説明

シール構造

【課題】処理機の移送を案内するとともに、容器外への液体の飛散を防止すること。
【解決手段】放射性固体廃棄物を含水状態で貯蔵するタンク2に設けられて当該タンク2の上部に開放する容器開口部2eと、筒状とされた下端部が容器開口部2eの開口縁形状に沿う形状に形成された筒部材6と、の間を密封するシール構造であって、容器開口部2eの上方にてタンク2とは切り離された放射線遮蔽体3に筒部材6を支持し、軟質の金属材によって環状に形成されたシール部材7を、容器開口部2eの開口上縁と筒部材6の下端部との間に介在してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、少なくとも液体を貯蔵する容器の上部の開口部と、当該開口部に通じる筒体との間に設けられるシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電設備では、その運転において発生する放射性フィルタスラッジや放射性廃棄イオン交換樹脂などの放射性固体廃棄物を、所定の容器内に含水状態で一定期間貯蔵することで放射能を減衰させる。そして、一定期間の経過の後、貯蔵された放射性固体廃棄物を容器から抜き出して焼却などの処理をして処分する。このため、放射性固体廃棄物を抜き出すポンプを容器上部の開口部から吊り降ろして容器内に配置したり、当該ポンプを吊り上げて容器の開口部から容器外に出したりする必要がある。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載の放射性廃スラッジ抜出装置は、原子力発電所における放射性廃スラッジ(放射性固体廃棄物)を貯蔵する放射性廃液の容器内より、放射性廃スラッジを攪拌して抜き出すためのものである。この放射性廃スラッジ抜出装置は、容器への攪拌抜出ポンプの昇降に追随し、昇降可動するポンプガイドを設けている。容器は、コンクリート躯体内に配置されている。そして、容器上方のコンクリート躯体のハッチを開放した場合には、ハッチ部分にポンプのガイドがないため、当該ハッチ部分に上記ポンプガイドが配置される。このため、ハッチの開口部の床厚部分と容器との間でポンプの昇降が案内されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−142394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載したような放射性廃スラッジ抜出装置では、容器の開口部が開放されており、ポンプによる放射性固体廃棄物の攪拌時や、容器内に設けたスプレイノズルによるポンプの洗浄時に、放射性を帯びた液体の水滴が飛沫となり、上記容器の開口部から容器外に飛散するおそれがある。放射性を帯びた液体の容器外への飛散は、液体漏れとなるため、容器の管理上好ましくない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、ポンプなどの処理機の移送を案内するとともに、容器外への液体の飛散を防止することのできるシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明のシール構造は、被貯蔵物を含水状態で貯蔵する容器に設けられて当該容器の上部に開放する容器開口部と、筒状とされた下端部が前記容器開口部の開口縁形状に沿う形状に形成された筒部材と、の間を密封するシール構造であって、前記容器開口部の上方にて前記容器とは切り離された部位に前記筒部材を支持し、軟質の金属材によって環状に形成されたシール部材を、前記容器開口部の開口上縁と前記筒部材の下端部との間に介在してなることを特徴とする。
【0008】
このシール構造によれば、容器の容器開口部と筒部材との間がシール部材で密封された形態で、容器開口部と筒部材とが連通される。このため、容器に貯蔵された被貯蔵物を攪拌や抜き出しする処理を行う場合に、当該処理を行う処理機を、筒部材で案内しつつ容器開口部から容器内に移送することができる。しかも、容器の容器開口部と筒部材との間がシール部材で密封されているため、処理機による被貯蔵物の処理において容器内の液体が飛沫となり、容器開口部から容器外に飛散する事態を防止することができる。しかも、筒部材が容器とは切り離された部位に支持されていることから、筒部材の自重が容器側に掛かる事態を防止し、容器側に当該自重を受けられる強度を確保する必要がない。
【0009】
また、本発明のシール構造は、前記シール部材は、断面内に空間部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このシール構造によれば、筒部材の自重をほとんど受けなくてもシール部材が変形できるので、容器の容器開口部と筒部材との間の密封状態を適宜得ることができる。
【0011】
また、本発明のシール構造は、前記シール部材は、鉛または鉛合金によって形成されていることを特徴とする。
【0012】
このシール構造によれば、鉛または鉛合金は、変形しやすいが大きな弾性力を生じないため、筒部材の自重の一部を受けることで、容器の容器開口部と筒部材との間に挟まれて変形し、これらの間の密封状態を適宜得ることができる。
【0013】
また、本発明のシール構造は、前記筒部材は、前記容器とは切り離された部位に対して上下位置が調整可能に支持されていることを特徴とする。
【0014】
このシール構造によれば、容器の容器開口部と筒部材との間隔を調整できるので、容器の容器開口部と筒部材との間でシール部材を挟む強さを調整でき、密封状態を適宜得ることができる。
【0015】
また、本発明のシール構造は、前記容器は、放射性固体廃棄物を含水状態で貯蔵するもので、その周りを放射線遮蔽体によって包囲されており、前記筒部材は、前記放射線遮蔽体側に支持されて、前記放射線遮蔽体の天井部に設けられた遮蔽体開口部と前記容器開口部との間に連通して設けられていることを特徴とする。
【0016】
放射性固体廃棄物を含水状態で貯蔵する容器が、放射線遮蔽体で包囲された設備においては、放射線遮蔽体の天井部に設けられた遮蔽体開口部から容器開口部を通して容器内に処理機を移送することで、放射性固体廃棄物の攪拌や抜き出しの処理を行う。このため、このシール構造によれば、容器に貯蔵された放射性固体廃棄物を攪拌や抜き出しする処理を行う場合に、当該処理を行う処理機を、筒部材で案内しつつ容器開口部から容器内に移送することができる。しかも、容器の容器開口部と筒部材との間がシール部材で密封されているため、処理機による放射性固体廃棄物の処理において容器内の液体が飛沫となり、容器開口部からタンク外に飛散する事態を防止することができる。しかも、筒部材が容器とは切り離された部位に支持されていることから、筒部材の自重が容器側に掛かる事態を防止し、容器側に当該自重を受けられる強度を確保する必要がない。このように、本発明のシール構造は、特に、放射性固体廃棄物を含水状態で貯蔵する容器が、放射線遮蔽体で包囲された設備に適用されることで、顕著な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、処理機の移送を案内するとともに、容器外への液体の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るシール構造が適用される放射性固体廃棄物貯蔵設備の側断面概略図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るシール構造の側断面図である。
【図3】図3は、図2の平面図である。
【図4−1】図4−1は、シール部材の断面図である。
【図4−2】図4−2は、シール部材の断面図である。
【図4−3】図4−3は、シール部材の断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るシール構造の他の例の側断面図である。
【図6】図6は、図5のB−B断面図である。
【図7】図7は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【図8】図8は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【図9】図9は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【図10】図10は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【図11】図11は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【図12】図12は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るシール構造が適用される放射性固体廃棄物貯蔵設備の側断面概略図である。
【0021】
図1に示すように、放射性固体廃棄物貯蔵設備1は、放射性フィルタスラッジや放射性廃棄イオン交換樹脂などの放射性固体廃棄物(被貯蔵物)Sを、含水状態で貯蔵する容器としてのタンク2を有している。タンク2は、円筒形状に形成された胴部2aを有している。タンク2は、下方に膨出するように湾曲して形成された底板2bによって胴部2aの下端が塞がれている。また、タンク2は、胴部2aの下端に、底板2b側を床部3aから持ち上げた状態として当該床部3aに接地する円筒状の脚部2cが設けられている。また、タンク2は、円板状に形成された屋根板2dによって胴部2aの上端が覆われている。屋根板2dは、その中央にタンク2の内外に通じる円筒状の容器開口部2eが形成されている。
【0022】
また、タンク2は、その内部において、容器開口部2eから底板2bに至り上下に延在するガイドレール2fが設けられている。ガイドレール2fは、略V字形状の断面とされ、開放側が互いに向き合うように1対設けられており、容器開口部2eに上端が配置され、下端が底板2bまで延在して設けられている。このガイドレール2fは、タンク2の内部において、タンク2の内面とガイドレール2fとの間に水平に架け渡された支持棒2gによって支持されている。
【0023】
また、タンク2は、放射性固体廃棄物Sをタンク2内に導入するための廃棄物導入管2hが、上端側の側部において内外に貫通して設けられている。また、タンク2は、廃棄物導入管2hの下側において、廃棄物導入管2hによって放射性固体廃棄物Sと共に導入される水Wの最高水位を維持するためのオーバーフロー管2iが内外に貫通して設けられている。また、タンク2は、その内部において容器開口部2eの近傍に設けられ、各ガイドレール2f間の領域に洗浄水を噴射する洗浄ノズル2jが設けられている。そして、タンク2は、この洗浄ノズル2jに洗浄水を供給する洗浄水供給管2kが内外に貫通して設けられている。
【0024】
このように構成されたタンク2は、放射線の漏洩を防ぐように放射線遮蔽体3で包囲された空間P内に配置されている。放射線遮蔽体3は、鉄筋で補強された剛構造のコンクリートで形成され、タンク2を載置する床部3aと、床部3aと一体でタンク2の側方を覆う側壁部3bと、側壁部3bと一体でタンク2の上方を覆う天井部3cとで構成されている。床部3aは、タンク2の脚部2cを基礎ボルト(図示せず)を介して固定する。側壁部3bは、タンク2外に延出された上述の廃棄物導入管2hおよびオーバーフロー管2iが貫通されている。天井部3cは、タンク2の容器開口部2eの直上において、当該容器開口部2eに通じるように矩形状の遮蔽体開口部3dが形成されている。この遮蔽体開口部3dは、蓋部材4によって開閉可能に構成されている。なお、放射線遮蔽体3における天井部3cの上方は、放射線の漏洩を防ぐように放射線遮蔽体3で遮蔽された空間である作業室5として構成されている。
【0025】
図2は、本実施の形態に係るシール構造の側断面図であり、図3は、図2の平面図である。
【0026】
本実施の形態のシール構造は、上述した放射性固体廃棄物貯蔵設備1に適用されることが好ましい。シール構造は、図2および図3に示すように、上述したタンク2の容器開口部2eと、上述した放射線遮蔽体3の天井部3cの遮蔽体開口部3dに挿通された筒部材6との間を密封するものである。
【0027】
タンク2の容器開口部2eは、その円筒状の上端の開口上縁の周りに沿って外側に延在するフランジ2e’が設けられている。
【0028】
一方、筒部材6は、筒状とされた下端部が容器開口部2eの上端の開口縁形状に沿う円形状に形成され、その下端がタンク2の容器開口部2e内に挿通される。また、筒部材6は、下端部の周りに沿って外側に延在するフランジ6aが設けられている。このフランジ6aは、筒部材6の下端がタンク2の容器開口部2e内に挿通された状態で、容器開口部2eのフランジ2e’の上方に位置し、フランジ2e’に対して上下で対向するように配置される。
【0029】
そして、これら対向するフランジ2e’,6aと、筒部材6の下端部外周面とで囲まれる領域にシール部材7が配置されている。シール部材7は、無端状に形成され、対向するフランジ2e’,6aに挟まれるように設けられており、容器開口部2eと筒部材6との間を密封する。このため、容器開口部2eは、筒部材6を介して密封状態で遮蔽体開口部3dに連通される。
【0030】
また、筒部材6は、放射線遮蔽体3側に支持されている。具体的に、放射線遮蔽体3の遮蔽体開口部3dは、コンクリート製のプラグ(図示せず)によって塞がれるように構成されており、当該遮蔽体開口部3dの上方は、下方よりも開口が大きく形成された段部3eが形成されている。筒部材6は、その外周に沿って外側に延在する突片6bが設けられている。そして、この突片6bが、段部3e上に載置されることで筒部材6が放射線遮蔽体3側に支持される。このように、筒部材6は、容器開口部2eの上方にて、放射線遮蔽体3の天井部3cであって、タンク2とは切り離されている部位に対して支持されている。この結果、容器開口部2eおよびタンク2に対し、筒部材6の自重が掛かる事態を防ぐことが可能である。
【0031】
また、突片6bには、ボルト6cが上から螺合されている。このボルト6cは、突片6bに貫通した先端が段部3eに当接している。すなわち、突片6bに対するボルト6cの螺合を調整することで、突片6bの下側に突出するボルト6cの長さが変化するため、筒部材6の放射線遮蔽体3側に支持される上下位置が変わることになる。この結果、フランジ2e’,6aの間隔が変わるので、シール部材7を挟む強さを調整することが可能である。
【0032】
この筒部材6は、その内面に、タンク2の各ガイドレール2fに上下方向に連続する各中継ガイドレール6dを有している。
【0033】
シール部材7は、軟質の金属材であって、例えば、JIS H4311に準拠される鉛や鉛合金からなる。このような金属材からなるシール部材7は、変形しやすいが大きな弾性力を生じない。このため、放射線遮蔽体3側に支持された筒部材6の自重の一部を受けることで、フランジ2e’,6a間に挟まれて変形し、容器開口部2eと筒部材6との間を密封することが可能である。
【0034】
また、図4−1〜図4−3のシール部材の断面図に示すように、シール部材7は、断面が中実に形成されていても(図4−1参照)、断面内に空間部7aを有して中空に形成されていても(図4−2参照)、断面内に有する空間部7aが側部に開口する形状(例えば略C字形状)に形成されていてもよい。シール部材7は、図4−2および図4−3に示すように断面内に空間部7aを有している構成の場合、図4−1のように中実としたものと比較して変形が大きいため、放射線遮蔽体3側に支持された筒部材6の自重をほとんど受けなくても変形でき、フランジ2e’,6a間に挟まれて容器開口部2eと筒部材6との間を密封することができる。なお、図4−1〜図4−3において、シール部材7の断面の外形を円形状として示しているが、例えば、断面楕円形状や断面矩形状などでもよく、変形してフランジ2e’,6a間を密封できるものであれば、その断面形状に限定はない。
【0035】
ところで、筒部材6をタンク2とは切り離されている部位である放射線遮蔽体3側に対して支持する構成として、例えば、図5および図6に示すものもある。図5は、本実施の形態に係るシール構造の他の例の側断面図であり、図6は、図5の平面図である。
【0036】
図5に示すように、タンク2が放射線遮蔽体3で包囲された空間P内において、放射線遮蔽体3の天井部3cの底面に、支持部材3fが設けられている。支持部材3fは、筒部材6の外径よりも大きい形状の枠として構成され、天井部3cの底面に対して吊り下げられた形態で固定されている。支持部材3fの枠形状は、図6に矩形状で示しているが、筒部材6の外径よりも大きければ限定はなく、例えば円形状であってもよい。
【0037】
そして、筒部材6は、その外周から外側4方に延在する突片6eが設けられている。そして、この突片6eが、支持部材3fの上に載置されることで筒部材6が放射線遮蔽体3側に支持される。このように、筒部材6は、容器開口部2eの上方にて、放射線遮蔽体3の天井部3cであって、タンク2とは切り離されている部位に対して支持されている。この結果、容器開口部2eおよびタンク2に対し、筒部材6の自重が掛かる事態を防ぐことが可能である。
【0038】
また、突片6eには、ボルト6fが上から螺合されている。このボルト6fは、突片6eに貫通した先端が支持部材3fの上面に当接している。すなわち、突片6eに対するボルト6fの螺合を調整することで、突片6eの下側に突出するボルト6fの長さが変化するため、筒部材6の放射線遮蔽体3側に支持される上下位置が変わることになる。この結果、フランジ2e’,6aの間隔が変わるので、シール部材7を挟む強さを調整することが可能である。
【0039】
以下、上述した放射性固体廃棄物貯蔵設備1について、タンク(容器)2内の放射性固体廃棄物Sを処理する放射性固体廃棄物処理を説明する。図7〜図12は、放射性固体廃棄物処理手順の概略図である。
【0040】
放射性固体廃棄物処理は、タンク2内に放射性固体廃棄物Sを貯蔵しておき所定期間の経過の後、タンク2内の放射性固体廃棄物Sを抜き出す場合に、タンク2の底に沈下した放射性固体廃棄物Sをタンク2内の水中に浮遊させて抜き出しを容易にするために攪拌を行うものである。また、放射性固体廃棄物処理は、処理装置8によって攪拌に続いて抜き出しも行ってもよい。すなわち、放射性固体廃棄物Sの処理とは、タンク2内の放射性固体廃棄物Sの少なくとも攪拌を行うことであり、攪拌後の抜き出しを行うことを含んでもよい。
【0041】
かかる放射性固体廃棄物処理では、タンク2内の放射性固体廃棄物Sを処理するための処理装置8を用いる。処理装置8は、本実施の形態では、処理機としてのポンプ81を有する。ポンプ81は、吸引口81aから吸引した物を側部から排出する攪拌機能と、吸引口81aから吸引した物をそのまま抜き出す吸引機能とを有し、これらの機能を切り換えられるように構成されている。ポンプ81は、フレーム80に対して吸引口81aを下方に向けて配置されている。具体的に、フレーム80には、上述したガイドレール2fや中継ガイドレール6dと同様に、上下に延在し、略V字形状の断面とされ、開放側が互いに向き合うように1対設けられた処理機ガイドレール80aが設けられている。この処理機ガイドレール80aは、ガイドレール2fや中継ガイドレール6dと同じ間隔で配置されている。ポンプ81は、処理機ガイドレール80aの断面略V字形状の開放側に接触する車輪81bを側部に有している。すなわち、ポンプ81は、車輪81bが処理機ガイドレール80a(ガイドレール2f、中継ガイドレール6d)に沿って移動可能に構成されている。また、ポンプ81は、フレーム80に設けられたウインチ機構82のワイヤ82aによって吊り下げられ、処理機ガイドレール80aの位置に配置されている。すなわち、ポンプ81は、ウインチ機構82によって処理機ガイドレール80a(ガイドレール2f、中継ガイドレール6d)に沿って昇降される。また、処理装置8は、フレーム80に、ポンプ81を駆動するためのケーブル83aを、ポンプ81の昇降に伴って巻き取ったり戻したりするケーブル巻取機構83が設けられている。また、処理装置8は、フレーム80に、ポンプ81によって吸引された物を移送するホース84aを、ポンプ81の昇降に伴って巻き取ったり戻したりするホース巻取機構84が設けられている。また、処理装置8は、フレーム80に車輪80bが設けられ、作業室5内を移動可能に構成されている。なお、処理装置8は、フレーム80を図示しないホイストにより吊り上げて移動することも可能である。
【0042】
この処理装置8は、ポンプ81、ウインチ機構82、ケーブル巻取機構83およびホース巻取機構84の駆動を、タンク2が載置される空間Pおよび作業室5とは別の、放射線に曝されることのない安全な場所からの遠隔操作によって操作される。また、処理装置8は、図示しない自走装置を備え、その移動を、タンク2が載置される空間Pおよび作業室5とは別の、放射線に曝されることのない安全な場所からの遠隔操作によって操作されてもよい。
【0043】
また、蓋部材4は、放射線を遮蔽する材質(例えば、鉛や炭素鋼)からなる板体であり、作業室5側から遮蔽体開口部3dを覆うように、遮蔽体開口部3dよりも外径の大きい矩形状に形成されている。この蓋部材4は、遮蔽体開口部3dを開閉するため、作業室5側である放射線遮蔽体3の天井部3cの上面に沿って水平方向に移動可能に設けられている。本実施の形態では、蓋部材4は、その両側に車輪4aが設けられ、天井部3cの上面に固定された一対のレール(図示せず)に沿ってスライド移動することで遮蔽体開口部3dを開閉するように構成されている。
【0044】
放射性固体廃棄物処理について説明する。まず、図7に示すように、蓋部材4によって遮蔽体開口部3dを閉塞した状態で、放射線遮蔽体3の天井部3cにおける遮蔽体開口部3dの上に処理装置8を配置する。ここで、処理装置8は、自走装置やホイストによる移動を遠隔操作によって操作されてもよいが、蓋部材4によって遮蔽体開口部3dを閉塞されているため、処理装置8を作業者が人手によって移動させてもよい。
【0045】
次に、図8に示すように、蓋部材4を遠隔操作によって開放作動させ蓋部材4を移動して遮蔽体開口部3dを開放する。これにより、処理装置8のポンプ81を、遮蔽体開口部3dを通してタンク2内に移送させることが可能になる。
【0046】
次に、図9に示すように、処理装置8のポンプ81を、遠隔操作によって遮蔽体開口部3dを通して作業室5からタンク2内に移送させ、かつ遠隔操作によってタンク2内の放射性固体廃棄物Sを水中で攪拌させる。この工程において、放射性固体廃棄物Sの攪拌に続いて放射性固体廃棄物Sをタンク2から抜き出す場合、同処理装置8のポンプ81によってタンク2内の放射性固体廃棄物Sを吸引してタンク2外に抜き出す。
【0047】
次に、放射性固体廃棄物Sの攪拌や汲み上げが終了した場合、図10に示すように、処理装置8のポンプ81を、遠隔操作によって遮蔽体開口部3dを通してタンク2内から作業室5に移送させる。この際、洗浄ノズル2jから洗浄水を吐出することにより、洗浄水によってポンプ81が洗浄される。このため、作業室5に移送されたポンプ81は、曝された放射線が除去されている。
【0048】
次に、図11に示すように、蓋部材4を遠隔操作によって閉塞作動させ蓋部材4を移動して遮蔽体開口部3dを閉塞する。
【0049】
最後に、図12に示すように、蓋部材4によって遮蔽体開口部3dを閉塞した状態で、遮蔽体開口部3dの上から処理装置8を除去する。ここで、処理装置8は、自走装置やホイストによる移動を遠隔操作によって操作されてもよいが、蓋部材4によって遮蔽体開口部3dを閉塞されているため、処理装置8を作業者が人手によって移動させてもよい。
【0050】
本実施の形態のシール構造は、被貯蔵物(放射性固体廃棄物S)を含水状態で貯蔵するタンク(容器)2に設けられて当該タンク2の上部に開放する容器開口部2eと、筒状とされた下端部が容器開口部2eの開口縁形状に沿う形状に形成された筒部材6と、の間を密封するシール構造であって、容器開口部2eの上方にてタンク2とは切り離された部位に筒部材6を支持し、軟質の金属材によって環状に形成されたシール部材7を、容器開口部2eの開口上縁と筒部材6の下端部との間に介在してなる。
【0051】
このシール構造によれば、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間がシール部材7で密封された形態で、容器開口部2eと筒部材6とが連通される。このため、タンク2に貯蔵された被貯蔵物を攪拌や抜き出しする処理を行う場合に、当該処理を行う処理機(ポンプ81)を、筒部材6で案内しつつ容器開口部2eからタンク2内に移送することが可能になる。しかも、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間がシール部材7で密封されているため、処理機による被貯蔵物の処理においてタンク2内の液体が飛沫となり、容器開口部2eからタンク2外に飛散する事態を防止することが可能になる。しかも、筒部材6がタンク2とは切り離された部位に支持されていることから、筒部材6の自重がタンク2側に掛かる事態を防止し、タンク2側に当該自重を受けられる強度を確保する必要がない。
【0052】
また、本実施の形態のシール構造は、シール部材7は、断面内に空間部7aが形成されていることが好ましい。
【0053】
このシール構造によれば、筒部材6の自重をほとんど受けなくてもシール部材7が変形できるので、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間の密封状態を適宜得ることが可能になる。
【0054】
また、本実施の形態のシール構造は、シール部材7は、鉛または鉛合金によって形成されていることが好ましい。
【0055】
このシール構造によれば、鉛または鉛合金は、変形しやすいが大きな弾性力を生じないため、筒部材6の自重の一部を受けることで、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間に挟まれて変形し、これらの間の密封状態を適宜得ることが可能になる。
【0056】
また、本実施の形態のシール構造は、筒部材6は、タンク2とは切り離された部位に対して上下位置が調整可能に支持されていることが好ましい。
【0057】
このシール構造によれば、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間隔を調整できるので、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間でシール部材7を挟む強さを調整でき、密封状態を適宜得ることが可能になる。
【0058】
また、本実施の形態のシール構造は、タンク2は、放射性固体廃棄物Sを含水状態で貯蔵するもので、その周りを放射線遮蔽体3によって包囲されており、筒部材6は、放射線遮蔽体3側に支持されて、放射線遮蔽体3の天井部3cに設けられた遮蔽体開口部3dと容器開口部2eとの間に連通して設けられている。
【0059】
放射性固体廃棄物Sを含水状態で貯蔵するタンク2が、放射線遮蔽体3で包囲された放射性固体廃棄物貯蔵設備1においては、放射線遮蔽体3の天井部3cに設けられた遮蔽体開口部3dから容器開口部2eを通してタンク2内に処理機であるポンプ81を移送することで、放射性固体廃棄物Sの攪拌や抜き出しの処理を行う。このため、本実施の形態のシール構造によれば、タンク2に貯蔵された放射性固体廃棄物Sを攪拌や抜き出しする処理を行う場合に、当該処理を行う処理機(ポンプ81)を、筒部材6で案内しつつ容器開口部2eからタンク2内に移送することが可能になる。しかも、タンク2の容器開口部2eと筒部材6との間がシール部材7で密封されているため、処理機による放射性固体廃棄物Sの処理においてタンク2内の液体が飛沫となり、容器開口部2eからタンク2外に飛散する事態を防止することが可能になる。しかも、筒部材6がタンク2とは切り離された部位に支持されていることから、筒部材6の自重がタンク2側に掛かる事態を防止し、タンク2側に当該自重を受けられる強度を確保する必要がない。このように、本実施の形態のシール構造は、特に、放射性固体廃棄物Sを含水状態で貯蔵するタンク2が、放射線遮蔽体3で包囲された放射性固体廃棄物貯蔵設備1に適用されることで、顕著な効果を得ることができる。
【0060】
なお、上述した実施の形態では、放射性固体廃棄物Sを含水状態で貯蔵するものをタンク2として説明したが、タンク2に限らない。例えば、図には明示しないが、屋根板を有さず上部全体が開口する槽(平面視で円型でも角型でもよい)を容器として設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 放射性固体廃棄物貯蔵設備
2 タンク(容器)
2d 屋根板
2e 容器開口部
2e’ フランジ
2f ガイドレール
2j 洗浄ノズル
2k 洗浄水供給管
3 放射線遮蔽体
3c 天井部
3d 遮蔽体開口部
3e 段部
3f 支持部材
4 蓋部材
5 作業室
6 筒部材
6a フランジ
6b 突片
6c ボルト
6d 中継ガイドレール
6e 突片
6f ボルト
7 シール部材
7a 空間部
81 ポンプ(処理機)
P 空間
S 放射性固体廃棄物
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貯蔵物を含水状態で貯蔵する容器に設けられて当該容器の上部に開放する容器開口部と、筒状とされた下端部が前記容器開口部の開口縁形状に沿う形状に形成された筒部材と、の間を密封するシール構造であって、
前記容器開口部の上方にて前記容器とは切り離された部位に前記筒部材を支持し、軟質の金属材によって環状に形成されたシール部材を、前記容器開口部の開口上縁と前記筒部材の下端部との間に介在してなることを特徴とするシール構造。
【請求項2】
前記シール部材は、断面内に空間部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】
前記シール部材は、鉛または鉛合金によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシール構造。
【請求項4】
前記筒部材は、前記容器とは切り離された部位に対して上下位置が調整可能に支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のシール構造。
【請求項5】
前記容器は、放射性固体廃棄物を含水状態で貯蔵するもので、その周りを放射線遮蔽体によって包囲されており、前記筒部材は、前記放射線遮蔽体側に支持されて、前記放射線遮蔽体の天井部に設けられた遮蔽体開口部と前記容器開口部との間に連通して設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−145547(P2012−145547A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6225(P2011−6225)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】