説明

シールドフラットケーブル

【課題】高温の環境下においてもシールドフィルムとグランドバーの導通抵抗が上昇せずシールド性能を良好に維持することができるシールドフラットケーブルを提供する。
【解決手段】複数本の平角導体13が平行に並べられ、上下から絶縁フィルム14で挟んで被覆され、少なくとも一方の端部で平角導体13の片面が露出され、上下の絶縁フィルム14の少なくとも一方の絶縁フィルム上にシールドフィルム15が貼り付けられ、シールドフィルム15の端部外面にグランドバー16が導電性接着剤により接着される。平角導体13が露出された反対側の端部に補強板17が接着され、平角導体が露出された側でシールドフィルムの端部外面にグランドバー16が接着される。なお、シールドフィルム15が補強板17の外面を覆い、その上からグランドバー16が接着されるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の導体を平行に並べて上下から絶縁フィルムで挟んで被覆し、その外側を共通のシールドフィルムで覆ってシールドし、少なくとも一方の端部に、コネクタ接続を行うための端末部を備えるシールドフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブル(FFC)は、CDやDVDプレーヤ等のAV機器、コピー機やプリンタ等のOA機器、その他に電子・情報機器の内部配線等の多くの分野で、省スペース化と簡便な接続を目的として用いられている。また、機器の使用周波数が高くなるとノイズの影響が大きくなることから、シールドされたシールドフラットケーブルが用いられる。ケーブルのシールドは、例えば、FFCの上下の両面をシールドフィルムで覆って形成される。
【0003】
シールドフラットケーブルのシールドフィルムは、ケーブル端末部をコネクタ等に接続するに際して、コネクタ等のグランド端子と接続されることが必要である。グランド端子とシールドフィルムとを電気的に導通させるには、例えば、特許文献1に開示されるように、シールドフィルムの導電層にバー状の導体を密着させて樹脂でモールド固定あるいは樹脂シートで固定している。また、特許文献2には、シールドフィルムを耐熱性の接着剤で接着させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−133781号公報
【特許文献2】国際公開第02/05297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のシールドフィルムの導電層面にグランドバーを接触させ、その接触を樹脂モールドあるいは樹脂テープで固定する方法は、グランドバーの固定のための余分な工程が必要であり、また、温度変化等でグランドバーを固定している樹脂が周囲の温度により変化してシールドフィルム導電層とグランドバー間の導通抵抗が上昇する恐れがある。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、高温の環境下においてもシールドフィルムとグランドバーの導通抵抗が上昇せずシールド性能を良好に維持することができるシールドフラットケーブルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるシールドフラットケーブルは、複数本の平角導体が平行に並べられ、上下から絶縁フィルムで挟んで被覆され、少なくとも一方の端部で平角導体の片面が露出され、上下の絶縁フィルムの少なくとも一方の絶縁フィルム上にシールドフィルムが貼り付けられ、該シールドフィルムの端部外面にグランドバーが導電性接着剤により接着されていることを特徴とする。
【0008】
前記の平角導体が露出された反対側の端部に補強板が接着され、平角導体が露出された側でシールドフィルムの端部外面にグランドバーが接着される。あるいは、シールドフィルムが補強板の外面を覆い、その上からグランドバーが接着されるようにしてもよい。
また、シールドフィルムが平角導体を露出していない側の絶縁フィルムの端部を含む外面を覆って貼り付けられ、その上からグランドバーが接着されていてもよく、さらに、グランドバーの先端側に細幅の補強板が並列に接着されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケーブル端末部が電気コネクタに挿入された際に、グランドバーとシールドフィルムとは電気コネクタとの嵌合による圧力により確実に接触される。高温環境下でもシールドフィルムとグランドバーの接触が不安定になることがなく、したがって導通抵抗が悪くなることもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の概略を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態を説明する断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1により本発明の概略を説明する。図1(A)はグランドバーを平角導体の露出側に設けた例を示す図、図1(B)はグランドバーを平角導体の露出側と反対側に設けた例を示す図である。図中、11はシールドフラットケーブル、12はケーブル端末部、13は平角導体、14は絶縁フィルム、14aは上側フィルム、14bは下側フィルム、15はシールドフィルム、16はグランドバー、17は補強板、18は絶縁体を示す。
【0012】
本発明によるシールドフラットケーブル11は、図1(A)に示すように、例えば、断面が平形の複数本の平角導体13を平行に並べ、その両面(上下面)を絶縁フィルム14で挟んで絶縁被覆したフラットケーブルが用いられる。フラットケーブルの少なくとも一方の端部では、絶縁フィルム14の上側フィルム14aを除去して、コネクタの接触端子接片との接触接続部となる平角導体部分を露出させてケーブル端末部12とされる。また、ケーブル端末部12で除去されていない下側フィルム14bには、樹脂性の補強板17が貼り付けられてコネクタ(雌型のエッジコネクタ)への挿抜が可能な強度を持たせている。
【0013】
絶縁フィルム14の外面は、少なくとも片面側をシールドフィルム15で覆って( 図では両側の全面を覆う例で示す)シールドする。シールドフィルム15は、例えば、絶縁層、金属層、接着層の層形状からなるものが用いられ、その金属層を外側にして絶縁フィルム14の外面に巻き付けるようにして接着剤等で貼り付ける。接着剤を予め層状に塗布して3層構造としてもよい。また、シールドフィルム15は、平角導体13が露出されている側(以下、上側という)では、平角導体13と電気短絡が生じない程度の距離L(0.2mm〜10mm)を隔てた後方に端部エッジが位置するように貼り付ける。そして、補強板17が貼り付けられた側(以下、下側という)では、補強板17の後端に接するように端部エッジが位置するように貼り付ける。
【0014】
上側のシールドフィルム15には、電気コネクタ等のグランド接地用接触端子と接続するためのグランドバー16が導電性接着剤を介して接着固定される。なお、シールドフィルム15の金属層の面は、グランドバー16が少なくとも一部露出するように絶縁フィルム14と同様なフィルムからなる絶縁体18で被覆し、電気的に絶縁すると共に損傷から保護する。
【0015】
図1(B)に示す例では、上側のシールドフィルム15は、図1(A)の例と同様に平角導体13と電気短絡が生じない程度の距離L(0.2mm〜10mm)を隔てた後方に端部エッジが位置するように貼り付ける。そして、補強板17が貼り付けられた下側では、補強板17の先端部分を残してほぼ補強板17の全面を覆うように下側のシールドフィルム15を貼り付ける。
【0016】
そして、グランドバー16は、補強板17に重ねて貼り付けられた下側のシールドフィルム15の上から導電性接着剤を介して接着固定される。なお、シールドフィルム15の外面は、図1(A)の場合と同様に、グランドバー16が少なくとも一部露出するように絶縁体18で被覆し、金属層の面を電気的に絶縁すると共に損傷から保護する。
【0017】
信号用の平角導体13は、例えば、銅箔、錫メッキ軟銅箔等の導電性金属からなり、信号伝送の電流値にもよるが、例えば、厚さが12μm〜100μmで、幅が0.2〜0.8mm程度で、ピッチPが0.5〜1.0mmで配列される。この平角導体13の配列状態は、絶縁フィルム14の上下側フィルム14a,14bにより挟まれて保持される。
【0018】
上下側フィルム14a,14bは、その内面(接合面)に接着層(図示省略)を有する。上下側フィルム14a,14b自体は、柔軟性に優れた一般的な樹脂フィルムが使用され、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の汎用性のある樹脂フィルムを用いることができる。この樹脂フィルムの厚さとしては、9μm〜50μmのものが用いられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂等の樹脂材料が挙げられる。なお、これらの樹脂フィルムのうち、電気的特性、機械的特性、コスト等の観点からは、ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用が好ましい。
【0019】
シールドフィルム15は、例えば、アルミニウム箔や銅箔(厚さ5μm〜50μm)等の金属箔と、中間層となる樹脂層と、この樹脂層上に熱可塑性接着剤層(厚さ10μm〜50μm)を有する3層構造のものなどが使用される。なお、樹脂層には、ポリエチレンテレフタレート等の厚さ9μm程度の樹脂フィルムが用いられるが、金属箔の強度が十分である場合は、該樹脂層は省略することもできる。
このシールドフィルム15の、ケーブルへの貼り付けの形態としては、金属箔を外側にして1枚の幅広のフィルムで絶縁フィルム14の全体を包むようにして巻き付け、上記の接着剤層で接着して全体をシールドする。
【0020】
グランドバー16は、平角導体13と同様な、例えば、錫メッキ銅箔等の厚さ9μm〜100μmで形成される。このグランドバー16は、シールドフィルム15との接触面に銀ペースト等の導電性接着剤を厚さ10μm〜50μmで塗布して、シールドフィルム15と電気的に導通させると共に、接着固定される。この場合の導電性接着剤としては、熱可塑性のもの又は熱硬化性のものを用いることができる。熱硬化性接着剤を使用すると高温環境下で接着剤が軟化しないので、シールドフィルムとグランドバーの接触が不安定になる恐れが一層少ない。
【0021】
図2は、本発明の実施形態を説明する断面図で、図中の符号は図1の説明で用いたのと同じ符号を用いることにより、詳細な説明を省略する。
図2(A),(B)は、図1(A)で説明した形態のシールドフラットケーブルに対応するもので、平角導体13が露出された上側フィルム14a上のシールドフィルム15aの先端部に、端部エッジの位置を揃えてグランドバー16が導電性接着剤により接着固定される。平角導体13が露出されていない下側フィルム14bには、補強板17が接着固定される。
【0022】
下側のシールドフィルム15bは、図2(A)に示すように、補強板17が接着固定される下側フィルム14b側にも巻き付けて貼り付け、上側のシールドフィルム15aと合せて、上下側フィルム14a,14bの全体をシールドする。しかし、図2(B)に示すように、グランドバー16が接着される上側のシールドフィルム15aのみとし、下側のシールドフィルム15bは省略してもよい。また、シールドフィルム15a,15bの外側が金属層となるので、電気的な絶縁と保護のために絶縁体18a,18bで覆うのが好ましい。なお、図2(B)のように下側のシールドフィルム15bを省略した場合は、下側を覆う絶縁体18bも省略することができる。
【0023】
図2(C),(D)は、図1(B)で説明した形態のシールドフラットケーブルに対応するもので、補強板17が接着固定された下側フィルム14bに貼り付けた下側のシールドフィルム15bの先端部分を、補強板17を覆うように貼り付けている。そして、グランドバー16は、補強板17を覆うように貼り付けて下側のシールドフィルム15bの先端部分に導電性接着剤により接着固定される。
【0024】
上側のシールドフィルム15aは、図2(C)に示すように、単に絶縁フィルム14aの表面を覆い、下側のシールドフィルム15bと合せて、上下側フィルム14a,14bの全体をでシールドする。しかし、図2(D)に示すように、グランドバー16が接着される下側のシールドフィルム15bのみとし、上側のシールドフィルム15aは省略してもよい。また、シールドフィルム15a,15bの外側が金属層となるので、電気的な絶縁と保護のために絶縁体18a,18bで覆うのが好ましい。なお、図2(D)のように上側のシールドフィルム15aを省略した場合は、上側を覆う絶縁体18aも省略することができる。
【0025】
図3は、本発明の他の実施形態を説明する断面図で、図中の符号は図1,2の説明で用いたのと同じ符号を用いることにより、詳細な説明を省略する。
図3(A)〜(D)は、図1,2で説明した樹脂性の補強板17を、グランドバー16に兼用させたもので、例えば、グランドバーを図1,2で用いたものより厚めにして強度を高めるか、又は、強度の高い導電材料を用いることにより実現することができる。
【0026】
このため図3の例では、平角導体13が露出されていない下側フィルム14bに貼り付けた下側のシールドフィルム15bの先端が、下側フィルム14bの先端に揃うようにする。そして、図3(A),(B)に示すように、グランドバー16を下側のシールドフィルム15bの先端に位置を揃えて導電性接着剤により接着固定する。これにより、グランドバー16はシールドフラットケーブルの補強板としての機能も兼ね備え、図1,2で示した補強板17を省略することができ、この結果、ケーブル端末部を薄くすることができる。
【0027】
また、図3(C),(D)に示すように、グランドバー16とシールドフィルム15bの端部エッジはカットによるバリが残り、信号導体13と短絡する恐れがあることから、端部エッジをケーブル先端から多少(0.2mm〜10mm程度)後退させた位置で接着固定する。そして、後退させた部分に細幅の絶縁材からなる補強板17aをグランドバー16、シールドフィルム15bと並列状態にして接着固定する。これにより、グランドバー16、シールドフィルム15bと信号導体13間の絶縁距離を大きくして、電気的短絡が抑制することができる。
【0028】
また、図3(A),(C)では、図2(A),(C)の例と同様に、平角導体13が露出された上側のシールドフィルム15aは、上側フィルム14aの表面を覆い、下側のシールドフィルム15bと合せて、上下側フィルム14a,14bの全体をでシールドしている。しかし、図3(B),(D)に示すように、グランドバー16が接着される下側のシールドフィルム15bのみとし、上側のシールドフィルム15aは省略してもよい。また、シールドフィルム15a,15bの外側が金属層となるので、電気的な絶縁と保護のために絶縁体18a,18bで覆う。なお、図3(B),(D)のように上側のシールドフィルム15aを省略した場合は、上側を覆う絶縁体18aも省略することができる。
【0029】
上述した構成のシールドフラットケーブルは、ケーブル端末部が、電気コネクタ内に挿入されたとき、電気コネクタのグランド接地用接触端子がグランドバーを押圧するようにして接続される。グランドバーが押圧されると、その内側のシールドフィルムの金属層との接触が増強され、導通抵抗を小さくして良好な接地接続を形成することができる。この結果、高温の環境下においても、グランドバーとシールドフィルムとの間に介在する導電性接着剤の導通抵抗が上昇するのを抑制することができ、シールド機能の劣化を防止することができる。
【0030】
上記したシールドフラットケーブルは、平角導体を挟む絶縁フィルムとシールドフィルムとの間のインピーダンスは一定にすることができる。また、上記の本発明の構成は、絶縁フィルムとシールドフィルムとの間に、インピーダンス調整用の誘電体からなる介在層を介在させる高周波対応のシールドフラットケーブルに対しても有効である。
【符号の説明】
【0031】
11…シールドフラットケーブル、12…ケーブル端末部、13…平角導体、14…絶縁フィルム、14a…上側フィルム、14b…下側フィルム、15,15a,15b…シールドフィルム、16…グランドバー、17,17a…補強板、18,18a,18b…絶縁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の平角導体が平行に並べられ、上下から絶縁フィルムで挟んで被覆され、少なくとも一方の端部で前記平角導体の片面が露出され、上下の前記絶縁フィルムの少なくとも一方の絶縁フィルム上にシールドフィルムが貼り付けられ、該シールドフィルムの端部外面にグランドバーが導電性接着剤により接着されていることを特徴とするシールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記平角導体が露出された反対側の端部に、補強板が接着されていることを特徴とする請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記平角導体が露出された側のシールドフィルムに、前記グランドバーが接着されていることを特徴とする請求項2に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記シールドフィルムが前記補強板の外面を覆い、その上から前記グランドバーが接着されていることを特徴とする請求項2に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項5】
前記シールドフィルムが前記平角導体を露出していない側の絶縁フィルムの端部を含む外面を覆って貼り付けられ、その上からグランドバーが接着されていることを特徴とする請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項6】
前記グランドバーの先端側に補強板が並列に接着されていることを特徴とする請求項5に記載のシールドフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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