説明

シームレスなアルギン酸塩カプセル

本発明は、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩シェル膜を含む、乾燥されたシームレスカプセルに関し、(i)前記アルギン酸塩シェル膜は、(a)M及びG含量の重量に基づき50重量%−62重量%の平均M含量と、(b)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて20℃で3.5%水溶液における一価金属イオンアルギン酸塩として測定される場合、35−80cpsの粘度と、を有する、多価金属イオンアルギン酸塩を含み、(ii)前記アルギン酸塩シェル膜は、充填マテリアルの少なくとも50重量%の量で存在する油を封入し、(iii)前記乾燥されたシームレスカプセルは、37℃で、pH3の、0.1MのNaCl及びHClの溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液において12分間未満の崩壊時間を有し、並びに(iv)前記乾燥されたシームレスカプセルは、少なくとも7kgの乾燥破断強さを有する、ことを特徴とする。本発明はまた、このような乾燥されたシームレスカプセルを製造及び使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩シェル膜を含む、乾燥されたシームレスカプセル、並びにその製造及び使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の所望の特性を有するシームレスなアルギン酸塩カプセルは、特許文献1に記載される。比較的高含量のGブロックを有するシェル膜におけるアルギン酸塩を有するシームレスなアルギン酸塩カプセルは、比較的高含量のMブロックを有するシェル膜におけるアルギン酸塩を有するカプセルと比較すると、強いカプセルを提供する。しかしながら、シェル膜において高いGアルギン酸塩含量を有するシームレスなアルギン酸塩カプセルは、胃環境において迅速に崩壊することが見出され、高含量のMアルギン酸塩からなるゲルは一般に、高含量のGアルギン酸塩からなるゲルに比して、乏しい機械的強度を有する。さらに、シェル膜において高いM含量を有するアルギン酸塩の濃度を上げると、プロセス粘度が許容不可能な程度に上昇し、非常に困難なプロセスコンディションを作り出すが、一方で、例えばアルギン酸塩の分子量を下げると、高濃度でも望ましくなくカプセルをさらに弱くする(すでに非常に弱い)ことが予想される。
【0003】
したがって、カプセル製造に関連するプロセスの困難性を解決する一方で、胃環境において所望のカプセル強度及び崩壊プロファイルを有する、シームレスなアルギン酸塩カプセルを開発することが望まれる。本発明者らは、M含量、分子量、及び濃度を変えて(他の変数間で)、膨大な数のアルギン酸塩を試験し、予想外にも消化管環境において予想されない強度及び崩壊を有するカプセルを提供する、適切なプロセスを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/084516号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩シェル膜を含む、乾燥されたシームレスカプセルを含む。(i)前記アルギン酸塩シェル膜は、(a)M及びG含量の重量に基づき50重量%−62重量%の平均M含量、及び(b)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて、20℃で、3.5%水溶液において、一価金属イオンアルギン酸塩として測定される場合、35−80cpsの粘度を有する、多価金属イオンアルギン酸塩を含み;(ii)前記アルギン酸塩シェル膜は、前記充填マテリアルの少なくとも50重量%の量で存在する油を封入し;(iii)前記乾燥されたシームレスカプセルは、37℃、pH3、0.1MのNaCl及びHClの溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液において12分間未満の崩壊時間を有し;並びに(iv)前記乾燥されたシームレスカプセルは、少なくとも7kgの乾燥破断強さを有することを特徴とする。本発明はまた、このような乾燥されたシームレスカプセルを製造及び使用する方法に関する。
【0006】
本発明者らは驚くべきことに、本発明のカプセル(腸管緩衝液における迅速な崩壊時間及び高い破断強さの両方を有する)は、プロセスコンディション(例えば、ゲル化浴におけるプロセス粘度)の注意深い制御並びにアルギン酸塩の種類及び粘度の操作の両方の選択により得られ得ることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ゲル化浴におけるNaCl無しで調製されたカプセルの崩壊時間を示す図である。
【図2】0.1MのNaClを有するゲル化浴で調製されたカプセルの崩壊時間を示す図である。
【図3】湿潤カプセルの破断強さを示す図である。
【図4】乾燥カプセルの破断強さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アルギン酸塩(特に、ワカメ(Phaeophyceae sp)由来)は、(1−4)−結合 β−D−マンヌロン酸(M)及びα−L−グルロン酸(G)残基を含む、直鎖で分岐していない化学重合体である。アルギン酸塩は、ランダムコポリマーではなく、同じ及び交互の残基のブロックからなり(例えば、MMMM、GGGG、及びGMGM)、一般に、アルギン酸又はその塩の形態において有用である。
【0009】
本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、アルギン酸塩を含む、アルギン酸塩シェル膜を有する。カプセルを調製するために用いられるアルギン酸塩は、(a)M及びG含量の50重量%−62重量%の平均M含量、及び(b)60rpm及びスピンドル#1で、ブルックフィールドLV粘度計を用いて、20℃で3.5%水溶液において測定される場合、35−80cpsの粘度を有する。
【0010】
より具体的には、アルギン酸塩の平均M含量は、アルギン酸塩におけるM及びG含量の重量に基づき、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、又は62%であり得る。M含量はまた、アルギン酸塩におけるM及びG含量の重量に基づき、53%から59%の範囲にあってもよい。
【0011】
本発明のM含量を有するアルギン酸塩は典型的には、海藻を作る、種々のアルギン酸塩から得られる。海藻におけるM含量は、収穫時の生活環、植物特異性等に依存して変化し得る。本発明のM含量を有するアルギン酸塩を作るとされる海藻は概して、Lessonia nigrescens(50−62%M)、Laminaria digitata(約59%M)、Macrocystis pyrifera(約60%M)、Ecklonia maxima及びLaminaria Saccharinaを含む。混合物における全アルギン酸塩のM含量が全アルギン酸塩中M及びG含量の50重量%−62重量%Mの平均M含量を有する場合、種々のM含量を有するアルギン酸塩の混合物を用いることはまた、本発明の範囲内にある。アルギン酸塩における平均M含量は典型的には、1H−NMRにより測定される。アルギン酸塩は典型的には、例えば、酸性前処理後のアルカリ性抽出を含む水性プロセスといった、標準的な工業用抽出プロセスを用いて、海藻から抽出され得る。このような慣習上の技術は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0012】
次に、50−62%Mの平均M含量を有する本発明の抽出されたアルギン酸塩は典型的には、大きい分子量、及びそれゆえに1%水溶液中で200−1,000cpsといった高い粘度を有するため、アルギン酸塩は、60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて、20℃で3.5%水溶液において測定される場合、35−80cpsの粘度を得るように分解されなければならない。分解は典型的には、アルギン酸の慣習的な熱処理プロセスにより行われる。これらの慣習的なプロセスは、参照により本明細書に取り込まれる。用いられる全アルギン酸塩の粘度が、結果として、35−80cpsの範囲内にある場合、本明細書において測定されるように、35−80cpsの範囲外での可変粘度を有するアルギン酸塩を用いることが可能である。
【0013】
本発明の乾燥されたシームレスカプセルは望ましくは、37℃、pH3、0.1MのNaCl及びHClの溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液における12分間未満の崩壊時間、並びに少なくとも7kgの乾燥破断強さを有する。より具体的には、本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、37℃、pH3、0.1MのNaCl及びHClの溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液における10分間未満、8分間未満、6分間未満の崩壊時間を有していてもよい。さらに、本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、少なくとも10kg、少なくとも12kg、少なくとも15kg、少なくとも16kg、少なくとも17kg、少なくとも18kg、少なくとも19kg、少なくとも20kg、少なくとも21kg、少なくとも22kg、少なくとも23kg、少なくとも24kg、少なくとも25kg、少なくとも26kg、少なくとも27kg、少なくとも28kg、少なくとも29kgの乾燥破断強さを有し得る。破断強さは、水平に横たわった(直立していない)状態のカプセルを備えた平行プレートが取り付けられたSMSテクスチャ解析機を用いて測定される。
【0014】
本明細書で用いられる腸管緩衝液は、パンクレアチンが用いられないことを除いて、USP28、2040章、2858頁に基づきモデル化された腸管緩衝液である。より具体的には、5Lの脱イオン水に136.0gのKHPO(Merck社、ロット番号A585477)を溶解し、10Lの脱イオン水に61.6mLの5N NaOHを加え、pHを6.8に調節し、20Lの最終容積に希釈することで作られる。崩壊方法は、実施例において、及びUSP28、2040章(遅延放出型(腸溶錠)錠剤についての章を含む)(参照により本明細書に取り込まれる)において記載される通りである。
【0015】
パンクレアチンを含まないモデル化された腸管緩衝液における迅速な崩壊時間及び高い破断強さの両方を有する、本発明のクレームされたカプセルは、予想されなかった。クレームされたM含量及び粘度を有するアルギン酸塩は、多くの薬学的、栄養補助的、及び獣医学的適用に適しない非常に弱いカプセルを作ると予想されたからである。
【0016】
本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、充填マテリアルの少なくとも50重量%の量で油を封入する。油自体は、食物といった活性成分若しくは薬学的、栄養補助的、及び獣医学的な活性成分となり得、又はそれは、食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分に対するキャリアとなり得る。油が食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分に対するキャリアとして用いられる場合、食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分は、油中に溶解され、又は油中に分散され得る。油中に溶解され、又は分散され得る薬学的な活性成分の例は、スタチンといった種々の心臓血管及び代謝コンディションを治療するのに有用なすべての活性成分を含む。油中に溶解され得る他の薬物は、アンプレナビル、アジェネラーゼ、ベキサロテン、カルシトロール、クロファジミン、シクロスポリンA、ジゴキシン、ドルナビノール、デュタステライド、エトポシド、イソトレタノイン、ロピナビル、イトラコナゾール、ロラチジン、ニフェジピン、ニモジピン、フェノバルビトール、プロゲステロン、リスペリドン、リトナビル、サキナビル、シロリムス、トレチノイン、及びバルプロ酸を含む。
【0017】
油は、いかなる油、又は油の組み合わせから選択されてもよく、それは、例えば薬学的、獣医学的、栄養補助的、及び食物の産業における使用に対して、封入形態における有用性を見出す。適切な油は、限定されることなく、魚、動物、植物、微生物を含む、海洋資源及び非海洋資源、又はその抽出物由来の油;合成若しくは他の方法により得られた化学化合物である油、又はその製剤;又は、脂肪酸、そのエステル、塩若しくは誘導体である油を含む。このような油は、トリグリセリド植物油を含み、それは、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化大豆油、及び硬化植物油といった長鎖トリグリセリド;ココナッツ油又はヤシ種子油由来といった中鎖トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドとして通常知られる。混合グリセリドに加えて、プロピレングリコールのカプリル酸/カプリン酸の混合ジエステルといったプロピレングリコールのエステル、飽和ココナッツ及びパーム核油由来のカプリル酸脂肪酸、リノール酸脂肪酸、コハク酸脂肪酸若しくはカプリン酸脂肪酸グリセリン、又はプロピレングリコールのエステル、並びにカプリン酸又はカプリル酸とグリセロールとの間で形成されるエステルといった脂肪酸と脂肪アルコールとの間で形成されるエステルといった他の油が存在する。ニンニク油もまた用いられ得る。本発明の範囲内にある他の油は、自然発生的な乳化剤を含むものである。このような油の一つは、大豆油であり、それはレシチンを含む。レシチンは、乳化剤として脂肪及び油が多く含まれる製品の食品製造において有用である。本発明の範囲内における好ましい油は、液体のものであり、又は、例えば20℃から95℃の範囲の温度で液体に作られ得るものである。
【0018】
脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体である油は、本発明において有用であり、現在、有用な健康効果(例えば、心臓血管系疾患のリスクファクターの低減及び種々の代謝系疾患の治療)をもたらすものとして大きな商業的関心を引いている。オメガ−3−脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体を含む油は、本発明において用いられ得る。このような脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体を含む油の例は、加工されていない又は濃縮された形態である海産油(例えば、魚油)を含む。このような海産油は、(オール−Z オメガ−3)−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)及び(オール−Z オメガ−3)−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA)といった重要なオメガ−3 ポリ不飽和脂肪酸を含み、本発明の油において可変の割合で含まれ得る。本発明において有用であるこのような油の一例は、少なくとも80重量%のオメガ−3−脂肪酸、その塩又は誘導体を含み、EPA及びDHAは、全脂肪酸含量の少なくとも75重量%の量で存在する。例えば、米国特許5,502,077号明細書を参照のこと。いかなるDHA/EPA比の、いかなるソース由来のDHA及びEPAを含む、いかなる油でも、本発明において用いられ得る。さらに、いかなる飽和、不飽和、単不飽和、又はポリ不飽和の脂質、油、遊離脂肪酸、植物、動物、魚、若しくは微生物のようなソース由来のエステル型脂肪酸、又は合成脂肪酸でも、本発明において用いられ得る。
【0019】
油は、カプセルの充填マテリアル中、充填マテリアルの少なくとも50重量%、より具体的には、充填マテリアルの少なくとも60重量%、充填マテリアルの少なくとも70重量%、充填マテリアルの少なくとも80重量%、充填マテリアルの少なくとも90重量%、及び充填マテリアルの少なくとも95重量%の量で存在する。
【0020】
充填マテリアルにおける油はまた、油中水滴型エマルション、水中油滴型エマルション、又は水/油/水型エマルションといったエマルション中に存在し得る。
【0021】
薬物が油中に懸濁され得る。薬物は、胃腸薬、非ステロイド性抗炎症薬といった抗炎症薬、抗菌薬、痛みを治療するのに用いられる薬物、肥満、糖尿病及び関節リウマチといった代謝性疾患を治療するために用いられる薬物のクラス由来のものを含む。
【0022】
本発明はまた、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩シェル膜を含む、シームレスなアルギン酸塩カプセルを製造する方法に関し、該方法は、(a)油、水、乳化剤、及び水溶性多価金属塩又は酸のうちの少なくとも1つを含む(油は、油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の少なくとも50重量%の量で存在する)エマルションを調製する工程と;(b)エマルションの一部を、(i)M及びG含量の50重量%−62重量%の平均M含量、及び(ii)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて20℃、3.5%水溶液において測定される場合35−80cpsの粘度を有する、一価金属イオンアルギン酸塩からなる水性ゲル化浴に加え(前記ゲル化浴は、前記ゲル化浴の3重量%−4重量%の量で前記アルギン酸塩を含む)、前記アルギン酸塩シェル膜に前記エマルションの前記一部を封入する工程と、任意に(c)水を除去することでカプセルを乾燥させる工程と、を含む。
【0023】
ゲル化浴中に存在する本発明のアルギン酸塩は典型的には、アルギン酸ナトリウムといった、ゲル化浴に溶解されたアルギン酸塩である。多価金属塩又は酸を含むエマルションがゲル化浴に加えられると、アルギン酸塩シェル膜(例えば、アルギン酸カルシウム)が形成される。
【0024】
ゲル化浴におけるアルギン酸塩の量は、本発明のカプセルの調製においてプロセス粘度のキーコントロールを提供するように決定された。本発明者らは、本発明のカプセルを作るために、ゲル化浴中に用いられるアルギン酸塩の量が、ゲル化浴の3重量%−4重量%、より具体的にはゲル化浴の3.25重量%−3.75重量%であると決定した。より具体的には、アルギン酸塩は、ゲル化浴の3.5重量%の量で、ゲル化浴において含まれ得る。ゲル化浴のプロセス粘度は典型的には、標的範囲に対して適切なスピンドル及び速度でブルックフィールドLV粘度計により測定される。
【0025】
本発明者らは、ゲル化浴におけるアルギン酸塩の量及び種類がプロセス粘度のキーコントロールであること、並びにプロセス粘度はカプセルが良好に調製される場合に注意深く制御されなければならないことを明らかにした。本発明のアルギン酸塩を用いる場合には、実施例に示される通りとなり、本発明のアルギン酸塩がゲル化浴中3−4重量%の範囲外の量で用いられる場合には、プロセス粘度は低くなりすぎ及び高くなりすぎる。低すぎるプロセス粘度又は高すぎるプロセス粘度では、いくつかの場合ではカプセルをまったく作ることができず、及び他の場合では薬学的、獣医学的、及び栄養補助的適用に適さない多数の欠点を有するカプセルを作ることとなる。
【0026】
さらに、アルギン酸塩浴におけるカプセルフラグメントの撹拌とアルギン酸塩の粘度とは、うまくカプセルを作ることができる点において関連する。強すぎる撹拌を要する粘度を有するアルギン酸塩は、エマルションフラグメントを変形させ又は破壊し、一方、非常に弱い撹拌を要する粘度を有するアルギン酸塩では、カプセルフラグメントは一時的又は永久に互いに接着しているだろう。第一に、カプセルフラグメントが破壊したところで、シェルの穴が形成され、カプセルに漏れが生じる。第二に、二重又は対のカプセルが作られ、二倍量を含むこととなり、それゆえ、それらはバッチから分離され、廃棄される必要があるだろう。端と端とがつながった対のカプセルは、ゲル化工程を生きのび、プロセスの後のほうで壊れ、エマルションで他のカプセルにコンタミネーションを起こし得る。本発明のアルギン酸塩の粘度は、ゲル化浴において採用される適切な撹拌を可能とし、前述の問題を起こさない。本発明者らは、標準的な撹拌技術(かき混ぜる、振動、又はバッフル上の連続流)が採用される場合、30cP以下及び100cP以上のゲル化浴粘度は望ましくなく、いっそう多くの前述の問題をもたらすことを観察した。
【0027】
ゲル化浴はさらに、少なくとも1つの一価塩を含んでいてもよい。一価塩は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムのうちの少なくとも1つであってもよい。具体的には、一価塩は、塩化ナトリウムであってもよい。一価塩は、ゲル化浴の0.1重量%−0.5重量%の量でゲル化浴に存在し得、より具体的には、ゲル化浴の0.3重量%の量で存在し得る。
【0028】
本発明のプロセスにおいて、塩化カルシウムといった多価塩がゲル化浴においてアルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)と反応すると、塩化ナトリウムが生成する。一般に、一価塩の存在は通常、ゲル化する多価塩とアルギン酸塩との間の反応を妨げ、これはゲル特性に悪影響を与え得る。一価塩がはじめにアルギン酸塩溶液に加えられない場合、一価塩の濃度は、最初はほとんどゼロであり、プロセスの間顕著に増加し、それは、連続生成モードが選択された場合には特にそうであろう。これは、バッチにおいて、後に作られたカプセルと比較して、最初に作られたカプセルの異なるカプセルの品質をもたらすだろう。ゲル化浴における一価塩の添加は、驚くべきことに、継続的なカプセル生成の間、一価塩の安定的レベルをもたらす好適な方法を提供することが見出され、それは、湿潤状態及び乾燥状態の両方のカプセルの一貫した品質を保証するものである。
【0029】
ゲル化浴又は分離浴はまた、限定されることなく、染料、着色料、可塑剤、エマルション不安定化剤、濃度調節剤、保存剤、抗酸化剤、固体、崩壊剤、消泡剤、及び他の成分を含む、付加的な成分を含有し得る。用いられ得る可塑剤の例は、グリセロール、Polysorb85/70/00(Roquette社)といった非結晶性ソルビトール、sorbitol special、マルチトール及びポリエチレングリコール、プロピレングリコール、又は可塑剤の組み合わせを含む。
【0030】
一実施態様において、シームレスなアルギン酸塩カプセルのシェル膜は、グリセロール及び非結晶性可塑剤を含み、非結晶性可塑剤のグリセロールに対する重量比は、約1:1と約8:1との間である。他の実施態様において、比は、約2:1と約6:1との間である。さらなる他の実施態様において、比は、約2:1と約4:1との間である。より具体的には、比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、又は約8:1であり得る。グリセロールは、約6%(wt/wt)と約22%(wt/wt)との間のシェル膜を含み得、非結晶性可塑剤は、約6%(wt/wt)と約54%(wt/wt)との間のシェル膜を含み得る。より具体的には、シェル膜におけるグリセロールは、約14%であり得、非結晶性可塑剤は、約36重量%であり得る。
【0031】
“非結晶性可塑剤”は、カプセルのシェル膜中又はシェル膜上における可塑剤物質のブルーム又は再結晶化を低減させる化合物又は組成物を意味する。グリセロールは、非結晶性可塑剤の定義から排除される。非結晶性可塑剤は、糖アルコール及びデヒドロ糖アルコールの混合物を含み、又は本質的に糖アルコール及びデヒドロ糖アルコールの混合物からなり得る。非結晶性可塑剤は、“非結晶性ソルビトール”であり得、それは、ソルビトール及び脱水素化ソルビトールの混合物である。POLYSORB(登録商標)85/70/00(Roquette社、レストロン、フランス)は、適切な非結晶性ソルビトールである。POLYSORB(登録商標)85/70/00は、35−45%(wt/wt)のソルビトール、及びソルビトールの部分的な内部での脱水により得られる、24−28%(wt/wt)の1,4−ソルビタンの水溶液である。POLYSORB(登録商標)85/70/00は、約83%の固形分を有する。Sorbitol Special Polyol Solution(登録商標)(SPI Pharma社、ウィルミングトン、デラウェア、USA)はまた、適切な非結晶性ソルビトールである。一実施態様において、非結晶性可塑剤は、マルチトール、フルクトース、又はポリオキシエチレングリコールを含み得る。
【0032】
特許文献1は、典型的なプロセスコンディション及び本発明において用いられ得る他の成分の例を開示しており、このような開示は全体において参照により本明細書に取り込まれる。
【0033】
本発明の内容において適する乳化剤は、親水性基及び親油性基の両方を有する(HLB値は1から19の範囲にある)化学化合物である。1から19の範囲のHLB値を有するこのような乳化剤の例は、限定されることなく、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリドの乳酸エステル、レシチン、ポリグリセロールポリリシノーリエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートといった脂肪酸のソルビタンエステル、ソルビタンモノオレエート及びポリオキシエチレン(25)グリセロールトリオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノグリセリドのコハク酸エステル、カルシウムステアロイルジラクテート、モノグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸のスクロースエステル、及び他の乳化剤を含む。乳化剤はまた、例えば一般に知られているすす(soot)(油中水滴型エマルション安定化剤)又はシリカ粉末(水中油滴型エマルション安定化剤)といった、いくつかの微粒子マテリアルを含み得る。本発明の好ましい乳化剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(TWEEN40の名称で販売される)、ポリグリセロールポリシリノレエート(Danisco社(コペンハーゲン、デンマーク)により、PGPR90の名称及び商標で販売される)、カルシウム ステアロイル−2−ラクチレート(American Ingredients Company(カンザスシティ、MO、USA)により、VERV Kの名称及び商標で販売される)、ソルビタンモノオレエート(Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、WI、USA)により、SPAN80の名称及び商標で販売される)、及びこれらの混合物の群より選択される。より好ましい乳化剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリグリセロールポリシリノレエート、又はこれらの混合物である。
【0034】
本発明の油、乳化剤、及び水のエマルションは、水溶性多価金属塩又は酸のうち少なくとも1つを含む。本発明の使用に適する水溶性多価金属塩又は酸は、水中で遊離イオンの状態にならない、いかなる無機又は有機塩をも含み、イオンはアルギン酸塩によりゲルを形成することができる。適切な塩は、限定されることなく、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛の塩、他の塩、及びこれらの混合物を含む。好ましい塩は、水和又は無水の形態での塩化カルシウムである。油及び水のエマルションにおける塩含量を増やすと、とりわけ、カプセルが形成されたときのポリサッカライドゲル膜の厚さが増大する。油及び水のエマルションにおける塩は、少なくとも、一部の油及び水のエマルションを取り囲んでアルギン酸塩シェル膜を適切に形成するのに十分なゲル形成剤量で存在する。好ましくは、本発明の範囲内において、塩は、エマルションの25重量%までの量で油及び水のエマルションにおいて存在し、より好ましくは、エマルションの2重量%から15重量%の量で存在する。
【0035】
本発明の第一の実施態様において、エマルションは、水中油滴型エマルションである。エマルションは、水に、多価金属塩(前述の通り)(例えば、塩化カルシウム二水和物)及び少なくとも1つの乳化剤(前述の通り)(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)を溶解することにより調製され得る。溶液はその後、高い粘度の水中油滴型エマルションを形成するように油がゆっくりと加えられ得る時間の間、ホモジナイズされ得る。水中油滴型エマルションに存在する油の量は、好ましくは、油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の70重量%から98重量%の量であり、より好ましくは、油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の85重量%から95重量%の量である。
【0036】
本発明の第二の実施態様において、エマルションは、油中水滴型エマルションである。エマルションは、油中水滴型エマルションを提供するように混合物がホモジナイズされ得る時間の間、多価金属塩(前述の通り)及び少なくとも1つの乳化剤(前述の通り)(例えば、ポリグリセロールポリリシノレエート)を、油(前述の通り)に加えることにより調製され得る。油中水滴型エマルションにおいて存在する油の量は、好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の65重量%から85重量%の量であり、より好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の70重量%から80重量%の量である。前述の通り、大豆油は、自然発生的な乳化剤レシチンを含む。大豆油の油中水滴型エマルションは、エマルションが付加的な乳化剤の添加無しで封入され得るように、十分に長い間安定的であり得る。
【0037】
本発明の第三の実施態様において、エマルションは、水/油/水エマルションである。水/油/水エマルションは、油又は油溶性物質のみならず、水溶性物質又は水溶性活性成分をも封入するための手段を提供する。したがって、水中で水溶性物質の溶液からなる内部相は、油中水滴型エマルションを提供するように混合物がホモジナイズされ得る時間の間、油(前述の通り)及び乳化剤(前述の通り)(例えば、ポリグリセロールポリリシノレエート)からなる中間相に加えられ得る。そのように形成された油中水滴型エマルションはその後、高い粘性を有する水/油/水エマルションを形成するように混合物がホモジナイズされ得る時間の間、多価金属塩(前述の通り)及び乳化剤(前述の通り)(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)からなる外部相に加えられ得る。水/油/水エマルションにおいて存在する油の量は、好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の60重量%から90重量%の量であり、より好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の70重量%から80重量%の量である。
【0038】
本発明の内容において好ましいエマルションは、上記の第一の実施態様において記載された水中油滴型エマルションである。封入前に水中油滴型エマルションから水を除去するために、高くされた温度及び高いエアフロー(例えば、約30℃、0.5−5m/s)での乾燥プロセスは、封入工程から大部分の水を取り除くことができ、その結果、乾燥状態でのカプセルが望まれる場合には、比較的乾燥された状態でのカプセルを提供し得る。それゆえ、独立したカプセル乾燥工程の長さは、短くされ得る。さらに、もし望まれるのであれば、封入−乾燥工程の長さを短くする一助として、エマルション中のいくらかの水が、水混和性溶媒(例えば、直鎖の又は分岐した炭素数1−4の炭素長のアルコール(例えばエタノール))で置換され得る。
【0039】
本発明のシームレスカプセルはまた、油以外の封入マテリアルを含み得る。これらの付加的な封入マテリアルは、いかなる油、又は水溶性の薬学的、栄養補助的、及び獣医学的活性成分でもあり得る。したがって、このような付加的な封入マテリアルは、油中に溶解され、又は分散され得る。
【0040】
本発明のカプセルは、球体、楕円体、円筒状、又は長楕円体といった、いかなる形をもとり得る。それらは、乾燥状態にあってもよく、意図された用途に依存した可変のカプセル直径を有していてもよい;例えば、カプセル直径は、比較的小さい又はいくらかより大きくてもよく、0.5ミリメーターから35ミリメーターの範囲にあってもよく、この場合、アルギン酸塩シェル膜は一般に40μmから500μmの範囲の厚さを有する。本発明のカプセルのゲル膜の厚さは、0.3ミリメーターから4ミリメーターの範囲にあってもよい。
【0041】
カプセルは、乾燥されると、充填マテリアル中、5%未満、3%未満、又は0%−0.5%の間の量の水を含有し得る。典型的には、乾燥されると、エマルションは、もはや充填マテリアル中に存在せず、それは、その構造を維持する無水エマルションの形態で見られ得る。
【0042】
カプセル形成後で乾燥前、カプセルはさらに、グリセロール、Polysorb85/70/00(Roquette社)といった非結晶性ソルビトール、sorbitol special、マルチトール及びポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールの単独又は組み合わせといった可塑剤溶液で処理され得る。
【0043】
本発明のすべての実施態様は、シームレスなアルギン酸塩カプセルを製造するプロセスにおいて用いられるエマルション同様に、乾燥されたシームレスカプセルにおいて充填マテリアルがマルメロ粘液を含まないものを含む。
【0044】
本発明は、本発明のアルギン酸塩がシェル膜において唯一のゲル形成成分である、シームレスカプセルを含む。
【0045】
本発明は、下記の実施例を参照することにより、より詳細に記載されるが、本発明がそれに限定されるとして解釈されないと理解されるべきである。本明細書において他に示唆のない限り、すべての部分、パーセント、比率、及び同様の記載は、重量によるものである。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
異なるM−含量でアルギン酸塩から作られたカプセル−崩壊時間への影響
この実施例で用いられたアルギン酸塩は、Laminaria hyperboreaの茎(F=分析していないが、典型的には0.25−0.35)、Laminaria hyperboreaの葉(F=0.47)、及びLessonia nigrescens(F=0.57)から分離された。アルギン酸塩溶液は、プロセス粘度を低くするように分子量低下を要したLessoniaアルギン酸塩サンプルを除いて、5%濃度にアルギン酸塩を単に溶解するだけで作られた。アルギン酸塩を溶解して8.3%溶液を調製し、3時間、85−90℃に維持した。5%濃度に希釈後、粘度を、ブルックフィールド粘度計を用いて、20rpmで、RVスピンドル2で、22℃で測定したところ、106cPであった(これは、60rpmでスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて測定された場合、およそ38−40cpsである)。乾燥分含量を、赤外線乾燥機(Mettler Toledo HR73)を用いて測定したところ、4.05%であった。一連のゲル浴は、0.15%NaClを含んで、異なるアルギン酸塩に対して調製された(図2参照)。アルギン酸塩溶液は、タンク中でゆっくりとした撹拌で維持され、約10L/minの連続流は、タンクからループ状に上がり、急勾配を降り、開放流となり(滝)、タンクに戻されて、再循環された。温度は、22−26℃の範囲であった。さらに60gのPolysorbate40を溶解させる前に、300gの水中の210gの無水塩化カルシウムを溶解させることで、プレ−エマルションを調製した。撹拌の間、3,900gの魚油をゆっくりと加えた。
【0047】
下記の装置が、カプセル製造に用いられた。
【表1】

【0048】
カプセルは、インラインミキサーにより、プレ−エマルションを汲み上げることにより作られ、約60,000cpsから90,000cpsの粘度(10rpm及び25℃で、Helipath spindle T−E−spindle no.95で、RVT−DV−III粘度計を用いて測定される)が得られた。そこから、エマルションは8.5mm幅のノズルにより押し出され、滝においてアルギン酸塩溶液を有する2つの0.102mmナイロンラインを備える回転ディスクを用いてフラグメントにカットされ、それらはアルギン酸塩タンクに送り込まれた。これらのカプセルの目標充填重量は、1000mgであった。約20分間の滞留時間の後、カプセルを回収し、水で素早くすすぎを行った。カプセルはその後、カプセル対水の重量比約1:4で、3時間水中に維持され、その後、カプセル対可塑剤の重量比約1:4で、15%のソルビトールソルビタン溶液(Sorbitol Special、SPI)を含む可塑剤溶液における30分間の滞留時間が設けられた。その後、カプセルを、ベンチでの環境条件で空気乾燥させた。
【表2】

【0049】
カプセルの破断強さを、フラットプローブを用いてStable Microsystems社からのテクスチャ解析機において測定した。破断強さは、アルギン酸塩のM−含量が増えると顕著に低下するであろうことが予想された。しかしながら、直前の表に示されるように、クレームされたM含量を有する乾燥カプセルの破断強さは、予想外に高く、本発明の範囲外のより低いM含量を有する乾燥カプセルと同等であった。
【0050】
バスケット崩壊装置Bを用いて、カプセルの崩壊時間を測定した。各々のバスケットは、3つのコンパートメント及びディスクを備えていた。37℃でpH3のHCl及び0.1MのNaClを含む770mLのモデル胃液中で9カプセルの前処理後、カプセルをそこに置いた。モデル化された消化管液を、USPのモデル化された腸液に従って(ただし、パンクレアチン無し)作った。詳細には、溶液は、5Lの脱イオン水に136.0gのKHPO(Merck社、Lot A585477)を溶解し、10Lの脱イオン水に61.6mLの5N NaOHを加え、pHを6.8に調節し、20Lの最終容積に希釈することで作られた。崩壊時間を、カプセルがモデル化された腸液に加えられた時間から求めた。具体的には、USPのモデル化腸液における崩壊時間を、pH3のHCl及び0.1Mの全イオン強度のNaClからなるモデル化された胃液中での20分間の前処理後、測定した。
【0051】
図1は、異なるM−含量のアルギン酸塩から作られたカプセルの崩壊時間を示す。明らかに、異なるアルギン酸塩のタイプ間で明確な違いが存在し、高いM/G比のアルギン酸塩から作られたカプセルは、より低いM/G比を有するアルギン酸塩から作られたカプセルよりも早く崩壊することが示された。違いはまた、弱い酸性溶液及び塩溶液中の前処理後に観察され、より短い前処理時間からも見られた。それは、高いM/G比のアルギン酸塩カプセルは、高−Gアルギン酸塩よりも早く、より弱いカプセルに変えられたことを示す。NaClをゲル化浴に加えると、全体の崩壊時間はさらに短くなる(図2に示される)。特に、図2において、USPのモデル化された腸液における崩壊時間は、pH3のHCl及び0.1Mの全イオン強度のNaClからなるモデル化された胃液における20分間の前処理後に測定された。ゲル化溶液(106mPas)の粘度は、ラージスケールのプロセスには高すぎるため、アルギン酸塩浴の組成物への適合が必要であった。
【0052】
(実施例2)
比較例−本発明よりも低い粘度を有するアルギン酸塩で作られたアルギン酸塩カプセルは、許容不可能な低い湿潤破断強さを有するカプセル及び乾燥中の高い頻度での破損をもたらした。
この実施例におけるカプセルは、以下の変形を伴って実施例1のように作られた:プレ−エマルションを3250gのタラ肝油を用いて作り、250gの脱イオン水、175gのCaCl2HO、及び25gのPolysorbate40の組成物を有する水相に加えた。アルギン酸塩浴を、2つのアルギン酸塩サンプルの組み合わせを用いて作った。525gのRENO7029(54%のM含量)及び225gのRENO7030(53%のM含量)、並びに45gのNaClを、15,000gの全重量で脱イオン水に溶解した。溶液のpHを2MのNaOH溶液を用いて7に調節した。得られた溶液は、5%の全アルギン酸塩濃度及び61.6cPの粘度を有していた。2つのアルギン酸塩製品は、両方ともL.nigrescensの海藻から抽出されたことにより特徴付けられ、RENO7029(54%のM含量)は1%溶液において2.5cPの粘度を有し、RENO7030(53%のM含量)は1%溶液において14.6cPの粘度を有していた。3.5%水溶液中の2つのアルギン酸塩の粘度は、60rpm及びスピンドル#1において、33cpsと推定されるだろう。カプセルを一晩水中で洗浄し、15%グリセリン溶液中で25分間、可塑化した。カプセルを、環境条件での空気乾燥のために、ベンチに置いた。乾燥プロセスの間、約42%のカプセルが破裂した。これは、平均分子量が低すぎるためカプセルシェルの強度が許容不可能に低いことを示唆する。ゲル化後の湿潤カプセルの平均破断強さ(n=3)は、406gと測定され、それは非常に低い。したがって、この例は、カプセルが、各々54%及び53%のM含量並びに33cpsの粘度を有する、試験されたアルギン酸塩から作られた場合に何か起こるのかを示す。
【0053】
(実施例3)
高い機械的強度のカプセル及び許容可能な程度に低いプロセス粘度をもたらす本発明の処方
この実施例におけるカプセルは、以下の変形を伴って実施例2のように作られた。アルギン酸塩浴を、2つのアルギン酸塩サンプルの組み合わせを用いて作った。225gのRENO7035(50%のM含量)及び300gのRENO7036(53%のM含量)、並びに45gのNaClを、15,000gの全重量で脱イオン水に溶解した。得られた溶液は、3.5%の全アルギン酸塩濃度及びスピンドル#1を用いて60rpmで測定された場合、69cPの粘度を有していた(3.5%水溶液においてスピンドル#1を用いて60rpmで測定された場合、およそ76cP)。2つのアルギン酸塩製品は、両方ともL.nigrescensの海藻から抽出されたことにより特徴付けられ、RENO7035は1%溶液において4.6cPの粘度を有し、RENO7036は1%溶液において9.7cPの粘度を有していた。洗浄の間、カプセル対水の重量比は、約1:3であった。可塑剤溶液は、10%グリセリンを含有していた。乾燥の間、カプセルの破損は見られず、平均湿潤破断強さ(n=4)は、1914gと測定され、平均乾燥破断強さ(n=4)は、32,034gと測定された。
【0054】
(実施例4)
ゲル化浴におけるアルギン酸塩濃度の影響
この実施例におけるカプセルは、L.nigrescens(例えば、M及びG含量の50−62重量%の平均M含量を有する)から分離されたアルギン酸塩の混合物から作られ、60rpmでスピンドル#1を用いて3.5%水溶液において測定された場合、およそ57cPの最終粘度を有する。エマルションを、さらに2gのPolysorbate40を溶解させる前に、10gの水に7gの無水塩化カルシウムを溶解させることにより調製した。130gの魚油を、エマルションが形成されるまで、Ultra Turraxで用いる間、少しずつ加えた。エマルションの粘度は、95,000cPと測定された。
【0055】
エマルションを、ノズルが取り付けられたプラスチックバッグに充填した。フラグメントは、バッグを絞り、メスを用いて約1gのフラグメントに手動でカットすることにより作られた。フラグメントを、2%から5%の範囲の異なるアルギン酸塩濃度のゲル化浴に置いた。すべての浴は、0.3%NaClを含有していた。ゲル化時間は、約20分間であった。この後、カプセルを水で3時間洗浄した。
【0056】
シェルの厚さは、浴中のアルギン酸塩濃度が高くなると、増加した。前述の実施例は、シェルにおけるアルギン酸塩の全量がカルシウム放出に依存することを示し、それは、すべての浴由来のカプセルで同様であろう。すべてのカプセルにおける一定のアルギン酸塩含量、異なるシェルの厚さ、及びシェルの容積と仮定して、可塑剤溶液の濃度は、同じアルギン酸塩を目標とするように、最終のカプセルにおける可塑剤比に調節された。
【表3】

【0057】
約24時間スチールメッシュ表面で乾燥させる前に、可塑剤溶液において25分間、カプセルを処理した。乾燥の最初の1時間以内にカプセルの方向を変えた。
【0058】
湿潤及び乾燥カプセルの破断強さを、平行プレートが取り付けられたSMSテクスチャ解析機で測定した。カプセルの破断強さを、カプセルを直立させた状態ではなく、平行の状態に置いて評価した。全破断強さは、より低かった。カプセルが手動で切断されて作られ、切断面において欠陥が生じ、カプセルシェルにおいて弱い箇所が生じたためである。しかしながら、傾向はそれでも著しく重要であった。
【0059】
湿潤カプセルに対しては、アルギン酸塩浴における濃度に正比例して破断強さが増加するという明白な傾向があった。図3を参照する。ここでは、高い破断強さは、プロセスの間のカプセル破損のリスク低下に起因して望ましい。一方、許容可能な程度に低いプロセス粘度を維持するように、浴にどれくらいのアルギン酸塩が加えられ得るかについての制限が存在した。
【0060】
乾燥カプセルに対しては、破断強さは、浴におけるアルギン酸塩濃度にさほど依存しないが(約同量のアルギン酸塩及びグリセリンを含有する、すべてのケースにおける最終シェルに起因するらしい)、破断強さは浴中のアルギン酸塩濃度が増加するといくらか増加したというエビデンスが存在する。図4を参照する。
【表4】

【0061】
発明者らは、30cP未満及び100cP超過の、本発明のアルギン酸塩に対するプロセス粘度が望ましくなく、前述のような著しい製造上の問題をもたらすことを見出し、前述の表のように、ゲル化浴における本発明のアルギン酸塩の量は、これらのプロセス上の問題を克服するために、ゲル化浴の3重量%と4重量%との間であるべきであることを示す。
【0062】
この実施例は、本発明の乾燥されたアルギン酸塩のシームレスカプセルが、製造の間、許容可能な強度及びプロセス粘度の両方を示すことを実証する。
【0063】
本発明が詳細にかつ特定の実施態様を参照して記載された一方で、種々の変形及び修正が本発明の精神及び範囲から逸脱することなくなされ得ることが、本技術分野の当業者にとって明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アルギン酸塩シェル膜は、(a)M及びG含量の重量に基づき50重量%−62重量%の平均M含量と、(b)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて20℃で3.5%水溶液における一価金属イオンアルギン酸塩として測定される場合、35−80cpsの粘度と、を有する、多価金属イオンアルギン酸塩を含み、
(ii)前記アルギン酸塩シェル膜は、充填マテリアルの少なくとも50重量%の量で存在する油を封入し、
(iii)乾燥されたシームレスカプセルは、37℃で、pH3の、0.1MのNaCl及びHClの溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液において12分間未満の崩壊時間を有し、並びに
(iv)前記乾燥されたシームレスカプセルは、少なくとも7kgの乾燥破断強さを有する、
ことを特徴とする、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩シェル膜を含む、乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項2】
少なくとも20kgの乾燥破断強さを有する、請求項1に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項3】
前記乾燥されたシームレスカプセルは、37℃で、pH3の、0.1MのNaCl及びHClの溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液において10分間未満の崩壊時間を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項4】
前記アルギン酸塩は、M及びG含量の重量に基づき53重量%−59重量%のM含量を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項5】
前記充填マテリアルは、薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤、又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤に対するキャリアである、油を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項6】
前記油は、薬学的、栄養補助的、又は獣医学的な活性成分である、
ことを特徴とする、請求項5に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項7】
前記油は、オメガ−3−脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体を含む、
ことを特徴とする、請求項6に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項8】
前記カプセルは、
(a)油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の少なくとも50重量%の量で存在する油と、水と、乳化剤と、水溶性多価金属塩又は酸のうち少なくとも一つとを含むエマルションを調製することと、
(b)(i)50%−62%の平均M含量と、(ii)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて20℃で3.5%水溶液において測定される場合、35−80cpsの粘度と、を有する、一価金属イオンアルギン酸塩からなる、水性ゲル化浴の3−4重量%の量で前記アルギン酸塩を含む前記水性ゲル化浴に、前記エマルションの一部を加え、前記アルギン酸塩のシェル膜に前記エマルションの前記一部を封入することと、
(c)カプセルを乾燥させることと、
を含むプロセスにより作られる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の乾燥されたシームレスカプセル。
【請求項9】
(a)油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の少なくとも50重量%の量で存在する油と、水と、乳化剤と、水溶性多価金属塩又は酸のうち少なくとも一つとを含むエマルションを調製する工程と、
(b)(i)50%−62%の平均M含量と、(ii)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて20℃で3.5%水溶液において測定される場合、35−80cpsの粘度と、を有する、一価金属イオンアルギン酸塩からなる、水性ゲル化浴に、前記エマルションの一部を加え、前記アルギン酸塩のシェル膜に前記エマルションの前記一部を封入する工程と、
(c)任意に、水を除去することによりカプセルを乾燥させる工程と、
を含み、前記水性ゲル化浴が、前記水性ゲル化浴の3−4重量%の量で前記アルギン酸塩を含むことを特徴とする、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩シェル膜を含む、シームレスなアルギン酸塩カプセルを調製する方法。
【請求項10】
アルギン酸塩は、ゲル化浴の3.25重量%から3.75重量%の量で前記ゲル化浴中に存在する、
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルギン酸塩は、ゲル化浴の3.5重量%の量で前記ゲル化浴中に存在する、
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゲル化浴はさらに、一価塩を含む、
ことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記一価塩は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを含む、
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一価塩は、塩化ナトリウムである、
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記一価塩は、ゲル化浴の0.1−0.5重量%の量で前記ゲル化浴中に存在する、
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記一価塩は、ゲル化浴の0.3重量%の量で前記ゲル化浴中に存在する、
ことを特徴とする、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−504573(P2013−504573A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528838(P2012−528838)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/047652
【国際公開番号】WO2011/031617
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】