説明

ジアルコキシアルカン類のイオン性液体中での切断

本発明は、ジアルコキシアルカン類を切断して、対応するアルデヒド類またはケトン類を得るための方法であって、切断を、一般式Kで表される少なくとも1種のイオン性液体の存在下で行う、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルコキシアルカン類を切断して、対応するアルデヒド類またはケトン類を得るための方法であって、切断を、一般式Kで表される少なくとも1種のイオン性液体の存在下で行う、前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボニル基は、有機化合物、例えば薬学的に活性な化合物、作物保護剤、ポリマーまたはファインケミストリーにおける前駆体の定まった構成要素である。合成の間、対応する保護基によりカルボニル基を保護して、例えば副反応においてカルボニル基と反応する有機金属試薬との反応により、それぞれの化合物に対してさらなる修飾を行うことができるようにすることが、しばしば必要である。
【0003】
ケタール類およびアセタール類は、アルデヒド類およびケトン類のカルボニル官能のための標準的な保護基として確立されている。これらは、ジアルコキシアルカン類であり、これは、対応するカルボニル化合物からアルコール類との反応により得られる。これらの1つの原子に同種原子が2つ結合したジエーテル類は、多数の試薬、例えば有機金属試薬に対して反応性でない。所要に応じて、カルボニル基を、ケタール類およびアセタール類の対応するアルコール類の遊離を伴う切断により、復元することができる。ジアルコキシアルカン類の切断は、通常、例えばA. Streitwieser, C.H. Heathcock, E.M. Kosover, Organische Chemie [Organic Chemistry]、第2版、VCH, Weinheim 1994, 402-403に記載されているように、酸類との反応により行う。
【0004】
このために、鉱酸または強い有機酸、例えばp−トルエンスルホン酸が、通常用いられる。この反応を、有機溶媒中で行い、これを、反応後に所望のカルボニル化合物から副産物と共に分離しなければならない。しかし、有機溶媒および強酸を用いることは、特に大規模な工業的プロセスにおいては不利であることが、明らかである。その理由は、数種が強酸と混合されている大量の溶媒を、廃棄しなければならないからである。このように、特に大規模な工業的合成について、前記方法は、特に溶媒を用いる際に、環境汚染の防止および防火のための追加の安全性の観点を考慮しなければならないため、不利であることが明らかである。
【0005】
したがって、実施が簡単であり、高い収率の対応するアルデヒド類およびケトン類を生成し、同時に大量の溶媒を用いることを回避する、対応するアルデヒド類およびケトン類を遊離させることを伴うジアルコキシアルカン類の切断のための代替法に対する要求がある。
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明の目的は、前述の要求を満たし、容易に制御可能であり、大きい安全性の要求を有せず、したがってまたケタール類またはアセタール類の商業的規模での経済的な切断を可能にする方法を提供することにある。驚異的なことに、イオン性液体は、ジアルコキシアルカン類の切断のための代替の溶媒として理想的に適することが、見出された。
【0007】
したがって、本発明は、一般式(I)
【化1】

式中、
およびRは、互いに独立して、随意に置換されている脂肪族または芳香族基を示し、これは、1個または2個以上のヘテロ原子を有し得、ここで、基RまたはRの1つはまた、Hを示してもよく、またここで、2つの基RおよびRは、互いに結合していてもよく、またここで、
およびRは、互いに独立して、随意に置換されている飽和または不飽和の脂肪族または芳香族基を示し、これは、1個または2個以上のヘテロ原子を有し得、またここで、2つの基RおよびRは、互いに結合していてもよい、
で表されるジアルコキシアルカン類を切断して、アルデヒド類またはケトン類を得る方法であって、切断を、一般式Kで表される少なくとも1種のイオン性液体の存在下で行うことを特徴とする、前記方法に関する。
【0008】
イオン性液体は、ジアルコキシアルカン類の切断を行うのに特に適することが、見出された。本発明の方法を行う場合には、少なくとも1種のイオン性液体は、他の溶媒、特に有機溶媒との混合物の形態であってもよく、当該方法を、好ましくはさらなる溶媒を加えずに、即ち単に少なくとも1種のイオン性液体の存在下で行う。
【0009】
イオン性液体または液体塩は、有機カチオン(K)および一般的には無機アニオン(A)からなるイオン性種である。これらは、中性分子を何ら含まず、通常373Kより低い融点を有する。
【0010】
可能性のある用途が多種多様であるため、イオン性液体の分野において、現在鋭意研究が行われている。イオン性液体に関する概説記事は、例えば、R. Sheldon "Catalytic reactions in ionic liquids", Chem. Commun., 2001, 2399-2407; M.J. Earle, K.R. Seddon "Ionic liquids. Green solvent for the future”, Pure Appl. Chem., 72 (2000), 1391-1398; P. Wasserscheid, W. Keim "Ionische Fluessigkeiten - neue Loesungen fuer die Uebergangsmetallkatalyse" [Ionic Liquids - Novel Solutions for Transition-Metal Catalysis], Angew. Chem., 112 (2000), 3926-3945; T. Welton "Room temperature ionic liquids. Solvents for synthesis and catalysis”, Chem. Rev., 92 (1999), 2071-2083またはR. Hagiwara, Ya. Ito "Room temperature ionic liquids of alkylimidazolium cations and fluoroanions”, J. Fluorine Chem., 105 (2000), 221-227である。
【0011】
イオン性液体が塩であるため、これらは、揮発性を有せず、したがってまた可燃性の、または有毒な蒸気を何ら発生しない。したがって、これらは、ケタール切断を行うために安全な媒体を提示する。さらに、ジアルコキシアルカン類の切断のためのイオン性液体を用いる際に、反応を触媒することについて他の点では通常である酸を加えることは、絶対的には必要ではない。したがって、イオン性液体自体は、カルボニル官能の所望の再遊離を触媒することができる。最も単純な場合において、得られたアルデヒドまたはケトンを、イオン性液体からデカンテーションして除去し、さらに精製せずにさらに用いることができる。イオン性液体もまた、このようにして単純に再生利用することができ、多数回再使用することができる。全体的に、本発明の方法は、また商業的規模での合成に適する単純であり安価な方法であることが、明らかである。
【0012】
好適なジアルコキシアルカン類は、式(I)
【化2】

式中、
およびRは、互いに独立して、随意に置換されている脂肪族基または芳香族基を示し、これは、1個または2個以上のヘテロ原子を有し得、ここで、基RまたはRの1つはまた、Hを示してもよく、またここで、2つの基RおよびRは、互いに結合していてもよく、またここで、
およびRは、互いに独立して、随意に置換されている飽和または不飽和の脂肪族または芳香族基を示し、これは、1個または2個以上のヘテロ原子を有し得、またここで、2つの基RおよびRは、互いに結合していてもよい、
で表されるものである。
【0013】
およびRは、互いに独立して、飽和の、または不飽和の脂肪族基または芳香族基であってもよい。好適な脂肪族基は、好ましくは、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基であり、特にRおよびRは、各々、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、フェニルまたはシクロヘキシル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはn−ブチルである。好適な芳香族基は、例えばフェニルおよびベンジルである。
【0014】
基RおよびR並びにRおよびRは、好ましくは、互いに結合しており、例えば脂環および/または芳香環または融合環系の形成を伴っており、これはまた、1個または2個以上のヘテロ原子を有していてもよい。
【0015】
およびRは、極めて特に好ましくは、互いに結合しており、脂肪族の飽和の、または不飽和の環の形成を伴っており、即ちRおよびRは、一緒に飽和の、または不飽和のアルキル鎖を形成し、ここでアルキル鎖は、1〜10個のC原子を有することができる。アルキル鎖は、好ましくは2〜5個のC原子を有し、全体として5〜8員環を有するジアルコキシアルカンを生成する。アルキル鎖は、極めて特に好ましくは2個のC原子を有し、5員環を有するジアルコキシアルカンを生成する。これらの特に好ましいジアルコキシアルカン類は、対応するカルボニル化合物の1,2−エタンジオールとの反応により、得られる。5員環の形成は、ここで特に好まれており、したがって好ましい。
【0016】
は、好ましくは、式Ia
【数1】

式中、
は、1〜15個のC原子を有し、非置換であるか、CNおよび/またはハロゲンにより単置換または多置換されているアルキル基を示し、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−OC−O−および/または−O−CO−により置換されていてもよく、かつ/または、さらに、1つまたは2つ以上のCH基は、2個のO原子が互いに直接結合しないようにNまたはPにより置換されていてもよく、または、rおよび/またはpが0とは異なる場合には、またH、ハロゲン、CN、SFもしくはNCSを示し、
【0017】
、Aは、各々、互いに独立して、
a)1つまたは2つの隣接していないCH基が−O−または−S−により置換されていてもよい、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基、
b)1つまたは2つのCH基がNにより置換されていてもよい、1,4−フェニレン基、c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、フェナントレン−2,7−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルおよび1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルの群からの基、
d)フラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、1,2−オキサゾール、1,3−オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2H−ピラン、4H−ピラン、プリン、プテリジン、1H−アゼピン、3H−1,4−ジアゼピン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンおよび1,4−ベンゾジアゼピンの群からの2価の基
を示し、
ここで、基a)、b)、c)およびd)は、Rにより、特にハロゲンおよび/またはCNにより単置換または多置換されていてもよく、
【0018】
は、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−(CH−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CF=CF−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合を示し、
pは、0、1、2または3を示し、また
rは、0、1または2を示す、
に従う意味を有する。
【0019】
の好ましい意味は、1〜8個のC原子を有し、−CNにより単置換されており、かつ/またはハロゲンにより単置換もしくは多置換されていてもよい、直鎖状または分枝状アルキルおよびアルコキシ基である。
【0020】
および/またはAの好ましい意味は、1つまたは2つの隣接していないCH基が−O−により置換されていてもよい1,4−シクロヘキシレン、1つまたは2つのCH基がNにより置換されていてもよい1,4−フェニレン、フェナントレン−2,7−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルおよび1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、ここでこれらの基は、ハロゲン、特にフッ素および/または塩素、CNおよび/または随意にハロゲンで置換されたC1〜5アルキルもしくはアルコキシにより単置換または多置換されていてもよい。
【0021】
はまた、リガンド、例えば有機金属錯体中のシクロペンタジエニル系の構成成分であってもよい。
【0022】
特に好ましい基Rを、以下に示す:
【化3】

式中、Xは、O、NRまたはSを示し、Rは、示した意味を有し、また*は、遊離の結合を示す。
【0023】
本明細書中、有機基の置換基としてのハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくはフッ素または塩素、特に好ましくはフッ素を示す。
本明細書中、1回よりも多く出現する基および置換基、例えばA、Z、A、Rは、各々の場合において同一の、または異なる意味を有していてもよい。
基Rは、好ましくは、式Iaによる意味を有し、他方の基Rは、Hを示す。
【0024】
およびRはさらに、好ましくは、式Iで表されるジアルコキシ化合物が式Ib:
【化4】

式中、
は、Rについて示した意味の1つを有し、
は、A、Aについて示した意味の1つを有し、
は、Zについて示した意味の1つを有し、
qは、0、1、2または3を示し、また
およびRは、本明細書中に示した意味を有する、
による意味を有するように、互いに結合している。
【0025】
一般式Kで表されるイオン性液体は、ジアルコキシアルカン類の切断のために、本発明の方法に必須である。イオン性液体のアニオンAの選択は、ここでは特定の作用を奏する。アニオンAは、好ましくは対応する強酸のアニオンである。特に、イオン性液体のアニオンAは、[HSO、[SO2−、[NO、[BF、[(R)BF、[(RBF、[(RBF]、[(RB]、[B(CN)、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[アルキル−OPO2−、[(アルキル−O)PO、[アルキル−PO2−、[RPO2−、[(アルキル)PO、[(RPO、[RSO、[HOSO(CFSOO]、[OSO(CFSOO]2−、[アルキル−SO、[HOSO(CHSOO]、[OSO(CHSOO]2−、[アルキル−OSO、[アルキル−C(O)O]、[HO(O)C(CHC(O)O]、[RC(O)O]、[HO(O)C(CFC(O)O]、[O(O)C(CFC(O)O]2−、[(RSON]、[(FSON]、[((RP(O))N]、[(RSOC]、[(FSOC]、Clおよび/またはBr
ここで
n=1〜8であり、
は、フッ素化アルキル
(C2m−x+1
の意味を有し、ここでm=1〜12であり、x=0〜7であり、ここで、m=1について、xは、0〜2でなければならない、
および/またはフッ素化(またパーフルオロ化されている)アリールもしくはアルキルアリールの群から選択される。
【0026】
前述のアニオン中のアルキル基を、1〜20個のC原子を有する、好ましくは1〜14個のC原子を有する、また特に好ましくは1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基から選択することができる。
は、好ましくはCF、C、CまたはCを示す。
【0027】
イオン性液体のカチオンKの選択に関して、自体制限はない。しかし、好ましいのは、有機カチオン、特に好ましくはアンモニウム、ホスホニウム、チオウロニウム、グアニジニウムまたは複素環式カチオンである。
【0028】
アンモニウムカチオンを、例えば、式(1)
[NR (1)
により記載することができ、式中、
Rは、各々の場合において互いに独立して、
H(ここですべての置換基Rは、同時にはHであってはならない)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
【0029】
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和の脂環式基
を示し、ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOXもしくは−NOにより部分的に置換されていてもよく、またここで、α位にはないR中の1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR’−、−C(O)NR’−、−SONR’−または−P(O)R’−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここでR’は、H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、または非置換であるか、もしくは置換されているフェニルであってもよく、またXは、ハロゲンであってもよい。
【0030】
ホスホニウムカチオンを、例えば、式(2)
[PR (2)
により記載することができ、式中、
は、各々の場合において互いに独立して、
H、NR’
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
【0031】
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和の脂環式基
を示し、ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOXもしくは−NOにより部分的に置換されていてもよく、またここで、α位にはないR中の1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR’−、−C(O)NR’−、−SONR’−または−P(O)R’−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここでR’=H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、または非置換であるか、もしくは置換されているフェニルであり、またX=ハロゲンである。
【0032】
しかし、4つすべて、または3つの置換基RおよびRがハロゲンにより完全に置換されている、式(1)および(2)で表されるカチオン、例えばトリス(トリフルオロメチル)メチルアンモニウムカチオン、テトラ(トリフルオロメチル)アンモニウムカチオンまたはテトラ(ノナフルオロブチル)アンモニウムカチオンは除外される。
【0033】
好適なチオウロニウムカチオンを、式(3)
[(RN)−C(=SR)(NR)](3)
により記載することができ、式中、
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
【0034】
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和の脂環式基
を示し、ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に-Fおよび/または-Clにより部分的にもしくは完全に、または−OH、−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOXもしくは−NOにより部分的に置換されていてもよく、またここで、α位にはないR〜R中の1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR’−、−C(O)NR’−、−SONR’−または−P(O)R’−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここでR’=H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、または非置換であるか、もしくは置換されているフェニルであり、またX=ハロゲンである。
【0035】
グアニジニウムカチオンを、式(4)
[C(NR)(NR1011)(NR1213)] (4)
により記載することができ、式中、
〜R13は各々、互いに独立して、
水素、−CN、NR’
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
【0036】
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和の脂環式基
を示し、ここで、置換基R〜R13の1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に-Fおよび/または-Clにより部分的にもしくは完全に、または−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOXもしくは−NOにより部分的に置換されていてもよく、またここで、α位にはないR〜R13中の1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR’−、−C(O)NR’−、−SONR’−または−P(O)R’−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここでR’=H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、または非置換であるか、もしくは置換されているフェニルであり、またX=ハロゲンである。
【0037】
さらに、一般式(5)
[HetN] (5)
で表されるカチオンを用いることが可能であり、式中、
HetNは、
【化5】

【化6】

の群から選択される複素環式カチオンを示し、
【0038】
ここで、置換基
1’〜R4’は各々、互いに独立して、
水素、−CN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の非共有三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
【0039】
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基、飽和の、部分的に、または完全に不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C〜Cアルキルまたはアリール−C〜Cアルキルにより置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和の脂環式基
を示し、
ここで、置換基R1’、R2’、R3’および/またはR4’は、一緒にまた環系を形成してもよく、
ここで、1つまたは2つ以上の置換基R1’〜R4’は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Cl、または−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOXもしくは−NOにより部分的にもしくは完全に置換されていてもよく、しかしここで、R1’およびR4’は、同時にはハロゲンにより完全に置換されていてはならず、またここで、置換基R1’〜R4’において、ヘテロ原子に結合していない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR’−、−C(O)NR’−、−SONR’−または−P(O)R’−から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここでR’=H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、または非置換であるか、もしくは置換されているフェニルであり、またX=ハロゲンである。
【0040】
置換基R2’として好適なのは、特にまた−OR’、−NR’、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOXまたは−NOから選択された原子団である。
本発明の目的のために、完全に不飽和の置換基はまた、芳香族置換基を意味するものと解釈される。
【0041】
本発明において、式(1)〜(4)で表される化合物の好適な置換基RおよびR〜R13は、水素以外には、好ましくは以下のものである:C〜C20、特にC〜C14アルキル基、およびC〜Cアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、または不飽和の、即ちまた芳香族のC〜C脂環式基、特にフェニル。
【0042】
式(1)または(2)で表される化合物中の置換基RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい。置換基RおよびRは、好ましくは異なっている。
置換基RおよびRは、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルまたはテトラデシルである。
【0043】
グアニジニウムカチオン[C(NR)(NR1011)(NR1213)]の4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式カチオンが形成するように、対に結合していてもよい。
【0044】
一般性を限定せずに、このようなグアニジニウムカチオンの例は、以下のものである:
【化7】

式中、置換基R〜R10およびR13は、上記で示した意味または特に好ましい意味を有し得る。
【0045】
所望により、上記に示したグアニジニウムカチオンの炭素環または複素環はまた、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、CN、NR’、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、COOH、SONR’、SOX’またはSOHにより置換されていてもよく、ここでXおよびR’は、上記で示した意味を有し、置換もしくは非置換フェニルまたは非置換もしくは置換複素環により置換されていてもよい。
【0046】
チオウロニウムカチオン[(RN)C(=SR)(NR)]の4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式カチオンが形成するように、対に結合していてもよい。
【0047】
一般性を制限せずに、このようなカチオンの例を、以下に示し、ここでY=Sである:
【化8】

式中、置換基R、RおよびRは、上記で示した意味または特に好ましい意味を有し得る。
【0048】
所望により、上記に示したカチオンの炭素環または複素環はまた、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、CN、NR’、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、COOH、SONR’、SOXもしくはSOHまたは置換もしくは非置換フェニルまたは非置換もしくは置換複素環により置換されていてもよく、ここでXおよびR’は、上記に示した意味を有する。
【0049】
置換基R〜R13は、各々、互いに独立して、好ましくは1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である。式(3)〜(4)で表される化合物中の置換基RおよびR、RおよびR、RおよびR、R10およびR11並びにR12およびR13は、同一であっても異なっていてもよい。R〜R13は、特に好ましくは、各々、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、フェニルまたはシクロヘキシル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはn−ブチルである。
【0050】
本発明において、式(5)で表される化合物の好適な置換基R1’〜R4’は、水素以外には、好ましくは以下のものである:C〜C20、特にC〜C12アルキル基、およびC〜Cアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、または不飽和の、即ちまた芳香族のC〜C脂環式基、特にフェニル。
【0051】
置換基R1’およびR4’は、各々、互いに独立して、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。これらは、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−ブチルまたはヘキシルである。ピロリジニウム、ピペリジニウムまたはインドリニウム化合物において、2つの置換基R1’およびR4’は、好ましくは異なっている。
【0052】
置換基R2’またはR3’は、各々の場合において、互いに独立して、特に水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。R2’は、特に好ましくは水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチルまたはsec−ブチルである。R2’およびR3’は、極めて特に好ましくは水素である。
【0053】
〜C12アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである。随意にジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたはノナフルオロブチルである。
【0054】
2〜20個のC原子を有し、ここで複数の二重結合がまた存在してもよい直鎖状または分枝状アルケニルは、例えば、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17、−C1019〜−C2039、好ましくはアリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらにまた好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0055】
2〜20個のC原子を有し、ここで複数の三重結合がまた存在してもよい、直鎖状または分枝状アルキニルは、例えば、エチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C15、−C1017〜−C2037、好ましくはエチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
【0056】
アリール−C〜Cアルキルは、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここでフェニル環およびまたアルキレン鎖は共に、上記のように、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−OR’、−NR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−C(O)X、−SOOH、−SOX、−NOにより部分的に置換されていてもよい。
【0057】
したがって、3〜7個のC原子を有する非置換の飽和した、部分的にまたは完全に不飽和の脂環式基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、フェニル、シクロヘプテニルであり、この各々は、C〜Cアルキル基により置換されていてもよく、ここで脂環式基またはC〜Cアルキル基により置換されている脂環式基は、次にまたハロゲン原子、例えばF、Cl、BrもしくはI、特にFもしくはClにより、または−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’、−SONR’、−SOOH、−SOX、−NOにより置換されていてもよい。
【0058】
置換基R、R〜R13またはR1’〜R4’において、ヘテロ原子にα位において結合していない1個または2個の隣接していない炭素原子はまた、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NR’−、−C(O)NR’−、−SONR’−または−P(O)R’−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよく、ここでR’=フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキルまたは非置換の、もしくは置換されているフェニルである。
【0059】
一般性を限定せずに、このようにして改変された置換基R、R〜R13およびR1’〜R4’の例は、以下のものである:
−OCH、−OCH(CH、−CHOCH、−CH−CH−O−CH、−COCH(CH、−CSC、−CSCH(CH、−S(O)CH、−SOCH、−SO、−SO、−SOCH(CH、−SOCHCF、−CHSOCH、−O−C−O−C、−CF、−C、−C、−C、−C(CF、−CFSOCF、−CFCFH、−CFCHFCF、−CFCH(CF、−CN(C)C、−CHF、−CHCF、−C、−CFH、−CH、−C(CFH、−CHC(O)OH、−CHまたはP(O)(C
【0060】
R’において、C〜C脂環式基は、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0061】
R’において、置換フェニルは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、CN、NR’、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、COOH、SOX’、SONR’’またはSOHにより置換されているフェニルを示し、ここでX’は、F、ClまたはBrを示し、R’’は、R’について定義したように、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されているC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキル、例えばo−、m−もしくはp−メチルフェニル、o−、m−もしくはp−エチルフェニル、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル、o−、m−もしくはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル、o−、m−もしくはp−ヨードフェニル、さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジヒドロキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルを示す。
【0062】
1’〜R4’において、ヘテロアリールは、5〜13個の環要素を有する飽和の、または不飽和の単環式または二環式の複素環式基を意味するものと解釈され、ここで1個、2個もしくは3個のNおよび/または1個もしくは2個のSもしくはO原子が存在し得、複素環式基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、CN、NR’、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、COOH、SOX’、SONR’またはSOHにより単置換または多置換されていてもよく、ここでX’およびR’は、上記に示した意味を有する。
【0063】
複素環式基は、好ましくは、置換または非置換の2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2−、4−もしくは5−イミダゾリル、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、2−、3−、4−、5−もしくは6−2H−チオピラニル、2−、3−もしくは4−4H−チオピラニル、3−もしくは4−ピリダジニル、ピラジニル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチエニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−1H−インドリル、1−、2−、4−もしくは5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−もしくは7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キノリニル、1−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−イソキノリニル、1−、2−、3−、4−もしくは9−カルバゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−もしくは9−アクリジニル、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キナゾリニルまたは1−、2−もしくは3−ピロリジニルである。
【0064】
ヘテロアリール−C〜Cアルキルは、アリール−C〜Cアルキルと同様に、例えば、ピリジニルメチル、ピリジニルエチル、ピリジニルプロピル、ピリジニルブチル、ピリジニルペンチルまたはピリジニルヘキシルを意味するものと解釈され、ここで上記の複素環式基はさらに、このようにしてアルキレン鎖に結合していてもよい。
【0065】
HetNは、好ましくは、
【化9】

であり、ここで、置換基R1’〜R4’は、各々、互いに独立して、上記の意味を有する。
【0066】
本発明のイオン性液体のカチオンは、好ましくは、アンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウムまたはピロリジニウムカチオンである。
特に好ましいイオン性液体は、硫酸水素、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、リン酸、リン酸水素、アルキルリン酸、アルキルおよびパーフルオロアルキルホスフィン酸、アルキルおよびパーフルオロアルキルホスホン酸またはパーフルオロアルキルカルボン酸アンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウムまたはピロリジニウムである。
【0067】
本発明の反応を、以下の反応スキームに要約することができる:
【化10】

【0068】
本発明の方法のさらに好ましい態様において、当該少なくとも1種のイオン性液体はさらに、少なくとも1種の酸、好ましくはアニオンAに相当する酸を含む。一般的に、いずれの酸も、イオン性液体と混合するのに適する。本発明の方法において特に好適であると明らかである好ましい混合物の例は、例えば、[HSOアニオンおよびHSOを含むイオン性液体の混合物である。代替の例は、[CFSOアニオンおよびCFSOHを含むイオン性液体の混合物または[CFC(O)O]アニオンおよびCFC(O)OHを含むイオン性液体の混合物である。上記の混合物は、ここでは、例示的であり、本発明の可能性の制限を表すものではないと見なされるべきである。
【0069】
イオン性液体中の酸の比率を、混合物を基準として0〜90重量%、好ましくは0〜50重量%の範囲内とすることができる。
プロセス温度は、自体重大ではなく、通常0℃〜170℃、好ましくは20℃〜120℃である。
【0070】
イオン性液体と少なくとも1種の酸との上記混合物は、ケタール切断またはアセタール切断がイオン性液体のみでの場合よりも迅速に進行するため、本発明の方法において特に好適である。さらに、特に、イオン性液体と、イオン性液体のアニオンAに相当する酸との混合物は、高温においても、当該酸が混合物中で低い揮発性を有する、即ち混合物中に一定の濃度で存在するという事実により際立つことが、見出された。したがって、例えば、トリフルオロ酢酸は、事実上不揮発性であり、トリフルオロ酢酸アニオンを含むイオン性液体との混合物中で低い蒸気圧を有するに過ぎないことが、明らかである。
【0071】
本発明の方法は、アリール置換アルデヒド類またはケトン類の合成のために、特に有利に用いられ、これは、例えば、メソゲン性物質、薬学的活性化合物、作物保護剤、ポリマーもしくはファインケミストリーにおける前駆体として、または対応する出発化合物の調製のために、用いられる。
【0072】
当業者には、式(I)で表される上記のイオン性液体または化合物中の、例えばH、N、O、Cl、Fなどの置換基は、対応する同位体により置換されていてもよいことは、自明である。
以下の作業例は、本発明を、これを限定せずに説明することを意図する。本明細書中で、割合のデータは、重量パーセントを示す。すべての温度を、摂氏度で示す。
【0073】
例:
例1:シクロヘクス−1−オンの合成
【化11】

15.5g(109.0mmol)のシクロヘキサノンエチレンケタールを、100mlの丸底フラスコ中の50mlの硫酸水素1−エチル−3−メチルイミダゾリウムに加え、混合物を、90〜100℃にて30分間撹拌する。次に、揮発性成分を、35mbarの圧力にて、Vigreuxカラム(20cm)を用いて、4時間にわたり蒸留して除去する。5.58gの透明であり無色の液体を単離し、これは、時間と共に分離する。2相の下方(2.14g)は、純粋なシクロヘキサノンおよび酸の溶液からなり、これをイオン性液体に戻す。
上方の相(3.44g)は、シクロヘキサノンC10O(純度97%)を含む。
【0074】
さらに22.4g(157.5mmol)のシクロヘキサノンエチレンケタールC14を、残りのイオン性液体(エマルジョン)に加え、混合物を、再び1時間90〜100℃にて撹拌する。35mbarの圧力にて2時間蒸留した後、透明であり無色の液体(7.21g)を単離し、これは、時間と共に分離する。2相の下方(3.00g)は、純粋なシクロヘキサノンおよび酸からなり、これをイオン性液体に戻す。上方の相(3.44g)は、シクロヘキサノンC10O(純度96%)を含み、これを分離する。真空(5mbar)でさらに蒸留して、2種の物質:シクロヘキサノンエチレンケタールC14(50mol%)およびシクロヘキサノンC10O(50mol%)のさらなる留出物(12.2g)を、得ることができる。シクロヘキサノンを、さらなる段階においてこの留出物から単離することができる。その後、硫酸を反応混合物に加えて、さらなる反応を行わなければならない。
【0075】
この操作を、イオン性液体を変えずに多数回繰り返すことができる。
生成物であるシクロヘキサノンを、NMR分光法により特徴づけする。
【0076】
シクロヘキサノン:
H−NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 1.64 m (2H); 1.79 m (4H); 2.26 m (4H).
13C{H} NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 25.9 s (CH2); 28.1 s (2CH2); 42.7 s (2CH2); 211.0 s (C=O)
【0077】
例2:アセトンの合成
【化12】

3.54g(34.7mmol)の2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランを、25mlの丸底フラスコ中の3mlの硫酸水素1−エチル−3−メチルイミダゾリウムに加え、混合物(エマルジョン)を、70℃にて6時間撹拌する。次に、揮発性成分をすべて、10−2mbarおよび85〜90℃にてポンプ輸送して除去し、−196℃にて冷却トラップ中で凍結させる。精製操作の後、92%の純度を有する1.92gのアセトンが、得られる。アセトンの収率は、88%である。
【0078】
アセトン:
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 2.09 s (6H)
13C{H} NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 31.1 s (CH3)、206.9 s (CO).
【0079】
この操作を、イオン性液体を変えずに多数回繰り返すことができる。
類似の結果が、硫酸水素EMIMおよび0.5molのHSO(出発化合物を基準とする)の混合物を用いた際に得られる。
【0080】
例3:アセトアルデヒドの合成
【化13】

1.49g(16.9mmol)の2−メチル−1,3−ジオキソランを、25mlの丸底フラスコ中の3mlの硫酸水素1−エチル−3−メチルイミダゾリウムに加え、混合物(エマルジョン)を、64℃にて6時間撹拌する。次に、揮発性成分をすべて、10−2mbarおよび85〜90℃にてポンプ輸送して除去し、−196℃にて冷却トラップ中で凍結させる。室温に加温した後、0.84gの無色液体が、得られる。H NMR分光法により、この留出物は、2種の化合物、即ち2−メチル−1,3−ジオキソラン(約13mol%)およびアセトアルデヒド(約87mol%)を含む。生成物アセトアルデヒドを、分留により精製することができる。
【0081】
アセトアルデヒド:
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 2.10 d (CH3); 9.68 q (CHO); 3JHH = 2.9 Hz.
13C{H} NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 31.1 s (CH3); 201.1 s (CHO).
【0082】
この操作を、イオン性液体を変えずに多数回繰り返すことができる。
類似の結果が、硫酸水素EMIMおよび0.5molのHSO(出発化合物を基準とする)の混合物を用いた際に得られ、ここで、アルドール反応の生成物、主に3−メチルアクロレインが、さらに反応混合物中に見出される。
【0083】
例4:アセトンの合成
【化14】

3.81g(36.5mmol)の2,2−ジメトキシプロパンを、25mlの丸底フラスコ中の6mlの硫酸水素1−エチル−3−メチルイミダゾリウムに加え、混合物(エマルジョン)を、55〜60℃にて6時間撹拌する。次に、揮発性成分をすべて、1mbarおよび55〜60℃にて蒸留して除去し、−196℃にて冷却トラップ中で凍結させる。室温に加温した後、3.38gの無色液体が、得られる。H NMR分光法により、この留出物は、2種の化合物、即ちアセトン(約62mol%)およびジメチルエーテル(約38mol%)を含む。生成物アセトンを、分留により精製し、NMR分光法により特徴づけする。
【0084】
アセトン:
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 2.04 s
13C{H} NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 30.8 s (CH3)、206.6 s (CO).
ジメチルエーテル:
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 3.30 s.
13C{H} NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 49.8 s (CH3).
【0085】
この操作を、イオン性液体を変えずに多数回繰り返すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

式中、
およびRは、互いに独立して、随意に置換されている脂肪族または芳香族基を示し、これは、1個または2個以上のヘテロ原子を有し得、ここで、基RまたはRの1つはまた、Hを示してもよく、またここで、2つの基RおよびRは、互いに結合していてもよく、またここで、
およびRは、互いに独立して、随意に置換されている飽和または不飽和の脂肪族または芳香族基を示し、これは、1個または2個以上のヘテロ原子を有し得、またここで、2つの基RおよびRは、互いに結合していてもよい、
で表されるジアルコキシアルカン類を切断して、アルデヒド類またはケトン類を得る方法であって、
切断を、一般式Kで表される少なくとも1種のイオン性液体の存在下で行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
イオン性液体のアニオンAが、[HSO、[SO2−、[NO、[BF、[(R)BF、[(RBF、[(RBF]、[(RB]、[B(CN)、[PO3−、[HPO2−、[HPO、[アルキル−OPO2−、[(アルキル−O)PO、[アルキル−PO2−、[RPO2−、[(アルキル)PO、[(RPO、[RSO、[HOSO(CFSOO]、[OSO(CFSOO]2−、[アルキル−SO、[HOSO(CHSOO]、[OSO(CHSOO]2−、[アルキル−OSO、[アルキル−C(O)O]、[HO(O)C(CHC(O)O]、[RC(O)O]、[HO(O)C(CFC(O)O]、[O(O)C(CFC(O)O]2−、[(RSON]、[(FSON]、[((RP(O))N]、[(RSOC]、[(FSOC]、Clおよび/またはBr、ここでn=1〜8であり、またRは、フッ素化アルキル
(C2m−x+1
の意味を有し、ここでm=1〜12であり、x=0〜7であり、ここで、m=1について、xは、0〜2でなければならない、
および/またはフッ素化アリールもしくはアルキルアリールの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオン性液体のカチオンKが、アンモニウム、ホスホニウム、チオウロニウム、グアニジニウムまたは複素環式カチオンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種のイオン性液体が、さらにアニオンAに相当する酸を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
イオン性液体中の酸の比率が、混合物を基準として0〜90重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プロセス温度が0℃〜170℃であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
が、式Ia
【数1】

式中、
は、1〜15個のC原子を有し、非置換であるか、CNおよび/またはハロゲンにより単置換または多置換されているアルキル基を示し、ここでさらに、1つまたは2つ以上のCH基は、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−OC−O−および/または−O−CO−により置換されていてもよく、かつ/または、さらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH基は、2個のO原子が互いに直接結合しないようにNまたはPにより置換されていてもよく、または、rおよび/またはpが0とは異なる場合には、またH、ハロゲン、CN、SFもしくはNCSを示し、
、Aは、各々、互いに独立して、
a)1つまたは2つの隣接していないCH基が−O−または−S−により置換されていてもよい、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−シクロヘキシレン基、
b)1つまたは2つのCH基がNにより置換されていてもよい、1,4−フェニレン基、
c)ピペリジン−1,4−ジイル、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、フェナントレン−2,7−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイルおよび1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルの群からの基、
d)フラン、ピロール、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、1,2−オキサゾール、1,3−オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、2H−ピラン、4H−ピラン、プリン、プテリジン、1H−アゼピン、3H−1,4−ジアゼピン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、キノリン、イソキノリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンおよび1,4−ベンゾジアゼピンの群からの2価の基
を示し、
ここで、基a)、b)、c)およびd)は、Rにより、特にハロゲンおよび/またはCNにより単置換または多置換されていてもよく、
は、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−CHCH−、−(CH−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CF=CF−、−CH=CH−、−C≡C−または単結合を示し、
pは、0、1、2または3を示し、また
rは、0、1または2を示す、
の意味を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
基Rが、請求項7に記載の式Iaによる意味を有し、基Rが、Hを示すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−527512(P2009−527512A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555653(P2008−555653)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000633
【国際公開番号】WO2007/104380
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】