説明

シール剤塗布装置

【課題】ロータの回転停止時にシール剤がロータから垂れ落ちることを防止することが可能なシール剤塗布装置を提供する。
【解決手段】シール剤を噴出可能な溶液噴出し口13dが形成される環形状の外周側面13cを有し、かつ、外周側面13cの周方向に回転可能なロータ13を備え、ロータ13を外周側面13cの周方向に回転することで溶液噴出し口13dから前記シール剤を噴出するシール剤塗布装置100であって、ロータ13の外周側面には、ロータ13の回転停止時に溶液噴出し口13dから流出した前記シール剤を収容可能な溝13gが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに形成されるワーク穴の内周面にシール剤を塗布するシール剤塗布装置は公知となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のシール剤塗布装置は、シール剤を噴出するロータを備えている。ロータは、円柱形状を有する回転体であり、その外周面に溶液噴出し口が複数形成されている。前記シール剤塗布装置は、ロータを回転し、ロータにシール剤を供給することにより、シール剤を溶液噴出し口から遠心力で噴出する構成である。また、ロータを回転駆動可能に支持する本体部が、径の異なる複数のガイド部材を有する。
前記シール剤塗布装置は、ロータがワークのワーク穴内に進入している状態で、ロータを回転し、ロータにシール剤を供給することにより、シール剤を溶液噴出し口から噴出してワーク穴の内周面に塗布する。
【0004】
例えば、前記シール剤塗布装置を用い、ラインを流れる複数のワークの各ワーク穴の内周面にシール剤を塗布する場合、以下の(1)〜(4)の一連の作業を行うことにより、各ワークに対してシール剤を順次塗布する形態を実現できる。
(1)ロータをワーク穴に進入させ、(2)ロータを回転し、ロータにシール剤を供給することにより、溶液噴出し口からワーク穴の内周面へのシール剤の噴出(塗布)を開始し、(3)所定時間経過後、ロータの回転を停止するとともに、ロータへのシール剤の供給を停止することにより、シール剤の塗布を停止し、(4)ロータをワーク穴から退出させる。
【0005】
しかし、(4)の作業を終了してから、ラインを流れてくる次のワークに対して(1)の作業を開始するまでの間、つまりロータの回転停止時に、ロータ内に残存しているシール剤が重力の作用を受けて、下方に位置する溶液噴出し口から流出し、ロータから垂れ落ちることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−134458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ロータの回転停止時にシール剤がロータから垂れ落ちることを防止することが可能なシール剤塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のシール剤塗布装置は、
シール剤を噴出可能な溶液噴出し口が形成される環形状の外周側面を有し、かつ、前記外周側面の周方向に回転可能なロータを備え、
前記ロータを前記外周側面の周方向に回転することで前記溶液噴出し口から前記シール剤を噴出するシール剤塗布装置であって、
前記ロータの外周側面には、前記ロータの回転停止時に前記溶液噴出し口から流出した前記シール剤を収容可能な収容部が設けられる。
【0009】
請求項2に記載のシール剤塗布装置においては、
前記収容部は溝であり、
前記溝は、前記溶液噴出し口の外周部を囲む環形状を有しており、
前記ロータの外周側面においては、前記溝で囲まれた領域である、前記溶液噴出し口の外周部が、前記溝の外周側の領域よりも窪んでいる。
【0010】
請求項3に記載のシール剤塗布装置においては、
前記収容部は溝であり、
前記溝は、前記ロータの外周側面の周方向に存在するとともに、前記外周側面の全周にわたって形成され、
前記溶液噴出し口は、複数存在し、前記溝内に形成されるとともに、前記溝に沿って前記外周側面の周方向に並べられる。
【0011】
請求項4に記載のシール剤塗布装置においては、
前記収容部はシール剤を吸収可能なシート状部材またはブラシ状部材であり、
前記溶液噴出し口は、複数存在し、前記ロータの外周側面の周方向に沿って並べられ、
前記シート状部材とブラシ状部材は、前記ロータの外周側面に固定され、前記外周側面の周方向に存在し、前記溶液噴出し口上を通って、前記外周側面の全周にわたって設けられ、かつ、前記溶液噴出し口と対向する箇所に貫通孔が形成される。
【0012】
請求項5に記載のシール剤塗布装置においては、
前記ロータは、前記シール剤の塗布対象となるワークに形成されるワーク穴に進入した状態で、前記外周側面の周方向に回転しながら前記溶液噴出し口から前記シール剤を噴出することで、前記ワーク穴の内周面に前記シール剤を塗布し、
前記収容部は、前記ロータの外周側面から外方へ突出するとともに、前記ロータの外周側面における溶液噴出し口の周囲に固定される部材であり、前記ロータの外周側面における溶液噴出し口の形成される箇所が前記ワーク穴に進入した状態で、前記ロータが前記外周側面の周方向に回転するときに、前記ワーク穴の内周面に接触してすり動く。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロータの回転停止時にシール剤がロータから垂れ落ちることを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明に係るシール剤塗布装置の第一実施形態であるシール剤塗布装置の概略構成図とワークの断面図であり、(b)は図1(a)に示すシール剤塗布装置を矢印X方向からみた図である。
【図2】図(a)に示すシール剤塗布装置のロータを回転軸に沿って切断したときの端面図である。
【図3】(a)はロータを示す図であり、(b)は図3(a)に示すロータのA−A端面図である。
【図4】(a)はロータの別実施形態を示す図であり、(b)は図4(a)に示すロータのB−B端面図である。
【図5】前記第二実施形態のシール剤塗布装置が備えるロータを示す図であり、(b)は図5(a)に示すロータのC−C端面図である。
【図6】(a)はロータの別実施形態を示す図であり、(b)は図6(a)に示すロータのD−D端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
以下に、本発明に係るシール剤塗布装置の第一実施形態であるシール剤塗布装置100について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)および図1(b)に示すように、シール剤塗布装置100は、ワーク1に形成されるワーク穴(例えば、ブロックシリンダやヘッドシリンダに形成されるプラグ圧入用の穴)の内周面2に、ロックタイト(商品名:日本ロックタイト株式会社製)等のシール剤を塗布するための装置である。前記ワーク穴はワーク1の外周面にて開口しており、前記ワーク穴の内周面2は、前記ワーク穴は開口箇所の内側周辺部であり、環形状に形成されている。
【0017】
シール剤塗布装置100は、手動式の塗布装置であり、本体部11と、回転軸12と、ロータ13と、を備えている。
【0018】
本体部11は、シール剤塗布装置100の主たる構造体をなす部材であり、作業者が握持可能なグリップ部14と、作業者がグリップ部14を握持した状態で操作可能なスイッチ部15と、を有している。本体部11にはエアモータ(不図示)が設けられている。前記エアモータはパイプ16を介してエアー供給装置(不図示)と接続されている。また、前記エアモータは、排気マフラ17と接続されている。また、本体部11にはシール剤供給パイプ18が固定されている。シール剤供給パイプ18は、パイプ19を介してシール剤供給装置(不図示)と接続されている。
【0019】
スイッチ部15は、前記エアー供給装置からのエアーの前記エアモータへの供給・停止、および前記シール剤供給装置からのシール剤のシール剤供給パイプ18への供給・停止を制御可能に構成されている。
例えば、前記エアモータとエアー供給装置とを接続するパイプ16の途中部、およびシール剤供給パイプ18と前記シール剤供給装置とを接続するパイプ19の途中部には、それぞれパイプ16・19を開閉するバルブが設けられており、スイッチ部15のON/OFF操作により、パイプ16のバルブおよびパイプ19のバルブが制御されるように構成されている。
そして、作業者がスイッチ部15をONの状態にすると、本体部11ではシール剤噴出信号が出力されて、パイプ16のバルブおよびパイプ19のバルブが閉状態から開状態へ切り換わる。これにより、前記エアー供給装置からパイプ16を通じて前記エアモータにエアーが供給され、同時に前記シール剤供給装置からパイプ19を通じてシール剤供給パイプ18にシール剤が供給されることとなる。前記エアー供給装置が前記エアモータにエアーを供給することで、前記エアモータが駆動する。そして、前記エアモータに供給されたエアーは、前記エアモータの駆動に用いられた後、排気マフラ17を通じて排気される。
また、作業者がスイッチ部15をOFFの状態にすると、本体部11ではシール剤噴出信号の出力が停止されて、パイプ16のバルブおよびパイプ19のバルブが開状態から閉状態へ切り換わる。これにより、前記エアー供給装置からの前記エアモータに対するエアーの供給が停止され、同時に前記シール剤供給装置からのシール剤供給パイプ18に対するシール剤の供給が停止される。前記エアー供給装置が前記エアモータに対するエアーの供給を停止することで、前記エアモータが停止する。
【0020】
回転軸12は、本体部11に取り付けられており、その先端部が本体部11から突出している。回転軸12の基端部は、前記エアモータに接続されており、前記エアモータが駆動することで回転するように構成されている。
【0021】
図1(a)、図1(b)および図2に示すように、ロータ13は、中空の略円柱形状を有しており、所定間隔を置いて対向配置される底面13a・13bと、底面13a・13bの間に介在している環形状の外周側面13cと、を有している。外周側面13cには複数の溶液噴出し口13d・13d・・・が形成されている。溶液噴出し口13d・13d・・・は、ロータ13の外周側面13cの周方向(ロータ13の回転方向)に並べられており、互いに等間隔をおいて配置されている。ロータ13内部には、空間13eが形成されている。空間13eは、底面13bにて開口している。ロータ13内部の空間13eには、底面13bの開口を通じてシール剤供給パイプ18の先端部が挿入されており、シール剤供給パイプ18からロータ13内部の空間13eへとシール剤が供給可能に構成されている。ロータ13には、空間13eと溶液噴出し口13d・13d・・・との間を連通するノズル13f・13f・・・がそれぞれ形成されている。
【0022】
図3(a)および図3(b)に示すように、ロータ13の外周側面13cには、有底の溝13g・13g・・・が形成されている。溝13gは、溶液噴出し口13dの外周部13hを囲む環形状を有している。ロータ13の外周側面13cにおいては、溝13gで囲まれた領域である、溶液噴出し口13dの外周部13hが、溝13gの外周側の領域13iよりも窪んでおり、溶液噴出し口13dの外周部13hと、溝13gの外周側の領域13iと、の間に僅かな段差Yが形成されている。
【0023】
図1(a)および図1(b)に示すように、ロータ13は、回転軸12の先端部に固定されており、回転軸12と一体回転し、回転軸12によって外周側面13cの周方向に回転可能に支持されている。回転軸12は、ロータ13の底面13bの開口を通じてロータ13内部の空間13eを挿通しているとともに、底面13aを貫通している。底面13a・13bについては、回転軸12の先端側に底面13aが位置しており、回転軸12の基端側(本体部11側)に底面13bが位置している。
ロータ13の外周側面13cの外形寸法は、前記ワーク穴の内周面2の内径寸法よりも僅かに小さい寸法に構成されている。これにより、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所を前記ワーク穴に進入させたときに、ロータ13の外周側面13c(溶液噴出し口13d・13d・・・)と、前記ワーク穴の内周面2との間に隙間が形成された状態とすることができる。
特に、ロータ13の回転軸W1の位置と前記ワーク穴の中心軸W2の位置とが一致した状態で、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所を前記ワーク穴に進入させることで、ロータ13の外周側面13c(溶液噴出し口13d・13d・・・)と、前記ワーク穴の内周面2との間に、均一な隙間を形成することができる。
【0024】
以下では、シール剤塗布装置100を用いて、ラインを流れる複数のワーク1・1・・・の各ワーク穴の内周面2にシール剤を塗布するときの手順について説明する。
この場合、作業者は、ラインを流れる各ワーク1に対して以下の(1)〜(4)の作業を行い、各ワーク1のワーク穴の内周面2にシール剤を順次塗布することとする。
【0025】
(1)作業者は、シール剤塗布装置100のグリップ部14を握持し、スイッチ部15をOFFにした状態で待機し、ワーク1が所定位置まで流れてくると、シール剤塗布装置100をワーク1の位置にまで移動して、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所を、前記ワーク穴に進入させる。この場合、溶液噴出し口13d・13d・・・と前記ワーク穴の内周面2とが間隔をおいて対向した状態となるようにロータ13を進入させる。
なお、ロータ13をワーク穴に進入させるときには、溶液噴出し口13d・13d・・・と前記ワーク穴の内周面2との間隔を全周にわたって均一にするために、ロータ13の回転軸W1の位置を、前記ワーク穴の中心軸W2の位置に一致させることが好ましい。
【0026】
(2)作業者は、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所を、前記ワーク穴に進入させた状態で、シール剤塗布装置100のスイッチ部15をONの状態にする。これにより、前記エアモータが駆動して回転軸12が回転され、この回転軸12の回転に伴ってロータ13が外周側面13cの周方向に回転される。
同時に、シール剤が前記シール剤供給装置からパイプ19およびシール剤供給パイプ18を通じてロータ13内部の空間13eへと供給される。ロータ13内部の空間13eに供給されたシール剤は、ロータ13の回転による遠心力でノズル13f・13f・・・を通じて溶液噴出し口13d・13d・・・から噴出し、前記ワーク穴の内周面2へ塗布される。
【0027】
(3)作業者は、シール剤の塗布開始から所定時間経過後、シール剤塗布装置100のスイッチ部15をOFFの状態にする。これにより、ロータ13の回転が停止され、同時にロータ13内部の空間13eへのシール剤の供給が停止される。
【0028】
(4)作業者は、シール剤塗布装置100を移動して、ロータ13を前記ワーク穴から退出させる。
そして、作業者はラインを流れてくる次のワーク1に対して上記(1)〜(4)の作業を行う。
【0029】
ワーク穴の内周面2へのシール剤の塗布は以上のように行われるが、前回のシール剤の塗布作業の終了後に、上記(1)の手順に記載したように、次のワーク1が所定位置まで流れてくるまで、シール剤塗布装置100が停止状態で待機している間、すなわちロータ13の回転停止時には、ロータ13内部の空間13eにシール剤が残存しており、この残存しているシール剤が重力の作用を受けて、下方に位置する溶液噴出し口13dから流出してくることがある。
しかし、シール剤塗布装置100においては、ロータ13の外周側面13cに、溶液噴出し口13dの外周部13hを囲む溝13gが形成されているので、シール剤が溶液噴出し口13dから流出したとしても、この流出したシール剤が前記溝13gに入り込み、溝13gが流出したシール剤の逃げ場となる。これにより、流出したシール剤が溝13g内に収容されることとなって、ロータ13の回転停止時にシール剤がロータ13から垂れ落ちることを防止できる。
【0030】
なお、シール剤塗布装置100において、ロータ13の外周側面13cには、溝13gに換えて溝13jを形成してもよい。
図4(a)および図4(b)に示すように、溝13jは、ロータ13の外周側面13cの周方向に存在し、外周側面13cの全周にわたって形成されている。溶液噴出し口13d・13d・・・は、溝13j内(溝13jの底部)に形成されており、溝13jに沿ってロータ13の外周側面13cの周方向に並べられており、互いに等間隔をおいて配置されている。
以上のように構成することで、上記(1)において、ロータ13の回転停止時に、ロータ13内部の空間13eに残存しているシール剤が重力の作用を受けて、下方に位置する溶液噴出し口13dから流出したとしても、溝13jが流出したシール剤の逃げ場となって、シール剤が溝13j内に収容されることとなる。これにより、ロータ13の回転停止時にシール剤がロータ13から垂れ落ちることを防止できる。
【0031】
[第二実施形態]
以下に、本発明に係るシール剤塗布装置の第二実施形態であるシール剤塗布装置200について、図面を参照して説明する。
なお、シール剤塗布装置200について、シール剤塗布装置100と同様の部材に対しては同一符号を付し、詳細な説明およびそれに付随する効果等の記載は省略する。
【0032】
シール剤塗布装置200は、手動式の塗布装置であり、本体部11と、回転軸12と、ロータ13と、シート(接触部)20と、を備えている。
【0033】
図5(a)および図5(b)に示すように、ロータ13の外周側面13cには、凹部13kが形成されている。凹部13kは、ロータ13の外周側面13cの周方向に存在し、外周側面13cの全周にわたって形成されている。溶液噴出し口13d・13d・・・は、凹部13k内(凹部13kの底部)に形成されており、凹部13kに沿ってロータ13の外周側面13cの周方向に並べられており、互いに等間隔をおいて配置されている。
【0034】
シート20は、シール剤を吸収可能な材質で構成されている。シート20は、ロータ13の外周側面13cの周方向に存在する環形状を有しており、ロータ13の外周側面13cの凹部13kにはめ込まれた状態で、外周側面13cに固定されている。すなわち、シート20は、外周側面13cの周方向に存在し、凹部13k内の溶液噴出し口13d・13d・・・上を通って、外周側面13cの全周にわたって設けられている。シート20における、凹部13k内の溶液噴出し口13d・13d・・・と対向する箇所には貫通孔20a・20a・・・が形成されており、溶液噴出し口13d・13d・・・からのシール剤がこの貫通孔20a・20a・・・を通じて噴出するように構成されている。このようにして、シート20がロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の周囲に固定されている。
シート20の外周面は、ロータ13の外周側面13cよりも外方(半径方向外側)へ突出しており、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所が、前記ワーク穴に進入したときには、シート20の外周面がワーク穴の内周面2に接触するように構成されている。
つまり、シート20は、ロータ13が前記ワーク穴に進入した状態で前記ワーク穴の内周面2に接触する程度の厚みを有している。
【0035】
シール剤塗布装置200を用い、ラインを流れる複数のワーク1・1・・・の各ワーク穴の内周面2にシール剤を塗布するときの手順については、上記第一実施形態の(1)〜(4)で示した手順と同じである。
シール剤塗布装置200を用いて前記ワーク穴の内周面2にシール剤を塗布する場合においては、上記(2)に示すように、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所が、前記ワーク穴に進入した状態で、ロータ13が外周側面13cの周方向に回転するときに、シート20が前記ワーク穴の内周面2に接触してすり動く。これにより、溶液噴出し口13d・13d・・・から噴出して前記ワーク穴の内周面2に塗布されたシート剤が、シート20によって内周面2にこすりつけられる。したがって、シール剤を前記ワーク穴の内周面2に均一に塗布することができる。また、シール剤の塗布品質を維持することができる。
また、シール剤を前記ワーク穴の内周面2に均一に塗布するという観点からは、ロータ13を前記ワーク穴に進入させる際には、シート20の外周面が周方向全域にわたって前記ワーク穴の内周面2に接触することが好ましい。つまり、シート20は、前記ワーク穴の内周面2の全域にわたって接触するように構成されることが好ましい。
さらに、シート20外周面の、ロータ13の外周側面13cからの突出量を周方向全域にわたって等しく構成し、ロータ13の回転軸W1の位置と前記ワーク穴の中心軸W2の位置とを一致させた状態で、ロータ13を前記ワーク穴に進入させることで、シート20の前記ワーク穴の内周面2に対する接触圧を全周にわたって等しくすることができ、前記ワーク穴の内周面2に対して塗布されるシール剤の均一性を向上することができる。
【0036】
また、上記(1)において、前回のシール剤の塗布作業の終了後のロータ13の回転停止時に、ロータ13内部の空間13eに残存しているシール剤が重力の作用を受けて、下方に位置する溶液噴出し口13dから流出したとしても、流出したシール剤は溶液噴出し口13dの周囲のシート20により吸収される。これにより、ロータ13の回転停止時にシール剤がロータ13から垂れ落ちることを防止できる。
【0037】
なお、シール剤塗布装置200においては、シート20に換えてブラシ21を用いてもよい。
図6(a)および図6(b)に示すように、ブラシ21は、シール剤を吸収可能な材質で構成されている。ブラシ21は、ロータ13の外周側面13cに固定されている。ロータ13の外周側面13cには、溶液噴出し口13d・13d・・・が形成されており、溶液噴出し口13d・13d・・・は、外周側面13cの周方向に並べられており、互いに等間隔をおいて配置されている。ブラシ21は、外周側面13cの周方向に存在し、溶液噴出し口13d・13d・・・上を通って、外周側面13cの全周にわたって設けられている。ブラシ21における、溶液噴出し口13d・13d・・・と対向する箇所には貫通孔21a・21a・・・が形成されており、溶液噴出し口13d・13d・・・からのシール剤がこの貫通孔21a・21a・・・を通じて噴出するように構成されている。このようにして、ブラシ21がロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の周囲に固定されている。
ブラシ21の先端(外周側端部)は、ロータ13の外周側面13cよりも外方(半径方向外側)へ突出しており、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所が、前記ワーク穴に進入したときには、ブラシ21の先端部がワーク穴の内周面2に接触するように構成されている。
つまり、ブラシ21は、ロータ13が前記ワーク穴に進入した状態で前記ワーク穴の内周面2に接触する程度の長さを有している。
【0038】
以上のように構成することで、ブラシ21を備えたシール剤塗布装置200を用いて前記ワーク穴の内周面2にシール剤を塗布する場合においては、上記(2)に示すように、ロータ13の外周側面13cにおける溶液噴出し口13d・13d・・・の形成される箇所が、前記ワーク穴に進入した状態で、ロータ13が外周側面13cの周方向に回転するときに、ブラシ21の先端部が前記ワーク穴の内周面2に接触してすり動く。これにより、溶液噴出し口13d・13d・・・から噴出して前記ワーク穴の内周面2に塗布されたシート剤が、ブラシ21の先端部によって内周面2にこすりつけられる。
したがって、シール剤を前記ワーク穴の内周面2に均一に塗布することができる。また、シール剤の塗布品質を維持することができる。
また、シール剤を前記ワーク穴の内周面2に均一に塗布するという観点からは、ロータ13を前記ワーク穴に進入させる際には、ブラシ21の先端部が周方向全域にわたって前記ワーク穴の内周面2に接触することが好ましい。つまり、ブラシ21は、前記ワーク穴の内周面2の全域にわたって接触するように構成されることが好ましい。
さらに、ブラシ21先端部の、ロータ13の外周側面13cからの突出量を周方向全域にわたって等しく構成し、ロータ13の回転軸W1の位置と前記ワーク穴の中心軸W2の位置とを一致させた状態で、ロータ13を前記ワーク穴に進入させることで、ブラシ21の前記ワーク穴の内周面2に対する接触圧を全周にわたって等しくすることができ、前記ワーク穴の内周面2に対して塗布されるシール剤の均一性を向上することができる。
【0039】
また、上記(1)において、前回のシール剤の塗布作業の終了後のロータ13の回転停止時に、ロータ13内部の空間13eに残存しているシール剤が重力の作用を受けて、下方に位置する溶液噴出し口13dから流出したとしても、流出したシール剤は溶液噴出し口13dの周囲のブラシ21により吸収される。これにより、ロータ13の回転停止時にシール剤がロータ13から垂れ落ちることを防止できる。
【0040】
なお、シール剤塗布装置100・200については、本実施形態のような手動式の塗布装置に限定されず、上記(1)〜(4)の作業を、制御装置等を用いて自動で行う自動式の塗布装置であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ワーク
2 ワーク穴の内周面
13 ロータ
13c ロータの外周側面
13d 溶液噴出し口
13g・13j 溝
21 ブラシ
20 シート
100・200 シール剤塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール剤を噴出可能な溶液噴出し口が形成される環形状の外周側面を有し、かつ、前記外周側面の周方向に回転可能なロータを備え、
前記ロータを前記外周側面の周方向に回転することで前記溶液噴出し口から前記シール剤を噴出するシール剤塗布装置であって、
前記ロータの外周側面には、前記ロータの回転停止時に前記溶液噴出し口から流出した前記シール剤を収容可能な収容部が設けられるシール剤塗布装置。
【請求項2】
前記収容部は溝であり、
前記溝は、前記溶液噴出し口の外周部を囲む環形状を有しており、
前記ロータの外周側面においては、前記溝で囲まれた領域である、前記溶液噴出し口の外周部が、前記溝の外周側の領域よりも窪んでいる請求項1に記載のシール剤塗布装置。
【請求項3】
前記収容部は溝であり、
前記溝は、前記ロータの外周側面の周方向に存在するとともに、前記外周側面の全周にわたって形成され、
前記溶液噴出し口は、複数存在し、前記溝内に形成されるとともに、前記溝に沿って前記外周側面の周方向に並べられる請求項1に記載のシール剤塗布装置。
【請求項4】
前記収容部はシール剤を吸収可能なシート状部材またはブラシ状部材であり、
前記溶液噴出し口は、複数存在し、前記ロータの外周側面の周方向に沿って並べられ、
前記シート状部材とブラシ状部材は、前記ロータの外周側面に固定され、前記外周側面の周方向に存在し、前記溶液噴出し口上を通って、前記外周側面の全周にわたって設けられ、かつ、前記溶液噴出し口と対向する箇所に貫通孔が形成される請求項1に記載のシール剤塗布装置。
【請求項5】
前記ロータは、前記シール剤の塗布対象となるワークに形成されるワーク穴に進入した状態で、前記外周側面の周方向に回転しながら前記溶液噴出し口から前記シール剤を噴出することで、前記ワーク穴の内周面に前記シール剤を塗布し、
前記収容部は、前記ロータの外周側面から外方へ突出するとともに、前記ロータの外周側面における溶液噴出し口の周囲に固定される部材であり、前記ロータの外周側面における溶液噴出し口の形成される箇所が前記ワーク穴に進入した状態で、前記ロータが前記外周側面の周方向に回転するときに、前記ワーク穴の内周面に接触してすり動く請求項1または請求項4に記載のシール剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130820(P2012−130820A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282364(P2010−282364)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】