説明

シール構造

【課題】液通路からの衝撃的な高圧力がシール部材に作用しても、シール部材がシール対象としての第1部材と第2部材との間の隙間からはみ出すことのない耐圧シール性に優れたシール構造を提供する。
【解決手段】液通路としての流出口68,流出通路82を有する、シール対象としての固定弁体58と底蓋75とのそれぞれに、シール部材90を上下に挟み込み圧縮させる押圧部122と、外側壁部124とを設け、押圧部122にてシール部材90を押圧し、外側壁部124の各端間に隙間Sを形成する状態にシール部材90を圧縮弾性変形させてシールするシール構造において、シール部材90の上下方向端部には幅方向中央部に断面山形状で突部132を設けるとともに、幅方向両側に肩部134を設けておく。またシール部材90は左右対称形状となすとともに、上下方向端部の形状を、圧縮状態で固定弁体58及び底蓋75との間に閉空間を残さない形状となしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシール構造に関し、特に耐圧シール性を高めるための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の部材をシールするためのシール構造として以下のようなシール構造、即ち互いに連通した液通路を有する、シール対象としての第1部材と第2部材とのそれぞれに、弾性を有するシール部材を挟み込み圧縮させる押圧部と、シール部材より液通路の側とは反対側の外側で押圧部から互いに接近する方向に起立して相対向する外側壁部とを設け、外側壁部の内側で押圧部によりシール部材を押圧し、外側壁部の各端間に隙間形成する状態にシール部材の圧縮方向端部の突部を圧縮弾性変形させることにより、第1部材と第2部材との間をシールするシール構造が公知である。
例えばシングルレバー水栓における弁カートリッジの内部のシール構造として、この種のシール構造を用いたものが下記特許文献1に開示されている。
【0003】
図7はその具体例を示している。
図において、200はセラミックディスクから成る固定弁体(第1部材)で、202は弁カートリッジのカートリッジケースにおける底蓋(第2部材)であり、それぞれに液通路(ここでは混合水の通路)204,206を有している。
これらセラミックスディスク200と底蓋202とには、それぞれ弾性を有するシール部材212を挟み込み圧縮させる押圧部208と、シール部材212より液通路204の側とは反対側の外側で押圧部208から互いに接近する方向に起立して相対向する外側壁部210とが設けられている。
【0004】
このシール構造では、固定弁体200の押圧部208と、底蓋202の押圧部208との間にシール部材212を挟み込み、そして外側壁部210と210との各端間に隙間Sを生じる状態にそれら押圧部208にてシール部材212を圧縮し、以てかかるシール部材212にて固定弁体200と底蓋202との間を液通路204,206の周りの部分でシールする。
【0005】
図8は、シール部材212の縦断面形状を拡大して示したもので、図8(イ)に示すように、従来、シール部材212として圧縮方向端部に断面山形状の突部(リップ部)214を、図に示す縦断面において幅方向(図中左右方向の内外方向)の両側に2つ設けたものや、或いは図8(ロ)に示すように突部214を縦断面の幅方向全幅に亘って単一の断面山形状で設けたもの等が用いられている。
ここで突部214を設けているのはシール性のためで、図8(イ)に示すように幅方向の両側に突部214を2つ設けたものは、シール性をより一層高めることを目的としたものである。
尚、図(イ)(A),図(ロ)(A)で示す形状は圧縮前の形状であり、図(イ)(B),図(ロ)(B)で示す形状は組付後の圧縮状態の形状である。
【0006】
しかしながら例えば図8(イ)に示す前者のもの、即ち2つの突部214を設けたもの(ダブルリップ式のもの)は、組付前において突部214と214との間に生じていた空間KAが、組付後の圧縮状態でシール部材212と相手部材(固定弁体200,底蓋202)との間に閉空間KBとして残ってしまったり、或いは一方の突部214と相手部材の押圧部208及び外側壁部210との間に、即ち押圧部208と外側壁部210との間の凹部のコーナ部に閉空間KBを残してしまう。
また後者の図8(ロ)に示すシール部材においても同様に組付後の圧縮状態で、相手部材の押圧部208及び外側壁部210との間の凹部のコーナ部に同様の閉空間KBを残してしまう。
これに起因して、このシール構造においては次のような問題を生じることが判明した。
図8(ハ)はこの問題を模式的に表したものである。
【0007】
上記のように、組付後の圧縮状態で閉空間KBやKBがシール部材212と相手部材との間に残っていると、シール部材212に対して液通路204,206の側から衝撃的な高圧力或いは静的な高圧力が作用したとき、シール部材212がその一部を閉空間KB,KBに逃がすようにして変形できるために、シール部材212が図中上下方向中央部で変形し易く、図に示しているようにその一部が外側壁部210と210との間の隙間Sにはみ出したり((II)参照)、或いは場合によってその隙間Sを通じてシール部材212が脱落してしまう((III)参照)恐れが生じる。
このような状態になるとシール部材212によるシールが十分に確保されなかったり、或いはシール能力が失われたりする恐れが生ずる。
【0008】
以上シングルレバー水栓における弁カートリッジ内部のシール構造を例として述べたが、同様の構造でシールを行う他のシール構造においても同じような問題が生じる。
【0009】
尚、下記特許文献2には「水回り部品」についての発明が示され、そこにおいて樹脂製の水回り部品本体の凹溝にOリングを設けてシールする際、凹溝にパーティングラインが生じることによって、Oリングとパーティングラインとの隙間で漏水が生じる問題を解決することを目的として、凹溝3にシール部材をインジェクション成形で設ける点が開示されている。
但しこの特許文献2に開示のものは、シール部材が変形によりはみ出し脱落を生じるような隙間を有するものでなく、またそもそもシール部材が凹溝にインジェクション成形にて一体に固着され、脱落の恐れを有しないものである点で本発明とは別異のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−65762号公報
【特許文献2】特開2001−200934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような事情を背景とし、液通路からの衝撃的な高圧力或いは静的な高圧力がシール部材に作用しても、シール部材がシール対象としての第1部材と第2部材との間の隙間からはみ出し或いは脱落する恐れがなく、耐圧シール性に優れたシール構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
而して請求項1のものは、互いに連通した液通路を有する、シール対象としての第1部材と第2部材とのそれぞれに、弾性を有するシール部材を挟み込み圧縮させる押圧部と、該シール部材より前記液通路の側とは反対側の外側で該押圧部から互いに接近する方向に起立して相対向する外側壁部とを設け、該外側壁部の内側で前記押圧部により前記シール部材を押圧し、該外側壁部の各端間に隙間形成する状態に、前記シール部材の前記圧縮方向の端部の突部を圧縮弾性変形させることにより、前記第1部材と第2部材との間をシールするシール構造において、前記シール部材の圧縮方向端部に、且つ前記液通路の側を内側、前記外側壁部の側を外側とする内外方向の両端部分を除いた該内外方向の中央部分に断面山形状を成す前記突部を設けるとともに、該突部の該内外方向の両側には、前記押圧部と外側壁部とで形成される凹部のコーナ部に対応した形状で張り出す肩部を設け、更に前記シール部材は、前記圧縮方向及び前記内外方向の断面の縦断面形状を、該内外方向の中心で圧縮方向に延びる中心線に対して内側部分と外側部分とを対称形状となしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項2のものは、請求項1において、前記突部が前記内外方向の中央を頂部とする断面山形状をなしていることを特徴とする。
【0014】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記凹部のコーナ部が角形状となしてあり、前記シール部材の前記肩部を対応した角形状となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、組付後の圧縮状態でシール対象としての第1部材,第2部材との間の空間を十分に埋めることができ、液通路の側で発生した衝撃的な高圧力や静的な高圧力がシール部材に対して作用した場合においてもシール部材の変形を良好に抑制でき、シール部材が第1部材及び第2部材の外側壁部の各端間の隙間から変形によりはみ出したり、或いは場合によってその隙間から脱落してしまうといったことを防ぎ得て、耐圧シール性を高めることができる。
【0016】
本発明ではまた、シール部材の縦断面形状を、内外方向の中心で圧縮方向に延びる中心線に対し内側部分と外側部分とを内外方向に対称形状となしていることから、シール部材を第1部材と第2部材との一対の押圧部にて圧縮変形させたときに、シール部材の内側部分と外側部分とを均等に圧縮弾性変形させることができ、シール部材の不均等な変形によって相手部材となる第1部材,第2部材との間に予期しない空間を生ぜしめてしまうのを防ぐことができる。
【0017】
本発明ではまたシール部材の圧縮方向端部に、上記山形状をなす突部の両側に、第1部材,第2部材における押圧部と外側壁部とで形成される凹部のコーナ部に対応した形状で突部から張り出した形の肩部を設けてあるため、シール部材を圧縮したときに、この肩部によって凹部のコーナ部を良好に埋めることができる。
【0018】
即ち、断面山形状をなす突部のみによってこのような凹部のコーナ部を十分に埋めることは難しいが、本発明ではこのような突部から張り出した形の肩部が突部に並んで設けてあるため、シール部材の圧縮時に凹部のコーナ部を肩部によって埋めることができる。
【0019】
本発明では、上記突部を上記内外方向の中央を頂部とする断面山形状で形成しておくことができる(請求項2)。
【0020】
更に上記の凹部のコーナ部を角形状となし、そしてシール部材の上記肩部を、これに対応した角形状となしておくことができる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の適用対象の一例としてのシングルレバー水栓の概略全体構成を示した図である。
【図2】図1における水栓本体の内部構造を周辺部とともに示した図である。
【図3】本発明の一実施形態のシール構造を含む弁カートリッジ内部を組付け状態で周辺部とともに示した図である。
【図4】図3における弁カートリッジの構成部材を周辺部材とともに分解して示した図である。
【図5】同実施形態におけるシール部材の単品図である。
【図6】同実施形態の作用説明図である。
【図7】弁カートリッジ内部の従来のシール構造の一例を示した図である。
【図8】従来のシール構造の不具合を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明をシングルレバー水栓における弁カートリッジ内部のシール構造に適用した場合の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1において、10は取付基体としてのカウンタで、このカウンタ10に対し、互いに離隔した位置において水栓本体12と吐水部14とが設けられている。
吐水部14は、吐水ヘッド16と、これを保持するホルダ18とを有しており、その吐水ヘッド16が、これに接続された可撓性のホース20とともに収納位置から引出可能とされている。
【0023】
吐水ヘッド16は、先端下面に吐水口22を有しており、更にまたその前面に吐水をストレート吐水からシャワー吐水に若しくはその逆に切り換える切換操作部24が設けられている。
この吐水部14はまた、その全体がスライド管26のスライド移動を伴って上昇位置と下降位置との間で上下に移動可能とされている。
【0024】
水栓本体12は、その内部に後述の弁カートリッジ46を収容しており、また上部にはレバーハンドル28が設けられていて、そのレバーハンドル28が弁カートリッジ46に作動的に連結されている。
30は水栓本体12に水,湯を流入させるための流入管で、ここではその流入管30が可撓管にて構成されている。
【0025】
32は水栓本体12から水,湯若しくは混合水(以下単に混合水とする)を流出させる流出管で、ここではこの流出管32が銅管から成っている。
この流出管32の下端部には、上記ホース20の端部が接続金具を介して接続されている。
【0026】
図2に、水栓本体12の内部構造がその周辺部とともに詳しく示してある。
同図に示しているように、水栓本体12はカウンタ10に形成した取付穴34において、締結ナット36により三角パッキン38を介してカウンタ10に締結固定されている。
【0027】
図2において、40は水栓本体12の本体ボデーを成すハウジングで、円筒状をなす樹脂製の周壁42と、これとは別体をなす底部44とを有しており、その内部に弁カートリッジ46を収容状態で保持している。
樹脂製の周壁42からは、同じく樹脂製の挿通部48が一体に図中下向きに延び出している。
挿通部48は取付穴34を下向きに挿通し、そしてその外周面に形成された雄ねじに、カウンタ10の裏側で上記の締結ナット36がねじ込まれ、上記周壁42の下面をカウンタ10に着座させる状態に、ハウジング40をカウンタ10に締結固定している。
【0028】
上記底部44には水,湯の流入通路50及び混合水の流出通路52が形成されており、そしてその流入通路50に内部を連通させる状態で、上記の流入管30が底部44に対してねじ結合され、また流出通路52に内部を連通させる状態で、上記の銅管から成る流出管32が溶接にて接合されている。
この実施形態では、ハウジング40が後述の固定ナット56とともに化粧カバー54にて外側から覆われている。
【0029】
図3に、弁カートリッジ46の構成が組付状態で周辺部とともに詳しく示してある。
同図に示しているように弁カートリッジ46は、セラミックディスクから成る固定弁体(第1部材)58と、固定弁体58上を摺動する可動弁体60とを有しており、それらがカートリッジケース65内に収容されている。
【0030】
ここで可動弁体60は、固定弁体58に直接接触するセラミックディスクから成る摺動体62と、レバーハンドル28からの操作力を受けて駆動され、摺動体62と一体に移動する、摺動体62とは別体をなす被駆動部64とを有している。
固定弁体58には水,湯の流入口(液通路)66と混合水の流出口(液通路)68とが設けられている。
一方可動弁体60には、流入口66から流入した水と湯とを混合する混合室70が形成されている。
混合室70内の混合水は、固定弁体58の流出口68を通じて図中下方に流出せしめられる。
【0031】
上記カートリッジケース65は、図中上側のケース本体72と、下側の底蓋(第2部材)75との2分割構造とされており、それらが上下に組み合されてカートリッジケース65を構成している。
詳しくは、図4に示しているようにカートリッジケース65には周方向複数個所において下向きに突出する弾性片が設けられており、その弾性片に貫通の係止孔74が設けられている。
【0032】
一方底蓋75には、対応する周方向位置において図中上向きの突出部が設けられており、その突出部の先端に係止爪76が設けられ、その係止爪76が係止孔74に係入せしめられている。
そしてこれら係止孔74と係止爪76との弾性的な係合作用によって、ケース本体72と底蓋75とが互いに組み付けられている。
【0033】
この実施形態において、係止孔74は係止爪76に対し図中上下方向寸法が大きくされており、係止爪76が係止孔74内において相対的に上下に移動可能となしてある。
固定ナット56をねじ込む前では、係止爪76は係止孔74の下辺にほぼ接した状態にある。
この状態で固定ナット56がねじ込まれ、ケース本体72に対して図中下向きの押込力が加えられると、ケース本体72が底蓋75に対し相対的に下向きに移動し、そして図3に示す最終の組付状態で係止爪76が係止孔74の上下の中間位置に位置した状態となる。
即ちこの実施形態では、底蓋75に対して上側のケース本体72が相対的に図中下向きに移動可能とされている。
【0034】
底蓋75は、図4にも示しているように下面から下向きに突出した一対の筒状部78と、脚80とを有しており、図2及び図3に示しているようにそれらの先端(下端)がハウジング40における底部44の上面に当接せしめられている。
この一対の筒状部78の内部には水,湯の流入通路(液通路)81が形成されており、図2に示しているように、この流入通路81が底部44に形成された流入通路50及び固定弁体58に形成された流入口66に連通せしめられている。
また流入通路81とは別の位置において、固定弁体58の流出口68に連通した流出通路(液通路)82が設けられている。
【0035】
上記混合室70内の混合水は、固定弁体58の流出口68を経て底蓋75の流出通路82に流出せしめられ、更にその下側の水室84へと流出せしめられる。
この水室84に到った混合水は、上記の流出管32及びホース20を通じて吐水部14へと送られる。
ここで水室84は、底蓋75とハウジング40における底部44及び周壁42との間に形成されている。
【0036】
この底蓋75の外周面には、図3,図4に示しているように弾性を有するリング状のシール部材85が環状溝内に保持されており、このシール部材85によって、底蓋75の外周面とハウジング40における周壁42の内周面との間が水密にシールされている。
【0037】
一方、底蓋75における上記の筒状部78の先端面(下端面)には、弾性を有するリング状のシール部材86が流入通路81を取り巻くようにして環状溝内に保持されており、このシール部材86によって、筒状部78と底部44との間が水密にシールされている。
【0038】
他方底蓋75の上面には、図4にも示しているように一対の流入通路81,流出通路82をそれぞれ取り巻くようにして、弾性を有する一対の円筒形状のシール部材88及び90が保持されており、これらシール部材88,90によって、底蓋75と固定弁体58との間が水密にシールされている。
【0039】
また可動弁体60においては、摺動体62の上面に、混合室70を取り巻くようにして弾性を有するリング状のシール部材92が保持されており、このシール部材92によって、摺動体62と被駆動部64との間が水密にシールされている。
【0040】
ここでシール部材86,88,90は何れも図中下向きの力を受けて圧縮変形し、その圧縮変形状態の下でシール機能を発揮する。
特にシール部材88,90は、図3及び図4に示しているように断面形状が縦長の形状をなしており、このシール部材88,90が上下に圧縮せしめられることで、その反発力が固定弁体58と可動弁体60の摺動体62との間に作用し、それら固定弁体58と摺動体62とが、その弾性的な反発力に基づいて良好に密着状態に接触せしめられ、固定弁体58と摺動体62との間の水密接触が確保される。
【0041】
図3において、94は回転体でカートリッジケース65内部に回転可能に組み込まれている。
回転体94は、図4に示しているように円筒状をなしており、その下端に径方向外方に環状に張り出したフランジ部96を有している。
98は駆動アームで、図2に示しているように固定ビス100にてレバーハンドル28に締結固定され、レバーハンドル28と一体移動するようになっている。
駆動アーム98は、支持ピン102を介して回転体94に結合されている。
ここで支持ピン102は紙面と直角方向に配向され、軸端部が回転体94に設けられた貫通の保持孔に嵌入せしめられて、そこに保持されている。
【0042】
この駆動アーム98の図中下端部には、一対のフォーク部104が突出形状で設けられており、それらフォーク部104が、可動弁体60における被駆動部64の凹部106内に係入せしめられている。
【0043】
駆動アーム98は、レバーハンドル28と一体に支持ピン102周りに回転運動し、また回転体94の回転軸心周りに回転体94とともに回転運動し、レバーハンドル28の操作を可動弁体60に伝えて、可動弁体60を対応する方向に摺動運動させる。
【0044】
具体的には、レバーハンドル28が図2中上下方向に回動操作されると、駆動アーム98が図3中支持ピン102周りに左右方向に回転運動し、可動弁体60を図中左右方向に移動させて吐止水及び水量調節動作を行わせる。
またレバーハンドル28が図2中紙面と直角方向に回動操作されると、駆動アーム98が回転体94とともにその軸心周りに回転運動し、可動弁体60を同方向に回転運動させて混合水の温度調節動作を行わせる。
【0045】
図6に示しているように、底蓋75には円筒状の立上り部120が設けられており、この立上り部120の外周側に上記のシール部材90が配置されている。
また固定弁体58と底蓋75には、それぞれ円筒形状をなすシール部材90を図中上下方向の軸方向に挟み込み圧縮させる押圧部122と、シール部材90より上記の流出口68,流出通路82の側とは反対側の外側で押圧部122から互いに接近する方向に起立して相対向する外側壁部124とが設けられている。
そして固定弁体58には、これら押圧部122と外側壁部124とによって凹部126が形成され、また底蓋75においても押圧部122と外側壁部124とで凹部126が形成されている。
ここで凹部126のコーナ部は角度90°の角部を成している。
【0046】
この実施形態では、外側壁部124の内側で固定弁体58及び底蓋75の各押圧部122にて、シール部材90を軸方向(図中上下方向)に押圧し、そして図6(B)に示しているように一対の外側壁部124と124との間に隙間Sを形成する状態に、シール部材90を圧縮弾性変形させることで、シール部材90により固定弁体58と底蓋75との間を、流出口68及び流出通路82の周りの部分でシールする。
尚、流入口66及び流入通路81側のシール部材88による固定弁体58と底蓋75との間のシール構造も同じシール構造となしてある。
従って以下では流出口68,流出通路82側のシール部材90によるシール構造を代表として説明する。
【0047】
この実施形態において、固定弁体58における押圧部122の下面の押圧面128、及び底蓋75側の押圧部122の上面の押圧面128は、何れもシール部材90の軸方向即ちシール部材90に対する圧縮方向と直角方向の平坦な面をなしており、また固定弁体58,底蓋75側の外側壁部124の内面の壁面130は何れも軸方向の面とされており、それら押圧面128と壁面130とは直角に交差している。
【0048】
一方シール部材90は、図5に示しているようにその縦断面形状が前述したように軸方向(図中上下方向)に縦長のほぼ矩形状をなしており、その内周面及び外周面が何れも軸方向にストレート形状で延びるストレート面をなしている。
尚シール部材90は、組付け前の自由形状において、図6(B)に示す組付状態の下での押圧面128と128との間の図中上下方向の寸法よりも軸方向寸法が長寸法とされている。そしてその寸法の差分がシール部材90の圧縮代となる。
【0049】
図5に詳しく示しているように、シール部材90の軸方向(圧縮方向)端部には、縦断面形状における幅方向、即ち流出口68,流出通路82側を内側、外側壁部124の側を外側とする内外方向の両端部分を除いた中央部分に、その中央を頂部とする断面山形状の連続した1つの突部132が設けられている。
ここで突部132は頂部に向って連続的且つなだらかにその高さが高くなるような断面湾曲形状をなしている。
【0050】
シール部材90の軸方向端部にはまた、突部132の軸直角方向内側と外側とに、突部132に対して図中左右方向に張り出した肩部134が設けられている。
これら肩部134の形状は、上記凹部126のコーナ部形状に対応した角形状、ここでは90°の角形状とされている。
ここで図5(B)に示す突部132の幅aは、肩部134を含めたシール部材90の幅bの60〜90%が好ましく、突部132の曲率は幅bを直径としたときの半径寸法とすることが好ましい。
シール部材90はまた、縦断面における幅方向の中心Pに対して図中左側部分L即ち内側部分と、右側部分R即ち外側部分とが左右対称形状をなしている。
【0051】
図6(A)は、シール部材90を組付前の非圧縮状態で示している。
この実施形態では、図6(A)に示す状態から上記の固定ナット56をハウジング40の周壁部42にねじ込んで、カートリッジケース65におけるケース本体72を下向きに押し込むと、ここにおいてシール部材90が固定弁体58の押圧部122と底蓋75の押圧部122とで図中上下方向に押圧され、外側壁部124と124との図中上下方向の各端間に隙間Sを形成する状態に圧縮弾性変形せしめられる。
図6(B)は、このようにしてシール部材90を圧縮し締め付けた状態を示している。
【0052】
図6(B)に示しているように、この実施形態では押圧部122と122とによる図中上下方向即ち軸方向の圧縮により、シール部材90の軸方向(圧縮方向)各端部の突部132が圧縮変形せしめられ(このとき当然ながらシール部材90の他の部分も同方向に圧縮変形させられる)、そして圧縮後においてシール部材90の図中上下の面は平坦な面となって、押圧面128に密着せしめられる。
また図中右側の肩部134が凹部126のコーナ部を埋める。
シール部材90の形状が予めそのように定められている。
その結果、シール部材90は固定弁体58及び底蓋75との間に閉空間を生ぜしめることなくそれらに密着接触し、固定弁体58と底蓋75との間を水密にシールする。
【0053】
以上のような本実施形態では、流出口68及び流出通路82の側で発生した衝撃的な高圧力や静的な高圧力がシール部材90に対して作用した場合においても、シール部材90の変形を良好に抑制でき、シール部材90が固定弁体58及び底蓋75の外側壁部124の各端間の隙間Sから変形によりはみ出したり、或いは場合によってその隙間Sから脱落してしまうといったことを防ぐことができ、耐圧シール性を高めることができる。
【0054】
本実施形態ではまた、シール部材90の縦断面形状を中心線Pに対し内側部分(図中左側部分)Lと外側部分(図中右側部分)Rとを左右対称形状となしていることから、シール部材90を固定弁体58と底蓋75との一対の押圧部122にて圧縮変形させたときに、シール部材90の内側部分Lと外側部分Rとを均等に圧縮弾性変形させることができ、シール部材90の不均等な変形によって、シール部材90と相手部材となる固定弁体58,底蓋75との間に予期しない閉空間を生ぜしめてしまうのを防ぐことができる。
【0055】
本実施形態ではまた、シール部材90の圧縮方向端部に且つ上記山形状をなす突部132の両側に、固定弁体58,底蓋75における押圧部122と外側壁部124とで形成される凹部126のコーナ部に対応した形状で突部132から張り出した形の肩部134を設けてあるため、シール部材90を圧縮したときに、この肩部134によって凹部126のコーナ部を良好に埋めることができ、そこに閉空間が生じるのを防止することができる。
【0056】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上記凹部126におけるコーナ部を他の形状に形成し、またこれに応じてシール部材90における肩部をこれに対応した他の形状で構成することも可能であるし、またシール部材90における突部を上例以外の形状の山形状で構成することも可能である。
また上記実施形態は本発明をシングルレバー水栓の弁カートリッジ内部のシール構造に適用した例であるが、本発明はその他の部材のシール構造として、或いは水以外の液に対するシール構造として適用することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0057】
58 固定弁体(第1部材)
68 流出口(液通路)
75 底蓋8(第2部材)
82 流出通路(液通路)
90 シール部材
122 押圧部
124 外側壁部
126 凹部
132 突部
134 肩部
P 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通した液通路を有する、シール対象としての第1部材と第2部材とのそれぞれに、弾性を有するシール部材を挟み込み圧縮させる押圧部と、該シール部材より前記液通路の側とは反対側の外側で該押圧部から互いに接近する方向に起立して相対向する外側壁部とを設け、該外側壁部の内側で前記押圧部により前記シール部材を押圧し、該外側壁部の各端間に隙間形成する状態に、前記シール部材の前記圧縮方向の端部の突部を圧縮弾性変形させることにより、前記第1部材と第2部材との間をシールするシール構造において、
前記シール部材の圧縮方向端部に、且つ前記液通路の側を内側、前記外側壁部の側を外側とする内外方向の両端部分を除いた該内外方向の中央部分に断面山形状を成す前記突部を設けるとともに、
該突部の該内外方向の両側には、前記押圧部と外側壁部とで形成される凹部のコーナ部に対応した形状で張り出す肩部を設け、
更に前記シール部材は、前記圧縮方向及び前記内外方向の断面の縦断面形状を、該内外方向の中心で圧縮方向に延びる中心線に対して内側部分と外側部分とを対称形状となしてあることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
請求項1において、前記突部が前記内外方向の中央を頂部とする断面山形状をなしていることを特徴とするシール構造。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記凹部のコーナ部が角形状となしてあり、前記シール部材の前記肩部を対応した角形状となしてあることを特徴とするシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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