説明

ジ−及び/又はポリイソシアネート及びグリコールを共同して製造する方法

本発明は、ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、及びグリコールの組合された製造方法に関し、該方法は、グリコールを製造するために工程A、B、C及びEを含み、及びジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを製造するために工程A、C、D、E、F及びGを含んでおり、そして物質の組合せが、工程Aで得られた反応混合物を分離して工程B及びCを形成することにより行われ、工程Aで、水性アルキレンオキシドが二酸化炭素と反応してアルキレンカーボネートを含む反応混合物を形成し、工程Aで得られたアルキレンカーボネート含有反応混合物の一部が、工程Bで加水分解されてグリコールが形成され、工程Aからの反応混合物の残りのアルキレンカーボネート含有流が、工程Cで脱水され、工程Dで、芳香族ニトロ化合物又はニトリルを水素化することによってアミンが合成され、工程Eで、工程Cからの脱水されたアルキレンカーボネート含有混合物が、一価アルコールを使用してエステル交換され、対応するジアルキルカービネートを得、ここでグリコールが、組み合わせ生成物として得られ、工程Fで、工程Eで得られたジアルキルカーボネート−含有反応混合物が、工程Dで得られたアミンと反応されて、対応するモノカルバメート、ジカルナメーチ、及び/又はポリカルバメートを含む混合物が形成され、これが工程Gでスプリットされて対応するジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジ−及び/又はポリイソシアネート、及びグリコールを、統合した工程で同時に製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジ−及びポリイソシアネートは、特にポリウレタン工業のために重要な原材料である。本願においてポリイソシアネートは、2を超える官能価(官能基)を有する。
【0003】
ジ−及び/又はポリイソシアネートの製造のための通常の合成手段は、ジ−及び/又はポリアミンのホスゲン化である。特に、ホスゲンの使用に関する安全性の問題のために、カルバミン酸ジ−又はポリエステル、又はジ−又はポリウレタンとして公知でもある、ジ−及び/又はポリカルバメートの熱分裂(熱開裂)を経た、替わりの製造手段がますます重要になってきている。
【0004】
ジ−及び/又はポリカルバメートは、主に、対応するジアルキルカルボナートを、ジ−及び/又はポリアミン、又はアミンの混合物と反応させることによって製造される。ジ−及び/又はポリアミンは、塩基としてのアルコキシドの存在下に、ジアルキルカーボネートと反応させることができる(例えば、特許文献1(WO2009/115538)参照)。
【0005】
この反応では、ジアルキルカーボネートは、アルキレンカーボネートを、モノヒドロキシルアルコールとエステル交換することによって得ることができる。このエステル交換では、対応するアルキレングリコール(以降、簡略してグリコールと称する)が、共生成物(副生成物::coproduct)として得られる。
【0006】
更に、アルキレンカーボネートは、加水分解によって、対応するアルキレングリコールに変換することができる。両方の価値ある生成物、アルキレングリコール、及びジ−及び/又はポリイソシアネートは、同じ反応物質、対応するアルキレンカーボネート(これは、対応するアルキレンオキシドから製造される)から進めて製造される。
【0007】
特に、世界規模のアルキレンオキシドプラント、通常スチームクラッカーを有するサイトでは、従って、上述した2種の共生成物を合成するための、統合されたプラント(設備)を備えることが有利である。
【0008】
特許文献2(WO2008/129030)には、1,2−アルキレンジオール、及びジアルキルカーボネートを同時に製造する方法が記載されている。この方法では、1,2−アルキレンオキシドが、ループ反応器内で、触媒の存在下に二酸化炭素と反応して、ガス/液体反応混合物が生成され、該ガス/液体反応混合物は、第2の工程で、アルカノールと反応して1,2−アルキレンジオール、及びジアルキルカーボネートを含む反応混合物が得られる。該反応混合物から、1,2−アルキレンジオール及びジアルキルカーボネートが工程3で除去される。この方法では、使用されるガス状の二酸化炭素は、最大の効率で使用されるべきである。
【0009】
アルキレングリコールとジアルキルカーボネートを同時に製造するための更なる方法が、特許文献3(US6380419)から公知である。この文献によれば、第1の工程で、エチレンオキシドが二酸化炭素と反応して、エチレンカーボネートを含む混合物が得られる。該混合物は、第2の工程で、主にエチレンカーボネートを含む流れ1と、流れ2としてのエチレンカーボネート、エチレングリコール及び水の混合物に分けられる。流れ1は、第3の工程で、ヒドロキシル基を含む化合物とエステル交換され、対応するジアルキルカーボネートが得られる。該ジアルキルカーボネートは、第4の工程で蒸留によって精製される。共生成物(副生成物:coproduct)として得られたエチレングリコールは、流れ2と組み合わされ、そして第5の工程で完全に加水分解される。得られたエチレングリコールは、第6の工程で、蒸留によって最終的に精製される。この方法では、エチレンカーボネートを含み、及びアルキレンオキシドと二酸化炭素の反応によって得られた混合物は、従って、対応するジアルキルカーボネートを生成するエステル交換の前に、蒸留によって最初に精製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2009/115538
【特許文献2】WO2008/129030
【特許文献3】US6380419
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、技術的に単純で、費用がかからず、及びアルキレンオキシドから進めて、グリコール及びジ−及び/又はポリイソシアネート共生成物(coproduct)を得ることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、ジ−及び/又はポリイソシアネート及びグリコールを共同して製造する方法であって、グリコールを製造するために工程A、B、C及びEを含み、及びジ−及び/又はポリイソシアネートを製造するために工程A、C、D、E、F及びGを含み、及び
工程Aで得られた反応混合物を、工程B及びCに分離し、これを経て材料の結合を行うことを含み、該材料の結合は、
−工程Aで、水性アルキレンオキシドを二酸化炭素と反応させて、アルキレンカーボネートを含む反応混合物を得、
−工程Bで、工程Aで得られたアルキレンカーボネート含む反応混合物の一部をグリコールに加水分解し、
−工程Cで、工程Aからの反応混合物の、残っているアルキレンカーボネートを含む流れを脱水し、
−工程Dで、芳香族ニトロ化合物又はニトリルを水素化することによって、アミンを合成し、
−工程Eで、工程Cからの、脱水したアルキレンカーボネートを含む混合物を、一価アルコールを使用してエステル交換し、対応するジアルキルカーボネートを得、及び共生成物としてグリコールを得、
−工程Fで、工程Eで得られた、ジアルキルカーボネートを含む反応混合物を、工程Dで得られたアミンと反応させて、対応するモノ−、ジ−及び/又はポリカルバメートを含む混合物を得、該混合物を、
−工程Gで開裂して、対応するジ−及び/又はポリイソシアネートを得る、
ことにより行われる、ジ−及び/又はポリイソシアネート及びグリコールを共同して製造する方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従う方法を行うための好ましいプラントの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
より特定的には、複雑な事前処理を行うことなく、これらから水を除去するだけで、アルキレンカーボネートを、対応するジアルキルカーボネートへのエステル交換に供給することが可能であることがわかった。単に反応の水を除去するだけで十分であることがわかった;エステル交換工程に供給する前に、典型的にはアルキレンカーボネート合成中に形成される副生成物(by-product)、特にアルキレンオキシドの加水分解によって形成されるポリグリコールの副生成物を減少させること、及び存在する均一系触媒を除去することは、必要とされない。アルキレンカーボネート合成から、副生成物及び触媒を、(ジアルキルカーボネート合成の)エステル交換からの残留物と一緒に処理(work up)することによって、残留物の処理を相当に単純化することができる。
【0015】
特に、アルキレンカーボネート合成中に形成されるアルキレングリコールも、(ジアルキルカーボネート合成の)エステル交換の工程で、エステル交換の同じ共生成物と一緒に除去することができる。
【0016】
工程間の熱的な統合が可能であり、そして経済的に行うことができる。本発明では、以下の大きなエネルギー供給源が存在する:重要なエネルギー供給源は、アルキレンカーボネート合成、及び芳香族ニトロ化合物又はニトリルの水素化によるアミンの製造である。重要なエネルギーシンク(エネルギー減少)は、アルカリ金属アルコキシド合成、アルキレンカーボネートのエステル交換、及び(イソシアネートよりもグリコールが相当に多く製造される場合には)アルキレングリコールのグリコールへの加水分解である。アルキレンカーボネート合成の反応及びニトロ芳香族化合物又はニトリルの水素化によるアミン形成の熱は、好ましくは、アルカリ金属アルコキシド合成のためのウレタン化に及び/又はジアルキルカーボネート合成でのエステル交換のために使用される。所望の生成物を得るために、蒸留によって平衡がシフトするので、両方の反応は、非常にエネルギー大量消費型である。例えば、発熱反応から、これらの2工程で、4バールの蒸気を発生させ、この蒸気を、ウレタン化(アルカリ金属アルコキシド合成)及び/又はエステル交換で、カラム蒸発器を加熱するために使用することも可能である。通常、≧4バールの蒸気の発生が可能な温度レベルで、アルキレンカーボネート合成(WO2008/129030)及びアミンを得るための水素化(例えばWO2008/138784及びDE10349095)行うことも可能である。
【0017】
ニトロ芳香族化合物の水素化での精留によって得られる反応の水は、同時製造におけるアルキレンカーボネートのグリコールへの加水分解のために、及び/又は金属カルバメートのプロトン化反応に、部分的に使用することができる。
【0018】
ジアルキルカーボネート合成のための出発材料としてのエチレンカーボネートを経て、ジ−及び/又はポリイソシアネートをホスゲン不使用(ホスゲンフリー)の状態で製造するために、粗製の水性エチレンオキシド(30〜60質量%の水)を使用することができる。これにより、二酸化炭素と反応する前に、複雑でエネルギー大量消費型で、及び広範囲に及ぶ安全処理が付随するエチレンオキシドの脱水を使用しないことが可能になる。得られたエチレンカーボネートは、合成の後でのみ脱水される。
【0019】
工程Aで使用するための二酸化炭素の供給源は、特に、エチレンオキシド合成(エチレンオキシド合成で、エチレンと酸素の燃焼を通して二酸化炭素が形成される)からのオフガスであっても良く、又は他に合成ガスプラントからのオフガスであっても良い。
【0020】
有利な実施の形態では、工程段階A、B及びCは、工程D〜Gの場所から地理的に離れた場所で行うことができる。このような工程形態は、工程A、B及びCを行うためのプラントの容量が、更なる工程D〜Gを行うためのプラントの容量と比較して非常に大きい場合に、特に魅力的である。
【0021】
脱水の後、アルキレンカーボネート合成の粗製混合物が、カーボネート合成に直接的に供給される。沸点がより高い副生成物(by-product)は除去されない。
【0022】
好ましくは、工程Aで使用されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドである。
【0023】
工程Aで、30〜60質量%の水を含む水性アルキレンオキシドを使用することが好ましい。
【0024】
工程Dで得られるアミン(該アミンは、工程Fで、工程Eから得られたジアルキルカーボネート−含有反応混合物と反応して、対応するモノ−、ジ−及び/又はポリカーボネートを含む混合物が得られる)は、好ましくは、以下のリスト:TDA(トリレンジアミン)、MDA(ジアミノジフェニルメタン)、pMDA(ポリフェニレンポリメチレンポリアミン)、アニリン、HDA(ヘキサメチレンジアミン)、IPDA(イソホロンジアミン)、TMXDA(テトラメチレンキシリレンジアミン)、NDA(ナフチレンジアミン)、H6TDA(ヘキサヒドロトリレンジアミン)、H12MDA(ジアミノジシクロヘキシルメタン)、及びジアミノベンゼンから選ばれる、個々の物質、又は物質又はその異性体の混合物である。
【0025】
工程Eで使用される一価アルコール(モノヒドロキシアルコール)は、好ましくは2〜10個の炭素原子、及び任意に酸素、及び/又は窒素原子を含む脂肪族アルコールである。
【0026】
好ましくは、2〜10個の炭素原子を含む脂肪族一価アルコールは、枝分れしている、特に水酸基を有する炭素原子に直接的に隣接した炭素原子で枝分れしている。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態では、カルバメートが、工程F(ウレタン合成)で得られた反応混合物から除去され、及びホルムアルデヒド、又はホルムアルデヒド誘導体を使用してコンデンス(凝縮:condense)され、カルバメートのポリマーを含む混合物を得、該混合物からポリカルバメートが除去され、そして工程G(開裂)に送られる。
【0028】
有利なことには、工程Fは、触媒の存在下に行なわれる。
【0029】
更に好ましくは、工程Fは、不活性溶媒の存在下に行なわれる。
【0030】
工程の熱的な結合(カップリング)は、特に、工程A及びDからの反応熱を、工程B、C、E及びFの一つ以上に使用することによって行うことができる。
【0031】
以下にエネルギー結合の好ましい変形例を説明する。
【0032】
重要なエネルギー供給源は
1.アルキレンカーボネト合成(強い発熱)(工程A)、
2.ニトロ芳香族化合物の水素化によるアミンの製造(非常に強い発熱)(工程D)、
3.カルバメート開裂ガスGの露点までの廃熱(余熱)(工程G)、及び
4.純粋なアルキレンカーボネートの製造のための精留のストリッピング部分で、ガス状状態でアルキレンカーボネートが部分的に取り出される場合、アルキレンカーボネート脱水のコンデンス(凝縮)の熱(工程C)、
である。
【0033】
低い温度での、重要なエネルギーシンク(エネルギー減少)は、
1.アルカリ金属アルコキシド合成(平衡のシフト、非常に高い蒸気が必要)(工程F、ウレタン化の一部)、
2.アルキレンカーボネートのジアルキルカーボネートへのエステル交換(平衡のシフト、非常に高い蒸気が必要)(工程E)、
3.アルキレンカーボネートのグリコールへの加水分解(吸熱性)(工程B)、
4.イソシアネートよりもグリコールが相当に多く製造される場合、加水分解の後の水とグリコールの分離(工程B)、及び
5.アルキレンカーボネートの脱水での底部(溜まり部分)の加熱(工程C)、
である。
【0034】
上述したエネルギーシンクは、典型的には、上述したエネルギー供給源よりも、少なくとも10℃低い温度で作用する。従って、エネルギーを移すことができる。材料の結合と同様に、従って、工程間での有利なエネルギー結合も存在する。
【0035】
有利なことには、アルキレンカーボネート合成(工程A)の反応熱の少なくとも一部を、ウレタン化でのアルカリ金属アルコキシド合成(工程F)のために使用することができる。
【0036】
有利なことには、アルキレンカーボネート合成(工程A)の反応熱の少なくとも一部を、アルキレンカーボネートのエステル交換(工程E)のために使用することができる。
有利なことには、水素化によるアミン形成(工程D)の反応熱の少なくとも一部を、ウレタン化でのアルカリ金属アルコキシド合成のために使用することができる。
【0037】
有利なことには、水素化によるアミン形成(工程D)の反応熱の少なくとも一部を、アルキレンカーボネートのエステル交換(工程E)のために使用することができる。
【0038】
有利なことには、アルキレンカーボネート脱水(工程C)のコンデンスの熱の少なくとも一部を、ウレタン化におけるアルカリ金属アルコキシド合成(工程F)に使用することができる。
【0039】
より特定的には、アルキレンカーボネート合成(工程A)の反応熱の少なくとも一部を、カルバメート開裂(工程G)に使用することができる。
【0040】
有利なことには、水素化によるアミン形成(工程D)の反応熱の少なくとも一部を、アルキレンカーボネートの加水分解(工程B)、及び/又はアルキレンカーボネートの脱水(工程C)の加熱のために使用することができる。
【0041】
本発明を、図1、及びエチレンオキシド(EO)及びジニトロトルエン(DNT)から、エタンジオール((CH2OH)2)及びトルエンジイソシアネート(TDI)を共同製造する場合についての実施例を使用して詳細に説明する。
【実施例】
【0042】
工程A〜C、E
53200kg/hの水性エチレンオキシド(44.8質量%の水)を、110℃で、34186kg/hの二酸化炭素と、強塩基アニオン交換体の存在下に反応させてエチレンカーボネート及びエチレンジオールを得た(工程A)。50%の粗製生成物が工程Cに移され、そして50%の粗製生成物が、工程Bに移された。工程Aでの副反応として、エタンジオールと高級グリコールが形成された。
【0043】
工程Bで、加水分解と脱水の後、20298kg/hのエタンジオールが形成された。
【0044】
工程Aから除去された加水分解されていない反応生成物(42099kg/h、66.7質量%のエチレンカーボネート)を、合成のポリマー性副生成物を除去することなく脱水した。次に、脱水したエチレンカーボネートを、160℃で、1モル%のナトリウムイソブトキシドの存在下に、管型反応器内で、25942kg/イソブタノールと反応させて、54014kg/hのジイソブチルカーボネート、及び19250kg/hのエタンジオールを得た(工程E)。未変換の成分(例えば、エチレンカーボネート、及びイソブタノール)を、真空蒸留を通して平衡反応器内に再循環させた。生成物(ジイソブチルカーボネート及びエタンジオール)を同様に、減圧下で蒸留によって相互に分離した。
【0045】
工程Aと工程Eの組み合わされた(共通の)残留物を、工程Eに導き出した。
【0046】
工程Aで、エチレンオキシドを部分的に加水分解することによって、少量形成されたエタンジオールを同様に、エチレンカーボネートのジイソブチルカーボネートへのエステル交換での共生成物として追加的に形成されたエチレンジオールと一緒にここに排出し(工程E)そして、工程Bからのエタンジオールと組合せた。
【0047】
工程D
29870kg/hの工業銘柄のジニトロトルエン(DNT)を、180℃で、2180kg/hの水素を使用して、18936kg/hの工業銘柄のトリレンジアミン(TDA)に変換した。隔壁カラム中で事前に脱水した後、385kg/hの高沸点副生成物をTDAから除去した。
【0048】
工程F
工程Fは、ウレタン化(urethanization)及びアルカリ金属アルコキシド製造から成る。この目的のために、24878kg/hの50質量%水酸化ナトリウム溶液を、120639kg/hのイソブタノールと90℃で、反応カラム内で水を排出しつつ反応させ、イブタノール内に溶解した、合計で29860kg/hのナトリウムイソブトキシド(20w%溶液)を得た。工程Eで得られたジイソブチルカーボネート(54014kg/h)を、イソブタノール中のこれら29860kg/h(計算100%)のナトリウムイソブトキシド(20質量%)、及び工程Dからの18936kg/hのTDA溶解物(融解物)と120℃で反応させ(工程F、段階1)、そして次の加水分解で、50℃で水と反応させ、49975kg/hのトリレンビス(O−イソブチルカルバメート)を得た(工程F、段階2)。工程Fの段階2からの反応混合物を、ナトリウムヒドロキシド溶液を抽出除去した後、次に有機相の蒸留によって、ジカルバメート、ジイソブチルカルバメート、及びイソブタノールに分離した。水酸化ナトリウム溶液、及びイソブタノールを、対応して、イソブトキシド合成及びエステル交換に再循環させた。
【0049】
工程G
カルバメートを、融解物(メルト)として130℃で、流動床内に計量導入し、そして400℃で(流動化ガスとして窒素を使用して)開裂してトリレンジイソシアネート(TDI)とアルコールを得た(工程G)。ガス状の生成物混合物を、液体急冷でTDIの露点未満に冷却し、そして次に減圧下に蒸留を使用してTDI、イソブタノール、及び急冷媒体に分離した。イソブタノールを再循環させた。
【0050】
従って、合計で25143kg/hのTDI、及び39548kg/hのエタンジオールが、価値有る生成物として形成された。
【0051】
以下に、工程のエネルギー結合を説明する。比較的高い温度での重要なエネルギー源は、
1.エチレンカーボネート合成(強い発熱性、110℃)(工程A)
2.DNTの水素化によるTDAの製造(非常に強い発熱性、180℃)(工程D)
3.露点以下の、急冷中のカルバメート開裂(分裂)ガスの廃熱(工程G)、及び
4.100mbar絶対圧以下(30mbarまで)の運転圧力での、副生成物としてのガス状エチレンカーボネトの除去を伴う、エチレンカーボネート脱水(工程C)のコンデンス(凝縮、又は液化)の熱、
である。
【0052】
比較的低い温度での重要なエネルギーシンク(エネルギー減少)は、以下のものである。
a.ナトリウムイソブトキシド合成(非常に高い蒸気が必要とされる、90℃)(工程F)。
b.エチレンカーボネートのジイソブチルカーボネートへのエステル交換(非常に高い蒸気が必要とされる)(工程E)。エチレンカーボネートは反応温度160℃(可能なもの:100〜160℃)に予備加熱される。ジイソブチルカーボネート及びエタンジオールの精製蒸留のための、(それぞれ300mbar絶対圧未満での)2個の精留カラムの運転。
c.エチレンカーボネートのエタンジオールへの加水分解(吸熱性、160℃未満、US6080897、実施例3、カラム10参照)(工程B)。
d.加水分解後の水とエタンジオールの分離(US6080897、実施例3、カラム10参照)(工程B)。及び
e.エチレンカーボネートの脱水における、カラム底部の加熱。この理由は、これは、100mbar絶対圧以下(30mbarまで)の圧力で行われるからである(工程C)。
【0053】
上述したエネルギーシンクは、上述したエネルギー供給源よりも少なくとも10℃低い温度で作用する。従ってエネルギーを移すことができる。従って、材料と同様に、個々の工程の間で、有利なエネルギー結合も存在する。
【0054】
従って有利なことには、以下の統合された加熱システムを行うことができる:
供給源2(DNT水素化からの蒸気)が、シンクa、b、c、d及び/又はeを加熱するために、全て、又は部分的に使用される。
【0055】
供給源1(エチレンカルボネート合成からの廃熱)が、シンクaを加熱するために、全て、又は部分的に使用される。
【0056】
供給源3(カルバメート開裂ガスの急冷/冷却からの廃熱)が、シンクbを加熱するために、全て、又は部分的に使用される。
【0057】
供給源4(ガス状側部取り出し除去を行う場合の脱水からの廃熱)が、シンクaを加熱するために、全て、又は部分的に使用される。
【0058】
図1は、本発明に従う方法を行うための好ましいプラントの略図を示している。
【0059】
工程Aで、水性アルキレンオキシド、例えば水性エチレンオキシド(EO)が、二酸化炭素と反応して、アルキレンカーボネートを含む反応混合物が得られる。
【0060】
アルキレンカーボネートを含み、及び工程Aで得られる反応混合物が、所定の流れと他の流れに分けられ、上記所定の流れが、工程Bでグリコール、例えばエタンジオール((CH2OH)2)に加水分解され、上記他の流れが、工程Cで脱水される。
【0061】
工程Dで、芳香族ニトロ化合物、例えばジニトロトルエン(DNT)の水素化によって、アミン、例えばトリレンジアミン(TDA)が合成される。
【0062】
工程Eで、工程Cからのアルキレンカーボネートを含む脱水混合物が一価アルコール、例えばイソブタノールとエステル交換され、対応するジアルキルカーボネートが得られ、そしてグリコール、例えばエタンジオール((CH2OH)2)が共同製造される。
【0063】
工程Fで、ジアルキルカーボネートを含み、そして工程Eで得られた反応混合物が、工程Dで得られたアミンと反応されて、対応するカルバメートを含む混合物が得られ、これを工程Gで開裂して対応するイソシアネート、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジ−及び/又はポリイソシアネート及びグリコールを共同して製造する方法であって、グリコールを製造するために工程A、B、C及びEを含み、及びジ−及び/又はポリイソシアネートを製造するために工程A、C、D、E、F及びGを含み、及び
工程Aで得られた反応混合物を工程B及びCに分離し、これを経て材料の結合を行うことを含み、該材料の結合は、
−工程Aで、水性アルキレンオキシドを二酸化炭素と反応させて、アルキレンカーボネートを含む反応混合物を得、
−工程Bで、工程Aで得られたアルキレンカーボネートを含む反応混合物の一部をグリコールに加水分解し、
−工程Cで、工程Aからの反応混合物の、残っているアルキレンカーボネートを含む流れを脱水し、
−工程Dで、芳香族ニトロ化合物又はニトリルを水素化することによって、アミンを合成し、
−工程Eで、工程Cからの、脱水したアルキレンカーボネートを含む混合物を、一価アルコールを使用してエステル交換し、対応するジアルキルカーボネートを得、及び共生成物としてグリコールを得、
−工程Fで、工程Eで得られた、ジアルキルカーボネートを含む反応混合物を、工程Dで得られたアミンと反応させて、対応するモノ−、ジ−及び/又はポリカルバメートを含む混合物を得、該混合物を、
−工程Gで開裂して、対応するジ−及び/又はポリイソシアネートを得る、
ことにより行われる、ジ−及び/又はポリイソシアネート及びグリコールを共同して製造する方法。
【請求項2】
工程Aで使用されるアルキレンオキシドが、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程Aで使用される水性アルキレンオキシドが、30〜60質量%の水を含むことを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
工程Dで得られたアミンが、以下のリスト:TDA(トリレンジアミン)、MDA(ジアミノジフェニルメタン)、pMDA(ポリフェニレンポリメチレンポリアミン)、アニリン、HDA(ヘキサメチレンジアミン)、IPDA(イソホロンジアミン)、TMXDA(テトラメチレンキシリレンジアミン)、NDA(ナフチレンジアミン)、H6TDA(ヘキサヒドロトリレンジアミン)、H12MDA(ジアミノジシクロヘキシルメタン)、及びジアミノベンゼン、から選ばれる個々の物質、又は物質又はその異性体の混合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程Eで使用される一価アルコールが、2〜10個の炭素原子、及び任意に酸素、及び/又は窒素原子を含む脂肪族アルコールであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
2〜10個の炭素原子を含む脂肪族一価アルコールは、枝分れしている、特に水酸基を有する炭素原子に直接的に隣接した炭素原子で枝分れしていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カルバメートが、工程F(ウレタン合成)で得られた反応混合物から除去され、及びホルムアルデヒド、又はホルムアルデヒド誘導体を使用してコンデンスされ、カルバメートのポリマーを含む混合物を得、該混合物からポリカルバメートが除去され、そして工程G(開裂)に送られることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程Fが、触媒の存在下に行なわれることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程Fが、不活性溶媒の存在下に行なわれることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程A及びDからの反応熱が、工程B、C、E及びFの1工程以上で使用されることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−508441(P2013−508441A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535802(P2012−535802)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066220
【国際公開番号】WO2011/051314
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】