シート重送防止ゴムローラ
【課題】従来のゴムローラよりも大きなニップ幅を確保することができ、さらには耐久性が高く、製作コスト上有利なシート供給装置用のシート重送防止ゴムローラを提供する。
【解決手段】シート面と接触してシートの重送を防止するシート重送防止ゴムローラ11は、単層の発泡ウレタンゴムで形成され、内周面12nに切り欠き14が形成された円筒体12と、円筒体12の内周面に固定される軸部材13とを備える。
【解決手段】シート面と接触してシートの重送を防止するシート重送防止ゴムローラ11は、単層の発泡ウレタンゴムで形成され、内周面12nに切り欠き14が形成された円筒体12と、円筒体12の内周面に固定される軸部材13とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚ずつシートを搬送するシート供給装置に用いられるシート重送防止ゴムローラに関し、特に、シートが重なって搬送されることを防止する重送防止に使用されるシート重送防止ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター、レーザープリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構に使用される紙送りローラとしては従来、例えば、特開2005−35732号公報(特許文献1)に記載のごときゴムローラが知られている。特許文献1に記載のゴムローラは、ゴムローラの中空部に軸芯を装着したものであって、ゴムローラの内周面を梨地面あるいはローレット面とし、かかる内周面の表面粗さRmaxを0.05〜2.0mmとするとともに内周面の表面粗さを外周面の表面粗さ以上とし、かつ、JIS K6253に準拠するショアA硬度を20以上60以下としたものである。この紙送りローラは回転しながら紙またはフィルムと接触して、これらを回転方向へ搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−35732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した各種プリンター等には、印刷のための紙やフィルム等のシートが多数枚積み重なったシート束が装填されており、このシート束の上から1枚ずつシートを引き出して印刷機構へ搬送するシート供給装置を具備することが常套である。かかるシート供給装置にあっては、上記従来のようなゴムローラが回転しながらシートの表面と接触してこのシートを搬送方向へ引き出している。具体的には、図10に示すように、1枚ずつシートを引き出す紙送りローラ91と、この紙送りローラ91との間にシートを挟むゴムローラRとを備える。そしてゴムローラRは紙送りローラ91との間に1枚のシートを挟み、これら紙送りローラ91およびゴムローラRが協働して回転することにより1枚のシートを矢印の向きに搬送する。
【0005】
この場合、一番上の現在引き出されているシート101の裏面に次に引き出し予定のシート102が付着して重送されないように、トルクリミッタやワンウエイクラッチが連結され、シート102の搬送を阻止するとともに、シート101のみを矢印の向きに搬送する。
【0006】
一方で近年、シートの印刷および搬送の高速化の要求が高まっている。しかしながら、上記従来のようなゴムローラでは、重送が生じ易いという問題があった。つまりシートの重送を防止するためには、ニップ幅Nが大きく、シート102とゴムローラRとの摩擦係数μ1がシート101とシート102との摩擦係数をμ2より大きいことが必要であるが、ゴムローラのゴムを柔らかくしてニップ幅Nを大きくすれば、シートとの摩擦によってゴムが摩耗して耐久性が悪化してしまう。また、異なる種類のゴム層を張り合わせて複数層のゴムローラを製作することも考えられるが、コスト高を招来してしまう。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、重送を確実に防止することができ、さらには耐久性が高く、製作コスト上有利なシート供給装置用のシート重送防止ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明によるシート重送防止ゴムローラは、シート面と接触してシートの重送を防止するシート重送防止ゴムローラであって、単層の発泡ウレタンゴムで形成され、内周面に切り欠きが形成された円筒体と、円筒体の内周面に固定される軸部材とを備える。
【0009】
かかる本発明によれば、単層の発泡ウレタンゴムで形成された円筒体の内周面に切り欠きが形成されることから、円筒体の内周部分の弾性変形を生じ易くしてシートから円筒体の外周に作用する径方向力が小さな力であっても円筒体の弾性変形を大きくすることが可能になる。したがって、ニップ幅を従来のゴムローラよりも大きくすることができ、付着したシートを確実に押さえ込んで重送を防止することができる。
【0010】
また、単層のゴムで形成された円筒体を有することから、製作が容易であり、複数層で構成されるゴムローラと比較して製作コスト上有利である。
【0011】
しかも、円筒体が発泡ウレタンゴムで形成されていることから円筒体の弾力性およびシートに対する摩擦係数を向上させることが可能になり、シートを確りと押さえることができる。この結果、シートの重送を確実に防止することができる。
【0012】
ここで好ましくは、切り欠きの深さが円筒体の外周面から内周面までの径方向厚みの15〜50%であり、円筒体のアスカーC硬度が60〜75であるとよい。
【0013】
本発明は一実施形態に限定されるものではなく、切り欠きの形状は限定されない。また、切り欠きが連続して形成されてもよく、規則的な模様を描くように所定間隔で複数個所形成されてもよい。好ましい実施形態として、切り欠きは、円筒体の軸線方向に沿って延び周方向所定間隔で配置される複数の溝である。これにより、ニップ幅を大きくすることが可能になり、重送を確実に防止することができる。
【0014】
より好ましい実施形態として溝の断面形状が外径に向かうほど溝幅が小さくなる形状である。あるいは、溝の断面形状が溝幅一定の長方形である。これにより、ニップ幅をより大きくすることが可能になる。また円筒体の製作時に円筒体を脱型し易い。この結果、本発明にかかるシート重送防止ゴムローラの製作が容易になる。
【0015】
本発明によれば、大きなニップ幅を確保することと円筒体の径方向厚みを小さくすることの両立が可能になり、スペース制約上有利である。そこで本発明の好ましい実施形態として、軸部材は、円筒体の内周に固定された円筒状の回転体と、回転体を回転可能に支持する中心軸とを有し、回転体と中心軸との間で所定のトルク範囲内で回転を伝達するトルクリミッタを含んでもよい。
【0016】
従来のゴムローラでは、ニップ幅Nを大きくするにはゴム部分の外周面から内周面までの径方向厚みを大きくするしかなく、ゴム部分が大型化していた。また従来のレイアウト構成は図11に示すように中心軸上の一方と他方にトルクリミッタTLあるいはワンウエイクラッチとゴムローラRとを直列に配置し、ゴムローラRの端部をトルクリミッタTLあるいはワンウエイクラッチに連結固定していた。
【0017】
これに対し本発明の実施形態によれば円筒体の内部にトルクリミッタを設けることから、従来のレイアウトよりも優位なレイアウトを提供することが可能になる。したがって、シート供給装置の軸線方向寸法を小型化することが可能になる。あるいは本発明の実施形態として、軸部材はワンウエイクラッチでもよい。ワンウエイクラッチとして例えば、外周に円筒体を備え、中心軸に支持されて一方向のみ回転可能なワンウエイクラッチがある。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明のシート重送防止ゴムローラは、円筒体の内周面に切り欠きが形成されることから、ニップ幅を上記従来のゴムローラよりも大きくすることができ、シートを確りと押さえて重送を確実に防止することができる。また円筒体が発泡ウレタンゴムで形成されることから、弾力性に富み、シートに対する摩擦係数を大きくしてシートを確実に押さえることができる。また、円筒体が単層のゴムで形成されることから製作コスト上有利である。
【0019】
したがって本発明によれば、印刷および搬送の高速化の要求を満足しつつ重送を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施例になるシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図である。
【図2】同実施例のシート重送防止ゴムローラを備えたシート供給装置が、1枚ずつシートを引き出す様子を模式的に示す説明図であって、(A)は紙送りローラ91とシート重送防止ローラ11との間に複数のシートが送り込まれている状態を示す図であり、(B)は1枚のシートのみが送り込まれている状態を示す図である。
【図3】実施例2のシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図であ
【図4】ニップ幅の確認試験の様子を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図5】ニップ幅の確認試験結果を示す図表である。
【図6】ニップ幅の確認試験結果をプロットしたグラフである。
【図7】摩擦係数の計測方法を模式的に示す正面図である。
【図8】本発明の変形例を示す正面図である。
【図9】本発明の他の実施例になるシート重送防止ゴムローラを模式的に示す説明図である。
【図10】従来のゴムローラを備えたシート供給装置が、1枚ずつシートを引き出す様子を模式的に示す説明図である。
【図11】従来のトルクリミッタ付ゴムローラを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1はこの発明の1実施例になるシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図である。また図2(A)(B)は同実施例のシート重送防止ゴムローラを備えたシート供給装置が、1枚ずつシートを引き出す様子を模式的に示す説明図であって、(A)は紙送りローラ91とシート重送防止ローラ11との間に複数のシートが送り込まれている状態を示す図であり、(B)は1枚のシートのみが送り込まれている状態を示す図である。
【0022】
シート重送防止ゴムローラ11は円筒体12および軸部材13を備える。円筒体12は円筒形状であって、内周面12nおよび外周面12g間を単層のゴムで形成される。ゴムの種類は多孔質の発泡ウレタンゴムである。
【0023】
またシートとの摩擦係数をなるべく大きくしつつ、耐摩耗性も確保することができるよう、外周面12gのアスカーC硬度を60〜75とし、より好ましくは67〜73とする。円筒体12の外周面12gは、紙送りローラ91とともに所定のニップ圧で図2(A)に示すようにシート束111から搬送されるシート102を押さえる。アスカーC硬度を60〜75とすることによって、シートの搬送に対して円筒体12の摩耗を少なくすることが可能になる。
【0024】
円筒体12の内周面12nには切り欠き14が形成される。切り欠き14は円筒体12の軸線方向に沿って延び周方向所定間隔で配置される複数の溝である。切り欠き14の深さ(径方向寸法)を、円筒体12の径方向厚みの15%〜50%とする。ここで切り欠き14の深さを50%よりも大きくすれば、円筒体12の腰がなくなるため避けるべきである。また切り欠き14の深さを15%よりも小さくすれば、ニップ幅を確保できないため避けるべきである。
【0025】
切り欠き14が溝である場合の断面形状は長方形(正方形を含む)、内径側が長辺で外径側の溝底が短辺の台形(等脚台形を含む)、内径側が短辺で外径側の溝底が長辺の台形(等脚台形を含む)、あるいは半円形(楕円を含む)であってよい。また図示はしないが、ドット状の切り欠きを周方向および軸線方向に所定間隔で配置してもよい。あるいは、ドット状の突起を周方向および軸線方向に所定間隔で配置することにより、これら突起同士間に切り欠きを連続させて形成してもよい。
【0026】
内周面12nには切り欠き14を残して軸部材13の外周面13gが貼着される。軸部材13は円筒体12の両端から突出するように円筒体12を貫通する。また軸部材13は円筒形状の形状であり、金属製または硬質プラスチィック製である。
【0027】
シート重送防止ゴムローラ11は、図2に示すように多数のシート101,102・・・・が積み重なったシート束111の上から1枚ずつシートを引き出すシート供給装置81に用いられる。シート101,102,103・・・は紙であってもよいし、紙以外のフィルムであってもよい。
【0028】
図2(A)を参照して、紙送りローラ91とシート101との摩擦係数をμ0とし、シート重送防止ゴムローラ11とシート102との摩擦係数をμ1とし、シート101とシート102との摩擦係数をμ2としたとき、摩擦係数μ0、μ1、および、μ2の関係は、μ0>μ1>μ2となるように設定されている。
【0029】
シート供給装置81はシート束111に隣接配置され、シート束111の最も上にあるシート101を矢印の向きに引き出す紙送りローラ91と、シート101を介して紙送りローラ91と平行に配置されるシート重送防止ゴムローラ11とを有する。
【0030】
軸部材の一方に図示しないワンウエイクラッチが直列に配置されている。シート供給装置81は図示しない重送検出センサをさらに有し、重送検出センサによってワンウエイクラッチの動作を制御している。図2(B)に示すように、紙送りローラ91とシート重送防止ローラ11との間にシート101のみが送り込まれているとき、シート重送防止ゴムローラ11は紙送りローラ91と連れ回り、これらローラ11,91が共に回転して、シート101は引き出される。
【0031】
紙送りローラ91の外周面は円筒体12ほど容易に弾性変形しない。これに対しシート重送防止ゴムローラ11は切り欠き14によって外周面12gが容易に弾性変形する。これにより円筒体12は、紙送りローラ91からニップ圧を受けて、外周面12gがシート101,102に沿った平坦面に弾性変形し、ニップ幅Nを大きく取ることができる。
【0032】
図2(A)に示すように、引き出し中のシート101の裏面に別のシート102が付着していることを重送検出センサが検出すると、ワンウエイクラッチの動作でシート重送防止ゴムローラ11の回転が停止する。それにより、別のシート102は把持され、シート101のみがシート102の上を摺動しながら引き出される。
【0033】
シート101が完全に引き出されて紙送りローラ91よりも矢印の方向に搬送されると、続いてシート102を矢印の方向に同様に引き出す。このようにして順次、上からシートを搬送する。
【0034】
本実施例のシート重送防止ゴムローラにつき、ニップ幅の確認試験を行った。
【0035】
この確認試験では、図4に示すように透明なガラス板Gと、試験体Tになる実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2のシート重送防止ゴムローラを準備する。そして、試験体Tにニップ圧を発生させる押し付け力Fを与えて試験体Tの外周をガラス板Gの表面に押し付け、押し付け力Fを150gf、250gf、350gfと変化させながら、試験体Tのニップ幅Nをガラス板Gの裏面から計測した。
【0036】
実施例1のゴムローラは図1に示す通りであり、切り欠き14の断面形状が長方形である。図3は実施例2のシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図であり、実施例2の切り欠き14の断面形状は、外径に向かうほど溝幅が小さくなる台形である。本発明になる実施例1および実施例2が円筒体の切り欠きを内周面に有するのに対し、従来からある比較例1および比較例2は切り欠きを内周面に有しない。
【0037】
また、これら試験体Tの円筒体の径方向厚みは、比較例1、実施例1、および実施例2が3mmであり、比較例2が5mmである。また、これら試験体Tの円筒体の内径はいずれも、13.8mmである。なお、この内径は切り欠きの溝深さを含まない。実施例1の切り欠き溝の断面形状は正方形であり、内径側の溝幅および外径側の溝底部の幅が1.0mmであり、径方向の溝深さが1.0mmである。また、実施例2の切り欠き溝の断面形状は、内径側の溝幅が1.5mmであり、径方向の溝深さが1.0mmであり、外径側の溝底部の幅が0.8mmである。したがって実施例1および実施例2の切り欠きの溝深さは円筒体の外周面から内周面までの径方向厚みの33%である。また、実施例1および実施例2の切り欠き溝の数を、20個とする。
【0038】
図5は試験結果を示す図である。また図6はこの試験結果をプロットしたグラフである。
【0039】
比較例1と実施例1とを比較する。比較例1では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2mm、250gfのときにニップ幅Nが3mm、350gfのときにニップ幅Nが3.5mmであった。これに対し実施例1では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2.5mm、250gfのときにニップ幅Nが5mm、350gfのときにニップ幅Nが7mmであった。この結果、本発明になる実施例1によれば大きなニップ幅が得られることがわかった。
【0040】
比較例1と実施例2とを比較する。実施例2では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2.5mm、250gfのときにニップ幅Nが5mm、350gfのときにニップ幅Nが6.5mmであった。この結果、本発明になる実施例2によっても大きなニップ幅が得られることがわかった。
【0041】
実施例1と実施例2とを比較する。この結果、切り欠き溝の断面形状が長方形の場合のニップ幅は、台形の場合よりも大きいことがわかった。
【0042】
比較例2と実施例1とを比較する。比較例2では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2.5mm、250gfのときにニップ幅Nが4.5mm、350gfのときにニップ幅Nが6mmであった。この結果、本発明になる実施例1および実施例2によれば円筒体の径方向厚みを小さくすることと同等の効果が得られることがわかった。
【0043】
この確認試験の結果から、切り欠きを有しない比較例1および比較例2のニップ幅Nよりも、切り欠きを有する実施例1および実施例2のニップ幅Nが大きいことがわかった。また、実施例2(台形)のシート重送防止ゴムローラのニップ幅Nより、実施例1(長方形)のシート重送防止ゴムローラのニップ幅Nがさらに大きいこと、つまり切り欠きの断面形状を長方形にすることによって大きなニップ幅Nを確保できることがわかった。
【0044】
また比較例2、実施例1、および実施例2のように、径方向厚みを5mmから3mmに小さくしても、大きなニップ幅Nを確保できることがわかった。また、円筒体の径方向厚み3mmに対し切り欠きの深さを1mmとすること、つまり切り欠きの深さ比率を33%とすることにより、大きなニップ幅Nを確保することができることがわかった。したがって、15%〜50%の範囲に属する切り欠きの深さ比率の好ましい数値範囲は、30%〜36%である。
【0045】
次に実施例1および比較例1のシート重送防止ゴムローラにつき、通紙試験を行った。
【0046】
この通紙試験では、所定枚数の白紙および黒ベタ紙を搬送(以下、通紙という)する毎に、試験体のアスカーC硬度、外径、外周面の摩擦係数、紙鳴き、および重送回数を確認した。これを通紙速度150mm/sおよび300mm/sについて試験し、耐久性能を評価した。
【0047】
この通紙試験では、複写機(富士ゼロックス株式会社製:機種名Apeos Port 450 I (登録商標))と、シートになる日本工業規格A4型コピー用紙(富士ゼロックス株式会社製:商品名グリーン70)の白紙および黒ベタ紙を複数枚と、新品の試験体2本を用意した。試験体は、切り欠きを有する図1に示す実施例1と、この実施例1と同じ寸法形状であって切り欠きがない比較例1である。なお、白紙とは未使用の紙をいい、黒ベタ紙とは複写機を用いて白紙の表面全体に真黒な印刷を施したものをいう。
【0048】
この通紙試験の手順は、アスカーC硬度、試験体の外径、および摩擦係数を計測した新品の試験体(シート重送防止ゴムローラ)を、上記の複写機に取り付け、通紙速度150mm/sで白紙を50枚通紙し、この時の試験体の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。つづいて黒ベタ紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。次に通紙速度を300mm/sに変更して白紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。つづいて黒ベタ紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。これにより、初回サイクルの計測が終了した。
【0049】
次のサイクルとして、通紙速度150mm/sで白紙を5000枚通紙し、試験体のアスカーC硬度、試験体の外径、および摩擦係数を計測した。そして、上述したように通紙速度150mm/sで白紙50枚を通紙してこの時の紙鳴きの有無および重送回数を計測し、つづいて黒ベタ紙を50枚通紙してこの時の紙鳴きの有無および重送回数を計測し、次に通紙速度を300mm/sに変更して白紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。つづいて黒ベタ紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。これにより、5000枚通紙後の計測が終了した。
【0050】
次のサイクルとして、新品時から数えて10000枚通紙し(つまり上記5000枚通紙後の計測から数えてさらに5000枚を通紙し)、試験体のアスカーC硬度、試験体の外径、および摩擦係数を計測した。そして、上述したように通紙速度150mm/sで白紙50枚および黒ベタ紙50枚を通紙し、通紙速度300mm/sで白紙50枚および黒ベタ紙50枚を通紙し、それぞれの時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。これにより、このサイクルの計測が終了した。これにより、10000枚通紙後の計測が終了した。
【0051】
以下同様に、新品時から数えて50000枚通紙後の計測と、新品時から数えて100000枚通紙後の計測と、新品時から数えて300000枚通紙後の計測とを行った。なお、比較例1については、100000枚通紙後まで計測した。
【0052】
ここで摩擦係数の計測方法につき付言すると、図7に示すように、試験体Tをフッ素樹脂プレートPに力F(F=250gf)で押し付け、これら試験体TとプレートPとの間に上述の白紙Yを挟み込む。白紙Yの先端はロードセルLと接続する。そして温度23℃、相対湿度55%の条件下で試験体Tを矢印の向きに駆動し、試験体Tを周速度848mm/sで回転させる。このとき、白紙Yを引き込む矢印の向きの力FrをロードセルLで測定する。摩擦係数μは以下の式で表される。
【0053】
μ=Fr/F ・・・・・(1)
表1は実施例1(切り欠きあり)の計測結果を示す図表であり、表2は比較例1(切り欠きなし)の計測結果を示す図表である。これらの図表において、○は紙鳴きが生じなかったことを表し、×は紙鳴きが生じたことを表す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1のシート重送防止ゴムローラによれば表1に示すように、アスカーC硬度は新品時で67〜73であり、300000枚通紙後で71〜74であった。また外径は新品時で19.948mmであり、300000枚通紙後で19.922mmであった。また摩擦係数は新品時で0.996であり、300000枚通紙後で1.063であった。
【0057】
紙鳴きおよび重送回数は、白紙および黒ベタ紙のいずれの場合にも、新品時から300000枚通紙後まで一切生じなかった。
【0058】
したがって、実施例1のシート重送防止ゴムローラによれば、300000枚通紙後であっても品質の変化がなく、紙鳴きおよび重送回数を確実に防止することができる。
【0059】
次に比較例1のシート重送防止ゴムローラによれば表2に示すように、アスカーC硬度は新品時で79であり、100000枚通紙後で81であった。また外径は新品時で19.980mmであり、100000枚通紙後で19.972mmであった。また摩擦係数は新品時で0.867であり、100000枚通紙後で0.846であった。
【0060】
紙鳴きは、白紙および黒ベタ紙のいずれの場合にも、新品時から100000枚通紙後まで一切生じなかった。
【0061】
ただし重送回数は、白紙および黒ベタ紙のいずれの場合にも、50000枚通紙以降に生じるようになり、特に、通紙速度300mm/sでは、50000枚通紙以降で重送が頻発するようになった。
【0062】
アスカーC硬度67〜73(新品時)およびアスカーC硬度71〜74(300000枚通紙時)の実施例1と、アスカーC硬度79(新品時)およびアスカーC硬度81(300000枚通紙時)の比較例1とを比較する。この通紙試験の結果から、実施例1のシート重送防止ゴムローラは、50000枚通紙以降で比較例1との優位性が明らかになり、顕著な重送防止性能を発揮することがわかった。したがって、シート重送防止ゴムローラの好ましいアスカーC硬度は60〜75であり、より好ましいアスカーC硬度は67〜73であることがわかった。
【0063】
次に本発明の変形例を説明する。図8は変形例になるシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図である。この変形例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明すると、切り欠き14の断面形状が外径に向かうほど溝幅が小さくなる形状である。また隣り合う切り欠き14,14間の内周面が内径方向に突出した突条15となる。周方向所定間隔で配設された突条15は、軸線方向に向かって延び、断面が半円形状である。
【0064】
別の変形例になるシート重送防止ゴムローラ11も、円筒体12の径方向厚みを従来よりも小さくしつつ、ニップ幅を従来よりも大きく確保することができる。また円筒体12の製作時において容易に脱型することができる。
【0065】
図9は本発明の他の実施例によるシート重送防止ゴムローラを模式的に示す説明図である。この実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。異なる構成について以下に説明すると、軸部材13が円筒体12の内周に固定された回転体13bと、回転体13bを回転可能に支持する中心軸13aとを有する。回転体13bを貫通する中心軸13aの外周と、回転体13bの内周との間には、図示しない永久磁石およびヒステリシス材が配置され、これにより軸部材13はトルクリミッタを構成する。トルクリミッタは中心軸から回転体に所定のトルク範囲内で回転を伝達し、所定のトルク範囲を越えると回転の伝達を遮断する。
【0066】
次に、図9の実施例によるシート重送防止ゴムローラを図2(A)(B)のシート供給装置に適用した場合の動作について説明する。トルクリミッタが回転を伝達できる所定のトルク範囲は、紙送りローラの回転が直接またはシート1枚のみを介在させて伝達されるトルクよりも小さく、シート2枚以上を介在させて伝達されるトルクよりは大きく設定されている。
【0067】
中心軸13aは紙送りローラ91の回転方向とは逆方向に回転し続けている。紙送りローラ91とシート重送防止ゴムローラ11との間にシートが送り込まれていない状態、または1枚のシート101のみが送り込まれている状態(図2(B))では、紙送りローラ91によって回転体13bに所定以上のトルクがかかるため、円筒体12は中心軸13aとは逆方向に連れ回りする。一方、紙送りローラ91とシート重送防止ゴムローラ11との間に2枚以上のシートが送り込まれている状態(図2(A))では、シート101とシート102との摩擦係数μ2が小さいため、トルクリミッタには所定範囲内のトルクしか作用せず、円筒体12は中心軸13aと同方向、すなわち紙送りローラ91とは逆方向に回転し、重送したシートを押し戻すことができる。
【0068】
図11は従来のトルクリミッタ付ゴムローラを模式的に示す説明図である。従来のゴムローラRはゴム製の円筒体R1の径方向厚みを大きく確保しなければならなかったため、従来のゴムローラRの軸線方向に隣接してトルクリミッタTLを直列配置しなければならなかった。従来のゴムローラRはゴム製の円筒体R1と、円筒体R1の内周面に固定される内筒R2を備えていた。またトルクリミッタTLは内筒R2の一端と連結していた。そしてシャフト状の中心軸Xが、直列に配置されたトルクリミッタTLおよび内筒R2の中心孔を貫通して、トルクリミッタTLの中心部と結合していた。このため従来のトルクリミッタ付ゴムローラは大型で大きなスペースを占有していた。
【0069】
図6に示す比較例2と実施例1の確認試験の結果からわかるように、図9に示す他の実施例のシート重送防止ゴムローラ11によれば、円筒体12の径方向厚みを小さくすることが可能であって、回転体13bを含みトルクリミッタを構成する軸部材13を、円筒体12の中に内蔵することができる。したがって、トルクリミッタを取り付けることによるスペースの増大を回避して省スペース化を図ることができる。
【0070】
ここで付言すると、軸部材13はトルクリミッタに代えてワンウエイクラッチでもよい。この場合、回転体13bの外周面には円筒体12の内周面が貼着され、中心軸13aは回転体13bを正回転可能に支持する。このため、回転体13bの逆回転は規制される。
【0071】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。本発明のシート重送防止ゴムローラは紙の他、プラスチックシートの重送を防止することができる。本発明の技術的思想は上述したローラ形状の重送防止部材に適用可能である他、図示しないパッド形状の重送防止部材にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明になるシート重送防止ゴムローラは、シート供給装置において有利に利用される。
【符号の説明】
【0073】
11 シート重送防止ゴムローラ、12 円筒体、12n 円筒体内周面、13 軸部材、13a 中心軸、13b 回転体(トルクリミッタあるいはワンウエイクラッチ)、13g 軸部材外周面、14 切り欠き、15 突条。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚ずつシートを搬送するシート供給装置に用いられるシート重送防止ゴムローラに関し、特に、シートが重なって搬送されることを防止する重送防止に使用されるシート重送防止ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター、レーザープリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構に使用される紙送りローラとしては従来、例えば、特開2005−35732号公報(特許文献1)に記載のごときゴムローラが知られている。特許文献1に記載のゴムローラは、ゴムローラの中空部に軸芯を装着したものであって、ゴムローラの内周面を梨地面あるいはローレット面とし、かかる内周面の表面粗さRmaxを0.05〜2.0mmとするとともに内周面の表面粗さを外周面の表面粗さ以上とし、かつ、JIS K6253に準拠するショアA硬度を20以上60以下としたものである。この紙送りローラは回転しながら紙またはフィルムと接触して、これらを回転方向へ搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−35732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した各種プリンター等には、印刷のための紙やフィルム等のシートが多数枚積み重なったシート束が装填されており、このシート束の上から1枚ずつシートを引き出して印刷機構へ搬送するシート供給装置を具備することが常套である。かかるシート供給装置にあっては、上記従来のようなゴムローラが回転しながらシートの表面と接触してこのシートを搬送方向へ引き出している。具体的には、図10に示すように、1枚ずつシートを引き出す紙送りローラ91と、この紙送りローラ91との間にシートを挟むゴムローラRとを備える。そしてゴムローラRは紙送りローラ91との間に1枚のシートを挟み、これら紙送りローラ91およびゴムローラRが協働して回転することにより1枚のシートを矢印の向きに搬送する。
【0005】
この場合、一番上の現在引き出されているシート101の裏面に次に引き出し予定のシート102が付着して重送されないように、トルクリミッタやワンウエイクラッチが連結され、シート102の搬送を阻止するとともに、シート101のみを矢印の向きに搬送する。
【0006】
一方で近年、シートの印刷および搬送の高速化の要求が高まっている。しかしながら、上記従来のようなゴムローラでは、重送が生じ易いという問題があった。つまりシートの重送を防止するためには、ニップ幅Nが大きく、シート102とゴムローラRとの摩擦係数μ1がシート101とシート102との摩擦係数をμ2より大きいことが必要であるが、ゴムローラのゴムを柔らかくしてニップ幅Nを大きくすれば、シートとの摩擦によってゴムが摩耗して耐久性が悪化してしまう。また、異なる種類のゴム層を張り合わせて複数層のゴムローラを製作することも考えられるが、コスト高を招来してしまう。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、重送を確実に防止することができ、さらには耐久性が高く、製作コスト上有利なシート供給装置用のシート重送防止ゴムローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明によるシート重送防止ゴムローラは、シート面と接触してシートの重送を防止するシート重送防止ゴムローラであって、単層の発泡ウレタンゴムで形成され、内周面に切り欠きが形成された円筒体と、円筒体の内周面に固定される軸部材とを備える。
【0009】
かかる本発明によれば、単層の発泡ウレタンゴムで形成された円筒体の内周面に切り欠きが形成されることから、円筒体の内周部分の弾性変形を生じ易くしてシートから円筒体の外周に作用する径方向力が小さな力であっても円筒体の弾性変形を大きくすることが可能になる。したがって、ニップ幅を従来のゴムローラよりも大きくすることができ、付着したシートを確実に押さえ込んで重送を防止することができる。
【0010】
また、単層のゴムで形成された円筒体を有することから、製作が容易であり、複数層で構成されるゴムローラと比較して製作コスト上有利である。
【0011】
しかも、円筒体が発泡ウレタンゴムで形成されていることから円筒体の弾力性およびシートに対する摩擦係数を向上させることが可能になり、シートを確りと押さえることができる。この結果、シートの重送を確実に防止することができる。
【0012】
ここで好ましくは、切り欠きの深さが円筒体の外周面から内周面までの径方向厚みの15〜50%であり、円筒体のアスカーC硬度が60〜75であるとよい。
【0013】
本発明は一実施形態に限定されるものではなく、切り欠きの形状は限定されない。また、切り欠きが連続して形成されてもよく、規則的な模様を描くように所定間隔で複数個所形成されてもよい。好ましい実施形態として、切り欠きは、円筒体の軸線方向に沿って延び周方向所定間隔で配置される複数の溝である。これにより、ニップ幅を大きくすることが可能になり、重送を確実に防止することができる。
【0014】
より好ましい実施形態として溝の断面形状が外径に向かうほど溝幅が小さくなる形状である。あるいは、溝の断面形状が溝幅一定の長方形である。これにより、ニップ幅をより大きくすることが可能になる。また円筒体の製作時に円筒体を脱型し易い。この結果、本発明にかかるシート重送防止ゴムローラの製作が容易になる。
【0015】
本発明によれば、大きなニップ幅を確保することと円筒体の径方向厚みを小さくすることの両立が可能になり、スペース制約上有利である。そこで本発明の好ましい実施形態として、軸部材は、円筒体の内周に固定された円筒状の回転体と、回転体を回転可能に支持する中心軸とを有し、回転体と中心軸との間で所定のトルク範囲内で回転を伝達するトルクリミッタを含んでもよい。
【0016】
従来のゴムローラでは、ニップ幅Nを大きくするにはゴム部分の外周面から内周面までの径方向厚みを大きくするしかなく、ゴム部分が大型化していた。また従来のレイアウト構成は図11に示すように中心軸上の一方と他方にトルクリミッタTLあるいはワンウエイクラッチとゴムローラRとを直列に配置し、ゴムローラRの端部をトルクリミッタTLあるいはワンウエイクラッチに連結固定していた。
【0017】
これに対し本発明の実施形態によれば円筒体の内部にトルクリミッタを設けることから、従来のレイアウトよりも優位なレイアウトを提供することが可能になる。したがって、シート供給装置の軸線方向寸法を小型化することが可能になる。あるいは本発明の実施形態として、軸部材はワンウエイクラッチでもよい。ワンウエイクラッチとして例えば、外周に円筒体を備え、中心軸に支持されて一方向のみ回転可能なワンウエイクラッチがある。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明のシート重送防止ゴムローラは、円筒体の内周面に切り欠きが形成されることから、ニップ幅を上記従来のゴムローラよりも大きくすることができ、シートを確りと押さえて重送を確実に防止することができる。また円筒体が発泡ウレタンゴムで形成されることから、弾力性に富み、シートに対する摩擦係数を大きくしてシートを確実に押さえることができる。また、円筒体が単層のゴムで形成されることから製作コスト上有利である。
【0019】
したがって本発明によれば、印刷および搬送の高速化の要求を満足しつつ重送を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施例になるシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図である。
【図2】同実施例のシート重送防止ゴムローラを備えたシート供給装置が、1枚ずつシートを引き出す様子を模式的に示す説明図であって、(A)は紙送りローラ91とシート重送防止ローラ11との間に複数のシートが送り込まれている状態を示す図であり、(B)は1枚のシートのみが送り込まれている状態を示す図である。
【図3】実施例2のシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図であ
【図4】ニップ幅の確認試験の様子を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図5】ニップ幅の確認試験結果を示す図表である。
【図6】ニップ幅の確認試験結果をプロットしたグラフである。
【図7】摩擦係数の計測方法を模式的に示す正面図である。
【図8】本発明の変形例を示す正面図である。
【図9】本発明の他の実施例になるシート重送防止ゴムローラを模式的に示す説明図である。
【図10】従来のゴムローラを備えたシート供給装置が、1枚ずつシートを引き出す様子を模式的に示す説明図である。
【図11】従来のトルクリミッタ付ゴムローラを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。図1はこの発明の1実施例になるシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図である。また図2(A)(B)は同実施例のシート重送防止ゴムローラを備えたシート供給装置が、1枚ずつシートを引き出す様子を模式的に示す説明図であって、(A)は紙送りローラ91とシート重送防止ローラ11との間に複数のシートが送り込まれている状態を示す図であり、(B)は1枚のシートのみが送り込まれている状態を示す図である。
【0022】
シート重送防止ゴムローラ11は円筒体12および軸部材13を備える。円筒体12は円筒形状であって、内周面12nおよび外周面12g間を単層のゴムで形成される。ゴムの種類は多孔質の発泡ウレタンゴムである。
【0023】
またシートとの摩擦係数をなるべく大きくしつつ、耐摩耗性も確保することができるよう、外周面12gのアスカーC硬度を60〜75とし、より好ましくは67〜73とする。円筒体12の外周面12gは、紙送りローラ91とともに所定のニップ圧で図2(A)に示すようにシート束111から搬送されるシート102を押さえる。アスカーC硬度を60〜75とすることによって、シートの搬送に対して円筒体12の摩耗を少なくすることが可能になる。
【0024】
円筒体12の内周面12nには切り欠き14が形成される。切り欠き14は円筒体12の軸線方向に沿って延び周方向所定間隔で配置される複数の溝である。切り欠き14の深さ(径方向寸法)を、円筒体12の径方向厚みの15%〜50%とする。ここで切り欠き14の深さを50%よりも大きくすれば、円筒体12の腰がなくなるため避けるべきである。また切り欠き14の深さを15%よりも小さくすれば、ニップ幅を確保できないため避けるべきである。
【0025】
切り欠き14が溝である場合の断面形状は長方形(正方形を含む)、内径側が長辺で外径側の溝底が短辺の台形(等脚台形を含む)、内径側が短辺で外径側の溝底が長辺の台形(等脚台形を含む)、あるいは半円形(楕円を含む)であってよい。また図示はしないが、ドット状の切り欠きを周方向および軸線方向に所定間隔で配置してもよい。あるいは、ドット状の突起を周方向および軸線方向に所定間隔で配置することにより、これら突起同士間に切り欠きを連続させて形成してもよい。
【0026】
内周面12nには切り欠き14を残して軸部材13の外周面13gが貼着される。軸部材13は円筒体12の両端から突出するように円筒体12を貫通する。また軸部材13は円筒形状の形状であり、金属製または硬質プラスチィック製である。
【0027】
シート重送防止ゴムローラ11は、図2に示すように多数のシート101,102・・・・が積み重なったシート束111の上から1枚ずつシートを引き出すシート供給装置81に用いられる。シート101,102,103・・・は紙であってもよいし、紙以外のフィルムであってもよい。
【0028】
図2(A)を参照して、紙送りローラ91とシート101との摩擦係数をμ0とし、シート重送防止ゴムローラ11とシート102との摩擦係数をμ1とし、シート101とシート102との摩擦係数をμ2としたとき、摩擦係数μ0、μ1、および、μ2の関係は、μ0>μ1>μ2となるように設定されている。
【0029】
シート供給装置81はシート束111に隣接配置され、シート束111の最も上にあるシート101を矢印の向きに引き出す紙送りローラ91と、シート101を介して紙送りローラ91と平行に配置されるシート重送防止ゴムローラ11とを有する。
【0030】
軸部材の一方に図示しないワンウエイクラッチが直列に配置されている。シート供給装置81は図示しない重送検出センサをさらに有し、重送検出センサによってワンウエイクラッチの動作を制御している。図2(B)に示すように、紙送りローラ91とシート重送防止ローラ11との間にシート101のみが送り込まれているとき、シート重送防止ゴムローラ11は紙送りローラ91と連れ回り、これらローラ11,91が共に回転して、シート101は引き出される。
【0031】
紙送りローラ91の外周面は円筒体12ほど容易に弾性変形しない。これに対しシート重送防止ゴムローラ11は切り欠き14によって外周面12gが容易に弾性変形する。これにより円筒体12は、紙送りローラ91からニップ圧を受けて、外周面12gがシート101,102に沿った平坦面に弾性変形し、ニップ幅Nを大きく取ることができる。
【0032】
図2(A)に示すように、引き出し中のシート101の裏面に別のシート102が付着していることを重送検出センサが検出すると、ワンウエイクラッチの動作でシート重送防止ゴムローラ11の回転が停止する。それにより、別のシート102は把持され、シート101のみがシート102の上を摺動しながら引き出される。
【0033】
シート101が完全に引き出されて紙送りローラ91よりも矢印の方向に搬送されると、続いてシート102を矢印の方向に同様に引き出す。このようにして順次、上からシートを搬送する。
【0034】
本実施例のシート重送防止ゴムローラにつき、ニップ幅の確認試験を行った。
【0035】
この確認試験では、図4に示すように透明なガラス板Gと、試験体Tになる実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2のシート重送防止ゴムローラを準備する。そして、試験体Tにニップ圧を発生させる押し付け力Fを与えて試験体Tの外周をガラス板Gの表面に押し付け、押し付け力Fを150gf、250gf、350gfと変化させながら、試験体Tのニップ幅Nをガラス板Gの裏面から計測した。
【0036】
実施例1のゴムローラは図1に示す通りであり、切り欠き14の断面形状が長方形である。図3は実施例2のシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図であり、実施例2の切り欠き14の断面形状は、外径に向かうほど溝幅が小さくなる台形である。本発明になる実施例1および実施例2が円筒体の切り欠きを内周面に有するのに対し、従来からある比較例1および比較例2は切り欠きを内周面に有しない。
【0037】
また、これら試験体Tの円筒体の径方向厚みは、比較例1、実施例1、および実施例2が3mmであり、比較例2が5mmである。また、これら試験体Tの円筒体の内径はいずれも、13.8mmである。なお、この内径は切り欠きの溝深さを含まない。実施例1の切り欠き溝の断面形状は正方形であり、内径側の溝幅および外径側の溝底部の幅が1.0mmであり、径方向の溝深さが1.0mmである。また、実施例2の切り欠き溝の断面形状は、内径側の溝幅が1.5mmであり、径方向の溝深さが1.0mmであり、外径側の溝底部の幅が0.8mmである。したがって実施例1および実施例2の切り欠きの溝深さは円筒体の外周面から内周面までの径方向厚みの33%である。また、実施例1および実施例2の切り欠き溝の数を、20個とする。
【0038】
図5は試験結果を示す図である。また図6はこの試験結果をプロットしたグラフである。
【0039】
比較例1と実施例1とを比較する。比較例1では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2mm、250gfのときにニップ幅Nが3mm、350gfのときにニップ幅Nが3.5mmであった。これに対し実施例1では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2.5mm、250gfのときにニップ幅Nが5mm、350gfのときにニップ幅Nが7mmであった。この結果、本発明になる実施例1によれば大きなニップ幅が得られることがわかった。
【0040】
比較例1と実施例2とを比較する。実施例2では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2.5mm、250gfのときにニップ幅Nが5mm、350gfのときにニップ幅Nが6.5mmであった。この結果、本発明になる実施例2によっても大きなニップ幅が得られることがわかった。
【0041】
実施例1と実施例2とを比較する。この結果、切り欠き溝の断面形状が長方形の場合のニップ幅は、台形の場合よりも大きいことがわかった。
【0042】
比較例2と実施例1とを比較する。比較例2では、押し付け力Fが150gfのときにニップ幅Nが2.5mm、250gfのときにニップ幅Nが4.5mm、350gfのときにニップ幅Nが6mmであった。この結果、本発明になる実施例1および実施例2によれば円筒体の径方向厚みを小さくすることと同等の効果が得られることがわかった。
【0043】
この確認試験の結果から、切り欠きを有しない比較例1および比較例2のニップ幅Nよりも、切り欠きを有する実施例1および実施例2のニップ幅Nが大きいことがわかった。また、実施例2(台形)のシート重送防止ゴムローラのニップ幅Nより、実施例1(長方形)のシート重送防止ゴムローラのニップ幅Nがさらに大きいこと、つまり切り欠きの断面形状を長方形にすることによって大きなニップ幅Nを確保できることがわかった。
【0044】
また比較例2、実施例1、および実施例2のように、径方向厚みを5mmから3mmに小さくしても、大きなニップ幅Nを確保できることがわかった。また、円筒体の径方向厚み3mmに対し切り欠きの深さを1mmとすること、つまり切り欠きの深さ比率を33%とすることにより、大きなニップ幅Nを確保することができることがわかった。したがって、15%〜50%の範囲に属する切り欠きの深さ比率の好ましい数値範囲は、30%〜36%である。
【0045】
次に実施例1および比較例1のシート重送防止ゴムローラにつき、通紙試験を行った。
【0046】
この通紙試験では、所定枚数の白紙および黒ベタ紙を搬送(以下、通紙という)する毎に、試験体のアスカーC硬度、外径、外周面の摩擦係数、紙鳴き、および重送回数を確認した。これを通紙速度150mm/sおよび300mm/sについて試験し、耐久性能を評価した。
【0047】
この通紙試験では、複写機(富士ゼロックス株式会社製:機種名Apeos Port 450 I (登録商標))と、シートになる日本工業規格A4型コピー用紙(富士ゼロックス株式会社製:商品名グリーン70)の白紙および黒ベタ紙を複数枚と、新品の試験体2本を用意した。試験体は、切り欠きを有する図1に示す実施例1と、この実施例1と同じ寸法形状であって切り欠きがない比較例1である。なお、白紙とは未使用の紙をいい、黒ベタ紙とは複写機を用いて白紙の表面全体に真黒な印刷を施したものをいう。
【0048】
この通紙試験の手順は、アスカーC硬度、試験体の外径、および摩擦係数を計測した新品の試験体(シート重送防止ゴムローラ)を、上記の複写機に取り付け、通紙速度150mm/sで白紙を50枚通紙し、この時の試験体の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。つづいて黒ベタ紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。次に通紙速度を300mm/sに変更して白紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。つづいて黒ベタ紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。これにより、初回サイクルの計測が終了した。
【0049】
次のサイクルとして、通紙速度150mm/sで白紙を5000枚通紙し、試験体のアスカーC硬度、試験体の外径、および摩擦係数を計測した。そして、上述したように通紙速度150mm/sで白紙50枚を通紙してこの時の紙鳴きの有無および重送回数を計測し、つづいて黒ベタ紙を50枚通紙してこの時の紙鳴きの有無および重送回数を計測し、次に通紙速度を300mm/sに変更して白紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。つづいて黒ベタ紙を50枚通紙し、この時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。これにより、5000枚通紙後の計測が終了した。
【0050】
次のサイクルとして、新品時から数えて10000枚通紙し(つまり上記5000枚通紙後の計測から数えてさらに5000枚を通紙し)、試験体のアスカーC硬度、試験体の外径、および摩擦係数を計測した。そして、上述したように通紙速度150mm/sで白紙50枚および黒ベタ紙50枚を通紙し、通紙速度300mm/sで白紙50枚および黒ベタ紙50枚を通紙し、それぞれの時の紙鳴きの有無および重送回数を計測した。これにより、このサイクルの計測が終了した。これにより、10000枚通紙後の計測が終了した。
【0051】
以下同様に、新品時から数えて50000枚通紙後の計測と、新品時から数えて100000枚通紙後の計測と、新品時から数えて300000枚通紙後の計測とを行った。なお、比較例1については、100000枚通紙後まで計測した。
【0052】
ここで摩擦係数の計測方法につき付言すると、図7に示すように、試験体Tをフッ素樹脂プレートPに力F(F=250gf)で押し付け、これら試験体TとプレートPとの間に上述の白紙Yを挟み込む。白紙Yの先端はロードセルLと接続する。そして温度23℃、相対湿度55%の条件下で試験体Tを矢印の向きに駆動し、試験体Tを周速度848mm/sで回転させる。このとき、白紙Yを引き込む矢印の向きの力FrをロードセルLで測定する。摩擦係数μは以下の式で表される。
【0053】
μ=Fr/F ・・・・・(1)
表1は実施例1(切り欠きあり)の計測結果を示す図表であり、表2は比較例1(切り欠きなし)の計測結果を示す図表である。これらの図表において、○は紙鳴きが生じなかったことを表し、×は紙鳴きが生じたことを表す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
実施例1のシート重送防止ゴムローラによれば表1に示すように、アスカーC硬度は新品時で67〜73であり、300000枚通紙後で71〜74であった。また外径は新品時で19.948mmであり、300000枚通紙後で19.922mmであった。また摩擦係数は新品時で0.996であり、300000枚通紙後で1.063であった。
【0057】
紙鳴きおよび重送回数は、白紙および黒ベタ紙のいずれの場合にも、新品時から300000枚通紙後まで一切生じなかった。
【0058】
したがって、実施例1のシート重送防止ゴムローラによれば、300000枚通紙後であっても品質の変化がなく、紙鳴きおよび重送回数を確実に防止することができる。
【0059】
次に比較例1のシート重送防止ゴムローラによれば表2に示すように、アスカーC硬度は新品時で79であり、100000枚通紙後で81であった。また外径は新品時で19.980mmであり、100000枚通紙後で19.972mmであった。また摩擦係数は新品時で0.867であり、100000枚通紙後で0.846であった。
【0060】
紙鳴きは、白紙および黒ベタ紙のいずれの場合にも、新品時から100000枚通紙後まで一切生じなかった。
【0061】
ただし重送回数は、白紙および黒ベタ紙のいずれの場合にも、50000枚通紙以降に生じるようになり、特に、通紙速度300mm/sでは、50000枚通紙以降で重送が頻発するようになった。
【0062】
アスカーC硬度67〜73(新品時)およびアスカーC硬度71〜74(300000枚通紙時)の実施例1と、アスカーC硬度79(新品時)およびアスカーC硬度81(300000枚通紙時)の比較例1とを比較する。この通紙試験の結果から、実施例1のシート重送防止ゴムローラは、50000枚通紙以降で比較例1との優位性が明らかになり、顕著な重送防止性能を発揮することがわかった。したがって、シート重送防止ゴムローラの好ましいアスカーC硬度は60〜75であり、より好ましいアスカーC硬度は67〜73であることがわかった。
【0063】
次に本発明の変形例を説明する。図8は変形例になるシート重送防止ゴムローラを軸線方向からみた状態を示す正面図である。この変形例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明すると、切り欠き14の断面形状が外径に向かうほど溝幅が小さくなる形状である。また隣り合う切り欠き14,14間の内周面が内径方向に突出した突条15となる。周方向所定間隔で配設された突条15は、軸線方向に向かって延び、断面が半円形状である。
【0064】
別の変形例になるシート重送防止ゴムローラ11も、円筒体12の径方向厚みを従来よりも小さくしつつ、ニップ幅を従来よりも大きく確保することができる。また円筒体12の製作時において容易に脱型することができる。
【0065】
図9は本発明の他の実施例によるシート重送防止ゴムローラを模式的に示す説明図である。この実施例につき、上述した実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。異なる構成について以下に説明すると、軸部材13が円筒体12の内周に固定された回転体13bと、回転体13bを回転可能に支持する中心軸13aとを有する。回転体13bを貫通する中心軸13aの外周と、回転体13bの内周との間には、図示しない永久磁石およびヒステリシス材が配置され、これにより軸部材13はトルクリミッタを構成する。トルクリミッタは中心軸から回転体に所定のトルク範囲内で回転を伝達し、所定のトルク範囲を越えると回転の伝達を遮断する。
【0066】
次に、図9の実施例によるシート重送防止ゴムローラを図2(A)(B)のシート供給装置に適用した場合の動作について説明する。トルクリミッタが回転を伝達できる所定のトルク範囲は、紙送りローラの回転が直接またはシート1枚のみを介在させて伝達されるトルクよりも小さく、シート2枚以上を介在させて伝達されるトルクよりは大きく設定されている。
【0067】
中心軸13aは紙送りローラ91の回転方向とは逆方向に回転し続けている。紙送りローラ91とシート重送防止ゴムローラ11との間にシートが送り込まれていない状態、または1枚のシート101のみが送り込まれている状態(図2(B))では、紙送りローラ91によって回転体13bに所定以上のトルクがかかるため、円筒体12は中心軸13aとは逆方向に連れ回りする。一方、紙送りローラ91とシート重送防止ゴムローラ11との間に2枚以上のシートが送り込まれている状態(図2(A))では、シート101とシート102との摩擦係数μ2が小さいため、トルクリミッタには所定範囲内のトルクしか作用せず、円筒体12は中心軸13aと同方向、すなわち紙送りローラ91とは逆方向に回転し、重送したシートを押し戻すことができる。
【0068】
図11は従来のトルクリミッタ付ゴムローラを模式的に示す説明図である。従来のゴムローラRはゴム製の円筒体R1の径方向厚みを大きく確保しなければならなかったため、従来のゴムローラRの軸線方向に隣接してトルクリミッタTLを直列配置しなければならなかった。従来のゴムローラRはゴム製の円筒体R1と、円筒体R1の内周面に固定される内筒R2を備えていた。またトルクリミッタTLは内筒R2の一端と連結していた。そしてシャフト状の中心軸Xが、直列に配置されたトルクリミッタTLおよび内筒R2の中心孔を貫通して、トルクリミッタTLの中心部と結合していた。このため従来のトルクリミッタ付ゴムローラは大型で大きなスペースを占有していた。
【0069】
図6に示す比較例2と実施例1の確認試験の結果からわかるように、図9に示す他の実施例のシート重送防止ゴムローラ11によれば、円筒体12の径方向厚みを小さくすることが可能であって、回転体13bを含みトルクリミッタを構成する軸部材13を、円筒体12の中に内蔵することができる。したがって、トルクリミッタを取り付けることによるスペースの増大を回避して省スペース化を図ることができる。
【0070】
ここで付言すると、軸部材13はトルクリミッタに代えてワンウエイクラッチでもよい。この場合、回転体13bの外周面には円筒体12の内周面が貼着され、中心軸13aは回転体13bを正回転可能に支持する。このため、回転体13bの逆回転は規制される。
【0071】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。本発明のシート重送防止ゴムローラは紙の他、プラスチックシートの重送を防止することができる。本発明の技術的思想は上述したローラ形状の重送防止部材に適用可能である他、図示しないパッド形状の重送防止部材にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明になるシート重送防止ゴムローラは、シート供給装置において有利に利用される。
【符号の説明】
【0073】
11 シート重送防止ゴムローラ、12 円筒体、12n 円筒体内周面、13 軸部材、13a 中心軸、13b 回転体(トルクリミッタあるいはワンウエイクラッチ)、13g 軸部材外周面、14 切り欠き、15 突条。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート面と接触してシートの重送を防止するシート重送防止ゴムローラであって、
単層の発泡ウレタンゴムで形成され、内周面に切り欠きが形成された円筒体と、
前記円筒体の内周面に固定される軸部材とを備える、シート重送防止ゴムローラ。
【請求項2】
前記切り欠きの深さが前記円筒体の外周面から内周面までの径方向厚みの15〜50%である、請求項1に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項3】
前記円筒体のアスカーC硬度が60〜75である、請求項1または2に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項4】
前記切り欠きは、前記円筒体の軸線方向に沿って延び、周方向において所定間隔で配置される複数の溝である、請求項1〜3のいずれかに記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項5】
前記溝の断面形状が外径に向かうほど溝幅が小さくなる形状である、請求項4に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項6】
前記溝の断面形状が溝幅一定の長方形である、請求項4に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項7】
前記軸部材は、前記円筒体の内周に固定された円筒状の回転体と、前記回転体を回転可能に支持する中心軸とを有し、前記回転体と前記中心軸との間で所定のトルク範囲内で回転を伝達するトルクリミッタを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項1】
シート面と接触してシートの重送を防止するシート重送防止ゴムローラであって、
単層の発泡ウレタンゴムで形成され、内周面に切り欠きが形成された円筒体と、
前記円筒体の内周面に固定される軸部材とを備える、シート重送防止ゴムローラ。
【請求項2】
前記切り欠きの深さが前記円筒体の外周面から内周面までの径方向厚みの15〜50%である、請求項1に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項3】
前記円筒体のアスカーC硬度が60〜75である、請求項1または2に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項4】
前記切り欠きは、前記円筒体の軸線方向に沿って延び、周方向において所定間隔で配置される複数の溝である、請求項1〜3のいずれかに記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項5】
前記溝の断面形状が外径に向かうほど溝幅が小さくなる形状である、請求項4に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項6】
前記溝の断面形状が溝幅一定の長方形である、請求項4に記載のシート重送防止ゴムローラ。
【請求項7】
前記軸部材は、前記円筒体の内周に固定された円筒状の回転体と、前記回転体を回転可能に支持する中心軸とを有し、前記回転体と前記中心軸との間で所定のトルク範囲内で回転を伝達するトルクリミッタを含む、請求項1〜6のいずれかに記載のシート重送防止ゴムローラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−168137(P2010−168137A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10235(P2009−10235)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]