説明

シーリング材組成物

【課題】低温貯蔵安定性に優れ、かつ、硬化後に優れた耐久性、塗料適性を示す、ノンブリード性のシーリング材組成物を提供すること。
【解決手段】(A)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有するポリマーと、(B)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、(C)炭素数16〜30のエポキシ化オレフィンとを含んでなる、シーリング材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーリング材組成物、より詳細には、硬化後に優れた耐久性を示す、ノンブリード性のシーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変成シリコーンポリマーなどの加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とする土木、建築用シーリング材においては、一般に、組成物の低粘度化による良好な作業性を確保し、および硬化物における柔軟性を付与する目的で、各種の可塑剤が配合されている。このようなシーリング材に対して仕上げ塗装を適用した場合、シーリング材中の可塑剤が塗膜に移行するブリード汚染が発生するという問題があった。
【0003】
このような可塑剤の移行によるブリード汚染を防止することを目的として、可塑剤の代わりに、主成分の重合体と反応性を示す、いわゆる反応性可塑剤を使用するシーリング材も開発されている(特許文献1〜3)。しかしながら、これらのシーリング材は、耐久性が低く、JIS A 1439:2004の耐久性区分9030を満足することができなかった。
【特許文献1】特開平5−59267号公報
【特許文献2】特開2003−335961号公報
【特許文献3】特開2004−224985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温貯蔵安定性に優れ、かつ、硬化後に優れた耐久性、塗料適性を示す、ノンブリード性のシーリング材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、加水分解性シリル基含有ポリマーを主成分とするシーリング材組成物において、当該加水分解性シリル基含有ポリマーと反応する特定の反応性可塑剤および特定の改質剤を使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明には、以下のものが含まれる:
[1](A)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有するポリマーと、
(B)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、
(C)炭素数16〜30のエポキシ化オレフィンと
を含んでなる、シーリング材組成物。
[2]エポキシ化オレフィン(C)の炭素数が16〜22である、上記[1]に記載のシーリング材組成物。
[3]さらに、(D)溶解度パラメーターが6.0〜8.5である溶剤を含んでなる、上記[1]または[2]に記載のシーリング材組成物。
[4]溶剤(D)がメチルシクロヘキサンおよび/またはイソパラフィン系炭化水素である、上記[3]に記載のシーリング材組成物。
[5]ポリマー(A)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のシーリング材組成物。
[6]ポリマー(B)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のシーリング材組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシーリング材組成物は、低温貯蔵安定性に優れ、硬化後、ブリード汚染を発生させず、かつJIS A 1439:2004の耐久性区分9030を満足する十分な耐久性を示し、さらに、目地の動きに優れた追従性を示すので、特に、土木、建築用のシーリング材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明のシーリング材組成物は、主成分として、(A)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有するポリマーを含む。なかでも、主鎖がポリアルキレンエーテルであるものが好ましい。
前記ポリマー(A)の数平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上であり、さらに好ましくは8,000以上100,000以下、特に好ましくは1,0000以上60,000以下である。数平均分子量が2,000未満の場合、硬化物の伸びが低くなる虞がある。一方、数平均分子量の上限は、特に限定されないが、60,000を超える場合、高粘度のために作業性が悪化する虞がある。
また、前記ポリマー(A)の加水分解性シリル基の数は、分子中に平均して1.2以上であり、好ましくは1.2以上8以下、特に好ましくは1.5以上4以下である。
【0008】
前記ポリマー(A)としては、例えば、変成シリコーンポリマー、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマー、アルコキシシリル基を含有するポリイソブチレン系ポリマーが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用に供してよい。前記加水分解性シリル基含有ポリマーとして、変成シリコーンポリマーおよび/またはアクリル系ポリマーを使用すると、低モジュラス、高伸長の物性に調整でき、しかも耐候性に優れた、シーリング材に適したものが得られるため好ましい。
【0009】
前記変成シリコーンポリマーとは、ポリオキシアルキレンエーテルを主鎖骨格とし、かつ末端もしくは側鎖に加水分解性基(例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基など)を有するシリル基をもつ液状ポリマーを指称する。なかでも、ポリアルキレンエーテル(例えば、ポリオキシプロピレンエーテル)を主鎖とする、数平均分子量が8,000〜25,000のものが好ましい。
変成シリコーンポリマーの代表的市販品としては、例えば株式会社カネカ製のMSポリマーシリーズ(「MSポリマー S−810」など)や旭硝子株式会社製「エクセスター」(登録商標)シリーズ(ES−S2410、ES−W2521など)がある。
【0010】
また、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単位で構成され[要すれば、(メタ)アクリル酸エステル単位以外に、(メタ)アクリル酸エステルと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子中にアルコキシシリル基を含有するポリマーであり、例えば、
(i)特公平3−80829号公報に開示の、(A)アクリル酸アルキルエステル(アルキル炭素数は好ましくは2〜4)(例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等)と、(B)ビニルアルコキシシラン(例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等)および(メタ)アクリロキシアルコキシシラン(例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)の群から選ばれる1種または2種以上の混合物とを、連鎖移動剤としてメルカプトアルコキシラン(C)(例えばγ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)の存在下で、ラジカル共重合[通常、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、α,α’−アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシドなど重合開始剤を用いて公知の塊状重合、溶液重合などの手法;あるいはレドックス触媒、例えば、遷移金属塩、アミン等と過酸化物系開始剤を組合せたレドックス重合法により]させることによって製造されるもの(通常、数平均分子量3,000〜100,000、1分子中の平均アルコキシシリル基数1.2〜3個);および
(ii)特公平4−69667号公報に開示の、ビニル系モノマー[例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、ペンチルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート;スチレンもしくはその誘導体(α−メチルスチレン、クロルメチルスチレンなど);ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジプロピルフマレートなどのフマル酸ジエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニレンなどのハロゲン化ビニル類等]100部(重量部、以下同様)に、アルコキシシリル基含有ジスルフィド化合物[例えばビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等]0.05〜50部を加え、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレートなど)中で光重合(常温乃至50〜60℃で、4〜30時間の光照射)に付すことによって製造されるものが挙げられる。
【0011】
また、アルコキシシリル基含有ポリイソブチレン系ポリマーとは、主鎖骨格が少なくともイソブチレン単位で構成され[要すれば、イソブチレン単位以外に、イソブチレンと共重合しうる単量体(例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類など)の単位が含まれていてもよい]、分子両末端にアルコキシシリル基を含有し、好ましくは数平均分子量1,000〜40,000で常温ワックス状ないし高粘度液状のものを指称し、一般に、イニファー法と呼ばれるカチオン重合法で得られる全末端官能型イソブチレン系ポリマーを用いることにより製造することができる(特開平8−231758号公報参照)。
【0012】
【化1】

[式中、nは5〜400およびmは5〜400である]
の化学構造を有する、株式会社カネカ製の「エピオン」(登録商標)シリーズが例示される。
【0013】
本発明においては、かかる加水分解性シリル基含有ポリマーに加えて、高温・高圧で連続塊状重合によって得られる、常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーを配合するのが好ましい。このような無溶剤型アクリル系ポリマーを使用することにより、低モジュラス、高伸長の物性に調整でき、作業性にも優れる。上記常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーは、官能基を有しないアクリル系モノマー[例えば前記のアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーの重合法(ii)で用いるようなアクリレートやメタクリレート]を用い、例えば400℃付近の高温・高圧で連続塊状重合(開始剤は極少量もしくは不要、連鎖移動剤は不要)により、極めて短い反応時間(5分程度)で製造することができ、100%ポリマーおよび低Tgの常温液状を呈し、かつ変成シリコーン系ポリマーとの相溶性が良好で(∵組成分布・分子量分布が狭い)、シーリング材の粘度粘性を調整して作業性を良好にし、更に、優れた耐候性を向上させる。市販品として例えば東亞合成株式会社製、「ARUFON(登録商標)UP−1000」等がある。
また、前記アクリル系ポリマーが、変成シリコーンポリマー中で重合されたアルコキシシリル基含有アクリル系ポリマーと、高温・高圧で連続塊状重合により得られる常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーとの併用であると好ましい。常温液状の官能基を有さない無溶剤型アクリル系ポリマーは、可塑剤代替効果があり、硬化したシーリング材は低モジュラス、高伸長の物性を奏し、又、作業性と耐候性の向上に寄与する。
【0014】
本発明のシーリング材組成物における前記ポリマー(A)の使用量は、組成物全量に対して、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは20〜25重量%である。ポリマー(A)の使用量が10重量%未満の場合、耐久性が低下する虞がある。一方、ポリマー(A)の使用量が30重量%を超えると、耐久性の低下、伸びの低下、シーリング材表面ベタツキ、高粘性を招く虞がある。
【0015】
本発明のシーリング材組成物は、反応性可塑剤として、(B)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーを含む。なかでも、主鎖がポリアルキレンエーテルであるものが好ましい。
前記ポリマー(B)の加水分解性シリル基の数は、分子中に平均して0.5以上1.2未満であり、好ましくは0.5以上1.0以下である。加水分解性シリル基の数が分子中に平均して0.5未満の場合、当該反応性可塑剤が塗膜へ移行する虞があり、一方、1.2以上の場合、可塑剤としての効果が低くなる。
また、前記ポリマー(B)の数平均分子量は、300以上8,000未満であり、好ましくは2,000以上8,000未満、特に好ましくは3,000以上6,000以下である。数平均分子量が300未満の場合、8,000を超える場合、いずれにおいても可塑剤としての効果が低くなる。
【0016】
前記ポリマー(B)としては、例えば、特開平5−59267号公報に開示されている化合物等が挙げられ、具体的には、旭硝子ウレタン株式会社製「S−1000」などが挙げられる。当該ポリマー(B)として、これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
また、本発明のシーリング材組成物における前記ポリマー(B)の使用量は、組成物全量に対して、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜20重量%である。ポリマー(B)の使用量が10重量%未満の場合、ブリード汚染を招く虞がある。一方、ポリマー(B)の使用量が30重量%を超えると、硬化後のシーリング材表面のベタツキ、高粘性化、作業性低下を招く虞がある。
【0018】
本発明のシーリング材組成物は、改質剤として、(C)炭素数16〜30のエポキシ化オレフィンを含む。当該エポキシ化オレフィン(C)の炭素数は、好ましくは16〜22である。炭素数が16未満の場合、臭気、耐久性低下が問題となる。一方、炭素数が30を超えると、被着体への接着性低下、塗膜変色を起こす原因となる。
【0019】
前記エポキシ化オレフィン(C)として具体的には、例えば、オレフィンオキサイド等が挙げられ、好ましくはα―オレフィンオキサイド等が挙げられる。また、当該エポキシ化オレフィン(C)として、これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明のシーリング材組成物における前記エポキシ化オレフィン(C)の使用量は、組成物全量に対して、好ましくは2.0〜20重量%、より好ましくは5.0〜10重量%である。エポキシ化オレフィン(C)の使用量が2.0重量%未満の場合、耐久性不適合となる虞がある。一方、エポキシ化オレフィン(C)の使用量が20重量%を超えると、接着性の低下、ブリード汚染を招く虞がある。
【0021】
本発明のシーリング材組成物は、好ましくは、さらに、(D)溶解度パラメーターが、6.0〜8.5である溶剤を含む。このような溶剤(D)を含有させることにより、本発明のシーリング材組成物の低温貯蔵安定性をさらに向上させることができる。
当該溶剤(D)の溶解度パラメーターは、6.0〜8.5、好ましくは6.5〜8.0である。溶解度パラメーターが6.0未満の場合もしくは8.5を超えると、低温貯蔵安定性の低下あるいはブリード汚染を招く虞がある。
このような溶剤(D)としては、例えば、炭化水素(好ましくは炭素数5〜30、より好ましくは炭素数5〜24のもの)等が挙げられ、好ましくは、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン系炭化水素(好ましくは炭素数8〜24のもの)等が挙げられる。
また、当該溶剤(D)として、これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明のシーリング材組成物における前記溶剤(D)の使用量は、組成物全量に対して、好ましくは1.0〜10.0重量%、より好ましくは1.0〜5.0重量%である。溶剤(D)の使用量が1.0重量%未満の場合、低温貯蔵安定性が低下する虞がある。一方、溶剤(D)の使用量が10.0重量%を超えると、ブリード汚染を招く虞がある。
【0023】
本発明のシーリング材組成物は、好ましくは、さらに、光安定剤として、(E)下記一般式(I):
【0024】
【化2】

【0025】
〔式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を示す〕
で示される基を有するヒンダードアミン化合物を含む。当該ヒンダードアミン化合物は、塩基性が低く、ニトロソニウムイオンに変化しにくいため、シリコーン系シーリング材のガラス界面のシロキサン結合の解離およびガラス接着面での剥離現象を生じさせない。
【0026】
前記Rにおける炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。なかでも、炭素数1〜18のアルキル基が好ましい。特に炭素数4〜18のアルキル基が好ましい。また、これらのアルキル基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシル基等で置換されていてもよい。
【0027】
前記ヒンダードアミン化合物(E)としては、N−アルコキシヒンダードアミン系光安定剤(>N−OR型HALS)として既知の化合物、例えば、国際公開WO2005/082852に記載の>N−OR型HALS化合物等が挙げられ、好ましくは(i)下式(1)で示されるビス(1−ブトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、(ii)下式(2)で示されるビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(TINUVIN(登録商標)123)、(iii)下式(3)で示されるビス(1−ウンデシロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、(iv)下式(4)で示される化合物、(v)下式(5)で示されるビス(1−ステアロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート等が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
>N−OR型HALSの市販品の例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「TINUVIN(登録商標)123」等が挙げられる。当該ヒンダードアミン化合物(E)として、これらの化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明のシーリング材組成物における前記ヒンダードアミン化合物(E)の使用量は、組成物全量に対して、好ましくは0.001重量%〜10重量%、より好ましくは0.01重量%〜5重量%である。
【0031】
本発明のシーリング材組成物に用い得る他の成分としては、前記成分以外の各種充填剤、可塑剤、硬化触媒、およびその他添加剤などを挙げることができる。
充填剤としては、例えば重質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、タルク、マイカ、クレー、ガラスビーズ、シラスバルーン,ガラスバルーン,シリカバルーン,プラスチックバルーンなどのバルーン、ガラス繊維,金属繊維などの無機繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの有機繊維、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性フィラー、などが使用できる。
可塑剤としては、例えばフタル酸ジエステル類(ジイソノニルフタレートなど)、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類が使用できる。
硬化触媒としては、例えば、ジオクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキサイドなどの錫系触媒、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネートおよびこれらの部分加水分解縮合物、チタンジイソプロピルビスアセチルアセテート、チタンジイソプロピルビスエチルアセトアセテートなどのチタン系触媒、ラウリルアミンなどの有機アミン系触媒等が使用できる。
【0032】
その他の添加剤としては、着色剤(ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料など)、有機溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系高沸点溶剤など)、安定剤(メタノール、エタノールなど)、密着剤(アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、エポキシ化合物など)、老化防止剤(ヒンダードフェノール類、メルカプタン類、スルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、チオアルデヒド類など)、水分保給剤(水、無機塩類の水和物など)、紫外線吸収剤・光安定剤(ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類など)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール類など)、揺変剤(コロイダルシリカ、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド、水添ひまし油など)等を適量範囲で使用できる。
【0033】
かかる構成から成る本発明のシーリング材組成物は、上記配合成分を一括混合した一液型、あるいは上記加水分解性シリル基含有ポリマーを含有する基剤と、硬化触媒を含有する硬化剤の二液型、またはさらに着色剤と可塑剤等からなるトナーを別の一成分とした三液型として使用し得る。
【実施例】
【0034】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例等において、特に明記のない限り、記載された単位は重量を基準とする。
【0035】
〔実施例1〜7および比較例1〜4〕
表1に示す部数(重量部)のA剤の各成分を混合し、2成分形シーリング材の基剤とした。また、表1に示す部数(重量部)のB剤の各成分を混合し、2成分形シーリング材の硬化剤とした。
【0036】
【表1】

【0037】
表中、
注1)変成シリコーンポリマー:株式会社カネカ製「MSポリマー S−810」、シリル末端ポリエーテル(アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)、数平均分子量:18,000、加水分解性シリル基の数:1分子当たりの平均2.4
注2)エポキシ系可塑剤1:新日本理化株式会社製「リカレジンEX−68」、α−オレフィンオキシド(C16、C18のブレンド)
注3)エポキシ系可塑剤2:新日本理化株式会社製「Vikolox 16」、α−オレフィンオキシド(C16)
注4)エポキシ系可塑剤3:新日本理化株式会社製「Vikolox 18」、α−オレフィンオキシド(C18)
注5)エポキシ系可塑剤4:出光興産株式会社製「リニアレンダイマーA−20E」、オレフィンオキシド(C20)
注6)エポキシ系可塑剤5:新日本理化株式会社製「E−PS」、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル
注7)エポキシ系可塑剤6:新日本理化株式会社製「リカレジンEX−24」、α−オレフィンオキシド(C12−14)
注8)エポキシ系可塑剤7:新日本理化株式会社製「Vikolox 14」、α−オレフィンオキシド(C14)
注9)イソパラフィン系溶剤:出光興産株式会社製「FP−38」、SP値=6.9
注10)イソパラフィン系溶剤:日本油脂株式会社製「NAS−5H」、SP値=6.9
注11)フタル酸系可塑剤:新日本理化株式会社製「DINP」
注12)シリル架橋型反応性可塑剤:旭硝子ウレタン株式会社製「S−1000」、シラノール末端ポリウレタン、数平均分子量:5,000、加水分解性シリル基の数:1分子当たりの平均0.8
注13)光安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「TINUVIN(登録商標)123」、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、>N−OR型HALS)
注14)酸化防止剤:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス1010」、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
注15)紫外線吸収剤:城北化学工業株式会社製「JF−79」、2(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
注16)ヒマシ油系揺変剤:楠本化成株式会社製「ディスパロン308」、1,2−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド
注17)プラスチックバルーン:松本油脂製薬株式会社製「MFL−100SCA」、アクリロニトリル系プラスチックバルーン(アクリロ二トリル系プラスチックバルーン20重量%と炭酸カルシウム80重量%の混合物)
注18)脂肪酸処理炭酸カルシウム:白石工業株式会社製「ビスコライトOS」、炭酸カルシウム
注19)重質炭酸カルシウム:備北粉化工業株式会社製「ホワイトンSB」、炭酸カルシウム
注20)カルボン酸錫塩:日東化成株式会社製「ネオスタンU−28」、ジオクチル酸錫
注21)アミン化合物:日本油脂株式会社製「アミンBB」、ラウリルアミン
注22)アルキルベンゼン:新日本石油化学株式会社製「アルケン200P」、アルキルベンゼン。
【0038】
上記のように調製したA剤(基剤)とB剤(硬化剤)を、10:1(重量比)で混合し、型に打設し、23℃×7日間養生して、硬化シート(長さ12cm×幅4cm×厚さ1cm)を作製した。得られた硬化シート(試験体)に対して、以下の性能試験を行った。なお、低温貯蔵安定性については、A剤(基剤)に対して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0039】
[性能試験]
(1)塗料適性
(a)外観変色性
下記塗料を標準仕様に従い試験体表面に塗布し、23℃×7日間+70℃×14日間養生後、塗膜を目視にて観察した。○;変色なし、×;変色有り。
(試験塗料)
下塗り;SKクリアシーラー(SK化研株式会社製)
上塗り;プリーズコート(SK化研株式会社製)
(b)塗料付着性
上記塗料を標準仕様に従い試験体表面に塗布し、23℃×7日間養生後、JIS K 5600-5-6碁盤目試験法(25分割)に準じ塗料付着性を評価した。○;剥離が5升目未満、×;剥離が5升目以上。
(c)塗料汚染性
上記塗料を標準仕様に従い試験体表面に塗布し、23℃×7日間+70℃×14日間養生後、火山灰を振りかけ軽くハケで払い落とし目視にて火山灰付着状況を観察した。○;火山灰の付着は僅か、×;火山灰の付着が著しい。
【0040】
(2)耐久性
JIS A 1439:2004 5.17「耐久性試験」 JIS耐久性区分9030による。
【0041】
(3)低温貯蔵安定性
A剤(基剤)を、(1)−10℃×16時間→5℃×8時間(1サイクル)および(2)−20℃×16時間→5℃×8時間(1サイクル)の2条件にて温度サイクル試験を28サイクル実施後、目視にて観察する。○;均一なペースト状、×;微細な粒子が見られる。
【0042】
【表2】

【0043】
表2から明らかなように、実施例1〜7の2成分形シーリング材は、硬化後に優れた耐久性、塗料適性を示した。これに対して、比較例1〜4の2成分形シーリング材は、塗膜をブリード汚染し、JIS耐久区分9030不適合となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有するポリマーと、
(B)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、
(C)炭素数16〜30のエポキシ化オレフィンと
を含んでなる、シーリング材組成物。
【請求項2】
エポキシ化オレフィン(C)の炭素数が16〜22である、請求項1に記載のシーリング材組成物。
【請求項3】
さらに、(D)溶解度パラメーターが6.0〜8.5である溶剤を含んでなる、請求項1または2に記載のシーリング材組成物。
【請求項4】
溶剤(D)がメチルシクロヘキサンおよび/またはイソパラフィン系炭化水素である、請求項3に記載のシーリング材組成物。
【請求項5】
ポリマー(A)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、請求項1〜4のいずれかに記載のシーリング材組成物。
【請求項6】
ポリマー(B)は、主鎖がポリアルキレンエーテルである、請求項1〜5のいずれかに記載のシーリング材組成物。

【公開番号】特開2010−106063(P2010−106063A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276790(P2008−276790)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】