説明

シールドコネクタ

【課題】シールド圧着部の圧着作業によって端子と芯線の接続箇所がダメージを受けないシールドコネクタを提供する。
【解決手段】シールドシェル部12とシールド圧着部17を有し、シールド圧着部17がシールド電線1のシールド被覆線3に圧着されたシールド端子11と、シールド電線1の芯線2を保持し、シールドシェル部12に組み付けられたケーブルホルダ20と、圧接端子50を固定し、ケーブルホルダ20が組み付けられたシールドシェル部12に対し組み付けられ、この組み付け時の圧接端子50の移動によって圧接端子50が芯線2に圧接されたコネクタハウジング40とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線の端末に接続されるシールドコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のシールドコネクタとして、特許文献1に開示されたものが提案されている。このシールドコネクタ100は、図9及び図10に示すように、コネクタ嵌合室101aを有するコネクタハウジング101と、このコネクタハウジング101内に収容された接続端子102と、コネクタハウジング101の外面に配置されたシールドシェル端子110とを備えている。
【0003】
コネクタ嵌合室101aには、相手コネクタ130が嵌合される。接続端子102には、シールド電線120の芯線121の導体121aが例えば半田付けによって接続されている。シールドシェル端子110は、コネクタハウジング101の外面を被うシールドシェル部111と、このシールドシェル部111に一体に付設されたシールド圧着部112とを有する。シールドシェル部111は、コネクタハウジング101に加締めによって固定されている。シールド圧着部112は、シールド電線120のシールド被覆線120bに圧着されている。
【0004】
次に、シールドコネクタ100の組み付け手順を説明する。先ず、接続端子102にシールド電線120の芯線121の導体121aを例えば半田付けで接続する。次に、接続端子102をコネクタハウジング101内に配置する。次に、コネクタハウジング101をシールドシェル端子110のシールドシェル部111を組み付ける。最後に、シールド圧着部112をシールド電線120のシールド被覆線122に圧着し、これで組み付けが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−147359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のシールドコネクタ100では、シールド圧着部112をシールド電線120のシールド被覆線122に圧着する際に、圧着による引っ張り力・圧縮力が接続端子102と芯線121の接続箇所に作用する。これにより、接続端子102と芯線121の接続箇所がダメージ(例えば、接続の損傷)を受ける恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、シールド圧着部の圧着作業によって端子と芯線の接続箇所がダメージを受けないシールドコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シールドシェル部とシールド圧着部を有し、前記シールド圧着部がシールド電線のシールド被覆線に圧着されたシールド端子と、前記シールド電線の芯線を保持し、前記シールドシェル部に組み付けられたケーブルホルダと、圧接端子を固定し、前記ケーブルホルダが組み付けられた前記シールドシェル部に対し組み付けられ、この組み付け時の圧接端子の移動によって前記圧接端子が前記芯線に圧接されたコネクタハウジングとを備えたことを特徴とするシールドコネクタである。
【0009】
前記ケーブルホルダは、前記芯線が収容される芯線収容溝を有し、前記ケーブルホルダは、前記芯線収容溝の開口が前記シールドシェル部で閉塞する向きで組み付けらることが好ましい。
【0010】
前記ケーブルホルダは、前記コネクタハウジングの前記圧接端子が挿入される端子挿入孔を有することが好ましい。
【0011】
前記シールドシェル部と前記コネクタハウジングには、いずれか一方にスライドレール部が、他方に前記スライドレール部が挿入するスライド溝が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シールド圧着部の圧着作業、圧接端子の圧接作業の順に組み付けができるため、シールド圧着部の圧着作業より圧接端子の圧接作業が後である。従って、シールド圧着部の圧着作業によって端子と芯線の接続箇所がダメージを受けない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの芯線保持工程の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの芯線保持工程の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの芯線保持工程の側面図である。
【図7】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタのホルダ組み付け工程及びシールド圧着工程後の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態を示し、シールドコネクタの端子圧接工程の斜視図である。
【図9】従来例を示し、シールドコネクタと相手コネクタの斜視図である。
【図10】従来例を示し、シールドコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図8は本発明の一実施形態を示す。図1〜図3に示すように、シールドコネクタ10は、シールド電線1の端末に接続される。
【0016】
シールド電線1は、2本の芯線2と、この2本の芯線2の外周を被覆するシールド被覆線3とを有する。2本の芯線2は、互いに縒られたツイストペア線である。各芯線2は、絶縁被覆された導体2aより形成されている。シールド被覆線3は、例えばメッシュ導体より形成されている。シールド電線1の端末側は、シールド被覆線3が剥ぎ取られ、2本の芯線2が露出されている。
【0017】
シールドコネクタ10は、シールド端子11と、シールド端子11に組み付けされたケーブルホルダ20と、シールド端子11に同じく組み付けされたコネクタハウジング40とを備えている。
【0018】
シールド端子11は、導電材より形成されている。シールド端子11は、シールドシェル部12と、このシールドシェル部12の後端側より一体に延設されたシールド圧着部17とを有する。シールドシェル部12は、底面壁12aと一対の側面壁12bより形成されている。シールドシェル部12は、上面と前面が開口している。一対の側面壁12bには、一対のロック穴13がそれぞれ形成されている。一対の側面壁12bには、一対のスライドレール部14と、一対の係止アーム爪15が設けられている。
【0019】
シールド圧着部17は、半円弧状の一対の加締め部17aを有する。シールド圧着部17は、一対の加締め部17aを縮径する方向に加締められている。この加締めによる塑性変形力によってシールド圧着部17がシールド被覆線3の外周面に圧着されている。
【0020】
ケーブルホルダ20は、上方よりシールドシェル部12内に挿入されることによって組み付けられている。これにより、ケーブルホルダ20は、ほぼ三面がシールドシェル部12で覆われている。
【0021】
ケーブルホルダ20は、ホルダ本体21と、このホルダ本体21にスライド係止されたケーブル係止片27とを有する。
【0022】
ホルダ本体21は、絶縁材より形成されている。ホルダ本体21には、底面に開口する一対の芯線収容溝22と、一対の芯線収容溝22に連通する芯線挟持溝23が設けられている。一対の芯線収容溝22には、一対の芯線2がそれぞれ収容されている。一対の芯線挟持溝23には、各芯線収容溝22に収容された一対の芯線2の先端が配置されている。ホルダ本体21の両側面には、一対のロック爪24が設けられている。この一対のロック爪24がシールドシェル部12の一対のロック穴13に係止されている。
【0023】
ホルダ本体21には、ケーブル係止片26がスライド挿入されるスライド凹部25が設けられている。ホルダ本体21には、このスライド凹部25の両側面に開口する一対のロック穴26が設けられている。
【0024】
ケーブル係止片27は、ホルダ本体21と同様に、絶縁材より形成されている。ケーブル係止片27の両側面には、一対のロック爪28が設けられている。ケーブル係止片27の挿入先端には、一対の芯線挟持溝29が設けられている。ケーブル係止片27は、スライド凹部25にスライド挿入され、且つ、一対のロック爪28が一対のロック穴26に係止されて装着されている。一対の芯線2の先端は、ホルダ本体21とケーブル係止片27の双方の芯線挟持溝23,29に挟持されて固定されている。
【0025】
ケーブルホルダ20には、ホルダ本体21とこれに係止されたケーブル係止片27の底面によって一対の端子挿入孔30が構成されている。一対の端子挿入孔30の奥は、各芯線収容溝22に開口している。これにより、各端子挿入孔30の奥には、各芯線2が配置されている。各端子挿入孔30の幅は、下記する圧接端子50の圧接刃部52より若干だけ広い幅に設定されている。
【0026】
コネクタハウジング40には、一対のスライド溝41と一対のロック壁42がそれぞれ両側壁に設けられている。コネクタハウジング40は、一対のスライド溝41にシールドシェル部12の一対のスライドレール部14を位置合わせしてスライド挿入され、一対のロック壁42にシールドシェル部12の一対の係止アーム爪15が係止されて組み付けされている。これにより、コネクタハウジング40は、ほぼ三面がシールドシェル部12で覆われている。コネクタハウジング40は、絶縁材より形成されている。コネクタハウジング40は、その前面側に開口するコネクタ嵌合室43を有する。このコネクタ嵌合室43に相手コネクタ(図示せず)が嵌合される。
【0027】
コネクタハウジング40には、一対の圧接端子50が固定されている。一対の圧接端子50は、例えば、コネクタハウジング40へのインサート成形や圧入によって固定される。各圧接端子50は、コネクタ嵌合室43に配置される端子接続部51とコネクタハウジング40の後面より突出する圧接刃部52とを有する。圧接刃部52は、ケーブルホルダ20の端子挿入孔30に挿入され、芯線2に圧接されている。詳細には、芯線2の被覆を突き破って内部の導体2aに圧接されている。
【0028】
次に、シールドコネクタ10の組み付け手順を説明する。先ず、図4に示すように、一対の芯線2の先端をホルダ本体21の底面側から一対の芯線挟持溝23に挿入する。そして、ホルダ本体21のスライド凹部25にケーブル係止片27をスライド挿入し、ケーブル係止片27のロック爪28をホルダ本体21のロック穴26に係止する。すると、一対の芯線2の先端がホルダ本体21とケーブル係止片27の双方の芯線挟持溝23,29間で挟持される。これで、一対の芯線2の先端がケーブルホルダ20に保持される(芯線保持工程)。
【0029】
次に、図5にて矢印にて示すように、ケーブルホルダ20を一対の芯線2に対して90度回転し、一対の芯線2を一対の芯線収容溝22にセットする(図6参照)。そして、一対の芯線収容溝22の開口を挿入先端とし、ケーブルホルダ20をシールド端子11のシールドシェル部12にその上方より挿入する。ホルダ本体21の底面がシールドシェル部12の底面壁12aに突き当たる位置まで挿入すると、ホルダ本体21の一対のロック爪24がシールドシェル部12の一対のロック穴13に係止される。一対の芯線収容溝22の開口は、シールドシェル部12の底面壁12aで閉塞される。これで、図7に示すように、ケーブルホルダ20がシールド端子11のシールドシェル部12に組み付けられる(ホルダ組み付け工程)。
【0030】
次に、シールド端子11のシールド圧着部17内にシールド電線1のシールド被覆線3をセットし、シールド圧着部17の一対の加締め部17aを加締める。これで、図7に示すように、シールド圧着部17がシールド被覆線3に圧着される(シールド圧着工程)。
【0031】
次に、図8に示すように、一対の圧接端子50を挿入先端としてコネクタハウジング40をシールドシェル部12の前方より挿入する。この挿入の際は、コネクタハウジング40の一対のスライド溝41をシールドシェル部12の一対のスライドレール部14に挿入してスライド挿入する。スライド完了位置では、コネクタハウジング40のロック壁42にシールドシェル部12の係止アーム爪15が係止される。これで、コネクタハウジング40がシールドシェル部12に組み付けられる。又、コネクタハウジング40のスライド挿入過程では、一対の圧接端子50の各圧接刃部52がケーブルホルダ20の端子挿入孔30に挿入され、挿入された各圧接刃部52が各芯線2に圧接される(ハウジング組み付け・端子圧接工程)。
【0032】
以上説明したように、シールドコネクタ10は、シールドシェル部12とシールド圧着部17を有し、シールド圧着部17がシールド電線1のシールド被覆線3に圧着されたシールド端子11と、シールド電線1の芯線2を保持し、シールドシェル部12に組み付けられたケーブルホルダ20と、圧接端子50を固定し、ケーブルホルダ20が組み付けられたシールドシェル部11に対し組み付けられ、この組み付け時の圧接端子50の移動によって圧接端子50が芯線2に圧接されるコネクタハウジング40とを備えている。従って、前記した組み付け手順のように、シールド圧着部17の圧着作業、圧接端子50の圧接作業の順に組み付けができるため、シールド圧着部17の圧着作業より圧接端子50の圧接作業が後である。従って、シールド圧着部17の圧着作業によって圧接端子50と芯線2の接続箇所が何らダメージ(例えば接続箇所の損傷)を受けない。
【0033】
また、シールド電線1の芯線2とシールド被覆線3の各接続作業は、圧接作業と圧着作業であるため、従来のようなハンダ付け作業と圧着作業に比べて接続作業が容易となる。
【0034】
ケーブルホルダ20は、芯線2が収容される芯線収容溝22を有し、ケーブルホルダ20は、芯線収容溝22の開口がシールドシェル部12で閉塞する向きで組み付けられている。従って、芯線2の芯線収容溝22への収容作業性を維持しつつ、芯線2が芯線収容溝22より飛び出すことを防止でき、圧接端子50と芯線2を確実に圧接させることができる。
【0035】
ケーブルホルダ20は、コネクタハウジング40の圧接端子50が挿入される端子挿入孔30を有する。従って、圧接端子50は端子挿入孔30によって挿入がガイドされるため、圧接端子50を確実に芯線2に圧接させることができる。
【0036】
又、端子挿入孔30は、圧接端子50の圧接刃部52の幅寸法より若干だけ大きい幅に設定されている。従って、圧接時の反力によって圧接刃部52が広がるのを端子挿入孔30によって規制できる。これによっても圧接端子50を確実に芯線2に圧接させることができる。
【0037】
圧接端子50が芯線2に圧接する位置は、ケーブルホルダ20による保持箇所、つまり、位置決め箇所と、折曲による位置決め箇所の間であるため、これによって圧接端子50を確実に芯線2に圧接させることができる。
【0038】
シールドシェル部12にはスライドレール部14が、コネクタハウジング40にはスライド溝41がそれぞれ設けられている。従って、コネクタハウジング40を容易に、且つ、簡単にシールドシェル部12に組み付けできる。又、前記とは逆に、シールドシェル部12にスライド溝41を、コネクタハウジング40にはスライドレール部14を設けても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 シールド電線
2 芯線
3シールド被覆線
10 シールドコネクタ
11 シールド端子
12 シールドシェル部
14 スライドレール部
17 シールド圧着部
20 ケーブルホルダ
22 芯線収容溝
30 端子挿入孔
40 コネクタハウジング
41 スライド溝
50 圧接端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドシェル部とシールド圧着部を有し、前記シールド圧着部がシールド電線のシールド被覆線に圧着されたシールド端子と、
前記シールド電線の芯線を保持し、前記シールドシェル部に組み付けられたケーブルホルダと、
圧接端子を固定し、前記ケーブルホルダが組み付けられた前記シールドシェル部に対し組み付けられ、この組み付け時の前記圧接端子の移動によって前記圧接端子が前記芯線に圧接されたコネクタハウジングとを備えたことを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のシールドコネクタであって、
前記ケーブルホルダは、前記芯線が収容される芯線収容溝を有し、前記ケーブルホルダは、前記芯線収容溝の開口が前記シールドシェル部で閉塞する向きで組み付けられたことを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のシールドコネクタであって、
前記ケーブルホルダは、前記コネクタハウジングの前記圧接端子が挿入される端子挿入孔を有することを特徴とするシールドコネクタ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のシールドコネクタであって、
前記シールドシェル部と前記コネクタハウジングには、いずれか一方にスライドレール部が、他方に前記スライドレール部が挿入するスライド溝が設けられたことを特徴とするシールドコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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