説明

シールドカバー

【課題】簡単な手順で製作可能で、かつネジ止めのスペースを格段と少なくすることができるように工夫されたシールドカバーを提供する。
【解決手段】シールドカバー30において、1枚の金属板から平面部31及び側壁部32,33,34,35を一体成形し、平面部31を高周波回路の上面に対向して配置する構成とし、この平面部31に対し側壁部32,33,34,35を略直角に折り曲げてその自由端を実装基板上に取り付ける構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば高周波回路等に用いられるシールドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ波通信においては、移動体通信等に適用できるような開発が盛んに行われている。この種の通信システムにおいて、通信装置中の高周波回路は、外部からのノイズの混入等を防ぐためにシールドカバーで覆われることになる(例えば、非特許文献1)。
【0003】
ところで、従来は、金属塊を通称「削り出し」と呼ばれる加工方法を用いてシールドカバーを製作していた。基板上に実装するシールドカバーを考えた場合、シールドカバーを固定するためにネジ止めを行うためのスペースを多く確保する必要がある。また、内部に仕切りがある場合には、外周と同じだけのネジを止めるための金属の幅を必要とする。
【非特許文献1】レーダ技術 財団法人電子情報通信学会(p.165)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記シールドカバーでは、外周にネジ止めを行うためのスペースを多く確保する必要があり、省スペース化を図ることができない。また、上記シールドカバーの製作が「削り出し」で加工する手順を踏むため、簡単な手順で製作できる手法も強く望まれている。
【0005】
そこで、この発明の目的は、簡単な手順で製作可能で、かつネジ止めのスペースを格段と少なくすることができるように工夫されたシールドカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るシールドカバーは、電子回路の実装基板を覆い、当該電子回路を外部から保護するシールドカバーにおいて、1枚の金属板から成り、電子回路の上面に対向して配置される第1の板部と、この第1の板部に対し当該第1の板部と同一厚みを有して略直角に折り曲げられ、自由端が実装基板上に取り付けられる第2の板部とを一体成形したものである。
【0007】
この構成によれば、1枚の金属板から第1の板部及び第2の板部を一体成形し、第1の板部を実装基板の形状に沿って電子部品の上面に対向して配置する構成とし、この第1の板部に対し第2の板部を略直角に折り曲げてその自由端を実装基板上に取り付ける構成としている。
【0008】
従って、1枚の金属板を折り曲げるだけの構成であるので、簡単な手順で製作でき、ネジ止めのためのスペースが不要になる分、省スペース化を図ることができる。
【0009】
また、実装基板上に複数の電子回路を実装しているとき、複数の電子回路間を仕切るしきり板を第1の板部に取り付けたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、電子回路の実装数に応じて、電子回路間を仕切るしきり板を第1の板部に取り付けるだけでよく、シールドカバー本体を新たに加工する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したようにこの発明によれば、簡単な手順で製作可能で、かつネジ止めのスペースを格段と少なくすることができ、省スペース化に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るシールドカバーが実装基板に実装される構成を示す斜視図である。
【0013】
図1において、符号10は実装基板で、上面に高周波回路21,22を実装している。この実装基板10の高周波回路21,22を実装した面には、シールドカバー30が取り付けられる。
【0014】
シールドカバー30は、詳細は後述するが、高周波回路21,22と対向する下面が全面開設した薄箱状であり、その中央部には高周波回路21,22間を仕切る仕切り板40を取り付けている。
【0015】
まず、仕切り板40について説明する。
仕切り板40は、長手方向に見た場合、L字形であり、水平な一片はシールドカバー30の平面部31にリベット打ちで固定される。また、仕切り板40の垂直に起立した垂直片は、高周波回路21,22間に介在することになる。
【0016】
図2は、上記シールドカバー30の構造を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。
【0017】
このシールドカバー30は、実装基板10と平行に配置されかつ高周波回路21,22の上面と対向する平面部31と、実装基板10に取り付けられる側壁部31,32,33,34とを一体成形した金属板である。
【0018】
左右の側壁部32,33は、実装基板10の図示しないネジ受部にネジ止めされる。このため、左右の側壁部32,33には、図2(a)に示すように、ネジ穴32a,33aが設けられている。
【0019】
また、前後の側壁部34,35も、上記側壁部32,33と同様に、実装基板10の図示しないネジ受部にネジ止めされる。このため、側壁部34には、図2(a)に示すように、ネジ穴34a,34b,34cが設けられ、側壁部35にも、ネジ穴35a,35b,35cが設けられている。
【0020】
さて、このようなシールドカバー30の実装基板10への取り付けは、次のように行われる。図3は、その取り付け手順と取り付け構造を示す斜視図である。
【0021】
まず、シールドカバー30の側壁部32,33,34,35を図中下面方向へ直角に折り曲げ、図3(b)に示す状態とする。
【0022】
以後、薄箱状に形成されたシールドカバー30を、図3(c)に示すように、実装基板10の高周波回路21,22実装面に載置する。このとき、側壁部34が図3(c)中前面に位置し、側壁部35が図3(c)中背面に位置するように載置する。
【0023】
なお、上記接続終了後、図4に示すように、ネジ穴32a,33a,34a,34b、34c,35a,35b,35cがネジ止めされ、これによりシールドカバー30が実装基板10上に固定されることになる。
【0024】
次に、上記シールドカバー30の運用について説明する。
【0025】
例えば実装基板10上に高周波回路21,22を実装する場合、従来は、図5に示すように、シールドカバー50を固定するためにネジ止めを行うためのスペースを多く確保する必要があった。また、内部に仕切りがある場合には、外周と同じだけのネジを止めるための金属の幅を必要とした。さらに、「削り出し」を行っているため、シールドカバー50の製作に多くの手間と時間がかかっていた。
【0026】
本実施形態の場合、シールドカバー30に仕切り板40を一片が高周波回路21,22間に介在するように取り付けるだけでよく、シールドカバー30自体に何ら手を加える必要がない。また、高周波回路を追加する場合であっても、仕切り板を製作し、取り付けるだけでよい。さらに、高周波回路22を削除する場合には、仕切り板40をシールドカバー30から取り外すだけでよい。
【0027】
以上のように上記実施形態では、シールドカバー30において、1枚の金属板から平面部31及び側壁部32,33,34,35を一体成形し、平面部31を高周波回路21,22の上面に対向して配置する構成とし、この平面部31に対し側壁部32,33,34,35を略直角に折り曲げてその自由端を実装基板10上に取り付ける構成としている。
【0028】
従って、1枚の金属板を折り曲げるだけの構成であるので、簡単な手順でシールドカバー30を製作でき、ネジ止めのためのスペースが不要になる分、省スペース化を図ることができる。
【0029】
また、上記実施形態では、高周波回路21、22の実装数に応じて、高周波回路21,22間を仕切る仕切り板40をシールドカバー30の平面部31に取り付けるだけでよく、シールドカバー30本体を新たに加工する必要がなくなる。
【0030】
なお、上記実施形態では、仕切り板40をシールドカバー30の平面部31にリベット打ちで固定する例について説明した。しかしこれに限ることなく、ネジ止め、溶接などの方法で固定しても構わない。
【0031】
また、実装基板10とシールドカバー30との隙間が許容できない場合には導電性のあるゴム等を用いて、その隙間を塞ぐ。
【0032】
なお、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施形態に係るシールドカバーが実装基板に実装される構成を示す斜視図。
【図2】この発明の一実施形態に係わるシールドカバーの構造を示す平面図及び側面図。
【図3】図2に示したシールドカバーを実装基板に取り付ける手順とその構造を示す斜視図。
【図4】同実施形態におけるシールドカバーの固定状態を下から見て示した図。
【図5】従来のシールドカバーを示す平面図。
【符号の説明】
【0034】
10…実装基板、21,22…高周波回路、30,50…シールドカバー、31…平面部、32,33,34,35…側壁部、40…仕切り板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路の実装基板を覆い、当該電子回路を外部から保護するシールドカバーにおいて、
1枚の金属板から成り、前記電子回路の上面に対向して配置される第1の板部と、
この第1の板部に対し当該第1の板部と同一厚みを有して略直角に折り曲げられ、自由端が前記実装基板上に取り付けられる第2の板部とを一体成形したことを特徴とするシールドカバー。
【請求項2】
前記実装基板上に複数の電子回路を実装しているとき、前記複数の電子回路間を仕切るしきり板を前記第1の板部に取り付けたことを特徴とする請求項1記載のシールドカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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