説明

シート貼付装置及び貼付方法

【課題】接着シートの貼り残しの発生を防止することができるようにすること。
【解決手段】シート貼付装置10は、接着シートSを保持可能に設けられた保持手段13と、接着シートSを被着体Wの被着面W0に貼付する貼付手段12とを備えて構成されている。貼付手段12は、保持手段13で保持された接着シートSの一部を第1貼付面に押圧して貼付可能な第1貼付部15と、第1貼付部15で貼り残された接着シートS部分をを第2貼付面に押圧して貼付する第2貼付部16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着面に接着シートを貼付することができるシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、平滑でない被着面に接着シートを貼付するシート貼付装置が利用されるに至っており、かかるシート貼付装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1のシート貼付装置は、ラベル等の接着シートを保持しつつ、被着体の被着面の形状に応じて弾性変形可能な弾性部材を備え、接着シート貼付時に弾性部材が変形しながら接着シートに押圧力を付与する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−286928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の貼付装置では、図7に示されるように、弾性部材50で接着シートSを押圧しても、被着体Wにおける突条部WAの外側において、弾性部材50は接着シートSの端部領域に対して十分な押圧力を付与できないため、接着シートSの端部領域が側面W4に貼付されずに貼り残しが発生する、という不都合がある。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、接着シートの貼り残しの発生を防止することができるシート貼付装置及び貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、第1貼付面および第2貼付面を備えた被着面に接着シートを貼付するシート貼付装置において、
前記接着シートは、基材シートの一方の面に接着剤層を備え、
前記接着シートを保持可能に設けられた保持手段と、前記接着シートを被着面に押圧して貼付する貼付手段とを備え、
前記貼付手段は、前記保持手段で保持された接着シートの一部を第1貼付面に押圧して貼付可能な第1貼付部と、前記第1貼付部で貼り残された接着シート部分を第2貼付面に押圧して貼付可能な第2貼付部とを有する、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記接着シートは、接着剤層に剥離シートが仮着され、
前記保持手段は、前記剥離シートが部分的に剥離された状態の接着シートを保持可能に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
また、前記第2貼付部は、接着シートから部分的に剥離された状態の剥離シートを徐々に剥離しながら前記第2貼付面に接着シートを押圧して貼付可能に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0009】
更に、前記保持手段は、保持する接着シートに仮着された剥離シートを折り曲げ、当該剥離シートに折り癖を付ける癖付け部を備える、という構成を採ってもよい。
【0010】
また、本発明のシート貼付方法は、第1貼付面および第2貼付面を備えた被着面に接着シートを貼付するシート貼付方法において、
前記接着シートは、基材シートの一方の面に接着剤層を備え、
前記接着シートを保持する工程と、
保持された前記接着シートの一部を第1貼付面に押圧して貼付する工程と、
前工程で貼り残された前記接着シート部分を第2貼付面に押圧して貼付する工程とを行う、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1貼付部で第1貼付面に接着シートの一部を押圧して貼付した後、第2貼付部で貼り残された接着シート部分を第2貼付面に押圧して貼付することができる。従って、第1貼付部における貼付により接着シートに貼り残しがあっても、当該貼り残した領域を第2貼付部で貼付でき、当該貼り残しが発生することを防止することが可能となる。
【0012】
また、剥離シートが部分的に剥離された状態の接着シートを保持手段が保持できるので、貼付する接着シートの態様が増え汎用性が増す。更に、第2貼付部で剥離シートを剥離しながら貼付を行えるので、第2貼付部での貼付前に接着シートが意図しない箇所に貼付することを回避することができる。これにより、接着シートに皺が生じたり、被着体との間に気泡が混入したりする貼付不良が発生することを抑制することが可能となる。
【0013】
また、保持手段が癖付け部を有する場合、剥離シートに折り癖をつけることが簡単且つ短時間で行うことができ、また、折り曲げ位置を一定に保って剥離シートの剥離ひいては接着シートの貼付を安定的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るシート貼付装置の概略正面図。
【図2】前記シート貼付装置の概略側面図。
【図3】前記シート貼付装置の概略斜視図。
【図4】(A)〜(C)は、接着シートの貼付要領の説明図。
【図5】(A)及び(B)は、接着シートの貼付要領の説明図。
【図6】接着シートの貼付要領の説明図。
【図7】従来例に係る接着シートの貼付要領の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書の方向若しくは位置を示す用語は、特に明示しない限り、図1を基準とし、「前」とは同図中手前側を示す一方、「後」とは、同奥行き側について用いられ、「左」、「右」、「上」、「下」も同様に正面から見た場合を基準とする。
【0016】
図1〜図3において、シート貼付装置10は、被着体Wを固定する固定台Bの上方に並設されている。シート貼付装置10は、接着シートSを被着体Wの被着面W0に貼付する貼付手段12と、この貼付手段12に設けられて接着シートSを保持する保持手段13と、貼付手段12および被着体Wを相対移動可能に設けられた移動手段14とを備えて構成されている。接着シートSは、基材シートBSと、この基材シートBSの一方の面に設けられた接着剤層ADとを備え、この接着剤層ADに剥離シートRLが仮着されている。剥離シートRLの左右方向中央部には、前後方向に延びるスリットRL1が設けられ、このスリットRL1により剥離シートRLが左右に分割可能となる。
【0017】
前記被着体Wは、上面側に位置する主面W1と、この主面W1の左右両側に連接する内側面W2と、各内側面W2からそれぞれ左右方向に連接する天面W3と、各天面W3からそれぞれ下方向に連接する外側面W4とを備え、内側面W2と天面W3と外側面W4の上方の一部とで突条部WAが形成される。なお、本実施形態では、主面W1と各内側面W2と各天面W3と各外側面W4とが被着面W0とされる。
【0018】
前記貼付手段12は、主面W1及び突状部WAの表面からなる第1貼付面に接着シートを押圧して貼付する第1貼付部15と、外側面W4の突上部WA外側表面よりも下方に位置する第2貼付面に接着シートSの貼り残し部を貼付する第2貼付部16と、これら第1及び第2貼付部15、16を支持してそれらの向きを変更可能な切替手段18とを備えている。
【0019】
前記第1貼付部15は、発泡ウレタンやゴム、合成樹脂等の弾性変形可能な弾性部材23と、弾性部材23を上方から支持するとともに、切替手段18に取り付けられる正面視下向きU字型の支持体24とを備えている。弾性部材23下面の左右幅は、主面W1の左右幅よりも若干小さく、かつ、天面W3の左右幅よりも大きく設けられている。
【0020】
前記第2貼付部16は、一対の押さえ面部26と、これら押さえ面部26を連結するとともに、切替手段18に取り付けられる連結面部27とを備えている。各押さえ面部26の内面間距離は、被着体Wの各側面W3の距離と略同一に設定されている。
【0021】
前記切替手段18は、後述する直動モータ20の出力軸に支持された側面視下向きU字型のブラケット29と、このブラケット29に設けられた駆動機器としての回動モータMと、この回動モータMの出力軸にカップリング35及び軸34を介して連結されて回転可能に設けられるとともに、第1貼付部15及び第2貼付部16が取り付けられた回転体30とを備えている。
【0022】
前記保持手段13は、支持体24の左右両面にそれぞれ設けられ前後方向に延びる板状の挟持部材32と、各挟持部材32の上方に取り付けられ、挟持部材32における下部の左右方向への揺動を可能に設けられたヒンジ部33と、挟持部材32の下部が支持体24に接近するように付勢する図示しないばねやゴム等からなる付勢手段とを備えている。これにより、接着シートSの左右両端側が支持体24と挟持部材32との間に挟み込まれて保持可能となる。なお、挟持部材32は、剥離シートRLの癖付け部を構成し、図4(A)の二点鎖線で示されるように、保持された接着シートSに仮着された剥離シートRLをスリットRL1から剥離し、挟持部材32の下部で折り曲げることで、剥離シートRLに折り癖を付けることが可能となる。
【0023】
前記移動手段14は、切替手段18を上方から支持して貼付手段12を上下方向に移動可能にし、かつ、接着シートSに押圧力を付与する駆動機器としての直動モータ20と、この直動モータ20を左側から支持して当該直動モータ20を左右方向に移動可能支持する駆動機器としての直動モータ21とを備えている。なお、直動モータ21は、図示しないフレームに支持されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る接着シートSの貼付方法について説明する。
【0025】
先ず、図1に示されるように、剥離シートRLが仮着された接着シートSの基材シートBS側が弾性部材23の下面側及び左右両面側に位置するように巻き付け、支持体24と挟持部材32との間に剥離シートRL及び接着シートSの左右両端側を挟み込ませる。
【0026】
次に、図4(A)に示されるように、剥離シートRLをスリットRL1から剥がし、同図の二点鎖線で示すように、挟持部材32の下部で剥離シートRLに折り癖を付ける。このように、剥離シートRLに折り癖をつけることで、接着シートSと被着体Wとの間に剥離シートを挟み込んで貼り付けを行ってしまうことを防止し、後に剥離シートRLを剥離し易くすることが可能となる。
【0027】
次いで、直動モータ21の作動により、保持した接着シートSの中心を被着面W0の中心かつ直上位置に移動して位置決めした後、直動モータ20の作動によって貼付手段12を下降させる。この下降により、先ず、弾性部材23によって接着シートSが主面W1に押圧される。そして、更に下降を継続することにより、図4(B)に示されるように、主面W1及びこれに連なる左右の内側面W2の形状に応じて弾性部材23が変形し、それら主面W1及び内側面W2に接着シートSが押圧されて貼付される。
【0028】
この貼付を終えた後、図4(C)に示されるように、直動モータ20の作動により、貼付手段12を上昇させる。この上昇により、支持体24と挟持部材32とで挟み込まれていた剥離シートRL及び接着シートSは、それらの間から抜け出ることとなるが、接着シートSに仮着された剥離シートRLが外側面W4に当接することで、接着シートSが天面W3やその他の領域に接着することを確実に防止することができる。
【0029】
次に、直動モータ21の作動により、右側の天面W3直上位置に貼付手段12を移動させた後、直動モータ20の作動によって貼付手段12を下降させる。これにより、図5(A)に示されるように、弾性部材23により接着シートSが天面W3と外側面W4の上部に押圧されて貼付される。このとき、接着シートSの貼り残し部は、下側外向きに湾曲した形状を呈するようになり、剥離シートRLは、接着シートSの端部と外側面W4との間で湾曲した形状をなす。次いで、他方の天面W3と外側面W4の上部においても、前述と同様に貼付を行う。
【0030】
次いで、直動モータ20の作動により貼付手段12を上昇させ、回動モータMの作動により、第2貼付部16が下向きとなるように回転体30を回転させる。そして、直動モータ21の作動によって、貼付手段12を被着面W0の直上位置に移動して位置決めした後、直動モータ20の作動によって貼付手段12を下降させ、図5(B)に示されるように、一対の押さえ面部26により接着シートSの貼り残し部を各外側面W4の下方に向かって押圧しながら貼り付けを行う。このとき、接着シートSに仮着された剥離シートRLは、接着シートSの貼付の進行とともに当該接着シートSから剥離され、図6に示されるように、接着シートSの全面が貼付面W0に貼付される。
【0031】
従って、このような実施形態によれば、第1貼付部15での貼付を終えた後、第2貼付部で外側面W4に接着シートSを押圧して貼付するので、貼り残しが発生することを防止することができる。しかも、接着シートSにおける貼り残し部に剥離シートRLを仮着させたまま貼付することができるので、接着シートSを徐々に被着体に貼付することができ、接着シートSと被着体Wとの間に気泡が入ったり、接着シートSに皺が形成されたりして貼付されることを防止できる。
【0032】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0033】
例えば、保持手段13は、前述のように接着シートS及び剥離シートRLを保持できる限りにおいて、種々の変更が可能であり、弾性部材23に吸着手段を設けて吸着保持したり、支持体24および挟持部材32に磁石を設けて磁力を介して挟持するようにしたりしてもよい。
【0034】
更に、剥離シートRLに折り癖を付ける工程は、前述と同様に貼付を行えるのであれば省略してもよいが、折り癖を付けた方が、第2貼付部16による貼付がスムースに行い易くなる点で有利となる。
【0035】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【0036】
更に、移動手段14は、貼付手段12を上下左右に移動可能にする駆動機器としての直動モータ20,21を設けたが、前後方向の位置決めを可能にする駆動機器を設けてもよい。また、移動手段14は、被着体Wを固定する固定台B側に設けてもよいし、貼付手段12および固定台Bの両方に設けてもよい。
【0037】
また、一対の押さえ面部26の内面間距離は、全ての領域で略同一である必要はなく、先端付近の内面間距離が各外側面W4の距離と略同一で連結面部27に向かうにつれて内面間距離が広くなるように設けてもよい。更に、一対の押さえ面部26は、板状部材でなくローラーやブラシで構成させていてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態における被着体Wは、主面Wの両端に突状部WAを有するが、片側のみに突状部WAがに設られたものでもよいし、突状部WAが設けられていないものでもよい。
また、接着シートSの接着剤層ADに剥離シートRLが仮着されていないものを貼付の対象とすることもできる。
【符号の説明】
【0039】
10 シート貼付装置
12 貼付手段
13 保持手段
15 第1貼付部
16 第2貼付部
32 挟持部材(癖付け部)
AD 接着剤層
BS 基材シート
RL 剥離シート
RL1 スリット
S 接着シート
W 被着体
W0 被着面
WA 突条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1貼付面および第2貼付面を備えた被着面に接着シートを貼付するシート貼付装置において、
前記接着シートは、基材シートの一方の面に接着剤層を備え、
前記接着シートを保持可能に設けられた保持手段と、前記接着シートを被着面に押圧して貼付する貼付手段とを備え、
前記貼付手段は、前記保持手段で保持された接着シートの一部を第1貼付面に押圧して貼付可能な第1貼付部と、前記第1貼付部で貼り残された接着シート部分を第2貼付面に押圧して貼付可能な第2貼付部とを有することを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記接着シートは、接着剤層に剥離シートが仮着され、
前記保持手段は、前記剥離シートが部分的に剥離された状態の接着シートを保持可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記第2貼付部は、接着シートから部分的に剥離された状態の剥離シートを徐々に剥離しながら前記第2貼付面に接着シートを押圧して貼付可能に設けられていることを特徴とする請求項2記載のシート貼付装置。
【請求項4】
前記保持手段は、保持する接着シートに仮着された剥離シートを折り曲げ、当該剥離シートに折り癖を付ける癖付け部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート貼付装置。
【請求項5】
第1貼付面および第2貼付面を備えた被着面に接着シートを貼付するシート貼付方法において、
前記接着シートは、基材シートの一方の面に接着剤層を備え、
前記接着シートを保持する工程と、
保持された前記接着シートの一部を第1貼付面に押圧して貼付する工程と、
前工程で貼り残された前記接着シート部分を第2貼付面に押圧して貼付する工程とを行うことを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14351(P2013−14351A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147184(P2011−147184)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(503410627)株式会社コーセン社 (4)
【Fターム(参考)】