説明

シール材装着構造

【課題】パッキンの位置ズレ抑制を向上させる技術を提供する。
【解決手段】キャップ20のキャップ本体22の側面を一巡するパッキン配置溝26に、弾性を持つパッキン50を装着するシール材装着構造が形成されている。パッキン50は、パッキン50が延びる方向とは垂直に、パッキン50から突出した位置ズレ防止用凸部58を備える。キャップ本体22は、断面略矩形形状を呈しており、位置ズレ防止用凸部58の形状に合わせて、パッキン配置溝26から連続して形成された位置ズレ防止用凹部28を備える。そして、位置ズレ防止用凸部58がキャップ20に装着されたときに、前記矩形形状において対向する一対の第1の辺群の伸び率と他の一対の第2の辺群との伸び率とが略同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多角形状、円形状等の閉曲線状に形成された弾性を持つシール材(パッキン)をハウジングの側面に装着するシール材装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られたこの種のシール材装着構造の一つとして、中空のハウジングに内嵌されるパッキン(シール材)及びパッキンを内嵌させる中空のハウジングに対して、パッキンの外れや位置ズレ防止等を可能とし、パッキンとハウジングが正常に係合できる技術がある(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、図10(a)に示すように、パッキン101では、外力によって突起部112が、ハウジングの内側と圧接衝合される圧接面111側を中心として係止孔に回動するように押し込まれた際に、突起部112を係止孔に干渉しないように斜面状に形成し、または、係止孔を突起部112に干渉しないように斜面状に形成する。
【0003】
別の技術として、ハウジングの側面に形成されたシール溝内のシール材に剥がれネジレ等を生じたまま、他の部品が組み付けられることを防止する技術がある(例えば、特許文献2参照。)。具体的には、図10(b)に示すように、このシール材装着構造では、弾性を持つ閉曲線状のシール材204を、ハウジング202の外側面Sを一巡するシール溝221に装着するようになっている。さらに、シール材204は、このシール材204が延びる方向とは垂直に、シール材204から突出した突出部241を備える。突出部241には、シール材204のシール溝221への装着時における位置決めのための位置合わせ穴241aが形成されている。また、ハウジング202は、上記突出部241の形状に合わせて、シール溝221から連続して形成された溝部222を備え、この溝部222に、シール材204側の位置合わせ穴241aに挿入される位置合わせ突起222aが形成されている。
【0004】
さらに別の技術として、シール性能をシール面全周に亘って安定させる目的とする技術がある(例えば、特許文献3参照。)。この技術では、互いに対応する一対のシール面の間で弾性的に挟み付けられるシールリングには、第1シール面に押圧されることにより弾性変形する姿勢保持部と、姿勢保持部の弾性変形時の変位方向を特定の向きに規制する変形方向規制手段とが設けられ、姿勢保持部の弾性復元力により、一対のシール面に対してシールリングが一定の姿勢に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−325952号公報
【特許文献2】特開2010−38329号公報
【特許文献3】特開2010−65836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示の技術では、位置ズレ防止形状を外側に複数も受ける必要があり、スペース確保の点で改善の要望があった。また、位置ズレを抑制するメカニズムについて開示が無いため、異なる形状の場合に適用することが難しいという課題があった。特許文献2及び3に関しても、同様の課題が残っていた。
【0007】
本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、ハウジングの側面を一巡するシール溝に、弾性を持つシール材を装着するシール材装着構造であって、前記シール材は、該シール材が延びる方向とは垂直に、該シール材から突出した突出部を備え、前記ハウジングは、断面略矩形形状を呈しており、前記シール材の前記突出部の形状に合わせて、前記シール溝から連続して形成された溝部を備え、前記シール材が前記ハウジングに装着されたときに、前記矩形形状において対向する一対の第1の辺群の伸び率と他の一対の第2の辺群との伸び率とが略同一である。
また、前記第1の辺群は、矩形形状の長辺を構成する辺群であって、構成する二つの辺のそれぞれの長さ方向中央に、前記突出部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パッキンの位置ズレ抑制を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る、キャップと端子用コネクタとが嵌合した状態のベース・コネクタの斜視図である。
【図2】実施形態に係る、ベース・コネクタの斜視図である。
【図3】実施形態に係る、端子用コネクタの平面図である。
【図4】実施形態に係る、キャップの側面図である。
【図5】実施形態に係る、パッキンの平面図及び側面図である。
【図6】実施形態に係る、キャップへのパッキンの取り付け状態を説明するための図である。
【図7】実施形態に係る、キャップのコーナー領域(図6の領域R)を示す図である。
【図8】実施形態に係る、パッキンに作用する力を説明するための図である。
【図9】実施形態に係る、キャップのコーナー部分に作用する力を示した図である。
【図10】従来技術に係る、シール材装着構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図1〜図9を用いて説明する。なお、図面には、発明の構成又は効果を判り易く表すこと等を目的として、模式的に誇張、省略された部分が含まれる。
【0012】
図1に示すように、ベース・コネクタ40に端子ケーブル84が装着されるとともに、キャップ20が装着され、電気的接続と気密性とが確保される。具体的には、図2に示すように、ベース・コネクタ40は、合成樹脂により一体成形で形成されており、端子用コネクタ30が内挿され嵌合する端子用コネクタ嵌合部44とキャップ20が内挿され嵌合するキャップ嵌合部42とを備えている。
【0013】
キャップ嵌合部42及び端子用コネクタ嵌合部44は、それぞれ、キャップ20及び端子用コネクタ30の形状に対応し断面略矩形形状を呈している。また、キャップ嵌合部42の図示左右の側面にはコネクタ係止片46aが形成さており、キャップ20が装着されるときに、キャップ20のコネクタ係止部24と係止する。同様に、端子用コネクタ嵌合部44の図示左右の側面にはコネクタ係止片46bが形成さており、端子用コネクタ30が装着されるときに、端子用コネクタ30のコネクタ係止部36と係止する。
【0014】
図3は、キャップ20を示しており、図3(a)はパッキン50が装着された状態を示し、図3(b)はパッキン50が未装着の状態を示している。
【0015】
キャップ20は、ハウジングである筒状のキャップ本体22と、コネクタ係止部24と、パッキン配置溝26とを備えている。ここでは、キャップ本体22は、合成樹脂によって断面略矩形となって一体成形によって形成されており、図示前面及び背面、また左右が対称になっている。
【0016】
キャップ嵌合部42に装着される部分であるキャップ本体22の側面にはパッキン配置溝26が形成されており、キャップ本体22の側面部分を一巡するようにパッキン50が装着される。また、キャップ本体22の上側部分側面29には、左右方向の中央にパッキン配置溝26が凹状に形成されている。パッキン配置溝26にパッキン50の位置ズレ防止用凸部58が配置される。
【0017】
図4は、パッキン50が装着された状態の端子用コネクタ30を示している。図示のように、端子用コネクタ30は、端子金具80が内装される筒状のハウジング32を有している。ハウジング32の一部は、パッキン装着部34を構成している。端子用コネクタ30がベース・コネクタ40に装着された際に、端子金具80の端子部82が内部に配置され、端子ケーブル84が外部に延伸する。
【0018】
パッキン装着部34は、パッキン50を装着する構造として、図3のキャップ20と同様の構造を呈しており、パッキン装着部34の上側部分側面38には、左右方向の中央にパッキン配置溝(図示せず)が形成されている。
【0019】
図5はシール材として機能するパッキン50を示しており、図5(a)は平面図、図5(b)は側面図を示している。図5(a)に示すように、パッキン50は、合成ゴム等の弾性の材料によって環状に形成されている。また、主に図5(b)に示すように、パッキン50は、側面視で、外形が蛇腹状のパッキン本体部52と、上面56において左右方向中央に位置ズレ防止用凸部58を備えている。つまり、パッキン50は、パッキン50が延びる方向とは垂直に、言い換えると装着方向A1、A2とは反対方向パッキン50から突出した突出形状の位置ズレ防止用凸部58を有する。
【0020】
図6〜図9を参照して、キャップ20へのパッキン50の取り付け状態を説明する。なお、端子用コネクタ30へのパッキン50の取り付け状態についても同様であるので説明は省略する。
【0021】
図6(a)は、パッキン50を装着した状態のキャップ20の側面図である。また、図6(b)は図6(a)のJ−J断面図について、パッキン50が適正に組み付けられた状態を示している。また、図6(c)は図6(a)のJ−J断面図についてコーナー部分でパッキン50がズレている状態を示している。さらに図7は、図6(c)のコーナー領域Rを拡大して示した図である。図8は、パッキン50に作用する応力F_d1、F_d2を説明するための図である。さらに図9は、キャップのコーナー部分に作用する応力F_d1、F_d2の合成応力を示した図である。なお、応力F_d1は、パッキン50の図示で左右の短辺d1の部分に中心方向に作用する応力を示し、応力F_d2はパッキン50の図示で上下の長辺d2の部分に中心方向に作用する応力を示している。
【0022】
パッキン50が適正に組み付けられない場合、図7に示すように、キャップ本体22とキャップ本体22のパッキン内壁面54との間に、隙間dが生じる。つまり、パッキン機能として適正に発揮していない状態となってしまう。
【0023】
一般に、パッキン50をキャップ20に装着した後に発生する応力は、パッキン50の伸び率によって増減する。図8において、パッキン50の短辺d1と長辺d2の伸び率が同等であれば、二つの応力F_d1、F_d2は実質同じ(F_d1≒F_d2)となり、図9(a)に示すように、コーナー部rの中心方向に合成応力F_s1が発生する。その結果、パッキン50がキャップ20からズレにくくなる。
【0024】
一方で、パッキン50の短辺d1と長辺d2の伸び率が異なると、二つの応力F_d1、F_d2に差が発生する。例えば、何ら対策を施さない場合、図9(b)に示すように、短辺d1の応力F_d1が長辺d2の応力F_d2より小さくなる(F_d1<F_d2)。そのため、合成応力F_s2の方向が、コーナー部rの中心方向からずれてしまう。図示では、中心方向に対して右方向にずれている。その結果、パッキン50がキャップ20からズレやすくなる。
【0025】
そこで、二つの応力F_d1、F_d2は実質同じ(F_d1≒F_d2)となるように、位置ズレ防止形状(位置ズレ防止用凹部28及び位置ズレ防止用凸部58)を設けることで、短辺d1の応力F_d1が高くなり、つまり、伸びにくくなり、位置ズレ抑制の効果が向上する。その結果、キャップ20をベース・コネクタ40へ嵌装する際に、パッキン50の噛み込みを防止、それに伴う作業性の向上を実現することができる。
【0026】
以上、本実施形態によると、パッキン50の伸び率を前後方向及び左右方向で同等するこができる位置ズレ防止用凸部58及び位置ズレ防止用凹部28を設けることで、パッキン50の装着時の位置ズレを抑制することができる。その結果、パッキン50を装着したキャップ20や端子用コネクタ30をベース・コネクタ40に装着するときに、パッキン50の噛み込みを防止することができる。したがって、ベース・コネクタ40へのキャップ20及び端子用コネクタ30の組み付け作業における作業効率を向上させることができる。また、大きなスペースを必要としないため、簡易的な構造で実現できる。
【0027】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素及びその組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。上記メカニズムを適用できる形状について適用可能であることは言うまでもない。例えば、長辺d2が短辺d1に比べて非常に長い場合に、位置ズレ防止形状(位置ズレ防止用凹部28及び位置ズレ防止用凸部58)が一辺に複数設けられてもよい。
【符号の説明】
【0028】
20 キャップ
22 キャップ本体
24 コネクタ係止部
26 パッキン配置溝
28 位置ズレ防止用凹部
29 上側部分側面
30 端子用コネクタ
32 ハウジング
34 パッキン装着部
36 コネクタ係止部
38 上側部分側面
40 ベース・コネクタ
42 キャップ嵌合部
44 端子用コネクタ嵌合部
46、46a、46b コネクタ係止片
50 パッキン
52 パッキン本体部
54 パッキン内壁面
56 上面
58 位置ズレ防止用凸部
80 端子金具
82 端子部
84 端子ケーブル
r コーナー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの側面を一巡するシール溝に、弾性を持つシール材を装着するシール材装着構造であって、
前記シール材は、該シール材が延びる方向とは垂直に、該シール材から突出した突出部を備え、
前記ハウジングは、断面略矩形形状を呈しており、前記シール材の前記突出部の形状に合わせて、前記シール溝から連続して形成された溝部を備え、
前記シール材が前記ハウジングに装着されたときに、前記矩形形状において対向する一対の第1の辺群の伸び率と他の一対の第2の辺群との伸び率とが略同一である
ことを特徴とするシール材装着構造。
【請求項2】
前記第1の辺群は、矩形形状の長辺を構成する辺群であって、構成する二つの辺のそれぞれの長さ方向中央に、前記突出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール材装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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