説明

ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体およびその製造方法

【課題】 ジアリルジアルキルアンモニウムのクロリド以外の塩と二酸化イオウとの新規な共重合体を提供する。
【解決手段】
ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位と二酸化イオウ単位とを含むことを特徴とするジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体およびその製造方法に関する。
さらに詳しくは本発明は、ファインケミカル分野に使用可能で、かつ水に可溶で、有機溶媒への溶解性の高い、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとの共重合体は、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとを共重合させることにより簡単に製造できる点から工業的に製造され、水溶性塗料や染色物の染色堅牢度向上剤等のファインケミカル分野で使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭45−343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地球環境の保全の高まりとともにファインケミカル分野で使用される各種薬剤も、塩素を含まないものが求められてきており、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとの共重合体の代りに、ジアリルジアルキルアンモニウムのクロリド以外の塩と二酸化イオウとの共重合体が求められるようになってきている。
【0005】
ところが、特許文献1に記載のように、ジアリルジアルキルアンモニウムのクロリド以外の塩と二酸化イオウとの共重合体を、対応するジアリルジアルキルアンモニウムの塩と二酸化イオウとの反応により実用的に製造することは困難である。
【0006】
例えば、ジアリルジアルキルアンモニウムのヨウ化物塩と二酸化イオウとを共重合して得られる共重合体は、重合中にヨウ素が一部遊離するために着色することがある。また、ジアリルジアルキルアンモニウムの有機酸塩と二酸化イオウとを共重合しても、得られる有機酸塩の共重合体の収率は低い。さらに、ジアリルジアルキルアンモニウムの硫酸塩または亜硫酸塩と二酸化イオウとを共重合しようとしても、得られる共重合体の硫酸塩または亜硫酸塩を、製造単離することが困難である。
【0007】
本発明は、このような事情のもとで、ジアリルジアルキルアンモニウムのクロリド以外の塩と二酸化イオウとの新規な共重合体を提供することを第一の目的とし、また該新規共重合体を簡単な操作により高収率で製造する方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決するため、ジアリルジアルキルアンモニウムのクロリド以外の塩と二酸化イオウとの共重合体の製造を種々検討したところ、意外にも原料として、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドの代わりに有機酸塩の一種であるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトを用いて、これを二酸化イオウと共重合させると、ジアリジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの新規な共重合体が収率良く得られることを見出した。また、本発明者らはこの新規共重合体は、水溶性であり、かつ、対応するジアリルジアルキルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとの共重合体に比べると、有機溶媒への溶解性に優れ、ファインケミカル分野の用途に極めて有効なことを見出した。
【0009】
さらに、本発明者らは、二酸化イオウとの共重合に用いられるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトのうち、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトが文献未載の新規化合物であることを見出した。
本発明は上記の知見に基いてなされたものであり、
(1) 一般式(I)
【0010】
【化5】

【0011】
(式中、R、Rは、独立にメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基であるが、R、Rが共にヒドロキシエチル基ではなく、Rは、メチル基またはエチル基である)
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位と、
式(II)
【0012】
【化6】

【0013】
で表される二酸化イオウ単位とを含むことを特徴とするジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、
(2) 一般式(I)において、Rがエチル基、Rがメチル基、Rがエチ
ル基である、上記(1)に記載のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、
(3) ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位/
二酸化イオウ単位のモル比が1/1である交互共重合体である、上記(1)または(2)に記載のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、
(4) 一般式(III)
【0014】
【化7】

【0015】
(式中、R、Rは、独立にメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基であるが、R、Rが共にヒドロキシエチル基ではなく、Rは、メチル基またはエチル基である)
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとを、極性溶媒中で共重合させることを特徴とする請求項1に記載のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造方法、および
(5) 式(IV)
【0016】
【化8】

【0017】
で表されることを特徴とするジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト
を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、水溶性であり、かつ有機溶媒への溶解性に優れ、ファインケミカル分野の用途に極めて有用な、新規ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体を、簡単な操作により収率良く工業的に有利に得ることができる。
また本発明によれば、新規なジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体(以下、単に本発明の共重合体と記載することもある)について説明する。
本発明の共重合体は、
一般式(I)
【0020】
【化9】

【0021】
(式中、R、Rは、独立にメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基であるが、R、Rが共にヒドロキシエチル基ではなく、Rは、メチル基またはエチル基である)
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位と式(II)
【0022】
【化10】

で表される二酸化イオウ単位とを含む。
【0023】
本発明の共重合体において、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位としては、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイト単位、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト単位、ジアリルジエチルアンモニウムメチルサルフェイト単位、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェイト単位、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェイト単位、ジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェイト単位、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト単位、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト単位、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムエチルサルフェイト単位、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムエチルサルフェイト単位を好ましく例示できるが、一般式(I)においてRがエチル基、Rがメチル基、Rがエチル基であるジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト単位が特に好ましい。なお、本発明において、ヒドロキシエチルは、好ましくは2−ヒドロキシエチルである。
【0024】
本発明の共重合体は、製造上の観点から、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体が好ましいが、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体が特に好ましい。
【0025】
本発明の共重合体の製造においては、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト/二酸化イオウのモノマーモル比は、得られる共重合体の安定性の観点から、通常、0.5/0.5以上であり、好ましくは0.5/0.5〜0.95/0.05であり、より好ましくは0.5/0.5〜0.8/0.2であり、さらに好ましくは0.5/0.5〜0.6/0.4、特に好ましくは0.5/0.5である。
本モノマーのモル比が0.5/0.5の場合、得られた共重合体は、下記(V)のような環化交互共重合体で表されると考えられる。
【0026】
【化11】

【0027】
本発明の共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量で、通常300〜50,000、好ましくは500〜25,000、より好ましくは800〜10,000の範囲である。
【0028】
次に、本発明の共重合体の製造方法について説明する。
本発明のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造方法は、
一般式(III)
【0029】
【化12】

【0030】
(式中、R、Rは、独立にメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基であるが、R、Rが共にヒドロキシエチル基ではなく、Rは、メチル基またはエチル基である)
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとを極性溶媒中で共重合させることを特徴とする。
【0031】
モノマーとして用いるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトは、例えばジアリルアルキルアミンとジアルキル硫酸との反応によるアルキル化反応等により製造することができる。
【0032】
ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェイトは、それぞれジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリル(ヒドロキシエチル)アミンにジメチル硫酸を加えて反応させるメチル化反応により製造することができる。
【0033】
また、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムエチルサルフェイトは、それぞれ、ジアリルエチルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリル(ヒドロキシエチル)アミンに、ジエチル硫酸を加えて反応させるエチル化反応により製造することができる。
上述のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトのうち、
式(IV)
【0034】
【化13】

【0035】
で表されるジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトは文献未載の新規化合物である。
【0036】
本発明の共重合体の製造方法に用いる極性溶媒としては、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトおよび二酸化イオウを溶解する溶媒であるが、例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を例示することができる。
【0037】
本発明の共重合体の製造方法において、ラジカル共重合反応のために用いられる重合触媒としては、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとを重合し得るものであれば特に制限はないが、第三−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドのような有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのような脂肪族アゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのような無機過酸化物、硝酸アンモニウム、硝酸カリウムのような硝酸塩等が挙げられる。また、空気等の酸素を含む気体、放射線、紫外線、可視光線も挙げられる。
【0038】
本発明の共重合体の製造方法においては、通常、上記ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウを含む極性溶媒溶液に、上記重合触媒を加え、室温下または加熱条件下、適宜撹拌操作を加えることにより共重合が行われる。重合温度は−100℃〜80℃が好ましい。また、重合時間は1〜100時間が好ましい。
【0039】
反応終了した後、アルコールやアセトン等の共重合体を溶解させない溶媒を加えることにより、本発明の共重合体を再沈させ、ろ取することもできる。
【実施例】
【0040】
先ず、実施例で得られた共重合体の重量平均分子量および重合収率の測定方法を以下に示す。
(i) 共重合体の重量平均分子量
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI−101示差屈折率検出器、カラムはショーデックスアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とを直列に接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調製し、20μlを用いた。溶離液には、0.4モル/リットルの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準物質として、分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0041】
(ii) 共重合体の重合収率
GPC法により得られたピーク面積比により求めた。
実施例1 ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトモノマーの製造
攪拌機、温度計、ジムロート式還流冷却管を備えた1リットルの4つ口丸底セパラブルフラスコ中にジアリルメチルアミン167.1g(1.5モル)を仕込み、攪拌しながら硫酸ジエチル232.5g(1.5モル)を20〜50℃に保ちながらゆっくり滴下した。そして50℃で24時間反応させて、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトをオイルとして得た。収量は、399.8g(収率100%)であった。
得られたジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトのIRスペクトルを図1に示す。図1より、1220cm−1に硫酸エステルに由来する吸収があり、この構造を支持している。リンタングステン酸を用いる重量法による四級塩の基本分子量の測定値は264.27(計算値265.38)であった。
【0042】
実施例2 ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造I
(ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトモノマーの製造)
攪拌機、温度計、ジムロート式還流冷却管を備えた1リットルの4つ口丸底セパラブルフラスコ中にジアリルメチルアミン167.1g(1.5モル)を仕込み、攪拌しながら硫酸ジメチル191.1g(1.5モル)を20〜50℃に保ちながらゆっくり滴下した。そして50℃で24時間反応させた。次に65重量%に調整するための水189.5gを加え、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトモノマー水溶液を調製した。
【0043】
(ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造)
得られたジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトモノマー水溶液(モノマー含有量1.5モル)に、モノマー濃度を調整するための水を加えた後、氷水で冷却・攪拌しながら、二酸化イオウをモノマーに対し当モル量加えた。次に得られたモノマー−二酸化イオウ混合物を所定の重合温度に維持しながら、28.5重量%過硫酸アンモニウム(以下APSと記載する)水溶液47.6g(モノマーに対して3.0重量%)を分割して加えて共重合させ、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体を水溶液として得た。
【0044】
得られた溶液の一部をアセトンで再沈殿させ、得られた白色固体をろ別し、50℃で48時間真空乾燥した。得られた白色粉末状の共重合体のIRスペクトルを図2に示す。図2より1320cm−1と1130cm−1に−SO−に起因する吸収および1220cm−1に硫酸エステルに起因する吸収が見られることから、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体であることを支持している。
【0045】
またこの固体の元素分析値は、S=19.9〜20.8%であった。この値はジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとのモル比1:1の共重合体の値に近い。
【0046】
得られた共重合体の製造条件、および重合収率と重量平均分子量の結果を表1に示す。またGPC測定の結果を、図3に示す。
実施例3 ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造II
モノマー濃度を変えた以外は、実施例2と同様に操作し、標記の共重合体を得た。得られた共重合体の製造条件、および重合収率と重量平均分子量の結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例4 ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造I
(ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトモノマーの製造)
実施例1と同様にして、攪拌機、温度計、ジムロート式還流冷却管を備えた1リットルの4つ口丸底セパラブルフラスコ中にジアリルメチルアミン167.1g(1.5モル)を仕込み、攪拌しながら硫酸ジエチル232.5g(1.5モル)を20〜50℃に保ちながらゆっくり滴下した。そして50℃で24時間反応させた。次に65重量%に調整するための水212.9gを加え、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトモノマー水溶液を調製し、この水溶液をジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトを単離することなく、二酸化イオウとの共重合反応に用いた。
【0049】
(ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造)
得られたジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトモノマー水溶液(モノマー含有量1.5モル)に、モノマー濃度を調整するための水を加えた後、氷水で冷却・攪拌しながら、二酸化イオウをモノマーに対し当モル量加えた。次に得られたモノマー−二酸化イオウ混合物を所定の重合温度に維持しながら、28.5重量%過硫酸アンモニウム水溶液52.0g(モノマーに対して3.0重量%)を分割して加えて共重合させ、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体を水溶液として得た。
【0050】
得られた溶液の一部をアセトンで再沈殿させ、得られた白色固体をろ別し、50℃で48時間真空乾燥した。得られた白色粉末状の共重合体のIRスペクトルを図4に示す。図4より1320cm−1と1130cm−1に−SO−に起因する吸収および1220cm−1に硫酸エステルに起因する吸収が見られることから、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体であることを支持している。
【0051】
またこの固体の元素分析値は、S=18.8〜19.3%であった。この値はジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとのモル比1:1の共重合体の値に近い。
【0052】
得られた共重合体の製造条件、および重合収率と重量平均分子量の結果を表2に示す。またGPC測定の結果を図5に示す。
実施例5 ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造II
モノマー濃度を変えた以外は、実施例4と同様に操作し、標記の共重合体を得た。得られた共重合体の製造条件、および重合収率と重量平均分子量の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
試験例1 溶解性試験
実施例2および実施例4で得られた共重合体0.1gを用い、その水、エチレングリコールおよびジメチルスルホキシド(いずれも5ミリリットル)に対する溶解性(30℃)を検討した。参考例1として、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとの共重合体(日東紡(株)、PAS−A−1、重量平均分子量約5000)に対しても同様に溶解性を検討した。それらの結果を表3に示す。本発明の共重合体は、水に可溶で、またジメチルスルホキシドのような有機溶媒にも優れた溶解性を示した。
【0055】
【表3】

【0056】
試験例2 圧延銅箔へのめっきにおけるレベリング性評価試験
圧延銅箔が設けられたフレキシブルプリント配線基板(FPC基板)を用い、実施例4で得られた共重合体を含む、下記組成の硫酸銅めっき浴で圧延銅箔への酸性銅めっき処理を25℃、陰極電流密度1.5A/dmで50分間、エアレーション攪拌下にて行った。
【0057】
〈硫酸銅めっき浴組成〉
硫酸銅 90g/L
硫酸 180g/L
塩素イオン 40mg/L
ポリエチレングリコール 1) 500mg/L
SPS 2) 1mg/L
実施例4で得られた共重合体 1000mg/L
[注]1)HO−(CO)−H n=90
2)NaOS−C−S−S−C−SONa
【0058】
このようにしてめっきされたFPC基板について、めっき被膜外観を顕微鏡にて観察し、レベリング性を評価した。
【0059】
また上記硫酸銅めっき浴の代わりに、下記に組成を示した、従来の硫酸銅めっき浴(高性能タイプ)を用いた以外は、上記と同様にして、FPC基板の圧延銅箔への酸性銅めっきを行い、めっき被膜外観を顕微鏡にて観察し、めっき面のレベリング性を評価した。
【0060】
〈硫酸銅めっき浴組成〉
硫酸銅 100g/L
硫酸 180g/L
塩素イオン 40mg/L
Cu−Brite21MU 1) 5ml/L
SPS 2) 1mg/L
[注]1)荏原ユージライト(株)製、商品名
2)NaOS−C−S−S−C−SONa
【0061】
その結果、実施例4で得られた共重合体を含むめっき浴でめっき処理されたFPC基板は、従来のめっき浴でめっき処理されたFPC基板よりも、めっき被膜が平滑性を有し、レベリング性に優れることが明らかとなった。一方、実施例4で得られた共重合体の代わりにジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとの共重合体(PAS−A−1)を用いても、レべリング性の向上はほとんどみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、水溶性であり、かつ有機溶媒に対する溶解性に優れ、ファインケミカル分野の用途に極めて有効なジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体を簡単な操作により収率良く工業的に有利に得ることができる。
【0063】
また、本発明によれば、上記共重合体を得るためのモノマーである、新規なジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトが提供された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1で得たジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトのIRスペクトル図を示す。
【図2】実施例2で得たジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体のIRスペクトル図を示す。
【図3】実施例2で得たジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体のGPCチャートを示す。
【図4】実施例4で得たジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体のIRスペクトル図を示す。
【図5】実施例4で得たジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体のGPCチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、R、Rは、独立にメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基であるが、R、Rが共にヒドロキシエチル基ではなく、Rは、メチル基またはエチル基である)
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位と、
式(II)
【化2】

で表される二酸化イオウ単位とを含むことを特徴とするジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体。
【請求項2】
一般式(I)において、Rがエチル基、Rがメチル基、R
がエチル基である、請求項1に記載のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体。
【請求項3】
ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト単位/
二酸化イオウ単位のモル比が1/1である交互共重合体である、請求項1または2に記載のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体。
【請求項4】
一般式(III)
【化3】

(式中、R、Rは、独立にメチル基、エチル基またはヒドロキシエチル基であるが、R、Rが共にヒドロキシエチル基ではなく、Rは、メチル基またはエチル基である)
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとを、極性溶媒中で共重合させることを特徴とする請求項1に記載のジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体の製造方法。
【請求項5】
式(IV)
【化4】

で表されることを特徴とするジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−45363(P2006−45363A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228807(P2004−228807)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】