説明

シールパッキン

【課題】クリップにパッキン本体を組み付けるときの取り扱いを容易にして作業時間の短縮を図り、かつ、組付けられたパッキン本体を外れにくくする。
【解決手段】所定のパネルに対し、その取付け孔に差し込むことで結合されるクリップに、該クリップとは別体のパッキン本体が予め組み付けられ、このパッキン本体をクリップとパネルとの間に介在させて取付け孔の周囲をシールする構成のシールパッキンであって、複数個のパッキン本体30が、個々の外周に位置する接続部40によって相互に繋がっており、各接続部40は、パッキン本体30を構成する部分と比較して肉厚が薄く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用ドアのインナーパネルにトリムボードを取り付けるためのクリップと組み合わせて使用するシールパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシールパッキンについては、特許文献1に開示された技術が公知である。この技術では、リング形状のパッキン本体がシール性を有する柔軟な素材(ゴムもしくはエラストマー)で成形されている。シールパッキンの使用にあたっては、パッキン本体の中心孔にクリップの係止脚を挿通させることで、このクリップにパッキン本体を予め組み付けておく。そして、クリップの係止脚をパネルの取付け孔に差し込むことにより、パッキン本体がパネルとクリップとの間に挟み込まれ、取付け孔の周囲がシールされる。
【特許文献1】特開2000−193090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている技術では、シールパッキンの使用にあたってパッキン本体を一個ずつクリップに組み付けるしかなく、またパッキン本体は柔らかいことから、扱いづらい。これらのことから、クリップにパッキン本体を組み付ける作業に多くの時間を要する。また、クリップからパッキン本体が脱落して不良品になることもある。
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、クリップにパッキン本体を組み付けるときの取り扱いを容易にして作業時間の短縮を図り、かつ、組付けられたパッキン本体を外れにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、所定のパネルに対し、その取付け孔に差し込むことで結合されるクリップに、該クリップとは別体のパッキン本体が予め組み付けられ、このパッキン本体をクリップとパネルとの間に介在させて取付け孔の周囲をシールする構成のシールパッキンであって、複数個のパッキン本体が、個々の外周に位置する接続部によって相互に繋がっており、各接続部は、パッキン本体を構成する部分と比較して肉厚が薄く設定されている。
この構成によれば、接続部によって相互に繋がっている複数個のパッキン本体を、それと同数のクリップに対して一括して組み付け、その後に各接続部を引きちぎって分離することができる。これにより、クリップにパッキン本体を組み付けるときの取り扱いが容易で、作業時間が短縮される。
【0005】
第2の発明は、第1の発明において、パッキン本体は、その形状を保持するのに必要な剛性を有する基材と、該基材の外側を被ってシール機能を果たすシール材とによって構成されている。そして、これらの基材とシール材とが多色成形によって一体化されている。
構成では、複数個のパッキン本体を分離させた後においても個々の形状が安定していることから、クリップから外れにくく、また搬送中などにパッキン本体が押し潰されて変形することも防止できる。
【0006】
第3の発明は、第2の発明において、各接続部においては、隣り合うパッキン本体同士の基材およびシール材が共に繋がった構成になっている。
これにより、接続部によって相互に繋がっている複数個のパッキン本体を一度に多色成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
まず、クリップ10の使用例を表した図1および図2において、クリップ10は合成樹脂による一体成形品であって、その基部側において板状のベース部12が設けられている。このベース部12の一方側(図面の上側)に係止脚14が位置し、他方側(図面の下側)に取付け部16が位置している。このクリップ10は、それを複数個用いて車両用ドアのドアインナパネルなどのパネル20に、その装着部材であるトリムボード24を装着することができる。
【0008】
クリップ10の係止脚14はパネル20の取付け孔22に挿入可能であり、合成樹脂の弾性によって係止脚14の軸心方向へ撓むことができる複数個の係止片14aを備えている。各係止片14aには、ベース部12の近くにおいて係止肩14bがそれぞれ設けられている。これらの係止肩14bは、取付け孔22に対する係止脚14の挿入が完了したときに、該取付け孔22の周縁に係止可能である。なお、各係止片14aの係止肩14bとベース部12との間は、くびれた形状の嵌合部14cになっている。この嵌合部14cは、取付け孔22に係止脚14の挿入が完了したときに、該取付け孔22内に位置する部分である。
【0009】
クリップ10の取付け部16は、図1および図2で示すようにトリムボード24の座部26に結合するための部分である。この取付け部16は、ベース部12と対向する鍔16aが径の小さい頸部16bを挟んで位置している。そこで、このベース部12と鍔16aとが座部26の上下面に位置するように、頸部16bを座部26の取付け溝28に押し入れる。これによって取付け部16が座部26に結合され、結果としてクリップ10がトリムボード24に取り付けられる。
【0010】
クリップ10には、そのベース部12とパネル20との間に介在させて取付け孔22の周囲をシールするためのパッキン本体30が組み付けられている。このパッキン本体30はリング形状をしており、その中心孔32にクリップ10の係止脚14を相対的に挿入することによってクリップ10に予め組み付けられる。このように組み付けられたパッキン本体30は、ベース部12で受け止められて係止脚14における嵌合部14cの外周に位置する。
図3からも明らかなように、パッキン本体30の構造は、リング形状に成形され基材34の上下両面を被うようにシール材36が一体に接合されている。基材34は、ポリプロピレンなどの硬質樹脂によって成形され、パッキン本体30の本来の形状を保持するのに必要な剛性を有する。一方、シール材36はエラストマーなどの軟質樹脂からなり、パッキン本体30に要求されるシール機能を果たすのに必要な柔軟性を有する。そして、基材34とシール材36とは多色成形によって相互に一体化されている。また、シール材36には、パッキン本体30の上下両面のそれぞれにおいて周方向に連続する二重のリップ38がそれぞれ成形されている。
【0011】
前述したようにクリップ10の取付け部16をトリムボード24の座部26に取り付けた後、クリップ10の係止脚14をパネル20の取付け孔22に差し込む。これにより、係止脚14の各係止片14aが軸心方向へ撓みながら取付け孔22を通過し、係止脚14の挿入が完了したときに各係止片14aの係止肩14bが取付け孔22の周縁に係止する。この結果、クリップ10がパネル20に取り付けられ、クリップ10を通じてトリムボード24がパネル20に装着される(図2)。
この状態では、図2で示すようにパッキン本体30がクリップ10のベース部12とパネル20との間に挟み込まれている。これにより、パッキン本体30の上下両面におけるシール材36の二重のリップ38が共に弾性変形してベース部12およびパネル20に密着し、取付け孔22の周囲のシールが確保されている。
【0012】
図4で示すように、クリップ10に組み付けられる前のパッキン本体30は単体で独立しているのではなく、複数個のパッキン本体30が互いに等間隔で平面的に配列された状態で繋がっている。つまり、各パッキン本体30は縦横に並べられ、相互に隣接するパッキン本体30同士が、それぞれの外周に90°間隔で位置する接続部40によって繋がっている。したがって、各パッキン本体30の外周における接続部40の数は、隣接するパッキン本体30の個数に応じて2〜4個と異なる。
図4のA-A矢視方向の拡大断面を表した図5から明らかなように、接続部40は、互いに隣接するパッキン本体30同士の基材34およびシール材36が共に繋がった構成になっている。ただし、接続部40における基材34およびシール材36の肉厚は、パッキン本体30構成する部分の基材34およびシール材36と比較して薄く設定されている。このため、隣り合うパッキン本体30同士を引っ張ることで、その接続部40を容易に引きちぎってパッキン本体30同士を分離することが可能である。図6に、4個の接続部40で繋がっていたパッキン本体30を分離した後の状態が示されている。
なお、図4および図6においては、図面が煩雑になるのを避ける目的で、各リップ38の記入を省略した。
【0013】
図4および図5で示すように繋がった複数個のパッキン本体30は、それぞれの接続部40も含めて一度に成形することができる。なお、成形は既に述べたように多色成形であり、それによって基材34とシール材36とが一体化されている。
つづいて、図1および図2で示すようにクリップ10にパッキン本体30を組み付ける手順を説明する。まず、図4および図5で示すように繋がった複数個のパッキン本体30と同数のクリップ10を、セット治具を用いるなどして個々の脚部14を上向きにして整列させた状態にセットしておく。これらのクリップ10に対し、互いに繋がっている複数個のパッキン本体30を、それぞれの中心孔32に各クリップ10の脚部14が挿入される状態で一括して組み付ける。そして、各パッキン本体30が各クリップ10の嵌合部14c外周に組み付けられた後、複数個のパッキン本体30を互いに繋げている各接続部40を引きちぎり、これらのパッキン本体30を分離する。
【0014】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば図7で示すようにパッキン本体30のシール材36を、中心孔32の内周を被うように成形することも可能である。これにより、基材34に対するシール材36の結合(一体化)状態が安定するとともに、パッキン本体30の中心孔32とクリップ10の嵌合部14cとの間のシールも確保される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】クリップをパネルに取り付ける前の状態を表した正面図。
【図2】クリップをパネルに取り付けた後の状態を表した正面図。
【図3】パッキン本体を表した拡大断面図。
【図4】互いに繋がった複数個のパッキン本体を表した平面図。
【図5】図4のA-A矢視方向の拡大断面。
【図6】分離した後の一つのパッキン本体を表した平面図。
【図7】パッキン本体の変更例を図5と対応させて表した断面図。
【符号の説明】
【0016】
10 クリップ
20 パネル
22 取付け孔
30 パッキン本体
34 基材
36 シール材
40 接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパネルに対し、その取付け孔に差し込むことで結合されるクリップに、該クリップとは別体のパッキン本体が予め組み付けられ、このパッキン本体をクリップとパネルとの間に介在させて取付け孔の周囲をシールする構成のシールパッキンであって、
複数個のパッキン本体が、個々の外周に位置する接続部によって相互に繋がっており、各接続部は、パッキン本体を構成する部分と比較して肉厚が薄く設定されているシールパッキン。
【請求項2】
請求項1に記載されたシールパッキンであって、
パッキン本体は、その形状を保持するのに必要な剛性を有する基材と、該基材の外側を被ってシール機能を果たすシール材とによって構成され、これらの基材とシール材とが多色成形によって一体化されているシールパッキン。
【請求項3】
請求項2に記載されたシールパッキンであって、
各接続部においては、隣り合うパッキン本体同士の基材およびシール材が共に繋がった構成になっているシールパッキン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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