接着シートS上面に当接せる。次に、図示しない吸引ポンプを作動させて吸着ヘッド28下面で接着シートSを吸着支持させる。このとき、図1に示されるように、押圧ローラ32の最下点に接着シートSの右端が位置するように支持手段12が位置制御される。
【0027】
次いで、モータMを駆動させて接着シートSを繰り出すとともに、この接着シートSの繰出方向と同じ方向、且つ、同じ速度で移動手段15を駆動させて支持手段12を移動させる。これにより、接着シートSは、ピールプレート22によって図1中左端から徐々に剥離され、剥離された接着シートSは、吸着ヘッド28に吸着されることとなる。その後、支持手段12は、ピールプレート22の左側に離れた位置まで移動される。
【0028】
この状態で、制御手段19を介して回転手段17を作動させ、図2中二点鎖線で示されるように、搬送手段20による被着体Wの搬送方向と、接着シートSの貼付開始位置とに応じた向きになるよう吸着ヘッド28を回転させる。本実施形態では、接着シートSの平面内で吸着ヘッド28を180°回転させ、吸着ヘッド28の左側に押圧ローラ32を位置させる。その後、直動モータ34を作動させて吸着ヘッド28を下降させた後、シリンダ35を作動させることにより、吸着ヘッド28がヒンジ29を介して回動して水平姿勢から図3に示される左下がりの傾斜姿勢となる。これにより、吸着ヘッド28に吸着支持された接着シートSの同図中左端側が押圧ローラ32によって被着体Wに押圧されて貼付される。その後、搬送手段20により被着体Wを図3中左方向に搬送することで、押圧ローラ32が接着シートSの上面を左端側から右端側に転動することで、接着シートSの全領域が被着体Wに向かって押圧されて貼付される。
【0029】
ここで、接着シートSを支持する際の吸着ヘッド28の向きは変更可能であり、例えば、図4に示されるようにしてもよい。同図では、制御手段19を介して回転手段17を作動させ、吸着ヘッド28を接着シートSの繰出方向に対して90°回転させた状態で接着シートSを支持させている。これにより、接着シートSの繰出方向すなわち図4中左右方向と押圧ローラ32の軸線方向とが平行となるような向きに吸着ヘッド28が回転され、接着シートSの貼付開始端が図4中下方となる。なお、このような場合、支持手段12と接着シートSとを図4中上下方向に相対移動させる位置決め手段を設けることが望ましい。このように、接着シートSの繰出方向や接着シートSの貼付開始位置に応じて回転手段17の回転角度を制御することで、図1のように接着シートSの繰出方向下流側に押圧ローラ32を位置させたり、繰出方向と平行に押圧ローラ32の軸線方向を向けたりして接着シートSを支持することができる。
なお、図4では、平面視で被着体Wの搬送方向が接着シートSの繰出方向と直交する方向になっており、吸着ヘッド28で接着シートSを支持した後、制御手段19により回転手段17を作動させて吸着ヘッド28を180°回転させることで、接着シートSの貼付が行えるよう対応可能となっている。
【0030】
従って、このような実施形態によれば、吸着ヘッド28で支持した後で回転手段17により吸着ヘッド28を回転するので、吸着ヘッド28で接着シートSを支持するときにしわが発生し難いような向きとすることができ、且つ、接着シートS貼付時の吸着ヘッド28の向きの自由度を高めることができる。これにより、接着シートS毎に貼付開始位置の向きが異なっていたり、被着体W毎に搬送方向が異なっていても、これに難なく対応することが可能となる。
【0031】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0032】
例えば、前記回転手段17は、前述と同様の機能を有する限りにおいて、種々の設計変更が可能である。
【0033】
また、前記移動手段15は、単軸ロボット、エアシリンダ、油圧シリンダ等の駆動手段に代えてもよい。
【0034】
更に、被着体Wを撮像する撮像手段を設けて、搬送されて来た被着体Wの向きを検知し、この検知結果に応じて制御手段19が回転手段17を介して支持手段12を回転させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 シート貼付装置
11 繰出手段
12 支持手段
13 押圧手段
15 移動手段
16 変位手段
17 回転手段
19 制御手段
S 接着シート
W 被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シートを繰り出す繰出手段と、この繰出手段から繰り出される接着シートを支持する支持手段と、繰出手段で繰り出される接着シートと同じ方向に同じ速度で支持手段を移動させる移動手段と、支持手段に一体的に設けられた押圧手段と、支持手段に支持された接着シートを押圧手段により被着体に押圧するように支持手段を変位可能な変位手段と、支持手段を接着シートの平面内で回転可能に設けられた回転手段と、この回転手段の回転角度を制御する機能を有する制御手段とを備えていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記支持手段を接着シートの貼付方向に応じた方向となるように、前記回転手段による回転角度を制御可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記支持手段を前記繰出手段の接着シートの繰出方向に応じた方向となるように、前記回転手段による回転角度を制御可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート貼付装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記支持手段を前記被着体の搬送方向に応じた方向となるように、前記回転手段による回転角度を制御可能に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載のシート貼付装置。
【請求項5】
接着シートを繰り出す工程と、
繰り出される接着シートと同じ方向に同じ速度で支持手段を移動させて当該支持手段で接着シートを支持する工程と、
前記支持手段を接着シートの平面内で回転させる工程と、
前記支持手段及びこれに一体的に設けられた押圧手段を移動し、支持手段に支持された接着シートを押圧手段によって被着体に押圧して貼付する工程とを備えていることを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−46427(P2011−46427A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197919(P2009−197919)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】